(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134992
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】折板屋根の留め具受け部材、留め具部材、およびこれを用いた改修屋根の構造、ならびに屋根の改修方法
(51)【国際特許分類】
E04D 3/00 20060101AFI20230921BHJP
E04D 3/36 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
E04D3/00 P
E04D3/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039980
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】畠山 大地
(72)【発明者】
【氏名】竹國 宏
(72)【発明者】
【氏名】與田 香二
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS02
2E108AZ01
2E108BB04
2E108BN06
2E108CC01
2E108DF06
2E108DF07
2E108EE01
2E108ER03
2E108FF03
2E108GG20
(57)【要約】
【課題】 既設折板屋根の上に新設折板屋根を、簡単かつ強固に固定できる、折板屋根の留め具受け部材、留め具部材、およびこれを用いた改修屋根の構造、ならびに屋根の改修方法を提供する。
【解決手段】 折板屋根の山部に設けられたはぜ締め部で屋根パネル同士が連結されて構成された既設折板屋根の上に新設折板屋根の留め具を固定するために用いられる留め具受け部材であって、前記既設折板屋根の前記山部の上方に前記はぜ締め部を覆うように配置され、前記新設折板屋根の留め具を固定可能に形成された留め具固定部と、前記留め具固定部の両側から前記既設折板屋根の前記山部を挟むように下方に延出し、前記既設折板屋根の前記山部の両側面に面接触する状態に固定可能に形成された一対の支持部とを有する、留め具受け部材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板屋根の山部に設けられたはぜ締め部で屋根パネル同士が連結されて構成された既設折板屋根の上に新設折板屋根の留め具を固定するために用いられる留め具受け部材であって、
前記既設折板屋根の前記山部の上方に前記はぜ締め部を覆うように配置され、前記新設折板屋根の留め具を固定可能に形成された留め具固定部と、
前記留め具固定部の両側から前記既設折板屋根の前記山部を挟むように下方に延出し、前記既設折板屋根の前記山部の両側面に面接触する状態に固定可能に形成された一対の支持部と
を有する、留め具受け部材。
【請求項2】
前記既設折板屋根の前記山部の両側面は、前記山部の幅が下から上に向かうにつれて縮小するように傾斜しており、
前記支持部は、前記既設折板屋根の前記山部の両側面に面接触するように傾斜している、請求項1に記載の留め具受け部材。
【請求項3】
前記支持部および前記留め具固定部は、平板を折り曲げて形成されている、請求項1または2に記載の留め具受け部材。
【請求項4】
前記支持部が前記既設折板屋根の前記山部の両側面に面接触する状態に固定されるときに、前記既設折板屋根の前記山部の上面に当接するように形成された位置決め部をさらに有する、請求項1~3のいずれかに記載の留め具受け部材。
【請求項5】
前記支持部が前記既設折板屋根の前記山部の両側面に面接触する状態に固定されるときに、前記既設折板屋根の前記山部の上面に当接するように形成された位置決め部をさらに有し、
前記支持部、前記留め具固定部、および前記位置決め部は、平板を折り曲げて形成されている、請求項1または2に記載の留め具受け部材。
【請求項6】
前記位置決め部の延出長さは、前記既設折板屋根の前記はぜ締め部の根元の凹部に嵌入する寸法に形成されている、請求項4または5に記載の留め具受け部材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の留め具受け部材の前記留め具固定部に、前記新設折板屋根の留め具が固定されてなる、留め具部材。
【請求項8】
