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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135113
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ドーリー車、荷物運搬方法
(51)【国際特許分類】
   B64F 1/32 20060101AFI20230921BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230921BHJP
【FI】
B64F1/32
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040154
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】溝口 英次
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA03
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301FF10
5H301GG08
5H301GG09
5H301QQ01
5H301QQ08
(57)【要約】
【課題】航空機に対する荷役作業につき作業者の負荷を軽減できるドーリー車を提供する。
【解決手段】航空機Aに荷物Cを出し入れする荷役車両Hに対して荷物Cの受け渡しを行う端部車両4と、編成全体の走行制御を行う制御車両3と、を有し、前記端部車両4は、前記編成の一端に配置された車両であって、荷台41と、当該端部車両4を前記荷役車両Hが備える搬送路の長手方向に対して延長された位置に向かうように操舵される案内車輪42と、を備え、前記制御車両3は、少なくとも前記端部車両の操舵を行う制御部31を備え、前記編成は、前記案内車輪42を操舵して走行し、前記荷役車両Hの前記搬送路の長手方向に当該編成の長手方向が重なるように、前記荷役車両Hに接近し停車した上、前記端部車両4と前記荷役車両Hとの間で荷物Cの前記受け渡しを行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に対する荷役作業に用いられ、荷物を積載して空港内を走行できるドーリー車であって、
複数の車両が連結された一連の編成として構成されており、
前記航空機が有する搬出入口に隣接配置されることで荷物を出し入れする荷役車両に対して荷物の受け渡しを行う端部車両と、前記編成全体の走行制御を行う制御車両と、を有し、
前記端部車両は、前記編成の一端に配置された車両であって、荷物の前記受け渡し時に荷物を前記編成の長手方向に送ることのできる荷台と、当該端部車両を前記荷役車両が備える搬送路の長手方向に対して延長された位置に向かうように操舵される案内車輪と、を備え、
前記編成を走行させる駆動車輪は、前記案内車輪が兼ねている、または、前記案内車輪とは別の車輪として前記編成中に設けられており、
前記制御車両は、少なくとも前記端部車両の操舵を行う制御部を備え、
前記編成は、前記駆動車輪により走行し、前記案内車輪を操舵して前記荷役車両の前記搬送路の長手方向に当該編成の長手方向が重なるように、前記荷役車両に接近し停車した上、前記端部車両と前記荷役車両との間で荷物の前記受け渡しを行う、ドーリー車。
【請求項2】
前記制御車両は、前記編成の外部から送信される制御信号を受信する受信部を備え、
前記制御部は、前記制御信号に応じて少なくとも前記端部車両の操舵を行う、請求項1に記載のドーリー車。
【請求項3】
前記制御車両、前記駆動車輪が電動駆動である場合のバッテリーを搭載した車両、前記駆動車輪がエンジン駆動である場合のエンジンを搭載した車両のいずれかが、前記編成の他端、または、前記編成の両端部を除いた位置に配置される、請求項1または2に記載のドーリー車。
【請求項4】
前記制御車両が前記荷役車両に対して、少なくとも前記編成の前記荷役車両に対する移動、及び、荷物の前記受け渡しについての制御信号を送受信することで、前記制御車両と前記荷役車両とを連携して動作させる、請求項1~3のいずれかに記載のドーリー車。
【請求項5】
前記端部車両は前記荷役車両に接近する際に、前記荷役車両の前記搬送路の長手方向端部の位置に関する情報を得、
