(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135081
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】体温計用ケース
(51)【国際特許分類】
G01K 13/25 20210101AFI20230921BHJP
【FI】
G01K13/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040101
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507351883
【氏名又は名称】シチズン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 実花子
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加とケース厚み増大を抑えたケースとしながら、異なる外形の体温計を収納するとき、同じ向きに体温計を収納できる体温計用ケースを提供すること。
【解決手段】体温計を収納する体温計用ケース1であって、体温計用ケース1は、体温計の長さ方向の第1部位P1に当接又は近接して第1長さ方向の移動を規制する規制部13と、体温計の長さ方向に所定の可動範囲L内で移動可能であって、異なる外形の体温計のそれぞれに対して長さ方向の第2部位P2に当接又は近接して第1長さ方向と反対の第2長さ方向の移動を規制する可動規制部材40と、体温計を収納する体温計用ケース1の両側の側壁部12cの内面から体温計側に突出するように形成され、体温計の長さ方向に沿う可動規制部材40の移動を案内する一対の案内部14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体温計を収納する体温計用ケースであって、
前記体温計用ケースは、
前記体温計の長さ方向の第1部位に当接又は近接して第1長さ方向の移動を規制する規制部と、
前記体温計の長さ方向に所定の可動範囲内で移動可能であって、異なる外形の体温計のそれぞれに対して長さ方向の前記第2部位に当接又は近接して前記第1長さ方向と反対の第2長さ方向の移動を規制する可動規制部材と、
前記体温計を収納する前記体温計用ケースの両側の側壁部の内面から体温計側に突出するように形成され、前記体温計の長さ方向に沿う前記可動規制部材の移動を案内する一対の案内部と、を備える
ことを特徴とする体温計用ケース。
【請求項2】
前記体温計用ケースは、前記体温計を収納する底壁の内面に、前記可動規制部材の移動を前記所定の可動範囲に規制するストッパー凸部を有し、
前記ストッパー凸部は、前記可動範囲の外側に面する第1壁部が傾斜面に形成され、前記移動方向に対向する可動範囲の内側に面する第2壁部が、前記傾斜面よりも急勾配に形成され、
前記案内部は、前記ストッパー凸部を挟んで前記可動範囲の外側と内側を案内し、
前記可動規制部材は、前記ストッパー凸部を挟んで前記可動範囲の外側から内側に移動する際に、前記第1壁部に当接する面が、前記第1壁部と同方向に傾斜するテーパー面が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の体温計用ケース。
【請求項3】
前記異なる外形の体温計は、電子体温計と、前記電子体温計にアタッチメントが装着されたアタッチメント付き電子体温計であり、
前記第1部位は、前記体温計の後端部位であり、
前記第2部位は、前記体温計の本体部から検温部に向かって緩やかに縮小する形状による両肩形状部位であり、
前記可動規制部材は、前記体温計を載置する上面に、前記電子体温計の前記両肩形状部位と前記アタッチメント付き電子体温計の前記両肩形状部位との形状に合致する共通の位置決め形状凹部を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の体温計用ケース。
【請求項4】
前記体温計用ケースは、前記体温計を収納する底壁の内面に、前記電子体温計を収納するときに前記可動規制部材の固定位置を決める位置決め凸部を有し、
前記可動規制部材は、前記体温計用ケースの底壁の内面に対向する下面に、前記電子体温計又は前記アタッチメント付き電子体温計を載置するときのそれぞれの位置において、前記位置決め凸部に嵌合する第1ストッパー凹部と第2ストッパー凹部と、を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の体温計用ケース。
【請求項5】