前記新設折板屋根は、折板屋根の山部に設けられたはぜ締め部で屋根パネル同士が連結されて構成されており、
前記新設折板屋根の前記留め具は、前記新設折板屋根の前記はぜ締め部に共締めされるタブと、前記タブを前記新設折板屋根のはぜ締め部に沿う方向に摺動可能に支持する留め具本体とを有する、請求項7に記載の留め具部材。
【請求項9】
前記タブの下部が、前記留め具本体に設けられた摺動軸に巻き立てられることで、前記タブが摺動可能とされている、請求項8に記載の留め具部材。
【請求項10】
前記新設折板屋根の前記留め具が前記留め具受け部材の前記留め具固定部にスクリューねじで固定されている、請求項7~9のいずれかに記載の留め具部材。
【請求項11】
請求項7~10のいずれかに記載の留め具部材を介して、前記既設折板屋根の上に前記新設折板屋根が設置されている、改修屋根の構造。
【請求項12】
前記留め具受け部材の前記留め具固定部の上に、前記新設折板屋根の谷部を支持する屋根材受けレールが架設されている、請求項11に記載の改修屋根の構造。
【請求項13】
前記屋根材受けレールがZ形の断面形状を有する、請求項12に記載の改修屋根の構造。
【請求項14】
前記新設折板屋根のうちの軒先部分の谷部が、前記屋根材受けレールに固定されている、請求項12または13に記載の改修屋根の構造。
【請求項15】
前記留め具受け部材の前記支持部が、前記既設折板屋根の前記山部の前記両側面に、ブラインドファスナにより固定されている、請求項11~14のいずれかに記載の改修屋根の構造。
【請求項16】
折板屋根の山部に設けられたはぜ締め部で屋根パネル同士が連結されて構成された既設折板屋根の上に新設折板屋根を設置する、屋根の改修方法であって、
前記既設折板屋根の前記山部の両側面に、請求項1~6のいずれかに記載の留め具受け部材の前記支持部を固定し、
前記留め具受け部材の前記留め具固定部に、前記新設折板屋根の留め具を固定し、
前記新設折板屋根の隣接する屋根パネルの端部同士を、前記留め具に設けられたタブと共にはぜ締めして、前記屋根パネルを相互に連結するとともに前記留め具に固定する、屋根の改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根の留め具受け部材、留め具部材、およびこれを用いた改修屋根の構造、ならびに屋根の改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設折板屋根が腐食などによって劣化したときに、既設折板屋根を撤去せずに残したまま、その上に新設折板屋根を設置する改修方法がある。この改修方法では、既設折板屋根を撤去する必要がないため、改修作業の省力化、工程の短縮、コストダウンを図ることができる。また、既設折板屋根を撤去する場合に発生する粉塵の飛散や部材の落下の恐れがなく、さらには撤去材の処分が不要であるため、改修作業の安全性確保や環境保全の面でも有利である。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、既設折板屋根のはぜ締め部に新設折板屋根の取付金物を装着し、この取付金物に新設折板屋根を固定することで、既設折板屋根の上に新設折板屋根を設置する改修方法が開示されている。これらの技術では、既設折板屋根のはぜ締め部の突起を両側から挟み込むように取付金物を装着し、取付金物の上部に設けられたタブが新設折板屋根のはぜ締め部に共締めされることにより、既設折板屋根の上に新設折板屋根が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-035919号公報
【特許文献2】特開2021-110090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および特許文献2に開示される改修方法では、新設折板屋根の取付金物を、既設折板屋根のはぜ締め部を挟み込むように装着しているため、新設折板屋根の固定強度を十分に確保することが難しい。例えば、台風時などの強風時に、屋根が吹上圧を受けて、新設折板屋根の取付金物に大きな引抜力が作用すると、既設折板屋根のはぜ締め部の突起が大きく変形し、既設折板屋根のはぜ締め部を挟み込む取付金物のかみ合わせが緩んで外れるおそれがある。
【0006】
