(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135047
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20230921BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230921BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20230921BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20230921BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H01L29/80 F
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
H01L29/78 301G
H01L29/58 G
H01L29/44 S
H01L21/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040057
(22)【出願日】2022-03-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省、「100GHz以上の高周波数帯通信デバイスに関する研究開発」研究開発委託契約に基づく開発項目「高出力送信を可能とする化合物系半導体技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 史朗
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直哉
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 祐介
(72)【発明者】
【氏名】多木 俊裕
(72)【発明者】
【氏名】原 直紀
【テーマコード(参考)】
4M104
5F102
5F140
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104BB06
4M104BB09
4M104BB14
4M104CC01
4M104CC05
4M104DD04
4M104DD08
4M104DD17
4M104DD34
4M104DD68
4M104EE03
4M104EE12
4M104EE14
4M104EE16
4M104FF07
4M104FF17
4M104GG08
4M104HH20
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD10
5F102GJ06
5F102GK04
5F102GL04
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GQ04
5F102GR04
5F102GS04
5F102GV05
5F102GV06
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC11
5F102HC16
5F102HC17
5F102HC19
5F140BA06
5F140BB06
5F140BB18
5F140BD04
5F140BD11
(57)【要約】
【課題】半導体装置の、半導体層と電極との短絡に起因した性能低下を抑える。
【解決手段】半導体装置1は、基板10の面10a側に設けられる半導体層20の、基板10とは反対側を覆うように設けられる保護膜70を含む。保護膜70には、Siを含有する絶縁膜が用いられる。保護膜70は、開口部71を有する。保護膜70の開口部71と、半導体層20の方向D1に面する側面20a側とに、ゲート電極30が設けられる。半導体層20の側面20aと、その側面20a側に設けられるゲート電極30との間に、金属元素を含有する絶縁膜80が設けられる。半導体層20の側面20aは、絶縁膜80により、保護膜70の開口部71をドライエッチングで形成する際のガスに曝されることが抑えられ、また、ゲート電極30との接触及び短絡が抑えられる。これにより、リーク電流等による半導体装置1の性能低下が抑えられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1面側に設けられる半導体層と、
前記半導体層の、前記基板とは反対側を覆うように設けられ、開口部を有し、Siを含有する第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の前記開口部と、前記半導体層の、前記基板の前記第1面と平行な第1方向に面する第2面側とに設けられる電極と、
前記半導体層の前記第2面と、前記第2面側に設けられる前記電極との間に設けられ、金属元素を含有する第2絶縁膜と、
を含む半導体装置。
【請求項2】
前記第1絶縁膜は、前記半導体層の前記第2面側に延び、前記第2絶縁膜と、前記第2面側に設けられる前記電極との間に設けられる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体層は、
チャネル層と前記チャネル層に積層されるキャリア供給層とを含む第1層と、
前記第1層の、前記基板とは反対側に積層される第2層と、
を含み、
前記第2絶縁膜は、前記半導体層の前記第2面における前記第1層及び前記第2層のうちの前記第1層を覆う、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体層は、
チャネル層と前記チャネル層に積層されるキャリア供給層とを含む第1層と、
前記第1層の、前記基板とは反対側に積層される第2層と、
を含み、
前記第2絶縁膜は、前記半導体層の前記第2面における前記第1層及び前記第2層を覆い、前記半導体層の、前記基板とは反対側に延びる、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2絶縁膜は、
前記半導体層の前記第2面における前記第1層を覆い、前記第1層から前記基板の前記第1面と平行な前記第1方向に第1厚さを有する第1部位と、
前記半導体層の前記第2面における前記第2層を覆い、前記半導体層の、前記基板とは反対側に延び、前記第2層から前記基板の前記第1面と平行な前記第1方向に前記第1厚さよりも薄い第2厚さを有する第2部位と、
を含む、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2層は、前記第1層よりも、前記基板の前記第1面と平行な前記第1方向に張り出した形状を有する、請求項3から5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2絶縁膜に含有される前記金属元素は、電気陰性度が1.8以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
基板の第1面側に設けられる半導体層を形成する工程と、
前記半導体層の、前記基板とは反対側を覆うように設けられ、開口部を有し、Siを含有する第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜の前記開口部と、前記半導体層の、前記基板の前記第1面と平行な第1方向に面する第2面側とに設けられる電極を形成する工程と、
を含み、
前記第1絶縁膜を形成する工程前に、前記半導体層の前記第2面と、前記第2面側に設けられる前記電極との間に設けられ、金属元素を含有する第2絶縁膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1絶縁膜を形成する工程は、ガスを用いたエッチングによって前記開口部を形成する工程を含む、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
基板と、
前記基板の第1面側に設けられる半導体層と、
前記半導体層の、前記基板とは反対側を覆うように設けられ、開口部を有し、Siを含有する第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の前記開口部と、前記半導体層の、前記基板の前記第1面と平行な第1方向に面する第2面側とに設けられる電極と、
前記半導体層の前記第2面と、前記第2面側に設けられる前記電極との間に設けられ、金属元素を含有する第2絶縁膜と、
を含む半導体装置を備える電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に広いバンドギャップ半導体層と狭いバンドギャップ半導体層と広いバンドギャップ半導体層とを順次積層したヘテロエピタキシャル構造の素子間を、エッチングにより除去し電気的に分離するヘテロ接合型電界効果トランジスタが知られている。このようなヘテロ接合型電界効果トランジスタに関し、エッチング端面に露出する狭いバンドギャップ半導体層を選択的にエッチングして後退させ、素子間分離用エッチング段差部に設けられるゲート電極との間を空間的に分離する技術が知られている。更に、エッチング端面に露出する狭いバンドギャップ半導体層を後退させた後、SiO2(酸化シリコン)等の絶縁膜を堆積し、ゲート電極と狭いバンドギャップ半導体層との間を、その絶縁膜で距てられた空間によって分離する技術が知られている。
【0003】
また、基板上のチャネル層を含む半導体層をエッチングして素子間分離領域を形成し、その側面に表出するチャネル層をエッチングしてエアギャップを形成し、半導体層上からエアギャップを越えてゲート電極を形成する電界効果型半導体装置が知られている。
【0004】
また、端が逆テーパ形状のメサの最上層の半導体層に接すると共に、最上層の半導体層から浮き上がらないように設けた電極が、メサの側部において素子動作に直接関与する能動半導体層と間隙を持って対向するメサ型半導体装置が知られている。このようなメサ型半導体装置に関し、電極と能動半導体層との間隙を、エアギャップとする技術、誘電体であるSiO2で埋め込む技術が知られている。
【0005】
また、積層され且つメサ化された化合物半導体層の側壁に酸化絶縁膜を形成する化合物電界効果半導体装置が知られている。このような化合物電界効果半導体装置に関し、化合物半導体層の側壁を液相酸化法によって又は液相酸化法とスチーム酸化法とを併用して酸化絶縁膜を生成させる技術、その酸化絶縁膜によって金属ゲートの化合物半導体層との接触等を抑える技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-291306号公報
【特許文献2】特開2002-270821号公報
【特許文献3】特開2003-258004号公報
【特許文献4】特開2002-124664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、基板上に設けられる半導体層を用いてトランジスタ等の半導体素子が実現される半導体装置では、半導体層を保護膜で覆うことが行われる場合がある。保護膜には、SiO2やSiN(窒化シリコン)といった、Si(シリコン)を含有するSi系絶縁膜が広く利用される。
【0008】
このような保護膜が設けられる半導体装置では、半導体層を覆う保護膜がエッチングされ、半導体素子のゲート等に接続される電極を設けるための開口部が形成されることがある。この時、保護膜が、半導体層の側面(基板の半導体層が設けられる面と平行な方向に面する側面)に形成されないか、或いは、半導体層の側面に形成されるがその後のエッチングにより半導体層の側面から除去されてしまうと、半導体層の側面が露出した状態となる。保護膜の開口部に設けられる電極が、このように露出した状態となった半導体層の側面に接触するように設けられると、半導体層と電極との短絡が生じ、半導体装置の性能が低下してしまうことが起こり得る。
【0009】
1つの側面では、本発明は、半導体層と電極との短絡に起因した性能低下を抑えることのできる半導体装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、基板と、前記基板の第1面側に設けられる半導体層と、前記半導体層の、前記基板とは反対側を覆うように設けられ、開口部を有し、Siを含有する第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜の前記開口部と、前記半導体層の、前記基板の前記第1面と平行な第1方向に面する第2面側とに設けられる電極と、前記半導体層の前記第2面と、前記第2面側に設けられる前記電極との間に設けられ、金属元素を含有する第2絶縁膜と、を含む半導体装置が提供される。
【0011】
また、別の態様では、上記のような半導体装置の製造方法、上記のような半導体装置を備える電子装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