前記ストッパー凸部と前記位置決め凸部は、前記体温計用ケースの底壁の内面の幅方向中心位置を通り長さ方向に延びる中心線上に並べて配置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の体温計用ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体温計用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子体温計を収納する体温計用ケースとしては、長手方向の中央部分に、長手方向の一端側を向く第1受け部と長手方向の他端側を向くとともに第1受け部とは形状が相違する第2受け部とを備える位置決め部を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された体温計用ケースは、位置決め部により検温部が長手方向の一端側を向く第1姿勢と、検温部が長手方向の他端側を向く第2姿勢とで、電子体温計を収納可能である。このため、使用者は電子体温計のみを収納するときと、アタッチメントを装着したアタッチメント付き電子体温計を収納するときとで体温計の収納方向を反対にしなければならない。よって、体温計の収納方向を間違えるとケースに入らないことがあることで、使用者は収納時に注意を払う必要がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、部品点数の増加とケース厚み増大を抑えたケースとしながら、異なる外形の体温計を収納するとき、同じ向きに体温計を収納できる体温計用ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、体温計を収納する体温計用ケースであって、前記体温計用ケースは、前記体温計の長さ方向の第1部位に当接又は近接して第1長さ方向の移動を規制する規制部と、前記体温計の長さ方向に所定の可動範囲内で移動可能であって、異なる外形の体温計のそれぞれに対して長さ方向の前記第2部位に当接又は近接して前記第1長さ方向と反対の第2長さ方向の移動を規制する可動規制部材と、前記体温計を収納する前記体温計用ケースの両側の側壁部の内面から体温計側に突出するように形成され、前記体温計の長さ方向に沿う前記可動規制部材の移動を案内する一対の案内部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の体温計用ケースによれば、部品点数の増加とケース厚み増大を抑えたケースとしながら、異なる外形の体温計を収納するとき、同じ向きに体温計を収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の体温計用ケースの蓋体を開いた状態を示す斜視図である。
【
図2】実施例1の体温計用ケースの蓋体を開いた状態を示す平面図である。
【
図3】
図2のA-A線によるケース本体部と可動規制部材を示す断面図である。
【
図4】電子体温計のみを収納するときの
図2のB-B線によるケース本体部と可動規制部材を示す断面図である。
【
図5】アタッチメント付き電子体温計を収納するときの
図2のB-B線によるケース本体部と可動規制部材を示す断面図である。
【
図6】体温計用ケースの蓋体を開いた状態での可動規制部材及びその周りの構成を示す拡大平面図である。
【
図8】アタッチメント付き電子体温計を示す平面図である。
【
図9】実施例1の体温計用ケースに電子体温計のみを収納した状態を示す平面図である。
【
図10】実施例1の体温計用ケースにアタッチメント付き電子体温計を収納した状態を示す平面図である。
【
図11】可動規制部材の案内部がケース本体部の底壁に有する比較例のケース本体部と可動規制部材を示す断面図である。
【
図12】可動規制部材を案内部に取り付けるときの様子を示す取り付け時作用説明図である。
【
図14】可動規制部材を案内部に取り付けられた後の様子を示す取り付け後作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の体温計用ケースを実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例0010】
実施例1においては、異なる外形の体温計として、電子体温計のみとアタッチメント付き電子体温計を収納する用途に適用される体温計用ケースを例にとる。以下、
図1~
図8を参照して実施例1の体温計用ケースの構成を説明する。
【0011】
