(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013498
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】透明管の製造方法および透明管の測定装置
(51)【国際特許分類】
C03B 23/047 20060101AFI20230119BHJP
G01B 11/08 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C03B23/047
G01B11/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117724
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】西村 健士朗
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 和昌
【テーマコード(参考)】
2F065
4G015
【Fターム(参考)】
2F065AA26
2F065AA27
2F065BB08
2F065BB22
2F065FF04
2F065GG04
2F065HH03
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL59
2F065QQ24
2F065QQ29
2F065QQ31
4G015BA00
(57)【要約】
【課題】透明管の外径および内径を正確に測定する。
【解決手段】透明管の製造方法は、透明管としての管ガラスGtを準備する準備工程と、前記管ガラスGtを測定する測定工程とを備える。測定工程は、管ガラスGtを横断するように平行光線L1を照射する工程と、管ガラスGtの外側を通過した平行光線および管ガラスGtを透過した平行光線を含む平行光線L1をテレセントリック光学系8で受光する工程と、テレセントリック光学系8によって集光された平行光線L1を撮像部9に入力して撮影データを出力する工程と、撮影データに基づいて管ガラスGtの外径および内径を測定する工程とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明管を準備する準備工程と、前記透明管を測定する測定工程とを備える透明管の製造方法であって、
前記測定工程は、前記透明管を横断するように平行光線を照射する工程と、前記透明管の外側を通過した前記平行光線および前記透明管を透過した前記平行光線をテレセントリック光学系で受光する工程と、前記テレセントリック光学系によって集光された前記平行光線を撮像部に入力して撮影データを出力する工程と、前記撮影データに基づいて前記透明管の外径および内径を測定する工程とを備えることを特徴とする透明管の製造方法。
【請求項2】
前記測定工程は、前記透明管の外径の測定結果に基づいて、前記透明管と前記テレセントリック光学系との間の距離を調整する工程をさらに備える請求項1に記載の透明管の製造方法。
【請求項3】
前記透明管と前記テレセントリック光学系との間の距離は、前記透明管の外径の測定結果が最小値となる距離を基準として調整する請求項2に記載の透明管の製造方法。
【請求項4】
前記テレセントリック光学系で受光する前記平行光線は、前記透明管の外側を通過する第一光線と、前記透明管の内側を透過した後に前記第一光線と平行な光軸を有する第二光線とを含み、
前記第二光線は、前記透明管の内周面で反射しながら前記透明管を透過した後に前記第一光線と平行な光軸を有する第三光線を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の透明管の製造方法。
【請求項5】
前記透明管が、管ガラスである請求項1~4のいずれか1項に記載の透明管の製造方法。
【請求項6】
前記準備工程は、前記管ガラスを成形部で成形する成形工程を含む請求項5に記載の透明管の製造方法。
【請求項7】
前記測定工程では、前記成形部に連続する前記管ガラスを製造ライン上で測定する請求項6に記載の透明管の製造方法。
【請求項8】
透明管の測定装置であって、
前記透明管を横断するように平行光線を照射する照射部と、
前記透明管の外側を通過した前記平行光線および前記透明管を透過した前記平行光線を受光するテレセントリック光学系と、
前記テレセントリック光学系によって集光された前記平行光線を入力することにより撮影データを出力する撮像部と、
