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特開2023-134965整流回路、昇圧回路およびSMFE回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134965
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】整流回路、昇圧回路およびSMFE回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20230921BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H02M7/12 F
H02M3/155 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039930
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】北川 章夫
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5H006CA02
5H006CC02
5H006DB01
5H006DC05
5H730AA14
5H730AS04
5H730BB02
5H730CC01
5H730DD04
5H730EE01
5H730FF01
(57)【要約】
【課題】電圧比較器を動作させるための電源が不要な理想ダイオードを実現できる整流回路などを提供する。
【解決手段】整流回路100は、トランジスタ10と、単電源の電圧比較器20と、閾値制御回路30と、を備え、第1端子b1、負側入力端子c2および第1入力端子d1は、入力端子a1に接続され、第2端子b2、正側入力端子c1および第2入力端子d2は、出力端子a2に接続され、第1制御端子b3と第1出力端子c3とは接続され、バックゲート端子b4と第2出力端子d3とは接続され、閾値制御回路30は、第1入力端子d1に入力される電圧および第2入力端子d2に入力される電圧のうちの高い電圧を第2出力端子d3から出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子から出力端子への電流を整流する整流回路であって、
第1端子、第2端子、第1制御端子およびバックゲート端子を有する第1トランジスタと、
正側入力端子、負側入力端子、第1出力端子および基準電圧端子を有する単電源の電圧比較器と、
第1入力端子、第2入力端子および第2出力端子を有する閾値制御回路と、を備え、
前記第1端子、前記負側入力端子および前記第1入力端子は、前記入力端子に接続され、
前記第2端子、前記正側入力端子および前記第2入力端子は、前記出力端子に接続され、
前記第1制御端子と前記第1出力端子とは接続され、
前記バックゲート端子と前記第2出力端子とは接続され、
前記閾値制御回路は、前記第1入力端子に入力される電圧および前記第2入力端子に入力される電圧のうちの高い電圧を前記第2出力端子から出力する、
整流回路。
【請求項2】
前記電圧比較器は、
前記負側入力端子に入力される電圧よりも前記正側入力端子に入力される電圧の方が大きい場合、前記正側入力端子に入力される電圧を前記第1出力端子から出力し、
前記正側入力端子に入力される電圧よりも前記負側入力端子に入力される電圧の方が大きい場合、前記基準電圧端子に入力される電圧を前記第1出力端子から出力する、
請求項1に記載の整流回路。
【請求項3】
前記閾値制御回路は、第2トランジスタおよび第3トランジスタを備え、
前記第2トランジスタは、第3端子、第4端子および第2制御端子を有し、
前記第3トランジスタは、第5端子、第6端子および第3制御端子を有し、
前記第3端子および前記第3制御端子は、前記第1入力端子に接続され、
前記第5端子および前記第2制御端子は、前記第2入力端子に接続され、
前記第4端子および前記第6端子は、前記第2出力端子に接続される、
請求項1または2に記載の整流回路。
【請求項4】
前記第1トランジスタは、SOTB(Silicon on Thin Buried Oxide)(登録商標)構造のトランジスタまたはFD-SOI(Fully Depleted Silicon on Insulator)構造のトランジスタである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の整流回路。
【請求項5】
複数のダイオードを備える昇圧回路であって、
前記複数のダイオードのそれぞれは、請求項1~4のいずれか1項に記載の整流回路によって構成される、
昇圧回路。
【請求項6】
