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特開2023-135060ケミカルヒートポンプ及び反応率算出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135060
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ケミカルヒートポンプ及び反応率算出方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 17/08 20060101AFI20230921BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
F25B17/08 C
F28D20/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040073
(22)【出願日】2022-03-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、知の拠点あいち重点研究プロジェクトIII期、「熱/電気バッテリーで構築するエネルギーマネジメント技術」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩苔 翼
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬幸
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093NN03
3L093PP01
(57)【要約】
【課題】蓄熱動作と放熱動作との切り替えを適切なタイミングで円滑に行うことを可能としたケミカルヒートポンプ及び反応率算出方法を提供する。
【解決手段】ケミカルヒートポンプ11は、蒸発器14を加熱する第1熱媒体を供給及び排出する加熱用流路21aを有する蒸発器加熱経路21と、回収器15を冷却する第2熱媒体を供給及び排出する冷却用流路22aを有する回収器冷却経路22とを備える。ケミカルヒートポンプ11の第1算出部は、蒸発器加熱経路21における第1熱媒体の供給温度、排出温度、及び供給流量の検出結果から求められる蒸気生成量に基づいて、化学蓄熱材12の水和反応の反応率を算出する。ケミカルヒートポンプ11の第2算出部は、回収器冷却経路22における第2熱媒体の供給温度、排出温度、及び供給流量の検出結果から求められる蒸気回収量に基づいて、化学蓄熱材12の脱水反応の反応率を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水反応により蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材と、
前記化学蓄熱材が収容される反応器と、
前記水和反応に用いる蒸気を生成する蒸発器と、
前記脱水反応により発生した蒸気を回収する回収器と、
前記蒸発器を加熱する第1熱媒体を供給及び排出する加熱用流路を有する蒸発器加熱経路と、
前記回収器を冷却する第2熱媒体を供給及び排出する冷却用流路を有する回収器冷却経路と、
前記水和反応の反応率を算出する第1算出部、及び前記脱水反応の反応率を算出する第2算出部の少なくとも一方の算出部と、を備え、
前記第1算出部は、前記蒸発器加熱経路における前記第1熱媒体の供給温度、排出温度、及び供給流量の検出結果から求められる蒸気生成量に基づいて前記水和反応の反応率を算出し、
前記第2算出部は、前記回収器冷却経路における前記第2熱媒体の供給温度、排出温度、及び供給流量の検出結果から求められる蒸気回収量に基づいて前記脱水反応の反応率を算出する、ケミカルヒートポンプ。
【請求項2】
前記第1算出部を備え、
前記第1算出部で求められる前記蒸気生成量は、前記反応器内を前記水和反応の圧力条件にするための未反応蒸気生成量を除いた蒸気生成量であり、
前記第1熱媒体の前記供給温度及び前記第2熱媒体の前記供給温度から求められる蒸気圧に基づいて前記未反応蒸気生成量を算出する、請求項1に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項3】
前記第2算出部を備え、
前記第2算出部で求められる前記蒸気回収量は、前記反応器内を前記脱水反応の圧力条件にするための未反応蒸気回収量を除いた蒸気回収量であり、
前記第1熱媒体の前記供給温度及び前記第2熱媒体の前記供給温度から求められる蒸気圧に基づいて前記未反応蒸気回収量を算出する、請求項1又は請求項2に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項4】
前記第1算出部を備え、
前記第1算出部で求められる前記蒸気生成量は、前記反応器内が前記水和反応の圧力条件に達した後の蒸気生成量であり、
前記反応器内の圧力、及び前記蒸発器内の圧力の検出結果に基づいて前記蒸気生成量を算出する、請求項1に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項5】
前記第2算出部を備え、
前記第2算出部で求められる前記蒸気回収量は、前記反応器内が前記脱水反応の圧力条件に達した後の蒸気回収量であり、
前記反応器内の圧力、及び前記回収器内の圧力の検出結果に基づいて前記蒸気回収量を算出する、請求項1又は請求項4に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項6】
前記回収器内に配置され、前記脱水反応により生じた蒸気を回収する回収材を備える、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項7】
脱水反応により蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材と、
前記化学蓄熱材が収容される反応器と、
前記水和反応に用いる蒸気を生成する蒸発器と、
前記脱水反応により発生した蒸気を回収する回収器と、
前記蒸発器を加熱する第1熱媒体を供給及び排出する加熱用流路を有する蒸発器加熱経路と、
前記回収器を冷却する第2熱媒体を供給及び排出する冷却用流路を有する回収器冷却経路と、を備えるケミカルヒートポンプの前記水和反応及び前記脱水反応の少なくとも一方の反応率を算出する反応率算出方法であって、
前記蒸発器加熱経路における前記第1熱媒体の供給温度、排出温度、及び供給流量の検出結果から求められる蒸気生成量に基づいて前記水和反応の反応率を算出し、
前記回収器冷却経路における前記第2熱媒体の供給温度、排出温度、及び供給流量の検出結果から求められる蒸気回収量に基づいて前記脱水反応の反応率を算出する、反応率算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルヒートポンプ及び反応率算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、ケミカルヒートポンプを用いる蒸気発生装置が知られている。ケミカルヒートポンプは、脱水反応により蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が収容される反応器を備えている。また、特許文献2に開示されるように、化学蓄熱システムにおいて、化学蓄熱材が収容された反応器と、反応器から放出された反応蒸気を凝縮するとともに反応器に反応蒸気を供給する蒸発凝縮部とを備える構成が知られている。蒸発凝縮部における蒸気生成量は、蒸発凝縮部に供給する媒体の温度、蒸発凝縮部から回収された媒体の温度、及び媒体の流量から推定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-158299号公報