前記撮影データに基づいて前記透明管の外径および内径を測定する測定部とを備えることを特徴とする透明管の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明管の製造方法および透明管の測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管ガラスの製造方法としては、例えばリドロー法が用いられる場合がある。リドロー法は、管状のガラス母材を加熱しながら線引きすることにより、管ガラスを得る方法である。
【0003】
例えば特許文献1には、このようなリドロー法により成形される管ガラスを所定長さに切断する前に、レーザ光を用いて管ガラスの内径を測定し、その内径の測定結果に基づいて線引き速度を調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、管ガラスの一方側に配置されたレーザ発光部からレーザ光を照射し、管ガラスの他方側に透過した透過光をレーザ受光部で受光することが開示されている。このようにレーザ受光部で透過光を受光する場合、透過光を集光するためのレンズを含む光学系が必要となるが、同文献には光学系が全く開示されていない。そのため、光学系によっては、測定される内径の値が大幅に変動するおそれがある。
【0006】
また、特許文献1では、管ガラスの外径を測定することは開示されていないが、管ガラス等の透明管の品質を管理する上では、内径だけではなく外径も正確に測定する必要がある。
【0007】
本発明は、透明管の外径および内径を正確に測定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、透明管を準備する準備工程と、透明管を測定する測定工程とを備える透明管の製造方法であって、測定工程は、透明管を横断するように平行光線を照射する工程と、透明管の外側を通過した平行光線および透明管を透過した平行光線をテレセントリック光学系で受光する工程と、テレセントリック光学系によって集光された平行光線を撮像部に入力して撮影データを出力する工程と、撮影データに基づいて透明管の外径および内径を測定する工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、平行光線の光軸と平行な光軸を有するものは、テレセントリック光学系によって撮像部に入力されるが、透明管を透過して平行光線の光軸と平行でなくなった光線は、テレセントリック光学系によって撮像部への入力が阻止される。そのため、撮像部が出力する撮像データには、透明管の外径および内径に対応した所定の明暗が生じ、この明暗に基づいて透明管の外径および内径を測定できる。そして、テレセントリック光学系の場合、透明管とテレセントリック光学系との間の距離が変化しても、透明管の像の大きさが実質的に変動しないため、撮影データに基づいて透明管の外径および内径を正確に測定できる。
【0010】
(2) 上記の(1)の構成において、測定工程は、透明管の外径の測定結果に基づいて、透明管とテレセントリック光学系との間の距離を調整する工程をさらに備えることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、透明管に正確にピント面を合わせ、像ボケを抑えることができる。その結果、透明管の外径および内径をより正確に測定できる。なお、透明管の内径の測定結果は、透明管の曲率の影響等を受けやすく、透明管の内径の測定結果に基づいてピント面を調整することは極めて困難である。したがって、透明管の外径の測定結果に基づいてピント面(透明管とテレセントリック光学系との間の距離)を調整することが重要である。
【0012】
(3) 上記の(2)の構成において、透明管とテレセントリック光学系との間の距離は、透明管の外径の測定結果が最小値となる距離を基準として調整することが好ましい。
【0013】
テレセントリック光学系の像ボケは、最良のピント面から前後(平行光線の光軸方向に沿う方向の前後)にほぼ対称に生じ得る。そして、最良のピント面では、透明管の外径の測定結果は最小値となり、最良のピント面から外れるに連れて、透明管の外径の測定結果は増加する傾向にある。したがって、上記の構成のように、透明管とテレセントリック光学系との間の距離は、透明管の外径の測定結果が最小値となる距離を基準として調整することが好ましい。
【0014】
(4) 上記の(1)~(3)の構成において、テレセントリック光学系で受光する平行光線は、透明管の外側を通過する第一光線と、透明管の内側を透過した後に第一光線と平行な光軸を有する第二光線とを含み、第二光線は、透明管の内周面で反射しながら透明管の内側を透過した後に第一光線と平行な光軸を有する第三光線を含むことが好ましい。
【0015】
このようにすれば、撮影データにおいて、例えば、第一光線と第二光線との境界を示す位置に外径に対応する情報が形成され、第三光線を示す位置に内径に対応する情報が形成される。したがって、撮影データに基づいて透明管の外径および内径をより正確に測定できる。
