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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135023
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】カムクラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/08 20060101AFI20230921BHJP
   F16D 41/07 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
F16D41/08 A
F16D41/07 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040022
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】榑松 勇二
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 翼
(72)【発明者】
【氏名】中川 栄一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な構成で、高精度の制御を不要とするとともに、カムの姿勢を強制的に変更する際の駆動力が小さくクラッチ動作の安定性を向上させることができて高い応答性を得ることができ、モード切替の自由度の高いカムクラッチを提供すること。
【解決手段】内輪110と外輪120の間にケージ部材150に支持され周方向に配置されている複数のカム140備えたカムクラッチであって、複数のカム140が回転軸方向に複数列に配置され、ケージ部材150が固定された内輪110又は外輪120と相対的な回転角の制御が可能で、少なくとも1つの列に対応するカム140のカム面と接触して姿勢を変更可能なカム姿勢制御面171を有するセレクタ170を備え、カム姿勢制御面171はカム作動部172より半径方向カム140側に突出する形状でカム140を作動しない姿勢に変更するカム解除部173を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に相対回転可能に設けられている内輪及び外輪と、前記内輪と前記外輪の間に周方向に配置されている複数のカムと、前記外輪又は内輪と回転方向に固定され複数のカムを支持するケージ部材を備えたカムクラッチであって、
前記ケージ部材が回転方向に固定された前記外輪又は内輪と相対的な回転角の制御が可能なセレクタを備え、
前記複数のカムが、回転軸方向に複数列に配置され、
前記セレクタは、前記複数のカム列のカムの姿勢をそれぞれ変更可能な複数の姿勢変更部を有し、
少なくとも1つの列のカムに対応する前記姿勢変更部は、前記カムのカム面と接触するとともに前記カムの姿勢を変更可能なカム姿勢制御面を有し、
前記カム姿勢制御面は、前記カムが通常に動作するカム作動部と、前記カム作動部より半径方向前記カム側に突出する形状で前記カムを作動しない姿勢に変更するカム解除部とを有することを特徴とするカムクラッチ。
【請求項2】
前記複数のカムが、回転軸方向に少なくとも第1列と第2列の2列に配置され、
第1列カムの外周側のカム面は前記外輪とのみ、内周側のカム面は前記内輪とのみ接触可能であり、
第2列カムの外周側又は内周側のカム面は前記セレクタの前記カム姿勢制御面と接触可能であり、
前記セレクタは、前記第1列カムの側面を周方向に押圧して前記第1列カムの姿勢を変更可能なカム押圧部からなる姿勢変更部を有することを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチ。
【請求項3】
前記複数のカムが、回転軸方向に少なくとも第1列と第2列の2列に配置され、
第1列カムの外周側のカム面は前記外輪とのみ接触可能で、内周側のカム面は前記セレクタの前記カム姿勢制御面と接触可能であり、
第2列カムの内周側のカム面は前記内輪とのみ接触可能で、外周側のカム面は前記セレクタの前記カム姿勢制御面と接触可能であることを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチ。
【請求項4】
前記複数のカムが、回転軸方向に少なくとも第1列乃至第3列の3列に配置され、
前記内輪が、第1列カム及び第2列カムと接触可能な第1内輪と、前記第1内輪とは独立して回転可能で第3列カムと接触可能な第2内輪とを有し、
第3列カムの外周側又は内周側のカム面は前記セレクタの前記カム姿勢制御面と接触可能であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のカムクラッチ。
【請求項5】
