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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135062
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】化学蓄熱システム、及び蓄熱方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20230921BHJP
   F25B 17/08 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
F28D20/00 G
F25B17/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040075
(22)【出願日】2022-03-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、知の拠点あいち重点研究プロジェクトIII期、「熱/電気バッテリーで構築するエネルギーマネジメント技術」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新家 大地
(72)【発明者】
【氏名】可貴 裕和
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬幸
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093KK01
(57)【要約】
【課題】化学蓄熱システムの導入先における冷却源の系統と排熱源の系統とを独立した状態に維持することを可能にした化学蓄熱システム、及び蓄熱方法を提供する。
【解決手段】化学蓄熱システム11は、蓄熱器21、回収器31、復水器41、及び蒸発器51を備える。回収器31は、吸収材LMと熱交換する第2熱交換器32を有している。復水器41は、冷却源CSから冷却媒体が供給される第3熱交換器42を有している。蒸発器51は、排熱源HSから加熱媒体が供給される第4熱交換器52を有している。化学蓄熱システム11は、復水器41で冷却された水W2を回収器31の第2熱交換器32に送る回収器冷却用流路L4と、蒸発器51で加熱した水W1を回収器31の第2熱交換器32に送る回収器加熱用流路L7とを備えている。回収器冷却用流路L4と回収器加熱用流路L7とは、切り替え可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱動作時に脱水反応し、放熱動作時に水和反応する化学蓄熱材と前記化学蓄熱材と熱交換する熱交換器とを有する蓄熱器と、
水蒸気を吸収する吸収材を有し、前記化学蓄熱材から発生した水蒸気を回収する回収器と、
前記吸収材から発生した水蒸気を凝縮させる復水器と、
前記化学蓄熱材と反応させる水蒸気を前記蓄熱器に供給する蒸発器と、を備える化学蓄熱システムであって、
前記回収器は、前記吸収材と熱交換する熱交換器を有し、
前記復水器は、冷却源から冷却媒体が供給される熱交換器を有し、
前記蒸発器は、排熱源から加熱媒体が供給される熱交換器を有し、
前記復水器で冷却された水を前記回収器の前記熱交換器に送る回収器冷却用流路と、
前記蒸発器で加熱した水又は前記蒸発器で発生させた水蒸気を前記回収器の前記熱交換器に送る回収器加熱用流路と、を備え、
前記回収器冷却用流路と前記回収器加熱用流路とは、切り替え可能に構成されている、化学蓄熱システム。
【請求項2】
前記蒸発器で加熱した水又は前記蒸発器で発生させた水蒸気を放熱動作の前に前記蓄熱器の前記熱交換器に送る蓄熱器加熱用流路をさらに備える、請求項1に記載の化学蓄熱システム。
【請求項3】
前記蓄熱器加熱用流路は、前記回収器の前記吸収材を再生する再生動作中に前記蒸発器で加熱した水又は前記蒸発器で発生させた水蒸気を前記蓄熱器の前記熱交換器に送る、請求項2に記載の化学蓄熱システム。
【請求項4】