スイッチング素子および阻止ダイオードを備えるSMFE(Synchronized Magnetic Flux Extraction)回路であって、
前記スイッチング素子および前記阻止ダイオードはそれぞれ、請求項1~4のいずれか1項に記載の整流回路によって構成される、
SMFE回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、整流回路、昇圧回路およびSMFE回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、理想ダイオードについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-119620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような理想ダイオードには、電圧比較器を動作させるための電源が必要となる。
【0005】
そこで、本開示は、電圧比較器を動作させるための電源が不要な理想ダイオードを実現できる整流回路などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る整流回路は、入力端子から出力端子への電流を整流する整流回路であって、第1端子、第2端子、第1制御端子およびバックゲート端子を有する第1トランジスタと、正側入力端子、負側入力端子、第1出力端子および基準電圧端子を有する単電源の電圧比較器と、第1入力端子、第2入力端子および第2出力端子を有する閾値制御回路と、を備え、前記第1端子、前記負側入力端子および前記第1入力端子は、前記入力端子に接続され、前記第2端子、前記正側入力端子および前記第2入力端子は、前記出力端子に接続され、前記第1制御端子と前記第1出力端子とは接続され、前記バックゲート端子と前記第2出力端子とは接続され、前記閾値制御回路は、前記第1入力端子に入力される電圧および前記第2入力端子に入力される電圧のうちの高い電圧を前記第2出力端子から出力する。
【0007】
本開示の一態様に係る昇圧回路は、複数のダイオードを備える昇圧回路であって、前記複数のダイオードのそれぞれは、上記の整流回路によって構成される。
【0008】
本開示の一態様に係るSMFE回路は、スイッチング素子および阻止ダイオードを備えるSMFE回路であって、前記スイッチング素子および前記阻止ダイオードはそれぞれ、上記の整流回路によって構成される。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る整流回路などによれば、電圧比較器を動作させるための電源が不要な理想ダイオードを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る整流回路の一例を示す回路図である。
図2】実施の形態に係る電圧比較器の一例を示す回路図である。
図3】実施の形態に係る整流回路のDC特性の一例を示すグラフである。
図4】実施の形態に係る昇圧回路の一例を示す回路図である。
図5A】実施の形態に係る昇圧回路の充電特性の一例を示すグラフである。
図5B】比較例に係る昇圧回路の充電特性の一例を示すグラフである。
図6A】実施の形態に係る昇圧回路および比較例に係る昇圧回路の電圧効率の一例を示すグラフである。
図6B】実施の形態に係る昇圧回路および比較例に係る昇圧回路の電力効率の一例を示すグラフである。
図7】実施の形態に係る電源回路の一例を示す構成図である。
図8】実施の形態に係る電源回路における昇圧回路およびDC-DCコンバータの出力の一例を示すグラフである。
図9】実施の形態に係る昇圧回路の他の一例を示す回路図である。
図10】実施の形態に係る昇圧回路の他の一例を示す回路図である。
図11】比較例に係るSMFE回路の一例を示す回路図である。
図12】比較例に係るSMFE回路における各信号のタイミングチャートである。
図13】実施の形態に係るSMFE回路の一例を示す回路図である。
図14】実施の形態に係るSMFE回路における各信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の一態様を得るに至った経緯)
一般的なダイオードは、順方向電圧(V)の電圧損失がある。一方で、特許文献1に記載されるように、この電圧損失が非常に小さい理想ダイオードという回路がある。しかしながら、特許文献1に記載されるような理想ダイオードには、電圧比較器を動作させるための電源が必要となる。つまり、特許文献1に記載されるような理想ダイオードには、単電源の電圧比較器ではなく、両電源の電圧比較器が必要となる。そこで、以下では、電圧比較器を動作させるための電源が不要な理想ダイオードを実現できる整流回路ならびにこの整流回路を備える昇圧回路およびSMFE回路について説明する。言い換えると、単電源の電圧比較器によって理想ダイオードを実現できる整流回路ならびにこの整流回路を備える昇圧回路およびSMFE回路について説明する。