前記複数のカムが、異なる種類のカムを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のカムクラッチ。
【請求項6】
少なくとも1つの列の前記内輪と前記外輪の間に、前記内輪の外周面と前記外輪の内周面との間隔を保持するよう配置されている間隔保持部材を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のカムクラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外輪及び内輪の相対的な回転動作を許容するフリー状態と、外輪及び内輪の相対的な回転動作を禁止するロック状態とを切り換え可能に構成されたカムクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
回転力の伝達と遮断を制御するクラッチとして、内輪及び外輪の相対的な回転動作を禁止(回転力を伝達)するロック状態と、内輪及び外輪の相対的な回転動作を許容(回転力を遮断)するフリー状態との切り換えを、カム又はスプラグの姿勢を強制的に変更して行うカムクラッチが公知である。
【0003】
例えば、特許文献1には、内輪と外輪の間の周方向に設けられた複数のカムを強制的に傾倒させる手段として複数のピン部材を備えたカム姿勢変更部を有し、ピン部材が相対的に周方向に移動してカムの側面を周方向に押圧することで、カムの姿勢を強制的に変更するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6882699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのカムクラッチにおいては、ロック状態からフリー状態に切り替える際に、カムの係合力が残っている状態ではカムの姿勢変更に大きな駆動力を必要とし、内外輪のトルク伝達がされている状態での切り替えが円滑にできない虞があった。
また、内外輪軌道面を傷めるおそれもあり、カムの姿勢を変化させるための機構やアクチュエータも駆動力に応じて大型化する必要があった。
【0006】
特許文献1で公知のカムクラッチは、応答性が高く、所期のトルク容量を確保できるものであり、ピン部材がピンの傾動中心から離れた位置にあることでカムの姿勢変更のためにある程度大きな駆動力を発生することが可能であるが、各ピンの相対的な位置を高精度に確保する必要があり、また、カムの姿勢変更時にカム姿勢変更部の回転角度を高精度に制御する必要があった。
【0007】
本発明は、これらの問題点を解決するものであって、簡単な構成で、高精度の制御を不要とするとともに、カムの姿勢を強制的に変更する際の駆動力が小さくクラッチ動作の安定性を向上させることができて高い応答性を得ることができ、モード切替の自由度の高いカムクラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、同軸上に相対回転可能に設けられている内輪及び外輪と、前記内輪と前記外輪の間に周方向に配置されている複数のカムと、前記外輪又は前記内輪と回転方向に固定され複数のカムを支持するケージ部材を備えたカムクラッチであって、前記ケージ部材が回転方向に固定された前記外輪又は前記内輪と相対的な回転角の制御が可能なセレクタを備え、前記複数のカムが、回転軸方向に複数列に配置され、前記セレクタは、前記複数のカム列のカムの姿勢をそれぞれ変更可能な複数の姿勢変更部を有し、少なくとも1つの列のカムに対応する前記姿勢変更部は、前記カムのカム面と接触するとともに前記カムの姿勢を変更可能なカム姿勢制御面を有し、前記カム姿勢制御面は、前記カムが通常に動作するカム作動面部と、前記カム作動面より半径方向前記カム側に突出する形状で前記カムを作動しない姿勢に変更するカム解除面とを有することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る発明によれば、複数のカムが回転軸方向に複数列に配置されていることにより、セレクタが複数のカム列のカムの姿勢をそれぞれ変更可能な複数の姿勢変更部を有していることにより、複数列のカムの姿勢を1つのセレクタの回転によりそれぞれ変更可能に構成でき、複数のモードを1つのセレクタの回転角の制御で行うことができる。
また、少なくとも1つの列のカムに対して、カム姿勢制御面がカム面と接触してカムの姿勢を変更可能であり、カム作動部とカム作動部より半径方向カム側に突出する形状でカムを作動しない姿勢に変更するカム解除部とを有することにより、カム解除部のいずれの位置でもカムの動作を解除できるため、複数のカムに対する位置を高精度に揃える必要がなく、また、セレクタの回転角の高精度の制御も不要となる。
【0010】
