(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135104
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20230921BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230921BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J35/04 301L
B01D53/94 220
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040137
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樺嶋 信介
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 哲也
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
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4G169BC32A
4G169BC33A
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4G169BC69A
4G169BC71B
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4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CA09
4G169DA06
4G169EA18
4G169EB15X
4G169EC28
4G169EE09
(57)【要約】
【課題】HC被毒しやすい空燃比(A/F)がリッチである雰囲気において、貴金属のHC被毒を抑制しつつ、暖機性が改善された排ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】本発明は、基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、触媒コート層が、基材上にコートされている下層コート層と、下層コート層上にコートされている上層コート層とを有し、下層コート層が、貴金属を含み、上層コート層が、Pd及び/又はPtを含み、上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの一定量以上が、Al
2O
3に担持されており、上層コート層の厚さが、調整されている、排ガス浄化用触媒に関する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、
触媒コート層が、基材上にコートされている下層コート層と、下層コート層上にコートされている上層コート層とを有し、
下層コート層が、貴金属を含み、
上層コート層が、Pd及び/又はPtを含み、
上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの全重量の80重量%以上が、Al2O3に担持されており、
上層コート層と下層コート層の厚さの比(上層コート層/下層コート層)が、0.2以下である、
排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの全重量の90重量%以上が、Al2O3に担持されている、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの全重量の95重量%以上が、Al2O3に担持されている、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
上層コート層の厚さが、20μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のための内燃機関、例えば、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、有害成分、例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)等が含まれている。
【0003】
このため、一般的には、これらの有害成分を分解除去するための排ガス浄化装置が内燃機関に設けられており、この排ガス浄化装置内に取り付けられた排ガス浄化用触媒によってこれらの有害成分がほとんど無害化されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、基材と、該基材の表面に形成された触媒コート層とを備える排ガス浄化用触媒であって、触媒コート層が、基材表面に近い方を下層とし相対的に遠い方を上層とする上下層を含み、触媒コート層の上層が、Rh及びPdと担体とを含有し、触媒コート層の上層が、上流側の端部から下流方向に20mm以上の範囲の表面に、上層の他の部位より相対的にPd濃度が高いPd最表面層を含み、触媒コート層の下層が、Pd及びPtから選択される少なくとも1種の貴金属と担体とを含有し、Pd最表面層に含有されるPdの60質量%以上が、基材表面に相対的に遠いPd最表面層の表面から上層の厚さ50%までの層に存在する、排ガス浄化用触媒を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各触媒コート層中に含まれる貴金属の量は、資源リスクの観点から低減させることが求められている。貴金属の量を低減させるためには、貴金属の触媒活性が排ガス浄化用触媒の使用によって低下することを防止すればよく、貴金属の触媒活性が低下するのを防ぐためには、例えば、貴金属の触媒活性の低下の1つの要因である貴金属の排ガス中のHCによる被毒(HC被毒)を抑制することが挙げられる。
