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特開2023-135107情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135107
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B63B 79/30 20200101AFI20230921BHJP
   G01S 17/93 20200101ALI20230921BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20230921BHJP
   B63B 79/10 20200101ALI20230921BHJP
   B63H 25/02 20060101ALI20230921BHJP
   B63H 25/04 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B63B79/30
G01S17/93
B63B49/00 Z
B63B79/10
B63H25/02 Z
B63H25/04 D
B63H25/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040141
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】松崎 秦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将大
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA10
5J084AB20
5J084AC03
5J084BA34
5J084BA40
5J084BA50
5J084CA28
5J084CA32
5J084CA49
5J084CA65
5J084CA70
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】着岸支援において用いられるパラメータの信頼性を確実に判定することが可能な情報処理装置等を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、取得手段と、マーカ位置取得手段と、信頼性判定手段と、を有する。取得手段は、船舶に設けられた計測装置が生成する計測データを取得する。マーカ位置取得手段は、計測データに基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカの位置を取得する。信頼性判定手段は、2つのマーカの位置を通過する直線であるマーカ直線に基づき、船舶と接岸場所との間の距離である対岸距離、及び、船舶の前記接岸場所への進入角度のうちの少なくとも一方に係る信頼性を判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に設けられた計測装置が生成する計測データを取得する取得手段と、
前記計測データに基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカの位置を取得するマーカ位置取得手段と、
前記2つのマーカの位置を通過する直線であるマーカ直線に基づき、前記船舶と前記接岸場所との間の距離である対岸距離、及び、前記船舶の前記接岸場所への進入角度のうちの少なくとも一方に係る信頼性を判定する信頼性判定手段と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記信頼性判定手段は、前記船舶から前記マーカ直線までの距離と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の前方側に設けられた第1のマーカの位置までの距離と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の後方側に設けられた第2のマーカの位置までの距離と、前記船舶から前記マーカ直線までの距離と、に基づき、前記対岸距離に係る信頼性の判定に用いられる距離である判定距離を算出する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記信頼性判定手段は、前記判定距離に基づき、前記船舶から前記接岸場所のエッジに沿った直線までの距離の前記対岸距離としての信頼性を判定する請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記信頼性判定手段は、前記船舶から前記マーカ直線までの距離から、前記船舶から前記接岸場所のエッジに沿った直線までの距離を減じることにより、前記対岸距離に係る信頼性の判定に用いられる差分値を算出する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記信頼性判定手段は、前記差分値の時間的な変化に基づき、前記船舶から前記接岸場所のエッジに沿った直線までの距離の前記対岸距離としての信頼性を判定する請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記信頼性判定手段は、前記マーカ直線における単位方向ベクトルと、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の前方側に設けられた第1のマーカの位置までの距離と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の後方側に設けられた第2のマーカの位置までの距離と、前記第1のマーカと前記第2のマーカとの間の距離に相当するマーカ間隔と、に基づき、前記進入角度に係る信頼性の判定に用いられる角度である判定角度を算出する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記信頼性判定手段は、前記判定角度に基づき、前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記接岸場所のエッジに沿った直線の傾きを示す角度の前記進入角度としての信頼性を判定する請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記信頼性判定手段は、前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記マーカ直線の傾きを示す角度から、前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記接岸場所のエッジに沿った直線の傾きを示す角度を減じることにより、前記進入角度に係る信頼性の判定に用いられる差分値を算出する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記信頼性判定手段は、前記差分値の時間的な変化に基づき、前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記接岸場所のエッジに沿った直線の傾きを示す角度の前記進入角度としての信頼性を判定する請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記マーカ直線と、前記接岸場所のエッジ部分の点群データと、を用い、前記マーカ直線に対して平行な直線である代替直線を生成し、前記船舶から前記代替直線までの距離を前記対岸距離として算出する対岸距離算出手段をさらに有する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記マーカ直線と、前記接岸場所のエッジ部分の点群データと、を用い、前記マーカ直線に対して平行な直線である代替直線を生成し、前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記代替直線の傾きを示す角度を前記進入角度として算出する進入角度算出手段をさらに有する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記船舶から前記マーカ直線までの距離と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の前方側に設けられた第1のマーカの位置までの距離と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の後方側に設けられた第2のマーカの位置までの距離と、を用いて前記対岸距離を算出する対岸距離算出手段をさらに有する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記船舶から前記マーカ直線までの距離と、所定時間内に算出された前記差分値の平均値と、を用いて前記対岸距離を算出する対岸距離算出手段をさらに有する請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記マーカ直線の傾きを示す角度と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の前方側に設けられた第1のマーカの位置までの距離と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の後方側に設けられた第2のマーカの位置までの距離と、前記第1のマーカと前記第2のマーカとの間の距離に相当するマーカ間隔と、を用いて前記進入角度を算出する進入角度算出手段をさらに有する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記マーカ直線の傾きを示す角度と、所定時間内に算出された前記差分値の平均値と、を用いて前記進入角度を算出する進入角度算出手段をさらに有する請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項16】
コンピュータが実行する制御方法であって、
船舶に設けられた計測装置が生成する計測データを取得し、
前記計測データに基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカの位置を取得し、
前記2つのマーカの位置を通過する直線であるマーカ直線に基づき、前記船舶と前記接岸場所との間の距離である対岸距離、及び、前記船舶の前記接岸場所への進入角度のうちの少なくとも一方に係る信頼性を判定する制御方法。
【請求項17】
船舶に設けられた計測装置が生成する計測データを取得し、
前記計測データに基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカの位置を取得し、
前記2つのマーカの位置を通過する直線であるマーカ直線に基づき、前記船舶と前記接岸場所との間の距離である対岸距離、及び、前記船舶の前記接岸場所への進入角度のうちの少なくとも一方に係る信頼性を判定する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項18】