また、カム姿勢制御面に対応する列においては、カムの姿勢を強制的に変更する際の駆動力が小さく、切り替えのための部品やアクチュエータを小型化でき安価に製作可能となるとともに、クラッチ動作の安定性を向上させることができて高い応答性を得ることができ、内外輪軌道面を傷めないことで耐久性が向上する。
また、カム姿勢制御面に対応する列の切り替えはカムの端面を乗り上げての切り替えの為、セレクタの切り替え角を高精度に制御することなく大きくとることができ、各寸法公差、制御誤差に左右されずに確実な動作が可能となる。
さらに、このことで、カム姿勢制御面に対応する列においてカムの動作を解除状態のまま、さらに他の列のモード切替のためのセレクタの回転が許容されることから、1つのセレクタの回転によって切り替える複数のモードの組み合わせ自由度が向上する。
【0011】
本請求項2に係る構成によれば、第1列カムがロック状態の場合、セレクタでトルクを受ける必要がないことから、セレクタの構造を簡素化でき、耐久性がさらに向上する。
本請求項3に係る発明によれば、第1列カム、第2列カムともにカム姿勢制御面に対応することで、全てのモードにおいてセレクタの回転角の高精度の制御が不要となる。
本請求項4に係る発明によれば、独立した2つの内輪に対し、1つのセレクタでモード切替を行うことが可能となる。
本請求項5に係る発明によれば、異なる種類のカムを含むことにより、セレクタで切替えられるモード毎にトルク伝達特性や応答速度特性等が異なる場合でも、最適に合わせることが可能となる。
本請求項6に係る構成によれば、少なくとも1つの列の内輪と外輪の間に、内輪の外周面及び外輪の内周面の間隔を保持するよう配置されている間隔保持部材を有することにより、間隔保持部材によって同心保持機能を有することで他の軸受部材を省略でき軸方向にコンパクトにできるとともに、内輪と外輪の軸心が高精度に一致することで複数のカムの動作のばらつきが低減しクラッチ動作の安定性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るカムクラッチの斜視図。
図2図1に示すカムクラッチの分解斜視図。
図3図1に示すカムクラッチの断面図。
図4図1に示すカムクラッチの動作説明図。
図5】本発明の第2実施形態に係るカムクラッチの動作説明図。
図6】本発明の第3実施形態に係るカムクラッチの動作説明図。
図7】本発明の第4実施形態に係るカムクラッチの動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例を図1図7を参照して説明する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【実施例0014】
本発明の第1実施形態に係るカムクラッチ100は、図1図3に示すように、同一軸上に相対回転可能に設けられる内輪110及び外輪120と、内輪110と外輪120との間で動力の伝達及び遮断を行う複数のカム140と、外輪120と回転方向に固定され複数のカム140を支持するケージ部材150と、外輪120と相対的な回転角の制御が可能なセレクタ170を備えている。
複数のカム140は回転軸方向に第1列カム141と第2列カムの2列に配置され、第1列カムと第2列カムは、それぞれ、逆方向のワンウェイクラッチを構成するように配置されている。
セレクタ170は、第1列カム141の姿勢を変更可能な姿勢変更部である押圧部175と、第2列カム142の姿勢を変更可能な姿勢変更部であるカム姿勢制御面171を有している。
【0015】
カム姿勢制御面171は、第2列カム142が通常に動作するカム作動部172と、カム作動部172より半径方向第2列カム142側に突出する形状で第2列カム142を作動しない姿勢に変更するカム解除部173とを有している。
本実施形態では、第2列カム142の外輪120側のカム面は、セレクタの170のカム姿勢制御面171とのみ接触し、外輪120の内周面とは接触しないように構成されているが、回転軸方向の一部が外輪120の内周面と接触するように構成されてもよい。
【0016】
カム押圧部175は、第1列カム141にそれぞれ対応した複数の軸方向に伸びるピン状部を有し、セレクタ170の回転によって第1列カム141の側面を周方向に押圧して第1列カム141の姿勢を変更可能に構成されている。
本実施形態では、カム押圧部175はセレクタ本体175と別部品で構成され、使用時にはカム押圧部175とセレクタ本体175が一体に回転するセレクタ170として機能するように構成されている。
第1列カム141の外輪120側のカム面は外輪120とのみ、内輪110側のカム面は内輪110とのみ接触可能に構成され、セレクタ170の回転によってカム押圧部175が第1列カム141の側面を押圧することで、第1列カム141が作動しない姿勢に変更される。
セレクタ170は、アクチュエータ180によって外輪120と相対的に回転駆動され、外輪120との相対的な回転角を制御可能に構成されている。