【0016】
(5) 上記の(1)~(4)の構成において、透明管は、管ガラスであってもよい。
【0017】
このようにすれば、例えば、光通信コネクタ用フェルール、光ファイバー保持用キャピラリ、光通信デバイス用ガラスチューブ等の寸法規格が厳しい分野においても、寸法規格を満たす管ガラスを安定的に供給することが可能となる。
【0018】
(6) 上記の(5)の構成において、準備工程は、管ガラスを成形部で成形する成形工程を含んでいてもよい。
【0019】
(7) 上記の(6)の構成において、測定工程では、成形部に連続する管ガラスを製造ライン上で測定することが好ましい。
【0020】
このようにすれば、管ガラスの外径および内径の測定を、管ガラスの製造ライン上での測定、すなわちオンライン方式で行うことができる。
【0021】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、透明管の測定装置であって、透明管を横断するように平行光線を照射する照射部と、透明管の外側を通過した平行光線および透明管を透過した平行光線を受光するテレセントリック光学系と、テレセントリック光学系によって集光された平行光線を入力することにより撮影データを出力する撮像部と、撮影データに基づいて透明管の外径および内径を測定する測定部とを備えることを特徴とする。
【0022】
このようにすれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、透明管の外径および内径を正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る透明管の製造方法に用いられる製造装置を示す図である。
【
図2】
図1のA-A断面図であって、本実施形態に係る透明管の測定装置を示す図である。
【
図5】撮影画像を画像処理した結果の一例を示す図である。
【
図6】管ガラスの外径の測定結果と、管ガラスとテレセントリック光学系との間の距離WDとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る透明管の製造方法および透明管の測定装置について図面を参照しながら説明する。なお、図中のXYZは直交座標系である。X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る透明管の製造方法に用いられる製造装置1は、リドロー法を用いて、透明管としての管ガラスGを製造する装置である。
【0027】
製造装置1は、送り機構2と、加熱炉3と、引張ローラ4と、カッター5とを、上方からこの順に備える。
【0028】
送り機構2は、管状のガラス母材Gmを支持しながら、ガラス母材Gmを所定速度で下方に送り出す装置である。
【0029】
加熱炉3は、送り機構2の下降に伴って送り出されるガラス母材Gmを、送り機構2の下方でヒータ3aにより加熱して軟化させる装置であり、管ガラスを成形する成形部として機能する。
【0030】
引張ローラ4は、加熱炉3で軟化したガラス母材Gmに連続する長尺な管ガラスGtを、加熱炉3の下方で引っ張る装置である。これにより、軟化状態にあるガラス母材Gmが線引きされ、効率よく細管化される。なお、ガラス母材Gmの線引き速度は、例えば、送り機構2及び/又は引張ローラ4により調整される。
【0031】
カッター5は、引張ローラ4の下方で長尺な管ガラスGtを所定長さで切断する装置である。これにより、長尺な管ガラスGtから、短尺な管ガラスGが順次得られる。
【0032】
製造装置1は、加熱炉3と引張ローラ4との間で管ガラスGtを測定する測定装置6をさらに備える。なお、本実施形態では、測定装置6を管ガラスの製造ライン上で使用するオンライン方式の測定を例示するが、測定装置6は、管ガラスの製造ライン以外で使用するオフライン方式の測定にも適用できる。
【0033】
図2に示すように、測定装置6は、管ガラスGtを横断するように平行光線L1を照射する照射部7と、管ガラスGtの外側を通過した平行光線および管ガラスGtを透過した平行光線を含む平行光線L1を受光するテレセントリック光学系8と、テレセントリック光学系8によって集光された平行光線L1を入力することにより撮影データを出力する撮像部9と、撮影データに基づいて管ガラスGtの外径および内径を測定する測定部10とを備える。
【0034】
本実施形態では、照射部7とテレセントリック光学系8とは、管ガラスGtを挟んで、X方向に延びる同一直線上で対向するように配置されている。
【0035】