1つの側面では、半導体層と電極との短絡に起因した性能低下を抑えることのできる半導体装置を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】半導体装置の一例について説明する図である。
【
図2】半導体装置の製造工程の一例について説明する図(その1)である。
【
図3】半導体装置の製造工程の一例について説明する図(その2)である。
【
図4】半導体装置の製造工程の一例について説明する図(その3)である。
【
図5】第1の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
【
図6】半導体装置の特性評価結果の一例を示す図である。
【
図7】第2の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その1)である。
【
図9】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その2)である。
【
図10】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その3)である。
【
図11】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その4)である。
【
図12】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その5)である。
【
図13】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その6)である。
【
図14】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その7)である。
【
図15】第3の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
【
図16】第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図である。
【
図17】第4の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
【
図18】第5の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
【
図19】第6の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
【
図20】第7の実施の形態に係る半導体パッケージの一例について説明する図である。
【
図21】第8の実施の形態に係る力率改善回路の一例について説明する図である。
【
図22】第9の実施の形態に係る電源装置の一例について説明する図である。
【
図23】第10の実施の形態に係る増幅器の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
化合物半導体材料を用いた電界効果型半導体装置の1種として、高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor;HEMT)が知られている。このような電界効果型半導体装置は、優れた低雑音特性を持ち、マイクロ波やミリ波等の周波数帯域で用いられる増幅器や、光通信における信号処理回路等に利用される。化合物半導体材料を用いた電界効果型半導体装置のうち、例えば、InP(リン化インジウム)系材料を用いたInP系HEMTは、高速動作性に優れ、また、低雑音であるため、上記のような増幅器や信号処理回路等に好適である。
【0015】
InP系HEMTでは、素子間分離を行う場合、イオン注入法による絶縁領域の形成が困難である。そのため、InP系HEMTでは、チャネル層やキャリア供給層等を含む半導体層を基板上に形成した後、その半導体層をメサ化することによって素子間分離が行われる。半導体層のメサ化によって素子間分離が行われる場合、得られるメサの側面には、基板上に形成した半導体層の側面が露出することになる。InP系HEMTでは、このようにメサ化された半導体層上からその側面に延びるようにゲート電極を設ける構造が採用される。しかし、この場合、ゲート電極が、半導体層に含まれるチャネル層の側面に接触すると、短絡を引き起こし得る。そこで、例えば、半導体層に含まれるチャネル層を他の層に対して選択的にサイドエッチングし、チャネル層の側面を他の層の側面よりも後退させ、メサの側面に設けられるゲート電極とチャネル層との間にエアギャップと呼ばれる空間を設け、それらの接触を抑えることが行われる場合がある。
【0016】
ところで、このようなInP系HEMTのゲート電極の形成前には、素子間分離及びサイドエッチングが行われた半導体層を覆うように、SiN等のSi系絶縁膜が保護膜(パッシベーション膜とも言う)として形成される場合がある。
【0017】
ここで、上記InP系HEMTのような、メサ化による素子間分離、チャネル層のサイドエッチング、及びSi系絶縁膜の保護膜形成を採用する半導体装置の一例について、
図1から
図4を参照して説明する。
【0018】
図1は半導体装置の一例について説明する図である。
図1には、半導体装置の一例の要部平面図を模式的に示している。
図1に示す半導体装置100は、基板110、半導体層120、ゲート電極130、ソース電極140、ドレイン電極150及び保護膜170を有する。基板110上に半導体層120が形成される。半導体層120には、後述のように、チャネル層及びキャリア供給層等が含まれる。半導体層120は、メサ化により形成される素子分離領域160によって画定され、素子間分離が行われる。半導体層120は、後述のように、サイドエッチングによってチャネル層の側面が他の層の側面よりも後退される。素子間分離及びサイドエッチングが行われた半導体層120上に、互いに分離されたソース電極140及びドレイン電極150が設けられる。半導体層120並びにその上に設けられるソース電極140及びドレイン電極150を覆うように、Si系絶縁膜の保護膜170が設けられる。半導体層120上の、ソース電極140とドレイン電極150との間に、それらから分離されて、ゲート電極130が設けられる。ゲート電極130は、保護膜170を貫通して設けられ、例えば、半導体層120に接する。ゲート電極130は、半導体層120上からその側面120a(又は素子分離領域160)に延びるように設けられる。
【0019】
図2から
図4は半導体装置の製造工程の一例について説明する図である。
図2には、保護膜形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図3には、開口部形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図4には、ゲート電極形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図2から
図4において、
図2(A)、
図3(A)及び
図4(A)には、
図1のL1-L1線に沿った位置に相当する断面図を模式的に示している。
図2から
図4において、
図2(B)、
図3(B)、
図4(B)及び
図4(C)には、
図1のL2-L2線に沿った位置に相当する断面図を模式的に示している。
図2(B)には、
図2(A)のII-II断面図を模式的に示している。
図3(B)には、
図3(A)のIII-III断面図を模式的に示している。
図4(B)及び
図4(C)には、
図4(A)のIV-IV断面図を模式的に示している。
【0020】
半導体装置100(
図1)の製造では、まず、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、基板110上に半導体層120が形成される。例えば、チャネル層121、キャリア供給層122、エッチング停止層123及びキャップ層124が順次積層された半導体層120が、基板110上に形成される。チャネル層121の、キャリア供給層122との界面近傍に、二次元キャリアガス128が生成される。基板110上に形成された半導体層120は、エッチングによりメサ化され、素子間分離が行われる。これにより、
図2(B)に示すような、素子分離領域160で画定された半導体層120が形成される。
【0021】
素子分離領域160の形成は、例えば、次のようにして行われる。素子分離領域160を形成する領域を開口したレジストマスク(図示せず)がキャップ層124上に形成され、例えば、リン酸及び過酸化水素水の混合液が用いられ、キャップ層124がエッチングされる。このエッチングは、エッチング停止層123の表面で停止される。次いで、例えば、塩酸が用いられ、エッチング停止層123がエッチングされる。このエッチングは、キャリア供給層122の表面で停止される。その後、例えば、リン酸及び過酸化水素水の混合液が用いられ、キャリア供給層122及びチャネル層121がエッチングされる。このようにして素子分離領域160が形成される。素子分離領域160の形成後、レジストマスクは除去される。このようなエッチングによる素子分離領域160の形成により、
図2(B)に示すように、エッチング停止層123及びキャリア供給層122は、チャネル層121よりも外側に張り出した形状となる。半導体層120の側面120aには、チャネル層121よりも外側に張り出した、エッチング停止層123及びキャリア供給層122の庇部190が形成される。
【0022】
素子分離領域160の形成後、半導体層120のキャップ層124上に、ソース電極140及びドレイン電極150が形成される。その後、ソース電極140とドレイン電極150との間のキャップ層124に対してエッチングが行われ、キャップ層124に、エッチング停止層123に通じるリセス124aが形成される。リセス124aの形成後、半導体層120並びにその上に形成されたソース電極140及びドレイン電極150を覆うように、SiN等の保護膜170が形成される。
【0023】
このような工程により、
図2(A)及び
図2(B)に示すような構造が得られる。
次いで、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、保護膜170の、ゲート電極130を形成する領域に、半導体層120(リセス124a内のエッチング停止層123)に通じる開口部171が形成される。開口部171の形成には、例えば、リソグラフィ技術、及びフッ素系ガスを用いたドライエッチング技術が用いられる。
【0024】
この開口部171の形成時には、半導体層120の側面120aに形成された保護膜170がレジストマスク(図示せず)で被覆されていないか又は十分に被覆されていないと、
図3(B)に示すように、側面120aの保護膜170が除去されることが起こり得る。側面120aの保護膜170が除去されると、側面120aが露出し、チャネル層121よりも外側に張り出した形状のエッチング停止層123及びキャリア供給層122(それらの庇部190)が露出することになる。
【0025】
ここで、エッチング停止層123は、エッチング停止層123及びキャリア供給層122を介したチャネル層121と後述するゲート電極130との間の距離を所定の距離に抑えるため、チャネル層121に比べて薄く形成される。そのため、保護膜170の除去によって露出した比較的薄いエッチング停止層123が、保護膜170の除去後も更にドライエッチングのフッ素系ガスに曝されると、エッチング停止層123が消失してしまうことがある。そして、エッチング停止層123の消失によってむき出しになったキャリア供給層122が更にフッ素系ガスに曝されて消失してしまうと、
図3(B)に矢印及び点線で示すように、張り出した庇部190が消失してしまうこともある。尚、このような庇部190の消失による影響については後述する。
【0026】
ドライエッチングによる開口部171の形成後には、例えば、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、ゲート電極130の形成が行われる。ゲート電極130は、開口部171内の半導体層120(リセス124a内のエッチング停止層123)上に形成されると共に、半導体層120上からその側面120aに延び、素子分離領域160まで形成される。このようなゲート電極130が形成され、例えば、
図4(A)及び
図4(B)に示すような半導体装置100が製造される。
【0027】
ここで、ゲート電極130の形成に先立って行われる開口部171の形成(
図3)において、半導体層120の側面120aの保護膜170が除去され、露出した側面120aにエッチング停止層123及びキャリア供給層122の庇部190が残存する場合を考える。開口部171の形成後、このように庇部190が残存していれば、
図4(B)に示すように、チャネル層121とゲート電極130との間には空間180が形成される。空間180が形成されることで、チャネル層121とゲート電極130との接触が抑えられ、それらの短絡、即ち、チャネル層121に生成される二次元キャリアガス128とゲート電極130との短絡が抑えられる。