前記回収器加熱用流路及び前記蓄熱器加熱用流路は、前記蒸発器で加熱した水又は前記蒸発器で発生させた水蒸気をそれぞれ前記回収器の前記熱交換器及び前記蓄熱器の前記熱交換器に並列で供給するように構成される、請求項2又は請求項3に記載の化学蓄熱システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の化学蓄熱システムを用いた蓄熱方法であって、前記回収器加熱用流路を用いて前記吸収材を再生する再生ステップと、前記回収器冷却用流路を用いて前記化学蓄熱材に蓄熱する蓄熱ステップとを切り替える、蓄熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学蓄熱システム、及び蓄熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に開示されるように、化学蓄熱材を備える蓄熱器と、水蒸気を吸収する吸収材を有する回収器とを備える化学蓄熱システムが知られている。回収器は、化学蓄熱システムの蓄熱動作の際に、蓄熱器の化学蓄熱材の脱水反応で発生する水蒸気を回収することで、蓄熱動作を促進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-220165号公報
【特許文献2】特開2014-153029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような化学蓄熱システムの回収器の吸収材は、水和反応により水蒸気を吸収する。吸収材の水和反応は、冷却源から回収器の熱交換器に供給される冷却媒体により冷却されることにより促進される。化学蓄熱システムの蓄熱動作後には、吸収材を脱水反応させる回収器の再生動作が行われる。吸収材の脱水反応は、排熱源から回収器の熱交換器に供給される加熱媒体により加熱されることにより促進される。このように回収器の熱交換器には、冷却源の冷却媒体と、排熱源の加熱媒体とが交互に導入される。このため、冷却源の系統に排熱源の加熱媒体が混入するとともに、排熱源の系統に排熱源の加熱媒体が混入する。すなわち、排熱源の加熱媒体の性質が冷却源の系統に影響を与えたり、冷却源の冷却媒体の性質が排熱源の系統に影響を与えたりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する化学蓄熱システムは、蓄熱動作時に脱水反応し、放熱動作時に水和反応する化学蓄熱材と前記化学蓄熱材と熱交換する熱交換器とを有する蓄熱器と、水蒸気を吸収する吸収材を有し、前記化学蓄熱材から発生した水蒸気を回収する回収器と、前記吸収材から発生した水蒸気を凝縮させる復水器と、前記化学蓄熱材と反応させる水蒸気を前記蓄熱器に供給する蒸発器と、を備える化学蓄熱システムであって、前記回収器は、前記吸収材と熱交換する熱交換器を有し、前記復水器は、冷却源から冷却媒体が供給される熱交換器を有し、前記蒸発器は、排熱源から加熱媒体が供給される熱交換器を有し、前記復水器で冷却された水を前記回収器の前記熱交換器に送る回収器冷却用流路と、前記蒸発器で加熱した水又は前記蒸発器で発生させた水蒸気を前記回収器の前記熱交換器に送る回収器加熱用流路と、を備え、前記回収器冷却用流路と前記回収器加熱用流路とは、切り替え可能に構成されている。
【0006】
この構成によれば、冷却源の冷却媒体の流路とは独立した回収器冷却用流路を通じる水と、排熱源の加熱媒体の流路とは独立した回収器加熱用流路を通じる水により回収器を冷却及び加熱することができる。このため、回収器の熱交換器において、冷却源の冷却媒体に排熱源の加熱媒体が混入することを回避することができる。これにより、冷却源の系統は、排熱源の加熱媒体の性質の影響を受けることはない。また、回収器の熱交換器において、排熱源の加熱媒体に冷却源の冷却媒体が混入することを回避することができる。これにより、排熱源の系統は、冷却源の冷却媒体の性質の影響を受けることはない。
【0007】
上記化学蓄熱システムにおいて、前記蒸発器で加熱した水又は前記蒸発器で発生させた水蒸気を放熱動作の前に前記蓄熱器の前記熱交換器に送る蓄熱器加熱用流路をさらに備えてもよい。この構成によれば、蓄熱器の熱交換器を放熱動作の前に予め加熱することができるため、放熱動作時には、化学蓄熱材から発生した熱を効率的に輸送することができる。
【0008】
