(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134957
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】静止電磁機器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/24 20060101AFI20230921BHJP
H01F 27/245 20060101ALI20230921BHJP
H01F 27/25 20060101ALI20230921BHJP
H01F 27/26 20060101ALI20230921BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20230921BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20230921BHJP
H01F 30/12 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H01F27/24 J
H01F27/245 155
H01F27/25
H01F27/26 130S
H01F27/26 160
H01F27/06
H01F30/10 A
H01F30/10 H
H01F30/12 A
H01F30/12 H
H01F30/10 U
H01F30/12 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039915
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】市村 智
(72)【発明者】
【氏名】山口 耕平
【テーマコード(参考)】
5E059
【Fターム(参考)】
5E059KK12
(57)【要約】
【課題】
電力効率の低下、及びコストの増加を抑制する静止電磁機器を提供する。
【解決手段】
本発明の静止電磁機器薄板状は、磁性材料を複数枚積層して成形し、前記磁性材料の両端同士をラップ接合させて閉磁路を形成した複数の巻鉄心1,2と、複数の巻鉄心1,2の周囲に巻回された1つ以上の巻線3から構成される。
複数の巻鉄心1,2は、少なくとも外周側に位置する巻鉄心1(第1巻鉄心)と、巻鉄心1の内周側に位置する巻鉄心2(第2巻鉄心)とから構成されるハイブリッド巻鉄心である。巻鉄心1は鉄基アモルファス合金で構成し、巻鉄心2は方向性電磁鋼板で構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の磁性材料を複数枚積層して成形し、前記磁性材料の両端同士をラップ接合させて閉磁路を形成した複数の巻鉄心と、前記複数の巻鉄心の周囲に巻回された1つ以上の巻線から構成される静止電磁機器において、
前記複数の巻鉄心は、少なくとも外周側に位置する第1巻鉄心と、前記第1巻鉄心の内周側に位置する第2巻鉄心とから構成されるハイブリッド巻鉄心であり、
前記第1巻鉄心は鉄基アモルファス合金からなり、前記第2巻鉄心は方向性電磁鋼板からなることを特徴とする静止電磁機器。
【請求項2】
請求項1において、
前記ハイブリッド巻鉄心の上部及び下部は、前記巻線から露出し、
前記巻線の上端部と前記第2巻鉄心の内周との間隙部、及び前記巻線の下端部と前記第2巻鉄心の内周との間隙部には、それぞれ第1絶縁体を備えたことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項3】
請求項2において、
前記巻線から露出した前記ハイブリッド巻鉄心の上部及び下部には、対となって前記ハイブリッド巻鉄心の露出した上部及び下部をそれぞれ挟むように複数の締金具を備えたことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項4】
請求項3において、
前記締金具は、前記ハイブリッド巻鉄心の巻き方向と直交する断面がL字状に形成され、鉛直方向に延びた鉛直部分と、前記鉛直部分から水平方向に折り曲げられた水平部分とを備え、
前記鉛直部分が対となって前記ハイブリッド巻鉄心の露出した上部及び下部をそれぞれ挟むようにし、