特に、既設折板屋根のはぜ締め部の突起が小さい形状の場合は、新設折板屋根の固定強度を十分に確保することが極めて難しい。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、既設折板屋根の上に新設折板屋根を、簡単かつ強固に固定できる、折板屋根の留め具受け部材、留め具部材、およびこれを用いた改修屋根の構造、ならびに屋根の改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 折板屋根の山部に設けられたはぜ締め部で屋根パネル同士が連結されて構成された既設折板屋根の上に新設折板屋根の留め具を固定するために用いられる留め具受け部材であって、前記既設折板屋根の前記山部の上方に前記はぜ締め部を覆うように配置され、前記新設折板屋根の留め具を固定可能に形成された留め具固定部と、前記留め具固定部の両側から前記既設折板屋根の前記山部を挟むように下方に延出し、前記既設折板屋根の前記山部の両側面に面接触する状態に固定可能に形成された一対の支持部とを有する、留め具受け部材。
[2] 前記既設折板屋根の前記山部の両側面は、前記山部の幅が下から上に向かうにつれて縮小するように傾斜しており、前記支持部は、前記既設折板屋根の前記山部の両側面に面接触するように傾斜している、[1]に記載の留め具受け部材。
[3] 前記支持部および前記留め具固定部は、平板を折り曲げて形成されている、[1]または[2]に記載の留め具受け部材。
[4] 前記支持部が前記既設折板屋根の前記山部の両側面に面接触する状態に固定されるときに、前記既設折板屋根の前記山部の上面に当接するように形成された位置決め部をさらに有する、[1]~[3]のいずれかに記載の留め具受け部材。
[5] 前記支持部が前記既設折板屋根の前記山部の両側面に面接触する状態に固定されるときに、前記既設折板屋根の前記山部の上面に当接するように形成された位置決め部をさらに有し、前記支持部、前記留め具固定部、および前記位置決め部は、平板を折り曲げて形成されている、[1]または[2]に記載の留め具受け部材。
[6] 前記位置決め部の延出長さは、前記既設折板屋根の前記はぜ締め部の根元の凹部に嵌入する寸法に形成されている、[4]または[5]に記載の留め具受け部材。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の留め具受け部材の前記留め具固定部に、前記新設折板屋根の留め具が固定されてなる、留め具部材。
[8] 前記新設折板屋根は、折板屋根の山部に設けられたはぜ締め部で屋根パネル同士が連結されて構成されており、前記新設折板屋根の前記留め具は、前記新設折板屋根の前記はぜ締め部に共締めされるタブと、前記タブを前記新設折板屋根のはぜ締め部に沿う方向に摺動可能に支持する留め具本体とを有する、[7]に記載の留め具部材。
[9] 前記タブの下部が、前記留め具本体に設けられた摺動軸に巻き立てられることで、前記タブが摺動可能とされている、[8]に記載の留め具部材。
[10] 前記新設折板屋根の前記留め具が前記留め具受け部材の前記留め具固定部にスクリューねじで固定されている、[7]~[9]のいずれかに記載の留め具部材。
[11] [7]~[10]のいずれかに記載の留め具部材を介して、前記既設折板屋根の上に前記新設折板屋根が設置されている、改修屋根の構造。
[12] 前記留め具受け部材の前記留め具固定部の上に、前記新設折板屋根の谷部を支持する屋根材受けレールが架設されている、[11]に記載の改修屋根の構造。
[13] 前記屋根材受けレールがZ形の断面形状を有する、[12]に記載の改修屋根の構造。
[14] 前記新設折板屋根のうちの軒先部分の谷部が、前記屋根材受けレールに固定されている、[12]または[13]に記載の改修屋根の構造。
[15] 前記留め具受け部材の前記支持部が、前記既設折板屋根の前記山部の前記両側面に、ブラインドファスナにより固定されている、[11]~[14]のいずれかに記載の改修屋根の構造。
【0009】
ここで、ブラインドファスナとは、被締結部材の表面側のみからの作業により、ファスナの先端部が被締結部材の裏面側で横方に広がることで、被締結部材の締結が行われるものをいう。具体的には、被締結部材に設けた孔にブラインドファスナが挿入された状態で、ファスナ先端部と連結された芯棒を引き抜いたり、ファスナ先端部に設けられたねじ穴にねじを螺入するなどにより、ファスナ先端部が手前に引き寄せられるように変形する。この結果、ファスナ先端部が横方に拡がって被締結部材の裏面側に係合し、被締結部材の締結が行われる。ブラインドファスナの具体例としては、例えば、ブラインドリベット、バルブタイトリベット、プッシュボタンクリップ等のクリップ、ポップナット、ジャックナット、ウェルナット、スクリューグロメットなどが挙げられる。