上記化学蓄熱システムにおいて、前記蓄熱器加熱用流路は、前記回収器の前記吸収材を再生する再生動作中に前記蒸発器で加熱した水又は前記蒸発器で発生させた水蒸気を前記蓄熱器の前記熱交換器に送ることが好ましい。この構成によれば、再生動作時に蓄熱器の熱交換器を予め加熱することができる。これにより、化学蓄熱システムの再生動作中や再生動作の直後に開始する化学蓄熱システムの放熱動作において、化学蓄熱材から発生した熱を効率的に輸送することができる。
【0009】
上記化学蓄熱システムにおいて、前記回収器加熱用流路及び前記蓄熱器加熱用流路は、前記蒸発器で加熱した水又は前記蒸発器で発生させた水蒸気をそれぞれ前記回収器の前記熱交換器及び前記蓄熱器の前記熱交換器に並列で供給するように構成されてもよい。この構成によれば、蓄熱器の熱交換器と回収器の熱交換器とを効率的に加熱することができる。例えば、蓄熱器加熱用流路及び回収器加熱用流路を順に直列に接続する場合よりも、回収器の熱交換器に供給される水の温度を高めることができるため、回収器の再生を効率的に行うことができる。
【0010】
上記課題を解決する蓄熱方法は、上記化学蓄熱システムを用いた蓄熱方法であって、前記回収器加熱用流路を用いて前記吸収材を再生する再生ステップと、前記回収器冷却用流路を用いて前記化学蓄熱材に蓄熱する蓄熱ステップとを切り替える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、化学蓄熱システムの導入先における冷却源の系統と排熱源の系統とを独立した状態に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態における化学蓄熱システムを示す概略図である。
図2】化学蓄熱システムの蓄熱動作を説明する概略図である。
図3】化学蓄熱システムの再生動作を説明する概略図である。
図4】第2実施形態における化学蓄熱システムを示す概略図である。
図5】化学蓄熱システムの再生動作を説明する概略図である。
図6】化学蓄熱システムの変更例を示す概略図である。
図7】化学蓄熱システムの再生動作を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、化学蓄熱システムの第1実施形態について図面を参照して説明する。
<化学蓄熱システムの全体構成>
図1に示すように、化学蓄熱システム11は、蓄熱器21と、回収器31と、復水器41と、蒸発器51とを備えている。化学蓄熱システム11は、排熱源HSを用いて蓄熱した後、排熱源HSよりも高い温度の放熱を行うケミカルヒートポンプとして用いることができる。化学蓄熱システム11の放熱動作時には、加熱対象61に水蒸気を送ることができる。
【0014】
<蓄熱器21>
蓄熱器21は、化学蓄熱システム11の蓄熱動作時に脱水反応し、化学蓄熱システム11の放熱動作時に水和反応する化学蓄熱材HMを有する。化学蓄熱材HMとしては、周知の固体材料を用いることができる。化学蓄熱材HMは、化学蓄熱物質のみから構成してもよいし、粒子状の化学蓄熱物質を水蒸気透過性樹脂等の水蒸気透過性のバインダーで結合した材料であってもよい。化学蓄熱物質としては、例えば、アルカリ土類金属のハロゲン化物、硫酸カルシウム等が挙げられる。化学蓄熱材HMは、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
化学蓄熱物質の一種である塩化カルシウムの脱水反応及び水和反応は、例えば、下記式(A)で表される。
CaCl・HO+HO⇔CaCl・2HO・・・(A)
蓄熱器21は、化学蓄熱材HMと熱交換する第1熱交換器22を備えている。蓄熱器21は、化学蓄熱材HMから発生した熱を利用して第1熱交換器22の流路内で飽和蒸気を発生させる。蓄熱器21は、化学蓄熱材HM及び第1熱交換器22を収容する第1容器23を備えている。蓄熱器21の第1容器23は、化学蓄熱材HMの水和反応に用いられる水蒸気が導入可能に構成されている。また、蓄熱器21の第1容器23は、化学蓄熱材HMの脱水反応で生じる水蒸気が排出されるように構成されている。
【0016】
蓄熱器21の第1熱交換器22としては、例えば、フィンチューブ型の熱交換器、フィンレス熱交換器等が挙げられる。なお、以下で説明する熱交換器についても、同様の熱交換器を用いることができる。