請求項17に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶の接岸時の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船舶の接岸(着岸)に関する支援を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、船舶の自動接岸を行う自動接岸装置において、ライダから照射される光が接岸位置の周囲の物体に反射してライダにより受光できるように、船舶の姿勢を変化させる制御を行う手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-59403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶においては、接岸場所に安全で円滑に着岸することは重要であり、操船支援や自動運航のための着岸支援システムの実現が特に望まれている。そのため、着岸支援システムにおいては、着岸しようとしている接岸場所に対する距離・速度・角度などのパラメータを算出し、当該算出したパラメータの信頼性を確実に判定する必要がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、着岸支援において用いられるパラメータの信頼性を確実に判定することが可能な情報処理装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、情報処理装置であって、船舶に設けられた計測装置が生成する計測データを取得する取得手段と、前記計測データに基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカの位置を取得するマーカ位置取得手段と、前記2つのマーカの位置を通過する直線であるマーカ直線に基づき、前記船舶と前記接岸場所との間の距離である対岸距離、及び、前記船舶の前記接岸場所への進入角度のうちの少なくとも一方に係る信頼性を判定する信頼性判定手段と、を有する。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、コンピュータが実行する制御方法であって、船舶に設けられた計測装置が生成する計測データを取得し、前記計測データに基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカの位置を取得し、前記2つのマーカの位置を通過する直線であるマーカ直線に基づき、前記船舶と前記接岸場所との間の距離である対岸距離、及び、前記船舶の前記接岸場所への進入角度のうちの少なくとも一方に係る信頼性を判定する。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、プログラムであって、船舶に設けられた計測装置が生成する計測データを取得し、前記計測データに基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカの位置を取得し、前記2つのマーカの位置を通過する直線であるマーカ直線に基づき、前記船舶と前記接岸場所との間の距離である対岸距離、及び、前記船舶の前記接岸場所への進入角度のうちの少なくとも一方に係る信頼性を判定する処理をコンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】運航支援システムのブロック構成図。
図1B】運航支援システムに含まれる船舶及びライダの視野範囲を例示した上面図。
図1C】船舶及びライダの視野範囲を後ろから示した図。
図2】情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図。
図3】接岸支援処理に関する機能ブロック図。
図4A】接岸する岸壁をライダが捉えている様子を示した図。
図4B】接岸側面直線を明示した岸壁の斜視図。
図5A】信頼度情報のデータ構造の一例を示す図。
図5B】信頼度情報に含まれる指標及び信頼度の一例を示す図。
図5C図5Bに示される指標を明示した対象船舶及び接岸場所の俯瞰図。
図6A】対象船舶の船体を基準とした船体座標系の一例を示す図。
図6B】法線ベクトルを明示した構造物の斜視図。
図7】前方マーカ及び後方マーカが設けられた接岸場所の例を示す図。
図8】座標位置H及び距離dを明示した上面図。
図9A】重心G及び垂線の足Hを明示した上面図。
図9B】距離d算出のための単位ベクトルuを明示した図。
図10】距離d及び距離dを明示した上面図。
図11A】対岸距離の信頼性の判定に係る処理の一例を説明するための図。
図11B】差分値Δdmqの時間的な変化と、平均値Δdmqaと、を示す図。
図12】角度Ψ及びΨを明示した上面図。
図13】差分値ΔΨmqの時間的な変化と、平均値ΔΨmqaと、を示す図。
図14A】接岸支援処理の概要を表すフローチャート。
図14B】信頼性の判定に係る処理の一例を示すフローチャート。
図15A】岸壁とは異なる物体を岸壁として誤判定し得る状況の例を示す図。
図15B】岸壁とは異なる物体を岸壁として誤判定し得る状況の例を示す図。
図15C】距離d及び角度Ψのうちの少なくとも一方の信頼性が低いとの判定結果が得られる場合の例を示す図。
図15D】距離d及び角度Ψのうちの少なくとも一方の信頼性が低いとの判定結果が得られる場合の例を示す図。
図16】座標位置G及び代替直線Lを明示した上面図。
図17】対象船舶の位置が岸壁から非常に近い位置である場合の例を示す図。
図18】接岸パラメータの算出に係る処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つの好適な実施形態では、情報処理装置は、船舶に設けられた計測装置が生成する計測データを取得する取得手段と、前記計測データに基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカの位置を取得するマーカ位置取得手段と、前記2つのマーカの位置を通過する直線であるマーカ直線に基づき、前記船舶と前記接岸場所との間の距離である対岸距離、及び、前記船舶の前記接岸場所への進入角度のうちの少なくとも一方に係る信頼性を判定する信頼性判定手段と、を有する。
【0011】
上記の情報処理装置は、取得手段と、マーカ位置取得手段と、信頼性判定手段と、を有する。取得手段は、船舶に設けられた計測装置が生成する計測データを取得する。マーカ位置取得手段は、前記計測データに基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカの位置を取得する。信頼性判定手段は、前記2つのマーカの位置を通過する直線であるマーカ直線に基づき、前記船舶と前記接岸場所との間の距離である対岸距離、及び、前記船舶の前記接岸場所への進入角度のうちの少なくとも一方に係る信頼性を判定する。これにより、着岸支援において用いられるパラメータの信頼性を確実に判定することができる。
【0012】
上記の情報処理装置の一態様では、前記信頼性判定手段は、前記船舶から前記マーカ直線までの距離と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の前方側に設けられた第1のマーカの位置までの距離と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の後方側に設けられた第2のマーカの位置までの距離と、前記船舶から前記マーカ直線までの距離と、に基づき、前記対岸距離に係る信頼性の判定に用いられる距離である判定距離を算出する。
【0013】
上記の情報処理装置の一態様では、前記信頼性判定手段は、前記判定距離に基づき、前記船舶から前記接岸場所のエッジに沿った直線までの距離の前記対岸距離としての信頼性を判定する。
【0014】
上記の情報処理装置の一態様では、前記信頼性判定手段は、前記船舶から前記マーカ直線までの距離から、前記船舶から前記接岸場所のエッジに沿った直線までの距離を減じることにより、前記対岸距離に係る信頼性の判定に用いられる差分値を算出する。
【0015】
上記の情報処理装置の一態様では、前記信頼性判定手段は、前記差分値の時間的な変化に基づき、前記船舶から前記接岸場所のエッジに沿った直線までの距離の前記対岸距離としての信頼性を判定する。
【0016】
上記の情報処理装置の一態様では、前記信頼性判定手段は、前記マーカ直線における単位方向ベクトルと、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の前方側に設けられた第1のマーカの位置までの距離と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の後方側に設けられた第2のマーカの位置までの距離と、前記第1のマーカと前記第2のマーカとの間の距離に相当するマーカ間隔と、に基づき、前記進入角度に係る信頼性の判定に用いられる角度である判定角度を算出する。
【0017】
上記の情報処理装置の一態様では、前記信頼性判定手段は、前記判定角度に基づき、前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記接岸場所のエッジに沿った直線の傾きを示す角度の前記進入角度としての信頼性を判定する。
【0018】
上記の情報処理装置の一態様では、前記信頼性判定手段は、前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記マーカ直線の傾きを示す角度から、前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記接岸場所のエッジに沿った直線の傾きを示す角度を減じることにより、前記進入角度に係る信頼性の判定に用いられる差分値を算出する。
【0019】
上記の情報処理装置の一態様では、前記信頼性判定手段は、前記差分値の時間的な変化に基づき、前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記接岸場所のエッジに沿った直線の傾きを示す角度の前記進入角度としての信頼性を判定する。
【0020】
上記の情報処理装置の一態様では、前記マーカ直線と、前記接岸場所のエッジ部分の点群データと、を用い、前記マーカ直線に対して平行な直線である代替直線を生成し、前記船舶から前記代替直線までの距離を前記対岸距離として算出する対岸距離算出手段をさらに有する。
【0021】
上記の情報処理装置の一態様では、前記マーカ直線と、前記接岸場所のエッジ部分の点群データと、を用い、前記マーカ直線に対して平行な直線である代替直線を生成し、前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記代替直線の傾きを示す角度を前記進入角度として算出する進入角度算出手段をさらに有する。
【0022】
上記の情報処理装置の一態様では、前記船舶から前記マーカ直線までの距離と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の前方側に設けられた第1のマーカの位置までの距離と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の後方側に設けられた第2のマーカの位置までの距離と、を用いて前記対岸距離を算出する対岸距離算出手段をさらに有する。
【0023】
上記の情報処理装置の一態様では、前記船舶から前記マーカ直線までの距離と、所定時間内に算出された前記差分値の平均値と、を用いて前記対岸距離を算出する対岸距離算出手段をさらに有する。
【0024】
上記の情報処理装置の一態様では、前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記マーカ直線の傾きを示す角度と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の前方側に設けられた第1のマーカの位置までの距離と、前記接岸場所のエッジ部分から前記船舶の後方側に設けられた第2のマーカの位置までの距離と、前記第1のマーカと前記第2のマーカとの間の距離に相当するマーカ間隔と、を用いて前記進入角度を算出する進入角度算出手段をさらに有する。
