IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社協和エクシオの特許一覧 ▶ 株式会社イセキ開発工機の特許一覧

<>
  • 特開-閉塞蓋装置及びケーシング設置方法 図1
  • 特開-閉塞蓋装置及びケーシング設置方法 図2
  • 特開-閉塞蓋装置及びケーシング設置方法 図3
  • 特開-閉塞蓋装置及びケーシング設置方法 図4
  • 特開-閉塞蓋装置及びケーシング設置方法 図5
  • 特開-閉塞蓋装置及びケーシング設置方法 図6
  • 特開-閉塞蓋装置及びケーシング設置方法 図7
  • 特開-閉塞蓋装置及びケーシング設置方法 図8
  • 特開-閉塞蓋装置及びケーシング設置方法 図9
  • 特開-閉塞蓋装置及びケーシング設置方法 図10
  • 特開-閉塞蓋装置及びケーシング設置方法 図11
  • 特開-閉塞蓋装置及びケーシング設置方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135012
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】閉塞蓋装置及びケーシング設置方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20230921BHJP
   F16L 1/12 20060101ALN20230921BHJP
【FI】
E21D9/06 301E
F16L1/12 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040007
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000162593
【氏名又は名称】エクシオグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000127259
【氏名又は名称】株式会社イセキ開発工機
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 敬太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】楮山 誠
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健二
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC02
2D054EA01
2D054EA07
(57)【要約】
【課題】水中に配置されたケーシングの先端の開放部を容易に閉塞することができ、掘削機の回収部を回収してからケーシング内にケーブルを引き込むまでに長期間経過しても、ケーシング内部に海水が露出されたままにされるのを防ぐことができる閉塞蓋装置を提供すること。
【解決手段】掘削機1の後方に回収される回収部を内部に含むことが可能であるとともに、水中に配置され、先端部に開放部20を有するケーシング2の開放部20を覆う蓋体15を備える閉塞蓋装置14であって、蓋体15は、開放部20を覆う蓋本体部150と、蓋本体部150から連続して形成され、ケーシング2の外周面を覆う蓋側壁部151と、蓋側壁部151とケーシング2の外周面との間を止水する外周止水部152とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機の後方に回収される回収部を内部に含むことが可能であるとともに、水中に配置され、先端部に開放部を有するケーシングの前記開放部を覆う蓋体を備える閉塞蓋装置であって、
前記蓋体は、
前記開放部を覆う蓋本体部と、
前記蓋本体部から連続して形成され、前記ケーシングの外周面を覆う蓋側壁部と、
前記蓋側壁部と前記ケーシングの前記外周面との間を止水する外周止水部と、を備える
ことを特徴とする閉塞蓋装置。
【請求項2】
前記蓋体が前記ケーシングから離間するのを防止する蓋体固定手段と、を備え、
前記蓋体固定手段は、前記蓋体が前記開放部を覆って被さるようにガイドするとともに前記蓋側壁部を前記ケーシングの外周面に沿って摺動させて移動させることが可能なことを特徴とする請求項1に記載の閉塞蓋装置。
【請求項3】
前記蓋本体部は、ケーブルを通すことが可能な開口部と、該開口部を着脱可能に覆う小蓋と、を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の閉塞蓋装置。
