(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135108
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】床用目地カバー装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040145
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】592094243
【氏名又は名称】カネソウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】豊田 悟志
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH31
2E001FA11
2E001FA24
2E001FA71
2E001PA04
(57)【要約】
【課題】車両の通過によるガタツキの発生を抑制し、該ガタツキにより生ずる騒音を低減し得る床用目地カバー装置を提案する。
【解決手段】一方の床85の側縁に配設された保持受枠32の水平受縁33に螺子杆35が立設されると共に、目地を覆うカバー体2の後端部に、該螺子杆35を遊嵌する貫通孔23を有する連結板部22が配設されており、該カバー体2は、該連結板部22の貫通孔23に遊嵌した前記螺子杆35に、取付ナット36が略へ字形状の介装部材41を介して緊締されることにより、連結板部22が水平受縁33に押圧固定されて保持受枠32に連結される。かかる構成によれば、車両通過の際に作用する力を介装部材41の弾性変形により吸収できるため、ガタツキを抑制でき、騒音の低減効果が向上する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されて該目地を覆うカバー体を備え、該カバー体の目地幅方向の一端部が、一方の建造物の側縁に連結手段を介して連結されると共に、該カバー体の目地幅方向の他端部を自由端として、該自由端が他方の建造物の側縁に摺動可能に乗載される床用目地カバー装置において、
前記連結手段は、
前記カバー体の一端部に設けられ、上下方向の貫通孔が形成された平板状の連結板部と、
前記一方の建造物の側縁に配設された、前記連結板部が乗載される水平受縁を備えた保持受枠の、該水平受縁に立設され、該連結板部の貫通孔に下方から遊嵌されて上方へ突出されて、取付ナットが螺着される螺子杆と
を備え、
さらに、金属製板材を略へ字形状に折曲成形され且つ前記螺子杆を挿通する挿通孔が折曲稜線部の中央部に開口され、該挿通孔に該螺子杆が挿通されて前記連結板部と前記取付ナットとの間に介装される介装部材を備えており、
前記螺子杆と前記取付ナットとを緊締することにより、前記介装部材を介して前記連結板部が前記保持受枠の水平受縁に押圧固定されるものであることを特徴とする床用目地カバー装置。
【請求項2】
介装部材は、その曲げ剛性が、連結板部の曲げ剛性の0.5~1倍の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の床用目地カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地を覆う床用目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震による被害を最小限に留めるために、緩衝機能を備えた免震装置によって下部を支持した建造物が多く建設されている。こうした免震構造の建造物間には、地震による変位を吸収し得る目地が形成されており、かかる目地を覆う床用目地カバー装置が配設されている。
【0003】
前記の床用目地カバー装置としては、例えば特許文献1のように、隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されるカバー体の一端が、一方の床の側縁に連結されると共に、該カバー体の他端を自由端として、該自由端が他方の側縁に摺動可能に乗載される。そして、地震の際に、一方の建造物と他方の建造物とが近接したり離れたりして相対変位すると、カバー体の自由端が他方の建造物の側縁上を摺動して該相対変位に追従するようになっている。ここで、カバー体の自由端が乗載される他方の建造物の側縁には、カバー体の厚みに相当する深さで窪む凹縁が、目地の幅方向に所定長さで形成されており、常態で、該凹縁にカバー体が載置されて、該カバー体の上面と他方の建造物の床面とが略同じ高さとなっている。この床用目地カバー装置は、地震の際に両建造物が近接すると、カバー体の自由端が凹縁のさらに奥方へ移動して、他方の建造物の床面に乗り上げる。
【0004】
このような床用目地カバー装置にあって、カバー体の一端を一方の床の側縁に連結する従来の連結手段を、