【0028】
これに対し、ゲート電極130の形成に先立って行われる開口部171の形成(
図3)において、半導体層120の側面120aの保護膜170が除去され、露出した側面120aのエッチング停止層123及びキャリア供給層122の庇部190が消失する場合(
図3(B)の矢印及び点線)を考える。開口部171の形成後、このように庇部190が消失していると、例えば、
図4(C)のような状態となり得る。即ち、チャネル層121とゲート電極130との間に上記のような空間180が形成されず、チャネル層121とゲート電極130とが接触し、それらが短絡してしまうことが起こり得る。また、保護膜170から露出する半導体層120の側面120aに庇部190が残存する場合であっても、その残存する庇部190の張り出しの程度によっては、ゲート電極130との間に十分な空間180が形成されないことが起こり得る。その結果、同様に、チャネル層121とゲート電極130との接触及びそれによる短絡が生じ得る。
【0029】
例えば、
図4(C)に示すように、半導体層120の側面120aに露出するチャネル層121とゲート電極130との接触、それによる短絡が生じると、半導体装置100の性能が低下してしまう恐れがある。例えば、半導体層120の側面120aに露出するチャネル層121とゲート電極130とが短絡することで、リーク電流が発生し、トランジスタが十分にオフしないピンチオフ不良が発生する恐れがある。
【0030】
尚、上記のような開口部171の形成時における庇部190の消失を抑えるためには、エッチング停止層123及びキャリア供給層122のうち、エッチング停止層123を厚くし、それによって庇部190を厚くすることも考えられる。エッチング停止層123を厚くすれば、開口部171の形成時における庇部190のエッチング停止層123の消失、それによるキャリア供給層122の消失は抑えられ得る。但し、このようにエッチング停止層123を厚くすると、エッチング停止層123及びキャリア供給層122を介したチャネル層121とゲート電極130との間の距離が大きくなり、ゲート電極130からチャネル層121に印加される電界の強度が弱まる。そのため、半導体装置100の高周波特性が劣化してしまう恐れがある。
【0031】
ここでは、半導体層120の側面120aに形成される保護膜170が、ドライエッチングによる開口部171の形成時に側面120aから除去され、庇部190が消失することで、チャネル層121とゲート電極130との接触及び短絡が生じる例を示した。このほか、保護膜170は用いるが、半導体層120の側面120aには元々保護膜170を形成しない工程を採用する場合にも、同様のことが起こり得る。即ち、開口部171の形成時のドライエッチングに曝されて庇部190が消失すると、チャネル層121とゲート電極130との接触及びそれによる短絡が生じ得る。
【0032】
尚、保護膜170のドライエッチングには、フッ素系ガス以外のエッチングガスが用いられ得る。フッ素系ガス以外のエッチングガスが用いられる場合にも、露出した半導体層120の側面120aが当該エッチングガスに曝されることで、上記フッ素系ガスが用いられる場合と同様のことが起こり得る。
【0033】
以上のような点に鑑み、ここでは以下に実施の形態として示すような手法を用い、半導体層と電極との短絡に起因した性能低下を抑えることのできる半導体装置を実現する。
[第1の実施の形態]
図5は第1の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図5(A)から
図5(C)にはそれぞれ、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
図5(B)には、
図5(A)のV-V断面図の第1の例を模式的に示している。
図5(C)には、
図5(A)のV-V断面図の第2の例を模式的に示している。
【0034】
例えば、
図5(A)に示すように、半導体装置1は、基板10、半導体層20、ゲート電極30、ソース電極40、ドレイン電極50、保護膜70及び絶縁膜80を有する。半導体装置1は、HEMTの一例である。
【0035】
基板10には、化合物半導体基板が用いられる。例えば、基板10には、InP基板が用いられる。基板10には、下地基板となる化合物半導体基板上にバッファ層等の化合物半導体層が設けられたものが用いられてもよい。例えば、基板10には、InP基板上にバッファ層としてInAlAs(ヒ化インジウムアルミニウム)が設けられたものが用いられてもよい。
【0036】
図5(A)に示すように、半導体層20は、基板10の一方の面10a(第1面とも言う)上に設けられる。半導体層20は、基板10の面10a側から、チャネル層21及びキャリア供給層22(これらを含む層を第1層とも言う)、エッチング停止層23(この層を第2層とも言う)、並びにキャップ層24が順次積層された構造を有する。チャネル層21、キャリア供給層22、エッチング停止層23及びキャップ層24には、化合物半導体材料が用いられる。チャネル層21には、例えば、InGaAs(ヒ化インジウムガリウム)が用いられる。キャリア供給層22には、例えば、InAlAsが用いられる。エッチング停止層23には、例えば、InP又はInGaP(リン化インジウムガリウム)が用いられる。キャップ層24には、例えば、InGaAsが用いられる。キャップ層24には、エッチング停止層23に通じるリセス24aが設けられる。チャネル層21の、キャリア供給層22との界面近傍に、二次元キャリアガス28が生成される。
【0037】
図5(A)に示すように、ソース電極40及びドレイン電極50は、キャップ層24上(半導体層20の、基板10とは反対側)に設けられる。ソース電極40及びドレイン電極50は、キャップ層24のリセス24aを挟んで対向する位置に、互いに分離されて設けられる。ソース電極40及びドレイン電極50には、Ti(チタン)、Pt(白金)、Au(金)等の金属材料が用いられる。ソース電極40及びドレイン電極50は、オーミック電極として機能するように設けられる。
【0038】
図5(A)に示すように、保護膜70(第1絶縁膜とも言う)は、半導体層20の、基板10とは反対側を覆うように設けられる。保護膜70は、キャップ層24、そのリセス24a内のエッチング停止層23、キャップ層24上のソース電極40及びドレイン電極50を覆うように設けられる。保護膜70には、Siを含有する絶縁膜、即ち、Si系絶縁膜が用いられる。例えば、保護膜70には、SiNが用いられる。保護膜70には、キャップ層24のリセス24a内に位置するように形成された開口部71が設けられる。
【0039】
図5(A)に示すように、ゲート電極30(電極とも言う)は、ソース電極40とドレイン電極50との間の、キャップ層24のリセス24a内に形成された保護膜70の開口部71に位置するように、設けられる。ゲート電極30は、ソース電極40及びドレイン電極50から分離されて設けられる。ゲート電極30には、Ti、Pt、Au等の金属材料が用いられる。ゲート電極30は、例えば、半導体層20の、基板10とは反対側において、断面T字形状となるように設けられる。
【0040】
図5(A)に示すように、絶縁膜80(第2絶縁膜とも言う)は、キャップ層24、そのリセス24a内のエッチング停止層23、キャップ層24上のソース電極40及びドレイン電極50を覆うように設けられる。絶縁膜80は、半導体層20の、基板10とは反対側において、半導体層20と保護膜70との間に設けられる。保護膜70の開口部71は、絶縁膜80に通じるように形成される。保護膜70の開口部71に設けられるゲート電極30は、その下端が絶縁膜80に接する。ゲート電極30は、絶縁膜80を介して半導体層20上に設けられる。
【0041】
絶縁膜80には、金属元素を含有する絶縁膜が用いられる。例えば、絶縁膜80には、金属元素としてAl(アルミニウム)を含有する酸化膜、即ち、Al2O3(酸化アルミニウム)が用いられる。絶縁膜80には、金属元素として、Alのほか、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ti、Ta(タンタル)、Mg(マグネシウム)、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Sr(ストロンチウム)等が含有されてもよい。例えば、絶縁膜80には、金属元素として、電気陰性度が1.8以下の金属元素が含有される。例えば、絶縁膜80には、Al、Hf、Zr、Ti、Ta、Mg、Sc、Y、La及びSrのうちの1種又は2種以上を含有する酸化膜、窒化膜又は酸窒化膜が用いられる。絶縁膜80には、このような酸化膜、窒化膜及び酸窒化膜のうちの2種以上の積層膜が用いられてもよい。
【0042】
図5(A)に示すような構成を有する半導体装置1において、半導体層20は、メサ化により素子間分離が行われる。
図5(A)に示す半導体装置1の、半導体層20のメサ化によって紙面奥行方向の半導体層20端に形成される素子分離領域60付近の一構造例を、
図5(B)に示す。
【0043】
例えば、
図5(B)に示すように、ゲート電極30が設けられる位置に沿った断面において、素子分離領域60の半導体層20の側面20a、即ち、基板10の面10aと平行な方向D1(第1方向とも言う)に面する側面20a(第2面とも言う)には、チャネル層21、キャリア供給層22及びエッチング停止層23の各側面が位置する。例えば、エッチング停止層23は、その下層のキャリア供給層22の側面よりも外側に張り出した形状とされ、キャリア供給層22は、その下層のチャネル層21の側面よりも外側に張り出した形状とされる。チャネル層21の上層には、その側面よりも外側に張り出した、エッチング停止層23及びキャリア供給層22の庇部90が設けられる。尚、半導体層20の側面20aのこのような段差形状は、素子分離領域60を形成する際のエッチングによって実現される。
【0044】
絶縁膜80は、
図5(A)に示すように、半導体層20の、基板10とは反対側において、キャップ層24、そのリセス24a内のエッチング停止層23、キャップ層24上のソース電極40及びドレイン電極50を覆うように設けられる。この絶縁膜80は更に、
図5(B)に示すように、半導体層20上からその側面20aに延び、側面20aにおいて、エッチング停止層23及びキャリア供給層22の庇部90並びにチャネル層21を覆うように設けられる。半導体層20の側面20aに設けられる絶縁膜80は、エッチング停止層23よりも下部における方向D1の厚さが、エッチング停止層23から上部における方向D1の厚さよりも厚くなる。
【0045】
このような絶縁膜80上に、絶縁膜80に通じる開口部71を有する保護膜70が設けられ(
図5(A))、その保護膜70の開口部71に、ゲート電極30が設けられる。ゲート電極30は、
図5(B)に示すように、半導体層20上(保護膜70の開口部71)からその側面20a側の素子分離領域60に延びるように設けられる。絶縁膜80は、
図5(B)に示すように、半導体層20の側面20aと、その側面20a側に延びて設けられるゲート電極30との間に設けられる。
【0046】
半導体装置1の製造では、例えば、
図5(A)及び
図5(B)のように設けられた絶縁膜80を覆うように形成される保護膜70に対し、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによって開口部71が形成され、その後、その開口部71にゲート電極30が形成される。
【0047】
ここで、エッチング停止層23及びキャリア供給層22の庇部90並びにその下層のチャネル層21は、絶縁膜80で覆われ、露出しない。そのため、庇部90及びその下層のチャネル層21は、ドライエッチングによって保護膜70に開口部71を形成する際のフッ素系ガスに曝されることが抑えられる。絶縁膜80を覆うように保護膜70が形成される際、絶縁膜80の方向D1に面する側面80aに保護膜70が形成され、その側面80aの保護膜70がドライエッチングによる開口部71の形成時に除去されたとしても、同様である。即ち、そのような場合にも、庇部90及びその下層のチャネル層21は、絶縁膜80で覆われ、露出しないため、フッ素系ガスに曝されることが抑えられる。
【0048】
従って、半導体層20の側面20aの一部、例えば、庇部90のエッチング停止層23又はそれとキャリア供給層22とが消失することが抑えられる。また、半導体層20の側面20aが絶縁膜80で覆われることで、保護膜70のドライエッチングによる開口部71の形成後、ゲート電極30が形成される際に、そのゲート電極30が半導体層20の側面20aのチャネル層21に接触して形成されることが抑えられる。半導体装置1では、このように半導体層20の側面20aにおけるゲート電極30とチャネル層21との接触が抑えられるため、それらの短絡、即ち、チャネル層21に生成される二次元キャリアガス28とゲート電極30との短絡が抑えられる。これにより、ゲート電極30とチャネル層21との短絡に起因した半導体装置1の性能低下が抑えられる。