【請求項4】
前記開口部は、該開口部の内周に設けられ、通されたケーブルを保護するケーブル保護材を備えることを特徴とする請求項3に記載の閉塞蓋装置。
【請求項5】
前記蓋本体部は、外側と前記ケーシング側とを連通させることが可能な連通弁を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の閉塞蓋装置。
【請求項6】
掘削機の後方に回収される回収部を内部に含むことが可能であって、先端部に開放部を有するケーシングを、水中に配置するケーシング配置工程と、
前記開放部を閉塞蓋装置の蓋体で覆う閉塞工程と、を備えるケーシング設置方法であって、
前記蓋体は、
前記開放部を覆う蓋本体部と、
前記蓋本体部から連続して形成され前記ケーシングの外周面を覆う蓋側壁部と、
前記蓋側壁部と前記ケーシングの前記外周面との間を止水する外周止水部と、
を備え、
前記閉塞工程では、前記蓋本体部が前記開放部を覆い、前記蓋側壁部が前記ケーシングの外周面を覆い、前記外周止水部が前記蓋側壁部と前記ケーシングの前記外周面との間を止水する
ことを特徴とするケーシング設置方法。
【請求項7】
前記ケーシング配置工程では、内部に前記回収部を含んだまま前記ケーシングを水中に配置し、
前記閉塞工程では、前記ケーシングの内部に前記回収部を含んだまま、前記開放部を前記閉塞蓋装置の蓋体で覆う
ことを特徴とする請求項6に記載のケーシング設置方法。
【請求項8】
前記閉塞蓋装置は、前記蓋体が前記ケーシングから離間するのを防止する蓋体固定手段と、を備え、
前記閉塞工程では、前記蓋体固定手段によって、前記蓋体が前記開放部を覆って被さるようにガイドするとともに前記蓋側壁部を前記ケーシングの外周面に沿って摺動させて移動させる蓋体移動工程を備える
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のケーシング設置方法。
【請求項9】
前記蓋本体部は、外側と前記ケーシング側とを連通させることが可能な連通弁を備え、
前記蓋体移動工程では、前記連通弁を開いておくことを特徴とする請求項8に記載のケーシング設置方法。
【請求項10】
掘削機の後方に回収される回収部を内部に含むことが可能であって、先端部に開放部を有するケーシングを、水中に配置するケーシング配置工程と、
前記開放部を閉塞蓋装置の蓋体で覆う閉塞工程と、を備えるケーシング設置方法であって、
前記蓋体は、
前記開放部を覆う蓋本体部と、
前記蓋本体部から連続して形成され前記ケーシングの外周面を覆う蓋側壁部と、
前記蓋側壁部と前記ケーシングの前記外周面との間を止水する外周止水部と、
を備え、
前記閉塞工程では、前記蓋本体部が前記開放部を覆い、前記蓋側壁部が前記ケーシングの外周面を覆い、前記外周止水部が前記蓋側壁部と前記ケーシングの前記外周面との間を止水し、
前記ケーシング配置工程では、内部に前記回収部を含んだまま前記ケーシングを水中に配置し、
前記閉塞工程では、前記ケーシングの内部に前記回収部を含んだまま、前記開放部を前記閉塞蓋装置の前記蓋体で覆い、
前記閉塞蓋装置は、前記蓋体が前記ケーシングから離間するのを防止する蓋体固定手段と、を備え、
前記閉塞工程では、前記蓋体固定手段によって、前記蓋体が前記開放部を覆って被さるようにガイドするとともに前記蓋側壁部を前記ケーシングの外周面に沿って摺動させて移動させる蓋体移動工程を備え、
前記蓋体移動工程の後に、前記回収部を前記ケーシングの後方に回収する回収工程と、を備える
ことを特徴とするケーシング設置方法。
【請求項11】
前記蓋本体部は、ケーブルを通すことが可能な開口部と、該開口部を覆う小蓋と、を備え、
前記開放部を前記蓋体で覆った後であって前記開口部にケーブルを通す前に、前記小蓋を前記開口部から取り外す
ことを特徴とする請求項6乃至請求項10のうちいずれか1項に記載のケーシング設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力発電機等から延びる送電用又は通信用の海底ケーブルを水中から陸上に引き揚げて配置するために用いるケーシングにおいて、水中側の開放部を閉塞する閉塞蓋装置及びケーシング設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電、通信の海底ケーブルを陸揚げするためには、開削工法により地中に埋設するか、開削工法が不適切な場所においては、ケーブルを通すための管を陸上から海中まで非開削工法により構築する方法がある。