照射部7は、LED等の光源11と、光源11から出射された光線(拡散光線)L0から、管ガラスGtを横断する平面に沿って伝播する平行光線L1を生成するコリメータレンズ12とを備える。本実施形態では、光源11およびコリメータレンズ12は、筐体13に収容されている。
【0036】
照射部7は、管ガラスGtを含む横断平面全域に複数の平行光線L1が同時に存在する平行光線群を構成する。換言すれば、照射部7は、光線を走査するためのポリゴンミラーなどの走査ミラーを備えていない。平行光線L1が伝播する管ガラスGtを横断する平面は、管ガラスGtの管軸と直交する平面であることが好ましい。
【0037】
なお、照射部7の構成は、平行光線L1を生成できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、照射部7は、LED等の光源をY方向に沿ってライン状に複数配列したライン光源を備えるものであってもよい。また、照射部7は、レーザ発光部から出射されたレーザ光を走査ミラーによって、管ガラスGtを横断する平面上に走査するものであってもよい。
【0038】
テレセントリック光学系8は、物体側レンズ14と、像側レンズ15と、物体側レンズ14と像側レンズ15との間に位置する両レンズ14,15の焦点位置Fに配置された絞り16とを備える。つまり、本実施形態では、テレセントリック光学系8は、いわゆる両側テレセントリック光学系である。この光学系8によれば、管ガラスGtとテレセントリック光学系8との間の距離(厳密には、管ガラスGtの中心位置と、物体側レンズ14の中心位置との間の距離)WDが変化しても、管ガラスGtの像の大きさは実質的に変化しない。本実施形態では、テレセントリック光学系8は、筐体17に収容されている。
【0039】
図3に示すように、テレセントリック光学系8は、物体側レンズ14と、物体側レンズ14の焦点位置Fに配置された絞り16とを備え、像側レンズがテレセントリック性能を有さないものであってもよい。つまり、テレセントリック光学系8は、いわゆる物体側テレセントリック光学系であってもよい。なお、
図2及び
図3において、各レンズ14,15のレンズ構成(レンズ枚数やレンズ形状等)は、簡略化して図示している。
【0040】
撮像部9は、テレセントリック光学系8によって集光された平行光線L1が入力されると、その画素位置での輝度(光量レベル)を測定する撮像素子である。これにより、撮像部9は、撮像データとして、例えば
図4に示すように、測定された輝度に応じた明部18~22と暗部23~26を含む撮影画像データ27を出力する。なお、撮像部9の画素数、テレセントリック光学系8に含まれるレンズ14,15のレンズ倍率等の性能は、管ガラスGtの寸法や必要精度に合わせて選定される。
【0041】
測定部10は、撮像画像データ27を画像処理し、例えば
図5に示すように、複数の信号ピーク28~32を含む画像処理データ33を得る。画像処理データ33では、撮像画像データ27で輝度が高い部分に信号ピーク28~32が形成される。測定部10は、これら信号ピーク28~32に基づいて、管ガラスGtの外径および内径を測定(演算)する。なお、測定部10は、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末などの演算装置により構成され、撮像部9と有線又は無線で接続される。
【0042】
測定装置6は、管ガラスGtとテレセントリック光学系8との間の距離WD(X方向の距離)を調整するための調整機構(図示省略)を備える。本実施形態では、調整機構は、テレセントリック光学系8が載置された移動台を備え、この移動台をX方向に移動させることにより、距離WDが調整されるようになっている。なお、本実施形態では、テレセントリック光学系8と撮像部9とがユニット化されており、移動台の移動によって、テレセントリック光学系8及び撮像部9が一体的に移動するようになっている。
【0043】
次に、以上のように構成された製造装置1を用いた透明管の製造方法を説明する。
【0044】
本実施形態に係る製造方法は、管ガラスGtを準備する準備工程と、管ガラスGtを測定する測定工程とを含む。
【0045】
準備工程は、リドロー法により、ガラス母材Gmから管ガラスGtを成形する成形工程を含む。詳細には、ガラス母材Gmを送り機構2により所定速度で下方に送り出しながら、加熱炉3で加熱して軟化させる。その後、この軟化したガラス母材Gmを引張ローラ4で下方に線引きすることにより、管ガラスGtを成形する。管ガラスGtは、カッター5で所定長さごとに切断され、製品となる管ガラスGが順次得られる。
【0046】
管ガラスGは、例えば、光通信コネクタ用フェルール、光ファイバー保持用キャピラリ、光通信デバイス用ガラスチューブ等として利用される。