体温計用ケース1は、ケース本体10と、蓋体20と、ヒンジ30と、可動規制部材40と、を備えている。体温計用ケース1に収納される体温計として、電子体温計50と、アタッチメント60が装着されたアタッチメント付き電子体温計70と、を備えている。ここで、ケース本体10と蓋体20とヒンジ30とは、半透明の合成樹脂(例えば、ポリプロピレン等)を素材とし、樹脂成形により一体に構成される。可動規制部材40は、合成樹脂を素材としてケース本体10等とは別に成形された部材であり、ケース本体10に組み込まれる。
【0012】
ケース本体10は、
図1及び
図2に示すように、底壁11と、底壁11の周縁に一体に連なる周壁12と、を備えた細長い皿状となっており、長手方向に垂直な方向に開口している。周壁12のケース本体10の長手方向の一端側の部分は第1端壁部12aとなっており、周壁12のケース本体10の長手方向の他端側の部分は第2端壁部12bとなっている。また、周壁12の第1端壁部12aと第2端壁部12bとの間の部分は、一対の側壁部12cにより繋いでいる。
【0013】
ケース本体10は、規制部13と、案内部14と、仕切り部15と、ストッパー凸部16と、位置決め凸部17と、マーキング18と、を有している。
【0014】
規制部13は、
図1及び
図2に示すように、体温計の長さ方向の第1部位P1に当接又は近接して第1長さ方向の移動を規制する。ここで、「体温計」とは、電子体温計50のみとアタッチメント付き電子体温計70との両方の意味である。「体温計の長さ方向」とは、
図2の矢印に示す図面左右方向をいい、第1長さ方向は
図2の矢印右方向をいう。「第1部位P1」とは、体温計の後端部位をいう(
図7及び
図8を参照)。
【0015】
規制部13は、両側の側壁部12cの内面から体温計側に突出するように形成された第1規制板131及び第2規制板132と、第1端壁部12aの内面から長さ方向に突出するように形成された第3規制板133により構成される。第1規制板131,第2規制板132,第3規制板133には、それぞれ電子体温計50の第1部位P1に当接又は近接させる1/4円形状の切り欠き凹面131a,132a,133aが形成されている。
【0016】
案内部14は、電子体温計50を収納するケース本体10の両側の側壁部12cの内面から体温計側に突出するように一対形成され、可動規制部材40の長さ方向に沿う移動を案内する。案内部14は、底壁11の内面から所定間隔を介し、底壁11とは平行に配置されるスライド案内部14aと、スライド案内部14aの第2長さ方向の端部位置から底壁11の内面に向かって深さ方向に配置されるスライド阻止部14bと、を有して構成される。案内部14は、
図3に示すように、底壁11と側壁部12cとスライド案内部14aとによる3方向内面により囲まれた方形溝を、可動規制部材40のスライド移動を案内するスライドガイド面とする。スライド案内部14aは、
図5に示すように、ストッパー凸部16を挟んで可動規制部材40の可動範囲L(
図4を参照)の外側と可動範囲の内側を案内する長さに設定される。スライド案内部14aのうち可動範囲Lの外側を案内する延長部分14a’は、可動規制部材40を案内部14に取り付けるときの案内を補助する案内補助部としての機能を発揮する。
【0017】
仕切り部15は、電子体温計50を収納したときに挟持部52のうち検温部53に近い部位が配置される位置に設けられ、底壁11と両側の側壁部12cの内面から体温計側に突出し、ケース本体10の内側空間を長さ方向に直交する幅方向に仕切る。仕切り部15には、
図1及び
図3に示すように、電子体温計50を収納するときに挟持部52及び検温部53が、隙間を介して中央部に位置する円弧状凹部15aが形成される。
【0018】
ストッパー凸部16は、ケース本体10の底壁11の内面から上方に向かって突出して設けられ、可動規制部材40の移動を、
図4に示す可動範囲Lに規制する。ストッパー凸部16は、可動範囲Lの外側に面する第1壁部16aが傾斜面に形成され、移動方向に対向する可動範囲Lの内側に面する第2壁部16bが、傾斜面よりも急勾配(底壁11からほぼ垂直に立ち上がる面)に形成される。
【0019】
位置決め凸部17は、ケース本体10の底壁11の内面から上方に向かって突出して設けられ、可動規制部材40を2箇所の位置で位置決め固定する。位置決め凸部17は、短円柱形状であり、2箇所の位置とは、
図4に示すように、電子体温計50のみを収納するときに可動規制部材40を固定する位置と、
図5に示すように、アタッチメント付き電子体温計70を収納するときに可動規制部材40を固定する位置である。そして、ストッパー凸部16と位置決め凸部17は、
図6に示すように、ケース本体10の底壁11の内面の幅方向中心位置を通り長さ方向に延びる中心線CL上に並べて配置されている。
