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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135059
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】蓄熱器
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20230921BHJP
   F28D 1/06 20060101ALI20230921BHJP
   F28F 21/04 20060101ALI20230921BHJP
   F28F 21/06 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
F28D20/00 G
F28D1/06 A
F28F21/04
F28F21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040072
(22)【出願日】2022-03-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、知の拠点あいち重点研究プロジェクトIII期、「熱/電気バッテリーで構築するエネルギーマネジメント技術」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新家 大地
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬幸
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA35
(57)【要約】
【課題】補強構造を有する内側容器における断熱性能の低下を抑えることを可能にした蓄熱器を提供する。
【解決手段】蓄熱器11は、蓄熱部21と、蓄熱部21を収容する内側容器31と、内側容器31を収容する外側容器41と、内側容器31と外側容器41との間の断熱空間部51とを備える。内側容器31は、金属壁32と、金属壁32の外面に重ね合わせるように配置される補強壁33とを有する。蓄熱器11は、補強壁33の外方への移動を規制するように補強壁33を支持する支持部材61をさらに備える。補強壁33は、金属壁32と支持部材61との間を断熱するように配置される断熱材層34を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱部と、
前記蓄熱部を収容する内側容器と、
前記内側容器を収容する外側容器と、
前記内側容器と前記外側容器との間の断熱空間部と、を備える蓄熱器であって、
前記内側容器は、金属壁と、前記金属壁の外面に重ね合わせるように配置される補強壁と、を有し、
前記蓄熱器は、前記補強壁の外方への移動を規制するように前記補強壁を支持する支持部材をさらに備え、
前記補強壁は、前記金属壁と前記支持部材との間を断熱するように配置される断熱材層を有する、蓄熱器。
【請求項2】
前記補強壁は、前記断熱材層の外側に配置される補強板材をさらに有する、請求項1に記載の蓄熱器。
【請求項3】
前記断熱材層を構成する断熱材は、繊維系断熱材、セラミックス系ボード、樹脂発泡体、中空層を有する樹脂ボード、及び真空構造を有する断熱ボードから選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は請求項2に記載の蓄熱器。
【請求項4】
前記断熱空間部は、真空断熱部から構成される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の蓄熱器。
【請求項5】
前記支持部材は、前記外側容器と前記補強壁との間隔を調整する間隔調整機構を有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の蓄熱器。
【請求項6】
前記蓄熱部は、熱交換部を有し、
前記熱交換部に熱媒体を供給する熱媒体供給管と、
前記熱交換部から前記熱媒体を排出する熱媒体排出管と、をさらに備え、
前記外側容器は、前記熱媒体供給管と前記熱媒体排出管とのそれぞれに対応した貫通孔を有する、請求項5に記載の蓄熱器。
【請求項7】