本実施形態では、外輪120とアクチュエータ180が固定部に固定されることで、外輪120とセレクタ170との相対的な回転角がアクチュエータ180によって制御される。
【0017】
本実施形態に係るカムクラッチ100は、図4に示すように、内輪110が外輪120に対して両方向の相対的な回転動作が許容される2wayフリー状態と、一方向の回転動作が許容され反対方向の回転動作が禁止される1wayロック状態と両方向の回転動作が禁止される2wayロック状態とが、セレクタ170の回転角により切り替えられる。
2wayフリー状態(図4の下段右側:0°の位置)では、第2列カム142の外輪120側のカム面はセレクタ170のカム姿勢制御面171のカム解除部173に接触して、第2列カム142がワンウェイクラッチとして動作しない姿勢に保たれ、第1列カム141の内輪110側の側面はセレクタ170のカム押圧部175に押圧されて、第1列カム141がワンウェイクラッチとして動作しない姿勢に保たれている。
【0018】
1wayロック状態(図4の下段中央:-α°の位置)では、第2列カム142の外輪120側のカム面はセレクタ170のカム姿勢制御面171のカム解除部173に接触して、第2列カム142がワンウェイクラッチとして動作しない姿勢に保たれ、セレクタ170のカム押圧部175が第1列カム141の内輪110側の側面から離れて、第1列カム141がワンウェイクラッチとして動作する姿勢となる。
2wayロック状態(図4の下段左側:-α-α°の位置)では、第2列カム142の外輪120側のカム面はセレクタ170のカム姿勢制御面171のカム作動部172に接触して、第2列カム142がワンウェイクラッチとして動作する姿勢となり、セレクタ170のカム押圧部175が第1列カム141の内輪110側の側面から離れて、第1列カム141がワンウェイクラッチとして動作する姿勢となる。
【実施例0019】
本発明の第2実施形態に係るカムクラッチは、図5に示すように、第1列カム141と第2列カム142がセレクタ170を挟んで両側に配置され、第1列カム141の内輪110側のカム面の一部が、セレクタ170の第1列カム141の姿勢を変更可能な姿勢変更部であるカム姿勢制御面171bと接触するように構成されている。
2wayフリー状態(図5の下段右側:0°の位置)では、第2列カム142の外輪120側のカム面はセレクタ170のカム姿勢制御面171のカム解除部173に接触して、第2列カム142がワンウェイクラッチとして動作しない姿勢に保たれ、第1列カム141の内輪110側のカム面の一部はセレクタ170のカム姿勢制御面171bのカム解除部173bに接触して、第1列カム141がワンウェイクラッチとして動作しない姿勢に保たれている。
【0020】
1wayロック状態(図5の下段中央:-α°の位置)では、第2列カム142の外輪120側のカム面はセレクタ170のカム姿勢制御面171のカム解除部173に接触して、第2列カム142がワンウェイクラッチとして動作しない姿勢に保たれ、第1列カム141の内輪110側のカム面はセレクタ170のカム姿勢制御面171bのカム解除部173bから離れて内輪110側の外周面と接触可能となり、第1列カム141がワンウェイクラッチとして動作する姿勢となる。
2wayロック状態(図5の下段左側:-α-α°の位置)では、第2列カム142の外輪120側のカム面はセレクタ170のカム姿勢制御面171のカム作動部172に接触して、第2列カム142がワンウェイクラッチとして動作する姿勢となり、第1列カム141の内輪110側のカム面はセレクタ170のカム姿勢制御面171bのカム解除部173bから離れて内輪110側の外周面と接触可能となり、第1列カム141がワンウェイクラッチとして動作する姿勢となる。
なお、本実施形態では、第2列カム142に対するカム解除部173の円周方向の長さを短くし、第1列カム141に対するカム解除部173bの円周方向の長さ長くすることで、1wayロック状態の回転が阻止される方向を逆とすることも可能である。
【実施例0021】
本発明の第3実施形態に係るカムクラッチは、図6に示すように、前述の第1実施形態のカムクラッチ100のセレクタ170を回転軸方向の反対側に、第2内輪112と第2外輪122を設けて、その間に第3列カム143を配置したものである。
第2外輪122は、外輪120同様に固定部に固定され、第2内輪112は、内輪110とは独立して回転可能に構成されている。
そして、第3列カム143の第2内輪112側のカム面の一部が、セレクタ170の第3列カム143の姿勢を変更可能な姿勢変更部であるカム姿勢制御面171cと接触するように構成されている。