前記水平部分が対となって前記巻線を上下から挟むことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項5】
請求項4において、
前記ハイブリッド巻鉄心の上部に位置する締金具と前記巻線の上端との間隙部、及び前記ハイブリッド巻鉄心の下部に位置する締金具と前記巻線の下端との間隙部には、それぞれ第2絶縁体を備えたことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項6】
請求項5において、
対となる前記締金具の前記鉛直部分は、水平スタッドにより連結されたことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項7】
請求項6において、
対となる前記締金具の前記水平部分は、鉛直スタッドにより連結されたことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項8】
請求項7において、
前記ハイブリッド巻鉄心の下部の位置で対となる前記締金具は、前記締金具同士の下部が対となる方向で接続される接続部を有して床面に接し、
前記ハイブリッド巻鉄心の重量は、前記巻線の上端と前記第2巻鉄心の内周との間隙部に配置された第1絶縁体を介して前記巻線で支持され、前記ハイブリッド巻鉄心と前記巻線の重量は、前記ハイブリッド巻鉄心の下部に位置する締金具と前記巻線の下端との間隙部に位置する第2絶縁体を介して床面に接する前記接続部に作用するようにしたことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項において、
前記ハイブリッド巻鉄心は、4組の前記ハイブリッド巻鉄心が水平方向に並べられ、
隣接する前記ハイブリッド巻鉄心同士で構成される磁脚部に前記巻線を巻回して三相五脚型の変圧器を構成したことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか1項において、
前記ハイブリッド巻鉄心は、1組の前記ハイブリッド巻鉄心の左右の磁脚部に前記巻線を巻回して単相二脚型の変圧器を構成したことを特徴とする静止電磁機器。
【請求項11】
請求項1乃至8の何れか1項において、
前記静止電磁機器は、
所定の長さに切断し逆U字状に折り曲げて積層した方向性電磁鋼板の上部に、所定の長さに切断し積層した鉄基アモルファス合金を載置し、前記方向性電磁鋼板の上部に懸垂手段を当て、積層した前記方向性電磁鋼板及び積層した前記鉄基アモルファス合金を吊上げて逆U字状にし、前記方向性電磁鋼板及び前記鉄基アモルファス合金の両端同士を接合して矩形状の閉磁路鉄心に成形し、前記閉磁路鉄心に直流磁界を作用させながら焼鈍処理を施し、前記焼鈍処理後、前記方向性電磁鋼板及び前記鉄基アモルファス合金の両端の接合部を開放して前記懸垂手段で吊上げ、前記方向性電磁鋼板及び前記鉄基アモルファス合金の両端を前記巻線に挿入し、前記巻線の下部から露出した前記方向性電磁鋼板及び前記鉄基アモルファス合金の両端をラップ接合して製作することを特徴とする静止電磁機器。
【請求項12】
請求項4乃至8の何れか1項において、
前記第1巻鉄心の幅を、前記第2巻鉄心の幅より小さくし、
前記第1巻鉄心と前記締金具の前記鉛直部分との間に間隙部を備えたことを特徴と静止電磁機器。
【請求項13】
請求項12において、
前記第1巻鉄心と前記締金具の前記鉛直部分との間の間隙部には、防音材を備えたことを特徴とする静止電磁機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器等の静止電磁機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統における送配電電圧の変換、および2系統の電線間の電気的絶縁に用いられる変圧器等の静止電磁機器は、鉄を主成分とする方向性珪素鋼板、アモルファス合金、ナノ結晶合金等の導電性軟磁性材料、あるいはフェライト等の非導電性軟磁性材料により構成された鉄心の磁脚部に、高圧側と低圧側の2系統の巻線が巻回されている。
【0003】