【特許文献2】特開2013-204856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにケミカルヒートポンプは、脱水反応により蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が収容される反応器を備えている。このようなケミカルヒートポンプの熱効率を高めるためには、蓄熱動作と放熱動作との切り替えを適切なタイミングで円滑に行うことが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するケミカルヒートポンプは、脱水反応により蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材と、前記化学蓄熱材が収容される反応器と、前記水和反応に用いる蒸気を生成する蒸発器と、前記脱水反応により発生した蒸気を回収する回収器と、前記蒸発器を加熱する第1熱媒体を供給及び排出する加熱用流路を有する蒸発器加熱経路と、前記回収器を冷却する第2熱媒体を供給及び排出する冷却用流路を有する回収器冷却経路と、前記水和反応の反応率を算出する第1算出部、及び前記脱水反応の反応率を算出する第2算出部の少なくとも一方の算出部と、を備え、前記第1算出部は、前記蒸発器加熱経路における前記第1熱媒体の供給温度、排出温度、及び供給流量の検出結果から求められる蒸気生成量に基づいて前記水和反応の反応率を算出し、前記第2算出部は、前記回収器冷却経路における前記第2熱媒体の供給温度、排出温度、及び供給流量の検出結果から求められる蒸気回収量に基づいて前記脱水反応の反応率を算出する。
【0006】
この構成によれば、ケミカルヒートポンプは、水和反応に用いる蒸気を生成する蒸発器と、脱水反応により発生した蒸気を回収する回収器とを備えているため、蒸発器と回収器とを交互に使用することができる。これにより、蓄熱動作と放熱動作との切り替えを円滑に行うことが可能となる。また、ケミカルヒートポンプは、上記第1算出部及び第2算出部の少なくとも一方の算出部を備えている。このため、水和反応の反応率及び脱水反応の反応率の少なくとも一方の反応率の算出結果に基づいて蓄熱動作と放熱動作との切り替えを行うことが可能となる。これにより、蓄熱動作と放熱動作との切り替えを適切なタイミングで行うことが可能となる。
【0007】
上記ケミカルヒートポンプは、前記第1算出部を備え、前記第1算出部で求められる前記蒸気生成量は、前記反応器内を前記水和反応の圧力条件にするための未反応蒸気生成量を除いた蒸気生成量であり、前記第1熱媒体の前記供給温度及び前記第2熱媒体の前記供給温度から求められる蒸気圧に基づいて前記未反応蒸気生成量を算出してもよい。
【0008】
この構成によれば、第1算出部において、未反応蒸気生成量を除いた蒸気生成量を用いることにより、第1算出部で算出される水和反応の反応率の精度を高めることができる。ここで、未反応蒸気生成量の算出には、例えば、蒸発器内の温度等を利用することが可能である。しかしながら、蒸発器内等の容器内の温度の均一性は低く、結果として反応率の算出精度が低くなったり、温度センサの配置が煩雑となったりするおそれがある。この点、上記ケミカルヒートポンプでは、未反応蒸気生成量を第1熱媒体の供給温度及び第2熱媒体の供給温度から求められる蒸気圧に基づいて算出している。第1熱媒体の供給温度及び第2熱媒体の供給温度であれば、例えば、流路内に配置した温度センサによって簡便かつ比較的高精度で測定することができる。これにより、第1算出部では、未反応蒸気生成量を簡便かつ比較的高精度で算出することができる。
【0009】
上記ケミカルヒートポンプは、前記第2算出部を備え、前記第2算出部で求められる前記蒸気回収量は、前記反応器内を前記脱水反応の圧力条件にするための未反応蒸気回収量を除いた蒸気回収量であり、前記第1熱媒体の前記供給温度及び前記第2熱媒体の前記供給温度から求められる蒸気圧に基づいて前記未反応蒸気回収量を算出してもよい。
【0010】
この構成によれば、第2算出部において、未反応蒸気回収量を除いた蒸気回収量を用いることにより、第2算出部で算出される脱水反応の反応率の精度を高めることができる。ここで、未反応蒸気回収量の算出には、例えば、回収器内の温度等を利用することが可能である。しかしながら、回収器内等の容器内の温度の均一性は低く、結果として反応率の算出精度が低くなったり、温度センサの配置が煩雑となったりするおそれがある。この点、上記ケミカルヒートポンプでは、未反応蒸気回収量を第1熱媒体の供給温度及び第2熱媒体の供給温度から求められる蒸気圧に基づいて算出している。第1熱媒体の供給温度及び第2熱媒体の供給温度であれば、例えば流路内に配置した温度センサによって簡便かつ比較的高精度で測定することができる。これにより、第2算出部では、未反応蒸気回収量を簡便かつ比較的高精度で算出することができる。
【0011】
上記ケミカルヒートポンプは、前記第1算出部を備え、前記第1算出部で求められる前記蒸気生成量は、前記反応器内が前記水和反応の圧力条件に達した後の蒸気生成量であり、前記反応器内の圧力、及び前記蒸発器内の圧力の検出結果に基づいて前記蒸気生成量を算出してもよい。
【0012】
この構成によれば、第1算出部で求められる蒸気生成量を水和反応に使用された蒸気量に近づけることができる。これにより、第1算出部で算出される水和反応の反応率の精度を高めることができる。また、反応器内の圧力、及び蒸発器内の圧力は、反応器内及び蒸発器内に配置した圧力センサによって簡便かつ比較的高精度で測定することができる。これにより、第1算出部では、反応器内が水和反応の圧力条件に達した後の蒸気生成量を簡便かつ比較的高精度で求めることができる。
【0013】
上記ケミカルヒートポンプは、前記第2算出部を備え、前記第2算出部で求められる前記蒸気回収量は、前記反応器内が前記脱水反応の圧力条件に達した後の蒸気回収量であり、前記反応器内の圧力、及び前記回収器内の圧力の検出結果に基づいて前記蒸気回収量を算出してもよい。
【0014】
この構成によれば、第2算出部で求められる蒸気回収量を脱水反応により発生した蒸気量に近づけることができる。これにより、第2算出部で算出される脱水反応の反応率の精度を高めることができる。また、反応器内の圧力、及び回収器内の圧力は、反応器内及び回収器内に配置した圧力センサによって簡便かつ比較的高精度で測定することができる。これにより、第2算出部では、反応器内が脱水反応の圧力条件に達した後の蒸気回収量を簡便かつ比較的高精度で求めることができる。
【0015】
上記ケミカルヒートポンプは、前記回収器内に配置され、前記脱水反応により生じた蒸気を回収する回収材を備えていてもよい。
この構成によれば、反応器内の化学蓄熱材から発生する蒸気が比較的低圧であったとしても、その低圧の蒸気と水和反応可能な回収材を用いることで、化学蓄熱材の脱水反応を進行させることができる。
【0016】