【0020】
マーキング18は、
図1及び
図2に示すように、ケース本体10の底壁11のうち可動規制部材40を挟んだ位置に形成され、第1マーキング181と第2マーキング182とを有する。第1マーキング181は、電子体温計50のみを収納するときの姿勢を示す。第2マーキング182は、アタッチメント付き電子体温計70を収納するときの姿勢を示す。第1マーキング181と第2マーキング182については、ケース本体10の底壁11の内面への樹脂成形により形状表現した例を示しているが、例えば、ケース本体10の底壁11の裏面への樹脂成形により形状表現する例としても良いし、また、底壁11の内面又は裏面に、印刷、刻印等で設ける例としても良い。
【0021】
蓋体20は、天壁21と天壁21の周縁に一体に連なる周壁22とを備え、ケース本体10に対応した細長い形状となっている。蓋体20はヒンジ30によりケース本体10の一方の側壁部12cに一体に連結され、ヒンジ30を中心としてケース本体10に対して回動自在となっている。蓋体20は、
図1に示すように、ケース本体10の開口を開放するように開くことができるとともに、周壁22の端部がケース本体10の周壁12の端部に係合する位置にまで回動してケース本体10の開口を閉塞するように閉じることができる。なお、蓋体20が閉位置にまで回動し、ケース本体10に設けられたフック部19を蓋体20に設けられた係合溝部23に係合させると、蓋体20は閉位置に保持される。
【0022】
可動規制部材40は、体温計の長さ方向に所定の可動範囲L内で移動可能であって、異なる外形の体温計のそれぞれに対して長さ方向の第2部位P2に当接又は近接して第1長さ方向と反対の第2長さ方向の移動を規制する。ここで、「体温計」とは、電子体温計50のみとアタッチメント付き電子体温計70との両方の意味である。「体温計の長さ方向」とは、
図2の矢印に示す図面左右方向をいい、第2長さ方向は
図2の矢印左方向をいう。「第2部位P2」とは、電子体温計50の本体部51から検温部53に向かって緩やかに縮小する形状による両肩形状部位と、アタッチメント付き電子体温計70の両肩形状部位と、をいう(
図7及び
図8を参照)。
【0023】
可動規制部材40の上面には、電子体温計50とアタッチメント付き電子体温計70の第2部位P2の両肩形状に合致する形状による共通の位置決め形状凹部41を有する。位置決め形状凹部41は、第2部位P2の体温計平面形状に合致させた体温計載置部41aと、体温計載置部41aの両側から第2部位P2の体温計側面形状に沿って上方の延びる体温計挟持部41bと、を有する。体温計載置部41aは、
図4及び
図5に示すように、第2長さ方向に向かって緩やかな上り勾配による傾斜角度を有する。
【0024】
可動規制部材40の下面には、電子体温計50のみとアタッチメント付き電子体温計70を載置するときのそれぞれの位置において、ケース本体10側に設けられた位置決め凸部17に嵌合する第1ストッパー凹部42と第2ストッパー凹部43と、を有する。第1ストッパー凹部42は、
図4に示すように、電子体温計50のみを載置するときの位置において、ケース本体10側に設けられた位置決め凸部17に嵌合する。第2ストッパー凹部43は、
図5に示すように、アタッチメント付き電子体温計70を載置するときの位置において、ケース本体10側に設けられた位置決め凸部17に嵌合する。
【0025】
可動規制部材40の第2長さ方向側の端面下部には、ストッパー凸部16を挟んで可動範囲Lの外側から内側に移動する際に、第1壁部16aに当接する面が、第1壁部16aと同方向に傾斜するテーパー面44が形成されている。一方、可動規制部材40の第1長さ方向側の端面下部には、取付け状態の可動規制部材40が第1長さ方向へ移動する際に、ストッパー凸部16の第2壁部16bに当接する面が、第2壁部16bと同様にほぼ垂直な角度によるストッパー面45が形成されている。
【0026】
可動規制部材40の長さ方向に直交する両端下部には、案内部14に対してスライド移動可能なスライド部46が幅方向に突出して形成されている。スライド部46は、
図3に示すように、底壁11と側壁部12cとスライド案内部14aとによる3方向内面により囲まれた方形溝に嵌合する。さらに、スライド部46の外側両端面には、
図6に示すように、長さ方向に離れた2箇所位置(両端面で合計4箇所位置)に半円弧状のスライド案内突起47が形成されている。スライド案内突起47は、一対の案内部14によるガイド面(側壁部12cの内面)に対して可動規制部材40が4点による点接触にて支持される4点支持状態を作り出す。よって、可動規制部材40のスライド移動時、可動規制部材40が斜めに傾く姿勢になることや移動抵抗が増大することが抑えられ、安定した姿勢によりスムーズにスライド移動ができる。