【0049】
尚、絶縁膜80を覆うように保護膜70が形成される際、絶縁膜80の側面80aに保護膜70が形成される場合において、その側面80aの保護膜70は、ドライエッチングによる開口部71の形成後に残存していても構わない。
図5(C)には、ドライエッチングによる開口部71の形成後も絶縁膜80の側面80aに保護膜70が残存し、その状態からゲート電極30が形成された場合の半導体装置1の一構造例を示している。チャネル層21は、それを覆う絶縁膜80及びその側面80aに残存する保護膜70によってゲート電極30と隔てられ、ゲート電極30との接触及びそれによる短絡が抑えられる。この
図5(C)に示すような構造、即ち、絶縁膜80の側面80aに保護膜70が残存するような構造によっても、ゲート電極30とチャネル層21との短絡に起因した半導体装置1の性能低下が抑えられる。
【0050】
上記のように半導体装置1では、エッチング停止層23及びキャリア供給層22の庇部90並びにチャネル層21が、絶縁膜80で覆われ、ドライエッチングに用いられるフッ素系ガスに曝されることが抑えられる。そのため、庇部90がフッ素系ガスに曝されることによって消失してしまうことが抑えられる。庇部90の消失が抑えられるため、庇部90の厚さ、即ち、基板10の面10aと垂直な方向D2(第2方向とも言う)の厚さを、必ずしもドライエッチングによる消失に耐え得るような厚さまで厚くしておくことを要しない。例えば、エッチング停止層23の厚さを、キャップ層24のリセス24aを形成する際のエッチングが停止可能な程度の厚さ、一例として5nm以下の厚さに設定することが可能になる。エッチング停止層23の厚さを薄くすると、エッチング停止層23及びキャリア供給層22を介したゲート電極30とチャネル層21との間の距離が大きくなることを抑えることが可能になり、半導体装置1の高周波特性の劣化を抑えることが可能になる。エッチング停止層23及びキャリア供給層22を介したゲート電極30とチャネル層21との間の距離が大きくなることを抑えるために、エッチング停止層23の厚さは、チャネル層21の方向D2の厚さの半分以下にすることが好ましい。
【0051】
半導体装置1の絶縁膜80について更に述べる。
絶縁膜80は、ゲート電極30形成前の保護膜70のドライエッチングに用いられるフッ素系ガスに対し、十分なエッチング耐性を有していることが望ましい。絶縁膜80が十分なエッチング耐性を有していれば、絶縁膜80が保護膜70で覆われていない状態或いはドライエッチングの進行に伴って覆われなくなった状態でフッ素系ガスに曝されても、絶縁膜80の消失が抑えられ、半導体層20がフッ素系ガスから保護される。
【0052】
このような観点から、半導体装置1では、その絶縁膜80として、電気陰性度が1.8以下の金属元素を含有するものが用いられる。例えば、絶縁膜80として、上記のようなAl、Hf、Zr、Ti、Ta、Mg、Sc、Y、La、Srといった金属元素のうちの1種又は2種以上を含有するものが用いられる。これは、フッ素系ガスを用いたドライエッチング時に生成するフッ化物について、フッ素の電気陰性度である3.98との差が大きい金属元素の方が、イオン結合性が強いことから沸点が上昇し、エッチング耐性が高くなるためである。
【0053】
一例として、Si、Al、Hf、Zrの各元素を含有する絶縁膜がフッ素系ガスを用いたドライエッチング環境下に置かれた時に生成するフッ化物であるSiF4、AlF3、HfF4、ZrF4の各沸点は、次の通りである。SiF4の沸点は、-86℃である。AlF3の沸点は、1276℃である。HfF4の沸点(昇華温度)は、970℃である。ZrF4の沸点(昇華温度)は、912℃である。電気陰性度が1.8以下のAl、Hf、Zrのフッ化物は、電気陰性度が1.9のSiのフッ化物に比べ、沸点が高く、フッ素系ガスに対して難エッチング性の金属元素であることがわかる。このような知見から、半導体装置1の絶縁膜80には、電気陰性度が1.8以下の金属元素を含有するものが用いられることが望ましい。
【0054】
尚、保護膜70のドライエッチングには、フッ素系ガス以外のエッチングガスが用いられてもよい。フッ素系ガス以外のエッチングガスが用いられる場合には、当該エッチングガスの材料に合わせて、絶縁膜80の、含有される金属元素の電気陰性度が考慮される。
【0055】
十分なエッチング耐性を有する絶縁膜80が用いられることで、保護膜70をドライエッチングする際の絶縁膜80の消失、それによる庇部90及びチャネル層21の露出、並びに庇部90の消失が効果的に抑えられる。これにより、保護膜70のドライエッチング後に形成されるゲート電極30と、チャネル層21との接触及びそれによる短絡が抑えられ、短絡に起因したリーク電流の発生、ピンチオフ不良の発生が抑えられ、半導体装置1の性能低下が抑えられる。
【0056】
図6は半導体装置の特性評価結果の一例を示す図である。
図6(A)には、上記絶縁膜80が設けられない半導体装置100(
図4)の電流-電圧特性を示している。
図6(B)には、上記絶縁膜80が設けられた半導体装置1(
図5)の電流-電圧特性を示している。
図6(A)及び
図6(B)において、横軸はドレイン-ソース間電圧Vds[V]を表し、縦軸はドレイン電流密度Id[mA/mm]を表している。
【0057】
図6(A)に示すように、半導体層120の側面120aに絶縁膜80が設けられない半導体装置100(
図4)の場合には、トランジスタが十分にオフしないピンチオフ不良が発生することがある(
図6(A)の部分Q1)。このようなピンチオフ不良は、上記
図4(C)に示したように、半導体層120の庇部190が、保護膜170をドライエッチングする際に消失し、チャネル層121とゲート電極130とが接触し、短絡してしまうことで起こる。
【0058】
一方、
図6(B)に示すように、半導体層20の側面20aに絶縁膜80が設けられた半導体装置1(
図5)の場合には、半導体装置100で見られるようなピンチオフ不良が改善される(
図6(B)の部分Q2)。半導体装置1では、保護膜70をドライエッチングする際の絶縁膜80の消失、それによる庇部90及びチャネル層21の露出、並びに庇部90の消失が効果的に抑えられる。そのため、チャネル層21とゲート電極30との接触及びそれによる短絡が抑えられ、ピンチオフ不良の発生が抑えられる。
【0059】
尚、この第1の実施の形態では、基板10及び半導体層20にInP系材料を用いた半導体装置1を例にした。このほか、基板10及び半導体層20に他の半導体材料、例えば、GaN(窒化ガリウム)系材料等を用いた半導体装置についても同様に、素子分離領域60を設けることで形成される半導体層20の側面20aを絶縁膜80で覆うことで、上記同様の効果を得ることが可能である。
【0060】
また、この第1の実施の形態では、半導体層20の側面20aと、その側面20a側に設けられるゲート電極30との間に、金属元素を含有する絶縁膜80を設け、側面20aにおけるチャネル層21とゲート電極30との短絡を抑える例を示した。このほか、半導体層20の側面20a側に、他の導電材料、例えば、ソース電極40やドレイン電極50等が設けられる場合も同様に、当該他の導電材料と半導体層20の側面20aとの短絡を、それらの間に設けられる絶縁膜80によって抑えることが可能である。
【0061】
[第2の実施の形態]
図7は第2の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図7(A)及び
図7(B)にはそれぞれ、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
図7(B)には、
図7(A)のVII-VII断面図の一例を模式的に示している。
【0062】
図7(A)に示すように、半導体装置1Aは、基板10A、半導体層20A、ゲート電極30、ソース電極40、ドレイン電極50、保護膜70及び絶縁膜80を有する。半導体装置1Aは、HEMTの一例である。
【0063】
基板10Aは、下地基板11及びバッファ層12を含む。バッファ層12は、下地基板11上に設けられる。下地基板11には、例えば、InP基板が用いられる。バッファ層12には、例えば、InAlAsが用いられる。バッファ層12の厚さは、例えば、200nm程度から300nm程度の範囲に設定される。
【0064】
半導体層20Aは、基板10Aのバッファ層12側の面10a上に設けられる。半導体層20Aは、基板10Aの面10a側から、キャリア供給層25、チャネル層21及びキャリア供給層22(これらを含む層を第1層とも言う)、エッチング停止層23(この層を第2層とも言う)、並びにキャップ層24が順次積層された構造を有する。キャリア供給層25、チャネル層21、キャリア供給層22、エッチング停止層23及びキャップ層24には、化合物半導体材料が用いられる。キャリア供給層25には、例えば、InAlAsが用いられる。チャネル層21には、例えば、InGaAsが用いられる。キャリア供給層22には、例えば、InAlAsが用いられる。エッチング停止層23には、例えば、InP又はInGaPが用いられる。キャップ層24には、例えば、InGaAsが用いられる。キャップ層24には、エッチング停止層23に通じるリセス24aが設けられる。チャネル層21の、キャリア供給層25及びキャリア供給層22との界面近傍に、それぞれ二次元キャリアガス28が生成される。
【0065】
尚、キャリア供給層25の厚さは、例えば、2nm程度から25nm程度の範囲に設定される。チャネル層21の厚さは、例えば、9nm程度から25nm程度の範囲に設定される。キャリア供給層22の厚さは、例えば、9nm程度から25nm程度の範囲に設定される。エッチング停止層23の厚さは、例えば、4nm程度から6nm程度の範囲に設定される。キャップ層24の厚さは、例えば、30nm程度から50nm程度の範囲に設定される。例えば、キャリア供給層25、キャリア供給層22及びキャップ層24にはそれぞれ、Si等の不純物が所定の領域に所定の濃度でドーピングされる。
【0066】
図7(A)に示すように、ソース電極40及びドレイン電極50は、キャップ層24上に設けられる。ソース電極40及びドレイン電極50は、キャップ層24のリセス24aを挟んで対向する位置に、互いに分離されて設けられる。ソース電極40及びドレイン電極50には、Ti、Pt及びAu、例えば、それらが順次積層されたものが用いられる。ソース電極40及びドレイン電極50は、オーミック電極として機能するように設けられる。
【0067】
図7(A)に示すように、保護膜70は、半導体層20Aの、基板10Aとは反対側を覆うように設けられる。保護膜70は、キャップ層24、そのリセス24a内のエッチング停止層23、キャップ層24上のソース電極40及びドレイン電極50を覆うように設けられる。保護膜70には、例えば、SiNが用いられる。保護膜70には、キャップ層24のリセス24a内に位置するように形成された開口部71が設けられる。
【0068】
図7(A)に示すように、ゲート電極30は、ソース電極40とドレイン電極50との間の、キャップ層24のリセス24a内に形成された保護膜70の開口部71に位置するように、設けられる。ゲート電極30は、ソース電極40及びドレイン電極50から分離されて設けられる。ゲート電極30には、Ti、Pt及びAu、例えば、それらが順次積層されたものが用いられる。ゲート電極30は、例えば、半導体層20Aの、基板10Aとは反対側において、断面T字形状となるように設けられる。
【0069】
図7(A)に示すように、絶縁膜80は、キャップ層24、そのリセス24a内のエッチング停止層23、キャップ層24上のソース電極40及びドレイン電極50を覆うように設けられる。絶縁膜80は、半導体層20Aの、基板10Aとは反対側において、半導体層20Aと保護膜70との間に設けられる。保護膜70の開口部71は、絶縁膜80に通じるように形成される。保護膜70の開口部71に設けられるゲート電極30は、その下端が絶縁膜80に接する。ゲート電極30は、絶縁膜80を介して半導体層20A上に設けられる。ゲート電極30と半導体層20A(そのエッチング停止層23)との間に介在される絶縁膜80は、ゲート絶縁膜として機能する。半導体装置1は、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型ゲート構造を有するHEMTの一例である。絶縁膜80には、例えば、Al
2O
3が用いられる。
【0070】
尚、絶縁膜80には、金属元素として、電気陰性度が1.8以下の金属元素を含有するものを用いることができる。絶縁膜80には、金属元素として、Al、Hf、Zr、Ti、Ta、Mg、Sc、Y、La及びSrのうちの1種又は2種以上を含有するものを用いることができる。絶縁膜80には、そのような金属元素を含有する酸化膜、窒化膜及び酸窒化膜のうちの1種又は2種以上の積層膜を含むものを用いることができる。