上記課題を解決する反応率算出方法は、脱水反応により蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材と、前記化学蓄熱材が収容される反応器と、前記水和反応に用いる蒸気を生成する蒸発器と、前記脱水反応により発生した蒸気を回収する回収器と、前記蒸発器を加熱する第1熱媒体を供給及び排出する加熱用流路を有する蒸発器加熱経路と、前記回収器を冷却する第2熱媒体を供給及び排出する冷却用流路を有する回収器冷却経路と、を備えるケミカルヒートポンプの前記水和反応及び前記脱水反応の少なくとも一方の反応率を算出する反応率算出方法であって、前記蒸発器加熱経路における前記第1熱媒体の供給温度、排出温度、及び供給流量の検出結果から求められる蒸気生成量に基づいて前記水和反応の反応率を算出し、前記回収器冷却経路における前記第2熱媒体の供給温度、排出温度、及び供給流量の検出結果から求められる蒸気回収量に基づいて前記脱水反応の反応率を算出する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蓄熱動作と放熱動作との切り替えを適切なタイミングで円滑に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態におけるケミカルヒートポンプを示す概略図である。
図2】ケミカルヒートポンプの制御部を示すブロック図である。
図3】放熱動作及び蓄熱動作を説明するフロー図である。
図4】放熱動作及び蓄熱動作を説明するタイムチャートである。
図5】第2実施形態におけるケミカルヒートポンプを示す概略図である。
図6】放熱動作及び蓄熱動作を説明するフロー図である。
図7】変更例におけるケミカルヒートポンプの一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、ケミカルヒートポンプ及び反応率算出方法の第1実施形態について図1図4を参照して説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、第1実施形態のケミカルヒートポンプ11は、化学蓄熱材12と、化学蓄熱材12が収容される反応器13とを備えている。ケミカルヒートポンプ11は、蒸発器14と、回収器15と、蒸発器加熱経路21と、回収器冷却経路22とを備えている。ケミカルヒートポンプ11は、制御部16を備えている。制御部16は、第1算出部31と第2算出部32とを備えている。ケミカルヒートポンプ11は、例えば、工場等から発生する排熱を化学蓄熱材12で蓄熱し、排熱の温度よりも高い温度の熱を化学蓄熱材12から放熱可能とするシステムである。
【0021】
<化学蓄熱材12及び反応器13>
化学蓄熱材12は、脱水反応により蓄熱し、水和反応により放熱する材料である。化学蓄熱材12としては、周知の固体材料を用いることができる。化学蓄熱材12は、反応を行う化学蓄熱物質のみから構成してもよいし、例えば、粒子状の化学蓄熱物質を水蒸気透過性樹脂等の水蒸気透過性のバインダーで結合した材料であってもよい。化学蓄熱物質としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。化学蓄熱材12は、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。化学蓄熱材12は、水蒸気透過部を有する容器に入れて配置してもよい。
【0022】
化学蓄熱物質の一種である塩化カルシウムの蓄熱動作時の脱水反応は、例えば、下記式(a)で表される。
CaCl・2HO→CaCl・HO+HO・・・(a)
塩化カルシウムには、例えば、水蒸気圧が1kPaの条件の場合、80℃の排熱を利用して蓄熱させることができる。
【0023】
また、塩化カルシウムの放熱動作時の水和反応は、例えば、下記式(b)で表される。
CaCl・HO+HO→CaCl・2HO・・・(b)
塩化カルシウムは、例えば、水蒸気圧が100kPaの条件の場合、170℃の熱を放熱する。
【0024】
すなわち、例えば、蓄熱動作の温度条件を80℃、放熱動作の温度条件を170℃とした場合、塩化カルシウムの雰囲気における水蒸気圧を1kPaから100kPaまで上昇させることで、放熱動作が開始される。
【0025】
反応器13は、化学蓄熱材12と熱媒体との熱交換を行う熱交換器を備えている。蓄熱動作時には、化学蓄熱材12を加熱する加熱媒体を外部から熱交換器に供給する。詳述すると、排熱の熱源HSから加熱媒体供給路L1を通じて反応器13の熱交換器に加熱媒体を供給する。加熱媒体供給路L1は、加熱媒体温度センサL1aを備えている。
【0026】
放熱動作時には、化学蓄熱材12から発生した熱を反応器13から外部に熱輸送する。詳述すると、ケミカルヒートポンプ11は、図示を省略した熱輸送経路を備えている。熱輸送経路は、例えば、水蒸気を熱媒体として熱輸送するように構成することができる。熱媒体としては、排熱を利用して発生させた蒸気を利用してもよいし、反応器13内の熱交換器内や加熱媒体供給路L1に残留する水又は水蒸気を利用してもよい。
【0027】
<蒸発器14及び蒸発器加熱経路21>
図1に示すように、蒸発器14には、水14aが貯留されている。蒸発器14は、水14aと第1熱媒体との熱交換を行う熱交換器を備えている。蒸発器加熱経路21は、排熱の熱源HSから第1熱媒体を蒸発器14に供給及び排出する加熱用流路21aを有している。蒸発器加熱経路21は、第1熱媒体の供給温度を検出する第1供給温度センサ21bと、第1熱媒体の排出温度を検出する第1排出温度センサ21cとを備えている。蒸発器加熱経路21は、第1熱媒体の供給流量を検出する第1流量センサ21dを備えている。
【0028】
<回収器15及び回収器冷却経路22>
回収器15は、ケミカルヒートポンプ11の蓄熱動作時において、反応器13内の化学蓄熱材12の脱水反応により生じた蒸気を回収する。回収器15は、脱水反応により生じた蒸気と、回収器15に供給される第2熱媒体との熱交換を行う熱交換器を備えている。本実施形態のケミカルヒートポンプ11は、回収器15内に配置され、化学蓄熱材12の脱水反応により生じた蒸気を回収する回収材を備えている。
【0029】
回収材としては、反応器13内の化学蓄熱材12の脱水反応により生じた蒸気(水)と水和反応させることが可能な材料を用いることができる。回収材は、熱交換器により加熱又は冷却されるように回収器15内に配置される。回収材による蒸気の回収は、回収器15に供給される第2熱媒体によって回収材を冷却することで促進される。
【0030】
回収器15内の回収材が水和反応することで、回収器15内の圧力を低下させることができる。これにより、反応器13内の化学蓄熱材12から発生する蒸気が比較的低圧(低温)であったとしても、その低圧の蒸気と水和反応可能な回収材を用いることで、化学蓄熱材12の脱水反応を進行させることができる。
【0031】
回収材としては、周知の固体材料を用いることができる。回収材は、水和反応及び脱水反応し得る回収用物質のみから構成してもよいし、粒子状の回収用物質を水蒸気透過性樹脂等の水蒸気透過性のバインダーで結合した材料であってもよい。
【0032】
回収材(回収用物質)としては、例えば、大気圧未満の圧力条件において蒸気が凝縮する温度よりも高い温度で水和反応する物質を好適に用いることができる。これにより、ケミカルヒートポンプ11の操作条件を大気圧未満(減圧下)とし、この圧力条件で蒸気が凝縮する温度よりも高い温度の冷水を第2熱媒体として用いることが可能となる。
【0033】
ここで、本明細書でいう回収材の水和反応は、回収材としての多孔質材料を用いた蒸気(水分)の吸着も含まれる。すなわち、回収材と水との反応は、回収材としての多孔質材料を用いた蒸気(水分)の脱着も含まれる。回収用物質としては、例えば、ゼオライト、水酸化リチウム、硫酸マグネシウム、シュウ化ストロンチウム、活性炭、多孔性金属錯体(MOF)等が挙げられる。回収材は、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。回収材は、水蒸気透過部を有する容器に入れて配置してもよい。