【0012】
本開示の一態様に係る整流回路は、入力端子から出力端子への電流を整流する整流回路であって、第1端子、第2端子、第1制御端子およびバックゲート端子を有する第1トランジスタと、正側入力端子、負側入力端子、第1出力端子および基準電圧端子を有する単電源の電圧比較器と、第1入力端子、第2入力端子および第2出力端子を有する閾値制御回路と、を備え、前記第1端子、前記負側入力端子および前記第1入力端子は、前記入力端子に接続され、前記第2端子、前記正側入力端子および前記第2入力端子は、前記出力端子に接続され、前記第1制御端子と前記第1出力端子とは接続され、前記バックゲート端子と前記第2出力端子とは接続され、前記閾値制御回路は、前記第1入力端子に入力される電圧および前記第2入力端子に入力される電圧のうちの高い電圧を前記第2出力端子から出力する。
【0013】
第1トランジスタ、電圧比較器および閾値制御回路がこのように接続されることで、電圧比較器を動作させるための電源が不要な理想ダイオードを実現できる。言い換えると、第1トランジスタ、電圧比較器および閾値制御回路がこのように接続されることで、単電源の電圧比較器によって理想ダイオードを実現できる。
【0014】
例えば、前記電圧比較器は、前記負側入力端子に入力される電圧よりも前記正側入力端子に入力される電圧の方が大きい場合、前記正側入力端子に入力される電圧を前記第1出力端子から出力し、前記正側入力端子に入力される電圧よりも前記負側入力端子に入力される電圧の方が大きい場合、前記基準電圧端子に入力される電圧を前記第1出力端子から出力してもよい。
【0015】
電圧比較器は、正側入力端子に入力される電圧または基準電圧端子に入力される電圧を出力するため、電圧比較器を動作させるための電源を不要とすることができる。
【0016】
例えば、前記閾値制御回路は、第2トランジスタおよび第3トランジスタを備え、前記第2トランジスタは、第3端子、第4端子および第2制御端子を有し、前記第3トランジスタは、第5端子、第6端子および第3制御端子を有し、前記第3端子および前記第3制御端子は、前記第1入力端子に接続され、前記第5端子および前記第2制御端子は、前記第2入力端子に接続され、前記第4端子および前記第6端子は、前記第2出力端子に接続されてもよい。
【0017】
閾値制御回路が備える第2トランジスタおよび第3トランジスタが第1トランジスタにこのように接続されることで、閾値制御回路は、第1入力端子に入力される電圧および第2入力端子に接続される電圧のうちの高い電圧を第2出力端子から出力することができる。
【0018】
例えば、前記第1トランジスタは、SOTB(Silicon on Thin Buried Oxide)(登録商標)構造のトランジスタまたはFD-SOI(Fully Depleted Silicon on Insulator)構造のトランジスタであってもよい。
【0019】
第1トランジスタがSOTB構造のトランジスタまたはFD-SOI構造のトランジスタであることで、理想ダイオードを実現しやすくなる。
【0020】
本開示の一態様に係る昇圧回路は、複数のダイオードを備える昇圧回路であって、前記複数のダイオードのそれぞれは、上記の整流回路によって構成される。
【0021】
これによれば、電圧比較器を動作させるための電源が不要な理想ダイオードを備える昇圧回路を提供できる。
【0022】
本開示の一態様に係るSMFE回路は、スイッチング素子および阻止ダイオードを備えるSMFE回路であって、前記スイッチング素子および前記阻止ダイオードはそれぞれ、上記の整流回路によって構成される。
【0023】
これによれば、電圧比較器を動作させるための電源が不要な理想ダイオードを備えるSMFE回路を提供できる。
【0024】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。
【0026】
(実施の形態)
以下、実施の形態に係る整流回路、昇圧回路およびSMFE回路について説明する。まずは、実施の形態に係る整流回路について説明する。
【0027】
図1は、実施の形態に係る整流回路100の一例を示す回路図である。
【0028】
整流回路100は、入力端子a1から出力端子a2への電流を整流する回路である。すなわち、整流回路100によって、入力端子a1から出力端子a2への一方向にのみ電流を流すことができる。
【0029】
整流回路100は、トランジスタ10、電圧比較器20および閾値制御回路30を備える。
【0030】