【0027】
電子体温計50は、
図7に示すように、生体の体温を測定するものであり、幅及び厚みよりも長手方向(
図7において左右方向)の長さが長い細長い形状を有している。電子体温計50は、長手方向に沿って延びる細長く薄い箱型の本体部51と、本体部51の長手方向の一端側に一体に連なる本体部51よりも細い挟持部52と、を備えている。本体部51は、体温測定時に把持される部分であり、第1部位P1を備えた丸み帯びた端面形状となっている。挟持部52は、体温測定時に被測定者の腋下に挟まれる部分であり、第1部位P1を備えた本体部51から長手方向の一方側(
図1中において左側)に向けて徐々に幅及び厚みを狭めながら延びる第2部位P2を備えた先細形状となっている。
【0028】
電子体温計50の挟持部52の先端(電子体温計50の先端でもある)には、検温部53が設けられている。検温部53は、例えばサーミスタ等の感温素子をセンサキャップで覆った構成となっており、体温測定時に挟持部52とともに被測定者の腋下に挟まれて被測定者の体温を検出することができる。検温部53が検出した被測定者の体温は、本体部51に設けられた液晶パネル等の表示部54に表示される。なお、本体部51には制御基板等の各種機器や電池等が収納されるとともに、測定開始等の操作を行うための操作ボタン55が設けられている。
【0029】
アタッチメント60は、柔軟なシリコーン樹脂や合成ゴムで形成されている。アタッチメント60は、
図8に示すように、電子体温計50の本体部51を覆う本体部被覆部61と、挟持部52を覆う挟持部被覆部62とを一体に有している。本体部被覆部61は窓部61aを有し、電子体温計50に装着したとき、表示部54と操作ボタン55は窓部61aに配置されて外部からの視認ないし操作が可能となっている。挟持部被覆部62は、電子体温計50に装着したとき、挟持部52を覆うことで、電子体温計50の体温測定時に被測定者が腋下へ挟持する部分の太さを太くするとともに当該部分を弾性変形可能としている。
【0030】
アタッチメント付き電子体温計70は、電子体温計50の外周にアタッチメント60を装着したものをいう。このように、電子体温計50の外周にアタッチメント60を装着することで、被測定者が電子体温計50を腋下へ保持し易くなり、痩せ気味の被測定者や筋力が低下した被測定者等であっても安定した検温が可能になる。
【0031】
次に、
図9及び
図10を参照して電子体温計50とアタッチメント付き電子体温計70の体温計用ケース1への収納作用を説明する。
【0032】
上記引用文献1の先行技術では、電子体温計のみとアタッチメント付き電子体温計の体温計用ケースへの収納を可能としている。しかし、電子体温計のみを収納するときの収納方向と、アタッチメント付き電子体温計を収納するときの収納方向とが反対方向である。よって、体温計の収納方向を間違えるとケースに入らないことがあることで、使用者は収納時に注意を払う必要がある。
【0033】
これに対し、実施例1では、ケース本体10に、体温計の第1部位P1に当接又は近接して第1長さ方向の移動を規制する規制部13と、案内部14に対して可動範囲L内で移動可能であって、体温計の第2部位P2に当接又は近接して第2長さ方向の移動を規制する可動規制部材40と、を備える構成を採用している。
【0034】
したがって、電子体温計50のみを体温計用ケース1に収納するときは、
図4に示すように、可動規制部材40を、ケース本体10側の位置決め凸部17に対して第1ストッパー凹部42が嵌合する位置に配置する。そして、電子体温計50の第1部位P1を規制部13に載せ、電子体温計50の第2部位P2を可動規制部材40の位置決め形状凹部41に載せ、電子体温計50の先端部分を仕切り部15の円弧状凹部15aの位置に配置する。この収納操作を行うことで、電子体温計50は、体温計用ケース1への収納時、第1部位P1と第2部位P2の2箇所の位置により、長さ方向への移動が抑えられて位置決めされる。よって、電子体温計50を、
図9に示すように、検温部53が第2長さ方向を向く姿勢でケース本体10に収納することができる。
【0035】
一方、アタッチメント付き電子体温計70を体温計用ケース1に収納するときは、可動規制部材40を、第2の長さ方向側へと移動させる。つまり、位置決め凸部17に対して第1ストッパー凹部42が嵌合する
図4に示す位置から、位置決め凸部17に対して第2ストッパー凹部43が嵌合する