前記内側容器の内部と前記外側容器の外部との間に蒸気を流通する流通管をさらに備え、前記流通管は、前記流通管の長さ方向に直交する方向に沿った位置、及び長さの少なくとも一方を、前記金属壁の位置の変更に合わせて調整可能に構成される、請求項5又は請求項6に記載の蓄熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、蓄熱器の容器は、断熱性能を有する壁部から構成されている。また、特許文献2に開示されるように、化学蓄熱材を備える蓄熱器は、例えば、ケミカルヒートポンプに用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2015-503049号公報
【特許文献2】特開2019-158299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄熱器における容器の断熱構造としては、例えば、外側容器と、内側容器と、外側容器と内側容器との間の断熱空間部とを有する構造が挙げられる。この断熱構造における内側容器を構成する壁部は、金属壁と、金属壁の外面に重ね合わせるように配置される補強壁とを有することが好ましい。この場合、内側容器の強度を容易に確保することが可能となる。内側容器の補強壁は、例えば、支持部材によって内側容器の外方への移動を規制するように支持される。これにより、内側容器の金属壁が外方に向けて変形することを抑えることができる。
【0005】
ここで、上記のように補強壁を支持する支持部材は、外側容器に設ける必要がある。すなわち、支持部材は、内側容器の補強壁と外側容器とを連結するように配置されるため、内側容器と外側容器との間の熱伝導経路となる。これにより、容器の断熱性能が低下するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する蓄熱器は、蓄熱部と、前記蓄熱部を収容する内側容器と、前記内側容器を収容する外側容器と、前記内側容器と前記外側容器との間の断熱空間部と、を備える蓄熱器であって、前記内側容器は、金属壁と、前記金属壁の外面に重ね合わせるように配置される補強壁と、を有し、前記蓄熱器は、前記補強壁の外方への移動を規制するように前記補強壁を支持する支持部材をさらに備え、前記補強壁は、前記金属壁と前記支持部材との間を断熱するように配置される断熱材層を有する。
【0007】
この構成によれば、上記のように補強壁と支持部材とを有する補強構造によって、金属壁を補強することができる。このとき、補強壁は、金属壁と支持部材との間を断熱するように配置される断熱材層を有するため、金属壁と支持部材との間の熱伝導を抑えることができる。
【0008】
上記蓄熱器において、前記補強壁は、前記断熱材層の外側に配置される補強板材をさらに有していてもよい。この構成によれば、例えば、断熱材層のみから構成した補強壁では、補強性能が不足する場合であっても、補強板材によって補強壁の強度を容易に高めることができる。
【0009】
上記蓄熱器において、前記断熱材層を構成する断熱材は、繊維系断熱材、セラミックス系ボード、樹脂発泡体、中空層を有する樹脂ボード、及び真空構造を有する断熱ボードから選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0010】
上記蓄熱器において、前記断熱空間部は、真空断熱部から構成されてもよい。この構成によれば、容器の断熱性能をさらに高めることが可能となる。また、このように断熱空間部を真空断熱部とした場合、内側容器を構成する金属壁には、内側から外側へ向けて圧力が加わることになる。このとき、上述したように、内側容器は、支持部材で支持される補強壁を有しているため、上記圧力による内側容器の変形を抑えることが可能となる。
【0011】
上記蓄熱器において、前記支持部材は、前記外側容器と前記補強壁との間隔を調整する間隔調整機構を有してもよい。この構成によれば、支持部材の間隔調整機構により、内側容器における金属壁の位置に補強壁の位置を容易に合わせて補強壁を支持することができる。
【0012】
上記蓄熱器において、前記蓄熱部は、熱交換部を有し、前記熱交換部に熱媒体を供給する熱媒体供給管と、前記熱交換部から前記熱媒体を排出する熱媒体排出管と、をさらに備え、前記外側容器は、前記熱媒体供給管と前記熱媒体排出管とのそれぞれに対応した貫通孔を有する。
【0013】
