(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135067
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】豆臭軽減資材
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20230921BHJP
A23J 3/00 20060101ALN20230921BHJP
A23L 13/00 20160101ALN20230921BHJP
A23L 11/00 20210101ALN20230921BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23J3/00 502
A23L13/00 A
A23L11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040081
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】591137031
【氏名又は名称】日研フード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宜慶
(72)【発明者】
【氏名】杉山 甲斐
(72)【発明者】
【氏名】峰時 俊貴
【テーマコード(参考)】
4B020
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B020LB19
4B020LC01
4B020LG01
4B020LG04
4B020LK04
4B020LK05
4B020LK14
4B020LK20
4B042AC01
4B042AD36
4B042AE03
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK08
4B042AK09
4B042AK11
4B042AK13
4B042AK14
4B042AK17
4B047LB06
4B047LF03
4B047LG19
4B047LG27
4B047LG40
4B047LP01
4B047LP07
4B047LP09
4B047LP18
(57)【要約】
【課題】大豆特有の不快臭(主にHexanal香気)、すなわち豆臭を軽減する新たな豆臭軽減資材。
【解決手段】エンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材。
【請求項2】
上記豆臭がHexanalである請求項1に記載する豆臭軽減資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、豆臭軽減資材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から食品が持つ特有の不快臭・オフフレーバーに対する軽減の手法及び軽減資材の製造方法について種々提案されている(例えば、特許文献1~特許文献7)。
【0003】
この中で、特許文献1では大豆、特許文献3ではトマトを用いた大豆タンパク質に由来する不快臭の軽減資材の製造方法について提案されている。また、特許文献7では、豆臭に対する軽減作用(豆臭抑制作用)を有する複数の化合物の中から選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含む豆臭軽減剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-62839号公報
【特許文献2】WO2019/039490号公報
【特許文献3】特開2019-71851号公報
【特許文献4】WO2016/159217号公報
【特許文献5】特開2007-39609号公報
【特許文献6】特開2005-118015号公報
【特許文献7】WO2019/230903号公報
【特許文献8】特開2016-174566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の菜食主義者の増加・ビーガン対応食品の需要増加に対応すべく様々な植物性由来の代替肉(プラントベースミート)の開発が進んでいる。その中でも大豆は非常に高タンパク質な植物であり、種々の食品メーカーのプラントベースミートの材料として使用されている。しかし、大豆は特有の不快臭(主にHexanal香気)を持つことが知られており、この香気を軽減する技術の提供が急がれる。
【0006】
この発明は、大豆特有の不快臭(主にHexanal香気)、すなわち豆臭を軽減する新たな豆臭軽減資材を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を解決する本発明としては以下を例示することができる。
[1]
エンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材。
【0008】
[2]
上記豆臭がHexanal香気である[1]の豆臭軽減資材。
【0009】
このように、本願発明が提案する豆臭軽減資材は、大豆の不快臭(主にHexanal香気)、すなわち豆臭に対する軽減効果を有するエンドウタンパク質酵素分解物である。
【0010】
背景技術の欄で紹介したように、従来から食品が持つ特有の不快臭・オフフレーバーに対する軽減の手法及び軽減資材の製造方法について種々提案されている。しかし、軽減資材の原料としてエンドウタンパク質を使用するものは提案されていない。
【0011】
エンドウタンパク質に関しては、エンドウタンパク質の酵素分解によるプリン体含有量低減を目的としたエンドウタンパク質酵素分解物の製造方法についての提案が行われている(特許文献8)。しかし、この文献では、食品が持つ特有の不快臭・オフフレーバーに対するエンドウタンパク質酵素分解物自体の軽減効果についての言及や、示唆は行われていない。