図5に示す位置まで移動し、移動した位置に可動規制部材40を配置する。そして、アタッチメント付き電子体温計70の第1部位P1を規制部13に載せ、アタッチメント付き電子体温計70の第2部位P2を可動規制部材40の位置決め形状凹部41に載せ、電子体温計50の先端部分を仕切り部15の円弧状凹部15aの位置に配置する。この収納操作を行うことで、アタッチメント付き電子体温計70は、体温計用ケース1への収納時、第1部位P1と第2部位P2の2箇所の位置により、長さ方向への移動が抑えられて位置決めされる。よって、アタッチメント付き電子体温計70を、
図10に示すように、検温部53が第2長さ方向を向く姿勢でケース本体10に収納することができる。
【0036】
このように、可動規制部材40の位置を変えるだけで、電子体温計50のみを体温計用ケース1に収納するときと、アタッチメント付き電子体温計70を体温計用ケース1に収納するときとで同じ向きに体温計を収納することができる。この結果、使用者は収納時に注意を払う必要がない。加えて、同じ向きに体温計を収納する構成にするとき、ケース本体10に対して部品点数として可動規制部材40を1点追加するだけで良く、部品点数の増加も最小限に抑えられる。
【0037】
次に、
図11を参照して体温計用ケース1のケース本体10の厚み増大抑制作用を説明する。
【0038】
可動部材の構造としては、例えば、プリンタの用紙トレイの仕切り板等にみられるように、可動部材を底壁に対して移動可能にするスライド構造が知られている。このスライド構造を、可動規制部材に転用したものを比較例とすると、
図11に示すように、ケース本体の底壁に可動規制部材のスライド足が入るレール穴を開けることになる。そして、スライド足としては、例えば、レール穴を貫通する貫通足部と、貫通足部の下端部から外方に折り曲げる外方折曲部と、を有する構成とされる。このため、スライド足の外方折曲部の厚み分が底壁の外面から突出するため、底壁からの突出を抑えるにはケース本体の底壁の厚みを厚くする必要がある。よって、比較例の場合には、ケース本体の厚みが増大するとともに、ケース本体の底壁にレール穴を開けることで、隙間に手が挟まり易いし、外部からのゴミが入り易くなる。
【0039】
これに対し、実施例1では、体温計の長さ方向に沿う可動規制部材40の移動を案内する一対の案内部14を、体温計を収納するケース本体10の両側の側壁部12cの内面から体温計側に突出するように形成する構成(
図3を参照)を採用している。
【0040】
したがって、案内部14が、ケース本体10のうち体温計が載置される面ではなく、両側の側壁部12cの内面から体温計側に突出するように形成したことで、案内部を底壁に設ける
図11に示す比較例に比べ、ケース本体10の厚みを薄く形成することができる。加えて、案内部14は、両側の側壁部12cの内面から体温計側に突出する構成であり、比較例のような開口部が形成されることがないため、隙間に手が挟まったり、外部からゴミが入ったりすることも防止できる。
【0041】
次に、
図12~
図15を参照して可動規制部材40の取り付け作用及び外れ防止作用を説明する。
【0042】
実施例1のケース本体10には、体温計を収納する底壁11の内面に、可動規制部材40の移動を所定の可動範囲Lに規制するストッパー凸部16を有する。ストッパー凸部16は、可動範囲Lの外側に面する第1壁部16aが傾斜面に形成され、移動方向に対向する可動範囲Lの内側に面する第2壁部16bが、傾斜面よりも急勾配に形成されている。一方、案内部14は、ストッパー凸部16を挟んで可動範囲Lの外側と内側を案内する。そして、可動規制部材40は、ストッパー凸部16を挟んで可動範囲Lの外側から内側に移動する際に、第1壁部16aに当接する面が、第1壁部16aと同方向に傾斜するようにテーパー面44が形成されている構成を採用している。
【0043】
よって、可動規制部材40を一対の案内部14に取り付けるときには、まず、可動規制部材40の一対の案内部14へ差し込むとき、スライド案内部14aのうち可動範囲Lの外側を案内する延長部分14a’によって、可動規制部材40の差し込み案内が補助される。そして、可動規制部材40の差し込み位置では、
図12及び
図13に示すように、可動規制部材40のテーパー面44が、ストッパー凸部16の第1壁部16aに緩勾配傾斜面により当接する。テーパー面44と第1壁部16aとの緩勾配傾斜面による当接状態において、可動規制部材40を第2長さ方向に押し込む力を加えると、ケース本体10と可動規制部材40の弾性変形を伴ってテーパー面44が第1壁部16aを乗り越える。その後、可動規制部材40に押し込み力を作用させると、可動規制部材40が第2長さ方向に移動し、可動規制部材40が一対の案内部14に容易に取り付けられる。