上記のような熱媒体供給管と熱媒体排出管とは、それぞれに対応した外側容器の貫通孔の位置に合わせて配置することが必要となる。ここで、熱媒体供給管及び熱媒体排出管は、熱交換部から金属壁を通じる配管と接続されている。このため、熱媒体供給管及び熱媒体排出管の位置を調整するには、内側容器の金属壁の位置及び補強壁の位置も調整することになる。このとき、支持部材は、上述した間隔調整機構を有している。このため、補強壁の位置が変更された場合であっても、その補強壁を支持部材によって容易に支持することができる。
【0014】
上記蓄熱器において、前記内側容器の内部と前記外側容器の外部との間に蒸気を流通する流通管をさらに備え、前記流通管は、前記流通管の長さ方向に直交する方向に沿った位置、及び長さの少なくとも一方を、前記金属壁の位置の変更に合わせて調整可能に構成されてもよい。
【0015】
この構成によれば、金属壁に流通管が接続されていたとしても、流通管に妨げられずに金属壁の位置の調整を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、補強構造を有する内側容器における断熱性能の低下を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態における蓄熱器を示す部分断面図である。
図2】内側容器の一部と流路構成の一部を示す斜視図である。
図3】内側容器と外側容器の一部、及び支持部材を示す断面図である。
図4】内側容器と外側容器の一部、及び支持部材を分解して示す断面図である。
図5】蓄熱器の一部を示す断面図である。
図6】蓄熱器における金属壁の位置の調整を説明する模式図である。
図7】変更例の蓄熱器であり、金属壁の位置の調整を説明する模式図である。
図8】変更例の蓄熱器であり、内側容器と外側容器の一部、及び支持部材を示す断面図である。
図9】変更例の蓄熱器であり、内側容器と外側容器の一部、及び支持部材を分解して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、蓄熱器の一実施形態について図面を参照して説明する。
<蓄熱器の概要>
図1に示すように、蓄熱器11は、蓄熱部21と、蓄熱部21を収容する内側容器31と、内側容器31を収容する外側容器41とを備えている。蓄熱器11は、内側容器31と外側容器41との間の断熱空間部51を備えている。蓄熱器11は、支持部材61をさらに備えている。蓄熱器11は、例えば、ケミカルヒートポンプに用いることができる。ケミカルヒートポンプは、例えば、工場等から発生する排熱を蓄熱器で蓄熱し、排熱の温度よりも高い温度の熱を蓄熱器から放熱可能とするシステムである。
【0019】
<蓄熱部21>
図1及び図2に示すように蓄熱部21は、熱交換部22と、図示を省略した化学蓄熱材とを備えている。本実施形態の熱交換部22は、複数の熱交換器23を備えている。熱交換器23としては、例えば、熱媒体を流通する流路管と、流路管に接続される伝熱用フィンとを備えるフィンチューブ型の熱交換器、熱媒体を流通する流路管を有し、伝熱用フィンを有しないフィンレス型の熱交換器等が挙げられる。熱交換器23は、例えば、金属材料から構成される。
【0020】
化学蓄熱材は、例えば、蓄熱動作時に脱水反応し、放熱動作時に水和反応する材料である。化学蓄熱材としては、周知の固体材料を用いることができる。化学蓄熱材は、反応を行う化学蓄熱物質のみから構成してもよいし、例えば、粒子状の化学蓄熱物質を水蒸気透過性樹脂等の水蒸気透過性のバインダーで結合した材料であってもよい。化学蓄熱物質としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。化学蓄熱材は、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。化学蓄熱材は、水蒸気透過部を有する容器に入れて配置してもよい。
【0021】
化学蓄熱材に蓄熱する蓄熱動作時には、化学蓄熱材を加熱する熱媒体を外部から熱交換器23に供給する。化学蓄熱材を放熱させる放熱動作時には、外部から熱交換器23に熱媒体を供給し、熱交換器23から熱媒体を排出することで、蓄熱器11から熱を取り出すことができる。
【0022】
化学蓄熱物質の一種である塩化カルシウムの蓄熱動作時の脱水反応は、例えば、下記式(1)で表される。
CaCl・2HO→CaCl・HO+HO・・・(1)