トランジスタ10は、第1端子b1、第2端子b2、第1制御端子b3およびバックゲート端子b4を有する第1トランジスタである。例えば、トランジスタ10は、P型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、第1端子b1はドレインであり、第2端子b2はソースであり、第1制御端子b3はゲートである。トランジスタ10は、バックゲート端子b4を有するため、トランジスタ10の閾値電圧を制御することができる。トランジスタ10の閾値電圧は、トランジスタ10をオンする(導通状態とする)ために必要な電圧である。例えば、トランジスタ10は、SOTB構造のトランジスタまたはFD-SOI構造のトランジスタである。これにより、閾値制御回路30によってバックゲート端子b4を介してトランジスタ10の閾値電圧を低減することができる。通常のMOSFETではリークが発生して閾値電圧を低減させることが難しいが、SOTB構造のトランジスタまたはFD-SOI構造のトランジスタ10では、リークが発生しにくいため閾値電圧を低減することができる。例えば、トランジスタ10は、400nm×60nmのサイズであり、75×250個のトランジスタからなる。
【0031】
電圧比較器20は、正側入力端子c1、負側入力端子c2、第1出力端子c3および基準電圧端子c4を有する単電源の電圧比較器である。電圧比較器20は、正側入力端子c1に入力される電圧と負側入力端子c2に入力される電圧とを比較し、比較結果に応じた電圧を第1出力端子c3から出力する。電圧比較器20は、単電源の電圧比較器であり、動作させるための電源が不要となっており、基準電圧端子c4に基準電圧(例えばグランドなど)を接続することで、動作させることができる。電圧比較器20は、負側入力端子c2に入力される電圧よりも正側入力端子c1に入力される電圧の方が大きい場合、正側入力端子c1に入力される電圧を第1出力端子c3から出力し、正側入力端子c1に入力される電圧よりも負側入力端子c2に入力される電圧の方が大きい場合、基準電圧端子c4に入力される電圧を第1出力端子c3から出力する。電圧比較器20の詳細な回路構成については、後述する図2で説明する。
【0032】
閾値制御回路30は、トランジスタ10の閾値電圧を制御するための回路であり、第1入力端子d1、第2入力端子d2および第2出力端子d3を有する。閾値制御回路30は、第1入力端子d1に入力される電圧および第2入力端子d2に接続される電圧のうちの高い電圧を第2出力端子d3から出力する。閾値制御回路30のこのような機能を実現するために、閾値制御回路30は、例えば、トランジスタ31および32を備える。
【0033】
トランジスタ31は、第3端子e1、第4端子e2および第2制御端子e3を有する第2トランジスタである。なお、トランジスタ31は、バックゲート端子e4を有していてもよい。例えば、トランジスタ31は、P型のMOSFETであり、第3端子e1はドレインであり、第4端子e2はソースであり、第2制御端子e3はゲートである。
【0034】
トランジスタ32は、第5端子f1、第6端子f2および第3制御端子f3を有する第3トランジスタである。なお、トランジスタ32は、バックゲート端子f4を有していてもよい。例えば、トランジスタ32は、P型のMOSFETであり、第5端子f1はドレインであり、第6端子f2はソースであり、第3制御端子f3はゲートである。
【0035】
第1端子b1、負側入力端子c2および第1入力端子d1は、入力端子a1に接続され、第2端子b2、正側入力端子c1および第2入力端子d2は、出力端子a2に接続される。第1制御端子b3と第1出力端子c3とは接続される。バックゲート端子b4と第2出力端子d3とは接続される。また、第3端子e1および第3制御端子f3は、第1入力端子d1に接続され、第5端子f1および第2制御端子e3は、第2入力端子d2に接続され、第4端子e2および第6端子f2は、第2出力端子d3に接続される。また、バックゲート端子e4およびf4についても、例えば、第2出力端子d3に接続される。
【0036】
整流回路100が上記のような構成および接続となっていることで、電圧比較器20を動作させるための電源が不要な理想ダイオードを実現できる。理想ダイオードとは、順方向電圧(V)の電圧損失が非常に小さいダイオードであり、トランジスタ10の閾値電圧が非常に小さい場合、整流回路100によって理想ダイオードが実現されたといえる。入力端子a1から出力端子a2へ電流が流れる際に、トランジスタ10の閾値電圧が非常に小さい場合、ダイオードとして機能するトランジスタ10による電圧損失(V)が非常に小さくなるためである。
【0037】