[16] 折板屋根の山部に設けられたはぜ締め部で屋根パネル同士が連結されて構成された既設折板屋根の上に新設折板屋根を設置する、屋根の改修方法であって、前記既設折板屋根の前記山部の両側面に、[1]~[6]のいずれかに記載の留め具受け部材の前記支持部を固定し、前記留め具受け部材の前記留め具固定部に、前記新設折板屋根の留め具を固定し、前記新設折板屋根の隣接する屋根パネルの端部同士を、前記留め具に設けられたタブと共にはぜ締めして、前記屋根パネルを相互に連結するとともに前記留め具に固定する、屋根の改修方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の折板屋根の留め具受け部材、留め具部材、およびこれを用いた改修屋根の構造、ならびに屋根の改修方法によれば、新設折板屋根の留め具を固定するために用いられる留め具受け部材の一対の支持部が、既設折板屋根の山部を挟むようにして、既設折板屋根の山部の両側面に面接触する状態に固定される。よって、既設折板屋根の屋根パネルのはぜ締め部の大きさや形状の影響を受けることなく、既設折板屋根の上に新設折板屋根を簡単かつ強固に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の折板屋根の留め具受け部材、留め具部材、およびこれを用いた改修屋根の構造、ならびに屋根の改修方法の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の折板屋根の留め具受け部材、留め具部材、およびこれを用いた改修屋根の構造、ならびに屋根の改修方法の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の折板屋根の留め具受け部材、留め具部材、およびこれを用いた改修屋根の構造、ならびに屋根の改修方法の実施形態について、具体的に説明する。
【0013】
図1は、折板屋根の留め具受け部材、留め具部材、およびこれを用いた改修屋根の構造、ならびに屋根の改修方法を示す断面図であり、
図2は、
図1の側面図である。
【0014】
本実施形態の折板屋根の留め具受け部材、留め具部材、およびこれを用いた改修屋根の構造、ならびに屋根の改修方法は、既設折板屋根2を改修すべく、既設折板屋根2の上に新設折板屋根4を固定するために用いられる。
<既設折板屋根>
図1および
図2に示すように、既設折板屋根2は、隣接する屋根パネル21の端部同士が、既設折板屋根2の山部2aに設けられたはぜ締め部22ではぜ締めにより連結されて構成されている。
【0015】
既設折板屋根2は、軽量リップZ形鋼からなる母屋23の上に、スクリューねじ81によって締結された留め具3に固定されている。留め具3は、U型金物からなり母屋23の上に固定される留め具本体31と、この留め具本体31に支持され既設折板屋根2のはぜ締め部22に共締めされるタブ32とを備えている。留め具本体31の上部には摺動軸31aが設けられ、この摺動軸31aにタブ32の下部が巻き立てられることで、タブ32が摺動軸31aに沿って摺動可能とされている。
【0016】
摺動軸31aのうち、タブ32が巻き立てられている部分の両側にはスリーブ31bが設けられており、既設折板屋根2の施工時には、タブ32を摺動軸31aの中央の初期位置に保持するようになっている。そして、温度変化によって屋根パネル21が膨張収縮すると、これに伴い、屋根パネル21のはぜ締め部22に共締めされるタブ32が摺動軸31aに沿って摺動する。このとき、タブ32から押されたスリーブ31bは摺動軸31aから外れる構造となっているため、タブ32の摺動が妨げられることが無い。このように、既設折板屋根2は、エキスパンションジョイント等を特に設けなくとも、温度変化にさらされて膨張収縮する屋根パネル21が留め具3により拘束されて座屈や変形が発生するのを防止できる構造を有している。
【0017】
また、既設折板屋根2の谷部2bと母屋23との間には、断熱スペーサ24およびグラスウール25が挟み込まれ、既設折板屋根2の上下での断熱が確保されている。