塩化カルシウムには、例えば、水蒸気圧が2kPaの条件の場合、80℃の排熱を利用して蓄熱させることができる。
【0023】
また、塩化カルシウムの放熱動作時の水和反応は、例えば、下記式(2)で表される。
CaCl・HO+HO→CaCl・2HO・・・(2)
塩化カルシウムは、例えば、水蒸気圧が95kPaの条件の場合、170℃の熱を放熱する。
【0024】
すなわち、例えば、蓄熱動作の温度条件を80℃、放熱動作の温度条件を170℃とした場合、塩化カルシウムの雰囲気における水蒸気圧を2kPaから95kPaまで上昇させることで、放熱動作が開始される。
【0025】
<内側容器31>
図1及び図3に示すように、内側容器31は、金属壁32と、金属壁32の外面に重ね合わせるように配置される補強壁33とを有している。金属壁32は、蓄熱部21を取り囲むように配置されている。内側容器31の壁部は、底壁、上壁、及び側壁から構成される。側壁の全体形状としては、例えば、四角筒状等の多角筒状、円筒状等が挙げられる。
【0026】
補強壁33は、金属壁32と支持部材61との間を断熱するように配置される断熱材層34を有している。断熱材層34を構成する断熱材としては、繊維系断熱材、セラミックス系ボード、樹脂発泡体、中空層(中空部)を有する樹脂ボード、真空構造を有する断熱ボード等が挙げられる。繊維系断熱材としては、例えば、ガラスファイバー、ロックウール等が挙げられる。セラミックス系ボードとしては、例えば、シリカボード、アルミナボード等が挙げられる。
【0027】
本実施形態の補強壁33は、断熱材層34の外側に配置される補強板材35をさらに有している。補強板材35の材質は、例えば、金属、繊維強化プラスチック等が挙げられる。補強板材35は、断熱材層34よりも高い強度を有することが好ましい。
【0028】
本実施形態の補強壁33は、内側容器31の側壁、底壁、及び上壁を構成する金属壁32を補強するように設けられている。
<外側容器41及び断熱空間部51>
図1に示すように、外側容器41は、内側容器31の内部と外側容器41の外部とを連通する第1貫通孔H1を有している。また、外側容器41は、熱交換部22に熱媒体を供給するための第2貫通孔H2と、熱交換部22から熱媒体を排出するための第3貫通孔H3とを有している。
【0029】
外側容器41の壁部は、底壁、上壁、及び側壁から構成される。本実施形態の第1貫通孔H1は、外側容器41の上壁を貫通している。本実施形態の第2貫通孔H2及び第3貫通孔H3は、外側容器41の側壁を貫通している。
【0030】
外側容器41の材質としては、例えば、金属、繊維強化プラスチック等が挙げられる。断熱空間部51は、空気等の気体が充填された気体充填部、又は真空断熱部から構成することができる。断熱空間部51の断熱性能をより高めるという観点から、断熱空間部51は、真空断熱部から構成されることが好ましい。この場合、外側容器41は、図示を省略した排気部を有している。この排気部を通じて断熱空間部51の空気を外側容器41の外部に排気し、排気部を閉塞することで、真空断熱部を設けることができる。真空断熱部の圧力は、断熱性能をより高めるという観点から、100Pa以下であることが好ましい。
【0031】
<支持部材61>
図1に示すように、支持部材61は、補強壁33の外方への移動を規制するように補強壁33を支持している。支持部材61は、内側容器31の側壁を構成する補強壁33を支持する複数の第1支持部材61aを備えている。また、支持部材61は、内側容器31の底壁及び上壁を構成する補強壁33を支持する複数の第2支持部材61bを備えている。
【0032】
図3及び図4に示すように、本実施形態の第1支持部材61aは、両端面に開口するねじ穴を有する第1支柱部62と、外側容器41に固定される第1ボルト63と、第1支柱部62を補強板材35とを締結する第2ボルト64とを備えている。第1支柱部62は、第1ボルト63に螺合される。
【0033】
また、第1支持部材61aは、外側容器41と補強壁33との間隔を調整する間隔調整機構65を備えている。第1支持部材61aの間隔調整機構65は、スペーサ66により構成されている。間隔調整機構65は、スペーサ66の数の変更や、厚さの異なるスペーサ66を用いることで、外側容器41と第1支柱部62との間隔を調整できるように構成されている。このような間隔調整機構65により、外側容器41と補強壁33との間隔を調整することができる。