【0025】
上記の情報処理装置の一態様では、前記船舶の正面方向を基準とした場合における前記マーカ直線の傾きを示す角度と、所定時間内に算出された前記差分値の平均値と、を用いて前記進入角度を算出する進入角度算出手段をさらに有する。
【0026】
本発明の他の実施形態では、コンピュータが実行する制御方法は、船舶に設けられた計測装置が生成する計測データを取得し、前記計測データに基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカの位置を取得し、前記2つのマーカの位置を通過する直線であるマーカ直線に基づき、前記船舶と前記接岸場所との間の距離である対岸距離、及び、前記船舶の前記接岸場所への進入角度のうちの少なくとも一方に係る信頼性を判定する。これにより、着岸支援において用いられるパラメータの信頼性を確実に判定することができる。
【0027】
本発明のさらに他の実施形態では、プログラムは、船舶に設けられた計測装置が生成する計測データを取得し、前記計測データに基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカの位置を取得し、前記2つのマーカの位置を通過する直線であるマーカ直線に基づき、前記船舶と前記接岸場所との間の距離である対岸距離、及び、前記船舶の前記接岸場所への進入角度のうちの少なくとも一方に係る信頼性を判定する処理をコンピュータに実行させる。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記の情報処理装置を実現することができる。このプログラムは記憶媒体に記憶して使用することができる。
【実施例0028】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0029】
[運転支援システムの概要]
図1A図1Cは、本実施例に係る運航支援システムの概略構成である。具体的には、図1Aは、運航支援システムのブロック構成図を示し、図1Bは、運航支援システムに含まれる船舶及び後述のライダ3の視野範囲(「計測範囲」又は「測距可能範囲」とも呼ぶ。)90を例示した上面図であり、図1Cは、船舶及びライダ3の視野範囲90を後ろから示した図である。運航支援システムは、移動体である船舶と共に移動する情報処理装置1と、当該船舶に搭載されたセンサ群2とを有する。以後では、運転支援システムが搭載された船舶を「対象船舶」とも呼ぶ。
【0030】
情報処理装置1は、センサ群2と電気的に接続し、センサ群2に含まれる各種センサの出力に基づき、対象船舶の運航支援を行う。運航支援には、自動接岸(着岸)などの接岸支援などが含まれている。ここで、「接岸」とは、岸壁に対象船舶を着ける場合の他、桟橋等の構造体に対象船舶を着ける場合も含まれる。また、以後では、「接岸場所」とは、接岸の対象となる岸壁、桟橋等の構造体の総称であるものとする。情報処理装置1は、船舶に設けられたナビゲーション装置であってもよく、船舶に内蔵された電子制御装置であってもよい。
【0031】
センサ群2は、船舶に設けられた種々の外界センサ及び内界センサを含んでいる。本実施例では、センサ群2は、例えば、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)3を含んでいる。
【0032】
ライダ3は、水平方向の所定の角度範囲(図1B参照)および垂直方向の所定の角度範囲(図1C参照)に対してパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置を示す3次元の点群データを生成する外界センサである。
【0033】
ライダ3は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光の反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づくスキャンデータを出力する出力部とを有する。レーザ光を照射する方向(走査位置)ごとに計測されるデータは、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、上述の受光信号に基づき特定される当該レーザ光の応答遅延時間とに基づき生成される。以後では、ライダ3の計測範囲内においてレーザ光が照射されることにより計測された点又はそのデータを「被計測点」とも呼ぶ。
【0034】
図1B及び図1Cの例では、ライダ3として、対象船舶の左舷前方に向けられたライダと、対象船舶の左舷後方に向けられたライダと、対象船舶の右舷前方に向けられたライダと、対象船舶の右舷後方に向けられたライダと、が夫々船舶に設けられている。そして、対象船舶が接岸場所に近づいた場合、対象船舶が接岸場所に横付けする側に設けられた対象船舶の前方のライダ3と後方のライダ3とにより、接岸場所を計測した点群データが夫々生成されることになる。以後では、接岸場所を計測する前方のライダ3を「前方ライダ」と呼び、接岸場所を計測する後方のライダ3を「後方ライダ」と呼ぶ。前方計測ライダ及び後方計測ライダは、「第1計測装置」及び「第2計測装置」の一例である。なお、ライダ3の配置は図1B及び図1Cの例に限定されない。
【0035】
ここで、点群データは、各計測方向を画素とし、各計測方向での計測距離及び反射強度値を画素値とする画像(フレーム)とみなすことができる。この場合、画素の縦方向の並びにおいて仰俯角におけるレーザ光の出射方向(即ち計測方向)が異なり、画素の横方向の並びにおいて水平角におけるレーザ光の出射方向が異なる。以後において、点群データを画像とみなした場合に横方向のインデックスの位置が一致する画素の列(即ち縦列)に対応する被計測点を「縦ライン」とも呼ぶ。また、点群データを画像とみなした場合の横方向のインデックスを「水平番号」と呼び、縦方向のインデックスを「垂直番号」と呼ぶ。
【0036】
ライダ3は、上述したスキャン型のライダに限らず、2次元アレイ状のセンサの視野にレーザ光を拡散照射することによって3次元データを生成するフラッシュ型のライダであってもよい。ライダ3は、本発明における「計測装置」の一例である。
【0037】
[情報処理装置の構成]
図2は、情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置1は、主に、インターフェース11と、メモリ12と、コントローラ13と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0038】
インターフェース11は、情報処理装置1と外部装置とのデータの授受に関するインターフェース動作を行う。本実施例では、インターフェース11は、センサ群2の各センサから出力データを取得し、コントローラ13へ供給する。また、インターフェース11は、例えば、コントローラ13が生成した対象船舶の制御に関する信号を、対象船舶の運転を制御する対象船舶の各構成要素に供給する。例えば、対象船舶は、エンジンや電気モータなどの駆動源と、駆動源の駆動力に基づき進行方向の推進力を生成するスクリューと、駆動源の駆動力に基づき横方向の推進力を生成するスラスターと、船舶の進行方向を自在に定めるための機構である舵等とを備える。そして、自動接岸などの自動運転時には、インターフェース11は、コントローラ13が生成した制御信号を、これらの各構成要素に供給する。なお、対象船舶に電子制御装置が設けられている場合には、インターフェース11は、当該電子制御装置に対し、コントローラ13が生成した制御信号を供給する。インターフェース11は、無線通信を行うためのネットワークアダプタなどのワイヤレスインターフェースであってもよく、ケーブル等により外部装置と接続するためのハードウェアインターフェースであってもよい。また、インターフェース11は、入力装置、表示装置、音出力装置等の種々の周辺装置とのインターフェース動作を行ってもよい。
【0039】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。メモリ12は、コントローラ13が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。なお、コントローラ13が実行するプログラムは、メモリ12以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0040】
また、メモリ12には、本実施例において情報処理装置1が実行する処理に必要な情報が記憶される。例えば、メモリ12には、接岸場所の位置に関する情報を含む地図データが記憶されてもよい。他の例では、メモリ12には、ライダ3が1周期分の走査を行った場合に得られる点群データに対してダウンサンプリングを行う場合のダウンサンプリングのサイズに関する情報が記憶される。
【0041】
コントローラ13は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)などの1又は複数のプロセッサを含み、情報処理装置1の全体を制御する。この場合、コントローラ13は、メモリ12等に記憶されたプログラムを実行することで、対象船舶の運転支援等に関する処理を行う。
【0042】
また、コントローラ13は、機能的には、接岸場所検出部15と、接岸パラメータ算出部16と、を有する。接岸場所検出部15は、ライダ3が出力する点群データに基づき、接岸場所の検出に関する処理を行う。接岸パラメータ算出部16は、接岸場所への接岸に必要なパラメータ(「接岸パラメータ」とも呼ぶ。)の算出を行う。ここで、接岸パラメータには、対象船舶と接岸場所との間の距離(対岸距離)、対象船舶の接岸場所への進入角度、対象船舶が接岸場所へ近づく速度(接岸速度)などが含まれる。また、接岸パラメータ算出部16は、接岸場所検出部15の処理結果及び接岸パラメータに基づき、接岸場所への接岸に関する信頼度を表す情報(「信頼度情報」とも呼ぶ。)を算出する。そして、コントローラ13は、「取得手段」、「マーカ位置取得手段」、「信頼性判定手段」及びプログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0043】
なお、コントローラ13が実行する処理は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現してもよい。また、コントローラ13が実行する処理は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、コントローラ13が本実施例において実行するプログラムを実現してもよい。
【0044】
[接岸支援処理の概要]
次に、情報処理装置1が実行する接岸支援処理の概要について説明する。情報処理装置1は、接岸場所が存在する方向において計測されたライダ3の点群データに基づき、接岸場所の側面に沿った直線(「接岸側面直線L」とも呼ぶ。)を生成する。すなわち、接岸側面直線Lは、接岸場所の岸壁側面に沿った直線である。そして、情報処理装置1は、接岸側面直線Lに基づき、対岸距離などの接岸パラメータを算出する。
【0045】
図3は、接岸支援処理に関する接岸場所検出部15及び接岸パラメータ算出部16の機能ブロック図である。接岸場所検出部15は、機能的には、法線ベクトル算出ブロック20と、視野・検出面特定ブロック21と、法線数特定ブロック22と、平均・分散算出ブロック23と、接岸状況判定ブロック24とを有する。また、接岸パラメータ算出部16は、機能的には、近傍点探索ブロック26と、直線生成ブロック27と、対岸距離算出ブロック28と、進入角度算出ブロック29と、接岸速度算出ブロック30と、信頼度情報生成ブロック40と、マーカ検出ブロック41と、マーカ直線生成ブロック42と、判定パラメータ算出ブロック43と、を有する。