【0071】
図7(A)に示すような構成を有する半導体装置1Aにおいて、半導体層20Aは、メサ化により素子間分離が行われる。
図7(A)に示す半導体装置1Aの、半導体層20Aのメサ化によって紙面奥行方向の半導体層20A端に形成される素子分離領域60付近の一構造例を、
図7(B)に示す。
【0072】
例えば、
図7(B)に示すように、ゲート電極30が設けられる位置に沿った断面において、素子分離領域60の半導体層20Aの側面20aには、キャリア供給層25、チャネル層21、キャリア供給層22及びエッチング停止層23の各側面が位置する。例えば、エッチング停止層23は、その下層のキャリア供給層22の側面よりも外側に張り出した形状とされ、キャリア供給層22は、その下層のチャネル層21の側面よりも外側に張り出した形状とされる。キャリア供給層25は、その上層のチャネル層21の側面よりも外側に張り出した形状とされる。チャネル層21の上層には、その側面よりも外側に張り出した、エッチング停止層23及びキャリア供給層22の庇部90が設けられる。尚、半導体層20Aの側面20aのこのような段差形状は、素子分離領域60を形成する際のエッチングによって実現される。
【0073】
絶縁膜80は、
図7(A)に示すように、半導体層20Aの、基板10Aとは反対側において、キャップ層24、そのリセス24a内のエッチング停止層23、キャップ層24上のソース電極40及びドレイン電極50を覆うように設けられる。この絶縁膜80は更に、
図7(B)に示すように、半導体層20A上からその側面20a(素子分離領域60)に延び、側面20aにおいて、エッチング停止層23及びキャリア供給層22の庇部90、チャネル層21並びにキャリア供給層25を覆うように設けられる。
【0074】
絶縁膜80は、
図7(B)に示すように、2層の第1絶縁部81及び第2絶縁部82が部分的に積層された構造を有する。第1絶縁部81は、半導体層20Aの側面20aにおいて、エッチング停止層23よりも下層のキャリア供給層22、チャネル層21及びキャリア供給層25の側面を覆う。第2絶縁部82は、半導体層20Aの、基板10Aとは反対側において、キャップ層24、そのリセス24a内のエッチング停止層23、キャップ層24上のソース電極40及びドレイン電極50を覆うと共に、側面20aの第1絶縁部81を覆う。半導体層20Aの側面20aの、エッチング停止層23よりも下部には、第1絶縁部81及び第2絶縁部82が形成され、エッチング停止層23から上部には、第2絶縁部82が形成される。そのため、半導体層20Aの側面20aに設けられる絶縁膜80は、エッチング停止層23よりも下部における方向D1の厚さが、エッチング停止層23から上部における方向D1の厚さよりも厚くなる。尚、第1絶縁部81及び第2絶縁部82には、互いに同種の材料が用いられてもよいし、互いに異種の材料が用いられてもよい。
【0075】
このような第1絶縁部81及び第2絶縁部82を有する絶縁膜80上に、絶縁膜80(その第2絶縁部82)に通じる開口部71を有する保護膜70が設けられ(
図7(A))、その保護膜70の開口部71に、ゲート電極30が設けられる。ゲート電極30は、
図7(B)に示すように、半導体層20A上(保護膜70の開口部71)からその側面20a側の素子分離領域60に延びるように設けられる。絶縁膜80は、その一部、即ち、第1絶縁部81及び第2絶縁部82が積層された部分が、
図7(B)に示すように、半導体層20Aの側面20aと、その側面20a側に延びて設けられるゲート電極30との間に設けられる。
【0076】
ここで、上記のような構成を有する半導体装置1Aの製造方法について説明する。
図8から
図14は第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図である。以下、
図8から
図14及び上記
図7を参照して、半導体装置製造の各工程について順に説明する。
【0077】
図8(A)及び
図8(B)にはそれぞれ、半導体層形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図8(B)には、
図8(A)のVIII-VIII断面図の一例を模式的に示している。
【0078】
はじめに、
図8(A)及び
図8(B)に示すような基板10A及び半導体層20Aの形成が行われる。まず、InP基板等の下地基板11が準備される。準備された下地基板11上に、例えば、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;MOCVD)法を用いて、InAlAs等のバッファ層12が形成される。これにより、基板10Aが形成される。
【0079】
次いで、基板10Aのバッファ層12上に、例えば、MOCVD法を用いて、キャリア供給層25、チャネル層21、キャリア供給層22、エッチング停止層23及びキャップ層24が順次形成される。この時、バッファ層12上のキャリア供給層25は、例えば、デルタドーピング(原子層ドーピング)等の不純物の導入により形成することができる。不純物として、例えば、Siを2×1012cm-2程度ドーピングする。不純物は、バッファ層12とキャリア供給層25との界面にシート状にドーピングされる。そのドーピング界面は、キャリア供給層25の表面から3nm程度~5nm程度の深さとされる。この場合、キャリア供給層25のドーピング界面よりも表面側の部分を、スペーサ層とみなすこともできる。キャリア供給層25の形成後、その上に、チャネル層21、キャリア供給層22、エッチング停止層23及びキャップ層24が順次形成される。これにより、半導体層20Aが形成される。
【0080】
半導体層20Aの形成後、素子分離領域60の形成が行われる。
図9(A)及び
図9(B)にはそれぞれ、素子分離領域形成(半導体層メサ化)工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図9(B)には、
図9(A)のIX-IX断面図の一例を模式的に示している。
【0081】
素子分離領域60の形成は、例えば、次のようにして行われる。素子分離領域60を形成する領域を開口したレジストマスク(図示せず)がキャップ層24上に形成され、例えば、リン酸及び過酸化水素水の混合液が用いられ、キャップ層24がエッチングされる。このエッチングは、エッチング停止層23の表面で停止される。次いで、例えば、塩酸が用いられ、エッチング停止層23がエッチングされる。このエッチングは、キャリア供給層22の表面で停止される。その後、例えば、リン酸及び過酸化水素水の混合液が用いられ、キャリア供給層22、チャネル層21及びキャリア供給層25がエッチングされる。このようにして素子分離領域60が形成される。素子分離領域60の形成後、レジストマスクは除去される。このようなエッチングによる素子分離領域60の形成により、
図9(B)に示すように、エッチング停止層23、キャリア供給層22及びキャリア供給層25は、チャネル層21よりも外側に張り出した形状となる。エッチング停止層23は、キャリア供給層22及びキャリア供給層25よりも外側に張り出した形状となる。チャネル層21の上層には、その側面よりも外側に張り出した、エッチング停止層23及びキャリア供給層22の庇部90が形成される。素子分離領域60の形成により、半導体層20Aはメサ化され、素子間分離が行われる。素子分離領域60の形成により、半導体層20Aには、基板10Aの面10aと平行な方向D1に面する段差形状の側面20aが形成される。
【0082】
素子分離領域60の形成後、絶縁膜80における第1絶縁部81の形成が行われる。
図10(A)及び
図10(B)にはそれぞれ、第1絶縁部形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図10(B)には、
図10(A)のX-X断面図の一例を模式的に示している。
【0083】
まず、素子分離領域60の形成によってメサ化された半導体層20Aを覆うように、第1絶縁部81の絶縁材料、例えば、Al2O3が形成される。この絶縁材料のAl2O3は、例えば、原子層堆積(Atomic Layer Deposition;ALD)法を用いて形成される。Al2O3の厚さは、2nmから50nmの範囲に設定されることが好ましく、一例として、10nmに設定される。ALD法では、段差のある半導体層20Aの側面20aに対しても良好なカバレッジでAl2O3を形成することができる。半導体層20Aを覆うAl2O3の形成後、半導体層20Aのエッチング停止層23から上部を開口したレジストマスク(図示せず)が形成され、アルカリ系薬液を用いたウェットエッチングにより、エッチング停止層23から上部のAl2O3が選択的に除去される。これにより、半導体層20Aのエッチング停止層23よりも下部、即ち、キャリア供給層22、チャネル層21及びキャリア供給層25の側面がAl2O3で覆われた構造が得られ、そのAl2O3によって第1絶縁部81が形成される。
【0084】
第1絶縁部81の形成後、ソース電極40及びドレイン電極50の形成、並びにキャップ層24のリセス24aの形成が行われる。
図11(A)及び
図11(B)にはそれぞれ、ソース電極及びドレイン電極並びにリセス形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図11(B)には、
図11(A)のXI-XI断面図の一例を模式的に示している。
【0085】
まず、素子分離領域60で画定された半導体層20A上に、ソース電極40及びドレイン電極50が形成される。その際は、ソース電極40又はドレイン電極50を形成する領域を開口したレジストマスク(図示せず)がキャップ層24上に形成され、Ti、Pt及びAuが順次蒸着法を用いて形成される。そして、レジストマスクがその上に形成されたTi、Pt及びAuと共に除去される。例えば、このようなリフトオフ法を用いて、キャップ層24上にソース電極40及びドレイン電極50が形成される。
【0086】
次いで、キャップ層24の、ソース電極40とドレイン電極50との間の領域に、リセス24aが形成される。その際は、リセス24aを形成する領域を開口したレジストマスク(図示せず)がキャップ層24上に形成され、例えば、リン酸及び過酸化水素水の混合液が用いられ、キャップ層24がエッチングされる。このエッチングは、エッチング停止層23の表面で停止される。このような方法を用いて、キャップ層24にリセス24aが形成される。
【0087】
ソース電極40及びドレイン電極50の形成、並びにキャップ層24のリセス24aの形成後、絶縁膜80における第2絶縁部82の形成が行われる。
図12(A)及び
図12(B)にはそれぞれ、第2絶縁部形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図12(B)には、
図12(A)のXII-XII断面図の一例を模式的に示している。
【0088】
キャップ層24、そのリセス24a内のエッチング停止層23、キャップ層24上のソース電極40及びドレイン電極50、並びに半導体層20Aの側面20aに形成された第1絶縁部81を覆うように、第2絶縁部82の絶縁材料、例えば、Al2O3が形成される。この絶縁材料のAl2O3は、例えば、ALD法を用いて形成される。Al2O3の厚さは、1nmから10nmの範囲に設定されることが好ましく、一例として、2nmに設定される。このAl2O3により、第2絶縁部82が形成される。第2絶縁部82の、エッチング停止層23上に形成される部分が、ゲート絶縁膜として機能する。
【0089】
半導体層20Aの側面20aの、エッチング停止層23よりも下部、即ち、キャリア供給層22、チャネル層21及びキャリア供給層25は、ここで形成される第2絶縁部82と、先に形成された第1絶縁部81との積層膜で覆われる。このように、第1絶縁部81が形成され、その後、第2絶縁部82が形成されることで、第1絶縁部81及び第2絶縁部82を含む絶縁膜80が形成される。
【0090】
半導体層20Aの側面20aの、エッチング停止層23よりも下部には、絶縁膜80の第1絶縁部81及び第2絶縁部82(第1部位とも言う)が形成され、エッチング停止層23から上部には、絶縁膜80の第2絶縁部82(第2部位とも言う)が形成される。そのため、半導体層20Aの側面20aに設けられる絶縁膜80は、エッチング停止層23よりも下部における方向D1の厚さT1a又はT1b(第1厚さとも言う)が、エッチング停止層23から上部における方向D1の厚さT2(第2厚さとも言う)よりも厚くなる。
【0091】
第2絶縁部82(それを含む絶縁膜80)の形成後、保護膜70の形成が行われる。
図13(A)及び