【0034】
補強壁33の断熱材層34は、第2ボルト64に支持されている。詳述すると、断熱材層34は、第2ボルト64の頭部64aが挿入可能な挿入部34aを有している。第2ボルト64の頭部64aを断熱材層34の挿入部34aに挿入することで、第2ボルト64に断熱材層34を支持させることができる。
【0035】
図5に示すように、本実施形態の第2支持部材61bは、第2支柱部67と、第2ボルト64と、スペーサ66とを備えている。第2支持部材61bについても、スペーサ66により構成される間隔調整機構65を有している。
【0036】
<流路構成>
次に、蓄熱器11の内側容器31の内部と外側容器41の外部とを連通する流路構成について説明する。まず、化学蓄熱材の反応に用いられる蒸気を流通する流路構成について説明する。蓄熱器11は、図1及び図5に白抜き矢印で示すように、内側容器31の内部と外側容器41の外部との間に蒸気STを流通する流通管を有している。化学蓄熱材を脱水反応させる蓄熱動作時には、内側容器31の内部から蒸気STが排出される。化学蓄熱材を水和反応させる放熱動作時には、内側容器31の内部に蒸気STが供給される。
【0037】
流通管は、第1流通管F1及び第2流通管F2から構成されている。第1流通管F1は、内側容器31の内部と連通している。第2流通管F2は、流路部材71の一部から構成されている。
【0038】
詳述すると、図1及び図5に示すように、蓄熱器11は、外側容器41に設けられる流路部材71と、流路部材71を外側容器41に保持させる保持部材72とを備えている。流路部材71は、外側容器41の第1貫通孔H1に対応して配置される。流路部材71は、第1流通管F1に接続される第2流通管F2と、外側容器41の外面に重ね合わせるように配置されるフランジ部71aとを有している。
【0039】
流路管の外面と第1貫通孔H1の内面との間には、隙間が形成されている。これにより、流通管は、流通管の長さ方向(流路方向)に直交する方向に沿った位置を、金属壁32の位置の変更に合わせて調整可能に構成されている。また、第1流通管F1及び第2流通管F2から構成される流通管は、第1流通管F1が第2流通管F2に挿入された接続構造を有する。これにより、流通管の長さを、金属壁32の位置の変更に合わせて調整可能に構成されている。
【0040】
流路管の周囲の第1貫通孔H1の気密性は、次の構成により確保されている。保持部材72は、流路部材71のフランジ部71aを外側容器41に押さえ付けるように配置される押え部材72aと、押え部材72aを外側容器41に締結する締結部材72bとを備えている。流路部材71のフランジ部71aは、外側容器41と押え部材72aとに挟み込まれるようにして外側容器41に保持される。また、蓄熱器11は、フランジ部71aと外側容器41との間と、第1流路管と第2流路管との間に設けられるシール部材SLを備えている。これにより、流路管の周囲の第1貫通孔H1の気密性が確保される結果、断熱空間部51の気密性を確保することができる。
【0041】
次に、熱交換部22に熱媒体を流通させるための流路構成について説明する。図1及び図2に示すように、蓄熱器11は、外側容器41の外部から熱交換部22に熱媒体を供給する熱媒体供給管P1と、熱交換部22から外側容器41の外部に熱媒体を排出する熱媒体排出管P2とを備えている。図1に示すように、熱媒体供給管P1と熱媒体排出管P2とは、それぞれに対応した外側容器41の第2貫通孔H2と第3貫通孔H3の位置に合わせて配置されている。
【0042】
本実施形態の熱媒体供給管P1は、複数の熱交換器23に熱媒体を分配する分配管である。また、本実施形態の熱媒体排出管P2は、複数の熱交換器23から排出される熱媒体を集合する集合管である。このように本実施形態では、複数の熱交換器23を熱媒体供給管P1と熱媒体排出管P2との間で並列となるように接続しているが、複数の熱交換器23を熱媒体供給管P1と熱媒体排出管P2との間で直列となるように接続することもできる。なお、複数の熱交換器23の配列する方向は、特に限定されない。複数の熱交換器23の配列方向としては、例えば、水平方向、垂直方向等が挙げられる。また、熱媒体供給管P1及び熱媒体排出管P2の配置は、特に限定されない。図2に示される熱媒体供給管P1を熱媒体排出管として用いるとともに、熱媒体排出管P2を熱媒体供給管として用いることもできる。