【0012】
本願発明者は、食品が持つ特有の不快臭・オフフレーバーに対する軽減資材の原料としてエンドウタンパク質を使用することにより、大豆の不快臭(主にHexanal香気)、すなわち豆臭に対する優れた軽減効果を発揮できるという新規な知見に基づいて、エンドウタンパク質を原料に使用した豆臭軽減資材とその製造方法を開発したものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、大豆特有の不快臭(主にHexanal香気)、すなわち豆臭を軽減する新たな豆臭軽減資材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】大豆を主原料としている食品(すなわち、水を除く、使用されている各原材料の重量で大豆又は大豆製品が最も大きい食品)の一例として焼売餡を使用し、本発明の一実施形態に係る豆臭軽減資材の豆臭に対する軽減効果検討試験を行った際に大豆を主原料としている食品の例として使用した焼売餡のレシピ。
【
図2】本発明の実施形態に係る豆臭軽減資材の豆臭に対する軽減効果検討を官能評価試験で行った結果を示すグラフ。
【
図3】官能評価試験に供した各試料について実施した機器分析による大豆肉のHexanal香気減少効果、すなわち、Hexanal香気軽減効果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る豆臭軽減資材は、エンドウタンパク質酵素分解物からなるものである。これは、エンドウタンパク質をタンパク質分解酵素によって分解した物である。
【0016】
前記におけるエンドウタンパク質は、エンドウ(Pisum SativumL)から抽出したもので、タンパク質を主成分にしている。
【0017】
このようなエンドウタンパク質は、例えば、エンドウ(Pisum SativumL)を粉砕し、これに水性溶媒を添加して浸漬し、抽出して得ることができる。
【0018】
前記水性溶媒は、エンドウタンパク質を混濁することができるものであれば、特に限られない。例えば、水、又は水とアルコールの混合物であってもよい。
【0019】
エンドウ(Pisum SativumL)の粉砕物を水性溶媒に浸漬し、エンドウタンパク質を抽出する工程は、特に限られず、エンドウタンパク質を抽出できる浸漬、抽出工程であれば従来公知の種々の方法を採用することができる。
【0020】
なお、エンドウ(Pisum SativumL)からエンドウタンパク質を抽出する工程は上述したものに限られず、従来公知の種々の方法を採用できる。
【0021】
前記のようにして得たエンドウタンパク質をタンパク質分解酵素によって分解する工程としては、例えば、エンドウタンパク質を水性溶媒に分散してタンパク質分解酵素によって分解し、固液分離する方法で行うことができる。
【0022】
この場合に使用する水性溶媒は、エンドウ(Pisum SativumL)からエンドウタンパク質を抽出する工程として上記に例示した工程で採用されている水性溶媒と同様のものを使用することができる。すなわち、エンドウタンパク質を水性溶媒に分散する際に使用する水性溶媒は、エンドウタンパク質を混濁することができるものであれば、特に限られない。例えば、水、又は水とアルコールの混合物であってもよい。
【0023】
なお、上記に例示したように、エンドウ(Pisum SativumL)からエンドウタンパク質を抽出する工程を第一工程として行った後に、抽出後のエンドウタンパク質をタンパク質分解酵素によって分解するのではなく、市販されているエンドウタンパク質をタンパク質分解酵素によって分解することで、この実施形態のエンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材とすることもできる。
【0024】
前述のタンパク質分解酵素は、エンドウタンパク質を分解する活性を有するものであれば特に限られない。例えば、エンドウタンパク質をペプチド、アミノ酸まで分解するタンパク質分解酵素を好ましく使用することができる。
【0025】
この分解には、例えば、ペプチダーゼ及びペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解酵素の一方又は両方を好ましく使用することができる。
【0026】
エンドウタンパク質を上述したタンパク質分解酵素を用いて酵素分解する条件は、特に限られず、使用するタンパク質分解酵素が、分解活性を有する条件であればよい。例えば、酵素分解の温度は、10℃~90℃にすることができる。また、酵素分解の時間は、例えば、1分~1週間にすることができる。酵素の濃度は、例えば0.01%以上にすることができる。
【0027】
上述した工程における固液分離は、タンパク質分解酵素によって分解されなかったエンドウタンパク質を分離できれば方法は問わない。例えば、遠心分離または、沈殿物となっているタンパク質分解酵素によって分解されなかったエンドウタンパク質が通過しないフィルターでろ過する方法などで固液分離することができる。
【0028】
上述のようなエンドウタンパク質の酵素分解により得られるエンドウタンパク質酵素分解物からなる本実施形態の豆臭軽減資材は、前記エンドウタンパク質の酵素分解により生成されたペプチド及びアミノ酸を含む組成物である。
【0029】
本発明の一実施形態に係る上述したエンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材の形態は特に限られないが、例えば、粉末状又は液状であることとしてもよい。
【0030】