図7に示す。かかる従来の連結手段101は、カバー体102の一端部に、水平板部105に上下方向の挿通孔(図示せず)が形成された断面L字形状の連結部材103を備えると共に、一方の床111の側縁に目地の長手方向に沿って配設された保持受枠112の水平受縁113に複数の螺子杆115が立設される。そして、前記連結部材103の挿通孔に前記螺子杆115を下方から遊嵌させた状態でコイル状のバネ108を外嵌して、該螺子杆115の上部に螺着させたナット116によって該バネ108を圧縮させることにより、水平板部105を保持受枠112の水平受縁113に圧接させる。こうした連結手段101によって、カバー体102の一端部が一方の床111の側縁に揺動可能に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した床用目地カバー装置は、例えば高架橋や商業施設における車両通路などにも使用されており、トラックや比較的大型の車両などが通過する。そのため、こうした車両の通過毎に、床用目地カバー装置のカバー体が上下に動いて、建造物の床から離れたり当たったりする所謂ガタツキが生ずると、該ガタツキによる騒音が発生する。民家やマンションなどに隣接する商業施設などでは、こうした騒音による苦情を受ける虞があった。
前述した従来の床用目地カバー装置を構成する連結手段101は、バネ108の弾性力により前記ガタツキを緩和することが期待できるものの、使用可能なバネ108の素材やサイズ等が制限されることから、前記ガタツキによる騒音の低減効果に限界があった。
【0007】
本発明は、車両の通過による生ずるガタツキを抑制し、該ガタツキによる騒音の低減効果を向上し得る床用目地カバー装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、隣接する建造物の床相互間の目地に差し渡されて該目地を覆うカバー体を備え、該カバー体の目地幅方向の一端部が、一方の建造物の側縁に連結手段を介して連結されると共に、該カバー体の目地幅方向の他端部を自由端として、該自由端が他方の建造物の側縁に摺動可能に乗載される床用目地カバー装置において、前記連結手段は、前記カバー体の一端部に設けられ、上下方向の貫通孔が形成された平板状の連結板部と、前記一方の建造物の側縁に配設された、前記連結板部が乗載される水平受縁を備えた保持受枠の、該水平受縁に立設され、該連結板部の貫通孔に下方から遊嵌されて上方へ突出されて、取付ナットが螺着される螺子杆とを備え、さらに、金属製板材を略へ字形状に折曲成形され且つ前記螺子杆を挿通する挿通孔が折曲稜線部の中央部に開口され、該挿通孔に該螺子杆が挿通されて前記連結板部と前記取付ナットとの間に介装される介装部材を備えており、前記螺子杆と前記取付ナットとを緊締することにより、前記介装部材を介して前記連結板部が前記保持受枠の水平受縁に押圧固定されるものであることを特徴とする床用目地カバー装置である。
【0009】
かかる構成にあっては、介装部材を介した取付ナットと螺子杆との緊締により、保持受枠の水平受縁に連結板部が押圧固定されるものであるから、カバー体に上方から比較的大きな力が作用した場合に、該力を介装部材の弾性変形により吸収できるため、カバー体のガタツキを抑制できる。これにより、前述したようにトラックや比較的大型の車両などが通過した場合に、カバー体のガタツキを抑制する効果が高く、該ガタツキにより発生する騒音の低減効果を向上できる。尚ここで、介装部材は、略へ字形状に折曲成形されたものであるから、従来のコイル状のバネに比して高い剛性を有するものとできることから、該従来のバネに比してガタツキを抑制する効果が著しく向上する。
【0010】
前述した本発明の床用目地カバー装置にあって、介装部材は、その曲げ剛性が、連結板部の曲げ剛性の0.5~1倍の範囲にある構成が提案される。
【0011】
かかる構成によれば、比較的大型の車両等が通過した場合にカバー体のガタツキを一層抑制でき、該ガタツキにより発生する騒音の低減効果をさらに向上できる。ここで、介装部材が連結板部の曲げ剛性の0.5倍よりも小さい場合には、介装板部の押圧力が小さくなることから、ガタツキを生じ易くなってしまう一方、連結板部の曲げ剛性の1倍よりも大きい場合には、トラック等の通過により上方から大きな力が生じた場合に、連結板部が変形してしまう虞がある。
【0012】
尚、介装部材の曲げ剛性は、連結板部の曲げ剛性の0.75~1倍の範囲にあることが好適である。これにより、前記ガタツキを一層抑制することができ、騒音の低減効果を一層向上できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の床用目地カバー装置にあっては、トラックや比較的大型の車両等が通過した際に、カバー体のガタツキを抑制でき、該ガタツキによる騒音の低減効果を向上できる。したがって、前記騒音を原因とする苦情の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施例の床用目地カバー装置1の施工状態を示す縦断面図である。
【