【0034】
回収器冷却経路22は、冷却源CSから第2熱媒体を回収器15に供給及び排出する冷却用流路22aを有している。回収器冷却経路22は、第2熱媒体の供給温度を検出する第2供給温度センサ22bと、第2熱媒体の排出温度を検出する第2排出温度センサ22cとを備えている。回収器冷却経路22は、第2熱媒体の供給流量を検出する第2流量センサ22dを備えている。
【0035】
<蓄熱動作及び放熱動作の流路構成>
ケミカルヒートポンプ11は、放熱動作時に蒸発器14から反応器13に蒸気を送る放熱用流路L2と、放熱用流路L2を開閉する放熱用開閉弁V1とを有している。ケミカルヒートポンプ11は、蓄熱動作時に反応器13から回収器15に蒸気を送る蓄熱用流路L3と、蓄熱用流路L3を開閉する蓄熱用開閉弁V2とを有している。
【0036】
<制御部16の第1算出部31と第2算出部32、及び反応率算出方法>
図2に示すように、制御部16の第1算出部31は、蒸発器加熱経路21における第1熱媒体の供給温度T_in、排出温度T_out、及び供給流量F1の検出結果から求められる蒸気生成量に基づいて水和反応の反応率を算出する。この水和反応の反応率によって、ケミカルヒートポンプ11の放熱動作の進行度合いを推定することができる。
【0037】
第1熱媒体の供給温度T_inは、上記第1供給温度センサ21bにより検出される。第1熱媒体の排出温度T_outは、上記第1排出温度センサ21cにより検出される。第1熱媒体の供給流量F1は、上記第1流量センサ21dにより検出される。
【0038】
水和反応の反応率は、例えば、下記式(1)~(3)にしたがって算出することができる。
【0039】
【数1】
hydは、水和反応の反応率である。
【0040】
evaは、蒸発器14における蒸気生成量[mol]である。
HMは、化学蓄熱物質の充填量に水和数を乗じた値[mol]である。
evaは、蒸発器14に供給される第1熱媒体の顕熱変化量[kJ]である。
【0041】
は、水の蒸発潜熱[kJ/mol]である。
ρf1は、第1熱媒体の密度[kg/L]である。
pf1は、第1熱媒体の比熱[kJ/kg/K]である。
【0042】
は、第1熱媒体の流量[L/sec]である。
ΔTは、第1熱媒体の供給温度T_in[K]と排出温度T_out[K]との温度差[K]である。
【0043】
制御部16の第2算出部32は、回収器冷却経路22における第2熱媒体の供給温度T_in、排出温度T_out、及び供給流量F2の検出結果から求められる蒸気回収量に基づいて脱水反応の反応率を算出する。この脱水反応の反応率によって、ケミカルヒートポンプ11の蓄熱動作の進行度合いを推定することができる。
【0044】
第2熱媒体の供給温度T_inは、上記第2供給温度センサ22bにより検出される。第2熱媒体の排出温度T_outは、上記第2排出温度センサ22cにより検出される。第2熱媒体の供給流量F2は、上記第2流量センサ22dにより検出される。
【0045】
脱水反応の反応率は、例えば、下記式(4)~(6)にしたがって算出することができる。
【0046】
【数2】
dehydは、脱水反応の反応率である。
【0047】
recは、蒸気回収量[mol]である。
HMは、化学蓄熱物質の充填量に水和数を乗じた値[mol]である。
recは、回収器15に供給される第2熱媒体の顕熱変化量[kJ]である。
【0048】
LMは、水1molに対する回収材の水和反応熱量[kJ/mol]である。
ρf2は、回収器15に供給される第2熱媒体の密度[kg/L]である。
pf2は、回収器15に供給される第2熱媒体の比熱[kJ/kg/K]である。
【0049】
は、熱媒の流量[L/sec]である。
ΔTは、第2熱媒体の供給温度T_inと排出温度T_outとの温度差[K]である。
【0050】
<未反応蒸気生成量及び未反応蒸気回収量>
第1算出部31で求められる蒸気生成量は、反応器13内を水和反応の圧力条件にするための未反応蒸気生成量を除いた蒸気生成量であることが好ましい。この場合、水和反応の反応率の算出精度を高めることができる。
【0051】
未反応蒸気生成量は、第1熱媒体の供給温度T_in及び第2熱媒体の供給温度T_inから求められる蒸気圧に基づいて算出することができる。未反応蒸気生成量は、例えば、下記式(7)により算出することができる。
【0052】
【数3】
SP1は、理想気体の状態方程式に基づいて算出される未反応蒸気生成量[mol]である。
【0053】
c1は、反応器13内の最大圧力であり、放熱動作時に蒸発器14から供給される蒸気の圧力となる。すなわち、Pc1は、蒸発器14に供給される第1熱媒体の供給温度T_inにおける水の飽和蒸気圧[Pa]である。例えば、第1熱媒体の供給温度T_inが80℃(353[K])の場合、反応器13内の最大圧力Pc1は、48[kPa](4.8×10[Pa])である。
【0054】
c2は、反応器13内の最小圧力であり、蓄熱動作時の回収器15内の圧力[Pa]となる。すなわち、Pc2は、回収器15に供給される第2熱媒体の供給温度T_inのときの回収材の平衡蒸気圧[Pa]となる。Pc2は、例えば、回収器15に供給される第2熱媒体の供給温度T_inが30℃(303[K])であり、回収材としてシュウ化ストロンチウムを用いた場合、0.5[kPa](5×10[Pa])である。
【0055】
回収器15に供給される第2熱媒体の供給温度T_inは、直前の蓄熱動作時における第2熱媒体の供給温度T_inを用いることが好ましい。この場合、未反応蒸気生成量の算出精度が高まることで、水和反応の反応率の算出精度をより高めることができる。
【0056】
reaは、反応器13内の化学蓄熱材12が配置された空間の体積[m]である。
Rは、気体定数[J/(mol・K)]である。
T(Pc1)は、蒸発器14に供給される第1熱媒体の供給温度T_in[K]である。
【0057】
第2算出部32で求められる蒸気回収量は、反応器13内を脱水反応の圧力条件にするための未反応蒸気回収量を除いた蒸気回収量であることが好ましい。この場合、上述した脱水反応の反応率の精度を高めることができる。
【0058】
未反応蒸気回収量は、第1熱媒体の供給温度T_in及び第2熱媒体の供給温度T_inから求められる蒸気圧に基づいて算出することができる。すなわち、この未反応蒸気回収量についても、例えば、上記式(7)の未反応蒸気回収量SP1と同様に、未反応蒸気回収量SP1として算出することができる。上記Pc1を求めるための第1熱媒体の供給温度T_inは、直前の放熱動作時における第1熱媒体の供給温度T_inを用いることが好ましい。この場合、未反応蒸気回収量の算出精度が高まることで、脱水反応の反応率の算出精度をより高めることができる。
【0059】
<制御部16の記憶部及び比較部>
図2に示すように、制御部16は、記憶部33及び比較部34を備えている。記憶部33には、予め設定された水和反応の反応率、及び予め設定された脱水反応の反応率が記憶されている。比較部34は、記憶部33で記憶されている水和反応の反応率と、第1算出部31で算出された水和反応の反応率とを比較する。また、比較部34は、記憶部33で記憶されている脱水反応の反応率と、第2算出部32で算出された脱水反応の反応率とを比較する。
【0060】
放熱用開閉弁V1及び蓄熱用開閉弁V2は、比較部34における比較結果に基づき閉動作するように構成されている。
