(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135087
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ノズル開度制御装置
(51)【国際特許分類】
F02B 37/12 20060101AFI20230921BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20230921BHJP
F02B 37/24 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
F02B37/12 302D
F02D29/02 331
F02B37/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040111
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 一輝
【テーマコード(参考)】
3G005
3G093
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA37
3G005GA04
3G005GB86
3G005GD12
3G005JB09
3G005JB14
3G093BA19
3G093CA04
3G093DB12
3G093DB15
3G093EA14
3G093FB01
3G093FB02
(57)【要約】
【課題】燃費の悪化を抑制する。
【解決手段】車両2に搭載された可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を制御するノズル開度制御装置1は、車両2のエンジン6がアイドリング状態であるか否かを判定するアイドリング状態判定部11と、車両2が直ぐに発進できない長期停車状態であるか否かを判定する長期停車状態判定部14と、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を制御するノズル開度制御部15と、を備え、ノズル開度制御部15は、アイドリング状態判定部11によりエンジン6がアイドリング状態であると判定され、且つ、長期停車状態判定部14により車両が長期停車状態であると判定された場合、ノズル開度を大きくする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された可変ノズルターボチャージャのノズル開度を制御するノズル開度制御装置であって、
前記車両のエンジンがアイドリング状態であるか否かを判定するアイドリング状態判定部と、
前記車両が直ぐに発進できない長期停車状態であるか否かを判定する長期停車状態判定部と、
前記可変ノズルターボチャージャの前記ノズル開度を制御するノズル開度制御部と、を備え、
前記ノズル開度制御部は、前記アイドリング状態判定部により前記エンジンが前記アイドリング状態であると判定され、且つ、前記長期停車状態判定部により前記車両が前記長期停車状態であると判定された場合、前記ノズル開度を大きくする、
ノズル開度制御装置。
【請求項2】
前記長期停車状態判定部は、前記車両のシフトポジションがパーキングポジションである場合に、前記車両が前記長期停車状態であると判定する、
請求項1に記載のノズル開度制御装置。
【請求項3】
前記長期停車状態判定部は、前記車両のパーキングブレーキが作動している場合に、前記車両が前記長期停車状態であると判定する、
請求項1又は2に記載のノズル開度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された可変ノズルターボチャージャのノズル開度を制御するノズル開度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載されるターボチャージャとして、タービンに流れ込む排気ガスの流速を可変とするための可変ノズルを備える可変ノズルターボチャージャが知られている(例えば、特許文献1参照)。可変ノズルターボチャージャが搭載された車両では、エンジンがアイドリング状態等の低回転である場合、次の加速に備えるべく、可変ノズルターボチャージャのノズル開度を小さくしてタービンに流れ込む排気ガスの流速を上げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、可変ノズルターボチャージャのノズル開度を小さくすると、ポンプ損失が増加するため、燃費が悪化するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、燃費の悪化を抑制することができるノズル開度制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るノズル開度制御装置は、車両に搭載された可変ノズルターボチャージャのノズル開度を制御するノズル開度制御装置であって、車両のエンジンがアイドリング状態であるか否かを判定するアイドリング状態判定部と、車両が直ぐに発進できない長期停車状態であるか否かを判定する長期停車状態判定部と、可変ノズルターボチャージャのノズル開度を制御するノズル開度制御部と、を備え、ノズル開度制御部は、アイドリング状態判定部によりエンジンがアイドリング状態であると判定され、且つ、長期停車状態判定部により車両が長期停車状態であると判定された場合、ノズル開度を大きくする。
【0007】
エンジンがアイドリング状態であるとともに、車両が長期停車状態である場合は、次の加速に備える必要性が低い。そこで、このノズル開度制御装置では、エンジンがアイドリング状態であり、且つ、車両が長期停車状態である場合に、可変ノズルターボチャージャのノズル開度を大きくする。これにより、ポンプ損失が低減されるため、燃費の悪化を抑制することができる。
【0008】
長期停車状態判定部は、車両のシフトポジションがパーキングポジションである場合に、車両が長期停車状態であると判定してもよい。車両のシフトポジションがパーキングポジションである場合は、ドライバは車両を直ぐに発進させないと考えられる。そこで、このノズル開度制御装置では、車両のシフトポジションがパーキングポジションである場合に車両が長期停車状態であると判定することで、長期停車状態を適切に判定することができる。
【0009】
長期停車状態判定部は、車両のパーキングブレーキが作動している場合に、車両が長期停車状態であると判定してもよい。車両のパーキングブレーキが作動している場合は、ドライバは車両を直ぐに発進させないと考えられる。そこで、このノズル開度制御装置では、車両のパーキングブレーキが作動している場合に車両が長期停車状態であると判定することで、長期停車状態を適切に判定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、燃費の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るノズル開度制御装置を示すブロック構成図である。