ケーブルを通すための管を非開削工法により構築するには、通常、陸地に掘った立坑から掘削機を発進させて地中を掘削しながら海中に向かって前進させ、掘削機の掘削軌道の周りにトンネルの周壁となる円筒管を順次継ぎ足して設置することにより構築する。
【0003】
ケーブルの直径は送電用、通信用で異なるが、送電用ケーブルが大きく、大きくても200mm程度のものが採用されるのが一般的である。
また、トンネルの内径は、コストの面から小径とするのが望ましい。
【0004】
従来、特許文献1に記載されているように、立坑からシールド工法で海底に向けてトンネルを構築する工程と、海底に到達したシールド機を回収してトンネルの先端を開放し、先端からトンネル内にパイプラインを引き込む工程と、トンネルの海側先端部の内面とパイプラインの外周面との間に止水シールを装着することで、トンネルの先端を止水し、トンネル内の海水を排水する工程を有する海底パイプラインの揚陸工法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-19473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のような海底パイプラインの揚陸工法では、トンネルの先端部内面とパイプラインの外周面との間に止水シールを装着するが、トンネルの内径が小さいと作業員が入ることができず、止水作業は非常に困難となる。
【0007】
また、複数の洋上風力発電機の送電用のケーブルをトンネルに通す場合等には、発電機の構築に時間がかかるなどの事情のため、トンネルを設置してから送電用のケーブルを通すまでに数年経過することもある。このような場合に、トンネルの先端が開口したままではトンネル内が海水に露出されたままになり、トンネル内面にフジツボや貝類が付着して、太いケーブルを引き込む作業の邪魔になるばかりか、ケーブルの被覆材を傷つける虞がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、水中に配置されたケーシングの先端の開放部を容易に閉塞することができ、掘削機の回収部を回収してからケーシング内にケーブルを引き込むまでに長期間経過しても、その間にケーシング内部が海水に露出されたままになることを防ぐことができる閉塞蓋装置及びケーシング設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に係る発明は、掘削機の後方に回収される回収部を内部に含むことが可能であるとともに、水中に配置され、先端部に開放部を有するケーシングの前記開放部を覆う蓋体を備える閉塞蓋装置であって、前記蓋体は、前記開放部を覆う蓋本体部と、前記蓋本体部から連続して形成され、前記ケーシングの外周面を覆う蓋側壁部と、前記蓋側壁部と前記ケーシングの前記外周面との間を止水する外周止水部と、を備えることを特徴とする閉塞蓋装置である。
【0010】
本願請求項2に係る発明は、前記蓋体が前記ケーシングから離間するのを防止する蓋体固定手段と、を備え、前記蓋体固定手段は、前記蓋体が前記開放部を覆って被さるようにガイドするとともに前記蓋側壁部を前記ケーシングの外周面に沿って摺動させて移動させることが可能なことを特徴とする請求項1に記載の閉塞蓋装置である。
【0011】
本願請求項3に係る発明は、前記蓋本体部は、ケーブルを通すことが可能な開口部と、該開口部を着脱可能に覆う小蓋と、を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の閉塞蓋装置である。
【0012】
本願請求項4に係る発明は、前記開口部は、該開口部の内周に設けられ、通されたケーブルを保護するケーブル保護材を備えることを特徴とする請求項3に記載の閉塞蓋装置である。
【0013】
本願請求項5に係る発明は、前記蓋本体部は、外側と前記ケーシング側とを連通させることが可能な連通弁を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の閉塞蓋装置である。
【0014】
本願請求項6に係る発明は、掘削機の後方に回収される回収部を内部に含むことが可能であって、先端部に開放部を有するケーシングを、水中に配置するケーシング配置工程と、前記開放部を閉塞蓋装置の蓋体で覆う閉塞工程と、を備えるケーシング設置方法であって、前記蓋体は、前記開放部を覆う蓋本体部と、前記蓋本体部から連続して形成され前記ケーシングの外周面を覆う蓋側壁部と、前記蓋側壁部と前記ケーシングの前記外周面との間を止水する外周止水部と、を備え、前記閉塞工程では、前記蓋本体部が前記開放部を覆い、前記蓋側壁部が前記ケーシングの外周面を覆い、前記外周止水部が前記蓋側壁部と前記ケーシングの前記外周面との間を止水することを特徴とするケーシング設置方法である。