現在、配電用変電所等に用いられる電力容量がおおむね2MVAを超える配電用変圧器の鉄心には、機械的強度とコスト、および電力効率のバランスを考慮し、主に方向性電磁鋼板が採用されている。一方、鉄を主成分とする薄帯状のアモルファス合金を積層して構成されるアモルファス鉄心は、方向性電磁鋼板より磁気損失が半分以下で、静止電磁機器の高効率化に極めて有用であり、現在、主に2MVA以下の小容量の静止電磁機器に採用されている。
【0004】
薄帯状のアモルファス合金の厚さは20~30umであり、方向性電磁鋼板の10分の1程度のため機械的強度が低く、大容量鉄心を実現するには、鉄心の重量を支持するための構造が別途必要となる。例えば特許文献1には、アモルファス巻鉄心を支持部材とともに巻線に組み込むとともに、方向性電磁鋼板で構成した積層鉄心をアモルファス巻鉄心の側面部に備えて支持構造の一部として利用する、ハイブリッド鉄心を適用した静止電磁機器の構造と製法が開示されている。また、特許文献2には、三相三脚型の静止電磁機器用鉄心において、2つの内側の巻鉄心を薄帯状のアモルファス合金で、2つの内側の巻鉄心を囲む1つの外側の鉄心を、方向性電磁鋼板で構成した巻鉄心、またはステップラップ接合部を有する積層鉄心で構成し、アモルファス巻鉄心を保護する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6963493号公報
【特許文献2】特開平8-88128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、大形のアモルファス巻鉄心を金属製の支持部材上に乗せてクレーン等を使って直立させた巻線内に挿入して製作するものである。本技術では、完成した静止電磁機器内に上記の支持部材が残ることになる。よって通電した巻線からの漏洩磁界が支持部材を鎖交して渦電流が発生し、付加的な電力損失(漂遊損失)により静止電磁機器の電力効率が低下するのに加え、これらの支持部材のコストも増加する課題がある。
【0007】
また、特許文献2で開示されている三相三脚型鉄心の構造は、三相巻線が巻回される3本の磁脚のうち、中央のみアモルファス巻鉄心で構成されるのに対して、両端の2本の磁脚はアモルファスと方向性電磁鋼板のハイブリッドとなり、三相系統間の磁気特性のバランスを保つための対策が必要となり、コストが増加する課題がある。
【0008】
本発明の目的は、電力効率の低下、及びコストの増加を抑制する静止電磁機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、薄板状の磁性材料を複数枚積層して成形し、前記磁性材料の両端同士をラップ接合させて閉磁路を形成した複数の巻鉄心と、前記複数の巻鉄心の周囲に巻回された1つ以上の巻線から構成される静止電磁機器において、前記複数の巻鉄心は、少なくとも外周側に位置する第1巻鉄心と、前記第1巻鉄心の内周側に位置する第2巻鉄心とから構成されるハイブリッド巻鉄心であり、前記第1巻鉄心は鉄基アモルファス合金からなり、前記第2巻鉄心は方向性電磁鋼板からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電力効率の低下、及びコストの増加を抑制する静止電磁機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1を示す静止電磁機器Sの正面透視図である。
【
図2】
図1中に示したII-II線で切断した断面図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る三相五脚型の変圧器の斜視図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る静止電磁機器Sの鉄心の製作方法を示す図である。
【
図5】本発明の実施例2に係る単相二脚型の変圧器の斜視図である。
【
図6】本発明の実施例3に係る静止電磁機器の正面透視図である。
【
図7】
図6中に示したVII-VII線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照しつつ説明する。同様の構成要素には同様の符号を付し、同様の説明は繰り返さない。
【0013】
本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部材から成ること、複数の構成要素が一の部材から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、などを許容する。