【
図2】実施形態に係るノズル開度制御装置が搭載された車両のエンジン回りを示す模式図である。
【
図3】ノズル開度とポンプ損失との関係の一例を示すグラフである。
【
図4】ノズル開度と燃料消費量との関係の一例を示すグラフである。
【
図5】ノズル開度制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係るノズル開度制御装置1を示すブロック構成図である。
図2は、実施形態に係るノズル開度制御装置1が搭載された車両2のエンジン6回りを示す模式図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るノズル開度制御装置1は、車両2に搭載された可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を制御する。ノズル開度制御装置1は、可変ノズルターボチャージャ3とともに車両2に搭載されている。可変ノズルターボチャージャ3は、タービン4に流れ込む排気ガスの流速を可変とするための可変ノズル5を備えるターボチャージャである。
【0014】
ノズル開度制御装置1は、例えば、CPU(Central ProcessingUnit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する電子制御ユニット(ECU:ElectronicControl Unit)である。ノズル開度制御装置1では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、各種の制御を実行する。ノズル開度制御装置1は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよく、複数の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。
【0015】
ノズル開度制御装置1は、アイドリング状態判定部11と、シフトポジション検出部12と、パーキングブレーキ作動検出部13と、長期停車状態判定部14と、ノズル開度制御部15と、を備える。
【0016】
アイドリング状態判定部11は、車両2のエンジン6がアイドリング状態であるか否かを判定する。エンジン6がアイドリング状態であるか否かは、例えば、エンジン6の燃料噴射制御を行うエンジンECUの制御情報に基づいて判定することができる。
【0017】
シフトポジション検出部12は、車両2のシフトポジションを検出する。シフトポジション検出部12は、シフトポジションとして、パーキングポジション、ニュートラルポジション、ドライブポジション、リバースポジション等を検出する。シフトポジションは、例えば、シフトポジションを検出するシフトポジションセンサの検出結果に基づいて検出することができる。
【0018】
パーキングブレーキ作動検出部13は、車両2のパーキングブレーキ(不図示)の作動状態を検出する。パーキングブレーキ作動検出部13は、パーキングブレーキの作動状態として、パーキングブレーキが作動している状態、及びパーキングブレーキが作動していない状態を検出する。パーキングブレーキの作動状態は、例えば、パーキングブレーキの作動状態を検出するブレーキセンサの検出結果に基づいて検出することができる。
【0019】
長期停車状態判定部14は、車両2が直ぐに発進できない長期停車状態であるか否かを判定する。長期停車状態には、車両2のシフトポジションがパーキングポジションになっている状態、車両2のパーキングブレーキが作動している状態等が含まれる。車両2のシフトポジションがパーキングポジションになっている状態では、ドライバは、フットブレーキを踏んでシフトポジションをパーキングポジションからドライブポジションに変更する操作を行わないと、車両2を発進させることができない。また、車両2のパーキングブレーキが作動している状態では、ドライバは、パーキングブレーキを解除する操作を行わないと、車両2を発進させることができない。
【0020】
そこで、長期停車状態判定部14は、例えば、シフトポジション検出部12により車両2のシフトポジションがパーキングポジションであることが検出された場合、又は、パーキングブレーキ作動検出部13により車両2のパーキングブレーキが作動していることが検出された場合に、車両2が長期停車状態であると判定する。一方、長期停車状態判定部14は、例えば、シフトポジション検出部12により車両2のシフトポジションがパーキングポジションであることが検出されず、且つ、パーキングブレーキ作動検出部13により車両2のパーキングブレーキが作動していることが検出されない場合に、車両2が長期停車状態ではないと判定する。
【0021】
ノズル開度制御部15は、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を制御する。ノズル開度は、可変ノズル5の開度である。具体的には、ノズル開度制御部15は、可変ノズル5の開度を変更するアクチュエータ(不図示)を駆動制御することにより、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を制御する。
【0022】
例えば、ノズル開度制御部15は、エンジン6が低回転のときに、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を小さくする(可変ノズル5を絞り側に変位させる)。これにより、排気ガスの流れが速くなるため、エンジン6が低回転でもタービン4が回り、次の加速に備えることができる。一方、ノズル開度制御部15は、エンジン6が高回転のときに、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を大きくする(可変ノズル5を開放側に変位させる)。これにより、可変ノズル5により排気ガスの流れが妨げられるのを抑制することができる。
【0023】
ところで、エンジン6がアイドリング状態を含む低回転のときは、次の加速に備えるために、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を小さくするが、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を小さくすると、ポンプ損失が増加して燃費が悪化する。一方、エンジン6がアイドリング状態であるとともに、車両2が長期停車状態である場合は、次の加速に備える必要性が低い。
【0024】