出力端子a2に入力される電圧よりも入力端子a1に入力される電圧の方が大きい場合、正側入力端子c1に入力される電圧よりも負側入力端子c2に入力される電圧の方が大きくなり、電圧比較器20は、基準電圧端子c4に入力される電圧を第1出力端子c3から出力する。これにより、P型のMOSFETであるトランジスタ10はオンとなり、入力端子a1から出力端子a2へ電流を流すことができる。一方で、入力端子a1に入力される電圧よりも出力端子a2に入力される電圧の方が大きい場合、負側入力端子c2に入力される電圧よりも正側入力端子c1に入力される電圧の方が大きくなり、電圧比較器20は、正側入力端子c1に入力される電圧を第1出力端子c3から出力する。これにより、P型のMOSFETであるトランジスタ10はオフとなり、入力端子a1から出力端子a2へ電流を流さないようにすることができる。
【0038】
また、出力端子a2に入力される電圧よりも入力端子a1に入力される電圧の方が大きい場合、すなわち、入力端子a1から出力端子a2へ電流を流す場合、P型のMOSFETであるトランジスタ31はオンとなり、P型のMOSFETであるトランジスタ32はオフとなる。この場合、入力端子a1に入力される電圧、すなわち、第1入力端子d1に入力される電圧および第2入力端子d2に入力される電圧のうちの高い電圧が第2出力端子d3から出力される。これにより、トランジスタ10のバックゲート端子b4に、入力端子a1に入力された高い電圧を印加することができ、トランジスタ10の閾値電圧を小さくすることができ、理想ダイオードを実現することができる。
【0039】
次に、電圧比較器20の回路構成について図2を用いて説明する。
【0040】
図2は、実施の形態に係る電圧比較器20の一例を示す回路図である。
【0041】
電圧比較器20が図2に示されるような回路構成を有することで、電圧比較器20は、単電源で駆動することができる。具体的には、電圧比較器20は、負側入力端子c2に入力される電圧よりも正側入力端子c1に入力される電圧の方が大きい場合、正側入力端子c1に入力される電圧を第1出力端子c3から出力することができ、また、正側入力端子c1に入力される電圧よりも負側入力端子c2に入力される電圧の方が大きい場合、基準電圧端子c4に入力される電圧を第1出力端子c3から出力することができる。
【0042】
なお、電圧比較器20の回路構成については、一般的なものであるため詳細な説明は省略するが、トランジスタ群21によって、正側入力端子c1に入力される電圧と負側入力端子c2に入力される電圧との大小比較が行われ、トランジスタ群22によって、出力が増幅される。また、トランジスタ群23によって、電圧比較器20の消費電力を小さくすることができる。
【0043】
次に、整流回路100のDC特性(静特性)の測定結果について、図3を用いて説明する。
【0044】
図3は、実施の形態に係る整流回路100のDC特性の一例を示すグラフである。なお、図3には、理想ダイオードではない一般的なダイオードのDC特性も比較のために示されている。図3において、実線は整流回路100のDC特性を示し、破線は一般的なダイオードのDC特性を示す。
【0045】
図3に示されるように、一般的なダイオードのDC特性は指数関数曲線となり、Bで示す電圧(約180mV)あたりから電流が流れ始めることがわかる。一方で、整流回路100のDC特性は、一次関数直線となり、Aで示す電圧(約19mV)あたりから電流が流れ始めることがわかる。つまり、整流回路100によって、順方向電圧の電圧損失が非常に小さい理想ダイオードを実現できていることがわかる。
【0046】
以上説明した通り、整流回路100を図1に示される回路構成とすることで、電圧比較器20を動作させるための電源が不要な理想ダイオードを実現できる。言い換えると、整流回路100を図1に示される回路構成とすることで、単電源の電圧比較器20によって理想ダイオードを実現できる。
【0047】
なお、上記説明では、トランジスタ10、31および32がP型のMOSFETである例を説明したが、N型のMOSFETであってもよい。ただし、トランジスタ10、31および32がP型のMOSFETである場合には、集積化したときに、スイッチ間の電気的分離をしやすくなる。
【0048】
整流回路100を利用して、昇圧回路やSMFE回路を構成することができる。以下では、整流回路100を利用した昇圧回路およびSMFE回路について説明する。まずは、整流回路100を利用した昇圧回路について説明する。
【0049】
図4は、実施の形態に係る昇圧回路200の一例を示す回路図である。
【0050】
