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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134967
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】地盤注入材
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/08 20060101AFI20230921BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20230921BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20230921BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20230921BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230921BHJP
   B09B 101/90 20220101ALN20230921BHJP
【FI】
B09C1/08
B09B3/70
C09K17/06 P
C09K17/02 P
C09K3/00 S
B09B101:90
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039933
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】礒田 英典
【テーマコード(参考)】
4D004
4H026
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB03
4D004AB08
4D004AC07
4D004CA34
4D004CC03
4D004CC11
4D004CC15
4D004DA10
4D004DA20
4H026CA02
4H026CA06
4H026CB02
4H026CC01
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】1種又は2種以上の重金属等に汚染された土壌に良好な浸透性を有し、1種又は2種以上の重金属等の溶出量を土壌環境基準未満に不溶化できる経済的かつ効率的な地盤注入材を提供すること。
【解決手段】(A)カルシウムアルミネート、(B)硫酸アルミニウム、(C)アルカリ金属リン酸塩、(D)還元成分及び(E)消石灰を含有し、全混合物の最大粒径が10.5μm以下であり、かつ粒径2.2μm以下の粒子が50体積%以下である地盤注入材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルシウムアルミネート、(B)硫酸アルミニウム、(C)アルカリ金属リン酸塩、(D)還元成分及び(E)消石灰を含有し、全混合物の最大粒径が10.5μm以下であり、かつ粒径2.2μm以下の粒子が50体積%以下である地盤注入材。
【請求項2】
前記カルシウムアルミネートが、CaOとAl23の含有モル比がCaO/Al23=0.9~1.4の結晶質カルシウムアルミネート及び/又はCaOとAl23の含有モル比がCaO/Al23=1.6~2.6の非晶質カルシウムアルミネートである請求項1記載の地盤注入材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の地盤注入材(M)及び水(W)を含有し、当該地盤注入材(M)と水(W)との割合が重量比(W/M)で2~10である地盤注入材スラリー。
【請求項4】
さらに、分散剤を含有する請求項3記載の地盤注入材スラリー。
【請求項5】
ほう素、ふっ素、砒素、セレン及び六価クロムから選ばれる1種又は2種以上の汚染成分の溶出量が土壌環境基準を超える地盤に、請求項3又は4記載の地盤注入材スラリーを注入することを特徴とする、地盤注入工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又は2種以上の重金属等で汚染された土壌・地盤を不溶化、改質するための地盤注入材及び注入工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の汚染は自然由来に起因するもの、あるいは工場跡地の土壌汚染調査によって判明する人為由来に起因するものなど様々なケースがある。いずれにしても人の健康や周辺環境に悪影響を及ぼす可能性があり、更なる汚染の拡大や人への健康被害は避けなければならない。
【0003】