前記制御部は、得られた前記情報に応じて前記案内車輪を操舵する、請求項1~4のいずれかに記載のドーリー車。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のドーリー車を用いた荷物運搬方法であって、
前記制御車両は、前記編成の両端部を除いた位置に配置され、
前記制御車両よりも前記編成の一端側に連結される1台以上の車両に対して、航空機へ積み込まれる荷物を積載し、
前記制御車両よりも前記編成の他端側に連結される1台以上の車両に対して、航空機から降ろされた荷物を積載する、荷物運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に対する荷役作業に用いられ、荷物を積載して空港内を走行できるドーリー車、及び、このドーリー車を用いた荷物運搬方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドーリー車は、空港内で航空機に積載される荷物(例えばコンテナや、パレットと一体化された形態のもの)を運搬する車両であり、従来、先頭の動力車両であって運転台を備えた牽引車両と、牽引車両に牽引される、無動力の複数の台車で構成された車両であった。この構成のドーリー車では、航空機に対して荷物を出し入れする際に、荷物を中継する荷役車両の一例であるハイリフトローダー車に対し、ドーリー車が横付けするように(ハイリフトローダー車が備える搬送路の長手方向に対して直交するように)停車し、台車に搭載されていた荷物をハイリフトローダー車に載せ換える。また、航空機から降ろされた荷物は、ハイリフトローダー車を中継してドーリー車の台車に搭載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-225762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで従来では、ドーリー車がハイリフトローダー車に対して横付けされた後に、台車上の荷物を作業者の手によりハイリフトローダー車の搬送路に載せ換えていた。また、牽引車両を自動運転(無人運転)する場合があったが、その場合であっても、荷物の載せ換えに関しては同様であって、人手によりハイリフトローダー車に載せ換えていた。しかも、ドーリー車をハイリフトローダー車に対して横付けする際の位置合わせはシビアであって、位置合わせがうまくいかないと、荷物を地面に落下させてしまったり、ドーリー車とハイリフトローダー車との間で荷物を斜めに挟んだりする可能性があった。
【0005】
このように、ドーリー車とハイリフトローダー車との間の荷物の載せ換えには人手が必要であって、しかも位置合わせに気を使わなければならないことから、作業者に負荷がかかっていた。
【0006】
そこで本発明は、航空機に対する荷役作業につき作業者の負荷を軽減できるドーリー車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、航空機に対する荷役作業に用いられ、荷物を積載して空港内を走行できるドーリー車であって、複数の車両が連結された一連の編成として構成されており、前記航空機が有する搬出入口に隣接配置されることで荷物を出し入れする荷役車両に対して荷物の受け渡しを行う端部車両と、前記編成全体の走行制御を行う制御車両と、を有し、前記端部車両は、前記編成の一端に配置された車両であって、荷物の前記受け渡し時に荷物を前記編成の長手方向に送ることのできる荷台と、当該端部車両を前記荷役車両が備える搬送路の長手方向に対して延長された位置に向かうように操舵される案内車輪と、を備え、前記編成を走行させる駆動車輪は、前記案内車輪が兼ねている、または、前記案内車輪とは別の車輪として前記編成中に設けられており、前記制御車両は、少なくとも前記端部車両の操舵を行う制御部を備え、前記編成は、前記駆動車輪により走行し、前記案内車輪を操舵して前記荷役車両の前記搬送路の長手方向に当該編成の長手方向が重なるように、前記荷役車両に接近し停車した上、前記端部車両と前記荷役車両との間で荷物の前記受け渡しを行う、ドーリー車である。
【0008】
この構成によれば、案内車輪を駆動させて端部車両を荷役車両の搬送路に対して停車し、その上で荷物を端部車両と荷役車両との間で受け渡しできる。このため、端部車両と荷役車両との間で荷物を受け渡しする際に必要な人手を減少できる。
【0009】