【0043】
<作用>
次に、本実施形態の蓄熱器11の主な作用について説明する。
図1に示すように、蓄熱器11は、補強壁33の外方への移動を規制するように補強壁33を支持する支持部材61を備えている。補強壁33は、金属壁32と支持部材61との間を断熱するように配置される断熱材層34を有している。この構成によれば、補強壁33と支持部材61とを有する補強構造によって、金属壁32を補強することができる。このとき、補強壁33は、断熱材層34を有するため、金属壁32と支持部材61との間の熱伝導を抑えることができる。
【0044】
図6に示すように、熱媒体供給管P1と熱媒体排出管P2とは、それぞれに対応した外側容器41の第2貫通孔H2と第3貫通孔H3の位置に合わせて配置することが必要となる。ここで、熱媒体供給管P1及び熱媒体排出管P2は、熱交換部22から金属壁32を通じる配管と接続されている。このため、熱媒体供給管P1及び熱媒体排出管P2の位置を調整するには、内側容器31の金属壁32の位置及び補強壁33の位置も調整することになる。例えば、内側容器31の金属壁32の位置は、図6のX軸及びZ軸に沿って調整される。この金属壁32の位置に合わせて補強壁33の位置も調整する必要がある。このとき、支持部材61は、上述した間隔調整機構65を有している。このため、補強壁33の位置が変更された場合であっても、その補強壁33を支持部材61によって容易に支持することができる。
【0045】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)蓄熱器11は、蓄熱部21と、蓄熱部21を収容する内側容器31と、内側容器31を収容する外側容器41と、内側容器31と外側容器41との間の断熱空間部51とを備えている。内側容器31は、金属壁32と、金属壁32の外面に重ね合わせるように配置される補強壁33とを有している。蓄熱器11は、補強壁33の外方への移動を規制するように補強壁33を支持する支持部材61をさらに備えている。補強壁33は、金属壁32と支持部材61との間を断熱するように配置される断熱材層34を有している。
【0046】
この構成によれば、上述したように、補強壁33は、上述した断熱材層34を有するため、金属壁32と支持部材61との間の熱伝導を抑えることができる。これにより、補強構造を有する内側容器31における断熱性能の低下を抑えることが可能となる。
【0047】
(2)補強壁33は、断熱材層34の外側に配置される補強板材35をさらに有している。この構成によれば、例えば、断熱材層34のみから構成した補強壁33では、補強性能が不足する場合であっても、補強板材35によって補強壁33の強度を容易に高めることができる。
【0048】
(3)断熱空間部51は、真空断熱部から構成されることが好ましい。この場合、容器の断熱性能をさらに高めることが可能となる。また、このように断熱空間部51を真空断熱部とした場合、内側容器31を構成する金属壁32には、内側から外側へ向けて圧力が加わることになる。このとき、上述したように、内側容器31は、支持部材61で支持される補強壁33を有しているため、上記圧力による内側容器31の変形を抑えることが可能となる。
【0049】
(4)支持部材61は、外側容器41と、内側容器31の補強壁33との間隔を調整する間隔調整機構65を有している。この場合、支持部材61の間隔調整機構65により、内側容器31における金属壁32の位置に補強壁33の位置を容易に合わせて補強壁33を支持することができる。
【0050】
(5)蓄熱器11は、熱交換部22に熱媒体を供給する熱媒体供給管P1と、熱交換部22から熱媒体を排出する熱媒体排出管P2とをさらに備えている。外側容器41は、熱媒体供給管P1と熱媒体排出管P2とのそれぞれに対応した第2貫通孔H2と第3貫通孔H3とを有している。
【0051】
上記の熱媒体供給管P1と熱媒体排出管P2とは、それぞれに対応した第2貫通孔H2と第3貫通孔H3の位置に合わせて配置することが必要となる。ここで、上述したように熱媒体供給管P1及び熱媒体排出管P2の位置を調整するには、内側容器31の金属壁32の位置及び補強壁33の位置も調整することになる。このとき、支持部材61は、上述した間隔調整機構65を有している。このため、補強壁33の位置が変更された場合であっても、その補強壁33を支持部材61によって容易に支持することができる。