<留め具受け部材>
図1に示すように、本実施形態の留め具受け部材7は、平板をコ字状に折り曲げて形成されており、留め具固定部71と、その両側に設けられた一対の支持部72、73および一対の位置決め部74、75を備えている。
【0018】
具体的には、本実施形態では、
図1に示すように、既設折板屋根2の山部2aの両側面2asは、山部2aの幅が下から上に向かうにつれて縮小するように傾斜している。そして、留め具受け部材7の留め具固定部71の両側が、既設折板屋根2の山部2aを挟むように鉛直下方に延出されている。さらに、この延出部の下側の部分が、既設折板屋根2の山部2aの両側面2asと同じ角度に開くように折り曲げられることで、一対の支持部72、73が設けられている。
【0019】
さらに、
図1および
図2に示すように、留め具受け部材7の留め具固定部71の両側から鉛直下方に延びる延出部には、コ字状に切れ込みが形成され、この切れ込みの内側の部分が折り込まれることにより、一対の位置決め部74、75が設けられている。
【0020】
この留め具受け部材7を、上方から既設折板屋根2の山部2aに嵌め込むと、
図1に示すように、留め具受け部材7の一対の位置決め部74、75が既設折板屋根2の山部2aの上面に当接する。これにより、留め具固定部71が、既設折板屋根2の山部2aの上方に、はぜ締め部22から離れた状態ではぜ締め部22を覆うように配置され、既設折板屋根2に対する留め具受け部材7の高さ方向の位置決めがなされる。この状態で、留め具受け部材7の一対の支持部72、73は、既設折板屋根2の山部2aの両側面2asに沿って面接触する。そして、留め具受け部材7の一対の支持部72、73が、既設折板屋根2の山部2aの両側面2asに固定されるので、既設折板屋根2の山部2aに留め具受け部材7を簡単かつ強固に固定できる。なお、留め具受け部材に設けられる位置決め部の数が一つであっても、同様の効果が得られる。
【0021】
ここで、
図1および
図2に示すように、留め具受け部材7の一対の支持部72、73を、既設折板屋根2の山部2aの両側面2asに、バルブタイトリベット82などのブラインドファスナにより締結すると、既設折板屋根2の上側からの作業のみによって、既設折板屋根2の山部2aに留め具受け部材7を簡単かつ強固に固定できるので好ましい。
【0022】
さらに、本実施形態では、
図1に示すように、一対の位置決め部74、75のうちの一方の位置決め部74の延出長さ74Lは、既設折板屋根2のはぜ締め部22の根元の凹部22aに嵌入する寸法に形成されている。このようにすると、留め具受け部材7の既設折板屋根2への固定強度を更に高めることができるので好ましい。
<留め具部材>
本実施形態の留め具部材5は、上述の留め具受け部材7の留め具固定部71に、後述する新設折板屋根4の留め具6が、スクリューねじ81により締結されて固定されることで、構成されている。このようにすると、留め具受け部材7の留め具固定部71に新設折板屋根4の留め具6が強固に固定できる。よって、台風時などの強風時に、新設折板屋根4の吹上圧を受けるときに、新設折板屋根4の留め具6に作用する大きな引抜力に対して十分な強度を確保でき、屋根の損傷を防止できるので好ましい。
【0023】
新設折板屋根4は、既設折板屋根2と同様に、隣接する屋根パネル41の端部同士が、新設折板屋根4の山部4aに設けられたはぜ締め部42ではぜ締めにより連結されて構成されている。
【0024】
留め具部材5の留め具6は、上述の既設折板屋根2の留め具4と同様の構造を有している。すなわち、留め具6は、U型金物からなり留め具受け部材7の留め具固定部71の上に固定される留め具本体61と、この留め具本体61に支持され新設折板屋根4のはぜ締め部42に共締めされるタブ62とを備えている。留め具本体61の上部には摺動軸61aが設けられ、この摺動軸61aにタブ62の下部が巻き立てられることで、タブ62が摺動軸61aに沿って摺動可能とされている。
【0025】
摺動軸61aのうち、タブ62が巻き立てられている部分の両側にはスリーブ61bが設けられており、新設折板屋根4の施工時には、タブ62を摺動軸61aの中央の初期位置に保持するようになっている。そして、温度変化によって屋根パネル41が膨張収縮すると、これに伴い、屋根パネル41のはぜ締め部42に共締めされるタブ62が摺動軸61aに沿って摺動する。このとき、タブ62から押されたスリーブ61bは摺動軸61aから外れる構造となっているため、タブ62の摺動が妨げられることが無い。