粉末状のエンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材は、液状のエンドウタンパク質酵素分解物を粉末化することで調製することもできる。この場合の粉末化は、液状のエンドウタンパク質酵素分解物を、賦形剤使用あるいはノーバインダーによって、乾燥機器、乾燥装置を用いて乾燥させることで行える。
【0031】
この粉末化の際に使用する上述の乾燥機器、乾燥装置は、液状のエンドウタンパク質酵素分解物を粉状に乾燥する機器、装置であれば特に限られない。例えば、スプレードライヤー、真空ベルト乾燥装置、ドラムドライヤー、真空ドラムドライヤーなどを使用することができる。
【0032】
また、この粉末化は種々の乾燥装置の適正に応じて賦形剤使用あるいはノーバインダーによって行うことができる。
【0033】
前述の賦形剤としては、食用に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、食塩(特級塩、食塩、並塩、白塩等)、澱粉(例えばコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉等)、加工澱粉(アルファー化澱粉、部分アルファー化澱粉、酸処理澱粉、酸化澱粉、酸素処理澱粉、酢酸澱粉、リン酸澱粉、コハク酸澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉等)、澱粉分解物(デキストリン、マルトデキストリン、粉飴等) 、糖類( 単糖( グルコース、フルクトース等) 、二糖( 例えば、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース等) 、オリゴ糖( セロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖等) 、糖アルコール( キシリトール、ソルビトール、ラクチトール、マルチトール等) 、還元糖化物等) 、食物繊維(例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グァーガム酵素分解物等)が挙げられる。
【0034】
この実施形態の豆臭軽減資材とする上述のエンドウタンパク質酵素分解物は、全窒素の割合を含有総固形分の割合で除した値が0.1以上であることが好ましい。
【0035】
例えば、以下のような場合にはいずれも全窒素の割合を含有総固形分の割合で除した値が0.1以上であるのでこの実施形態の豆臭軽減資材とすることができる。
【0036】
上述したエンドウタンパク質酵素分解物における含有総固形分の割合が40%で、上述したエンドウタンパク質酵素分解物における全窒素の割合が4%以上であるとき。
【0037】
上述したエンドウタンパク質酵素分解物における含有総固形分の割合が50%で、上述したエンドウタンパク質酵素分解物における全窒素の割合が5%以上であるとき。
【0038】
上述したエンドウタンパク質酵素分解物における含有総固形分の割合が30%で、上述したエンドウタンパク質酵素分解物における全窒素の割合が3%以上であるとき。
【0039】
なお、上述したように、粉末状のエンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材を調製する際に賦形剤を添加している場合、添加した賦形剤由来の固形分及び窒素分は、前述の豆臭軽減資材の含有総固形分・全窒素の内に計上しないこととする。
【0040】
この実施形態のエンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材は、そのまま単独で使用してもよいが、その他の成分を配合してもよい。その他の成分としては、賦形剤、添加物、各種飲食品素材を用いることが出来る。
配合する賦形剤としては、上述した粉末化の際に添加することを例示した種々の賦形剤を使用することができる。
【0041】
配合する添加物としては、特に限定されないが、例えば、アミノ酸(例えばL-グルタミン酸ナトリウム等のグルタミン酸塩、グリシン、DL-アラニン等)、核酸(例えば5′-イノシン酸二ナトリウム、5′-グアニル酸二ナトリウム等)、有機酸又はその塩(コハク酸二ナトリウム、コハク酸、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸カリウム、クエン酸カルシウム、酢酸等)、無機塩類(塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等)、乳化剤(例えばショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン等)、アルコール類、増粘剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、香料、pH調整剤等が挙げられる。
【0042】
配合する各種飲食品素材としては、特に限定されないが、例えば、タンパク質加水分解物、畜肉・魚介由来成分(チキンエキス、ポークエキス、ビーフエキス、かつおぶしエキス、かつおぶし粉末等)、野菜由来成分(野菜粉末、野菜エキス、しいたけエキス等)、果実由来成分(果汁、果汁粉末、果肉、果皮、果実エキス等)、海藻由来成分(昆布エキス、昆布粉末等)、油脂、香辛料、酵母エキス等が挙げられる。これらのその他の成分は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
なお、配合される上述のその他の成分(賦形剤、添加物、各種飲食品素材)由来の固形分及び窒素分は、前述の豆臭軽減資材の含有総固形分・全窒素の内に計上しないこととする。
【0044】
そこで、例えば、以下のような場合にはいずれも本実施形態の豆臭軽減資材とすることができる。
【0045】