【0007】
一方で、排ガス浄化用触媒には良好な暖機性、すなわち排ガス浄化初期(例えば、エンジンをかけ始めた直後)における排ガスの浄化も求められる。
【0008】
特許文献1の排ガス浄化用触媒は、基材上に2層の触媒金属としての貴金属を含む触媒コート層を有する構造において、上層のPd濃度を高濃度にすることによりHC浄化性能及び暖機性の向上を試みている。しかしながら、特許文献1では、Pdを担持している担体は規定されておらず、PdのHC被毒により、Pdの利用効率には改善の余地があった。
【0009】
したがって、本発明は、HC被毒しやすい空燃比(A/F)がリッチである雰囲気において、貴金属のHC被毒を抑制しつつ、暖機性が改善された排ガス浄化用触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
各触媒コート層は、通常それぞれ異なる有害成分の浄化の役割を担う。したがって、排ガス浄化用触媒が、基材と、基材上にコートされている下層コート層と、下層コート層上にコートされている上層コート層とを有する場合、上層コート層は、下層コート層と有害成分を含む排ガスとが速やかに互いに接触することができる構造、すなわちガス拡散性に優れた構造を有することが望まれる。
【0011】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒において、触媒コート層として基材上にコートされている下層コート層と、下層コート層上にコートされている上層コート層とを配置し、下層コート層中に貴金属を導入し、上層コート層中にアルミナ(Al2O3)に担持されたパラジウム(Pd)及び/又は白金(Pt)を導入し、さらに上層コート層の厚さを調整することによって、まず、排ガス中のHCを、排ガスが最初に接触する上層コート層において、耐HC被毒性の高いAl2O3に担持されたPd及び/又はPtにより効率的に浄化することができ、続いて、HCが浄化された排ガスを、厚さを調整することでガス拡散性が向上された上層コート層を通った先にある下層コート層において、速やか且つ効率的に浄化することができることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、
触媒コート層が、基材上にコートされている下層コート層と、下層コート層上にコートされている上層コート層とを有し、
下層コート層が、貴金属を含み、
上層コート層が、Pd及び/又はPtを含み、
上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの全重量の80重量%以上が、Al2O3に担持されており、
上層コート層と下層コート層の厚さの比(上層コート層/下層コート層)が、0.2以下である、
排ガス浄化用触媒。
(2)上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの全重量の90重量%以上が、Al2O3に担持されている、(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
(3)上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの全重量の95重量%以上が、Al2O3に担持されている、(1)又は(2)に記載の排ガス浄化用触媒。
(4)上層コート層の厚さが、20μm以下である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、HC被毒しやすい空燃比(A/F)がリッチである雰囲気において、貴金属のHC被毒を抑制しつつ、暖機性が改善された排ガス浄化用触媒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】比較例1及び2並びに実施例1の排ガス浄化用触媒の触媒コート層について、EPMAにより、Pdの配置、Rhの配置及び触媒コート層の外観を示す写真である。
【
図2】比較例1及び2の触媒コート層の実施形態を模式的に示す図である。
【
図3】実施例1の触媒コート層の実施形態を模式的に示す図である。
【
図4】エンジンベンチ評価の評価レイアウトを模式的に示す図である。
【
図5】比較例1(a)及び2(b)並びに実施例1(c)の排ガス浄化用触媒のリッチ定常時でのHC排出挙動結果を示すグラフである。
【
図6】比較例1(a)及び2(b)並びに実施例1(c)の排ガス浄化用触媒のリッチ定常時でのNOx排出挙動結果を示す。
【
図7】実施例1~4並びに比較例3及び4の排ガス浄化用触媒の上層コート層の厚さとリッチ雰囲気切り替え3分後のHC排出量の関係を示すグラフである。
【
図8】実施例1~4並びに比較例3及び4の排ガス浄化用触媒の上層コート層の厚さとリッチ雰囲気切り替え3分後のNOx排出量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。なお、本発明の排ガス浄化用触媒は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0016】