図2】床用目地カバー装置1の施工状態を示す平面図である。
【
図3】カバー体2と保持受枠32とを連結した状態を示す拡大断面図である。
【
図4】取付ナット36と介装部材41とを螺子杆35から分離させた状態を示す説明図である。
【
図5】介装部材41の(A)平面図と、(B)正面図と、(C)側面図と、(D)斜視図である。
【
図6】建造物同士が近接方向に相対変位した状態におけるカバー体2の作動態様を示す説明図である。
【
図7】従来構成の床用目地カバー装置の連結手段101を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる実施例を添付図面を用いて説明する。
実施例の床用目地カバー装置1は、
図1,2に示すように、隣接する建造物81,82間に設けられた目地83を覆うように配設されたものである。建造物81,82はそれぞれ、緩衝機能を備えた免震装置(図示せず)によって下部が支持された免震構造の建造物である。目地83は、建造物81と建造物82との間に所定幅で形成され、地震の際に建造物81と建造物82との水平方向の相対的な揺れを吸収し得るようになっている。
【0016】
尚、本実施例では、目地83の幅方向(目地幅方向)を、床用目地カバー装置1の前後方向として説明する。そして、目地83に沿う方向が、該目地83の長手方向(目地長手方向)である。これにより、床用目地カバー装置1を構成するカバー体2の後端部2aが、本発明にかかるカバー体2の一端部に相当し、該カバー体2の前端部2bが、本発明にかかるカバー体2の他端部に相当する。
【0017】
前記建造物82の床86の側縁には、床用目地カバー装置1のカバー体2の厚みに相当する深さで窪ませた支持段縁(図示せず)が、前後方向に所定幅で形成されており、該支持段縁に摺動受枠61が配設されている。摺動受枠61は、支持段縁の上面を覆う水平受縁62と、該水平受縁62の前端から所定傾斜角度で立ち上がる傾斜受縁63と、床86の上面を覆う該床受縁64とを備え、該水平受縁62と床受縁64とが傾斜受縁63を介して連成されてなる。この摺動受枠61は、目地83の長手方向に延在するように配設されており、長手方向の長さが複数個のカバー体2を列ねた長さに相当する。
【0018】
前記建造物81の床85と建造物82の床86との間には、目地83を覆うようにカバー体2が差し渡され、複数個の該カバー体2が、該目地83の長手方向に連続して列設されている。カバー体2は、その後端部2aが、建造物81の床85の側縁に設けられた保持受枠32を介して、該建造物81の床85に連結されている。そして、カバー体2は、その前端部2bを自由端としており、該自由端が前記した摺動受枠61上に摺動可能に乗載される。
【0019】
カバー体2は、グレーチング状の主体部11と、該主体部11上に配設されて前方へ突出されたカバー板12とを備える。主体部11は、目地幅方向に所定間隔で並設された複数のメインバー13と、該メインバー13に直交する適数本のクロスバー14と、各メインバー13の後端部に連結されたサイドバー15と、各メインバー13の前端部に連結された略L字形のサイドバー16とを備えた鋼製のグレーチングからなる。ここで、各メインバー13は、前後方向(目地幅方向)に沿って配設されており、各クロスバー14とサイドバー15,16とは、長手方向に沿って配設されている。
【0020】
カバー板12は、長方形状の鋼板からなり、前記主体部11に一体的に取り付けられている。カバー板12は、主体部11の上面全域を覆うように配設されており、該カバー板12の前端部が主体部11の前端よりも前方に突出する。
【0021】
さらに、カバー体2の主体部11には、前記摺動受枠61の水平受縁62上に乗載される部位の下部に、緩衝材19が設けられている。これにより、主体部11の各メインバー13は、前記緩衝材19を介して前記水平受縁62上に摺動可能に乗載されている。
【0022】
こうしたカバー体2は、主体部11の前端と前記した摺動受枠61の傾斜受縁63との間に適宜幅の間隙が生ずるようにして該摺動受枠61上に乗載される。この乗載された状態で、カバー体2のカバー板12の前端部が摺動受枠61の床受縁64上に乗載され、該カバー板12によって、前記主体部11と傾斜受縁63との間隙の上方が遮蔽される。
【0023】
次に、本発明の要部について説明する。
建造物81の床85の側縁には、断面L字形状の保持受枠32が目地83の長手方向に沿って配設されている。保持受枠32は、
図3,4に示すように、水平受縁33と該水平受縁33の後縁から上方に立ち上がる垂直縁34とを備えており、該水平受縁33に、その下面側から挿通して該水平受縁33に溶接された螺子杆35が長手方向の所定位置に複数立設されている。ここで、保持受枠32は、ステンレス製またはスチール製の帯状鋼板を長手方向に沿って屈曲させて成形されたものである。
【0024】