昇圧回路200は、複数のダイオードを備える回路であり、複数のダイオードのそれぞれは、整流回路100によって構成される。昇圧回路200は、昇圧整流回路である。図4には、昇圧回路200として、入力電圧を約2倍に昇圧する倍電圧整流回路が示されている。図4に示されるスイッチSW1およびSW2は、図1に示されるトランジスタ10および閾値制御回路30に対応し、図4に示される電圧比較器20aおよび20bは、図1に示される電圧比較器20に対応する。
【0051】
交流の入力電圧Vinが負のとき(すなわち図4に示される交流電源の「+」が記載された側と反対側から正の電圧が出力されるとき)には、電圧比較器20aの正側入力端子c1に入力される電圧よりも負側入力端子c2に入力される電圧の方が大きくなり、電圧比較器20aは、基準電圧端子c4に入力される電圧(すなわち負の電圧)を第1出力端子c3から出力する。これにより、スイッチSW1はオンとなる。また、このとき、電圧比較器20bの負側入力端子c2に入力される電圧よりも正側入力端子c1に入力される電圧の方が大きくなり、電圧比較器20bは、正側入力端子c1に入力される電圧(すなわち正の電圧)を第1出力端子c3から出力する。これにより、スイッチSW2はオフとなる。したがって、コンデンサC1に入力電圧Vinの約1倍の電圧が充電される。
【0052】
次に、交流の入力電圧Vinが正のときには、電圧比較器20aの負側入力端子c2に入力される電圧よりも正側入力端子c1に入力される電圧の方が大きくなり、電圧比較器20aは、正側入力端子c1に入力される電圧(すなわち正の電圧)を第1出力端子c3から出力する。これにより、スイッチSW1はオフとなる。また、このとき、電圧比較器20bの正側入力端子c1に入力される電圧よりも負側入力端子c2に入力される電圧の方が大きくなり、電圧比較器20bは、基準電圧端子c4に入力される電圧(すなわち負の電圧)を第1出力端子c3から出力する。これにより、スイッチSW2はオンとなる。したがって、コンデンサC2に入力電圧Vinの約2倍の電圧が充電され、出力電圧Voutとして入力電圧Vinの約2倍の電圧を出力することができる。
【0053】
図5Aは、実施の形態に係る昇圧回路200の充電特性の一例を示すグラフである。
【0054】
図5Bは、比較例に係る昇圧回路の充電特性の一例を示すグラフである。比較例に係る昇圧回路では、整流回路100ではなく、一般的なダイオードが用いられている。
【0055】
なお、図5Aおよび図5Bには、入力電圧を0.1V、0.2V、・・・、1.0Vとしたときの出力電圧が示されている(下側が0.1Vを示し、上側が1.0Vを示す)。なお、入力電圧の周波数を100Hzとしている。
【0056】
図5Aおよび図5Bに示されるように、昇圧回路200は、比較例に係る昇圧回路よりも、入力電圧の2倍により近い出力電圧を出力できていることがわかる。これは、昇圧回路200には、理想ダイオードが実現された整流回路100が用いられており、整流回路100における電圧損失を小さくすることができているためである。
【0057】
図6Aは、実施の形態に係る昇圧回路200および比較例に係る昇圧回路の電圧効率の一例を示すグラフである。図6Aにおいて、実線は昇圧回路200の電圧効率を示し、破線は比較例に係る昇圧回路の電圧効率を示す。電圧効率は、出力電圧を入力電圧で割ることで算出することができる。
【0058】
図6Bは、実施の形態に係る昇圧回路200および比較例に係る昇圧回路の電力効率の一例を示すグラフである。図6Bにおいて、実線は昇圧回路200の電力効率を示し、破線は比較例に係る昇圧回路の電力効率を示す。電力効率は、出力電圧を入力電圧で割った値を2乗することで算出することができる。
【0059】
なお、図6Aおよび図6Bには、60秒間充電したときの電圧効率および電力効率の評価値が示されている。
【0060】
図6Aに示されるように、一般的なダイオードが用いられた比較例に係る昇圧回路よりも昇圧回路200の方が、電圧効率が良いことがわかる。これは、上述したように、昇圧回路200の整流回路100における電圧損失を小さくすることができているためである。これに伴い、図6Bに示されるように、一般的なダイオードが用いられた比較例に係る昇圧回路よりも昇圧回路200の方が、電力効率が良いことがわかる。
【0061】
また、昇圧回路200を用いて、電源回路を構成してもよい。
【0062】
図7は、実施の形態に係る電源回路400の一例を示す構成図である。
【0063】
電源回路400では、ジェネレータ50で入力電圧が生成され、昇圧回路200およびDC-DCコンバータ250で入力電圧が昇圧される。ジェネレータ50で生成された入力電圧は、昇圧回路200で整流および昇圧されてコンデンサC11に充電され、コンデンサC11に充電された電圧は、DC-DCコンバータ250で昇圧されてコンデンサC12に充電される。例えば、ジェネレータ50により生成される入力電圧は、ホワイトノイズなどであってもよく、電源回路400によってエナジーハベスティングが行われてもよい。