本発明は、基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、触媒コート層が、基材上にコートされている下層コート層と、下層コート層上にコートされている上層コート層とを有し、下層コート層が、貴金属を含み、上層コート層が、Pd及び/又はPtを含み、上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの一定量以上が、Al2O3に担持されており、上層コート層の厚さが、調整されている、排ガス浄化用触媒に関する。
【0017】
(基材)
基材としては、公知のハニカム形状を有する基材を使用することができ、具体的には、ハニカム形状のモノリス基材(ハニカムフィルタ、高密度ハニカム等)等が好適に採用される。また、このような基材の材質も特に制限されず、コージェライト、炭化ケイ素、シリカ、アルミナ、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。これらの中でも、コストの観点から、コージェライトであることが好ましい。
【0018】
(触媒コート層)
触媒コート層は、基材上にコートされている下層コート層と、下層コート層上にコートされている上層コート層とを少なくとも有する。
【0019】
下層コート層は、基材上にコートされている。
【0020】
下層コート層は、1層から構成されていても、複数層、すなわち2層、3層、又は4層以上の層から構成されていてもよい。下層コート層が複数層から構成される場合、各層の組成及び構造は特に限定されない。さらに、下層コート層は必ずしも排ガス浄化用触媒の基材全体に亘って均一でなくてもよく、排ガス流れ方向に対して上流側と下流側で領域ごとに異なる組成及び構造を有していてもよい。
【0021】
下層コート層の厚さ(下層コート層が複数層から構成される場合、下層コート層全体の厚さ)は、下記で説明する上層コート層と下層コート層の厚さの比(上層コート層/下層コート層)を満たす限り限定されないが、通常20μm~100μm、好ましくは30μm~80μmである。なお、本明細書等では、厚さとは、平均厚さ、例えばコート層のSEMやTEMなどの画像における無作為に選択した10箇所の厚さの平均値を指す。
【0022】
下層コート層の厚さが前記範囲であることにより、厚さが薄すぎることによる触媒金属同士の凝集、例えば触媒金属の高密度化による触媒金属の凝集を抑制しつつ、下層コート層中に含まれる触媒金属と排ガス中の有害成分、例えばNOxとの接触頻度を向上して、排ガス浄化性能を向上することができ、さらには、排ガス浄化用触媒における圧力損失と触媒性能と耐久性のバランスを良好に保つことができる。
【0023】
上層コート層は、下層コート層上にコートされている。
【0024】
上層コート層の厚さは、下記で説明する上層コート層と下層コート層の厚さの比(上層コート層/下層コート層)を満たす限り限定されないが、通常20μm以下、好ましくは1μm~20μm、より好ましくは1μm~10μmである。
【0025】
上層コート層の厚さが前記範囲であることにより、厚さが厚すぎることによる排ガスのガス拡散性の低下を抑制し、排ガスと排ガスが上層コート層を通過した先にある下層コート層との接触頻度を向上させることができ、上層コート層において浄化しきれなかった排ガス中の有害成分、例えばNOxを下層コート層において速やかに効率よく浄化することができる。
【0026】
触媒コート層が下層コート層と上層コート層とを有することで、上層コート層でのHCの浄化及び下層コート層でのNOxの浄化を効率よく行うことができる。
【0027】
上層コート層と下層コート層の厚さの比(上層コート層/下層コート層)は、0.2以下であり、好ましくは0.01~0.16である。
【0028】
上層コート層と下層コート層の厚さの比(上層コート層/下層コート層)が前記範囲になることにより、リッチ雰囲気でのHC浄化及びNOx浄化を効率的に実施することができる。
【0029】
(下層コート層)
下層コート層は、触媒金属としての貴金属を含む。
【0030】
貴金属としては、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる触媒金属が挙げられ、上層コート層を通り抜けた排ガス中に含まれるHCが低減された有害成分を浄化することができれば限定されないが、ロジウム(Rh)、Pt、Pd、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)及びルテニウム(Ru)からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。貴金属としては、NOxを効率的に浄化することができるRhが好ましい。
【0031】
下層コート層が貴金属を含むことにより、上層コート層でHCが十分に浄化された雰囲気の下、貴金属、特にHC被毒されやすいRh等が、HC被毒されることなく、NOx浄化性能を十分に発揮することができる。
【0032】
下層コート層中に含まれる貴金属の含有量は、限定されないが、基材の容量1Lに対して、貴金属の金属換算で、通常0.05g~1.0g、好ましくは0.2g~0.8gである。なお、下流側コート層に含まれ得る貴金属の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての貴金属前駆体の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0033】
下層コート層が貴金属を前記量で含むことにより、上層コート層でHCが十分に浄化された雰囲気の下、上層コート層で浄化しきれなかったHC以外の有害成分、特にNOxを効率的に十分に浄化することができる。