内輪110の回転は、前述の第1実施形態と同様に2wayフリー状態(図6の下段右から2番目:0°の位置)、1wayロック状態(図6の下段左から2番め:-α°の位置)、2wayロック状態(図6の下段左側:-α-α°の位置)に切替可能である。
【0022】
これらの位置では、第3列カム143の第2内輪112側のカム面の一部はセレクタ170のカム姿勢制御面171cのカム解除部173cに接触して、第3列カム143がワンウェイクラッチとして動作しない姿勢に保たれ、第2内輪112は自由に回転可能な2wayフリー状態となる。
そして、内輪110の回転が2wayフリー状態かつ第2内輪112が2wayフリー状態(図6の下段右から2番目:0°の位置)から、セレクタ170を逆に回転操作する(図6の下段右:+α°の位置)と、第3列カム143の第2内輪112側のカム面はセレクタ170のカム姿勢制御面171cのカム解除部173cから離れて第2内輪112側の外周面と接触可能となり、第3列カム143がワンウェイクラッチとして動作する姿勢となる。
この時、第1列カム141の側面を押圧するカム押圧部175が、第1列カム141の姿勢変更の限界以上に押すこととなる場合は、図6の矢印で示すように、カム押圧部175が押し戻されて、必要以上に第1列カム141の側面を押さない弾性機構等を設けることが望ましい。
【実施例0023】
本発明の第4実施形態に係るカムクラッチは、図7に示すように、前述の第2実施形態のカムクラッチの第2列カム142のさらに回転軸方向のセレクタ170の反対側に、第2内輪112と第2外輪122を設けて、その間に第3列カム143を配置したものである。
第2外輪122は、外輪120同様に固定部に固定され、第2内輪112は、内輪110とは独立して回転可能に構成されている。
そして、第3列カム143の第2外輪122側のカム面の一部が、セレクタ170の第3列カム143の姿勢を変更可能な姿勢変更部であるカム姿勢制御面171dと接触するように構成されている。
内輪110の回転は、前述の第2実施形態と同様に2wayフリー状態(図7の下段右から2番目:0°の位置)、1wayロック状態(図7の下段左から2番め:-α°の位置)、2wayロック状態(図7の下段左側:-α-α°の位置)に切替可能である。
【0024】
これらの位置では、第3列カム143の第2外輪122側のカム面の一部はセレクタ170のカム姿勢制御面171dのカム解除部173dに接触して、第3列カム143がワンウェイクラッチとして動作しない姿勢に保たれ、第2内輪112は自由に回転可能な2wayフリー状態となる。
そして、内輪110の回転が2wayフリー状態かつ第2内輪112が2wayフリー状態(図7の下段右から2番目:0°の位置)から、セレクタ170を逆に回転操作する(図7の下段右:+α°の位置)と、第3列カム143の第2外輪122側のカム面はセレクタ170のカム姿勢制御面171cのカム解除部173dから離れて第2外輪122側の内周面と接触可能となり、第3列カム143がワンウェイクラッチとして動作する姿勢となる。
【0025】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
上記各実施形態においては、図示されたアクチュエータ180は、セレクタ170の外周に噛み合うウオーム歯車付きのモータを想定しているが、外輪120、第2外輪122に対してセレクタ170を相対的に回転駆動するものであれば、いかなるものであってもよい。
また、第3、第4実施形態では、独立回転できる第2内輪を有するが、さらに独立回転する内輪が3つ以上であってもよく、その数に応じて、カムの列数も4列以上であってもよい。
また、内輪と外輪の間に、間隔保持部材として複数のローラがカムと同一円周上配置されてもよく、間隔保持部材は、内輪の外周面及び外輪の内周面と摺動するよう配置されたブロック部材であってもよく、間隔保持部材がケージ部材150に固定され、あるいはケージ部材150と一体に形成されていてもよい。
また、各列のカムは、その要求されるトルク耐性等に応じて異なる形状としてもよい。
さらに、内輪を固定部に固定し、内輪に対してセレクタの回転角を制御するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0026】
100 ・・・ カムクラッチ
110 ・・・ 内輪
112 ・・・ 第2内輪
120 ・・・ 外輪
122 ・・・ 第2外輪
140 ・・・ カム
141 ・・・ 第1列カム
142 ・・・ 第2列カム
143 ・・・ 第3列カム
150 ・・・ ケージ部材
170 ・・・ セレクタ
171 ・・・ カム姿勢制御面
172 ・・・ カム作動部
173 ・・・ カム解除部
175 ・・・ カム押圧部
176 ・・・ セレクタ本体
180 ・・・ アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7