【0015】
本願請求項7に係る発明は、前記ケーシング配置工程では、内部に前記回収部を含んだまま前記ケーシングを水中に配置し、前記閉塞工程では、前記ケーシングの内部に前記回収部を含んだまま、前記開放部を前記閉塞蓋装置の蓋体で覆うことを特徴とする請求項6に記載のケーシング設置方法である。
【0016】
本願請求項8に係る発明は、前記閉塞蓋装置は、前記蓋体が前記ケーシングから離間するのを防止する蓋体固定手段と、を備え、前記閉塞工程では、前記蓋体固定手段によって、前記蓋体が前記開放部を覆って被さるようにガイドするとともに前記蓋側壁部を前記ケーシングの外周面に沿って摺動させて移動させる蓋体移動工程を備えることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のケーシング設置方法である。
【0017】
本願請求項9に係る発明は、前記蓋本体部は、外側と前記ケーシング側とを連通させることが可能な連通弁を備え、前記蓋体移動工程では、前記連通弁を開いておくことを特徴とする請求項8に記載のケーシング設置方法である。
【0018】
本願請求項10に係る発明は、掘削機の後方に回収される回収部を内部に含むことが可能であって、先端部に開放部を有するケーシングを、水中に配置するケーシング配置工程と、前記開放部を閉塞蓋装置の蓋体で覆う閉塞工程と、を備えるケーシング設置方法であって、前記蓋体は、前記開放部を覆う蓋本体部と、前記蓋本体部から連続して形成され前記ケーシングの外周面を覆う蓋側壁部と、前記蓋側壁部と前記ケーシングの前記外周面との間を止水する外周止水部と、を備え、前記閉塞工程では、前記蓋本体部が前記開放部を覆い、前記蓋側壁部が前記ケーシングの外周面を覆い、前記外周止水部が前記蓋側壁部と前記ケーシングの前記外周面との間を止水し、前記ケーシング配置工程では、内部に前記回収部を含んだまま前記ケーシングを水中に配置し、前記閉塞工程では、前記ケーシングの内部に前記回収部を含んだまま、前記開放部を前記閉塞蓋装置の前記蓋体で覆い、前記閉塞蓋装置は、前記蓋体が前記ケーシングから離間するのを防止する蓋体固定手段と、を備え、前記閉塞工程では、前記蓋体固定手段によって、前記蓋体が前記開放部を覆って被さるようにガイドするとともに前記蓋側壁部を前記ケーシングの外周面に沿って摺動させて移動させる蓋体移動工程を備え、前記蓋体移動工程の後に、前記回収部を前記ケーシングの後方に回収する回収工程と、を備えることを特徴とするケーシング設置方法である。
【0019】
本願請求項11に係る発明は、前記蓋本体部は、ケーブルを通すことが可能な開口部と、該開口部を覆う小蓋と、を備え、前記開放部を前記蓋体で覆った後であって前記開口部にケーブルを通す前に、前記小蓋を前記開口部から取り外すことを特徴とする請求項6乃至請求項10のうちいずれか1項に記載のケーシング設置方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の閉塞蓋装置によれば、ケーシングの先端に外側から蓋体を容易に被せることができるので、特にケーシングが直径600mm程度の小口径で人がケーシング内に入ることができない場合であっても、簡単にケーシング先端の開放部を閉塞することができ、蓋側壁部とケーシングの外周面との間に外周止水部に設けることにより、容易に蓋体とケーシングとを止水できる。
また、ケーシングの先端の開放部が蓋体で閉塞されるので、ケーシングを設置してからケーブルを引き込むまでに長期間が経過しても、ケーシング内部が海水に露出されたままになることを防ぐことができ、ケーシングの内面にフジツボや貝類が付着してケーブルを傷つけるのを防ぐことができる。
【0021】
加えて、蓋体がケーシングから離間するのを防止する蓋体固定手段を備え、蓋体固定手段は、蓋体が開放部を覆って被さるようにガイドするとともに蓋側壁部をケーシングの外周面に沿って摺動させて移動させることを可能とすれば、蓋体をスムーズにケーシングに取り付けて、確実に固定させることができる。
【0022】
加えて、蓋本体部が、ケーブルを通すことが可能な開口部と、開口部を着脱可能に覆う小蓋とを備えることにより、ケーブルをケーシング内に引き入れる際に、蓋体を外す必要がなく、軽量の小蓋を外すだけで済むので、水中での作業が容易となる。