前記制御車両は、前記編成の外部から送信される制御信号を受信する受信部を備え、前記制御部は、前記制御信号に応じて少なくとも前記端部車両の操舵を行うこともできる。
【0010】
この構成によれば、遠隔制御を行うことにより、少なくとも端部車両の操舵に関して作業者の負荷を軽減できる。
【0011】
前記制御車両、前記駆動車輪が電動駆動である場合のバッテリーを搭載した車両、前記駆動車輪がエンジン駆動である場合のエンジンを搭載した車両のいずれかが、前記編成の他端、または、前記編成の両端部を除いた位置に配置されることもできる。
【0012】
この構成によれば、制御車両の制御機器(制御部を含む)、バッテリー、エンジンのいずれかの存在により、これらを設けた車両には荷台を設けられない場合がある。この場合に、編成における車両から隣り合う他の車両に荷物を送る際、前記荷台を設けられない車両が邪魔になりにくい。
【0013】
前記制御車両が前記荷役車両に対して、少なくとも前記編成の前記荷役車両に対する移動、及び、荷物の前記受け渡しについての制御信号を送受信することで、前記制御車両と前記荷役車両とを連携して動作させることもできる。
【0014】
この構成によれば、荷役車両とドーリー車との間で荷物の移動をスムーズにできる。
【0015】
前記端部車両は前記荷役車両に接近する際に、前記荷役車両の前記搬送路の長手方向端部の位置に関する情報を得、前記制御部は、得られた前記情報に応じて前記案内車輪を操舵することもできる。
【0016】
この構成によれば、得られた荷役車両に関する情報により、端部車両が荷役車両に接近する際、円滑に位置合わせをできる。
【0017】
また本発明は、前記ドーリー車を用いた荷物運搬方法であって、前記制御車両は、前記編成の両端部を除いた位置に配置され、前記制御車両よりも前記編成の一端側に連結される1台以上の車両に対して、航空機へ積み込まれる荷物を積載し、前記制御車両よりも前記編成の他端側に連結される1台以上の車両に対して、航空機から降ろされた荷物を積載する、荷物運搬方法である。
【0018】
この構成によれば、一連の編成のドーリー車の使用により、荷物の搬入と搬出を1回の運行で行える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、端部車両と荷役車両との間で荷物を受け渡しする際に必要な人手を減少できる。よって、航空機に対する荷役作業につき作業者の負荷を軽減できるドーリー車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るドーリー車とハイリフトローダー車を示す、側面視の概略図である。
図2】前記実施形態のドーリー車とハイリフトローダー車において、荷物が送られる要領を示す、平面視の概略図である。
図3】本発明の別実施形態に係るドーリー車において、ハイリフトローダー車から荷物が送られる要領を示す、平面視の概略図である。
図4】前記別実施形態に係るドーリー車において、ハイリフトローダー車に荷物が送られる要領を示す、平面視の概略図である。
図5】本発明の一実施形態に係る運用フローの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明につき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。
【0022】
本実施形態のドーリー車1は、複数の車両が連結された一連の編成として構成されている。このドーリー車1で、荷役作業を行う一単位となる一つの編成は、複数の台車2~2と、これら複数の台車2~2に関して制御を行う制御車両3から構成され、各車両が連結されている。複数の台車2~2の連結台数は、荷役予定の荷物Cの数量に応じた台数とされ、適宜変更される。例えば図1に示すように、編成の一端(図示右端)に配置された台車2が端部車両4である。端部車両4以外の台車2は無動力の付随車両とされている。編成の他端には制御車両3が配置されている。なお制御車両3は、従来の牽引車両とは異なり、通常使用の走行時、特にハイリフトローダー車等の荷役車両へ接近させる走行時において編成後端に位置する(先頭車にはならない)。また、制御車両3は、図3図4に示すように、編成の両端部を除いた位置(中間位置)に配置することもできる。
【0023】