【実施例0014】
図1から
図4を用いて、本発明の実施例1について説明する。
図1は、本発明の実施例1を示す静止電磁機器Sの正面透視図である。
図2は、
図1中に示したII-II線で切断した断面図である。
【0015】
図1及び
図2に示すように、実施例1の静止電磁機器Sは、薄板状の磁性材料を複数枚積層して成形し、磁性材料の両端同士をラップ接合させて閉磁路を形成した複数の巻鉄心1,2と、複数の巻鉄心1,2の周囲に巻回された1つ以上の巻線3から構成されている。複数の巻鉄心1,2は、外周側に位置する巻鉄心1と、この巻鉄心1の内周側に位置する巻鉄心2とから構成されるハイブリッド巻鉄心である。
【0016】
実施例1では、鉄基アモルファス合金からなる薄帯を複数枚積層した巻鉄心1(第1巻鉄心)を外周側に備え、方向性電磁鋼板からなる薄板状の磁性材料を複数枚積層した巻鉄心2(第2巻鉄心)を内周側に備えたハイブリット巻鉄心としている。すなわち、ハイブリッド巻鉄心は、複数の巻鉄心1,2で構成されている。巻鉄心1,2の各磁性材料の切断端同士は、ラップ接合部1a、2aで接続され、略矩形状に成形してなるハイブリッド巻鉄心が構成される。ハイブリッド巻鉄心は、複数用意され、水平方向に隣接して並べられる。
【0017】
隣接した巻鉄心同士で構成される磁脚部には、1系統以上の巻線3が重ねて巻回され、静止電磁機器Sが構成される。
【0018】
ハイブリッド巻鉄心(巻鉄心1,2)の上部及び下部は、巻線3から露出している。ハイブリッド巻鉄心の巻線3から露出した部分(巻鉄心1,2の上部及び下部)をヨークとする。静止電磁機器Sの構造を維持するため、巻線3の上端部と巻鉄心2の内周との間隙部、及び巻線3の下端部と巻鉄心2の内周との間隙部には、それぞれ絶縁体5a(第1絶縁体)が備えられる。すなわち、巻鉄心2の内周側には、巻線3と接する絶縁体5aが備えられている。実施例1では、巻線3の上端部とヨーク内周(巻鉄心2の内周)との間隙部、巻線3の下端部とヨーク内周(巻鉄心2の内周)との間隙部に、それぞれ複数の絶縁体5aを備えている。
【0019】
さらに、巻線3から露出したハイブリッド巻鉄心(巻鉄心1,2)の上部及び下部のヨークには、対となってハイブリッド巻鉄心(巻鉄心1,2)の露出した上部及び下部のヨークをそれぞれ挟むように金属製の複数の締金具4が備えられる。また、締金具4は、上下に対となり、巻線3を上下から挟むように備えられている。
【0020】
図2に示すように締金具4は、ハイブリッド巻鉄心(巻鉄心1,2)の巻き方向と直交する断面が略L字状に形成され、鉛直方向に延びた鉛直部分と、この鉛直部分から水平方向に折り曲げられた水平部分とを備えている。締金具4の鉛直部分は、対となって複数の巻鉄心1,2を挟むよう配置され、締金具4の水平部分は、対となって巻線3を上下から挟むように配置される。また、複数の巻鉄心1,2の下部の位置で対となる締金具4は、締金具4同士の下部が対となる方向で接続される接続部を有しており、この接続部が床面に接する。
【0021】
複数の巻鉄心1,2の上部に位置する締金具4と巻線3の上端との間隙部、及び複数の巻鉄心1,2の下部に位置する締金具4と巻線3の下端との間隙部には、それぞれ絶縁体5b(第2絶縁体)が備えられる。
【0022】
対となる締金具4の鉛直部分は、巻鉄心1,2の上部及び下部のヨーク部の積層面に接し、水平スタッド4aにより連結されている。対となる締金具4の水平部分は、鉛直スタッド4bにより連結されている。そして、複数の巻鉄心1,2は、複数の締金具4、水平スタッド4a、鉛直スタッド4bによってそれぞれ水平方向、鉛直方向に締付固定される。
【0023】
ここで実施例1における静止電磁機器Sを構成する、巻鉄心を支持するための応力の作用状態について説明する。特に外周部分を構成するアモルファスの巻鉄心1は、薄帯の積層方向に圧縮応力が作用すると薄帯間の電気的絶縁が低下して渦電流が流れて磁気損失が増加する。よって、巻鉄心1への圧縮応力を抑制しつつ、構造を維持するための機械的強度を確保する必要がある。
【0024】