制御部16には、表示部35が接続されていてもよい。表示部35には、例えば、水和反応の反応率の推移、脱水反応の反応率の推移等のケミカルヒートポンプ11の動作状況を表示させることができる。
【0061】
<ケミカルヒートポンプ11の放熱動作>
図3に示すように、ケミカルヒートポンプ11の放熱動作では、まず、蒸発器14に第1熱媒体を供給する(ステップS11)。ステップS11では、蒸発器14内に予め貯留されている水14aが第1熱媒体により加熱される。なお、蒸発器14内に第1熱媒体を常時供給することにより、ステップS11を省略してもよい。
【0062】
ステップS12では、蒸発器14内での蒸気の生成が完了したか否かを確認する。このステップS12では、例えば、“第1熱媒体の供給温度T_in-排出温度T_out”の値が所定値以下となった場合、蒸発器14内が飽和蒸気圧となり、蒸発器14内での蒸気の生成が完了したと判定することができる(ステップS12:YES)。この判定がなされた場合、ステップS13へと進む。一方、例えば、“第1熱媒体の供給温度T_in-排出温度T_out”の値が所定値を超える場合、蒸発器14内での蒸気の生成が未完了であると判定することができる(ステップS12:NO)。この判定がなされた場合、ステップS12が繰り返される。
【0063】
ステップS13では、図3及び図4に示すように、放熱用流路L2を開閉する放熱用開閉弁V1を開動作させることで、放熱用流路L2を開放する。ステップS13により、蒸発器14から反応器13への蒸気の供給が開始される。ステップS13において放熱用開閉弁V1を開動作した時点から上記式(2)に示される蒸気生成量Nevaの算出を開始する。
【0064】
ステップS14では、未反応蒸気生成量SP1を更新する。ここでは、未反応蒸気生成量SP1を算出するための第2熱媒体の供給温度T_inとして、直前の蓄熱動作時における第2熱媒体の供給温度T_inを採用する。このように、放熱動作毎に未反応蒸気生成量SP1を更新することで、未反応蒸気生成量の算出精度を高めることができる。なお、このステップS14を省略し、予め算出した未反応蒸気生成量SP1を継続して用いてもよい。
【0065】
ステップS15では、蒸気生成量Nevaが未反応蒸気生成量SP1に到達したか否かを判定する。このステップS15では、例えば、“蒸気生成量Neva=未反応蒸気生成量SP1”の関係を満たす場合、蒸気生成量Nevaが未反応蒸気生成量SP1に到達したと判定することができる(ステップS15:YES)。この判定がなされた場合、ステップS16へと進む。一方、例えば、“蒸気生成量Neva=未反応蒸気生成量SP1”の関係を満たさない場合、蒸気生成量Nevaが未反応蒸気生成量SP1に到達していないと判定することができる(ステップS15:NO)。この判定がなされた場合、ステップS15が繰り返される。
【0066】
ステップS16では、図3及び図4に示すように、蒸気生成量Nevaを一旦クリアし、ステップS17へと進む。すなわち、“蒸気生成量Neva=0”とした後、再び蒸気生成量Nevaの算出を開始する。
【0067】
ステップS17では、蒸気生成量に基づいて水和反応の反応率を算出し、水和反応の反応率が所定の反応率に到達したか否かを判定する。ステップS17では、例えば、“反応率Xhyd=1.0”の関係を満たす場合、水和反応の反応率が所定の反応率に到達したと判定することができる(ステップS17:YES)。この判定がなされた場合、ステップS18へと進む。このとき、蒸気生成量Nevaをクリア、すなわち“蒸気生成量Neva=0”とする。
【0068】
一方、例えば、“反応率Xhyd=1.0”の関係を満たさない場合、水和反応の反応率が所定の反応率に到達していないと判定することができる(ステップS17:NO)。この判定がなされた場合、ステップS17が繰り返される。
【0069】
ステップS18では、図3及び図4に示すように、放熱用流路L2を開閉する放熱用開閉弁V1を閉動作させることで、放熱用流路L2を閉鎖する。このステップS18により、蒸発器14から反応器13への蒸気の供給を停止することで、放熱動作を終了させる。
【0070】
<ケミカルヒートポンプ11の蓄熱動作>
図3に示すように、ケミカルヒートポンプ11の蓄熱動作では、まず、回収器15に第2熱媒体を供給する(ステップS21)。ステップS21では、回収器15内の回収材が第2熱媒体により冷却される。なお、回収器15内に第2熱媒体を常時供給することにより、ステップS21を省略してもよい。
【0071】
次に、図3及び図4に示すように、ステップS22では、蓄熱用流路L3を開閉する蓄熱用開閉弁V2を開動作させることで、蓄熱用流路L3を開放する。このステップS22により、回収器15による反応器13内の蒸気の回収が開始される。ステップS22において、蓄熱用開閉弁V2を開動作した時点から上記式(5)に示される蒸気回収量Nrecの算出を開始する。
【0072】
ステップS23では、蒸気回収量Nrecが未反応蒸気回収量SP1に到達したか否かを判定する。このステップS23では、例えば、“蒸気回収量Nrec=未反応蒸気回収量SP1”の関係を満たす場合、蒸気回収量Nrecが未反応蒸気回収量SP1に到達したと判定することができる(ステップS23:YES)。この判定がなされた場合、ステップS24へと進む。一方、例えば、“蒸気回収量Nrec=未反応蒸気回収量SP1”の関係を満たさない場合、蒸気回収量Nrecが未反応蒸気回収量SP1に到達していないと判定することができる(ステップS23:NO)。この判定がなされた場合、ステップS23が繰り返される。
【0073】
ここで、未反応蒸気回収量SP1は、放熱動作時の未反応蒸気生成量SP1と同様に蓄熱動作毎に更新してもよい。すなわち、例えば、未反応蒸気回収量SP1を算出するための第1熱媒体の供給温度T_inとして、直前の放熱動作時における第1熱媒体の供給温度T_inを採用する。このように、蓄熱動作毎に未反応蒸気回収量SP1を更新することで、未反応蒸気回収量の算出精度を高めることができる。なお、このような未反応蒸気回収量SP1を省略し、予め算出した未反応蒸気回収量SP1を継続して用いてもよい。
【0074】
ステップS24では、図3及び図4に示すように、蒸気回収量Nrecを一旦クリアし、ステップS25へと進む。すなわち、“蒸気回収量Nrec=0”として、再び蒸気回収量Nrecの算出を開始する。
【0075】
ステップS25では、反応器13内の化学蓄熱材12の加熱が必要か否かを判定する。ここで、放熱動作時の水和反応で発熱した化学蓄熱材12の温度は、排熱の熱源HSから供給される熱媒体の温度よりも高い場合がある。この場合、排熱の熱源HSから供給される熱媒体を反応器13に供給すると、その熱媒体により化学蓄熱材12が冷却されるため、化学蓄熱材12の脱水反応が遅延することになる。ステップS25では、例えば、“化学蓄熱材12の温度≦反応器13に供給される加熱媒体の温度”の関係を満たす場合、反応器13内の化学蓄熱材12の加熱が必要と判定することができる(ステップS25:YES)。この判定がなされた場合、ステップS26へと進む。
【0076】
上記の“化学蓄熱材12の温度≦熱源HSの熱媒体の温度”は、下記式(8)により表される。
HM(Pc1)-ΔT≦T3・・・(8)
HM(Pc1)[K]は、化学蓄熱材12の最大温度である。THM(Pc1)は、蒸発器14に供給される第1熱媒体の供給温度T1_in[K]から求めることができる。上述したように、第1熱媒体の供給温度T1_inにおける水の飽和蒸気圧[Pa]が反応器13内の最大圧力であるPc1[Pa]となる。このPc1を平衡蒸気圧としたときの化学蓄熱材12の温度がTHM(Pc1)[K]である。