各車両の端部には、前記編成がカーブ走行する際(図2参照)に車両同士が干渉しないよう、幅方向の端部側領域に切欠部5が形成されている。図2では概略的に、各車両の平面視形状を長円形で表示しているが、当該形状のうち、幅方向両側のアール部分が切欠部5に相当する。また、各車両の編成長手方向端部に面取り形状が形成されている場合は、面取り部分が切欠部5に相当する。
【0024】
荷役車両Hは、航空機Aが有する搬出入口に隣接配置されることで荷物C(図示したものはコンテナ)を出し入れする。その一例としてのハイリフトローダー車は、図1に概略構成を示すように、航空機Aに近い側に荷物Cを載せて昇降する昇降台が設けられた昇降車H1と、昇降車H1の後方に連結され、一時的に荷物Cを保持する延長ドーリー部H2とを備えている。
【0025】
端部車両4は荷役車両Hに対して荷物Cの受け渡しを行う車両である。端部車両4は、荷物Cの受け渡し時に荷物Cを編成の長手方向に送ることのできる荷台41と、当該端部車両4を荷役車両Hが備える搬送路の長手方向に対して延長された位置に向かうように操舵される案内車輪42と、を備える。端部車両4の荷台41には、他の台車2と同様に荷物Cを載置できる。そして、荷台41に荷物Cを載置したまま、ドーリー車1を走行させることができる。端部車両4は走行時に先頭車両となるが、従来先頭車両となっていた牽引車両のように運転台がないことから、先頭車両に荷物Cを載せたままで走行できる。この荷台41には図示しないローラーコンベアが設けられており、ローラーコンベアを構成する複数のローラー(搬送ローラー)を回転させることで荷物Cを、編成の長手方向に移動させることができる。ローラーコンベアはモーター等の駆動手段により回転する。荷台41には、前記ローラーコンベア以外に、ベルトコンベア等の種々の移送機構を設けることができる。なお、他の台車2も同様に構成された荷台21を備えている。
【0026】
ここでドーリー車1の編成は、駆動車輪6により走行する。走行時には案内車輪42を操舵して、図2に示すように、荷役車両Hが、航空機Aとの荷物の出し入れのために有し、コンベアにより荷物を搬送する搬送路の長手方向に当該編成の長手方向が重なるように、荷役車両Hに接近し停車した上、端部車両4と荷役車両Hとの間で荷物Cの受け渡しを行う。この停車状況は、従来の「横付け」(「T」字状の位置関係)とは異なり、荷役車両Hの搬送路の長手方向延長線上に停車する「縦付け」(「I」字状の位置関係)となる。本実施形態では、駆動車輪6は端部車両4に備えられていて、そのうち編成の一端側に位置するものは前記案内車輪42を兼ねている。このため、端部車両4には走行用のモーターまたは駆動機構(変速機構等)が設けられている。走行用のモーターは、駆動車輪6に対し、編成全体を走行できる駆動力を供給する。また、案内車輪42には操舵用のモーター及び駆動機構も設けられている。また、制動機構も設けられている。なお、駆動車輪6の走行駆動や制動のための電力、及び、案内車輪42の操舵のための電力は、制御車両3から、複数の台車2~2を経由して配置されたケーブルを介して端部車両4に供給される。制御のためのケーブルも同様、制御車両3と端部車両4との間に設けられている。台車2と制御車両3をまたぐ電気的な連結は、電気接点を有するカプラー等の接続によりなされており、車両の連結換えに応じて接続及び切断される。
【0027】
制御車両3は、編成全体の走行制御を行う車両であって、少なくとも端部車両4の操舵を行う制御部31を備える。本実施形態では、駆動車輪6が案内車輪42を兼ねているため、制御部31は駆動車輪6の走行駆動、操舵の両方の制御を行う。また、制動の制御も行う。また本実施形態では、制御部31は荷台21,41が有するローラーコンベアの制御も行う。本実施形態のドーリー車1を自動運転させる場合、編成にはカメラや各種センサが設けられており、これらの検知結果をもとに、制御部31がドーリー車1の行う荷役作業に関する各種制御を行う。また、編成中のいずれかの車両は、GPSの受信装置を備える。制御部31はGPSの位置情報を用い、荷役車両Hの近くまでドーリー車1を移動させるべく、駆動車輪6(案内車輪42)を制御する。これは一例であって、種々の自動運転に関する公知技術を本実施形態のドーリー車1、及び、当該ドーリー車1を運用するシステムに適用することができる。
【0028】