このため、土壌汚染の状況の把握、土壌汚染による人の健康被害の防止に関する土壌汚染対策の実施を図ることにより、国民の健康を保護することを目的として、2013年に土壌汚染対策法が施行された。したがって、土壌からの重金属等の溶出量基準の超過や含有量の超過汚染が確認され、地下水経由の摂取や口からの直接摂取等の健康リスクが脅かされる場合は、対象となる汚染土壌の遮水工、遮断工や盛土等による原位置封じ込め、セメントや薬剤等による不溶化、あるいは掘削除去、良質な土壌への入れ替え等を行わなければならない。
【0004】
土地の所有者・利用者からは、対策工として汚染源自体の除去を希望するケースも多く、汚染土壌の掘削除去を行う場合は、良質な土壌への入れ替えが必須となることから、掘削した汚染土壌の改質・適正処理や良質な土壌の確保など、対策コストが莫大になる可能性がある。
【0005】
このため、汚染土壌に含まれる有害な重金属等をセメント系固化材や各種薬剤を用いて無害化したり、固定化することによる汚染土壌の不溶化処理の採用事例も年々増加している。一方で、既設構造物等の直下に地下水が汚染された汚染土壌が存在するケースでは、汚染土壌の掘削除去工事が行えないことから、浸透性の良い薬液や地盤注入材の土粒子間隙への注入による汚染土壌不溶化のニーズが高まっている。しかしながら、地盤注入材は水ガラス系注入材が良く知られているが、シリカ分の溶脱による耐久性が低く、不溶化効果の期待はできない。また、近年では汚染土壌への地盤注入による検討が行われており、六価クロム汚染土壌を対象として、コロイダルシリカ及びタンニン酸、アミン類、ジフェノール類の中から選ばれる少なくとも1種のキレート剤からなる重金属不溶化剤(特許文献1)、ヒ素汚染土壌への注入を対象とした注入薬液とヒ素の拡散を防止する方法(特許文献2)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-249466号公報
【特許文献2】特開2012-228685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの地盤注入技術は、予め特定された1種類の重金属等による汚染土壌を対象としている技術であり、1種又は2種以上の重金属等による汚染土壌の不溶化に対応できるものではないという課題があった。
また、粉体系の地盤注入材は、水と混合して地盤注入材スラリーとし、汚染された土壌に注入されるが、汚染土壌・地盤の間隙に十分に浸透しないことが多く、期待したほどの不溶化効果が得られないという課題もあった。
したがって、本発明の課題は、1種又は2種以上の重金属等に汚染された土壌に良好な浸透性を有し、1種又は2種以上の重金属等の溶出量を土壌環境基準未満に不溶化できる経済的かつ効率的な地盤注入材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ほう素、ふっ素、砒素、セレン及び六価クロムから選ばれる1種又は2種以上の溶出量が土壌環境基準を超える地盤の不溶化を行うにあたり、カルシウムアルミネート、硫酸アルミニウム、アルカリ金属リン酸塩、還元成分及び消石灰を含有し、これら混合物の最大粒径が10.5μm以下であり、かつ2.2μm以下の粒子が50体積%以下となるように粒度分布を制御した地盤注入材のスラリーを不溶化対象地盤に注入することによって、これら重金属等の溶出量を土壌環境基準値以下に低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は次の[1]~[5]に係るものである。
[1](A)カルシウムアルミネート、(B)硫酸アルミニウム、(C)アルカリ金属リン酸塩、(D)還元成分及び(E)消石灰を含有し、全混合物の最大粒径が10.5μm以下であり、かつ粒径2.2μm以下の粒子が50体積%以下である地盤注入材。
[2]前記カルシウムアルミネートが、CaOとAl23の含有モル比がCaO/Al23=0.9~1.4の結晶質カルシウムアルミネート及び/又はCaOとAl23の含有モル比がCaO/Al23=1.6~2.6の非晶質カルシウムアルミネートである[1]記載の地盤注入材。
[3][1]又は[2]記載の地盤注入材(M)及び水(W)を含有し、当該地盤注入材(M)と水(W)との割合が重量比(W/M)で2~10である地盤注入材スラリー。
[4]さらに、分散剤を含有する[3]記載の地盤注入材スラリー。