【0044】
一方、可動規制部材40を一対の案内部14から取り外そうとするときには、
図14及び
図15に示すように、可動規制部材40のストッパー面45が、ストッパー凸部16の第2壁部16bに急勾配傾斜面により当接(又は垂直面当接)する。ストッパー面45と第2壁部16bとの急勾配傾斜面による当接状態において、可動規制部材40を第1長さ方向に押し力を与えても、急勾配当接面(又は垂直面)からの大きな抵抗反力を受けるだけで、ストッパー面45が第2壁部16bを乗り越えることが抑えられる。
【0045】
このように、可動規制部材40を一対の案内部14に取り付けるときには、テーパー面44と第1壁部16aとの緩勾配傾斜当接により容易に取り付けられることで、可動規制部材40の案内部14への取り付け容易性を確保することができる。一方、可動規制部材40を一対の案内部14から取り外そうとするときには、ストッパー面45と第2壁部16bとの急勾配傾斜面による当接によって取り外しにくくすることで、可動規制部材40をケース本体10の一対の案内部14から簡単に外れるのを抑えることができる。このように、可動規制部材40が簡単に外れるのが抑えられる結果、可動規制部材40の誤飲防止機能が発揮されることになる。
【0046】
以上説明したように、実施例1の体温計用ケース1にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0047】
(1)体温計を収納する体温計用ケース1であって、体温計用ケース1は、体温計の長さ方向の第1部位P1に当接又は近接して第1長さ方向の移動を規制する規制部13と、体温計の長さ方向に所定の可動範囲L内で移動可能であって、異なる外形の体温計のそれぞれに対して長さ方向の第2部位P2に当接又は近接して第1長さ方向と反対の第2長さ方向の移動を規制する可動規制部材40と、体温計を収納する体温計用ケース1の両側の側壁部12cの内面から体温計側に突出するように形成され、体温計の長さ方向に沿う可動規制部材40の移動を案内する一対の案内部14と、を備える。このため、部品点数の増加とケース厚み増大を抑えたケースとしながら、異なる外形の体温計を収納するとき、同じ向きに体温計を収納できる体温計用ケース1を提供することができる。
【0048】
(2)体温計用ケース1は、体温計を収納する底壁11の内面に、可動規制部材40の移動を所定の可動範囲Lに規制するストッパー凸部16を有する。ストッパー凸部16は、可動範囲Lの外側に面する第1壁部16aが傾斜面に形成され、移動方向に対向する可動範囲Lの内側に面する第2壁部16bが、傾斜面よりも急勾配に形成される。案内部14は、ストッパー凸部16を挟んで可動範囲の外側と内側を案内する。可動規制部材40は、ストッパー凸部16を挟んで可動範囲の外側から内側に移動する際に、第1壁部16aに当接する面が、第1壁部16aと同方向に傾斜するテーパー面44が形成されている。このため、可動規制部材40を一対の案内部14に容易に取り付ける取付け容易性を確保しながらも、可動規制部材40を体温計用ケース1の一対の案内部14から簡単に取り外すのを抑制することができる。この可動規制部材40の外れ抑制効果により、乳幼児等が可動規制部材40を誤飲するのを防止できる。
【0049】
(3)異なる外形の体温計は、電子体温計50と、電子体温計50にアタッチメント60が装着されたアタッチメント付き電子体温計70である。第1部位P1は、体温計の後端部位であり、第2部位P2は、体温計の本体部51から検温部53に向かって緩やかに縮小する形状による両肩形状部位である。可動規制部材40は、体温計を載置する上面に、電子体温計50の両肩形状部位とアタッチメント付き電子体温計70の両肩形状部位との形状に合致する共通の位置決め形状凹部41を有する。このため、部品点数の増加とケース厚み増大を抑えたケースとしながら、電子体温計50と、アタッチメント付き電子体温計70と、を同じ向きに整然と収納することができる。
【0050】
(4)体温計用ケース1は、体温計を収納する底壁11の内面に、電子体温計50を収納するときに可動規制部材40の固定位置を決める位置決め凸部17を有する。可動規制部材40は、体温計用ケース1の底壁11の内面に対向する下面に、電子体温計50又はアタッチメント付き電子体温計70を載置するときのそれぞれの位置において、位置決め凸部17に嵌合する第1ストッパー凹部42と第2ストッパー凹部43と、を有する。このため、電子体温計50又はアタッチメント付き電子体温計70を体温計用ケース1へ収納するとき、体温計が何れのであっても第1部位P1と第2部位P2の2箇所の固定位置によって、長さ方向への移動を抑えた位置決めをすることができる。