また、本実施形態のドーリー車1を遠隔制御することもできる。この場合、制御車両3を含むいずれかの車両は、編成の外部から送信される制御信号を受信する受信部を備えるようにする。遠隔制御する場合でも、編成のいずれかの車両にはカメラや各種センサ、また、これらにより得られた情報を編成外に送信する送信部が設けられており、これらの検知結果が遠隔制御装置に送信されて遠隔操作に用いられる。なお、ここで説明した遠隔制御には、ドーリー車1から離れた位置にいる操作者(人)が操作を行うによる遠隔運転に限らず、遠隔制御装置をドーリー車1から離れた位置に設けて自動的に遠隔制御することも含む。遠隔制御を行うことにより、少なくとも端部車両4の操舵に関して作業者の負荷を軽減できる。
【0029】
制御車両3には、駆動車輪6のモーターに電力供給するためのバッテリー32を搭載する。このため制御車両3には荷台が設けられていない。なお、制御車両3に搭載されたバッテリー32は車載状態のままで充電可能に構成されており、充電の度に制御車両3から取り外す必要はない。ここで制御車両3は、編成において端部車両4とは逆の端部(他端)に配置されている。このため、図2に示すように、編成における車両から隣り合う他の車両に荷物Cを送る際、荷台を設けられない制御車両3が邪魔になりにくい。また、本実施形態のドーリー車1は、基本的に自動運転または遠隔制御による運転がなされることから、制御車両3を含め、編成中に運転台は設けられていない。なお、非常時に用いる運転装置を制御車両3または端部車両4に設けておくことはできる。
【0030】
次に、本実施形態のドーリー車1を用いた荷物運搬方法の一例について説明する。ドーリー車1は、端部車両4を走行方向の先頭とし、駆動車輪6(案内車輪42を兼ねる)を操舵しつつ駆動させ、荷役車両Hが備える搬送路の長手方向に対して延長された位置に向かうように操舵される。このため、前記搬送路に対してドーリー車1は縦方向に停車する。この状態で荷台21,41のローラーコンベアを駆動させ、図2に矢印で示した方向M1に、荷物Cを編成の長手方向に順次送っていく。そして、端部車両4から荷役車両Hに荷物Cが載せ換えられる。荷役車両Hから降ろされた荷物Cをドーリー車1に載せ換える場合は前記と逆の操作となる。なお、荷物Cを編成の長手方向に順次送っていく際、編成がカーブ走行の状態で止まっている場合には、搬送方向を前記カーブに沿う方向としたい。この場合に対応し、例えば荷台21,41のローラーコンベアをカーブの外側と内側で異なる回転数で回転させる(外側ローラーを高速回転とし、内側ローラーを低速回転とする)ように構成することもできる。
【0031】
以上のように荷物Cを運搬する際において、制御車両3は荷役車両Hに対して、少なくとも編成の荷役車両Hに対する移動、及び、荷物Cの受け渡しについての制御信号を送受信することで、制御車両3と荷役車両Hとを連携して動作させる。こうすることで、荷役車両Hとドーリー車1との間で荷物Cの移動をスムーズにできる。前記連携のため、端部車両4と荷役車両Hとには対になる送受信部が設けられており、両車両間で無線通信を行えるよう構成されている。
【0032】
更に、端部車両4は荷役車両Hに接近する際に、荷役車両Hの搬送路の長手方向端部の位置に関する情報を得、制御部31は、得られた情報に応じて案内車輪42を操舵する。前記情報を得るため、端部車両4には荷役車両Hに対向する部分にカメラやセンサが設けられている。特にセンサが設けられる場合、荷役車両Hの側には前記センサに検知される被検知部等を設けることもできる。センサとしては、例えばLiDARセンサが用いられる。前記情報は、カメラを用いる場合は画像であって、センサを用いる場合は検知に係る信号である。前記情報を処理するため、制御部31は、画像認識やそれを基礎とした判断を行い、また、センサの検知信号を処理する処理機構が設けられている。この構成によれば、得られた荷役車両Hに関する情報により、端部車両4が荷役車両Hに接近する際、円滑に位置合わせをできる。
【0033】
この位置合わせに関しては、前述した制御車両3と荷役車両Hとの連携動作に関連して、本実施形態とは逆に、荷役車両Hの側にカメラやセンサを設け、端部車両4の側に被検知部等を設けておき、前記連携動作を行うことで、荷役車両Hがドーリー車1を誘導してもよい。端部車両4と荷役車両Hとの間で無線通信を行えることにより、荷役車両Hがドーリー車1における制御車両3や端部車両4を制御することができる。
【0034】