【0052】
(6)蓄熱器11は、内側容器31の内部と外側容器41の外部との間に蒸気STを流通する流通管をさらに備えている。流通管は、流通管の長さ方向に直交する方向に沿った位置、及び長さの少なくとも一方を、金属壁32の位置の変更に合わせて調整可能に構成されている。この場合、金属壁32に流通管が接続されていたとしても、流通管に妨げられずに金属壁32の位置の調整を行うことが可能となる。
【0053】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・上記実施形態では、図6に示すように、第2貫通孔H2と第3貫通孔H3とは、外側容器41の側壁を貫通している。すなわち、熱媒体供給管P1と熱媒体排出管P2とは、外側容器41の側壁に向けて延びるように設けられているが、これに限定されない。
【0055】
例えば、図7に示すように、第2貫通孔H2と第3貫通孔H3とは、外側容器41の上壁を貫通するように変更することもできる。すなわち、熱媒体供給管P1と熱媒体排出管P2とを外側容器41の上壁に向けて延びるように設けることもできる。この場合、熱媒体供給管P1及び熱媒体排出管P2の位置を調整する際に、例えば、内側容器31の金属壁32の位置は、図7のX軸及びY軸に沿って調整される。このとき、外側容器41の側壁に設けられる支持部材61が上述した間隔調整機構65を有することで、金属壁32の位置に合わせた補強壁33を支持することができる。
【0056】
・熱媒体供給管P1及び熱媒体排出管P2の位置の調整は、例えば、X軸に沿った方向等、一方向のみ沿って金属壁32の位置を調整して行ってもよい。この場合、内側容器31の内部と外側容器41の外部との間に蒸気STを流通する流通管は、長さのみを調整可能に構成されていてもよい。また、流通管は、流通管の長さ方向に直交する一方向のみに沿って位置を調整可能に構成されていてもよい。
【0057】
・上記支持部材61の間隔調整機構65は、例えば、次のように変更することもできる。例えば、図8及び図9に示す支持部材61の間隔調整機構65は、第3支柱部68に組み込まれている。この間隔調整機構65は、ねじ機構、ばね等の付勢部材により第3支柱部68を伸縮可能に構成している。
【0058】
・支持部材61の間隔調整機構65を省略することもできる。
・蓄熱部21に配置する蓄熱材は、水和反応及び脱水反応を伴う化学蓄熱材以外の蓄熱材であってもよい。この場合、内側容器31の内部と外側容器41の外部との間に蒸気STを流通する流通管を省略してもよい。
【0059】
・補強壁33の補強板材35を省略することもできる。
・上記補強壁33は、内側容器31の側壁、底壁、及び上壁を構成する金属壁32を補強するように設けられている。補強壁33は、内側容器31の側壁、底壁、及び上壁の少なくとも一つの壁を構成する金属壁32を補強するように設けてもよい。また、補強壁33は、例えば、側壁を構成する金属壁の一部を補強するように部分的に設けてもよい。
【0060】
・外側容器41の内部に複数の内側容器31を配置することもできる。複数の内側容器31は、互いに同じ寸法を有していてもよいし、互いに異なる寸法を有していてもよい。例えば、第1の内側容器31と第2の内側容器31とを配置する場合、第1の内側容器31の金属壁32と、第2の内側容器31の金属壁32との間に少なくとも一つの補強壁33を挟み込んで配置することができる。また、第1の内側容器31の金属壁32と第2の内側容器31の金属壁32とを接触させて配置してもよい。この場合、金属壁32が互いに接触した構造を有する部分については、隣接する金属壁32同士で互いに補強することもできるため、補強壁33を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
11…蓄熱器
21…蓄熱部
22…熱交換部
31…内側容器
32…金属壁
33…補強壁
34…断熱材層
35…補強板材
41…外側容器
51…断熱空間部
61…支持部材
65…間隔調整機構
F1…第1流通管
F2…第2流通管
P1…熱媒体供給管
P2…熱媒体排出管
ST…蒸気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9