上述したエンドウタンパク質酵素分解物における「賦形剤の固形分及び窒素分を除く」含有総固形分の割合が40%で、上述したエンドウタンパク質酵素分解物における全窒素の割合が4%以上であるとき。
【0046】
上述したエンドウタンパク質酵素分解物における「添加物の固形分及び窒素分を除く」含有総固形分の割合が40%で、上述したエンドウタンパク質酵素分解物における全窒素の割合が4%以上であるとき。
【0047】
上述したエンドウタンパク質酵素分解物における「飲食品素材の固形分及び窒素分を除く」含有総固形分の割合が40%で、上述したエンドウタンパク質酵素分解物における全窒素の割合が4%以上であるとき。
【0048】
この実施形態のエンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材は、大豆を主原料としている食品(すなわち、水を除く、使用されている各原材料の重量で大豆又は大豆製品が最も大きい食品)に対して使用することで、大豆の不快臭(主にHexanal香気)、すなわち、豆臭に対する軽減効果を発揮させることができる。
【0049】
この場合、上述した大豆を主原料としている食品に対して、この実施形態のエンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材を、豆臭軽減資材を構成するエンドウタンパク質酵素分解物の固形分が0.5質量%以上の割合で添加することが上述した軽減効果を発揮させる上で望ましい。
【0050】
上述した大豆を主原料としている食品に対して、この実施形態のエンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材を、豆臭軽減資材を構成するエンドウタンパク質酵素分解物の固形分が0.5質量%以上の割合になるように添加することで、大豆を主原料としている非添加の食品に比較して喫食時の大豆の風味の強さ及びHexanal相対量を低減させることができる。
【0051】
例えば、上述した大豆を主原料としている食品100gに対して、豆臭軽減資材(上述したこの実施形態のエンドウタンパク質酵素分解物)の固形分が50%であれば、1g(内、固形分は0.5gとなる)以上添加することが好ましい。また、上述した大豆を主原料としている食品100gに対して、豆臭軽減資材(上述したこの実施形態のエンドウタンパク質酵素分解物)の固形分が40%であれば、1.25g(内、固形分は0.5gとなる)以上添加することが好ましいということになる。
【0052】
以下、本発明の実施形態を更に詳しく説明するが、本発明は上述し、また、以下に説明する実施形態、実施例に限られるものでなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
【実施例0053】
2Lビーカーに100gのエンドウタンパク質粉末(商品名:S-80-A-1、YANTAI SHUANGTA FOOD CO.,LTD製)と5gのペプチダーゼ及びプロテアーゼを有するペプチダーゼ製剤(商品名:プロテアックス、天野エンザイム株式会社製)を配合し、水温50℃の水1400gを加水した。
【0054】
ビーカーを50℃に温度設定した恒温槽の湯につけ、撹拌機で撹拌しながら6時間酵素反応を行った。
【0055】
その後、90℃20分失活し、ろ紙(商品名:円形定性ろ紙 No.2、アドバンテック東洋株式会社製)で固液分離した。
【0056】
この分離液を総固形分34%まで減圧濃縮し、233g、総窒素4.5%の液状のエンドウタンパク質酵素分解物を得た。こうして、全窒素の割合を含有総固形分の割合で除した値が0.13である液状のエンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材の実施例を調製した。調製した豆臭軽減資材を構成するエンドウタンパク質酵素分解物の総固形分は、賦形剤等のその他の成分の添加は無しのため、固形分の計算をする必要はなく、そのまま34%である。
実施例1で得た液状のエンドウタンパク質酵素分解物に賦形剤として、でんぷん(ソフトスターチSF-930、三和澱粉工業株式会社製)を総固形分の45.5%、食塩(商品名:並塩、ナイカイ株式会社製)を総固形分の20%配合し、ディスク型噴霧乾燥機を用いて、熱風温度130℃、排風機温度90℃の乾燥条件で噴霧乾燥し、160g、総窒素4.6%の、粉末状のエンドウタンパク質酵素分解物からなる豆臭軽減資材の実施例を調製した。調整した、豆臭軽減資材を構成するエンドウタンパク質酵素分解部の総固形分は、34.5%である。
また、調製した食品に対して実施例1の軽減資材を、豆臭軽減資材を構成するエンドウタンパク質酵素分解物の固形分が0.5質量%の割合で添加したものを「液状資材添加群」とし、実施例2の軽減資材を粉末中の原料である実施例1のエンドウタンパク質酵素分解物が、調製した食品に対して0.5質量%になるように、調製した食品に対して添加したものを「粉末資材添加群」とした。液状資材添加群、粉末資材添加群のいずれでも、調製した食品に対してエンドウタンパク質酵素分解物の固形分が0.5%になるように1.5%質量の添加を行ったことになる。
このように大豆の風味の強さを低下させていたことから、実施例1で調製した液状のエンドウタンパク質酵素分解物、実施例2で調製した粉末状のエンドウタンパク質酵素分解物のいずれとも、大豆特有の不快臭、すなわち豆臭を軽減する豆臭軽減資材となることを確認できた。
このようにHexanal香気を減少させていること及び、非添加群と比較してHexanal相対量を低減させていたと認めることができたことから、実施例1で調製した液状のエンドウタンパク質酵素分解物、実施例2で調製した粉末状のエンドウタンパク質酵素分解物のいずれとも、大豆特有の不快臭(主にHexanal香気)、すなわち豆臭を軽減する豆臭軽減資材となることを確認できた。