【0047】
管ガラスGtの外径(直径)は、0.1~10.0mmであることが好ましく、0.2~7.0mmであることがより好ましく、0.3~5.0mmであることが更に好ましい。一方、管ガラスGtの内径(直径)は、0.01~8.0mmであることが好ましく、0.015~5.0mmであることがより好ましく、0.02~3.5mmであることが更に好ましい。なお、切断前の管ガラスGtの外径および内径は、切断後の管ガラスGの外径および内径と実質的に同じである。
【0048】
測定工程では、成形部としての加熱炉3に位置するガラス母材Gmに連続する管ガラスGtを製造ライン上で測定する。つまり、測定工程では、オンライン方式の測定を行う。測定工程では、加熱炉3と引張ローラ4との間に位置する管ガラスGtを測定する。これは、加熱炉3に近い位置で管ガラスGtを測定し、その測定結果を製造条件の各種パラメータの調整に迅速にフィードバックするためである。なお、測定工程では、引張ローラ4とカッター5との間に位置する管ガラスGtを測定するようにしてもよい。
【0049】
図2及び
図3に示すように、測定工程は、照射部7を用いて管ガラスGtを横断するように平行光線L1を照射する工程と、管ガラスGtの外側を通過した平行光線および管ガラスGtを透過した平行光線を含む平行光線L1をテレセントリック光学系8で受光する工程と、テレセントリック光学系8によって集光された平行光線L1を撮像部9に入力して撮影画像データ27を出力する工程と、測定部10において、撮影画像データ27に基づいて管ガラスGtの外径および内径を測定する工程とを備える。
【0050】
図2及び
図3には、照射部7から照射された平行光線L1の進路を示している。照射部7から照射された平行光線L1は、管ガラスGtの外側を通過する光線(第一光線)L2,L3と、管ガラスGtの内側を透過する光線(第二光線)L4とを含む。
【0051】
管ガラスGtの外側を通過する光線L2,L3は、管ガラスGtの影響を受けないため、管ガラスGtに照射前の平行光線L1と平行な光軸を維持する。
【0052】
一方、管ガラスGtの内側を透過する光線L4は、管ガラスGtを透過した後に、管ガラスGtに照射前の平行光線L1と平行な光軸を有する光線L5,L6,L7を含む。光線L6は、管ガラスGtの外周面Gaおよび内周面Gbで屈折することなく管ガラスGtの中空部を直進し、管ガラスGtに照射前の平行光線L1と平行な光軸を有する光線(第四光線)である。光線L6は、管ガラスGtの外周面Gaおよび内周面Gbに対して垂直に入射すると共に、管ガラスGtの中心を通過する。光線L5,L7は、管ガラスGt内に入射後内周面Gbで全反射して外へ出た後に、再び管ガラスGtに照射前の平行光線L1と平行な光軸を有する光線(第三光線)である。
【0053】
その他、管ガラスGtの内側を透過する光線L4は、管ガラスGtの外周面Gaや内周面Gbで屈折や反射して外へ出るが、管ガラスGtに照射前の平行光線L1と平行な光軸を有さなくなる光線を含む。
【0054】
テレセントリック光学系8の物体側レンズ14は、管ガラスGtに照射前の平行光線L1と平行な光軸を有する光線のみを焦点位置Fに集光させる。焦点位置Fには、絞り16が配置されているため、焦点位置Fを通過しない光線は、絞り16によって遮断される。つまり、テレセントリック光学系8は、照射部7から照射された平行光線L1と平行な光軸を有する光線のみを撮像部9まで導く。したがって、管ガラスGtの外側を通過する光線L2,L3および管ガラスGtの内側を透過する光線L4のうち、管ガラスGtに照射前の平行光線L1と平行な光軸を有する光線L2,L3,L5,L6,L7が撮像部9に入力される。その結果、光線L2,L3,L5,L6,L7が入力される画素位置では高輝度な信号が測定され、それ以外の画素位置では低輝度な信号が測定される。つまり、
図4に示すように、撮像部9から出力される撮影画像データ27では、光線L2に対応する位置に第一明部18が形成され、光線L5に対応する位置に第二明部19が形成され、光線L6に対応する位置に第三明部20が形成され、光線L7に対応する位置に第四明部21が形成され、光線L3に対応する位置に第五明部22が形成される。
【0055】
そして、測定部10において、この撮影画像データ27の輝度情報に基づいて画像処理を施すと、
図5に示すような画像処理データ33が得られる。画像処理データ33では、第一明部18(光線L2)に対応する位置に第一信号ピーク28が形成され、第二明部19(光線L5)に対応する位置に第二信号ピーク29が形成され、第三明部20(光線L6)に対応する位置に第三信号ピーク30が形成され、第四明部21(光線L7)に対応する位置に第四信号ピーク31が形成され、第五明部22(光線L3)に対応する位置に第五信号ピーク32が形成される。そして、第一信号ピーク28、第二信号ピーク29、第四信号ピーク31、第五信号ピーク32に基づいて、管ガラスGtの外径と内径が測定される。