ここで、従来のように先頭の牽引車両が複数の台車2~2(付随車両)を牽引する構成では、円を描くように編成を走行させて、牽引車両から遠い台車2を荷役車両H(ハイリフトローダー車)に横付けしなければならなかったため、編成の挙動を把握することが難しかった。一方、本実施形態のドーリー車1の構成では、荷役車両Hに対し、運転台のない端部車両4を荷物Cの受け渡し可能な状態で停車できることから、荷役車両Hに対して直接的に荷物Cを送るようにできる。
【0035】
次に、図5に示した運用フローについて説明する。このフローは航空機Aに荷物Cを搭載する場合である。最初に、荷役車両Hとしてのハイリフトローダー車を航空機Aに横付けする(S1)。次に、バッテリー32の充電が完了している制御車両3に荷役予定の荷物Cの数量に応じた台数の台車2~2を連結する(S2)。なおここでは、各台車2には既に荷物Cが積載されているものとするが、複数の台車2~2を連結した後、各台車2に荷物Cを積載する作業を行うこともできる。また、制御車両3に台車2や端部車両4を連結する際、自動運転や遠隔制御による各車両の運転で連結作業を行ってもよい。次に、ドーリー車1を自動運転でハイリフトローダー車の後部付近まで走行させる(S3)。この際例えば、GPSの受信データにより、制御部31にて設定されている地図データ上でドーリー車1の現在位置を把握しながら、ハイリフトローダー車に向けて走行する。次に、センサ等により端部車両4をハイリフトローダー車の延長ドーリー部の後部に配置する(S4)。次に、ドーリー車1の制御部31とハイリフトローダー車との通信を確立する(S5)。その後、ハイリフトローダー車からの要求(要求信号の受信)に応じて荷物Cをドーリー車1から送り出す(S6)。このとき、ドーリー車1とハイリフトローダー車は通信可能状態であり、通信により連携して荷物Cが受け渡しされる。なお、ドーリー車1に設けられているレバー操作により人為的に荷物Cを送り出してもよい。そして、全荷物をハイリフトローダー車に搭載したかを確認する(S7)。全荷物を搭載していたら、ドーリー車1を自動運転でハイリフトローダー車から離し、待機場所まで戻る(S8)。そうでない場合はS6のステップに戻る。なお、図5のフローで示した内容の他、ドーリー車1を構成する複数の台車2~2に搭載されたうち一部の荷物Cをハイリフトローダー車に搭載し、その後、別の航空機Aに向かってドーリー車1を移動させた上で、別の航空機Aに横付けされたハイリフトローダー車に対して残りの荷物Cを送り出してもよい。
【0036】
次に別実施形態として、図3図4のように制御車両3が、編成の両端部を除いた位置に配置された場合について説明する。この場合、あらかじめ、制御車両3よりも編成の一端側(図示下側)に連結される1台以上の車両(複数の台車2~2)に対して、航空機Aへ積み込まれる荷物Cを積載しておく。この状態でドーリー車1を荷役車両Hに接近させ、図3に示す状態とする。そして図3に矢印で示した方向M2で、制御車両3よりも編成の他端側(図示上側)に連結される1台以上の車両(複数の台車2~2)に対して、航空機Aから降ろされた荷物Cを積載する。その後、航空機Aに対してドーリー車1を移動させた上、図4に矢印で示した方向M3で、制御車両3よりも編成の一端側(図示下側)に連結される1台以上の車両(複数の台車2~2)から、航空機Aに積む荷物Cを荷役車両Hに移動させる。このような編成のドーリー車1を用いた荷物運搬方法によれば、ドーリー車1を搬入用と搬出用の2編成用意することなく、一連の編成のドーリー車1の使用により、荷物Cの搬入と搬出を1回の運行で行える。
【0037】
以上、本実施形態の構成によれば、案内車輪42を駆動させて端部車両4を荷役車両Hの搬送路に対して停車し、その上で荷物Cを端部車両4と荷役車両Hとの間で受け渡しできる。このため、端部車両4と荷役車両Hとの間で荷物Cを受け渡しする際に必要な人手を減少できる。従って、作業者の負荷を軽減できる。
【0038】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0039】
例えば、制御部31やバッテリー32を車両床下に納められる場合等には、制御車両3に荷台が設けられていてもよい。この場合、制御車両3に設けられている荷台に荷物Cを載置したまま、ドーリー車1を走行させることができる。
【0040】