【0064】
図8は、実施の形態に係る電源回路400における昇圧回路200およびDC-DCコンバータ250の出力の一例を示すグラフである。なお、ジェネレータ50で生成される入力電圧は、振幅0.7V、周波数100Hzの電圧である。
【0065】
図8のAで示すタイミングでコンデンサC11の充電が完了し、Bで示すタイミングでDC-DCコンバータ250が起動し、安定した出力が得られることがわかる。上述したように、昇圧回路200の整流回路100における電圧損失を小さくすることができているため、電源回路400によってエナジーハベスティングが可能となっている。
【0066】
なお、昇圧回路200として、整流回路100が2段接続された昇圧回路を例に挙げて説明したが、整流回路100が多段接続されて昇圧回路が構成されてもよい。
【0067】
図9および図10は、実施の形態に係る昇圧回路200の他の一例を示す回路図である。
【0068】
図9には、縦続接続型の多段昇圧回路(Multi-stage voltage doubler)として昇圧回路200aが示され、図10には、直列接続型の多段昇圧回路(具体的にはCockcroft-Walton回路)として昇圧回路200bを示される。
【0069】
図9に示されるように、昇圧回路200aでは、コンデンサC3に入力電圧Vinの約1倍の電圧が充電され、コンデンサC4に入力電圧Vinの約2倍の電圧が充電され、コンデンサC5に入力電圧Vinの約3倍の電圧が充電され、コンデンサC6に入力電圧Vinの約4倍の電圧が充電される。これにより、昇圧回路200aは、出力電圧Voutとして入力電圧Vinの約4倍の電圧を出力することができる。ここでは、4段の昇圧回路200aが示されているが、出力電圧Voutを段数に応じて、Vout=2N(Vin-V)と調整することができる。なお、Nは段数であり、Vは整流回路100の電圧損失である。縦続接続型の多段昇圧回路では、N段目のコンデンサには、2NVinの電圧が加わって蓄積エネルギーが大きいため、高耐圧のコンデンサが必要となる。
【0070】
図10に示されるように、昇圧回路200bでは、コンデンサC7に入力電圧Vinの約1倍の電圧が充電され、コンデンサC8に入力電圧Vinの約2倍の電圧が充電され、コンデンサC9に入力電圧Vinの約2倍の電圧が充電され、コンデンサC10に入力電圧Vinの約2倍の電圧が充電される。これにより、昇圧回路200bは、出力電圧Voutとして入力電圧Vinの約4倍の電圧を出力することができる。ここでは、4段の昇圧回路200bが示されているが、出力電圧Voutを段数に応じて、Vout=2N(Vin-V)と調整することができる。なお、Nは段数であり、Vは整流回路100の電圧損失である。直列接続型の多段昇圧回路では、各コンデンサには、2Vinの電圧が加わって蓄積エネルギーが小さいため、低耐圧のコンデンサでよい。
【0071】
図4図9および図10に示されるように、整流回路100を利用した昇圧回路200、200aおよび200bについて、各電圧比較器を動作させるための電源が不要となっていることがわかる。言い換えると、各電圧比較器を単電源の電圧比較器とすることができていることがわかる。
【0072】
次に、整流回路100を利用したSMFE回路について説明する。まず、比較例に係るSMFE回路について説明する。
【0073】
図11は、比較例に係るSMFE回路の一例を示す回路図である。
【0074】
図12は、比較例に係るSMFE回路における各信号のタイミングチャートである。図12には、入力電圧Vの波形、入力電流Iの波形、スイッチSWのオンおよびオフのタイミングならびに出力電流Ioutの波形が示される。
【0075】
SMFE回路は、Synchronized Magnetic Flux Extraction回路であり、スイッチング素子および阻止ダイオードを備える。図11では、スイッチング素子としてスイッチSWを示し、阻止ダイオードとして整流回路100ではない一般的な整流回路を示している。SMFE回路は、回路のインダクタンス成分によって生じる電圧に対する電流の位相のずれを検知することで、大きな電流を取り出す回路である。
【0076】
図11および図12に示されるように、入力電圧Vに対して入力電流Iの位相が約90°ずれていることがわかる。ピーク検知部は、入力電圧Vのゼロクロス点を検知することで、入力電流Iのピークを検知する。タイマーは、ピーク検知部の検知結果に基づいて、スイッチSWを所定のタイミングでオンおよびオフするための信号VSWをスイッチSWに出力する。図12に示されるように、入力電流IがピークのときにスイッチSWがオフとされるため、現状の電流を維持し続けようとする作用が生じ、大きな出力電流Ioutが発生する。このようにして、大きな電流を取り出すことができる。