【0017】
<回収器31>
回収器31は、水蒸気を吸収する吸収材LMを有し、蓄熱器21の化学蓄熱材HMから発生した水蒸気を回収する。回収器31は、吸収材LMと熱交換する第2熱交換器32と、吸収材LMと第2熱交換器32とを収容する第2容器33とを備えている。
【0018】
吸収材LMは、化学蓄熱材HMを脱水反応させる温度を下げるために用いられる。吸収材LMを用いることで、より低い温度の排熱であっても、化学蓄熱材HMの脱水反応を進行させて蓄熱することが可能となる。また、吸収材LMは、排熱源HSの加熱媒体の温度において、脱水反応可能な物質が用いられる。これにより、排熱源HSを利用して吸収材LMを再生することができる。
【0019】
冷却源CSの温度における吸収材LMの平衡蒸気圧VP2Cは、排熱源HSの温度における化学蓄熱材HMの平衡蒸気圧VP1Hよりも低いことで、化学蓄熱材HMの脱水反応を好適に促進することができる。一方、排熱源HSの温度における吸収材LMの平衡蒸気圧VP2Hは、同じく排熱源HSの温度における化学蓄熱材HMの平衡蒸気圧VP1Hよりも高いことが好ましい。このような吸収材LMは、化学蓄熱材HMよりも脱水し易いため、排熱源HSを用いて吸収材LMを再生することで、次の蓄熱動作に効率的に使用することができる。また、排熱源HSの温度における吸収材LMの平衡蒸気圧VP2Hは、冷却源CSの温度における水の平衡蒸気圧VP3Cよりも高いことが好ましい。これにより、排熱源HSにより吸収材LMを加熱して発生した水蒸気を冷却源CSによる冷却で凝縮させることで、吸収材LMの再生を効率的に行うことができる。
【0020】
吸収材LMとしては、例えば、ゼオライト、水酸化リチウム、硫酸マグネシウム、シュウ化ストロンチウム、活性炭、多孔性金属錯体(MOF)等が挙げられる。吸収材LMは、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
吸収材LMの一種である臭化ストロンチウムの脱水反応及び水和反応は、例えば、下記式(B)で表される。
SrBr・HO+5HO⇔SrBr・6HO・・・(B)
<復水器41>
復水器41は、吸収材LMから発生した水蒸気を凝縮させる。復水器41は、冷却源CSから冷却媒体が供給される第3熱交換器42と、第3熱交換器42を収容する第3容器43とを備えている。復水器41の第3熱交換器42は、復水器41に導入される水蒸気を凝縮する。また、復水器41の第3熱交換器42は、復水器41の第3容器43内の水W2を冷却する。すなわち、復水器41の第3熱交換器42は、水蒸気を凝縮する水蒸気凝縮部と、水を冷却する水冷却部とを備えている。第3熱交換器42は、一つの熱交換器から構成されていてもよいし、複数の熱交換器から構成されていてもよい。
【0022】
<蒸発器51>
蒸発器51は、化学蓄熱材HMと反応させる水蒸気を蓄熱器21に供給する。蒸発器51は、排熱源HSから加熱媒体が供給される第4熱交換器52と、第4熱交換器52を収容する第4容器53とを備えている。蒸発器51では、第4容器53内の水W1を第4熱交換器52により加熱することで水蒸気を発生させることができる。蒸発器51には、図示を省略した流路によって復水器41の水W2が送液可能に構成されている。これにより、復水器41の水W2は、蒸発器51の水W1として再利用される。
【0023】
<流路構成>
次に、化学蓄熱システム11の主な流路構成について説明する。
まず、化学蓄熱システム11の蓄熱動作に用いられる流路について説明する。
【0024】
図2に示すように、化学蓄熱システム11は、蓄熱器21から回収器31に水蒸気WV1を送る回収用水蒸気流路L1を有している。化学蓄熱システム11は、蒸発器51で加熱した水W1をポンプ71によって蓄熱器21の第1熱交換器22に送る蓄熱器加熱用流路L2と、第1熱交換器22を通じた水を蒸発器51に戻す蒸発器用第1流路L3とを有している。化学蓄熱システム11は、復水器41で冷却した水W2をポンプ72によって回収器31の第2熱交換器32に送る回収器冷却用流路L4と、第2熱交換器32を通じた水を復水器41に戻す復水器用第1流路L5とを有している。