そこで、ノズル開度制御部15は、アイドリング状態判定部11によりエンジン6がアイドリング状態であると判定され、且つ、長期停車状態判定部14により車両2が長期停車状態であると判定された場合、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を大きくする。なお、エンジン6のアイドリング状態はエンジン6の低回転状態でもあるため、アイドリング状態判定部11によりエンジン6がアイドリング状態であると判定された場合は、当該判定の前から、ノズル開度制御部15の制御により可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度が小さくなっている。このため、アイドリング状態判定部11によりエンジン6がアイドリング状態であると判定され、且つ、長期停車状態判定部14により車両2が長期停車状態であると判定された場合は、ノズル開度が小さくなっている可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を大きくする。
【0025】
ノズル開度制御部15は、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を大きくする場合、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を全開にしてもよく、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を全開にしなくてもよい。
図3は、ノズル開度とポンプ損失との関係の一例を示すグラフである。
図4は、ノズル開度と燃料消費量との関係の一例を示すグラフである。
図3及び
図4に示すように、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度がある程度大きくなると、ポンプ損失の増加が頭打ちとなって燃料消費量の増加も頭打ちとなる。このため、ノズル開度制御部15は、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を大きくする場合、ポンプ損失及び燃料消費量の増加が頭打ちとなるノズル開度まで、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を大きくすることが好ましい。ポンプ損失及び燃料消費量の増加が頭打ちとなるノズル開度は、可変ノズルターボチャージャ3の種別、排気管の取り回し、使用する部品の種別等により変わる。このため、事前の実験やシミュレーション等によりポンプ損失及び燃料消費量の増加が頭打ちとなるノズル開度を求めておき、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を大きくする場合は、このノズル開度まで可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を大きくしてもよい。
【0026】
次に、
図5を参照して、ノズル開度制御装置1の処理動作の一例について説明する。
図5は、ノズル開度制御装置1の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0027】
図5に示すように、まず、ノズル開度制御装置1は、エンジン6がアイドル状態であるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1では、アイドリング状態判定部11によりエンジン6がアイドリング状態であると判定された場合に、エンジン6がアイドル状態であると判定し、アイドリング状態判定部11によりエンジン6がアイドリング状態ではないと判定された場合に、エンジン6がアイドル状態ではないと判定する。エンジン6がアイドル状態でないと判定した場合(ステップS1:NO)、ノズル開度制御装置1は、一旦処理を終了して、再度ステップS1から繰り返し行う。
【0028】
エンジン6がアイドル状態であると判定した場合(ステップS1:YES)、ノズル開度制御装置1は、車両2が長期停車状態であるか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2では、長期停車状態判定部14により車両2が長期停車状態であると判定された場合に、車両2が長期停車状態であると判定し、長期停車状態判定部14により車両2が長期停車状態ではないと判定された場合に、車両2が長期停車状態ではないと判定する。車両2が長期停車状態ではないと判定された場合(ステップS2:NO)、ノズル開度制御装置1は、一旦処理を終了して、再度ステップS1から繰り返し行う。
【0029】
車両2が長期停車状態であると判定された場合(ステップS2:YES)、ノズル開度制御装置1は、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を大きくする(ステップS3)。その後、ノズル開度制御装置1は、車両2が長期停車状態でなくなるまで、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を大きくした状態を維持する(ステップS4)。
【0030】
車両2が長期停車状態でなくなったと判定されると(ステップS4:NO)、ノズル開度制御装置1は、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を元に戻す(ステップS5)。そして、ノズル開度制御装置1は、一旦処理を終了して、再度ステップS1から繰り返し行う。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るノズル開度制御装置1では、エンジン6がアイドリング状態であり、且つ、車両2が長期停車状態である場合に、可変ノズルターボチャージャ3のノズル開度を大きくする。これにより、ポンプ損失が低減されるため、燃費の悪化を抑制することができる。
【0032】
また、このノズル開度制御装置1では、車両2のシフトポジションがパーキングポジションである場合に車両2が長期停車状態であると判定することで、長期停車状態を適切に判定することができる。
【0033】
また、このノズル開度制御装置1では、車両2のパーキングブレーキが作動している場合に車両2が長期停車状態であると判定することで、長期停車状態を適切に判定することができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…ノズル開度制御装置、2…車両、3…可変ノズルターボチャージャ、4…タービン、5…可変ノズル、6…エンジン、11…アイドリング状態判定部、12…シフトポジション検出部、13…パーキングブレーキ作動検出部、14…長期停車状態判定部、15…ノズル開度制御部。