【0056】
外径および内径の測定結果は、管ガラスGtの製造条件にフィードバックされ、必要に応じて製造条件の各種パラメータ(例えば線引き速度など)が調整される。
【0057】
また本実施形態では、測定工程は、管ガラスGtの外径の測定結果に基づいて、管ガラスGtとテレセントリック光学系8との間の距離WDを調整する工程をさらに備える。詳細には、距離WDを調整する工程では、まず、テレセントリック光学系8をX方向に沿って前後に移動させることにより、距離WDを変化させながら管ガラスGtの外径を順次測定する。これにより、
図6に示すような距離WDを変数とする管ガラスGtの測定外径の変化態様(増減傾向)を測定する。測定外径の変化態様は、測定外径の最小値を基準として、その両側でほぼ対称的な増加傾向を示す。次に、管ガラスGtの外径をOD、外径公差をa、管ガラスGtの測定外径の最小値をODminとした場合に、ODの測定値が、ODmin±a×2/3を満たす距離WDの位置に、管ガラスGtとテレセントリック光学系8とを配置することが好ましい。このようにすれば、管ガラスGtに正確にピント面を合わせ、像ボケを抑えることができる。その結果、管ガラスGtの外径および内径をより正確に測定できる。更に、外径および内径の測定精度を向上させる観点から、ODの測定値が、ODmin±a×1/3を満たす距離WDの位置に、管ガラスGtとテレセントリック光学系8とを配置することがより好ましく、ODmin±a×1/10を満たす距離WDの位置に、管ガラスGtとテレセントリック光学系8とを配置することが特に好ましい。なお、
図6の測定値は、外径2.5mm、内径0.126mmのホウケイ酸ガラスの管ガラスを用いて実施したものである。
【0058】
上記の距離WDを調整する工程は、管ガラスGtの製造の初期段階で行うことが好ましいが、製造中の適時に行ってもよい。また、本実施形態では、距離WDを調整する際に、管ガラスGtおよびテレセントリック光学系8のうち、テレセントリック光学系8のみを移動させているが、管ガラスGtおよびテレセントリック光学系8のうちの少なくとも一方を移動させればよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態に係るガラス物品の製造方法について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を施すことが可能である。
【0060】
上記の実施形態では、リドロー法を用いて管ガラスを成形する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。管ガラスの成形工程では、ダンナー法、ダウンドロー法、アップドロー法などの他の公知の成形方法を適用できる。
【0061】
上記の実施形態では、透明管として管ガラスを例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、透明管は、樹脂管などであってもよい。ここで、透明管の厚み1mmでの透過率は、150nm~20μmの範囲のいずれかの波長において20%以上であることが好ましく、200nm~1800nmの範囲のいずれかの波長における透過率が30%以上であることがより好ましく、380nm~780nmのいずれかの波長における透過率が40%以上であることが更に好ましい。
【0062】
上記の実施形態において、透明管を準備する準備工程は、予め所定長さに切断された透明管を準備する工程であってもよい。この場合、透明管を測定する測定工程は、予め所定長さに切断された透明管を測定する。
【実施例0063】
上記の測定装置において、照射部とテレセントリック光学系との間に管ガラスを静置し、外径および内径を測定し、測定値を250回平均した値を測定平均値として500点取得した。測定のばらつきとして、500回の測定平均値より標準偏差を計算した。外径および内径のそれぞれ異なる寸法のばらつきを評価するために変動係数τを定義する。τは各寸法の測定平均値ごとの、ばらつきの相対的な指標である。
τ=(標準偏差÷平均値)×100 ・・・(1)
【0064】
外径と内径が異なる4種類の品種の外径および内径を測定した結果を表1に示す。品種A~Dはいずれも同一組成のホウケイ酸ガラスの管ガラスである。品種A~Dにおいて、外径τおよび内径τはいずれも小さい値であるため、管ガラスの大きさによらず、その外径および内径を正確に測定できていることが分かる。
【0065】