【0025】
次に、化学蓄熱システム11の再生動作に用いられる流路について説明する。
図3に示すように、化学蓄熱システム11は、回収器31から復水器41に水蒸気WV2を送る復水器用第2流路L6を有している。化学蓄熱システム11は、蒸発器51で加熱した水W1をポンプ71によって回収器31の第2熱交換器32に送る回収器加熱用流路L7と、第2熱交換器32を通じた水を蒸発器51に戻す蒸発器用第2流路L8とを有している。化学蓄熱システム11は、上述した回収器冷却用流路L4と回収器加熱用流路L7とが切り替え可能に構成されている。これにより、上述した回収器冷却用流路L4を用いる化学蓄熱材HMの蓄熱と、回収器加熱用流路L7を用いる吸収材LMの再生とを交互に行うことができる。なお、回収器冷却用流路L4と回収器加熱用流路L7との切り替えは、バルブの開閉により行うことができる。
【0026】
次に、化学蓄熱システム11の放熱動作に用いられる流路について説明する。
図1に示すように、化学蓄熱システム11は、蒸発器51から蓄熱器21に水蒸気を送る蓄熱器用水蒸気流路L9を有している。化学蓄熱システム11は、蓄熱器21の第1熱交換器22内の水蒸気を加熱対象61に送る蒸気供給流路L10を備えている。加熱対象61は、特に限定されない。加熱対象61としては、例えば、蒸気発生装置等が挙げられる。
【0027】
<化学蓄熱システム11の動作>
次に、化学蓄熱システム11の動作の一例について説明する。
(化学蓄熱システム11の蓄熱動作)
図2に示すように、化学蓄熱システム11の蓄熱動作では、蓄熱器21の化学蓄熱材HMから排出される水蒸気WV1を回収器31により回収する。詳述すると、蓄熱器21の化学蓄熱材HMから排出される水蒸気WV1は、回収用水蒸気流路L1を通じて回収器31に送られる。回収器31の第2熱交換器32には、復水器41で冷却された水W2が回収器冷却用流路L4を通じて送られる。回収器31の第2熱交換器32に送られた水は、復水器用第1流路L5を通じて復水器41に戻される。このように復水器41で冷却された水W2は、回収器冷却用流路L4及び復水器用第1流路L5を通じて、復水器41と回収器31の第2熱交換器32との間を循環される。
【0028】
蓄熱器21の化学蓄熱材HMから排出される水蒸気WV1が回収器31に送られることで、化学蓄熱材HMの脱水反応が行われる。ここで、化学蓄熱材HMの脱水反応の進行に伴って、化学蓄熱材HMの温度が低下する。化学蓄熱材HMの温度が排熱源HSの加熱媒体の温度よりも低くなったとき、蒸発器51で加熱した水W1を蓄熱器加熱用流路L2及び蒸発器用第1流路L3を通じて、蓄熱器21の第1熱交換器22と蒸発器51との間を循環させる。蒸発器51では、排熱源HSから蒸発器51の第4熱交換器52に加熱媒体を供給することで、水W1を加熱することができる。
【0029】
上記のように排熱源HSを利用して蓄熱器21の化学蓄熱材HMを加熱することで、化学蓄熱材HMの脱水反応を進行させる。化学蓄熱システム11の蓄熱動作は、蓄熱器21と回収器31との間のバルブを閉じることにより停止させることができる。
【0030】
(化学蓄熱システム11の再生動作)
図3に示すように、化学蓄熱システム11の再生動作では、回収器31の吸収材LMから排出される水蒸気WV2を復水器41によって凝縮させる。詳述すると、回収器31の吸収材LMから排出される水蒸気WV2は、復水器用第2流路L6を通じて復水器41に送られる。復水器41の第3熱交換器42には、冷却源CSから冷却媒体が供給されている。化学蓄熱システム11の再生動作は、回収器31と復水器41との間のバルブを閉じることにより、停止させることができる。
【0031】
(化学蓄熱システム11の放熱動作)
化学蓄熱システム11の放熱動作では、排熱源HSから蒸発器51の第4熱交換器52に加熱媒体を供給することで、蒸発器51で水蒸気を発生させる。蒸発器51で発生させた水蒸気は、図1に示される蓄熱器用水蒸気流路L9を通じて蓄熱器21に送られる。これにより、蓄熱器21の化学蓄熱材HMの水和反応が行われる。
【0032】