【0026】
特許文献1および特許文献2に開示される改修方法では、新設折板屋根の取付金物を構成する部材を、既設折板屋根のはぜ締め部の両側に配置して、これらをボルト等で締め付けることにより一体化しているため、新設折板屋根のはぜ締め部に共締めされるタブと、このタブを挟持する取付金物との間に大きな摩擦力が発生しやすい。このため、温度変化にさらされて膨張収縮する新設折板屋根が、取付金物およびタブにより拘束されて自由な変形を阻害され、座屈変形が発生しやすい。
【0027】
これに対し、本実施形態では、タブ62が摺動軸61aに沿って摺動可能とされているため、温度変化にさらされて膨張収縮する新設折板屋根4の屋根パネル41が留め具6により拘束されることがない。よって、屋根パネル41の座屈や変形等の損傷を防止でき、新設折板屋根4の耐久性を大きく向上できるので好ましい。
<改修屋根の構造>
本実施形態の改修屋根の構造は、上述の留め具部材5を介して、既設折板屋根2の上に新設折板屋根4が設置されることにより、構成される。
【0028】
そして、
図1および
図2に示すように、留め具受け部材7の留め具固定部71の上に、新設折板屋根4の谷部4bの平坦な部分を支持する屋根材受けレール83が架設され、スクリューねじ81により締結されて固定されている。このようにすると、屋根材受けレール83により新設折板屋根4の谷部4bが支持される。よって、新設折板屋根4の凹凸が少なく、谷部4bの平坦な部分の面積が大きい場合であっても、新設折板屋根4の屋根パネル41の自重や積雪加重、風圧力等によるたわみや曲がりを防止できるので好ましい。換言すれば、本実施形態のように、新設折板屋根4の谷部4bを支持する屋根材受けレール83を用いることにより、凹凸が少ない新設折板屋根4を用いて本発明を適用することが可能となる。もちろん、凹凸が多く曲げ強度や曲げ剛性が大きい新設折板屋根4を用いても本発明を適用できることは、言うまでもない。
【0029】
そして、新設折板屋根4のうち軒先部分のみにおいて、新設折板屋根4の谷部4bが、屋根材受けレール83に固定されている。このようにすると、新設折板屋根4の設置作業の省力化を図りつつ、新設折板屋根の固定強度をさらに高めることができるので好ましい。
【0030】
また、屋根材受けレール83はZ形の断面形状を有する軽量Z形鋼から構成されている。このようにすると、屋根材受けレール83の曲げ強度および曲げ剛性が十分に確保され、新設折板屋根4の谷部4bを支持する屋根材受けレール83および新設折板屋根4の屋根パネル41のたわみや曲がりをさらに防止できるので好ましい。
<屋根の改修方法>
本実施形態の屋根の改修方法は、折板屋根の山部2aに設けられたはぜ締め部22で、隣接する屋根パネル21の端部同士が連結されて構成された既設折板屋根2の上に新設折板屋根4を設置するものである。
【0031】
具体的には、既設折板屋根2の山部2aの両側面2asに、上述の留め具受け部材7の支持部72、73を固定する。そして、留め具受け部材7の留め具固定部71に、新設折板屋根4の留め具6を固定する。さらに、新設折板屋根4の隣接する屋根パネル41の端部同士を、留め具6に設けられたタブ62と共にはぜ締めしてはぜ締め部42を形成し、屋根パネル41を相互に連結するとともに留め具6に固定するものである。
【符号の説明】
【0032】
1 改修屋根
2 既設折板屋根
2a 既設折板屋根の山部
2as 既設折板屋根の山部の両側面
2b 既設折板屋根の谷部
21 屋根パネル
22 はぜ締め部
22a はぜ締め部の根元の凹部
23 母屋
24 断熱スペーサ
25 グラスウール
3 既設折板屋根の留め具
31 留め具本体
31a 摺動軸
31b スリーブ
32 タブ
4 新設折板屋根
4a 新設折板屋根の山部
4b 新設折板屋根の谷部
41 屋根パネル
42 はぜ締め
5 留め具部材
6 新設折板屋根の留め具
61 留め具本体
61a 摺動軸
62 タブ
7 留め具受け部材
71 留め具固定部
72、73 支持部
74、75 位置決め部
74L 位置決め部の延出長さ
81 スクリューねじ
82 バルブタイトリベット
83 屋根材受けレール