【0034】
下層コート層中に含まれる貴金属は、そのままでも排ガス浄化用触媒の触媒金属として機能するが、担体粒子に担持されていてもよい。
【0035】
したがって、下層コート層は、担体粒子をさらに含んでいてもよい。担体粒子としては、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる任意の金属酸化物、例えば、シリカ(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、ジルコニア(ZrO2)、セリア(CeO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、イットリア(Y2O3)、酸化ネオジム(Nd2O3)、酸化ランタン(La2O3)及びそれらの複合酸化物や固溶体、例えばAl2O3-CeO2-ZrO2複合酸化物(ACZ)、CeO2-ZrO2複合酸化物(CZ)、Al2O3-ZrO2複合酸化物(AZ)等、並びにそれらの二種以上の組み合わせ等が挙げられる。なお、複合酸化物、例えばACZ、CZ及びAZ中の各酸化物の比率は限定されず、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる比率でよい。
【0036】
酸性担体、例えば、SiO2では、NOxを還元する触媒金属との相性がよい。塩基性担体、例えば、MgOでは、NOxを吸蔵するカリウム(K)やバリウム(Ba)との相性がよい。ZrO2は、他の担体粒子がシンタリングを生じるような高温下において、当該他の担体粒子のシンタリングを抑制し、且つ例えば触媒金属としてのRhと組み合わせることによって、水蒸気改質反応を生じてH2を生成し、NOxの還元を効率よく行うことができる。酸塩基両性担体、例えば、Al2O3は高い比表面積を有するため、これをNOxの吸蔵及び還元を効率よく行うのに用いることができる。TiO2は、触媒金属の硫黄被毒を抑制する効果を発揮することができる。ACZ及びCZは、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有する材料(OSC材)として、空燃比が変動するような場合においても、酸素濃度を一定に保ち、排ガス浄化用触媒の浄化性能を維持することができる。また、Al2O3、ZrO2、他の金属酸化物は、添加することにより担体の耐久性を高めることができる。
【0037】
前記の担体粒子の特性によれば、選択した担体粒子の種類、組成、組み合わせとその比率、及び/又は量によって、本発明の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能、特に、NOx浄化性能が向上する可能性があることを理解されたい。
【0038】
貴金属が、前記担体粒子に担持されている場合には、担体粒子の比表面積が大きいことから、排ガスと貴金属との接触面を大きくすることができる。これにより、排ガス浄化用触媒の性能を向上させることができる。
【0039】
貴金属の担体粒子への担持方法は、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる方法を使用することができる。
【0040】
下層コート層中の担体粒子の含有量は、限定されないが、基材の容量1Lに対して、通常25g~170g、好ましくは100g~140gである。なお、下層コート層に含まれ得る担体粒子の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての担体粒子の添加量に依存する。
【0041】
下層コート層は、貴金属及び場合により貴金属を担持する担体粒子から構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、この種の用途の触媒コート層に用いられる他の金属酸化物や添加剤等、具体的にはカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)等の希土類元素、鉄(Fe)等の遷移金属、前記担体粒子として挙げた金属酸化物(すなわち、貴金属を担持していない金属酸化物)等の一種以上が挙げられる。他の成分は、そのままの形態でも、貴金属同様に、担体粒子に担持した形態でもよい。
【0042】
下層コート層中の他の成分の含有量は、限定されないが、基材の容量1Lに対して、通常20g~120g、好ましくは80g~120gである。なお、下流側コート層に含まれ得る他の成分の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての他の成分の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0043】
下層コート層中に含まれる貴金属は、下層コート中、均質に分散して存在(例えば、貴金属が、下層コート層を構成する材料全てに均一に担持されている等)していても、又は局所的に偏在(例えば、貴金属が、下層コート層を構成する材料の内、特定の担体粒子のみに担持されている等)していてもよい。
【0044】
下層コート層のコート量は、限定されないが、基材の容量1Lに対して、通常45g~250g、好ましくは160g~250gである。なお、下層コート層のコート量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料の総重量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0045】