【0046】
マーカ検出ブロック41は、点群データを構成する被計測点に基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカを検出するとともに、当該検出した2つのマーカの座標位置を取得する。
【0047】
マーカ直線生成ブロック42は、マーカ検出ブロック41により検出された2つのマーカの座標位置に基づき、当該2つのマーカの座標位置を通過する直線であるマーカ直線を生成する。
【0048】
判定パラメータ算出ブロック43は、対岸距離算出ブロック28により算出された対岸距離と、進入角度算出ブロック29により算出された進入角度と、マーカ直線生成ブロック42により生成されたマーカ直線と、に基づき、当該対岸距離の信頼性の判定に用いるパラメータ、及び、当該進入角度の信頼性の判定に用いるパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータを算出する。
【0049】
法線ベクトル算出ブロック20は、接岸場所が存在する方向に対してライダ3が生成する点群データに基づき、接岸場所が形成する面(「接岸面」とも呼ぶ。)の法線ベクトルを算出する。この場合、法線ベクトル算出ブロック20は、例えば、対象船舶において接岸側を計測範囲に含むライダ3が生成する点群データに基づき、上述の法線ベクトルを算出する。ライダ3の計測範囲及び接岸場所の方向に関する情報は、例えばメモリ12等に予め登録されていてもよい。
【0050】
この場合、法線ベクトル算出ブロック20は、好適には、点群データのダウンサンプリングと、レーザ光が水面で反射することで得られたデータ(「水面反射データ」とも呼ぶ。)の除去と、を夫々行うとよい。
【0051】
この場合、まず、法線ベクトル算出ブロック20は、ライダ3が生成する点群データに対し、水面位置より下方に存在するデータを、水面反射データ(即ち誤検出データ)として除去する。なお、法線ベクトル算出ブロック20は、例えば、周辺に水面以外の物体が存在しないときにライダ3が生成する点群データの高さ方向の平均値等に基づき、水面位置を推定する。そして、法線ベクトル算出ブロック20は、水面反射データを除去後の点群データに対し、所定サイズの格子空間毎に被計測点を統合する処理であるダウンサンプリングを行う。そして、法線ベクトル算出ブロック20は、ダウンサンプリング後の点群データにより示される各被計測点について、周辺の複数の被計測点を用いて法線ベクトルを算出する。なお、ダウンサンプリングは、水面で反射したデータの除去の前に実行されてもよい。
【0052】
視野・検出面特定ブロック21は、ライダ3の視野角内に存在する接岸場所の面(「視野内面」とも呼ぶ。)と、法線ベクトル算出ブロック20が算出した法線ベクトルに基づき検出した接岸場所の面(「検出面」とも呼ぶ。)との特定を行う。この場合、視野・検出面特定ブロック21は、視野内面及び検出面として、接岸場所の上面又は/及び側面が含まれているか否かの特定を行う。
【0053】
法線数特定ブロック22は、法線ベクトル算出ブロック20が算出した法線ベクトルのうち、鉛直方向の法線ベクトルと、それに垂直な方向(即ち水平方向)の法線ベクトルとを夫々抽出し、鉛直方向の法線ベクトルの本数と、水平方向の法線ベクトルの本数とを算出する。ここでは、法線数特定ブロック22は、鉛直方向の法線ベクトルを、接岸場所の上面の被計測点に対する法線、水平方向の法線ベクトルを、接岸場所の側面の被計測点に対する法線を表すものとみなし、夫々の本数を接岸場所に関する信頼度の一指標として算出している。
【0054】
平均・分散算出ブロック23は、法線ベクトル算出ブロック20が算出した法線ベクトルのうち、鉛直方向の法線ベクトルと、それに垂直な方向(即ち水平方向)の法線ベクトルとを夫々抽出し、鉛直方向の法線ベクトルの平均及び分散と、水平方向の法線ベクトルの平均及び分散を算出する。
【0055】
接岸状況判定ブロック24は、同一の点群データに基づき特定又は算出された、視野・検出面特定ブロック21、法線数特定ブロック22、平均・分散算出ブロック23の各処理結果を、当該点群データの生成時点での接岸場所の検出状況を表す判定結果として取得する。そして、接岸状況判定ブロック24は、視野・検出面特定ブロック21、法線数特定ブロック22、平均・分散算出ブロック23の各処理結果を、接岸場所の検出状況の判定結果として、接岸パラメータ算出部16に供給する。
【0056】
近傍点探索ブロック26は、点群データを構成する被計測点から、縦ラインごとに対象船舶に最も近い最近傍点を探索する処理を行う。例えば、図4Aに示すように、接岸する岸壁をライダ3が捉えている場合、船舶に最も近い点である最近傍点は岸壁の上面と側面の間のエッジ部分になる。縦ラインごとに最近傍点探索を行った点の集合は、岸壁のエッジ付近の点を集めたものとなる。
【0057】
直線生成ブロック27は、近傍点探索ブロック26が判定した最近傍点に基づき、主成分分析や最小二乗法を用いて、接岸場所の側面に沿った直線である接岸側面直線Lを生成する。このような処理によれば、直線生成ブロック27は、例えば、図4Bに示すような接岸側面直線Lを生成することができる。図4Bは、接岸側面直線を明示した岸壁の斜視図である。
【0058】
対岸距離算出ブロック28は、直線生成ブロック27が生成する接岸側面直線Lと、マーカ直線生成ブロック42により生成されたマーカ直線と、に基づき、対象船舶と接岸場所との最短距離に相当する対岸距離を算出する。ここで、対岸距離算出ブロック28は、接岸場所を計測可能な複数のライダ3が存在する場合には、複数のライダ3の点群データをまとめて接岸側面直線Lを生成し、各ライダ3との最短距離を対岸距離として算出する。あるいは、対岸距離算出ブロック28は、ライダ3の点群データごとに接岸側面直線Lを生成し、各接岸側面直線Lと各ライダ3との最短距離を対岸距離として算出してもよい。また、対岸距離算出ブロック28は、船舶中心位置等の基準点から接岸側面直線Lまでの最短距離を対岸距離として算出してもよい。なお、対岸距離算出ブロック28は、ライダ3ごとの最短距離を対岸距離とみなす代わりに、対岸距離をライダ3毎の最短距離のうち短い距離を対岸距離として定めてもよく、これらの最短距離の平均を対岸距離として定めてもよい。
【0059】
進入角度算出ブロック29は、直線生成ブロック27が生成した接岸側面直線Lと、マーカ直線生成ブロック42により生成されたマーカ直線と、に基づき、接岸場所に対する対象船舶の進入角度を算出する。具体的には、進入角度算出ブロック29は、正接を規定する2つの引数から逆正接(アーク・タンジェント)を求める関数である「atan2」を用いて進入角度を算出する。より詳しくは、進入角度算出ブロック29は、接岸側面直線Lの方向ベクトルから、関数atan2の計算により、進入角度を算出する。
【0060】
接岸速度算出ブロック30は、対岸距離算出ブロック28が算出した対岸距離に基づき、接岸場所に対象船舶が近づく速度である接岸速度を算出する。例えば、接岸速度算出ブロック30は、対岸距離(最短距離)の時間変化を接岸速度として算出する。
【0061】
信頼度情報生成ブロック40は、接岸状況判定ブロック24、直線生成ブロック27、対岸距離算出ブロック28及び進入角度算出ブロック29の処理結果に基づき、信頼度情報を生成する。
【0062】
ここで、信頼度情報の生成に係る第1の具体例について説明する。信頼度情報生成ブロック40は、接岸場所の検出時の視野角、接岸場所の面検出、法線ベクトルの本数及び分散等の各要素に対してフラグを生成し、生成したフラグのベクトルを信頼度情報として生成する。以後では、フラグは、「1」の場合には対応する要素の信頼度が所定値よりも高く、「0」の場合には対応する要素の信頼度が当該所定値以下であることを表すものとする。
【0063】
図5Aは、信頼度情報生成ブロック40が生成する信頼度情報のデータ構造の一例を示す図である。図5Aに示すように、信頼度情報は、「上面」、「側面」、「直線」、「距離」、「角度」の項目を有する。また、項目「上面」は、サブ項目「視野角」、「検出」、「法線数」、「分散」を有し、項目「側面」は、「視野角」、「検出」、「法線数」、「分散」のサブ項目を有する。また、項目「直線」は、サブ項目「絶対値」を有し、項目「距離」は、サブ項目「変化量」、「変化率」、「算出値」を有し、項目「角度」は、サブ項目「変化量」、「算出値」を有する。
【0064】
ここで、信頼度情報生成ブロック40は、項目「上面」のサブ項目「視野角」には、接岸場所の上面が視野角の範囲内である場合に「1」、上面が視野角外である場合に「0」となるフラグを登録する。また、信頼度情報生成ブロック40は、項目「上面」のサブ項目「検出」には、接岸場所の上面が検出面である場合に「1」、上面が検出面でない場合に「0」となるフラグを登録する。また、信頼度情報生成ブロック40は、項目「上面」のサブ項目「法線数」には、接岸場所の上面に対する法線ベクトルの本数が所定の閾値(例えば10本)以上の場合に「1」、当該本数が閾値未満の場合に「0」となるフラグを登録する。また、信頼度情報生成ブロック40は、項目「上面」のサブ項目「分散」には、接岸場所の上面に対する法線ベクトルのx,y,z成分の分散がいずれも所定の閾値(例えば1.0)未満の場合に「1」、当該いずれかの分散が閾値以上の場合に「0」となるフラグを登録する。また、信頼度情報生成ブロック40は、項目「側面」の各サブ項目においても、項目「上面」の各サブ項目と同一規則により定めたフラグを登録する。
【0065】
また、信頼度情報生成ブロック40は、項目「直線」のサブ項目「絶対値」には、接岸側面直線Lの信頼度を表すフラグを登録する。例えば、対象船舶の前後にライダ3が夫々設けられている場合に、信頼度情報生成ブロック40は、接岸側面直線Lの方向ベクトルと、対象船舶の前後のライダ3の最近傍点を結んだ直線の方向ベクトルとの成分ごとの差分がいずれも閾値未満の場合に「1」、当該差分のいずれかが閾値以上の場合に「0」となるフラグを登録する。
【0066】
また、信頼度情報生成ブロック40は、項目「距離」のサブ項目「変化量」には、対岸距離算出ブロック28が算出する対岸距離の1時刻前からの変化量が所定の閾値(例えば1.0m)未満である場合に「1」、当該変化量が閾値以上の場合に「0」となるフラグを登録する。また、信頼度情報生成ブロック40は、項目「距離」のサブ項目「変化率」には、対岸距離算出ブロック28が算出する対岸距離の1時刻前からの変化率が所定の閾値(例えば±10%)未満である場合に「1」、当該変化率が閾値以上の場合に「0」となるフラグを登録する。また、信頼度情報生成ブロック40は、項目「角度」のサブ項目「変化量」には、進入角度算出ブロック29が算出する進入角度の1時刻前からの変化量が所定の閾値(例えば1.0度)未満である場合に「1」、当該変化量が閾値以上の場合に「0」となるフラグを登録する。
【0067】