【0023】
加えて、開口部の内周に、通されたケーブルを保護するケーブル保護材を設けることにより、開口部を通してケーシング内にケーブルを引き込む際に、ケーブルが開口部の内周縁に擦れて傷つくのを防ぐ。
【0024】
加えて、蓋本体部が、外側とケーシング側とを連通させることが可能な連通弁を備えると、蓋体をケーシングの開放部に外側から嵌め込む際に、連通弁を開いて外側とケーシング側とを連通させておくことにより、ケーシング側に海水や空気が存在する場合であっても、スムーズに取り付けることができる。特に、掘削機の回収部がケーシングの内部にある場合には、効果的である。
【0025】
本発明のケーシング設置方法によれば、ケーシングの先端に外側から蓋体を被せて、ケーシング内に人が入ることなく、簡単にケーシングの開放部を塞いで海水へ露出させ続けることを防ぐことができる。
【0026】
加えて、ケーシング配置工程で、内部に回収部を含んだままケーシングを水中に配置し、閉塞工程で、ケーシングの内部に回収部を含んだまま、開放部を閉塞蓋装置の蓋体で覆った後に、回収部をケーシングの後方に回収することにより、ケーシングの開放部が回収部で塞がれた状態で蓋体を被せるので、ケーシングの内部への水の侵入を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係るケーシングの先端の部分の断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るケーシングの先端の部分の正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る閉塞蓋装置をケーシングに取り付けた状態における断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る閉塞蓋装置の正面図である。
図5】本発明の実施形態に係るケーシング配置工程における断面図である。
図6】本発明の実施形態に係るケーシング先端の部分のビット取り外し工程における断面図である。
図7】本発明の実施形態に係るケーシング先端の部分のネジ棒取付工程における断面図である。
図8】本発明の実施形態に係るケーシング先端の部分の蓋体位置合わせ工程における断面図である。
図9】本発明の実施形態に係るケーシング先端の部分の蓋体移動工程における断面図である。
図10】本発明の実施形態に係るケーシング先端の部分の掘削機の回収部の回収工程における断面図である。
図11】本発明の実施形態に係る回収工程における断面図である。
図12】本発明の実施形態に係るケーブル設置工程における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照する等して説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0029】
図1は、実施形態に係るケーシングの先端の部分の断面図であり、図2は、実施形態に係るケーシングの先端の部分の正面図、図3は、実施形態に係る閉塞蓋装置をケーシングに取り付けた状態における断面図、図4は、実施形態に係る閉塞蓋装置の正面図、図5は、実施形態に係るケーシング配置工程における断面図、図6図10は、実施形態に係るケーシング先端の部分の閉塞工程を示す断面図、図11は、実施形態に係る回収工程における断面図、図12は、実施形態に係るケーブル設置工程を示す断面図である。
以下の説明において、掘削機の掘進する方向を前、その逆方向を後とする。
【0030】
本実施形態では、洋上風力発電機からの送電用のケーブルを内部に設置するケーシングに本発明が適用されたものである。
【0031】
洋上風力発電機から延びる送電用のケーブルは、海中から陸部にわたって設置されたケーシング2の内部に設置される。
ケーシング2は、陸部に設けられる発進立坑A(図5参照)から地中を介して水中(海底を含む)に向けて、密閉型の掘削機1と推進管10とを推進させる、いわゆる推進工法によって設置される。
【0032】
図1及び図2に示すように、掘削機1は、断面円形の掘削機本体3、加圧リング4、前部スキンプレート5、後部スキンプレート6を備える。
掘削機本体3は加圧リング4の前方に屈曲可能に接続され、掘削機本体3の外周面は前部スキンプレート5で被覆されている。
【0033】
加圧リング4の外周面は後部スキンプレート6で被覆されている。掘削機本体3の外周面と前部スキンプレート5の内面との間には防水シール8が設けられる。