【0077】
ΔT[K]は、下記式(9)及び式(10)により求めることができる。
ΔT=Qrec’/Cp・・・(9)
Qrec’=Nrec×HHM・・・(10)
Cpは、蓄熱材の熱容量[kJ/K]である。
【0078】
HMは、蓄熱材の水1molに対する水和反応熱量[kJ/mol]である。
T3[K]は、反応器13内の化学蓄熱材12を加熱する加熱媒体の温度であり、図1に示される加熱媒体温度センサL1aで検出することができる。
【0079】
一方、ステップS25において、例えば、“化学蓄熱材12の温度≦反応器13に供給される加熱媒体の温度”の関係を満たさない場合、反応器13内の化学蓄熱材12の加熱は不要と判定することができる(ステップS25:NO)。この判定がなされた場合、ステップS25が繰り返される。
【0080】
ステップS26では、排熱の熱源HSから熱媒体、すなわち化学蓄熱材12を加熱する加熱媒体を反応器13に供給する。このように反応器13に加熱媒体を供給した状態で、ステップS27へと進む。
【0081】
ステップS27では、蒸気回収量に基づいて脱水反応の反応率を算出し、脱水反応の反応率が所定の反応率に到達したか否かを判定する。ステップS27では、例えば、上述した脱水反応の反応率Xdehydを算出し、“反応率Xdehyd=1.0”の関係を満たす場合、脱水反応の反応率が所定の反応率に到達したと判定することができる(ステップS27:YES)。この判定がなされた場合、ステップS28へと進む。このとき、蒸気回収量Nrecをクリア、すなわち“蒸気回収量Nrec=0”とする。
【0082】
一方、例えば、“反応率Xdehyd=1.0”の関係を満たさない場合、脱水反応の反応率が所定の反応率に到達していないと判定することができる(ステップS27:NO)。この判定がなされた場合、ステップS27が繰り返される。
【0083】
ステップS28では、回収器15に供給される第2熱媒体の温度から回収材の平衡蒸気圧を算出し、回収器15内の圧力として記憶する。この回収器15内の圧力は、反応器13内の最小圧力として、上記式(7)で示される未反応蒸気生成量SP1の算出に用いられる。
【0084】
ステップS29では、回収器15への第2熱媒体の供給を停止するとともに、反応器13への加熱媒体の供給を停止する。
ステップS30では、図3及び図4に示すように、蓄熱用流路L3を開閉する蓄熱用開閉弁V2を閉動作させることで、蓄熱用流路L3を閉鎖する。このステップS30により、回収器15による反応器13内の蒸気の回収を停止することで、蓄熱動作を終了させる。
【0085】
以上の蓄熱動作を終了後、ステップS12から繰り返すことで、放熱動作及び蓄熱動作を順次行うことができる。
<第1実施形態の作用及び効果>
第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0086】
(1-1)ケミカルヒートポンプ11は、上述したように化学蓄熱材12と、反応器13と、蒸発器14と、回収器15と、蒸発器加熱経路21と、回収器冷却経路22とを備えている。ケミカルヒートポンプ11は、水和反応の反応率を算出する第1算出部31、及び脱水反応の反応率を算出する第2算出部32を備えている。第1算出部31は、蒸発器加熱経路21における第1熱媒体の供給温度、排出温度、及び供給流量の検出結果から求められる蒸気生成量に基づいて水和反応の反応率を算出する。第2算出部32は、回収器冷却経路22における第2熱媒体の供給温度、排出温度、及び供給流量の検出結果から求められる蒸気回収量に基づいて脱水反応の反応率を算出する。
【0087】
この構成によれば、ケミカルヒートポンプ11は、水和反応に用いる蒸気を生成する蒸発器14と、脱水反応により発生した蒸気を回収する回収器15とを備えているため、蒸発器14と回収器15とを交互に使用することができる。これにより、蓄熱動作と放熱動作との切り替えを円滑に行うことが可能となる。
【0088】
また、ケミカルヒートポンプ11は、上記第1算出部31及び第2算出部32を備えているため、水和反応の反応率及び脱水反応の反応率の算出結果に基づいて蓄熱動作と放熱動作との双方向の切り替えを行うことが可能となる。これにより、蓄熱動作と放熱動作との双方向の切り替えを適切なタイミングで行うことが可能となる。
【0089】
したがって、蓄熱動作と放熱動作との切り替えを適切なタイミングで円滑に行うことが可能となる。
(1-2)第1算出部31で求められる蒸気生成量は、反応器13内を水和反応の圧力条件にするための未反応蒸気生成量を除いた蒸気生成量であることが好ましい。未反応蒸気生成量は、第1熱媒体の供給温度及び第2熱媒体の供給温度から求められる蒸気圧に基づいて算出される。
【0090】
この場合、第1算出部31において、未反応蒸気生成量を除いた蒸気生成量を用いることにより、第1算出部31で算出される水和反応の反応率の精度を高めることができる。ここで、未反応蒸気生成量の算出には、例えば、蒸発器14内の温度等を利用することが可能である。しかしながら、蒸発器14内等の容器内の温度の均一性は低く、結果として反応率の算出精度が低くなったり、温度センサの配置が煩雑となったりするおそれがある。この点、上記ケミカルヒートポンプ11では、未反応蒸気生成量を第1熱媒体の供給温度及び第2熱媒体の供給温度から求められる蒸気圧に基づいて算出している。第1熱媒体の供給温度及び第2熱媒体の供給温度であれば、例えば、流路内に配置した温度センサによって簡便かつ比較的高精度で測定することができる。これにより、第1算出部31では、未反応蒸気生成量を簡便かつ比較的高精度で算出することができる。
【0091】
(1-3)第2算出部32で求められる蒸気回収量は、反応器13内を脱水反応の圧力条件にするための未反応蒸気回収量を除いた蒸気回収量であることが好ましい。未反応蒸気回収量は、第1熱媒体の供給温度及び第2熱媒体の供給温度から求められる蒸気圧に基づいて算出される。
【0092】
この構成によれば、第2算出部32において、未反応蒸気回収量を除いた蒸気回収量を用いることにより、第2算出部32で算出される脱水反応の反応率の精度を高めることができる。ここで、未反応蒸気回収量の算出には、例えば、回収器15内の温度等を利用することが可能である。しかしながら、回収器15内等の容器内の温度の均一性は低く、結果として反応率の算出精度が低くなったり、温度センサの配置が煩雑となったりするおそれがある。この点、上記ケミカルヒートポンプ11では、未反応蒸気回収量を第1熱媒体の供給温度及び第2熱媒体の供給温度から求められる蒸気圧に基づいて算出している。第1熱媒体の供給温度及び第2熱媒体の供給温度であれば、例えば流路内に配置した温度センサによって簡便かつ比較的高精度で測定することができる。これにより、第2算出部32では、未反応蒸気回収量を簡便かつ比較的高精度で算出することができる。
【0093】
(1-4)ケミカルヒートポンプ11は、回収器15内に配置され、脱水反応により生じた蒸気を回収する回収材を備えている。この場合、反応器13内の化学蓄熱材12から発生する蒸気が比較的低圧であったとしても、その低圧の蒸気と水和反応可能な回収材を用いることで、化学蓄熱材12の脱水反応を進行させることができる。
【0094】
(第2実施形態)
ケミカルヒートポンプ11の第2実施形態について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0095】