一方、カバー体2の後端部2aには、スチール製またはステンレス製の帯板状の連結板部22が、前記主体部11の下端に溶接されて該カバー体2の長手方向に亘って配設されており、該連結板部22の長手方向両端部に前記螺子杆35を遊嵌する貫通孔23,23が夫々開口形成されている。連結板部22は、各貫通孔23,23に前記保持受枠32の螺子杆35を夫々挿通させることで、該保持受枠32の水平受縁33に乗載される。すなわち、保持受枠32の螺子杆35と連結板部22の貫通孔23とが互いに対応する位置に夫々設けられている。
【0025】
こうした連結板部22の、前記貫通孔23,23を有する長手方向両端部には、主体部11を構成するメインバー13が配設されず、サイドバー15の前方に所定間隔をおいて対向板部24が配設されており、サイドバー15と対向板部24との間に内部空隙が形成されている。この内部空隙に、連結板部22の貫通孔23を下方から挿通された前記螺子杆35が配置される。また、カバー板12には、各貫通孔23上を開放する開口部25,25が夫々設けられており、各開口部25,25を閉鎖する蓋部26,26(
図1,2参照)が脱着可能に取り付けられている。
【0026】
カバー体2は、連結板部22の各貫通孔23,23に保持受枠32の螺子杆35,35を夫々遊嵌させることにより、該連結板部22(カバー体2の後端部2a)が該保持受枠32の水平受縁33に乗載される。そして、乗載された状態で、各螺子杆35に取付ナット36が介装部材41を介して螺着されることによって、カバー体2が保持受枠32に連結される。
【0027】
介装部材41は、
図5に示すように、スチール製またはステンレス製の鋼板を略へ字形状に折曲成形したものであり、折曲稜線部42の中央部に、前記螺子杆35を挿通する挿通孔45が開口形成されている。ここで、介装部材41は、その曲げ剛性が、前記連結板部22の曲げ剛性の0.5~1倍の範囲となるものである。本実施例にあっては、介装部材41が連結板部22と同じ素材の鋼板により成形されており、該介装部材41の板厚が、連結板部22の板厚の0.5~1倍の範囲とすることで、前記曲げ剛性の要件を満足する構成としている。具体的には、連結板部22の板厚を約5mmとし、介装部材41の板厚を約4mmとしている。さらに、介装部材41は、比較的高い靱性を有するスチール製またはステンレス製の鋼板から構成されており、後述のように取付ナット36で緊締した際や、カバー体2から比較的大きな力が作用した際などで、割れ等を生じ難くなっている。
【0028】
こうした介装部材41は、
図4,5に示すように、カバー体2の連結板部22が保持受枠32の水平受縁33に乗載された状態で、該連結板部22上に突出する前記螺子杆35を挿通孔45に挿通させて、該連結板部22上に配置される。この介装部材41の上から取付ナット36を螺子杆35に螺合させ、該取付ナット36を介装部材41の上面に圧接させて該螺子杆35と緊締させる。これにより、介装部材41の付勢力を介して連結板部22が保持受枠32の水平受縁33に押圧固定される。ここで、介装部材41は、前述したように、スチール製またはステンレス製の鋼板を折曲成形したものであり、比較的高い曲げ剛性(連結板部22の0.5~1倍の曲げ剛性)を有することから、前記緊締によって該連結板部22を強固に押圧固定できる。
【0029】
そして、この緊締した状態では、介装部材41が下方へ押し付けられて弾性変形を生ずるものの、略へ字形状を保っている。そのため、この緊締後に下方への力が作用した場合に、その力を介装部材41のさらなる弾性変形により吸収することが可能である。これにより、カバー体2上を大型の車両が通過した際に、該通過により生ずる力(荷重)を前記介装部材41の弾性変形により吸収できるため、カバー体2の後端部2a(連結板部22)を保持受枠32の水平受縁33に乗載した状態で保つことができる。
【0030】
本実施例にあっては、床用目地カバー装置1が高架や商業施設の車両通路等の目地83に配設される。床用目地カバー装置1は、前述したように、カバー体2の後端部2aが建造物81の床85の側縁に配設された保持受枠32に連結されることによって配設される。常態では、
図1,2に示すように、建造物82の床86の側縁に配設された摺動受枠61に、カバー体2の前端部2bが摺動可能に乗載されて、目地83を覆う。
【0031】
常態で、床用目地カバー装置1のカバー体2上を車両が通過すると、車重によってカバー体2に下向きの前記力が作用することから、車両の通過毎に、該力の作用と作用解除とが繰り返される。本実施例の構成では、前記下向きの力を前記介装部材41,41の弾性変形により吸収できることから、車両の通過によって該力が繰り返し作用しても、カバー体2の後端部2aが保持受枠32に支持された状態で保たれ得る。これにより、カバー体2は、その前後両端部2a,2bが夫々保持受枠32と摺動受枠61とに支持された状態で安定するため、車両の通過毎にカバー体2が上下に動いて保持受枠32や摺動受枠61に衝突することを抑制でき、該衝突による騒音の発生を抑制できる。