前部スキンプレート5の後端部と後部スキンプレート6の前端部とは屈曲可能に接続され、接続部分に屈曲部シール7が設けられる。
【0034】
加圧リング4と後部スキンプレート6とはチャッキング装置9で着脱可能に連結され、チャッキング装置9が作動すると、加圧リング4は後部スキンプレート6に一体化され、掘削機本体3及び加圧リング4と前部スキンプレート5及び後部スキンプレート6とは一体に掘進するようになっている。
加圧リング4の外周面には、後部スキンプレート6の内周面に対して軸方向に摺動可能なガイド材40が取り付けられている。
【0035】
掘削機本体3の前端面には4本の放射状に形成されたカッタースポーク30が設けられ、カッタースポーク30の表面にはビットが設けられ、外周部には、複数の外周ビット31が着脱可能に取り付けられている。
外周ビット31は前部スキンプレート5の外周面よりも径方向外側へ突出しており、前部スキンプレート5及び推進管10を収容可能な直径の孔を掘削できるようになっている。
【0036】
掘削機本体3のカッタースポーク30の後方には、隔壁32が設けられている。隔壁32の開口部には、加圧リング4を通って継ぎ足し可能な送泥管12及び排泥管13が接続される。
掘削機本体3の後端には加圧リング4を通って継ぎ足し可能な引き抜き材11が取り付けられている。
【0037】
後部スキンプレート6の後端には、推進管10の先端が連結される。推進管10の後端には後続する推進管10が順次継ぎ足し可能となっている。
これらの推進管10と、掘削機1の前部スキンプレート5及び後部スキンプレート6とにより、送電用のケーブルを内部に配置する地下トンネルの周壁となる円筒状のケーシング2が構成される。ケーシング2は、内径が600mm程度の比較的細いものである。
【0038】
掘削機1は、発進立坑A内に設置された後、カッタースポーク30を回転させてビット及び外周ビット31で地盤を掘削し、発進立坑Aに設置した押圧ジャッキB(図5参照)で継ぎ足した推進管10の後端を順次押すことにより、水中に向けて前進していく。
【0039】
掘進とともに送泥管12を介して泥水を隔壁32の前方へ供給され、掘削により発生した土砂は泥水とともに排泥管13を通して発進立坑Aへ排出される。
また、掘削機1の前進に伴って、推進管10は順次継ぎ足され、引き抜き材11、送泥管12及び排泥管13はそれぞれ継手11’、12’及び13’によって継ぎ足されていく。
【0040】
所定の到達位置まで掘削機1が達した後、すなわち所定長のケーシング2を設置した後は、引き抜き材11を発進立坑Aから引くことにより、ケーシング2の内部に含まれる掘削機本体3、加圧リング4、引き抜き材11、送泥管12及び排泥管13を後方へ回収する。
本実施形態における掘削機本体3、加圧リング4、引き抜き材11、送泥管12及び排泥管13が本発明の掘削機の後方に回収される回収部に相当し、推進管10と、掘削機1の前部スキンプレート5及び後部スキンプレート6とが、本発明のケーシングに相当する。
【0041】
水中に配置されたケーシング2の先端部(前部スキンプレート5の先端部)に開放部20が形成されることになるため、図3及び図4に示すように、回収部を回収する前に、閉塞蓋装置14を用いて開放部20を閉鎖しておく。
【0042】
閉塞蓋装置14は、ケーシング2の開放部20を覆う蓋体15と、蓋体15がケーシング2から離間するのを防止する蓋体固定手段16とを備える。
【0043】
蓋体15は、開放部20を覆う蓋本体部150と、蓋本体部150から連続して形成され、ケーシング2の外周面を覆う蓋側壁部151と、蓋側壁部151とケーシング2の外周面との間を止水する外周止水部152とを備える。
【0044】
蓋本体部150は、前部スキンプレート5の外径よりやや大きい直径を有する円板状であり、下半部に円形の開口部153が形成される。
蓋本体部150の下部の前面には、開口部153を取り巻いて環状の取付突部154が突設され、取付突部154の内周面に弾力性を有するリング状のケーブル保護材155が取り付けられている。取付突部154の前端面には図示しないシール材が設けられる。
【0045】
開口部153は小蓋156で着脱可能に覆われている。小蓋156は、外周部に配置された複数のボルト157を前面側から取付突部154にねじ込むことにより蓋本体部150に固定され、ボルト157を抜き取ることにより、小蓋156を外すことができる。
【0046】