また、信頼度情報生成ブロック40は、項目「距離」のサブ項目「算出値」には、対岸距離算出ブロック28により算出された対岸距離の信頼性に応じ、「0」または「1」となるフラグを登録する。また、信頼度情報生成ブロック40は、項目「角度」のサブ項目「算出値」には、進入角度算出ブロック29により算出された進入角度の信頼性に応じ、「0」または「1」となるフラグを登録する。なお、項目「距離」のサブ項目「算出値」、及び、項目「角度」のサブ項目「算出値」におけるフラグの登録に係る処理については、後程説明する。また、本実施例の信頼度情報によれば、項目「距離」のサブ項目「算出値」におけるフラグと、項目「角度」のサブ項目「算出値」におけるフラグと、のうちの少なくとも一方が登録されていればよい。また、上述の各閾値は、例えば、メモリ12等に予め記憶された適合値に設定される。また、信頼度情報は、ライダ3毎に生成されてもよい。
【0068】
続いて、信頼度情報の生成に係る第2の具体例について説明する。図5Bは、信頼度情報に含まれる指標及び信頼度の一例を示す図である。図5Cは、図5Bに示される指標を明示した対象船舶及び接岸場所の俯瞰図である。なお、ここでは、接岸場所である岸壁には、接岸の基準物であるマーカM0及びマーカM1が設けられており、情報処理装置1は、このマーカM0及びマーカM1をライダ3の点群データに基づき検出し、マーカM0及びマーカM1の間に存在する接岸場所のエッジ付近の被計測点(近傍点集合)を用いて接岸側面直線Lの生成等の各処理を実行する。以降においては、マーカM0及びマーカM1の間に存在する接岸場所のエッジ付近の被計測点を「対象点」とも呼ぶ。なお、マーカM0及びマーカM1が検出されない場合には、例えば、近傍点集合の全てを対象点とみなすものとする。
【0069】
指標「c」は、対象点の点数に基づく指標であり、ここでは一例として変数xを対象点の点数とした1次関数として表されている。指標「c」は、対象点の標準偏差に基づく指標であり、ここでは一例として変数xを対象点の標準偏差とした1次関数として表されている。指標「c」は、2台のライダ3により前方側と後方側の両方の岸壁を計測できたか否かを示す指標であり、ここでは一例として両方が計測できた場合を「1.0」とし、片方のみが計測できた場合を「0.0」としている。指標「c」は、対象点の両端(接岸側面直線Lに沿った方向における両端)の間隔に基づく指標であり、変数xを上述の両端の間隔とした1次関数として表されている。また、指標c~cは0~1の範囲に制限するように算出される。
【0070】
演算信頼度「c」は、上述した各指標c~cに基づく信頼度であり、ここでは、指標c~cに対する重要度に応じた重み係数「w」~「w」を用いた指標c~cの加重平均値となっている。また、重み係数w~wの設定値の一例が図示されている。各指標c~cは、いずれも0~1の範囲であるため、それらの加重平均値である演算信頼度cも0~1の範囲の数値として算出される。
【0071】
総合信頼度「r」は、岸壁の側面の検出に関する信頼度である側面検出信頼度「q」と、岸壁の上面の検出に関する信頼度である上面検出信頼度「q」と、マーカM0の検出に関する信頼度であるマーカ検出信頼度「m」と、マーカM1の検出に関する信頼度であるマーカ検出信頼度「m」と、演算信頼度cとに基づく信頼度である。ここでは、各信頼度q、q、m、m、cに対する重要度に応じた重み係数「wqs」、「wqu」、「wm0」、「wm1」、「w」を用いた信頼度q、q、m、m、cの加重平均値となっている。また、重み係数wqs、wqu、wm0、wm1、wの設定値の一例が図示されている。なお、情報処理装置1は、例えば、側面検出信頼度qを、図5Aに示す信頼度情報の項目「側面」に基づき算出し、上面検出信頼度qを、同図の信頼度情報の項目「上面」に基づき算出してもよい。また、情報処理装置1は、マーカ検出信頼度m及びマーカ検出信頼度mを、例えば、マーカM0及びマーカM1の夫々のライダ3による点群データの被計測点の点数に基づき算出してもよい。そして、側面検出信頼度q、上面検出信頼度q、マーカ検出信頼度m、マーカ検出信頼度mは、いずれも0~1の範囲となるように算出される。また、前方と後方の両方の岸壁を検出した場合は、前方岸壁の側面検出信頼度qs0、後方岸壁の側面検出信頼度qs1、前方岸壁の上面検出信頼度qu0、後方岸壁の上面検出信頼度qu1として算出する。側面検出信頼度q、上面検出信頼度q、マーカ検出信頼度m、マーカ検出信頼度m、演算信頼度cは、いずれも0~1の範囲であるため、それらの加重平均値である総合信頼度rも0~1の範囲の数値として算出される。したがって、総合信頼度rが1に近いほど、算出された接岸パラメータの信頼性が高く、総合信頼度rが0に近いほど、算出された接岸パラメータの信頼性が低いことがわかる。
【0072】
すなわち、第2の具体例により生成される信頼度情報には、以上に述べたような方法により算出された各指標及び信頼度が含まれている。
【0073】
次に、法線ベクトル算出ブロック20、法線数特定ブロック22及び平均・分散算出ブロック23の処理の具体例について図6A及び図6Bを参照して説明する。
【0074】
図6Aは、対象船舶の船体を基準とした船体座標系の一例を示す図である。図6Aに示すように、ここでは、対象船舶の正面(前進)方向を「x」座標、対象船舶の側面方向を「y」座標、対象船舶の高さ方向を「z」座標とする。そして、ライダ3が計測した、ライダ3を基準とした座標系の計測データは、図6Aに示す船体座標系に変換される。なお、移動体に設置されたライダを基準とした座標系の点群データを移動体の座標系に変換する処理については、例えば、国際公開WO2019/188745などに開示されている。
【0075】
図6Bは、接岸場所である岸壁に対し、ライダ3が計測した計測位置を表す被計測点及び被計測点に基づき算出した法線ベクトルを明示した接岸場所(ここでは岸壁)の斜視図である。図6Bでは、被計測点を丸により示し、法線ベクトルを矢印により示している。ここでは、岸壁の上面及び側面の両方がライダ3により計測できた例が示されている。
【0076】
図6Bに示すように、法線ベクトル算出ブロック20は、岸壁の側面及び上面の被計測点に対する法線ベクトルを算出する。法線ベクトルは、対象とする平面や曲面に垂直なベクトルであるため、面として構成可能な複数の被計測点を用いて算出される。したがって、縦横が所定長の格子あるいは半径が所定長の円を設定し、その内部に存在する被計測点を用いて計算する。この場合、法線ベクトル算出ブロック20は、被計測点毎に法線ベクトルを算出してもよく、所定間隔毎に法線ベクトルを算出してもよい。そして、法線数特定ブロック22は、z成分が所定の閾値より大きい法線ベクトルを、鉛直方向を向いた法線ベクトルであると判定する。なお、法線ベクトルは、単位ベクトル化されているものとする。また、z成分が所定の閾値未満となる法線ベクトルを、水平方向を向いた法線ベクトルであると判定する。そして、法線数特定ブロック22は、鉛直方向の法線ベクトルの本数(ここでは5本)と水平方向の法線ベクトル(ここでは4本)とを特定する。さらに、平均・分散算出ブロック23は、鉛直方向の法線ベクトルの平均及び分散と、水平方向の法線ベクトルの平均及び分散を算出する。なお、エッジ部分は、その周辺の被計測点が上面であったり側面であったりするため、斜めの方向になる。
【0077】
[信頼性の判定に係る処理]
次に、信頼性の判定に係る処理について説明する。
【0078】
(第1判定方法)
図7は、前方マーカ及び後方マーカが設けられた接岸場所の例を示す図である。
【0079】
本判定方法においては、例えば、図7に示すような、再帰性反射板等の高反射率特性を有する2つのマーカが設けられた接岸場所SBPに船舶を着岸させる場合について説明する。また、本判定方法以降の説明においては、特に言及のない限り、接岸場所SBPに着岸させる船舶の前方側に設けられたマーカを前方マーカFMと称し、当該船舶の後方側に設けられたマーカを後方マーカRMと称するものとする。また、本判定方法においては、対岸距離の信頼性の判定に係る処理について説明する。また、本判定方法においては、接岸場所SBPのエッジ部分から前方マーカFMが実際に設置されている位置までの距離wmfと、当該接岸場所SBPのエッジ部分から後方マーカRMが実際に設置されている位置までの距離wmrと、が既知である場合について説明する。
【0080】
接岸パラメータ算出部16は、例えば、ライダ3により生成された点群データの中から所定の強度以上の被計測点を抽出する処理を行うことにより、前方マーカFMを構成する点群データFMGと、後方マーカRMを構成する点群データRMGと、をそれぞれ取得する。また、接岸パラメータ算出部16は、点群データFMGに含まれる各被計測点の重心位置に基づき、船舶座標系における前方マーカFMの座標位置M[mfxfyfzを取得する。また、接岸パラメータ算出部16は、点群データRMGに含まれる各被計測点の重心位置に基づき、船舶座標系における後方マーカRMの座標位置M[mrxryrzを取得する。
【0081】
その後、接岸パラメータ算出部16は、座標位置M及びMに基づき、前方マーカFM及び後方マーカRMを通過する直線であるマーカ直線Lを生成する。具体的には、マーカ直線Lは、例えば、下記数式(1)及び(2)により表されるような直線として生成される。なお、下記数式(1)において、「t」は媒介変数を表し、「u」はマーカ直線Lにおける単位方向ベクトルを表している。
【0082】
【数1】
【0083】
【数2】
【0084】
接岸パラメータ算出部16は、座標位置Mと、原点Oの座標位置O[Opxpypzと、上記数式(2)の単位方向ベクトルu[umxmymzと、を下記数式(3)に適用することにより、当該原点Oとマーカ直線Lとを結ぶ垂線の足に相当する座標位置H[Hmxmymzを算出する。
【0085】
【数3】
【0086】
接岸パラメータ算出部16は、座標位置Oのx座標値Opx及びy座標値Opyと、座標位置Hのx座標値Hmx及びy座標値Hmyと、を下記数式(4)に適用することにより、xy平面における、原点Oとマーカ直線Lとを結ぶ垂線の長さに相当する距離dを算出する。すなわち、距離dは、対象船舶からマーカ直線Lまでの距離に相当する。
【0087】
【数4】
【0088】
以上に述べた処理によれば、例えば、図8に示すような座標位置H及び距離dが算出される。図8は、座標位置H及び距離dを明示した上面図である。
【0089】
接岸パラメータ算出部16は、距離dと、距離wmfと、距離wmrと、を下記数式(5)に適用することにより、後述の信頼性の判定に用いられる判定距離に相当する距離dを算出する。また、接岸パラメータ算出部16は、原点Oから接岸側面直線Lまでの距離dを算出する。なお、距離dは前述した対岸距離である。すなわち、接岸パラメータ算出部16は、距離dと、距離wmfと、距離wmrと、に基づき、後述の信頼性の判定に用いられる判定距離を算出する。また、距離dは、対象船舶から接岸場所のエッジに沿った直線までの距離に相当する。
【0090】
【数5】
【0091】
ここで、距離dを算出するための処理の具体例について説明する。
【0092】
接岸パラメータ算出部16は、前述したように、接岸場所エッジ点群を対象とした主成分分析や最小二乗法により、下記数式(6)に示される接岸側面直線Lを生成する。
【0093】
【数6】
【0094】
ここで、「[x」は後述の接岸場所エッジ点群が示す被計測点の重心位置を示し、「[a b c]」は方向ベクトルを示し、「t」は媒介変数を示す。例えば、主成分分析を行う場合には、最も大きい固有値に対応する固有ベクトルが接岸側面直線Lの方向ベクトルとなる。なお、方向ベクトル[a b c]は単位ベクトルとして生成されている。
【0095】
ここで、被計測点の重心位置をGとし、単位方向ベクトルをuとすると、上記数式(6)を下記数式(7)のように表すことができる
【0096】
【数7】
【0097】