蓄熱器21の第1熱交換器22の流路内の水は、化学蓄熱材HMの水和反応による発熱により加熱される。これにより、第1熱交換器22の流路内において水蒸気を発生させることができる。第1熱交換器22の流路内の水蒸気は、図1に示される蒸気供給流路L10を通じて加熱対象61に送られる。化学蓄熱システム11の放熱動作は、蒸発器51と蓄熱器21との間のバルブを閉じることにより停止することができる。
【0033】
化学蓄熱システム11では、放熱動作の前に、蒸発器51で加熱した水W1を、上記蓄熱器加熱用流路L2を通じて蓄熱器21の第1熱交換器22に送ることが好ましい。
<蓄熱方法>
以上の化学蓄熱システム11を用いた蓄熱方法では、化学蓄熱材HMの脱水反応を行う蓄熱ステップと、化学蓄熱材HMの水和反応を行う放熱ステップとを繰り返すことができる。蓄熱方法では、蓄熱ステップの後、次の蓄熱ステップを開始するまでに、吸収材LMを再生する再生ステップが行われる。蓄熱方法では、上述した回収器加熱用流路L7を用いて吸収材LMを再生する再生ステップと、上述した回収器冷却用流路L4を用いて化学蓄熱材HMに蓄熱する蓄熱ステップとを切り替える。蓄熱方法は、放熱ステップの前に、上記蓄熱器加熱用流路L2を用いて蓄熱器21の第1熱交換器22を加熱する蓄熱器加熱ステップを含むことが好ましい。
【0034】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1-1)化学蓄熱システム11は、蓄熱器21、回収器31、復水器41、及び蒸発器51を備えている。回収器31は、吸収材LMと熱交換する第2熱交換器32を有している。復水器41は、冷却源CSから冷却媒体が供給される第3熱交換器42を有している。蒸発器51は、排熱源HSから加熱媒体が供給される第4熱交換器52を有している。化学蓄熱システム11は、復水器41で冷却された水W2を回収器31の第2熱交換器32に送る回収器冷却用流路L4と、蒸発器51で加熱した水W1を回収器31の第2熱交換器32に送る回収器加熱用流路L7とを備えている。回収器冷却用流路L4と回収器加熱用流路L7とは、切り替え可能に構成されている。
【0035】
この構成によれば、冷却源CSの冷却媒体の流路とは独立した回収器冷却用流路L4を通じる水W2と、排熱源HSの加熱媒体の流路とは独立した回収器加熱用流路L7を通じる水W1により回収器31を冷却及び加熱することができる。このため、回収器31の第2熱交換器32において、冷却源CSの冷却媒体に排熱源HSの加熱媒体が混入することを回避することができる。これにより、冷却源CSの系統は、排熱源HSの加熱媒体の性質の影響を受けることはない。また、回収器31の第2熱交換器32において、排熱源HSの加熱媒体に冷却源CSの冷却媒体が混入することを回避することができる。これにより、排熱源HSの系統は、冷却源CSの冷却媒体の性質の影響を受けることはない。従って、化学蓄熱システム11の導入先における冷却源CSの系統と排熱源HSの系統とを独立した状態に維持することが可能となる。
【0036】
(1-2)化学蓄熱システム11は、蒸発器51で加熱した水W1を放熱動作の前に蓄熱器21の第1熱交換器22に送る蓄熱器加熱用流路L2をさらに備えている。この場合、蓄熱器21の第1熱交換器22を放熱動作の前に予め加熱することができるため、放熱動作時には、化学蓄熱材HMから発生した熱を効率的に輸送することができる。
【0037】
(1-3)蓄熱器21の第1熱交換器22に排熱源HSの加熱媒体を供給する場合では、第1熱交換器22が排熱源HSの加熱媒体の性質や清浄度の影響を受けることになる。これにより、例えば、第1熱交換器22のメンテナンス等に手間を要するおそれがある。これに対して、本実施形態の化学蓄熱システム11は、蒸発器51で加熱した水W1を蓄熱器21の第1熱交換器22に送る蓄熱器加熱用流路L2をさらに備えている。この場合、蓄熱器21の第1熱交換器22に供給される水W1の性質の安定化や清浄性の確保が容易である。これにより、例えば、蓄熱器21の第1熱交換器22のメンテナンス等の手間を軽減することが可能となる。
【0038】
(第2実施形態)
化学蓄熱システム11の第2実施形態について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0039】