蓋本体部150の上部には、外側(前面側)とケーシング2側(ケーシング2の開放部20側)とを連通する連通管158が設置され、連通管158の外側端部に、連通管158を開閉可能な連通弁159が設けられる。
【0047】
蓋側壁部151は、蓋本体部150の外周縁から後方へ向けて、前部スキンプレート5と平行に一体に形成される。
蓋側壁部151の内径は前部スキンプレート5の外径より僅かに大きく、蓋側壁部151の内周面には前部スキンプレート5の外周面と接するリング状の外周止水部152が取り付けられる。
【0048】
蓋体固定手段16は、後部スキンプレート6の外周面に取り付けられた複数本(本実施形態では3本)のネジ棒160と、蓋体15の蓋側壁部151の外周面に取り付けられ、ネジ棒160を挿通可能な座板161と、ネジ棒160に螺合される押し込みナット162とを備える。
【0049】
後部スキンプレート6の外周面には、ネジ棒160と同数のブラケット163が周方向に等間隔で固定される。各ブラケット163には、それぞれネジ棒160がケーシング2の軸方向と平行に、且つ、前端が掘削機本体3の前端よりも突出するよう挿通され、ブラケット163の両側においてネジ棒160に固定ナット164をねじ込んである。
座板161は、ネジ棒160を挿通するための孔を有し、ネジ棒160と同数設けられる。座板161は、蓋側壁部151の外周面に周方向に等間隔で固定される。
【0050】
蓋体15をケーシング2に取り付けるには、座板161各々にネジ棒160各々を通し、座板161の前側から押し込みナット162をねじ込むことにより、蓋体15の蓋側壁部151で前部スキンプレート5の外周面を覆うとともえに、蓋体15を前部スキンプレート5の前端部に被せ、蓋本体部150でケーシング2の前端面の開放部20を覆う。
また、蓋体15とケーシング2の間は、蓋側壁部151の内周面に設けられた外周止水部152で止水されるので、海水がケーシング2内部へ流入しない。
【0051】
ケーシング2は以下のように設置される。
まず、図5に示すように、ケーシング配置工程において、地表から設けられた発進立坑Aから掘削機1を発進させる。掘削機1の後部スキンプレート6の後端には推進管10が連結され、カッタースポーク30を回転させてビット及び外周ビット31で前方の地中を掘削しながら、発進立坑Aの内部に設置された押圧ジャッキBで推進管10の後端面を押して前進させる。掘削機1の進行に伴って、推進管10、引き抜き材11、送泥管12及び排泥管13を継ぎ足していき、掘削機本体3の前端部を水中の所定位置まで前進させて停止させる。掘削機1の前部スキンプレート5と後部スキンプレート6は、屈曲させず直線状体としておく。
【0052】
次に、図6に示すように、閉塞工程のビット取り外し工程において、潜水したダイバーによって、ケーシング2(前部スキンプレート5)の内径よりも径方向外方へ張り出す外周ビット31が取り外される(図6の白抜き矢印は外周ビット31がカッタースポーク30から取り外されるイメージを示している。)。外周ビット31が取り外されたので、掘削機1の回収部をケーシング2の内部を通して後方へ回収することができるようになる。
【0053】
次いで、図7に示すように、閉塞工程のネジ棒取付工程において、ダイバーが後部スキンプレート6の外周面にブラケット163をボルトなどで固定し、ネジ棒160をブラケット163に設けられた挿通孔に挿通し、固定ナット164をネジ棒160にねじ込んでブラケット163にネジ棒160を固定する。
ネジ棒160の前端部は、カッタースポーク30の前面よりも十分前方へ突出させておく。
【0054】
さらに、図8に示すように、閉塞工程の蓋体位置合わせ工程において、水上から蓋体15を吊り降ろし、後部スキンプレート6の外周面に取り付けたネジ棒160の前端部を蓋側壁部151の外周面に固定した座板161に後方から通して、蓋体15をケーシング2に対して位置合わせし、座板161に通したネジ棒160に押し込みナット162を螺合する。
【0055】
このとき、蓋側壁部151の後端は、カッタースポーク30より前方に位置するので、座板161とネジ棒160の先端との位置合わせ作業において、蓋側壁部151の後端が前部スキンプレート5、カッタースポーク30、掘削機本体3に接触するなどせず、位置合わせ作業だけに集中して作業を行うことができる。
【0056】
次に、図9に示すように、閉塞工程の蓋体移動工程において、押し込みナット162を締め込んでいく。すると、座板161が押し込みナット162に押されてブラケット163の方向に移動し、蓋体15はネジ棒160にガイドされてケーシング2の前端部に被さり、さらに蓋側壁部151が前部スキンプレート5の外周面に沿って摺動し、後方へ移動してケーシング2の前端面を覆う。