ここで、接岸場所エッジ点群に含まれる各被計測点の重心G、及び、原点Oと接岸側面直線Lとを結ぶ垂線の足Hは、図9Aのような位置関係を有する。また、単位ベクトルuを明示した図9Bからわかるように、ベクトルH-Gと単位ベクトルuとが平行であるため、H-G=au(aは定数)の関係が成立する。よって、接岸パラメータ算出部16は、下記数式(8)を用いて垂線の足Hの座標位置を算出することができる。
【0098】
【数8】
【0099】
また、接岸パラメータ算出部16は、原点Oの座標位置Oのx座標値Opx及びy座標値Opyと、垂線の足Hの座標位置のx座標値H及びy座標値Hと、を下記数式(9)に適用することにより、当該原点Oから当該垂線の足Hまでのxy平面上の距離dを算出する。
【0100】
【数9】
【0101】
以上に述べた処理によれば、例えば、図10に示すような距離d及び距離dが算出される。図10は、距離d及び距離dを明示した上面図である。
【0102】
接岸パラメータ算出部16は、距離dと、距離dと、閾値THAと、に基づき、当該距離dの対岸距離としての信頼度が所定値より高いか否かを判定する。本判定方法においては、閾値THAが、例えば、1メートルのような値として設定されていればよい。
【0103】
具体的には、接岸パラメータ算出部16は、例えば、|d-d|の値が閾値THA以下である場合には、距離dの対岸距離としての信頼度が所定値より高いと判定する。そして、このような判定を行った場合には、接岸パラメータ算出部16は、図5の信頼度情報に含まれる項目「距離」のサブ項目「算出値」にフラグ「1」を登録する。
【0104】
また、接岸パラメータ算出部16は、例えば、|d-d|の値が閾値THAより大きい場合には、距離dの対岸距離としての信頼度が所定値以下であると判定する。そして、このような判定を行った場合には、接岸パラメータ算出部16は、図5の信頼度情報に含まれる項目「距離」のサブ項目「算出値」にフラグ「0」を登録する。
【0105】
なお、本判定方法によれば、例えば、船舶が接岸場所から遠い位置にいる場合や、あるいは船舶が接岸場所に非常に近接する位置にいる場合等、当該接岸場所のエッジ(上面及び側面の境界)を構成する複数の被計測点(最近傍点)を含む点群データ(以降、「接岸場所エッジ点群」とも称する)に含まれる被計測点の数が非常に少なくなるような場合に、距離dの対岸距離としての信頼度を判定する処理が行われるようにしてもよい。また、このような処理が行われた場合には、マーカ直線Lに基づいて接岸距離の信頼性の判定が行われたことを示す情報が信頼度情報に付加されるようにすればよい。
【0106】
(第2判定方法)
本判定方法においては、対岸距離の信頼性の判定に係る処理について説明する。また、本判定方法においては、図7に例示した接岸場所SBPに船舶を着岸させる場合であるとともに、距離wmf及びwmrが両方とも不明である場合について説明する。
【0107】
接岸パラメータ算出部16は、第1判定方法において述べた処理と同様の処理を行うことにより、距離d及び距離dを算出する(図11A参照)。また、接岸パラメータ算出部16は、距離dから距離dを減じることにより、後述の信頼性の判定に用いられる差分値Δdmqを算出する。また、接岸パラメータ算出部16は、差分値Δdmqの時間的な変化を監視する。
【0108】
接岸パラメータ算出部16は、現在時刻における差分値Δdmqに相当する差分値Δdmqcを算出するとともに、当該現在時刻より前の過去の所定時間内に算出された当該差分値Δdmqの平均値Δdmqaを算出する(図11B参照)。
【0109】
接岸パラメータ算出部16は、差分値Δdmqcと、平均値Δdmqaと、閾値THAと、に基づき、距離dの対岸距離としての信頼度が所定値より高いか否かを判定する。
【0110】
具体的には、接岸パラメータ算出部16は、例えば、|Δdmqc-Δdmqa|の値が閾値THA以下である場合には、距離dの対岸距離としての信頼度が所定値より高いと判定する。そして、このような判定を行った場合には、接岸パラメータ算出部16は、図5の信頼度情報に含まれる項目「距離」のサブ項目「算出値」にフラグ「1」を登録する。また、今回の結果Δdmqcを平均値算出処理に用いてΔdmqaを更新する。
【0111】
また、接岸パラメータ算出部16は、例えば、|Δdmqc-Δdmqa|の値が閾値THAより大きい場合には、距離dの対岸距離としての信頼度が所定値以下であると判定する。そして、このような判定を行った場合には、接岸パラメータ算出部16は、図5の信頼度情報に含まれる項目「距離」のサブ項目「算出値」にフラグ「0」を登録する。
【0112】
なお、本判定方法によれば、例えば、船舶が接岸場所から遠い位置にいる場合や、あるいは船舶が接岸場所に非常に近接する位置にいる場合等、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が非常に少なくなるような場合に、dの接岸距離としての信頼度を判定する処理が行われるようにしてもよい。また、このような処理が行われた場合には、マーカ直線Lに基づいて接岸距離の信頼性の判定が行われたことを示す情報が信頼度情報に付加されるようにすればよい。
【0113】
(第3判定方法)
本判定方法においては、進入角度の信頼性の判定に係る処理について説明する。また、本判定方法においては、図7に例示した接岸場所SBPに船舶を着岸させる場合であるとともに、距離wmf及びwmrが両方とも既知である場合について説明する。
【0114】
接岸パラメータ算出部16は、上記数式(1)及び(2)により表されるマーカ直線Lを生成する。また、接岸パラメータ算出部16は、マーカ直線Lの生成に用いた単位方向ベクトルuのx成分umx及びy成分umyを下記数式(10)に適用することにより、船舶座標系のx軸方向を基準とした場合における当該マーカ直線Lの傾きを示す角度Ψを算出する。また、接岸パラメータ算出部16は、単位ベクトルuのx成分uと、単位ベクトルuのy成分uと、を下記数式(11)に適用することにより、船舶座標系のx軸方向を基準とした場合における接岸側面直線Lの傾きを示す角度Ψを算出する。
【0115】
【数10】
【0116】
【数11】
【0117】
以上に述べた処理によれば、例えば、図12に示すような角度Ψ及びΨが算出される。図12は、角度Ψ及びΨを明示した上面図である。
【0118】
接岸パラメータ算出部16は、座標位置M及びMに基づき、前方マーカFMと後方マーカRMとの間の距離に相当するマーカ間隔rを算出する。また、接岸パラメータ算出部16は、角度Ψと、距離dと、距離wmfと、距離wmrと、マーカ間隔rと、を下記数式(12)に適用することにより、後述の信頼性の判定に用いられる判定角度に相当する角度Ψを算出する。すなわち、接岸パラメータ算出部16は、マーカ直線Lにおける単位方向ベクトルuと、距離wmfと、距離wmrと、マーカ間隔rと、に基づき、後述の信頼性の判定に用いられる判定角度を算出する。
【0119】
【数12】
【0120】
接岸パラメータ算出部16は、角度Ψと、角度Ψと、閾値THCと、に基づき、当該角度Ψの進入角度としての信頼度が所定値より高いか否かを判定する。本判定方法においては、閾値THCが、例えば、5°のような値として設定されていればよい。
【0121】
具体的には、接岸パラメータ算出部16は、例えば、|Ψ-Ψ|の値が閾値THC以下である場合には、角度Ψの進入角度としての信頼度が所定値より高いと判定する。そして、このような判定を行った場合には、接岸パラメータ算出部16は、図5の信頼度情報に含まれる項目「角度」のサブ項目「算出値」にフラグ「1」を登録する。
【0122】
また、接岸パラメータ算出部16は、例えば、|Ψ-Ψ|の値が閾値THCより大きい場合には、角度Ψの進入角度としての信頼度が所定値以下であると判定する。そして、このような判定を行った場合には、接岸パラメータ算出部16は、図5の信頼度情報に含まれる項目「角度」のサブ項目「算出値」にフラグ「0」を登録する。
【0123】
なお、本判定方法によれば、例えば、船舶が接岸場所から遠い位置にいる場合や、あるいは船舶が接岸場所に非常に近接する位置にいる場合等、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が非常に少なくなるような場合に、角度Ψの進入角度としての信頼度を判定する処理が行われるようにしてもよい。また、このような処理が行われた場合には、マーカ直線Lに基づいて進入角度の信頼性の判定が行われたことを示す情報が信頼度情報に付加されるようにすればよい。
【0124】
(第4判定方法)
本判定方法においては、進入角度の信頼性の判定に係る処理について説明する。また、本判定方法においては、図7に例示した接岸場所SBPに船舶を着岸させる場合であるとともに、距離wmf及びwmrが両方とも不明である場合について説明する。
【0125】
接岸パラメータ算出部16は、第3判定方法において述べた処理と同様の処理を行うことにより、角度Ψ及び角度Ψを算出する。また、接岸パラメータ算出部16は、角度Ψから角度Ψを減じることにより、後述の信頼性の判定に用いられる差分値ΔΨmqを算出する。また、接岸パラメータ算出部16は、差分値ΔΨmqの時間的な変化を監視する。
【0126】
接岸パラメータ算出部16は、現在時刻における差分値ΔΨmqに相当する差分値ΔΨmqcを算出するとともに、当該現在時刻より前の過去の所定時間内に算出された当該差分値ΔΨmqの平均値ΔΨmqaを算出する(図13参照)。
【0127】
接岸パラメータ算出部16は、差分値ΔΨmqcと、平均値ΔΨmqaと、閾値THCと、に基づき、角度Ψの進入角度としての信頼度が所定値より高いか否かを判定する。
【0128】
具体的には、接岸パラメータ算出部16は、例えば、|ΔΨmqc-ΔΨmqa|の値が閾値THC以下である場合には、角度Ψの進入角度としての信頼度が所定値より高いと判定する。そして、このような判定を行った場合には、接岸パラメータ算出部16は、図5の信頼度情報に含まれる項目「角度」のサブ項目「算出値」にフラグ「1」を登録する。また、今回の結果ΔΨmqcを平均値算出処理に用いてΔΨmqaを更新する。
【0129】
また、接岸パラメータ算出部16は、例えば、|ΔΨmqc-ΔΨmqa|の値が閾値THCより大きい場合には、角度Ψの進入角度としての信頼度が所定値以下であると判定する。そして、このような判定を行った場合には、接岸パラメータ算出部16は、図5の信頼度情報に含まれる項目「角度」のサブ項目「算出値」にフラグ「0」を登録する。
【0130】
なお、本判定方法によれば、例えば、船舶が接岸場所から遠い位置にいる場合や、あるいは船舶が接岸場所に非常に近接する位置にいる場合等、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が非常に少なくなるような場合に、Ψの進入角度としての信頼度を判定する処理が行われるようにしてもよい。また、このような処理が行われた場合には、マーカ直線Lに基づいて進入角度の信頼性の判定が行われたことを示す情報が信頼度情報に付加されるようにすればよい。
【0131】
[処理フロー]
図14Aは、本実施例における接岸支援処理の概要を表すフローチャートである。情報処理装置1は、図14Aのフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0132】
まず、情報処理装置1は、接岸場所方向の点群データを取得する(ステップS11)。この場合、情報処理装置1は、例えば、対象船舶において接岸側を計測範囲に含むライダ3が生成する点群データを取得する。また、情報処理装置1は、取得した点群データのダウンサンプリング及び水面で反射したデータの除去をさらに行ってもよい。