図13(B)にはそれぞれ、保護膜形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図13(B)には、
図13(A)のXIII-XIII断面図の一例を模式的に示している。
【0092】
絶縁膜80で覆われた半導体層20Aを覆うように、SiN等の保護膜70が形成される。保護膜70は、例えば、プラズマCVD法を用いて形成される。厚さが2nmから500nmの範囲のSiN等の保護膜70が形成される。保護膜70の形成には、プラズマCVD法のほか、ALD法、スパッタ法等が用いられてもよい。キャップ層24、そのリセス24a内のエッチング停止層23、キャップ層24上のソース電極40及びドレイン電極50、並びに半導体層20Aを覆うように設けられた絶縁膜80を更に覆うように、保護膜70が形成される。
【0093】
保護膜70の形成後、その保護膜70に対する開口部71の形成が行われる。
図14(A)及び
図14(B)にはそれぞれ、開口部形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図14(B)には、
図14(A)のXIV-XIV断面図の一例を模式的に示している。
【0094】
保護膜70に、例えば、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによって、キャップ層24のリセス24a内に位置する開口部71が形成される。その際は、まず、リセス24a内の開口部71を形成する領域を開口したレジストマスク(図示せず)が形成され、フッ素系ガスを用いたドライエッチングが行われる。このドライエッチングにより、リセス24a内の保護膜70に開口部71が形成される。
【0095】
尚、絶縁膜80の側面80aに形成された保護膜70は、このドライエッチングの際、
図14(B)に示すように、除去されてもよい。この場合、ドライエッチングによる開口部71の形成後、絶縁膜80の側面80aが露出した状態になる。
【0096】
保護膜70に対する開口部71の形成後、ゲート電極30の形成が行われる。保護膜70に形成された開口部71に位置し、半導体層20A上(保護膜70の開口部71)からその側面20a側の素子分離領域60に延びるようにゲート電極30が形成されることで、上記
図7(A)及び
図7(B)に示したような半導体装置1Aが製造される。
【0097】
上記のように、半導体装置1Aの製造では、絶縁膜80を覆うように形成された保護膜70(
図13)に対し、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによって開口部71が形成される(
図14)。その後、開口部71にゲート電極30が形成される(
図7)。
【0098】
ここで、半導体層20Aの側面20aは、絶縁膜80で覆われ、露出しないため、ドライエッチングによって保護膜70に開口部71を形成する際のフッ素系ガスに曝されることが抑えられる。絶縁膜80を覆うように保護膜70が形成される際、絶縁膜80の側面80aに保護膜70が形成され、その側面80aの保護膜70がドライエッチングで除去されたとしても、半導体層20Aの側面20aは、絶縁膜80で覆われる。そのため、半導体層20Aの側面20aがフッ素系ガスに曝されることが抑えられる。絶縁膜80に、上記のようなAl2O3等、フッ素系ガスに対するエッチング耐性の高い材料を用いることで、フッ素系ガスに曝される絶縁膜80の消失が抑えられ、半導体層20Aの側面20aがフッ素系ガスに曝されることが抑えられる。
【0099】
従って、半導体層20Aの側面20aの一部、例えば、庇部90のエッチング停止層23又はそれとキャリア供給層22とが消失することが抑えられる。また、半導体層20Aの側面20aが絶縁膜80で覆われることで、保護膜70のドライエッチングによる開口部71の形成後、ゲート電極30が形成される際に、そのゲート電極30が半導体層20Aの側面20aのチャネル層21に接触して形成されることが抑えられる。半導体装置1Aでは、このように半導体層20Aの側面20aにおけるゲート電極30とチャネル層21との接触が抑えられるため、それらの短絡、即ち、チャネル層21に生成される二次元キャリアガス28とゲート電極30との短絡が抑えられる。これにより、ゲート電極30とチャネル層21との短絡に起因した半導体装置1Aの性能低下が抑えられる。
【0100】
半導体装置1Aでは、半導体層20Aの側面20aが、絶縁膜80で覆われ、フッ素系ガスに曝されることが抑えられる。そのため、半導体層20Aの側面20aに設けられる庇部90が、フッ素系ガスに曝されることによって消失してしまうことが抑えられる。庇部90の消失が抑えられるため、庇部90の厚さを、必ずしもドライエッチングによる消失に耐え得るような厚さまで厚くしておくことを要しない。例えば、庇部90を形成するエッチング停止層23の厚さを、キャップ層24のリセス24aを形成する際のエッチングが停止可能な程度の厚さ、一例として5nm以下の厚さに設定することができる。エッチング停止層23の厚さを薄くすると、エッチング停止層23及びキャリア供給層22を介したゲート電極30とチャネル層21との間の距離が大きくなることが抑えられ、ゲート電極30からチャネル層21に印加される電界の強度が弱まることが抑えられる。そのため、半導体装置1Aの高周波特性の劣化が抑えられる。エッチング停止層23及びキャリア供給層22を介したゲート電極30とチャネル層21との間の距離が大きくなることを抑えるために、エッチング停止層23の厚さは、チャネル層21の方向D2の厚さの半分以下にすることが好ましい。
【0101】
[第3の実施の形態]
図15は第3の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図15(A)及び
図15(B)にはそれぞれ、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
図15(B)には、
図15(A)のXV-XV断面図の一例を模式的に示している。
【0102】
図15(A)及び
図15(B)に示す半導体装置1Bは、絶縁膜80の側面80aに、保護膜70が残存した構造を有する。半導体装置1Bは、このような構造を有する点で、上記第2の実施の形態で述べた半導体装置1Aと相違する。
【0103】
半導体装置1Bにおいて、半導体層20Aの、基板10Aとは反対側に設けられる保護膜70は、半導体層20Aの側面20a側に延び、半導体層20Aの側面20aを覆う絶縁膜80のその側面80aに残存する。絶縁膜80の側面80aに残存する保護膜70は、半導体層20Aの側面20aを覆う絶縁膜80と、半導体層20Aの側面20a側に設けられるゲート電極30との間に設けられる。
【0104】
半導体装置1Bにおいて、チャネル層21は、
図15(B)に示すように、それを覆う絶縁膜80及びその側面80aに残存する保護膜70によってゲート電極30と隔てられ、ゲート電極30との接触及びそれによる短絡が抑えられる。絶縁膜80の側面80aに保護膜70が残存することで、保護膜70が残存しない場合に比べて、チャネル層21の側面とそれに対向するゲート電極30との間の距離が大きくなり、チャネル層21(それに生成される二次元キャリアガス28)に対するゲート電極30からの電界の影響が抑えられる。この
図15(B)に示すような構造、即ち、絶縁膜80の側面80aに保護膜70が残存するような構造を有する半導体装置1Bによっても、ゲート電極30とチャネル層21との短絡に起因した性能低下を抑えることができる。
【0105】
図16は第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図である。
図16(A)及び
図16(B)にはそれぞれ、開口部形成工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
図16(B)には、
図16(A)のXVI-XVI断面図の一例を模式的に示している。
【0106】
半導体装置1Bの製造では、上記第2の実施の形態で述べた
図8から
図13までの工程は同じとすることができる。即ち、まず、基板10A及び半導体層20Aの形成(
図8)、素子分離領域60の形成(
図9)、第1絶縁部81の形成(
図10)、ソース電極40及びドレイン電極50並びにリセス24aの形成(
図11)、第2絶縁部82の形成(
図12)、保護膜70の形成(
図13)が行われる。その後、保護膜70に対し、
図16(A)及び
図16(B)に示すような開口部71の形成が行われる。
【0107】
例えば、ドライエッチングによって開口部71を形成する際のレジストマスク(図示せず)を、絶縁膜80の側面80aに形成された保護膜70を覆うように形成する。これにより、絶縁膜80の側面80aに形成された保護膜70は、ドライエッチングによって開口部71を形成する際に用いられるフッ素系ガスから保護される。そのため、
図16(B)に示すように、絶縁膜80の側面80aに保護膜70が残存するようになる。尚、このように絶縁膜80の側面80aに形成された保護膜70をレジストマスクで覆わない場合でも、側面80aに形成される保護膜70の厚さやドライエッチング条件を調整し、側面80aに保護膜70を残存させることも可能である。
【0108】
[第4の実施の形態]
図17は第4の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図17(A)及び
図17(B)にはそれぞれ、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
図17(B)には、
図17(A)のXVII-XVII断面図の一例を模式的に示している。
【0109】
図17(A)及び
図17(B)に示す半導体装置1Cは、半導体層20Aの、エッチング停止層23よりも下部及びエッチング停止層23から上部のうち、エッチング停止層23よりも下部のみに絶縁膜80が設けられた構造を有する。即ち、半導体装置1Cは、半導体層20Aのキャリア供給層25、チャネル層21、キャリア供給層22、エッチング停止層23及びキャップ層24のうち、キャリア供給層25、チャネル層21及びキャリア供給層22の側面のみに絶縁膜80が設けられた構造を有する。半導体装置1Cは、上記第2の実施の形態で述べた第1絶縁部81及び第2絶縁部82のうち、第1絶縁部81のみが絶縁膜80として設けられた構造を有する。半導体装置1Cは、このような構造を有する点で、上記第2の実施の形態で述べた半導体装置1Aと相違する。
【0110】
半導体装置1Cでは、半導体層20Aの側面20aにおけるキャリア供給層22、チャネル層21及びキャリア供給層25の側面が、絶縁膜80として設けられる第1絶縁部81によって覆われる。これにより、半導体層20Aの側面20aにおけるゲート電極30とチャネル層21との接触及びそれによる短絡が抑えられ、半導体装置1Cの性能低下が抑えられる。
【0111】
半導体装置1Cでは、上記第2の実施の形態で述べた第1絶縁部81及び第2絶縁部82のうち、第1絶縁部81のみが絶縁膜80として設けられ、第2絶縁部82が設けられない構造を有する。半導体装置1Cの製造では、上記第2の実施の形態で述べた基板10A及び半導体層20Aの形成(
図8)、素子分離領域60の形成(
図9)、第1絶縁部81の形成(
図10)、ソース電極40及びドレイン電極50並びにリセス24aの形成(
図11)が行われる。その後、第2絶縁部82の形成(
図12)を省略して、上記
図13及び
図14の例に従い、保護膜70の形成(
図13)、開口部71の形成(
図14)が行われ、ゲート電極30の形成(
図17)が行われる。半導体装置1Cの製造では、第2絶縁部82の形成工程が省略されるため、工数削減により製造効率が向上される。
【0112】
また、第2絶縁部82の形成が省略されるため、保護膜70には、エッチング停止層23に通じる開口部71が形成され、ゲート電極30は、開口部71のエッチング停止層23上に形成される。開口部71に設けられるゲート電極30は、その下端がエッチング停止層23に接する。半導体装置1Cでは、ゲート電極30が、ゲート絶縁膜を介さず、半導体層20Aにショットキー接続される、ショットキー型ゲート構造が実現される。
【0113】
尚、半導体装置1Cにおいて、絶縁膜80として設けられる第1絶縁部81の側面80aには、上記第3の実施の形態で述べた例に従い、保護膜70が残存されてもよい。
[第5の実施の形態]
図18は第5の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図18(A)及び
図18(B)にはそれぞれ、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
図18(B)には、
図18(A)のXVIII-XVIII断面図の一例を模式的に示している。
【0114】
図18(A)及び