この時、連通弁159を開いておき、連通管158を通して掘削機本体3と蓋体15との間の海水を外側へ逃がすようにする。蓋体15をケーシング2の前端部に被せた後は、連通弁159を閉じる。
【0057】
その後、図10及び図11に示す回収工程においては、まず、後部スキンプレート6と加圧リング4とを連結するチャッキング装置9を解除して、ケーシング2と、その内部に含まれる掘削機本体3、加圧リング4、引き抜き材11、送泥管12及び排泥管13を含む回収部とを分離する。
続いて、発進立坑A内に設置されたした押圧ジャッキBにより引き抜き材11の後端部を引き、引き抜き材11、送泥管12及び排泥管13を順次外しながら回収部をケーシング2の内部を通して後方へ回収する。
【0058】
なお、閉塞工程の後にケーシング2内に海水等が残れば、回収工程の後にでも適宜の方法で排水しておく。
【0059】
ケーシング2の水中側の先端の開放部20は蓋本体部150で覆われているので、水中に配置されている開放部20からケーシング2の内部に海水が新たに浸入したりすることがなく、長期間、海水に露出されたままになってフジツボや貝などがケーシング2内部に付着することを防止することができる。
また、ケーシング2の外側から閉塞工程の作業が行えるため、特に作業員が内部に入ることができないような小径のケーシング2においては有効である。
【0060】
ケーブル設置工程においては、蓋本体部150の小蓋156がダイバーによって取り外されて開口部153を通してからケーブルが配置される。
具体的には、ケーシング2の内部に適宜の方法で通されたワイヤーロープCの前端部に送電用のケーブルDがダイバーによって連結されて、図12に示すように、ワイヤーロープCを発進立坑Aから引くことにより、ワイヤーロープCに連結されたケーブルDを開口部153を通して発進立坑Aまで引き出す。
【0061】
このケーブル設置工程では、太い送電用のケーブルDが開口部153内を摺動するが、開口部153の内周にはケーブル保護材155が設けられているので、ケーブルDが開口部153の周縁に擦れて傷つくのを防止する。
【0062】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0063】
本実施形態では、ケーシングの内部に設置するケーブルは、洋上風力発電機から地上に送電する送電用のケーブルであったが、その他の水中に設置するケーブルであれば適用でき、例えば、通信ケーブルであっても良い。
【0064】
本実施形態では、掘削機のカッタースポークの前面に設けた外周ビットを取り外してから回収部を回収しているが、外周ビットをカッタースポークの前方であって回転中心側へ揺動させることで縮径してから回収部を回収するようにしても良い。
【0065】
本実施形態では、掘削機1が備えるスキンプレート(前部スキンプレート5及び後部スキンプレート6)が推進管10とともに、ケーブルのケーシング2を構成するようになっているが、これに限られない。推進管の前端部の内部に掘削機を収容させる構成、すなわち推進管の前端部の掘削機を収容させる部分を掘削機本体のスキンプレートとして機能させるようなものであっても良い。この場合には、推進管が本発明のケーシングに相当し、推進管に収容されて回収されるものが本発明の回収部に相当する。
【0066】
変形例を含むいずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 掘削機
2 ケーシング
20 開放部
3 掘削機本体
30 カッタースポーク
31 外周ビット
32 隔壁
4 加圧リング
40 ガイド材
5 前部スキンプレート
6 後部スキンプレート
7 屈曲部シール
8 防水シール
9 チャッキング装置
10 推進管
11 引き抜き材
12 送泥管
13 排泥管
14 閉塞蓋装置
15 蓋体
150 蓋本体部
151 蓋側壁部
152 外周止水部
153 開口部
154 取付突部
155 ケーブル保護材
156 小蓋
157 ボルト
158 連通管
159 連通弁
16 蓋体固定手段
160 ネジ棒
161 座板
162 押し込みナット
163 ブラケット
164 固定ナット
A 発進立坑
B 押圧ジャッキ
C ワイヤーロープ
D ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12