【0133】
次に、情報処理装置1の接岸場所検出部15は、ステップS11で取得された点群データに基づき、法線ベクトルを算出する(ステップS12)。さらに、接岸場所検出部15は、ステップS12において、法線ベクトルの本数及び法線ベクトルの分散等の算出を行う。また、接岸場所検出部15は、ステップS12の処理結果に基づき、視野内面及び検出面の特定を行う(ステップS13)。
【0134】
次に、接岸パラメータ算出部16は、ステップS11で取得した点群データに基づき、縦ラインごとの最近傍探索を行い、縦ラインごとの最近傍点を求める(ステップS14)。
【0135】
次に、接岸パラメータ算出部16は、ステップS14で求めた縦ラインごとの最近傍点を用いて、接岸側面直線Lを生成する(ステップS15)。
【0136】
次に、接岸パラメータ算出部16は、ステップS15で算出した接岸側面直線Lを用いて、接岸パラメータである対岸距離、進入角度、接岸速度を算出する(ステップS16)。接岸パラメータ算出部16は、ステップS16において、対岸距離として距離dを算出する。また、接岸パラメータ算出部16は、ステップS16において、進入角度として角度Ψを算出する。
【0137】
次に、接岸パラメータ算出部16は、ステップS16により算出された対岸距離である距離dと、ステップS16により算出された進入角度である角度Ψと、の信頼性を判定するための処理を行う(ステップS17)。
【0138】
ここで、ステップS17において行われる処理の一例について、図14Bを参照しつつ説明する。図14Bは、信頼性の判定に係る処理の一例を示すフローチャートである。
【0139】
接岸パラメータ算出部16は、接岸場所に設けられた前方マーカFM及び後方マーカRMを検出した(ステップS31)後、当該前方マーカFM及び当該後方マーカRMを通過するマーカ直線Lを生成する(ステップS32)。
【0140】
次に、接岸パラメータ算出部16は、ステップS32により生成したマーカ直線Lを用いて距離d及び角度Ψを算出する(ステップS33)。
【0141】
接岸パラメータ算出部16は、例えば、メモリ12に格納されている地図データ等を参照することにより、距離wmfと、距離wmrと、マーカ間距離に相当するマーカ間隔rと、を取得可能であるか否かを判定する(ステップS34)。
【0142】
接岸パラメータ算出部16は、距離wmfと、距離wmrと、マーカ間隔rと、を取得できる場合(ステップS34:Yes)には、これら3つのパラメータを取得した後、後述のステップS35の処理を行う。また、接岸パラメータ算出部16は、距離wmfと、距離wmrと、マーカ間隔rと、のうちの少なくとも1つを取得できない場合(ステップS34:No)には、後述のステップS42の処理を行う。
【0143】
接岸パラメータ算出部16は、距離dと、距離wmfと、距離wmrと、を用いて判定距離dを算出する(ステップS35)。また、接岸パラメータ算出部16は、角度Ψと、距離wmfと、距離wmrと、マーカ間隔rと、を用いて判定角度Ψを算出する(ステップS35)。
【0144】
続いて、接岸パラメータ算出部16は、距離dと判定距離dとの差が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS36)。
【0145】
接岸パラメータ算出部16は、距離dと判定距離dとの差が所定値以下である場合(ステップS36:Yes)には、当該距離dの信頼性が高いと判定した(ステップS37)後、後述のステップS39の処理を行う。また、接岸パラメータ算出部16は、距離dと判定距離dとの差が所定値よりも大きい場合(ステップS36:No)には、当該距離dの信頼性が低いと判定した(ステップS38)後、後述のステップS39の処理を行う。
【0146】
続いて、接岸パラメータ算出部16は、角度Ψと判定角度Ψとの差が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS39)。
【0147】
接岸パラメータ算出部16は、角度Ψと判定角度Ψとの差が所定値以下である場合(ステップS39:Yes)には、当該角度Ψの信頼性が高いと判定した(ステップS40)後、後述のステップS18の処理を続けて行う。また、接岸パラメータ算出部16は、角度Ψと判定角度Ψとの差が所定値よりも大きい場合(ステップS39:No)には、当該角度Ψの信頼性が低いと判定した(ステップS41)後、後述のステップS18の処理を続けて行う。
【0148】
接岸パラメータ算出部16は、距離dから距離dを減じることにより差分値Δdmqを算出する(ステップS42)。また、接岸パラメータ算出部16は、角度Ψから角度Ψを減じることにより差分値ΔΨmqを算出する(ステップS42)。
【0149】
続いて、接岸パラメータ算出部16は、差分値Δdmqにおける現時刻の差分値Δdmqcと平均値Δdmqaとの差が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS43)。
【0150】
接岸パラメータ算出部16は、現時刻の差分値Δdmqcと平均値Δdmqaとの差が所定値以下である場合(ステップS43:Yes)には、距離dの信頼性が高いと判定し(ステップS44)、当該平均値Δdmqaの算出結果を更新した(ステップS45)後、後述のステップS47の処理を行う。また、接岸パラメータ算出部16は、現時刻の差分値Δdmqcと平均値Δdmqaとの差が所定値よりも大きい場合(ステップS43:No)には、距離dの信頼性が低いと判定した(ステップS46)後、後述のステップS47の処理を行う。
【0151】
続いて、接岸パラメータ算出部16は、差分値ΔΨmqにおける現時刻の差分値ΔΨmqcと平均値ΔΨmqaとの差が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS47)。
【0152】
接岸パラメータ算出部16は、現時刻の差分値ΔΨmqcと平均値ΔΨmqaとの差が所定値以下である場合(ステップS47:Yes)には、角度Ψの信頼性が高いと判定し(ステップS48)、当該平均値ΔΨmqaの算出結果を更新した(ステップS49)後、後述のステップS18の処理を続けて行う。また、接岸パラメータ算出部16は、現時刻の差分値ΔΨmqcと平均値ΔΨmqaとの差が所定値よりも大きい場合(ステップS47:No)には、角度Ψの信頼性が低いと判定した(ステップS50)後、後述のステップS18の処理を続けて行う。
【0153】
そして、接岸パラメータ算出部16は、ステップS17の処理により得られた距離d及び角度Ψの信頼性に基づき、信頼度情報を生成する(ステップS18)。
【0154】
その後、情報処理装置1は、信頼度情報に基づく船舶の制御を行う(ステップS19)。これにより、情報処理装置1は、接岸状況を的確に反映した信頼度に基づいて、接岸に関する船舶の制御を的確に実行することができる。
【0155】
そして、情報処理装置1は、対象船舶が接岸(着岸)したか否か判定する(ステップS20)。この場合、情報処理装置1は、例えば、センサ群2の出力信号又はインターフェース11を介したユーザ入力等に基づき、対象船舶が接岸したか否か判定する。そして、情報処理装置1は、対象船舶が接岸したと判定した場合(ステップS20:Yes)、フローチャートの処理を終了する。一方、情報処理装置1は、対象船舶が接岸していない場合(ステップS20:No)、ステップS11へ処理を戻す。
【0156】
以上に述べた処理によれば、取得手段は、船舶に設けられた計測装置が生成する計測データを取得する。また、以上に述べた処理によれば、マーカ位置取得手段は、計測データに基づき、接岸場所に設けられた2つのマーカの位置を取得する。また、以上に述べた処理によれば、2つのマーカの位置を通過する直線であるマーカ直線に基づき、船舶と接岸場所との間の距離、及び、当該船舶の当該接岸場所への進入角度のうちの少なくとも一方に係る信頼性を判定する。
【0157】
ところで、従来知られている技術によれば、例えば、図15Aに示すように、岸壁側面に防舷材があることに起因し、当該岸壁をうまく検出できない一方で、当該岸壁の奥側に存在する物体を岸壁として誤判定してしまう場合がある。また、従来知られている技術によれば、例えば、図15Bに示すように、平坦性の高い船尾を有する他の船舶が対象船舶の近辺に停泊している場合に、当該他の船舶の船尾を岸壁として誤判定してしまう場合がある。岸壁を誤判定すると、接岸側面直線を正しく生成できない可能性が高くなり、その場合、図15A図15Bのように、不正確な対岸距離を算出してしまうことになる。よって、前述のような誤判定は、着岸支援において用いられるパラメータとして不正確な値が算出される要因となるとともに、着岸時における安全性の低下を招いてしまう。そのため、前述のような誤判定が生じたことを確実に検知できることが望ましい。
【0158】
これに対し、本実施例によれば、図15Aの状況に応じた誤判定が生じた場合に、図15Cのように算出される距離d及び距離d、あるいは図示していないが角度Ψ及び角度Ψのパラメータに基づき、距離d及び角度Ψのうちの少なくとも一方の信頼性が低いとの判定結果を得ることができるとともに、当該判定結果に応じた信頼度情報を生成することができる。また、本実施例によれば、図15Bの状況に応じた誤判定が生じた場合に、図15Dのように算出される距離d及び距離d、あるいは図示していないが角度Ψ及び角度Ψのパラメータに基づき、当該距離d及び角度Ψのうちの少なくとも一方の信頼性が低いとの判定結果を得ることができるとともに、当該判定結果に応じた信頼度情報を生成することができる。従って、本実施例によれば、着岸支援において用いられるパラメータの信頼性を確実に判定することができる。
【0159】
<第2実施例>
次に、第2実施例について以下に説明する。なお、本実施例においては、第1実施例と同様の構成等を適用可能な部分についての説明を適宜省略するとともに、第1実施例とは異なる部分に主眼を置いて説明を行うものとする。具体的には、本実施例においては、システム構成、ハードウェア構成及び機能構成が第1実施例と略同様である一方で、接岸パラメータ算出部16において行われる処理の内容が第1実施例とは異なっている。そのため、以下においては、接岸パラメータ算出部16により行われる処理についての説明を主に行うものとする。具体的には、本実施例においては、後述する距離dの対岸距離としての信頼性の判定、及び、後述する角度Ψの進入角度としての信頼性の判定に係る処理について説明する。また、本実施例においては、図7に例示した接岸場所SBPに船舶を着岸させる場合であるとともに、距離wmf及びwmrが両方とも既知である場合について説明する。また、本実施例においては、例えば、接岸場所に防舷材が設置されている等の理由により、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が少なくなるような場合に有用な処理について説明する。
【0160】
接岸パラメータ算出部16は、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点(最近傍点)の数が所定数以下である場合に、当該接岸場所エッジ点群に含まれる各被計測点の重心Gの座標位置G[Gpxpypzを算出する。また、接岸パラメータ算出部16は、上記数式(1)及び(2)により表されるマーカ直線Lを生成する。また、接岸パラメータ算出部16は、座標位置Gを通過し、かつ、マーカ直線Lの単位方向ベクトルuに平行な代替直線Lを生成する(図16参照)。具体的には、代替直線Lは、例えば、下記数式(13)により表されるような直線として生成される。なお、下記数式(13)において、「t」は媒介変数を表している。