図18(B)に示す半導体装置1Dは、半導体層20Aの側面20aにおいて、キャリア供給層25、チャネル層21、キャリア供給層22及びエッチング停止層23の側面の位置が同じ又は同等とされた構造を有する。尚、ここでは図示を省略するが、半導体装置1Dでは、半導体層20Aのキャップ層24についても、その側面の位置が、キャリア供給層25、チャネル層21、キャリア供給層22及びエッチング停止層23の側面の位置と同じ又は同等とされる。半導体装置1Dでは、上記第2の実施の形態で述べたような側面20aの段差形状、即ち、チャネル層21よりもキャリア供給層25及びキャリア供給層22が外側に張り出し且つそれらよりもエッチング停止層23が外側に張り出した段差形状は採用されない。半導体装置1Dは、このような構造を有する点で、上記第2の実施の形態で述べた半導体装置1Aと相違する。
【0115】
半導体装置1Dのような比較的平坦な側面20aの形状を有する半導体層20Aは、上記第2の実施の形態で述べた基板10A及び半導体層20Aの形成(
図8)後に行われる、素子分離領域60の形成(
図9)時におけるエッチング条件を調整することで実現される。キャップ層24のエッチング及びエッチング停止層23のエッチング後、エッチング停止層23と側面の位置が同じ又は同等となるように、キャリア供給層22のエッチング、チャネル層21のエッチング及びキャリア供給層25のエッチングが行われる。各層をエッチングする際の溶液、時間、温度、撹拌速度等の条件を適宜調整することで、半導体装置1Dのような、比較的平坦な側面20aの形状を有する半導体層20Aが実現される。
【0116】
このような比較的平坦な側面20aの形状を有する半導体層20Aの形成後、上記第2の実施の形態で述べた例に従い、各工程が行われる。即ち、第1絶縁部81の形成(
図10)、ソース電極40及びドレイン電極50並びにリセス24aの形成(
図11)、第2絶縁部82の形成(
図12)、保護膜70の形成(
図13)、開口部71の形成(
図14)が行われ、ゲート電極30の形成(
図18)が行われる。尚、第1絶縁部81は、半導体層20Aの側面20aにおけるキャリア供給層25、チャネル層21、キャリア供給層22、エッチング停止層23及びキャップ層24のうち、少なくともキャリア供給層25、チャネル層21及びキャリア供給層22を覆うように設けられる。
【0117】
半導体装置1Dでは、半導体層20Aの側面20aが、絶縁膜80の第1絶縁部81及び第2絶縁部82によって覆われる。これにより、半導体層20Aの側面20aにおけるゲート電極30とチャネル層21との接触及びそれによる短絡が抑えられ、半導体装置1Dの性能低下が抑えられる。
【0118】
半導体装置1Dでは、フッ素系ガスを用いたドライエッチングで保護膜70に開口部71を形成する際、絶縁膜80によって半導体層20Aの側面20aがフッ素系ガスに曝されることが抑えられる。そのため、チャネル層21の上層のキャリア供給層22及びエッチング停止層23に上記のような庇部90を設けなくても、半導体層20Aの側面20aにおけるゲート電極30とチャネル層21との接触及びそれによる短絡を抑えることができる。
【0119】
尚、半導体装置1Dにおいて、絶縁膜80の側面80aには、上記第3の実施の形態で述べた例に従い、保護膜70が残存されてもよい。
[第6の実施の形態]
図19は第6の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図19(A)及び
図19(B)にはそれぞれ、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
図19(B)には、
図19(A)のXIX-XIX断面図の一例を模式的に示している。
【0120】
図19(A)及び
図19(B)に示す半導体装置1Eは、上記第5の実施の形態で述べた第1絶縁部81及び第2絶縁部82のうち、第1絶縁部81のみが絶縁膜80として設けられた構造を有する。半導体装置1Eは、このような構造を有する点で、上記第5の実施の形態で述べた半導体装置1Dと相違する。尚、第1絶縁部81は、半導体層20Aの側面20aにおけるキャリア供給層25、チャネル層21、キャリア供給層22、エッチング停止層23及びキャップ層24のうち、少なくともキャリア供給層25、チャネル層21及びキャリア供給層22を覆うように設けられる。
【0121】
半導体装置1Eでは、半導体層20Aの側面20aが、絶縁膜80として設けられる第1絶縁部81によって覆われる。これにより、半導体層20Aの側面20aにおけるゲート電極30とチャネル層21との接触及びそれによる短絡が抑えられ、半導体装置1Eの性能低下が抑えられる。
【0122】
半導体装置1Eの製造では、第2絶縁部82の形成工程が省略されるため、工数削減により製造効率が向上される。また、第2絶縁部82の形成が省略されるため、保護膜70には、エッチング停止層23に通じる開口部71が形成され、ゲート電極30は、開口部71のエッチング停止層23上に形成される。開口部71に設けられるゲート電極30は、その下端がエッチング停止層23に接する。半導体装置1Eでは、ゲート電極30が、ゲート絶縁膜を介さず、半導体層20Aにショットキー接続される、ショットキー型ゲート構造が実現される。
【0123】
尚、半導体装置1Eにおいて、絶縁膜80の側面80aには、上記第3の実施の形態で述べた例に従い、保護膜70が残存されてもよい。
以上、第1から第6の実施の形態について説明した。
【0124】
以上の説明では、保護膜70の開口部71を形成するドライエッチングにフッ素系ガスを用いる例を主に示したが、当該ドライエッチングには、フッ素系ガス以外のエッチングガスを用いることもできる。
【0125】
第1から第6の実施の形態で述べたような構成を有する半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等は、各種電子装置に適用することができる。一例として、上記のような構成を有する半導体装置を、半導体パッケージ、力率改善回路、電源装置及び増幅器に適用する場合について、以下に説明する。
【0126】
[第7の実施の形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、半導体パッケージへの適用例を、第7の実施の形態として説明する。
【0127】
図20は第7の実施の形態に係る半導体パッケージの一例について説明する図である。
図20には、半導体パッケージの一例の要部平面図を模式的に示している。
図20に示す半導体パッケージ200は、ディスクリートパッケージの一例である。半導体パッケージ200は、例えば、上記第1の実施の形態で述べたような半導体装置1(
図5)、半導体装置1が搭載されたリードフレーム210、及びそれらを封止する樹脂220を含む。
【0128】
半導体装置1は、例えば、リードフレーム210のダイパッド210a上にダイアタッチ材等(図示せず)を用いて搭載される。半導体装置1には、上記ゲート電極30と接続されたパッド30a、ソース電極40と接続されたパッド40a、及びドレイン電極50と接続されたパッド50aが設けられる。パッド30a、パッド40a及びパッド50aはそれぞれ、Au、Al等のワイヤ230を用いてリードフレーム210のゲートリード211、ソースリード212及びドレインリード213に接続される。ゲートリード211、ソースリード212及びドレインリード213の各一部が露出するように、リードフレーム210とそれに搭載された半導体装置1及びそれらを接続するワイヤ230が、樹脂220で封止される。
【0129】
半導体装置1の、ゲート電極30と接続されたパッド30a及びドレイン電極50と接続されたパッド50aが設けられる面とは反対側の面に、ソース電極40と接続された外部接続用電極が設けられてもよい。当該外部接続用電極を、ソースリード212に繋がるダイパッド210aに、半田等の導電性接合材を用いて接続してもよい。
【0130】
例えば、上記第1の実施の形態で述べたような半導体装置1が用いられ、このような構成を有する半導体パッケージ200が得られる。
上記のように、半導体装置1では、素子分離領域60によって形成される半導体層20の側面20aが、金属を含有する絶縁膜80で覆われる。半導体層20の側面20aは、絶縁膜80で覆われることで、半導体層20を覆う保護膜70に開口部71を形成する際のドライエッチングに用いられるフッ素系ガスに曝されることが抑えられる。これにより、半導体層20の側面20aの一部が消失することが抑えられ、また、半導体層20の側面20aにおけるゲート電極30とチャネル層21との接触が抑えられる。ゲート電極30とチャネル層21との接触による短絡に起因した性能低下が抑えられる高性能の半導体装置1が実現される。このような半導体装置1が用いられ、高性能の半導体パッケージ200が実現される。
【0131】
ここでは、半導体装置1を例にしたが、他の半導体装置1A、1B、1C、1D、1E等を用いて同様に半導体パッケージを得ることが可能である。
[第8の実施の形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、力率改善回路への適用例を、第8の実施の形態として説明する。
【0132】
図21は第8の実施の形態に係る力率改善回路の一例について説明する図である。
図21には、力率改善回路の一例の等価回路図を示している。
図21に示す力率改善(Power Factor Correction;PFC)回路300は、スイッチ素子310、ダイオード320、チョークコイル330、コンデンサ340、コンデンサ350、ダイオードブリッジ360及び交流電源370(AC)を含む。
【0133】
PFC回路300において、スイッチ素子310のドレイン電極と、ダイオード320のアノード端子及びチョークコイル330の一端子とが接続される。スイッチ素子310のソース電極と、コンデンサ340の一端子及びコンデンサ350の一端子とが接続される。コンデンサ340の他端子とチョークコイル330の他端子とが接続される。コンデンサ350の他端子とダイオード320のカソード端子とが接続される。また、スイッチ素子310のゲート電極には、ゲートドライバが接続される。コンデンサ340の両端子間には、ダイオードブリッジ360を介して交流電源370が接続され、コンデンサ350の両端子間から直流電源(DC)が取り出される。
【0134】
例えば、このような構成を有するPFC回路300のスイッチ素子310に、上記半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等が用いられる。
上記のように、半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等では、素子分離領域60によって形成される半導体層20又は半導体層20Aの側面20aが、金属を含有する絶縁膜80で覆われる。半導体層20又は半導体層20Aの側面20aは、絶縁膜80で覆われることで、半導体層20又は半導体層20Aを覆う保護膜70に開口部71を形成する際のドライエッチングに用いられるフッ素系ガスに曝されることが抑えられる。これにより、半導体層20又は半導体層20Aの側面20aの一部が消失することが抑えられ、また、半導体層20又は半導体層20Aの側面20aにおけるゲート電極30とチャネル層21との接触が抑えられる。ゲート電極30とチャネル層21との接触による短絡に起因した性能低下が抑えられる高性能の半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等が実現される。このような半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等が用いられ、高性能のPFC回路300が実現される。
【0135】
[第9の実施の形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、電源装置への適用例を、第9の実施の形態として説明する。
【0136】
図22は第9の実施の形態に係る電源装置の一例について説明する図である。
図22には、電源装置の一例の等価回路図を示している。
図22に示す電源装置400は、一次側回路410及び二次側回路420、並びに一次側回路410と二次側回路420との間に設けられるトランス430を含む。
【0137】
一次側回路410には、上記第8の実施の形態で述べたようなPFC回路300、及びPFC回路300のコンデンサ350の両端子間に接続されたインバータ回路、例えば、フルブリッジインバータ回路440が含まれる。フルブリッジインバータ回路440には、複数、ここでは一例として4つのスイッチ素子441、スイッチ素子442、スイッチ素子443及びスイッチ素子444が含まれる。
【0138】
二次側回路420には、複数、ここでは一例として3つのスイッチ素子421、スイッチ素子422及びスイッチ素子423が含まれる。