下層コート層中の各材料の量(コート量)が前記範囲になることにより、排ガス浄化用触媒における圧力損失と触媒性能と耐久性のバランスを良好に保つことができる。
【0046】
(上層コート層)
上層コート層は、触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む。
【0047】
上層コート層がPd及び/又はPtを含むことにより、エンジン等から排出された直後の排ガス、特にHCがPd及び/又はPtと接触することになり、排ガス中のHC浄化性能を向上することができる。
【0048】
上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの含有量(全重量)は、限定されないが、基材の容量1Lに対して、触媒金属の金属換算で、通常0.2g~5.0g、好ましくは2.0g~5.0gである。なお、上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのPd及び/又はPtの前駆体の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0049】
上層コート層がPd及び/又はPtを前記量で含むことにより、Pd及び/又はPtの高密度化による着火性向上により、排ガス、特にHCの浄化性能を向上することができる。
【0050】
上層コート層は、上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtを担持するためのAl2O3をさらに含む。
【0051】
上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtを担持しているAl2O3の種類やサイズは、限定されないが、平均粒径は5μm以下であることが望ましい。
【0052】
上層コート層がAl2O3を含むことにより、Al2O3に担持されているPd及び/又はPtの耐HC被毒性を向上することができる。
【0053】
上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtを担持しているAl2O3の含有量は、限定されないが、基材の容量1Lに対して、通常5g~40g、好ましくは10g~30gである。なお、上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtを担持しているAl2O3の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのPd及び/又はPtを担持するためのAl2O3の添加量に依存する。
【0054】
上層コート層がAl2O3を前記量で含むことにより、Pd及び/又はPtの高密度化による着火性向上によるHC浄化性能を向上しつつ、Al2O3に担持されているPd及び/又はPtの耐HC被毒性を十分に向上することができる。
【0055】
上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの全重量の80重量%以上は、Al2O3に担持されている。ある実施形態では、上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの全重量の90重量%以上は、Al2O3に担持されている。ある実施形態では、上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの全重量の95重量%以上は、Al2O3に担持されている。ある実施形態では、上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの全重量の99重量%以上は、Al2O3に担持されている。ある実施形態では、上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの全重量のほぼ100重量%は、Al2O3に担持されている。
【0056】
Pd及び/又はPtのAl2O3への担持方法は、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる方法を使用することができる。Pd及び/又はPtのAl2O3への担持方法は、例えばPd及び/又はPtとAl2O3と溶媒、例えば水とを容器中で撹拌混合し、得られた混合物を、場合によりろ過し、さらに乾燥及び焼成する方法を使用することができる。
【0057】
上層コート層中に含まれるPd及び/又はPtの大部分がAl2O3に担持されることにより、Pd及び/又はPtが耐HC被毒性に優れるAl2O3によりHC被毒を抑制しながらHCを効率よく浄化できる。
【0058】
上層コート層は、Pd及び/又はPt並びにPd及び/又はPtを担持しているAl2O3以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられるPd及び/又はPt以外の貴金属、具体的には、Rh、Au、Ag、Ir、Os及びRuからなる群から選択される少なくとも一種(当該貴金属もまた、耐HC被毒性に優れるAl2O3に担持されていることが好ましい)、金属酸化物、例えば、SiO2、MgO、ZrO2、CeO2、TiO2、Y2O3、Nd2O3、La2O3、Pd及び/又はPtを担持していないAl2O3及びそれらの複合酸化物や固溶体、例えばACZ、CZ、AZ等、並びにそれらの二種以上の組み合わせ等、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、遷移金属の一種以上が挙げられる。他の成分は、そのままの形態でも、担体粒子に担持した形態でもよい。