図5に示すように、第2実施形態のケミカルヒートポンプ11は、蒸発器14内の圧力を検出する第1圧力センサ41を備えている。また、ケミカルヒートポンプ11は、回収器15内の圧力を検出する第2圧力センサ42を備えている。また、ケミカルヒートポンプ11は、反応器13内の圧力を検出する第3圧力センサ43を備えている。
【0096】
第2実施形態の第1算出部31で求められる蒸気生成量は、反応器13内が水和反応の圧力条件に達した後の蒸気生成量である。第1算出部31は、反応器13内の圧力、及び蒸発器14内の圧力の検出結果に基づいて蒸気生成量を算出し、この蒸気生成量に基づいて水和反応の反応率を算出する。
【0097】
水和反応の反応率は、例えば、第1実施形態の式(1),(3)と下記式(11)にしたがって算出することができる。
【0098】
【数4】
は、水の蒸発潜熱[kJ/mol]である。
【0099】
ΔPは、反応器13内の圧力と蒸発器14内の圧力差[Pa]である。
evaは、化学蓄熱材12が配置された空間の体積[m]である。
Rは、気体定数[J/(mol・K)]である。
【0100】
T(P)は、反応器13内の圧力における温度[K]である。
第2実施形態の第2算出部32で求められる蒸気回収量は、反応器13内が脱水反応の圧力条件に達した後の蒸気回収量である。第2算出部32は、反応器13内の圧力、及び回収器15内の圧力の検出結果に基づいて蒸気回収量を算出し、この蒸気回収量に基づいて脱水反応の反応率を算出する。
【0101】
脱水反応の反応率は、例えば、第1実施形態の式(4),(6)と下記式(12)にしたがって算出することができる。
【0102】
【数5】
LMは、水1molに対する回収材の水和反応熱量[kJ/mol]である。
【0103】
ΔPは、反応器13内の圧力と蒸発器14内の圧力差[Pa]である。
recは、化学蓄熱材12が配置された空間の体積[m]である。
Rは、気体定数[J/(mol・K)]である。
【0104】
T(P3)は、反応器13内の圧力における温度[K]である。
<ケミカルヒートポンプ11の放熱動作>
図6に示すように、ケミカルヒートポンプ11の放熱動作では、まず、蒸発器14に第1熱媒体を供給する(ステップS41)。ステップS41では、蒸発器14内に予め貯留されている水14aが第1熱媒体により加熱される。なお、蒸発器14内に第1熱媒体を常時供給することにより、ステップS41を省略してもよい。
【0105】
ステップS42では、蒸発器14内での蒸気の生成が完了したか否かを確認する。このステップS42では、例えば、“蒸発器14内の圧力P≧SP2の”の関係を満たす場合、蒸発器14内が飽和蒸気圧となり、蒸発器14内での蒸気の生成が完了したと判定することができる(ステップS42:YES)。SP2は、蒸発器14に供給される第1熱媒体の供給温度T_inにおける水の飽和蒸気圧である。例えば、第1熱媒体の温度が80℃の場合、SP2は、48kPaである。この判定がなされた場合、ステップS43へと進む。一方、例えば、“蒸発器14内の圧力P≧SP2の”の関係を満たさない場合、蒸発器14内での蒸気の生成が未完了であると判定することができる(ステップS42:NO)。この判定がなされた場合、ステップS42が繰り返される。
【0106】
ステップS43では、蒸発器14から反応器13に蒸気が供給可能か否かを確認する。このステップS43では、例えば、“蒸発器14内の圧力P>反応器13内の圧力P”の関係を満たす場合、蒸発器14から反応器13へ蒸気を供給できると判定することができる(ステップS43:YES)。この判定がなされた場合、ステップS44へと進む。一方、例えば、“蒸発器14内の圧力P>反応器13内の圧力P”の関係を満たさない場合、蒸発器14から反応器13へ蒸気を供給できないと判定することができる(ステップS43:NO)。この判定がなされた場合、ステップS43が繰り返される。
【0107】
ステップS44では、放熱用流路L2を開閉する放熱用開閉弁V1を開動作させることで、放熱用流路L2を開放する。ステップS44により、蒸発器14から反応器13への蒸気の供給が開始される。
【0108】
ステップS45では、蒸気生成量に基づいて水和反応の反応率を算出し、水和反応の反応率が所定の反応率に到達したか否かを判定する。ステップS45では、例えば、上述した水和反応の反応率Xhydを算出し、“反応率Xhyd=1.0”の関係を満たす場合、水和反応の反応率が所定の反応率に到達したと判定することができる(ステップS45:YES)。この判定がなされた場合、ステップS46へと進む。このとき、蒸気生成量Nevaをクリア、すなわち“蒸気生成量Neva=0”とする。
【0109】
一方、例えば、“反応率Xhyd=1.0”の関係を満たさない場合、水和反応の反応率が所定の反応率に到達していないと判定することができる(ステップS45:NO)。この判定がなされた場合、ステップS45が繰り返される。
【0110】
ステップS46では、放熱用流路L2を開閉する放熱用開閉弁V1を閉動作させることで、放熱用流路L2を閉鎖する。このステップS46により、蒸発器14から反応器13への蒸気の供給を停止することで、放熱動作を終了させる。
【0111】
<ケミカルヒートポンプ11の蓄熱動作>
ケミカルヒートポンプ11の蓄熱動作では、まず、回収器15に第2熱媒体を供給する(ステップS51)。ステップS51では、回収器15内の回収材が第2熱媒体により冷却される。なお、回収器15内に第2熱媒体を常時供給することにより、ステップS51を省略してもよい。
【0112】
ステップS52では、反応器13の蒸気を回収器15で回収可能か否かを確認する。このステップS52では、例えば、“反応器13内の圧力P>回収器15内の圧力P”の関係を満たす場合、反応器13の蒸気を回収器15で回収できると判定することができる(ステップS52:YES)。この判定がなされた場合、ステップS53へと進む。一方、例えば、“反応器13内の圧力P>回収器15内の圧力P”の関係を満たさない場合、反応器13の蒸気を回収器15で回収できないと判定することができる(ステップS52:NO)。この判定がなされた場合、ステップS52が繰り返される。
【0113】
ステップS53では、蓄熱用流路L3を開閉する蓄熱用開閉弁V2を開動作させることで、蓄熱用流路L3を開放する。このステップS53により、回収器15による反応器13内の蒸気の回収が開始される。
【0114】
ステップS54では、反応器13内の化学蓄熱材12の加熱が必要か否かを判定する。ステップS54では、例えば、“化学蓄熱材12の温度≦反応器13に供給される加熱媒体の温度”の関係を満たす場合、反応器13内の化学蓄熱材12の加熱が必要と判定することができる(ステップS54:YES)。この判定がなされた場合、ステップS55へと進む。ここで、化学蓄熱材12の温度は、反応器13内の圧力Pから求めることができる。すなわち、化学蓄熱材12の温度は、反応器13内の圧力Pを飽和蒸気圧として求められる水蒸気の温度である。
【0115】
一方、ステップS54において、例えば、“化学蓄熱材12の温度≦反応器13に供給される加熱媒体の温度”の関係を満たさない場合、反応器13内の化学蓄熱材12の加熱は不要と判定することができる(ステップS54:NO)。この判定がなされた場合、ステップS54が繰り返される。
【0116】
ステップS55では、排熱の熱源HSから熱媒体、すなわち化学蓄熱材12を加熱する加熱媒体を反応器13に供給する。このように反応器13に加熱媒体を供給した状態で、ステップS56へと進む。
【0117】