図4及び図5に示すように、第2実施形態の回収器加熱用流路L7及び蓄熱器加熱用流路L2は、蒸発器51で加熱した水W1をそれぞれ回収器31の第2熱交換器32及び蓄熱器21の第1熱交換器22に並列で供給するように構成されている。
【0040】
この化学蓄熱システム11の蓄熱器加熱用流路L2は、回収器31の吸収材LMを再生する再生動作中に蒸発器51で加熱した水W1を蓄熱器21の第1熱交換器22に送るように構成されている。すなわち、この化学蓄熱システム11を用いた蓄熱方法では、吸収材LMを再生する再生ステップ中に蓄熱器21の第1熱交換器22を加熱する蓄熱器加熱ステップを行うことができる。
【0041】
第2実施形態の化学蓄熱システム11では、上記第1実施形態の(1-1)~(1-3)欄に記載の作用及び効果に加えて以下の作用及び効果が得られる。
(2-1)本実施形態の化学蓄熱システム11は、上記のように化学蓄熱システム11の再生動作時に蓄熱器21の第1熱交換器22を予め加熱することができる。これにより、化学蓄熱システム11の再生動作中や再生動作の直後に開始する化学蓄熱システム11の放熱動作において、化学蓄熱材HMから発生した熱を効率的に輸送することができる。
【0042】
(2-2)回収器加熱用流路L7及び蓄熱器加熱用流路L2は、蒸発器51で加熱した水W1を上記のように並列で供給するように構成されている。この場合、蓄熱器21の第1熱交換器22と回収器31の第2熱交換器32とを効率的に加熱することができる。例えば、蓄熱器加熱用流路L2及び回収器加熱用流路L7を順に直列に接続する場合よりも、回収器31の第2熱交換器32に供給される水W1の温度を高めることができるため、回収器31の再生を効率的に行うことができる。
【0043】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・上記実施形態の化学蓄熱システム11では、蓄熱器21の第1熱交換器22に蒸発器51で加熱した水W1を供給しているが、蓄熱器21の第1熱交換器22に蒸発器51で発生させた水蒸気を供給してもよい。この場合であっても、例えば、第1実施形態の(1-2)、(1-3)欄、及び第2実施形態の(2-1)、(2-2)欄で述べた作用及び効果を得ることができる。
【0045】
図6及び図7に示すように、第2実施形態の化学蓄熱システム11の回収器加熱用流路L7及び蓄熱器加熱用流路L2の構成を変更することができる。すなわち、回収器加熱用流路L7及び蓄熱器加熱用流路L2は、蒸発器51で加熱した水W1を蓄熱器21の第1熱交換器22及び回収器31の第2熱交換器32の順に直列で供給するように構成することもできる。また、図示を省略するが、回収器加熱用流路L7及び蓄熱器加熱用流路L2は、蒸発器51で加熱した水W1を回収器31の第2熱交換器32及び蓄熱器21の第1熱交換器22の順に直列で供給するように構成することもできる。
【0046】
・上記実施形態の化学蓄熱システム11では、蒸発器51で加熱した水W1を蓄熱器21の第1熱交換器22に供給しているが、排熱源HSの加熱媒体を蓄熱器21の第1熱交換器22に供給するように変更することもできる。
【0047】
・上記実施形態の化学蓄熱システム11の蓄熱動作は、復水器41と回収器31とを用いて行うこともできる。すなわち、蓄熱方法において、化学蓄熱材HMの脱水反応を行う蓄熱ステップは、復水器作動ステップと、復水器作動ステップの後に行う回収器作動ステップとを含んでもよい。復水器作動ステップでは、化学蓄熱材HMから発生する水蒸気WV1を復水器41に導入する。回収器作動ステップでは、化学蓄熱材HMから発生する水蒸気WV1を回収器31に導入する。
【符号の説明】
【0048】
11…化学蓄熱システム
21…蓄熱器
22…第1熱交換器
31…回収器
32…第2熱交換器
41…復水器
42…第3熱交換器
51…蒸発器
52…第4熱交換器
CS…冷却源
HM…化学蓄熱材
HS…排熱源
LM…吸収材
L2…蓄熱器加熱用流路
L4…回収器冷却用流路
L7…回収器加熱用流路
W1,W2…水
WV1,WV2…水蒸気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7