例えば、このような構成を有する電源装置400の、一次側回路410に含まれるPFC回路300のスイッチ素子310、及びフルブリッジインバータ回路440のスイッチ素子441、442、443、444に、上記半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等が用いられる。例えば、電源装置400の、二次側回路420のスイッチ素子421、422、423には、Siを用いた通常のMIS型電界効果トランジスタが用いられる。
【0139】
上記のように、半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等では、素子分離領域60によって形成される半導体層20又は半導体層20Aの側面20aが、金属を含有する絶縁膜80で覆われる。半導体層20又は半導体層20Aの側面20aは、絶縁膜80で覆われることで、半導体層20又は半導体層20Aを覆う保護膜70に開口部71を形成する際のドライエッチングに用いられるフッ素系ガスに曝されることが抑えられる。これにより、半導体層20又は半導体層20Aの側面20aの一部が消失することが抑えられ、また、半導体層20又は半導体層20Aの側面20aにおけるゲート電極30とチャネル層21との接触が抑えられる。ゲート電極30とチャネル層21との接触による短絡に起因した性能低下が抑えられる高性能の半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等が実現される。このような半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等が用いられ、高性能の電源装置400が実現される。
【0140】
[第10の実施の形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、増幅器への適用例を、第10の実施の形態として説明する。
【0141】
図23は第10の実施の形態に係る増幅器の一例について説明する図である。
図23には、増幅器の一例の等価回路図を示している。
図23に示す増幅器500は、デジタルプレディストーション回路510、ミキサー520、ミキサー530及びパワーアンプ540を含む。
【0142】
デジタルプレディストーション回路510は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー520は、非線形歪みが補償された入力信号SIと交流信号とをミキシングする。パワーアンプ540は、入力信号SIが交流信号とミキシングされた信号を増幅する。増幅器500では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力信号SOをミキサー530で交流信号とミキシングしてデジタルプレディストーション回路510に送出することができる。増幅器500は、高周波増幅器、高出力増幅器として使用することができる。
【0143】
このような構成を有する増幅器500のパワーアンプ540に、上記半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等が用いられる。
上記のように、半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等では、素子分離領域60によって形成される半導体層20又は半導体層20Aの側面20aが、金属を含有する絶縁膜80で覆われる。半導体層20又は半導体層20Aの側面20aは、絶縁膜80で覆われることで、半導体層20又は半導体層20Aを覆う保護膜70に開口部71を形成する際のドライエッチングに用いられるフッ素系ガスに曝されることが抑えられる。これにより、半導体層20又は半導体層20Aの側面20aの一部が消失することが抑えられ、また、半導体層20又は半導体層20Aの側面20aにおけるゲート電極30とチャネル層21との接触が抑えられる。ゲート電極30とチャネル層21との接触による短絡に起因した性能低下が抑えられる高性能の半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等が実現される。このような半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等が用いられ、高性能の増幅器500が実現される。
【0144】
上記半導体装置1、1A、1B、1C、1D、1E等を適用した各種電子装置(上記第7から第10の実施の形態で述べた半導体パッケージ200、PFC回路300、電源装置400及び増幅器500等)は、各種電子機器又は電子装置に搭載することができる。例えば、コンピュータ(パーソナルコンピュータ、スーパーコンピュータ、サーバ等)、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、センサ、カメラ、オーディオ機器、測定装置、検査装置、製造装置、送信器、受信器、レーダー装置といった、各種電子機器又は電子装置に搭載することが可能である。
【0145】
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 基板と、
前記基板の第1面側に設けられる半導体層と、
前記半導体層の、前記基板とは反対側を覆うように設けられ、開口部を有し、Siを含有する第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の前記開口部と、前記半導体層の、前記基板の前記第1面と平行な第1方向に面する第2面側とに設けられる電極と、
前記半導体層の前記第2面と、前記第2面側に設けられる前記電極との間に設けられ、金属元素を含有する第2絶縁膜と、
を含む半導体装置。
【0146】
(付記2) 前記第1絶縁膜は、前記半導体層の前記第2面側に延び、前記第2絶縁膜と、前記第2面側に設けられる前記電極との間に設けられる、付記1に記載の半導体装置。
【0147】
(付記3) 前記半導体層は、
チャネル層と前記チャネル層に積層されるキャリア供給層とを含む第1層と、
前記第1層の、前記基板とは反対側に積層される第2層と、
を含み、
前記第2絶縁膜は、前記半導体層の前記第2面における前記第1層及び前記第2層のうちの前記第1層を覆う、付記1又は2に記載の半導体装置。
【0148】
(付記4) 前記第1絶縁膜の前記開口部は、前記半導体層の、前記基板とは反対側において、前記半導体層に通じ、
前記開口部に設けられる前記電極は、前記半導体層に接する、付記3に記載の半導体装置。
【0149】
(付記5) 前記半導体層は、
チャネル層と前記チャネル層に積層されるキャリア供給層とを含む第1層と、
前記第1層の、前記基板とは反対側に積層される第2層と、
を含み、
前記第2絶縁膜は、前記半導体層の前記第2面における前記第1層及び前記第2層を覆い、前記半導体層の、前記基板とは反対側に延びる、付記1又は2に記載の半導体装置。
【0150】
(付記6) 前記第1絶縁膜の前記開口部は、前記半導体層の、前記基板とは反対側において、前記第2絶縁膜に通じ、
前記開口部に設けられる前記電極は、前記第2絶縁膜に接する、付記5に記載の半導体装置。
【0151】
(付記7) 前記第2絶縁膜は、
前記半導体層の前記第2面における前記第1層を覆い、前記第1層から前記基板の前記第1面と平行な前記第1方向に第1厚さを有する第1部位と、
前記半導体層の前記第2面における前記第2層を覆い、前記半導体層の、前記基板とは反対側に延び、前記第2層から前記基板の前記第1面と平行な前記第1方向に前記第1厚さよりも薄い第2厚さを有する第2部位と、
を含む、付記5又は6に記載の半導体装置。
【0152】
(付記8) 前記第2層は、前記第1層よりも、前記基板の前記第1面と平行な前記第1方向に張り出した形状を有する、付記3から7のいずれか一項に記載の半導体装置。
(付記9) 前記第2層は、前記第1層の前記キャリア供給層よりも、前記基板の前記第1面と平行な前記第1方向に張り出した形状を有し、
前記第1層の前記キャリア供給層は、前記第1層の前記チャネル層よりも、前記基板の前記第1面と平行な前記第1方向に張り出した形状を有する、付記3から8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0153】
(付記10) 前記第2層の、前記基板の前記第1面と垂直な第2方向の厚さが、前記第1層の前記チャネル層の厚さの半分以下である、付記3から9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0154】
(付記11) 前記第1層の前記チャネル層にInGaAsが用いられ、
前記第1層の前記キャリア供給層にInAlAsが用いられ、
前記第2層にInP又はInGaPが用いられる、付記3から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0155】
(付記12) 前記第2絶縁膜に含有される前記金属元素は、電気陰性度が1.8以下である、付記1から11のいずれか一項に記載の半導体装置。
(付記13) 前記第2絶縁膜は、前記金属元素として、Al、Hf、Zr、Ti、Ta、Mg、Sc、Y、La及びSrのうちの1種又は2種以上を含有する、付記1から12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0156】
(付記14) 前記第2絶縁膜は、酸化膜、窒化膜及び酸窒化膜のうちの1種又は2種以上を含む、付記1から13のいずれか一項に記載の半導体装置。
(付記15) 基板の第1面側に設けられる半導体層を形成する工程と、
前記半導体層の、前記基板とは反対側を覆うように設けられ、開口部を有し、Siを含有する第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜の前記開口部と、前記半導体層の、前記基板の前記第1面と平行な第1方向に面する第2面側とに設けられる電極を形成する工程と、
を含み、
前記第1絶縁膜を形成する工程前に、前記半導体層の前記第2面と、前記第2面側に設けられる前記電極との間に設けられ、金属元素を含有する第2絶縁膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法。
【0157】
(付記16) 前記第1絶縁膜を形成する工程は、前記半導体層の前記第2面側に延びる前記第1絶縁膜を形成する工程を含み、
前記半導体層の前記第2面側に延びる前記第1絶縁膜は、前記第2絶縁膜と、前記第2面側に設けられる前記電極との間に形成される、付記15に記載の半導体装置の製造方法。
【0158】
(付記17) 前記第1絶縁膜を形成する工程は、ガスを用いたエッチングによって前記開口部を形成する工程を含む、付記15又は16に記載の半導体装置の製造方法。
(付記18) 基板と、
前記基板の第1面側に設けられる半導体層と、
前記半導体層の、前記基板とは反対側を覆うように設けられ、開口部を有し、Siを含有する第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の前記開口部と、前記半導体層の、前記基板の前記第1面と平行な第1方向に面する第2面側とに設けられる電極と、
前記半導体層の前記第2面と、前記第2面側に設けられる前記電極との間に設けられ、金属元素を含有する第2絶縁膜と、
を含む半導体装置を備える電子装置。
【符号の説明】
【0159】
1、1A、1B、1C、1D、1E、100 半導体装置
10、10A、110 基板
10a 面
11 下地基板
12 バッファ層
20、20A、120 半導体層
20a、80a、120a 側面
21、121 チャネル層
22、25、122 キャリア供給層
23、123 エッチング停止層
24、124 キャップ層
24a、124a リセス
28、128 二次元キャリアガス
30、130 ゲート電極
40、140 ソース電極
50、150 ドレイン電極
60、160 素子分離領域
70、170 保護膜
71、171 開口部
80 絶縁膜
81 第1絶縁部
82 第2絶縁部
90、190 庇部
180 空間
200 半導体パッケージ
210 リードフレーム
210a ダイパッド
211 ゲートリード
212 ソースリード
213 ドレインリード
220 樹脂
230 ワイヤ
30a、40a、50a パッド
300 PFC回路
310、421、422、423、441、442、443、444 スイッチ素子
320 ダイオード
330 チョークコイル
340、350 コンデンサ
360 ダイオードブリッジ
370 交流電源
400 電源装置
410 一次側回路
420 二次側回路
430 トランス
440 フルブリッジインバータ回路
500 増幅器
510 デジタルプレディストーション回路
520、530 ミキサー
540 パワーアンプ
D1、D2 方向
Q1、Q2 部分
T1a、T1b、T2 厚さ