また、編成を走行させる駆動車輪6は、案内車輪42とは別の車輪として編成中のいずれかの車両(端部車両4、その他の車両(台車2))に設けられていてもよい。また、複数の駆動車輪6~6を複数の車両(台車2~2)に分散的に配置してもよい。なお、案内車輪42は、少なくとも操舵だけなされる車輪であればよい。従って案内車輪42は、走行に関しては無動力であって、操舵用の機構だけを備えていればよい。ただしこの場合には、端部車両4の別の車輪、他の台車2の車輪、制御車両3の車輪のいずれかまたは複数を駆動車輪6とすることができる。
【0041】
また、各車両自体、もしくは遠隔操作等を行うためのリモコンにジョイスティックやボタンを設置して、作業者が各車両(特に駆動手段を有する車両)を自在に動かせるように構成することもできる。
【0042】
また、液体燃料や可燃性気体を燃料とするエンジンによって、編成の駆動力を得ることもできる。この場合にエンジンは、例えば制御車両3に搭載される。この場合、端部車両4の案内車輪42は操舵のみが行われる、または、駆動車輪6に比べて小さな駆動力で駆動させられる。この場合、操舵や小さな駆動力での駆動を行うため、端部車両4にはモーターまたは専ら操舵等に用いるためのエンジンが搭載される。また、一編成において、同一車両または別の車両に電動式駆動手段(モーター)とエンジン式駆動手段の両方を搭載しておき、例えばバッテリー電圧が低下した場合にエンジン駆動に切り換えることもできる。
【0043】
また、前記実施形態ではバッテリー32は制御車両3にのみに搭載されていた。しかしこれに限定されず、バッテリー32を各車両(端部車両4を含む各台車2)に分散して搭載してもよい。また、放電等によりバッテリー32の交換が必要になった際、車両に対してバッテリー32のみを交換可能としてもよい。また、バッテリー32を搭載した車両(前記実施形態では制御車両3)ごと別の車両に交換することもできる。
【0044】
また、隣り合う車両における切欠部5の間には、編成の長手方向に沿い伸縮可能であって、隣り合う車両間で受け渡される荷物Cを少なくとも下方から支持する落下防止部(図示しない)が設けられていてもよい。落下防止部は、例えば、編成のカーブ走行に対応して変形する蛇腹状の構造物で形成できる。また例えば、複数のローラーであって、隣り合うローラーの軸心角度を、隣り合う車両の角度に合わせて、複数のローラーの組で例えば扇形状に変形するような構成とすることもできる。このように落下防止部を設けることにより、編成が問題なくカーブ走行できる(図2等参照)とともに、車両間における切欠部5の間で荷物Cが落下してしまうことを防止できる。
【0045】
また、ドーリー車1または荷役車両Hが、例えば荷役作業を統括するために設けられた上位システムと通信可能とされており、この上位システムの指令によって、ドーリー車1または荷役車両Hの空港内での移動ルートや運行スケジュールの管理が行われるようにされていてもよい。
【0046】
また、荷台を備えている各車両に関して在荷センサを設けたり、荷台に荷物を固定する機構を設けたり、それを前提として前記固定を検知するセンサを設けたりすることもできる。前記各センサ等により得られた情報は制御車両3が利用することもできるし、前述のように上位システムが設けられていて、これと通信可能であった場合、上位システム側が当該情報をドーリー車1の運行管理に利用することもできる。
【0047】
なお、前記在荷センサに関連する事項として、荷物Cを車両間で移動させる際、移動方向における前方の車両(台車2等)の荷物Cを送り出しているときに、後方の車両(台車2等)の荷物Cが衝突することを防ぐため、前方の車両の在荷センサが荷物Cを検出中は、後方の車両から荷物Cを送り出すことを禁止するように制御してもよい。
【0048】
また、荷物Cを車両間で移動させる際、前方の車両の荷物が送り出されるまでは、荷物Cの移動軌跡に重なるように突出したストッパー等を設けておいて、物理的に荷物Cが動かないような構成にしてもよい。このような物理的手段を設けることで、降雨時等に荷台における搬送ローラーがスリップした場合の荷物Cの衝突を防ぐことが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 ドーリー車
2 台車
21 荷台(台車)
3 制御車両
31 制御部
32 バッテリー
4 端部車両
41 荷台(端部車両)
42 案内車輪
5 切欠部
6 駆動車輪
A 航空機
C 荷物
H 荷役車両
図1
図2
図3
図4
図5