[5]ほう素、ふっ素、砒素、セレン及び六価クロムから選ばれる1種又は2種以上の汚染成分の溶出量が土壌環境基準を超える地盤に、[3]又は[4]に記載の地盤注入材スラリーを注入することを特徴とする地盤注入工法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の地盤注入材を用いて地盤注入工法を行えば、経済的かつ効果的な処方で、汚染土壌中のほう素、ふっ素、砒素、セレン及び六価クロムから選ばれる1種又は2種以上の汚染成分の溶出量を土壌環境基準値以下に低減することができる。このため、本発明は土壌汚染対策技術の一例として極めて有用な技術である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の地盤注入材に用いる(A)カルシウムアルミネートは、基本的にはCaO原料とAl23原料を熱処理することにより得られる物質である。カルシウムアルミネートは、化学成分としてCaOとAl23からなる結晶質やガラス化が進んだ構造の水和活性物質であれば良く、CaOとAl23に加えて他の化学成分が加わった化合物、固溶体、ガラス質物質又はこれらの混合物等でもよい。前者(結晶質)としては、例えば12CaO・7Al23、CaO・Al23、3CaO・Al23、CaO・2Al23、CaO・6Al23等が挙げられ、後者(ガラス質)としては、例えば、4CaO・3Al23・SO3、12CaO・7Al23、11CaO・7Al23・CaF2、Na2O・8CaO・3Al23等が挙げられる。
【0012】
さらに、本発明で用いるカルシウムアルミネートとしては、結晶質カルシウムアルミネート又は非晶質カルシウムアルミネートが好ましく、双方を併用することも好ましい。汚染土壌中の前記汚染成分の十分な不溶化効果を得る点から、CaOとAl23の含有モル比がCaO/Al23=0.9~1.4の結晶質カルシウムアルミネートと、CaOとAl23の含有モル比がCaO/Al23=1.6~2.6の非晶質カルシウムアルミネートであることがより好ましい。また、非晶質カルシウムアルミネートのみを用いる場合は、CaOとAl23の含有モル比がCaO/Al23=1.7である12CaO・7Al23を主成分とするものが好ましい。
【0013】
CaOとAl23の含有モル比がCaO/Al23=0.9~1.4の結晶質カルシウムアルミネートは、CaO源とAl23源をそれぞれCaO換算及びAl23換算して当該モル比の範囲になるように混合したものを、例えば1600℃で加熱し、これを徐冷すれば得られる。また、徐冷は、加熱装置内での自然放冷が一般的に採用できるが、加熱装置の構造上急激な温度低下が起こる場合は、概ね10℃/分以下の降温速度になるよう加熱調整するのが好ましい。CaO源は特に限定されないが、例えば石灰石粉、消石灰や生石灰粉を好適に挙げることができ、Al23源は、例えばボーキサイト粉、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、アルミ残灰、アルミナ粉末等を好適に挙げることができる。該結晶質カルシウムアルミネートのブレーン比表面積は、粉砕・分級・篩い分け等を適宜行うことによって粒度を調整し、3000~10000cm2/gが地盤注入材の最適粒度分布に最終調整する前段階として好ましい。これと共に非結晶質カルシウムアルミネートのブレーン比表面積も概ね同じものとするのが好ましい。
【0014】
CaOとAl23の含有モル比がCaO/Al23=1.6~2.6の非晶質カルシウムアルミネートは、CaO源とAl23源をそれぞれCaO換算及びAl23換算して当該モル比の範囲に混合したものを、例えば1400~1900℃で加熱溶融し、これを急冷することによって得られる。急冷は、例えば溶融物の該加熱温度からの炉外取り出し、水中急冷、冷却ガスの吹き付け等の公知の急冷手法で行うことができる。また前記非晶質カルシウムアルミネートは、粉砕・分級・篩い分け等を適宜行うことによって粒度を調整し、前記結晶質カルシウムアルミネートと同様にブレーン比表面積で3000~10000cm2/gにしたものを用いるのが好ましい。なお、CaO源及びAl23源は、前記結晶質カルシウムアルミネートの場合と同じものが使用できる。
【0015】
本発明で用いるカルシウムアルミネートは、前記のCaOとAl23の含有モル比がCaO/Al23=0.9~1.4の結晶質カルシウムアルミネートと、前記のCaOとAl23の含有モル比がCaO/Al23=1.6~2.6の非晶質カルシウムアルミネートを、それぞれ単独で使用しても良く、任意の割合のカルシウムアルミネート混合物として用いることでも、汚染土壌中の前記汚染成分の不溶化効果を良好に発揮することができる。また、本発明で用いるカルシウムアルミネートとしては、CaO・Al23を主成分とする結晶質カルシウムアルミネート又は12CaO・7Al23を主成分とする非晶質カルシウムアルミネートを単独で使用することも好ましく、特に還元成分及び/又は消石灰と併用することで汚染土壌中の前記汚染成分の優れた不溶化効果を得ることができる。
【0016】
本発明に用いる(B)硫酸アルミニウムは、化学成分としてAl2(SO43・nH2Oで表される水和物、あるいはAl2(SO43で表される無水塩の何れでも良い。好ましくは、汚染土壌中の前記汚染成分の不溶化効果に優れていることからnが14~18の水和物が良い。硫酸アルミニウムのブレーン比表面積は、粉砕・分級・篩い分け等を適宜行うことによって粒度を調整し、3000~10000cm2/gが地盤注入材の最適粒度分布に最終調整する前段階として好ましい。