【0059】
上層コート層中の他の成分の含有量は、限定されないが、基材の容量1Lに対して、通常5g~20g、好ましくは10g~20gである。なお、上層コート層に含まれ得る他の成分の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての他の成分の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0060】
上層コート層のコート量は、限定されないが、基材の容量1Lに対して、通常5g~60g、好ましくは10g~60g、より好ましくは20g~60gである。なお、上層コート層のコート量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料の総重量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0061】
上層コート層中の各材料の量(コート量)が前記範囲になることにより、上層コート層中のガス拡散性を向上し、さらに排ガスの下層コート層との接触頻度の向上により暖機性を向上し、Pd及び/又はPtの高密度化による着火性向上による排ガス、特にHCの浄化性能並びに下層コート層中に含まれる貴金属によるHC以外の有害成分、例えばNOxの浄化性能を向上することができる。
【0062】
上層コート層は、Pd及び/又はPtとPd及び/又はPtを担持しているAl2O3とから構成されることが好ましい。
【0063】
上層コート層がPd及び/又はPtとPd及び/又はPtを担持しているAl2O3とから構成されることにより、排ガス中のHCを、Pd及び/又はPtによりHC被毒を回避しつつ効率的に浄化することができ、さらにHCが浄化された排ガスを、上層コート層の下に配置されている下層コート層に速やかに誘導しつつ、下層コート層において効率的に浄化することができる。
【0064】
(排ガス浄化用触媒の製造方法)
本発明の排ガス浄化用触媒は、前記で説明した排ガス浄化用触媒の構成成分を使用すること以外は、公知のコーティング技術を使用して製造することができる。
【0065】
本発明の排ガス浄化用触媒は、例えば、以下のように製造することができる。まず、基材上において下層コート層を形成させる領域に、下層コート層を構成する材料、例えば触媒金属前駆体、例えばRhを含む塩、例えば硝酸塩、溶媒(例えば水、アルコール、水とアルコールの混合物等)及び場合により担体粒子、例えばアルミナ-セリア-ジルコニア複合酸化物及び/又はセリア-ジルコニア複合酸化物、添加剤、例えば増粘剤等を含む下層コート層用の触媒コート層スラリーを吸引方式により被覆する。余分なスラリーをブロアー等で吹き払った後、例えば、大気中、通常100℃~150℃で通常1時間~3時間乾燥して溶媒分を除去し、大気中、通常450℃~550℃で通常1時間~3時間焼成を行い、下層コート層を形成させる。続いて、下層コート層を形成させた基材上において下層コート層の上に、上層コート層を構成する材料、すなわちPd及び/又はPtの前駆体、例えばPd及び/又はPtを含む塩、例えば硝酸塩、Al2O3、溶媒(例えば水、アルコール、水とアルコールの混合物等)並びに場合により添加剤、例えば増粘剤等を含む上層コート層用の触媒コート層スラリーを吸引方式により被覆する。余分なスラリーをブロアー等で吹き払った後、例えば、大気中、通常100℃~150℃で通常1時間~3時間乾燥して溶媒分を除去し、大気中、通常450℃~550℃で通常1時間~3時間焼成を行い、上層コート層を形成させる。
【0066】
(排ガス浄化用触媒の用途)
本発明の排ガス浄化用触媒は、リッチ雰囲気での排ガス浄化性能において大きく効果を発揮することができ、リッチ雰囲気で余剰のHC等が排ガス浄化用触媒に吸着して、当該排ガス浄化用触媒を被毒し得るような環境下においても使用することができる、高いHC被毒抑制効果を発現する暖機性に優れた排ガス浄化用触媒として使用することができる。
【実施例0067】
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0068】
1.排ガス浄化用触媒の調製
比較例1
(1)最初に、水に、撹拌しながら、Al2O3-CeO2-ZrO2複合酸化物(Al2O3:30wt%、CeO2:20wt%、ZrO2:50wt%)、Al2O3-ZrO2複合酸化物(Al2O3:30wt%、ZrO2:70wt%)、Al2O3、Al2O3バインダー、増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース)、有機繊維及び硝酸Rhを投入し、さらに撹拌混合して、下層コート層用の触媒コート層スラリーを調製した。
【0069】
(2)次に、下層コート層用の触媒コート層スラリーを基材(875cc(600セル 六角 壁厚2.5mil)のNGK製のハニカム基材)に吸引方式で流し込み、基材壁面に材料をコーティングし、下層コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の容量1Lに対して、Al2O3-CeO2-ZrO2複合酸化物が99g(99g/L)になり、Al2O3-ZrO2複合酸化物が41g(41g/L)になり、Al2O3が45g(45g/L)になり、Rhが金属換算で0.40g(0.46g/L)になるようにした。また、下層コート層の前駆体層は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から下流側の端部まで、すなわち、排ガス浄化用触媒における基材の全長に塗布されるようにした。