【0161】
【数13】
【0162】
接岸パラメータ算出部16は、上記数式(3)において、座標位置Mの代わりに座標位置Gを適用することにより、原点Oと代替直線Lとを結ぶ垂線の足に相当する座標位置H[Hpxpypzを算出する。また、接岸パラメータ算出部16は、上記数式(4)において、x座標値Hmxの代わりにx座標値Hpxを適用し、かつ、y座標値座標値Hmyの代わりにy座標値Hpyを適用することにより、原点Oと代替直線Lとを結ぶ垂線の長さに相当する距離dを算出する。
【0163】
接岸パラメータ算出部16は、第1の判定方法において既述の処理と同様の処理を行うことにより距離dを算出する。また、接岸パラメータ算出部16は、距離dと、距離dと、閾値THAと、に基づき、当該距離dの対岸距離としての信頼度が所定値より高いか否かを判定する。
【0164】
具体的には、接岸パラメータ算出部16は、例えば、|d-d|の値が閾値THA以下である場合には、距離dの対岸距離としての信頼度が所定値より高いと判定する。そして、このような判定を行った場合には、接岸パラメータ算出部16は、図5の信頼度情報に含まれる項目「距離」のサブ項目「算出値」にフラグ「1」を登録する。
【0165】
また、接岸パラメータ算出部16は、例えば、|d-d|の値が閾値THAより大きい場合には、距離dの対岸距離としての信頼度が所定値以下であると判定する。そして、このような判定を行った場合には、接岸パラメータ算出部16は、図5の信頼度情報に含まれる項目「距離」のサブ項目「算出値」にフラグ「0」を登録する。
【0166】
接岸パラメータ算出部16は、距離dの対岸距離としての信頼性に係る判定を行った場合には、当該距離dがマーカ直線Lに基づいて算出された距離であることを示す情報を信頼度情報に付加する。加えて、接岸パラメータ算出部16は、当該距離dを対岸距離dに設定する。
【0167】
一方、接岸パラメータ算出部16は、船舶座標系のx軸方向を基準とした場合における代替直線Lの傾きを示す角度Ψを算出する。また、接岸パラメータ算出部16は、第3の判定方法において既述の処理と同様の処理を行うことにより角度Ψを算出する。また、接岸パラメータ算出部16は、角度Ψと、角度Ψと、閾値THCと、に基づき、当該角度Ψの進入角度としての信頼度が所定値より高いか否かを判定する。
【0168】
具体的には、接岸パラメータ算出部16は、例えば、|Ψ-Ψ|の値が閾値THC以下である場合には、角度Ψの進入角度としての信頼度が所定値より高いと判定する。そして、このような判定を行った場合には、接岸パラメータ算出部16は、図5の信頼度情報に含まれる項目「角度」のサブ項目「算出値」にフラグ「1」を登録する。
【0169】
また、接岸パラメータ算出部16は、例えば、|Ψ-Ψ|の値が閾値THCより大きい場合には、角度Ψの進入角度としての信頼度が所定値以下であると判定する。そして、このような判定を行った場合には、接岸パラメータ算出部16は、図5の信頼度情報に含まれる項目「角度」のサブ項目「算出値」にフラグ「0」を登録する。
【0170】
接岸パラメータ算出部16は、角度Ψの進入角度としての信頼性に係る判定を行った場合には、当該角度Ψがマーカ直線Lに基づいて算出された角度であることを示す情報を信頼度情報に付加する。加えて、接岸パラメータ算出部16は、当該角度Ψを進入角度Ψに設定する。
【0171】
なお、本判定方法に係る処理は、例えば、図5の信頼度情報に含まれる項目「直線」のサブ項目「絶対値」にフラグ「0」が登録されている場合に行われるものであってもよい。
【0172】
本実施例によれば、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が少ないことに起因し、接岸側面直線Lの生成が難しい場合、または、当該接岸側面直線Lの精度低下が危ぶまれる場合に、接岸パラメータ算出部16は、接岸場所エッジ点群の重心の座標位置Gを求めるとともに、マーカ直線Lを活用することで代替直線Lを生成する。また、本実施例によれば、代替直線Lまでの距離dを算出することができるとともに、当該距離dを対岸距離dとして設定することができる。また、本実施例によれば、代替直線Lのベクトルを用いて角度Ψを算出することができるとともに、当該角度Ψを進入角度Ψとして設定することができる。
【0173】
[変形例]
例えば、図17に示すような、対象船舶の位置が岸壁から非常に近い位置である場合には、ライダから岸壁側面への照射角度が浅くなることに起因し、岸壁側面を捉えることが難しくなる。その結果、被計測点の数が大幅に減少し、接岸場所エッジ点群の重心が正確に求まらないような状況が生じ得る。そのような状況では、マーカ直線Lを用いた代替直線Lを生成しても不正確となる。したがって、被計測点の数が非常に少ない場合は、被計測点を使用した算出値の信頼性は低いと判定できる。そのため、本変形例においては、以下に述べるような処理を行うことにより、岸壁までの距離と、当該岸壁に対する角度と、を算出する。
【0174】
接岸パラメータ算出部16は、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が所定値以下である場合に、距離dと、距離wmfと、距離wmrと、を下記数式(14)に適用することにより、距離dを算出する。
【0175】
【数14】
【0176】
または、接岸パラメータ算出部16は、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が所定値以下である場合に、距離dと、平均値Δdmqaと、を下記数式(15)に適用することにより、距離dを算出する。
【0177】
【数15】
【0178】
接岸パラメータ算出部16は、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が所定値以下である場合に、角度Ψと、距離wmfと、距離wmrと、マーカ間隔rと、を下記数式(16)に適用することにより、角度Ψを算出する。
【0179】
【数16】
【0180】
または、接岸パラメータ算出部16は、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が所定値以下である場合に、角度Ψと、平均値ΔΨmqaと、を下記数式(17)に適用することにより、距離dを算出する。
【0181】
【数17】
【0182】
本変形例によれば、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が少ないことに起因し、接岸場所エッジ点群の重心の座標位置Gの算出が難しい場合、または、接岸側面直線Lの精度低下が危ぶまれる場合であっても、接岸パラメータ算出部16は、対岸距離に相当する距離dを算出することができるとともに、進入角度に相当する角度Ψを算出することができる。
【0183】
[処理フロー]
図18は、接岸パラメータの算出に係る処理の一例を示すフローチャートである。本実施例における接岸支援処理に係る処理フローは、第1実施例において既述の(図14Aの)処理フローと略同様である。一方、本実施例においては、第1の実施例とは異なる処理がステップS16において行われる。そのため、以下においては、ステップS16において行われる第1の実施例とは異なる処理の詳細について説明する。
【0184】
接岸パラメータ算出部16は、接岸場所に設けられた前方マーカFM及び後方マーカRMを検出した(ステップS61)後、当該前方マーカFM及び当該後方マーカRMを通過するマーカ直線Lを生成する(ステップS62)。
【0185】
続いて、接岸パラメータ算出部16は、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が閾値TH1以上であるか否かを判定する(ステップS63)。
【0186】
接岸パラメータ算出部16は、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が閾値TH1以上である場合(ステップS63:Yes)には、接岸側面直線Lを用いて距離d及び角度Ψを算出した(ステップS64)後、ステップS17の処理を続けて行う。また、 接岸パラメータ算出部16は、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が閾値TH1未満である場合(ステップS63:No)には、さらに、当該接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が閾値TH2以上であるか否かを判定する(ステップS65)。なお、閾値TH2は、閾値TH1未満の値として設定されていればよい。
【0187】
接岸パラメータ算出部16は、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が閾値TH2未満である場合(ステップS65:No)には、後述のステップS69の処理を行う。また、接岸パラメータ算出部16は、接岸場所エッジ点群に含まれる被計測点の数が閾値TH1未満かつ閾値TH2以上である場合(ステップS65:Yes)には、当該接岸場所エッジ点群に対応する座標位置Gを算出し(ステップS66)、当該座標位置Gを通過する代替直線Lを生成し(ステップS67)、当該代替直線Lを用いて距離d及び角度Ψを算出した(ステップS68)後、ステップS17の処理を続けて行う。
【0188】
接岸パラメータ算出部16は、例えば、メモリ12に格納されている地図データ等を参照することにより、距離wmfと、距離wmrと、マーカ間距離に相当するマーカ間隔rと、を取得可能であるか否かを判定する(ステップS69)。
【0189】
接岸パラメータ算出部16は、距離wmfと、距離wmrと、マーカ間隔rと、を取得できる場合(ステップS69:Yes)には、これら3つのパラメータを取得した後、距離dと、距離wmfと、距離wmrと、を用いて距離dを算出する(ステップS70)。そして、接岸パラメータ算出部16は、角度Ψと、距離wmfと、距離wmrと、マーカ間隔rと、を用いて角度Ψを算出した(ステップS71)後、ステップS17の処理を続けて行う。
【0190】
接岸パラメータ算出部16は、距離wmfと、距離wmrと、マーカ間隔rと、のうちの少なくとも1つを取得できない場合(ステップS69:No)には、距離d及び平均値Δdmqaを用いて距離dを算出する(ステップS72)。そして、接岸パラメータ算出部16は、角度Ψ及び平均値ΔΨmqaを用いて角度Ψを算出した(ステップS73)後、ステップS17の処理を続けて行う。
【0191】
以上に述べたように、本実施例によれば、距離d及び角度Ψの各々について、マーカ直線Lに基づいて算出されたパラメータであるか否かを判別することができる。そのため、本実施例によれば、着岸支援において用いられるパラメータの信頼性を確実に判定することができる。
【0192】
上述した実施例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータである制御部等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。
【0193】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0194】
1 情報処理装置
2 センサ群
3 ライダ
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17
図18