【0017】
本発明に用いる(C)アルカリ金属リン酸塩としては、リン酸ナトリウムやリン酸カリウムなどの易溶性の塩が挙げられる。本発明では、アルカリ金属リン酸塩を配合することにより、汚染土壌中の前記汚染成分の良好な不溶化効果が得られる。アルカリ金属リン酸塩としては、下記式(1)~(3)で表されるリン酸カリウムが好ましく、前記不溶化効果に優れていることから下記式(2)で表されるリン酸二水素カリウムがより好ましい。リン酸カリウムのブレーン比表面積は、粉砕・分級・篩い分け等を適宜行うことによって粒度を調整し、3000~10000cm2/gが地盤注入材の最適粒度分布に最終調整する前段階として好ましい。
【0018】
2HPO4 (1)
KH2PO4 (2)
3PO4 (3)
【0019】
本発明に用いる(D)還元成分としては、有害な重金属を含まない還元成分であればよく、硫酸第一鉄、チオ硫酸ナトリウム、ギ酸、シュウ酸などが挙げられる。取扱いが容易で、比較的安価であることから硫酸第一鉄が好適に使用できる。硫酸第一鉄としては、結晶水を7つ持つ硫酸第一鉄七水和物と結晶水を1つ持つ硫酸第一鉄一水和物があるが、保存安定性が高い硫酸第一鉄一水和物を用いるのが好ましい。硫酸第一鉄一水和物のブレーン比表面積は、粉砕・分級・篩い分け等を適宜行うことによって粒度を調整し、3000~10000cm2/gが地盤注入材の最適粒度分布に最終調整する前段階として好ましい。
【0020】
本発明に用いる(E)消石灰は、化学式Ca(OH)2で表されるカルシウムの水酸化物を主成分とするものであれば好適に使用できる。汚染土壌中の前記汚染成分の不溶化効果を良好に発揮させるためには、消石灰のブレーン比表面積は、粉砕・分級・篩い分け等を適宜行うことによって粒度を調整し、3000~10000cm2/gが地盤注入材の最適粒度分布に最終調整する前段階として好ましい。
【0021】
本発明の地盤注入材において、硫酸アルミニウム、アルカリ金属リン酸塩、還元成分及び消石灰の配合割合は、カルシウムアルミネート100質量部に対して硫酸アルミニウム5~50質量部、アルカリ金属リン酸塩0.5~10質量部、還元成分20~200質量部及び消石灰100~1000質量部となるように配合すると、汚染土壌中の前記汚染成分の良好な不溶化効果が得られるため好ましい。また、前記各成分の配合割合は、カルシウムアルミネート100質量部に対して硫酸アルミニウム5~50質量部、アルカリ金属リン酸塩0.5~10質量部、還元成分20~100質量部及び消石灰500~1000質量部となるように配合するのが、より好ましい。
【0022】
本発明の地盤注入材には、地盤への浸透性及び前記不溶化効果を損なわない限り、セメント等の固化材、炭酸カルシウム粉末等の増量材、クエン酸等の凝結調整剤などを配合しても良い。
【0023】
本発明の地盤注入材は、前記成分の全混合物の最大粒径が10.5μm以下であり、かつ2.2μm以下の粒子が50体積%以下である。このような粒度分布に調整することによって、本発明の地盤注入材をスラリーとして対象地盤(汚染土壌)に注入工法を行うことにより、当該地盤への良好な浸透性が得られ、かつ汚染土壌中の前記汚染成分の良好な不溶化効果が得られる。
このような粒度分布の調整は、通常の粉末の分級手段、例えば、前記の各成分を配合した後、分級装置等による遠心分離などの操作により行うことができる。
【0024】
本発明の地盤注入材は、通常の地盤注入工法により対象地盤に注入することにより使用することができる。具体的には、地盤注入工法は、本発明の地盤注入材と水とを混合して地盤注入材スラリーとして、対象地盤に注入することにより行われる。
ここで、地盤注入材スラリーを作製する際の地盤注入材(M)と水(W)との割合は、注入対象となる汚染土壌・地盤の土質性状や透水係数にもよるが、重量比(W/M)で2~10であることが対象地盤への浸透性などの点で好ましい。
【0025】
前記地盤注入材スラリー作製時には、前記地盤注入材以外に分散剤を添加するのが、地盤注入材の地盤への浸透性を向上させる点から好ましい。用いられる分散剤は特に限定されず、モルタルやコンクリートに使用される減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤と称されるものでよい。具体的にはメラミンスルホン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、ポリカルボン酸系減水剤などが挙げられる。このうち、ナフタレンスルホン酸系減水剤を用いるのがより好ましい。
地盤注入材に対する分散剤の添加量は、地盤注入材100質量部に対して0.5~2.0質量部とするのが好ましく、地盤への浸透性ならびに経済性の両面から1.0~1.5質量部とするのがより好ましい。