【0077】
ただし、比較例に係るSMFE回路には、ピーク検知部およびタイマーのための電源が別途必要となるという問題がある。
【0078】
次に、実施の形態に係るSMFE回路について説明する。
【0079】
図13は、実施の形態に係るSMFE回路300の一例を示す回路図である。
【0080】
図14は、実施の形態に係るSMFE回路300における各信号のタイミングチャートである。図14には、入力電圧Vの波形、入力電流Iの波形、スイッチN-SWのオンおよびオフのタイミング、スイッチP-SWのオンおよびオフのタイミング、出力電流Iout_Pの波形ならびに出力電流Iout_Nの波形が示される。
【0081】
SMFE回路300は、スイッチング素子および阻止ダイオードを備える。図13では、スイッチング素子として整流回路100aおよび100bを示し、阻止ダイオードとして整流回路100cおよび100dを示している。整流回路100a~100dは、図1に示される整流回路100に対応する。また、スイッチN-SWおよびP-SWは、図1に示されるトランジスタ10および閾値制御回路30に対応する。
【0082】
図13および図14に示されるように、入力電圧Vに対して入力電流Iの位相が約90°ずれていることがわかる。整流回路100aおよび100bは、入力電圧Vのゼロクロス点を検知することで、入力電流Iのピークを検知する。具体的には、整流回路100aおよび100bは、入力電圧Vが負から正に移行するときに、スイッチN-SWおよびP-SWをオンとし、入力電圧Vが正から負に移行するときに、スイッチN-SWおよびP-SWをオフとする。これにより、入力電流Iが正のピークのときに大きな出力電流Iout_Pを取り出すことができ、入力電流Iが負のピークのときに大きな出力電流Iout_Nを取り出すことができる。
【0083】
整流回路100を利用したSMFE回路300では、比較例に係るSMFE回路におけるピーク検知部およびタイマーの機能を整流回路100によって実現することができる。整流回路100は、電圧比較器20を動作させるための電源が不要となっているため、電源が別途必要とならない。また、整流回路100によって理想ダイオードを実現することができるため、SMFE回路300における電圧損失を抑制することができる。
【0084】
なお、ここでは、入力電流Iが正のピークのときに大きな出力電流Iout_Pを取り出すことができ、入力電流Iが負のピークのときに大きな出力電流Iout_Nを取り出すことができるSMFE回路300を説明したが、入力電流Iが正のピークのとき、および、入力電流Iが負のピークのときのいずれか一方のときに、大きな出力電流を取り出し、他方のときには大きな出力電流を取り出せなくてもよい。つまり、整流回路100aおよび100cなどの組み合わせと、整流回路100bおよび100dなどの組み合わせとのいずれか一方が備えられていなくてもよい。
【0085】
(その他の実施の形態)
以上、本開示の一つまたは複数の態様に係る整流回路100、昇圧回路200およびSMFE回路300について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を各実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本開示は、整流回路、昇圧回路およびSMFE回路などに適用できる。
【符号の説明】
【0087】
10、31、32 トランジスタ
20、20a、20b 電圧比較器
21、22、23 トランジスタ群
30 閾値制御回路
50 ジェネレータ
100、100a、100b、100c、100d 整流回路
200、200a、200b 昇圧回路
250 DC-DCコンバータ
300 SMFE回路
400 電源回路
a1 入力端子
a2 出力端子
b1 第1端子
b2 第2端子
b3 第1制御端子
b4、e4、f4 バックゲート端子
c1 正側入力端子
c2 負側入力端子
c3 第1出力端子
c4 基準電圧端子
C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12 コンデンサ
d1 第1入力端子
d2 第2入力端子
d3 第2出力端子
e1 第3端子
e2 第4端子
e3 第2制御端子
f1 第5端子
f2 第6端子
f3 第3制御端子
入力電流
out、Iout_N、Iout_P 出力電流
N-SW、P-SW、SW、SW1、SW2 スイッチ
in、V 入力電圧
out 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14