【0070】
(3)下層コート層の前駆体層が塗布された基材を、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、下層コート層を調製した。
【0071】
(4)続いて、下層コート層を備えた基材の下層コート層の最表面に、硝酸Pd水溶液を吸水させた。その際に、Pdが基材の容量1Lに対して金属換算で0.24g(0.28g/L)になるようにした。その後、下層コート層上にPdを担持させた基材を、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0072】
比較例2
比較例1において、(4)の工程を以下の(4’)及び(5’)の工程に変更した以外は、比較例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0073】
(4’)続いて、下層コート層を備えた基材の下層コート層の最表面に、硝酸Pd水溶液を吸水させた。その際に、Pdが基材の容量1Lに対して金属換算で0.06g(0.07g/L)になるようにした。その後、下層コート層上にPdを担持させた基材を、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行った。
【0074】
(5’)(4’)の工程を4回繰り返すことにより、排ガス浄化用触媒を調製した。排ガス浄化用触媒では、最終的に、Pdが基材の容量1Lに対して金属換算で0.24g(0.28g/L)になった。
【0075】
実施例1
比較例1において、(4)の工程を以下の(4’’)~(6’’)の工程に変更した以外は、比較例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0076】
(4’’)続いて、水に、撹拌しながら、Al2O3、増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース)及び硝酸Pdを投入し、さらに撹拌混合して、上層コート層用の触媒コート層スラリーを調製した。
【0077】
(5’’)次に、上層コート層用の触媒コート層スラリーを、下層コート層を備えた基材の下層コート層の上に、下層コート層用の触媒コート層スラリーと同様に吸引方式で流し込み、基材の下層コート層上に材料をコーティングし、上層コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の容量1Lに対して、Al2O3が5.25g(6.0g/L)になり、Pdが金属換算で0.24g(0.28g/L)になるようにした。また、上層コート層の前駆体層は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から下流側の端部まで、すなわち、排ガス浄化用触媒における基材の全長に塗布されるようにした。
【0078】
(6’’)上層コート層の前駆体層が塗布された基材を、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、上層コート層を調製し、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0079】
2.電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)分析
比較例1及び2並びに実施例1の排ガス浄化用触媒の表面をEPMAにより分析した。
図1に結果を示す。
【0080】
図1より、比較例1及び2並びに実施例1では、触媒コート層(下層コート層)の厚さは約100μmであることがわかった。さらに、比較例1では、Rhは触媒コート層全体に均一に存在し、Pdは触媒コート層の表層近傍のみに存在することがわかった。また、比較例2では、Rhは触媒コート層全体に均一に存在し、Pdは触媒コート層の表層近傍のみ、特に比較例1よりも表層近傍のみに存在することがわかった。加えて、実施例1では、Rhは触媒コート層全体に均一に存在し、Pdは触媒コート層の最表層近傍のみ、特に最表層~約5μmの範囲のみに存在する(すなわち、実施例1の排ガス浄化用触媒では、上層コート層の厚さは約5μmである)ことがわかった。なお、比較例1及び2の触媒コート層では、触媒コート層中、下層コート層と上層コート層とが明確に区別されていなかった。これは、比較例1及び2の触媒コート層の形成方法に基づく。
【0081】
図2に、比較例1及び2の触媒コート層2の実施形態を模式的に示し、
図3に、実施例1の触媒コート層2の実施形態を模式的に示す。
【0082】
図2において、比較例1及び2の触媒コート層2は、基材1上に形成されている。また、比較例1及び2の触媒コート層2中のRhは、触媒コート層2全体にわたり均一に存在している。一方で、比較例1及び2の触媒コート層2中のPdは、触媒コート層2の表層近傍のみに存在する。なお、比較例1及び2の触媒コート層2では、Pdは、特定の担体粒子、例えばアルミナのみに担持されているわけではない。
【0083】
図3において、実施例1の触媒コート層2は、基材1上に形成されている。また、実施例1の触媒コート層2は、基材1上に形成されている下層コート層3及び下層コート層3上に形成されている上層コート層4からなる。実施例1の触媒コート層2中のRhは、下層コート層3全体にわたり均一に存在している。一方で、実施例1の触媒コート層2中のPdは、Al
2O