【0051】
(5)ストッパー凸部16と位置決め凸部17は、体温計用ケース1の底壁11の内面の幅方向中心位置を通り長さ方向に延びる中心線CL上に並べて配置されている。このため、底壁11の内面にストッパー凸部16と位置決め凸部17を有するケース本体10を、容易な樹脂成形加工により製造することができる。すなわち、体温計用ケース1は、複数に分割した成形金型を用いる樹脂成形加工により製造される。このとき、ストッパー凸部16と位置決め凸部17を中心線CL上に並べて配置することで、一対の案内部14から最も離れた位置に形成することになる。これによって、複数に分割した成形金型は、一対の案内部14からの寸法余裕代によりストッパー凸部16と位置決め凸部17を形成するための凹部を設けた主成形型と、一対の案内部14を形成するための分割成形型と、による構成になる。よって、型抜き工程は、底壁11に対して垂直方向に型抜きする主成形型の型抜き工程と、底壁11に対して水平方向に型抜きする分割成形型の型抜き工程と、により容易に行えることによる。
【0052】
以上、本発明の体温計用ケースを、実施例1に基づいて説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0053】
実施例1では、異なる外形の体温計として、電子体温計50と、電子体温計50にアタッチメント60が装着されたアタッチメント付き電子体温計70の例を示した。しかし、異なる外形の体温計としては、電子体温計とアタッチメント付き電子体温計の例に限られるものではない。例えば、電子体温計の幅は同じであるが、全長が長い大人向け電子体温計と、大人向け電子体温計より全長を短くした子供向け電子体温計の例であっても良い。また、電子体温計の長さは同じであるが、本体部の幅が広幅の電子体温計と、狭幅の電子体温計の例であっても良い。また、電子体温計の幅と長さを異ならせた外径を持つものであっても良い。さらに、異なる外形の体温計として、2種類の体温計に限られず、3種類以上の体温計であっても良い。
【0054】
実施例1では、第1部位P1を体温計の後端部位とし、第2部位P2を体温計の本体部51から検温部53に向かって緩やかに縮小する形状による両肩形状部位とする例を示した。しかし、第1部位と第2部位については、実施例1の後端部位と両肩形状部位とに限られず、電子体温計の全長方向において所定の距離を介して離れた位置の2箇所の部位であって、体温計の移動を抑えて固定できる部位であれば良い。
【0055】
実施例1では、可動規制部材40として、体温計を載置する上面に、電子体温計50の両肩形状部位とアタッチメント付き電子体温計70の両肩形状部位との形状に合致する共通の位置決め形状凹部41を有する例を示した。しかし、可動規制部材としては、実施例1の位置決め形状凹部の形状に限定されない。例えば、第2部位の形状が両肩形状と異なる場合は、異なる形状に合致し、体温計の移動を規制する形状であっても良い。また、異なる形状に対して部分的に合致し、体温計の移動を規制する形状であっても良い。体温計の移動を規制する形状としても、両肩形状に限らず、段差形状や凹部形状や溝部形状等であっても良い。
【0056】
実施例1では、体温計用ケース1として、ケース本体10に蓋体20がヒンジ30により開閉可能な構成を示した。しかし、体温計用ケースとしては、この構成に限られるものではない。例えば、電子体温計が収納される部分を、覆う閉状態と覆わない開状態とにできる構成であれば、ヒンジを用いる蓋体以外の構成を用いてもよい。
【0057】
実施例1では、規制部13と可動規制部材40とを用い、電子体温計50とアタッチメント付き電子体温計70を、第1部位P1と第2部位P2との2箇所の位置での移動規制により位置決め固定状態にする例を示した。しかし、異なる外形の体温計を、3箇所以上の位置での移動規制により位置決め固定状態にする例としてもよい。また、規制部や可動規制部材を、体温計が移動しようとすると、適度な摩擦を生じて移動規制するように構成し、無段階に設定することが可能な位置での移動規制により位置決め固定状態にする例としてもよい。
【0058】
実施例1では、体温計用ケース1として、ケース本体10に蓋体20が開閉可能な構成を示したが、これに限らず、ケース本体10の電子体温計50が収納される部分を、覆う状態と覆わない状態とにできれば、ヒンジ30を用いた蓋体20以外の構成を用いてもよい。