複数の巻鉄心1,2の重量は、巻線3の上端と巻鉄心2の内周との間隙部に配置された絶縁体5aを介して巻線3で支持される。さらに、複数の巻鉄心1,2と巻線3の重量は、複数の巻鉄心1,2の下部に位置する締金具4と巻線3の下端との間隙部に配置された絶縁体5bを介して、床面に接する締金具4の接続部に作用し、静止電磁機器Sの重量が支持される。さらに、巻鉄心の底部と、下部の締金具4(接続部)との間隙部には絶縁体5c(第3絶縁体)が設けられる。各部の絶縁体の高さと締付圧力を適切な値にすることで、巻鉄心1,2の重量は上部ヨークの内周部と下部ヨークの底部(外周部)に分けて支持される構造となり、巻鉄心1を構成する薄帯状、または巻鉄心2を構成する薄板状の磁性材料の積層方向に作用する圧縮応力を最小限とすることができる。
【0025】
次に、静止電磁機器Sの一例として、三相五脚型の変圧器の構成について説明する。
図3は、本発明の実施例1に係る三相五脚型の変圧器の斜視図である。
図1と
図2と共通する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0026】
図3では、上述したハイブリッド巻鉄心が複数、水平方向に隣接して並べられる。
図3に示す例では、4組のハイブリッド巻鉄心が水平方向に隣接して並べられる。水平方向に隣接して並べられた4組のハイブリッド巻鉄心は、五脚の磁脚部が構成される。
【0027】
隣接したハイブリッド巻鉄心同士で構成される磁脚部には、2系統の巻線が重ねて巻回されて三相巻線を構成する。そして、
図3では三相五脚型の変圧器が構成される。
【0028】
次に静止電磁機器Sの鉄心の作成方法について
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の実施例1に係る静止電磁機器Sの鉄心の製作方法を示す図である。
【0029】
まず
図4(a)に示すように、所定の長さに切断し、下方に向かって開くように逆U字状に折り曲げて積層した方向性電磁鋼板(巻鉄心2)の上部に、所定の長さに切断した薄帯状のアモルファス合金(巻鉄心1)を、鉛直方向に鉄心の設計厚さに相当する枚数分載置する。
【0030】
次に、
図4(b)に示すように、方向性電磁鋼板(巻鉄心2)の上部にロープ、スリング等の懸垂手段7を当て、積層したアモルファス合金(巻鉄心1)及び積層した方向性電磁鋼板(巻鉄心2)を懸垂手段7で吊り上げて逆U字状とする。
【0031】
次に、
図4(c)に示すように、アモルファス合金(巻鉄心1)及び方向性電磁鋼板(巻鉄心2)の両端同士を接合し、ラップ接合部1a,2aを有する略矩形の閉磁路鉄心に成形する。この段階の磁性材料には鋳造時の応力が残留しており、さらに折り曲げ加工により、磁性材料が本来持つ磁気性能が損なわれている。そこで閉磁路鉄心(巻鉄心1,2)の磁路に沿って直流磁界11を作用させながら焼鈍処理を施し、残留応力を緩和して磁気性能を回復させる。
【0032】
次に、焼鈍処理後、
図4(d)に示すように、アモルファス合金(巻鉄心1)及び方向性電磁鋼板(巻鉄心2)の両端のラップ接合部1a,2aを開放して懸垂手段7で吊上げ、アモルファス合金(巻鉄心1)及び方向性電磁鋼板(巻鉄心2)の両端の接合部を再び逆U字状に開いた状態に戻す。そして、アモルファス合金(巻鉄心1)及び方向性電磁鋼板(巻鉄心2)の両端を予め製作しておいた、直立した巻線3に挿入する。最後に、巻線の下部から露出したアモルファス合金(巻鉄心1)及び方向性電磁鋼板(巻鉄心2)の両端を再びラップ接合して磁路を閉じることで、ハイブリッド構造の巻鉄心を用いた静止電磁機器Sが完成する。
【0033】
実施例1では、方向性電磁鋼板(巻鉄心2)の上部に、アモルファス合金(巻鉄心1)を載置し、その重量を方向性電磁鋼板(巻鉄心2)で支持する構造のため、アモルファス合金(巻鉄心1)の支持部材が不要となり、静止電磁機器の電力効率の低下、コストの増加を抑制することができる。
実施例2では、鉄基アモルファス合金からなる薄帯を複数枚積層した巻鉄心1を外周部分に、方向性電磁鋼板からなる薄板状磁性材料を複数枚積層した巻鉄心2を内周部分にそれぞれ備え、各磁性材料の切断端同士をラップ接合して略矩形状に成形してなる1つの巻鉄心が備えられる。左右の2本の磁脚部には、2系統の巻線が重ねて巻回され、両者を直列接続して単相巻線を構成する。