3に担持され、上層コート層4のみに存在する。
【0084】
3.耐久試験
比較例1及び2並びに実施例1の排ガス浄化用触媒について、実際のエンジンを用いて以下の耐久試験を実施した。
【0085】
各排ガス浄化用触媒を、V型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温950℃で50時間にわたって、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)ずつ繰り返して流すことにより行った。
【0086】
4.エンジンベンチ評価
3.耐久試験を実施した比較例1及び2並びに実施例1の排ガス浄化用触媒について、実際のエンジンを用いてリッチ雰囲気でのHC及びNOxの排出挙動評価を実施した。
図4に、エンジンベンチ評価の評価レイアウトを模式的に示す。
【0087】
(1)まず、L型4気筒エンジン5を起動させ、入りガス温度が550℃になるようにエンジン条件を調整した。
(2)各排ガス浄化用触媒6をエンジン5の排気系にそれぞれ装着し、安定したら、空燃比(A/F)を、3分間隔で、A/F14.1の条件(リッチ条件)とA/F15.1の条件(リーン条件)との間で、交互に変動させた。
(3)3回目のA/F15.1(リーン)からA/F14.1(リッチ)への切り替え後、A/F14.1の条件における3分間のHC及びNOxの排出挙動を評価した。
【0088】
5.エンジンベンチ評価結果
図5に比較例1(a)及び2(b)並びに実施例1(c)の排ガス浄化用触媒のリッチ定常時でのHC排出挙動結果を示し、
図6に比較例1(a)及び2(b)並びに実施例1(c)の排ガス浄化用触媒のリッチ定常時でのNOx排出挙動結果を示す。
【0089】
図5より、実施例1では、比較例1及び2と比較して、HC排出量が大幅に抑制されることがわかった。実施例1において、排ガスの流れに近い、すなわち排ガスと初めに接触する上層コート層に配置されたPdをAl
2O
3に担持することによって、耐HC被毒性に優れたAl
2O
3がPdのHC被毒を抑制し、Pdの利用効率が向上したためであると考えられる。当該効果は、Pdと同等の触媒金属であるPtを使用した場合であっても得られると考えられる。
【0090】
さらに、
図6より、実施例1では、比較例1及び2と比較して、NOx排出量もまた抑制されることがわかった。実施例1では、上層コート層におけるHC浄化能が向上したことにより、相対的に下層コート層中のRhのHC被毒が抑制され、Rhの利用効率が向上したためであると考えられる。当該効果は、Rhを他の貴金属に変更した場合であっても得られると考えられる。
【0091】
6.排ガス浄化用触媒における上層コート層と下層コート層の厚さの比(上層コート層/下層コート層)の評価
6-1.排ガス浄化用触媒の調製
実施例2
実施例1(5’’)において、Pdを担持させるAl2O3の量を1.05g(1.20g/L)に変更することで、上層コート層の厚さを1μmにした以外は、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0092】
実施例3
実施例1(5’’)において、Pdを担持させるAl2O3の量を10.5g(12.0g/L)に変更することで、上層コート層の厚さを9.6μmにした以外は、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0093】
実施例4
実施例1(5’’)において、Pdを担持させるAl2O3の量を15.75g(18.0g/L)に変更することで、上層コート層の厚さを15.8μmにした以外は、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0094】
比較例3
実施例1(5’’)において、Pdを担持させるAl2O3の量を26.25g(30.0g/L)に変更することで、上層コート層の厚さを23.4μmにした以外は、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0095】
比較例4
実施例1(5’’)において、Pdを担持させるAl2O3の量を31.5g(36.0g/L)に変更することで、上層コート層の厚さを29.9μmにした以外は、実施例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0096】
6-2.評価
実施例1~4並びに比較例3及び4の排ガス浄化用触媒について、前記3.耐久試験及び4.エンジンベンチ評価を実施し、4.エンジンベンチ評価(3)におけるリッチ雰囲気切り替え3分後のHC排出量及びNOx排出量を測定した。
【0097】
図7に実施例1~4並びに比較例3及び4の排ガス浄化用触媒の上層コート層の厚さとリッチ雰囲気切り替え3分後のHC排出量の関係を示し、
図8に実施例1~4並びに比較例3及び4の排ガス浄化用触媒の上層コート層の厚さとリッチ雰囲気切り替え3分後のNOx排出量の関係を示す。
【0098】
図7及び8より、排ガス浄化用触媒の下層コート層の厚さが100μmの場合、上層コート層の厚さが20μm以下、好ましくは1μm~16μmであるときに、リッチ雰囲気切り替え3分後のHC排出量及びNOx排出量が共に良好になることがわかった。したがって、本発明の排ガス浄化用触媒では、上層コート層と下層コート層の厚さの比(上層コート層/下層コート層)が、0.2以下、好ましくは0.01~0.16になるときに、リッチ雰囲気でのHC浄化及びNOx浄化を効率的に実施することができることがわかった。