ステップS56では、蒸気回収量に基づいて脱水反応の反応率を算出し、脱水反応の反応率が所定の反応率に到達したか否かを判定する。ステップS56では、例えば、上述した脱水反応の反応率Xdehydを算出し、“反応率Xdehyd=1.0”の関係を満たす場合、脱水反応の反応率が所定の反応率に到達したと判定することができる(ステップS56:YES)。この判定がなされた場合、ステップS57へと進む。このとき、蒸気回収量Nrecをクリア、すなわち“蒸気回収量Nrec=0”とする。
【0118】
一方、例えば、“反応率Xdehyd=1.0”の関係を満たさない場合、脱水反応の反応率が所定の反応率に到達していないと判定することができる(ステップS56:NO)。この判定がなされた場合、ステップS56が繰り返される。
【0119】
ステップS57では、回収器15への第2熱媒体の供給を停止するとともに、反応器13への加熱媒体の供給を停止する。
ステップS58では、蓄熱用流路L3を開閉する蓄熱用開閉弁V2を閉動作させることで、蓄熱用流路L3を閉鎖する。このステップS58により、回収器15による反応器13内の蒸気の回収を停止することで、蓄熱動作を終了させる。
【0120】
以上の蓄熱動作を終了後、ステップS42から繰り返すことで、放熱動作及び蓄熱動作を順次行うことができる。
<第2実施形態の作用及び効果>
(2-1)ケミカルヒートポンプ11の第1算出部31で求められる蒸気生成量は、反応器13内が水和反応の圧力条件に達した後の蒸気生成量である。ケミカルヒートポンプ11は、反応器13内の圧力、及び蒸発器14内の圧力の検出結果に基づいて蒸気生成量を算出している。
【0121】
この場合、第1算出部31で求められる蒸気生成量を水和反応に使用された蒸気量に近づけることができる。これにより、第1算出部31で算出される水和反応の反応率の精度を高めることができる。また、反応器13内の圧力、及び蒸発器14内の圧力は、反応器13内及び蒸発器14内に配置した圧力センサによって簡便かつ比較的高精度で測定することができる。これにより、第1算出部31では、反応器13内が水和反応の圧力条件に達した後の蒸気生成量を簡便かつ比較的高精度で求めることができる。
【0122】
(2-2)ケミカルヒートポンプ11の第2算出部32で求められる蒸気回収量は、反応器13内が脱水反応の圧力条件に達した後の蒸気回収量である。ケミカルヒートポンプ11は、反応器13内の圧力、及び回収器15内の圧力の検出結果に基づいて蒸気回収量を算出している。
【0123】
この場合、第2算出部32で求められる蒸気回収量を脱水反応により発生した蒸気量に近づけることができる。これにより、第2算出部32で算出される脱水反応の反応率の精度を高めることができる。また、反応器13内の圧力、及び回収器15内の圧力は、反応器13内及び回収器15内に配置した圧力センサによって簡便かつ比較的高精度で測定することができる。これにより、第2算出部32では、反応器13内が脱水反応の圧力条件に達した後の蒸気回収量を簡便かつ比較的高精度で求めることができる。
【0124】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0125】
・ケミカルヒートポンプ11は、上記第1算出部31及び第2算出部32のいずれか一方を省略することもできる。この場合、算出部の算出結果に基づいて、蓄熱動作から放熱動作への切り替え、及び蓄熱動作から放熱動作への切り替えのいずれかの切り替えを行うことが可能となる。
【0126】
・第1実施形態及び第2実施形態において、第1流量センサ21d及び第2流量センサ22dを省略することもできる。例えば、図7に示すケミカルヒートポンプ11は、蒸発器加熱経路21に設けられ、第1熱媒体を送る第1ポンプ51と、回収器冷却経路22に設けられ、第2熱媒体を送る第2ポンプ52とを備えている。蒸発器14に供給される第1熱媒体の供給流量は、第1ポンプ51の駆動周波数から求めることができる。また、回収器15に供給される第2熱媒体の供給流量は、第2ポンプ52の駆動周波数から求めることができる。
【0127】
詳述すると、供給流量Fは、例えば、下記式(13)及び(14)により求めることができる。
【0128】
【数6】
kは、比例定数である。
【0129】
Nは、ポンプの回転速度[r/min]である。
fは、ポンプの運転周波数[Hz]である。
Pは、極数である。
【0130】
sは、すべり[%]である。
なお、例えば、第1熱媒体の供給流量を第1流量センサ21dで検出するとともに、第2熱媒体の供給流量を第2ポンプ52の駆動周波数から求めてもよい。また、例えば、第1熱媒体の供給流量を第1ポンプ51の駆動周波数から求めるとともに、第2熱媒体の供給流量を第2流量センサ22dで検出してもよい。
【0131】
・蒸発器14の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
・回収器15の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
・回収器15内に配置される回収材を省略することもできる。すなわち、回収器15内の蒸気圧の調整は、回収材を用いる以外に、より低温の第2熱媒体を用いたり、減圧ポンプにより回収器15内の圧力を低下させたりすることで行うこともできる。
【0132】
・水和反応の反応率Xhydの閾値は、1.0に限定されず、例えば、0.8等の任意の値に設定することができる。
・脱水反応の反応率Xdehydの閾値は、1.0に限定されず、例えば、0.8等の任意の値に設定することができる。
【0133】
・放熱動作は、水和反応の反応率が所定の反応率となる前に一時停止することもできる。蓄熱動作についても、脱水反応の反応率が所定の反応率となる前に一時停止することもできる。
【0134】
・第1実施形態のステップS11の前段階として、反応器13内の圧力を所定の値に設定する段階を備えていてもよい。すなわち、例えば、ケミカルヒートポンプ11の使用開始時には、化学蓄熱材12の脱水反応を促進するために、反応器13内を真空状態とする場合がある。この場合、反応器13内の圧力を、例えば回収器15との接続を利用して所定の圧力まで高めた後に、ステップS11を開始してもよい。
【0135】
・第1実施形態及び第2実施形態のケミカルヒートポンプ11は、水和反応の反応率Xhydに基づいて放熱動作から蓄熱動作に自動で切り替える制御部16を有しているが、これに限定されない。ケミカルヒートポンプ11は、例えば、表示部35に表示された水和反応の反応率Xhydに基づいて手動で放熱動作から蓄熱動作に切り替えるように構成することもできる。蓄熱動作から放熱動作の切り替えについても、例えば、表示部35に表示された脱水反応の反応率Xdehydに基づいて手動で放熱動作から蓄熱動作に切り替えるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0136】
11…ケミカルヒートポンプ
12…化学蓄熱材
13…反応器
14…蒸発器
15…回収器
21…蒸発器加熱経路
21a…加熱用流路
22…回収器冷却経路
22a…冷却用流路
31…第1算出部
32…第2算出部
F1…第1熱媒体の供給流量
F2…第2熱媒体の供給流量
Neva…蒸気生成量
Nrec…蒸気回収量
_in…第1熱媒体の供給温度
_out…第1熱媒体の排出温度
_in…第2熱媒体の供給温度
_out…第2熱媒体の排出温度
dehyd…脱水反応の反応率
hyd…水和反応の反応率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7