【0032】
さらに、地震時に、建造物81と建造物82とが相対的に近接する方向に変位すると、
図6に示すように、カバー体2の前端部2bが、建造物82の摺動受枠61の水平受縁62上を前方へ摺動して、前記傾斜受縁63を介して該床受縁64に乗り上げる。このようにカバー体2が前記近接方向の相対変位に追従できる。ここで、カバー体2の前端部2bが床受縁64に乗り上げる際には、保持受枠32と強固に連結されたカバー体2の後端部2aで介装部材41に応力集中が生じ易く、カバー体2の介装部材41が曲げ変形する。このように介装部材41が曲げ変形することにより、他の連結板部22やカバー体2の主体部11等に変形が生ずることを防止できる。
【0033】
この後、前記した相対的な近接方向への変位が解除されると、カバー体2の前端部2bが傾斜受縁63を介して床受縁64上へ戻って、この相対変位に追従する。この際に、前記近接方向への相対変位時に生じた介装部材41の変形が弾性変形であれば、該介装部材41が地震前の状態に復帰して、前記常態に戻る。一方、介装部材41が塑性変形していると、前記常態(介装部材41による連結板部22を押圧固定した状態)に復帰できない。この場合には、車両が通過した際に、カバー体2の連結板部22を保持受枠32の水平受縁33上に支持された状態で安定して保持し難くなることから、該連結板部22と水平受縁33との衝突を生じて騒音が発生する虞がある。こうしたことから、介装部材41が地震後に塑性変形した場合には、前記騒音の発生を抑制するために、該介装部材41を交換することが求められる。尚、介装部材41を交換しない場合であっても、新たな地震により建造物81,82が近接方向へ相対変位すると、カバー体2の前端部2bが床受縁64に乗り上げることから、地震時に生ずる相対変位に確実かつ安定して追従できる。このように介装部材41に塑性変形を生じても、地震時における相対変位に追従するという機能は安定して発揮できる。
【0034】
前述したように本実施例の床用目地カバー装置1によれば、常態で、トラックや大型の車両などがカバー体2を通過する際に、車重により作用する力を介装部材41の弾性変形により吸収できることから、該カバー体2の後端部2aを保持受枠32の水平受縁33上に乗載した状態で安定して保つことができる。これにより、車両通過の際にカバー体2が上下方向に動いて水平受縁33と衝突することで生ずる騒音を、抑制することができる。したがって、マンションや民家に隣接する高架や商業施設の車両通路に好適に配設することができ、前記騒音による苦情の発生を抑制できる。
【0035】
さらに、本実施例の構成は、地震時に建造物81,82の相対変位に安定かつ確実に追従できる。そして、カバー体2の後端部2aと保持受枠32との連結する部位では、地震時にカバー体2が建造物86の床受縁64に乗り上げた際に、介装部材41が曲げ変形する。そのため、カバー体2の連結板部22などに変形が生ずることを抑制できる。ここで、地震時に介装部材41が塑性変形した場合には、該介装部材41を交換するのみで、本来の状態(元の状態)に戻すことができ、前記した騒音の防止効果を生じ得る。
【0036】
尚、本実施例の介装部材41を使用せずに、前記した騒音を防止するためには、例えば座金などを介して取付ナット36と螺子杆35とを緊締させることで、カバー体2の後端部2aを保持受枠32の水平受縁33に固定することも考えられるが、この構成では、地震時にカバー体2の前端部2bが床受縁64に乗り上げると、カバー体2の後端部2a、螺子杆35、および保持受枠32に変形が生じてしまうことから、これらの交換が必須となる。そのため、この構成では、本実施例の床用目地カバー装置1に比して、交換に要する手間とコストとが大きくなる。さらに、前記した座金で固定する構成では、地震により変形した部位を交換しなれば、相対変位に追従する機能を発揮できないことに対して、本実施例の構成は、地震により変形した介装部材41を交換しなくとも、相対変位に追従する機能は確実かつ安定して発揮できるという優れた利点がある。
【0037】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 床用目地カバー装置
2 カバー体
2a 後端部(一端部)
2b 前端部(他端部)
11 主体部
12 カバー板
13 メインバー
14 クロスバー
15,16 サイドバー
19 緩衝材
22 連結板部
23 貫通孔
24 対向板部
25 開口部
26 蓋部
32 保持受枠
33 水平受縁
34 垂直受縁
35 螺子杆
36 取付ナット
41 介装部材
42 折曲稜線部
45 挿通孔
61 摺動受枠
62 水平受縁
63 傾斜受縁
64 床受縁
81,82 建造物
83 目地
85,86 床
101 連結手段
102 カバー体
103 連結部材
105 水平板部
108 バネ
111 床
112 保持受枠
113 水平受縁
115 螺子杆