分散剤を使用する場合には、予め所定量の水に分散剤を加えた練り混ぜ水に本発明の地盤注入材を添加して地盤注入材スラリーを作液し、対象地盤に注入すればよい。
【0026】
本発明の地盤注入材と水との混合方法は、特に制限されず、地盤注入工事で使用される一般的なグラウトミキサーを用いて地盤注入材スラリーを作製して、汚染土壌・地盤の間隙に注入して不溶化処理を行うことができる。ここで、分散剤を用いる場合は、地盤注入材と水に加えて分散剤を混合すればよい。
【0027】
本発明の地盤注入材の注入を対象とする地盤は、1種又は2種以上の重金属等で汚染された自然由来に起因するもの、あるいは工場跡地等の汚染土壌・地盤である。具体的には、ほう素、ふっ素、砒素、セレン及び六価クロムから選ばれる1種又は2種以上の汚染成分の溶出量が土壌環境基準を超える地盤であるのが好ましい。
ほう素、ふっ素、砒素、セレン及び六価クロムから選ばれる1種又は2種以上の汚染成分の溶出量が土壌環境基準を超える地盤に、本発明の地盤注入材スラリーを注入すれば、汚染土壌中のほう素、ふっ素、砒素、セレン及び六価クロムから選ばれる1種又は2種以上の汚染成分の溶出量を土壌環境基準値以下に低減することができる。
【実施例0028】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
CaO源に石灰石(CaO含有量;56質量%)、Al23源にバン土頁岩(Al23含有量;88質量%)のそれぞれ粗砕粒(粒径約1mm以下)を用い、以下のA1、A2で表すカルシウムアルミネートの粉末を作製した。その作製方法は、CaO源とAl23源を所定のモル比に配合したものを、電気炉で1800℃(±50℃)に加熱し、60分間保持した後、加熱を停止して炉内で自然放冷して得た(A1)。同様に1800℃(±50℃)に加熱し、60分間保持した後、温度1800℃の電気炉から加熱物を常温下に取り出し、取り出し後は直ちに加熱物表面に流量約100cc/秒で窒素ガスを吹き付けて急冷して得た(A2)。得られた冷却物はボールミルで粉砕し、ブレーン比表面積が7000±500cm2/gとなるよう粉砕時間を変えて粉末度を調整した。
A1;CaO/Al23=モル比1.0の結晶質カルシウムアルミネート
A2;CaO/Al23=モル比1.7の非晶質カルシウムアルミネート
【0030】
A1~A2のカルシウムアルミネートと次に示すB~Eから選定される材料をブレーン比表面積が7000±500cm2/gとなるように粉末度を調整し、表1に示す配合割合でヘンシェル型ミキサーを用いて3分間乾式混合した後、分級装置による遠心分離により所定の粒度分布に調整し、地盤注入材を作製した。
B;硫酸アルミニウム14-18水和物:関東化学株式会社製 試薬
C;リン酸二水素カリウム:関東化学株式会社製 試薬
D;硫酸第一鉄1水和物:富士チタン工業株式会社製
E;消石灰:関東化学株式会社製 試薬
F;分散剤(ナフタレンスルホン酸系減水剤):MCヘルパー(太平洋マテリアル株式会社製)
G;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
W;水(上水道水)
【0031】
【表1】
【0032】
[浸透性評価試験]
浸透性の評価は、内径50mmのアクリル製モールド内に高さ100mmとなるように豊浦砂(土粒子密度ρ;2.63g/cm3)を間隙率45%で充填し模擬地盤とした。この模擬地盤に対して、本発明の地盤注入材と分散剤及び上水道水を用いて所定のスラリー濃度に調整した地盤注入材スラリー(200mL)を上端より流し込み、下端から地盤注入材スラリー懸濁液の排出が確認され、浸透性が良好なものを○、模擬地盤の途中で浸透が止まってしまったものを△、模擬地盤の砂層に全く浸透しないものを×、として目視で判定し、評価を行った。表2に本発明の地盤注入材の浸透性評価試験結果を示す。
【0033】
【表2】
【0034】
[不溶化性能確認試験]
表3に各重金属等の濃度を設定した模擬汚染間隙水の一覧表を示す。不溶化性能確認試験は、模擬汚染間隙水を本発明の地盤注入材と所定の地盤注入材スラリー濃度(模擬汚染感染水/地盤注入材比)に調整し、間隙率を40%と設定した豊浦砂(土粒子密度ρ;2.63g/cm3)と混合して、20℃の恒温室で7日間の養生後に溶出試験(環境庁告示第46号)を行った。
表4に不溶化性能確認試験結果を示す。
本発明の地盤注入材を用いた場合は、いずれも土壌環境基準値未満となっており、不溶化性能が発揮されることが確認された。また、ほう素、ふっ素、砒素、セレン及び六価クロムから選ばれる1種又は2種以上の重金属等による複合汚染土壌の不溶化に対応できることが判った。
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】