(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135120
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
G01G 11/00 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
G01G11/00 E
G01G11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040167
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】前野 友哉
(72)【発明者】
【氏名】杉内 創
(72)【発明者】
【氏名】須田 昇嗣
(57)【要約】
【課題】複数の計量部を備える場合であっても、各計量部の計量精度のばらつきを低減可能な計量装置を提供する。
【解決手段】計量装置は、搬送方向に交差する方向に並んで配置される複数の搬送部と、複数の搬送部のそれぞれに対して接続され、複数の搬送部により搬送される物品を計量する複数の計量部と、複数の計量部のそれぞれから出力される計量に関する原信号にフィルタリング処理を実施する制御部と、を備え、制御部は、複数の計量部のそれぞれに対して、または、複数の計量部を二以上のグループに分ける場合の各グループに対して、フィルタリング処理に適用されるフィルタ条件を設定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に交差する方向に並んで配置される複数の搬送部と、
前記複数の搬送部のそれぞれに対して接続され、前記複数の搬送部により搬送される物品を計量する複数の計量部と、
前記複数の計量部のそれぞれから出力される計量に関する原信号にフィルタリング処理を実施する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の計量部のそれぞれに対して、または、前記複数の計量部を二以上のグループに分ける場合の各グループに対して、前記フィルタリング処理に適用されるフィルタ条件を設定する、
計量装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記搬送部の動作中であって前記搬送部によって前記物品が搬送されていないときに、複数のデジタルフィルタのそれぞれを前記原信号に適用した結果に基づいて、前記複数のデジタルフィルタの少なくとも一を含む前記フィルタ条件を設定する、請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の計量部のそれぞれに、もしくは、前記各グループに、異なる商品設定を登録する、請求項1または2に記載の計量装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の計量部のそれぞれの計量結果、もしくは、前記各グループの計量結果を集計する、請求項1~3のいずれか一項に記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計量装置の一例として、複数の物品(計量対象物)の重量を同時に計量する装置が挙げられる。下記特許文献1には、物品を搬送する搬送部と、搬送部を駆動する駆動部と、搬送部で搬送中の物品を計量する計量部とを備えた計量搬送ユニットを複数並列して備えた複連計量装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような計量装置では、各計量搬送ユニットに含まれる計量部同士は、互いに異なる位置に配置される。このため、計量装置自体の振動、外部から計量装置に伝達される振動などに対する影響が異なるので、計量搬送ユニットごとに計量精度がばらつく懸念がある。
【0005】
本発明の一側面の目的は、複数の計量部を備える場合であっても、各計量部の計量精度のばらつきを低減可能な計量装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る計量装置は、搬送方向に交差する方向に並んで配置される複数の搬送部と、複数の搬送部のそれぞれに対して接続され、複数の搬送部により搬送される物品を計量する複数の計量部と、複数の計量部のそれぞれから出力される計量に関する原信号にフィルタリング処理を実施する制御部と、を備え、制御部は、複数の計量部のそれぞれに対して、または、複数の計量部を二以上のグループに分ける場合の各グループに対して、フィルタリング処理に適用されるフィルタ条件を設定する。
【0007】
この計量装置では、制御部は、複数の計量部のそれぞれに対して、もしくは、複数の計量部が二以上のグループに分けられる場合の各グループに対して、フィルタリング処理に適用されるフィルタ条件を設定する。これにより、複数の計量部のそれぞれに対して、もしくは、各グループに対して、適切なフィルタ条件を設定できる。よって、各計量部、もしくは、各グループの計量精度のばらつきを低減可能である。
【0008】
制御部は、搬送部の動作中であって搬送部によって物品が搬送されていないときに、複数のデジタルフィルタのそれぞれを原信号に適用した結果に基づいて、複数のデジタルフィルタの少なくとも一を含むフィルタ条件を設定してもよい。この場合、搬送部の動作中であって搬送部によって物品が搬送されていないときに(いわゆる空運転中に)、各計量部もしくは各グループに対するフィルタ条件を自動設定できる。
【0009】
制御部は、複数の計量部のそれぞれに、もしくは、各グループに、異なる商品設定を登録してもよい。この場合、各計量部に異なる大きさの物品が流れる場合などにおいても、各物品を適切なタイミングで計量可能になる。
【0010】
制御部は、複数の計量部のそれぞれの計量結果、もしくは、各グループの計量結果を集計してもよい。この場合、集計された情報に基づいて、各計量部もしくは各グループの計量精度などを容易に確認できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、複数の計量部を備える場合であっても、各計量部の計量精度のばらつきを抑制可能な計量装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係る計量装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、1つの搬送部と、当該搬送機に接続される1つの計量部とを示す模式図である。
【
図3】
図3は、制御部の機能的な構成を示す図である。
【
図4】
図4は、デジタルフィルタの選択方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一側面に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る計量装置の概略斜視図である。
図1に示される計量装置1は、所定方向(搬送方向)に計量対象物を搬送しながら計量する装置であり、例えば生産ラインの最終ラインに配置される。計量装置1においては、複数種類の計量対象物品が一度に計量され得る。計量対象物は、例えば、計量装置1によって計量される商品(物品)である。以下の説明では、商品を単に「商品」もしくは「物品」と表記されることがある。
【0015】
計量装置1は、本体部2と操作部3とを備える。本体部2は、商品を搬送及び計量する部分であり、架台4と、搬送機5と、センサ6と、計量機7とを有する。操作部3は、本体部2を操作する部分であり、本体部2の近傍に設置される。操作部3は、表示インターフェース8と、制御部9とを有する。
【0016】
架台4は、搬送機5、センサ6及び計量機7を収容もしくは支持する筐体であり、床に固定される。架台4は、搬送機5の下方に位置すると共に計量機7を収容する主部4aと、搬送機5の一部を覆うと共にセンサ6が装着されるカバー4bと、主部4aに装着される複数の脚4cとを有する。
【0017】
搬送機5は、例えば操作部3を介して指定された搬送速度にて、商品を所定方向に沿って搬送可能な装置である。搬送機5は、所定方向に交差する方向に並んで配置される複数の搬送部11~16を有する。本実施形態では、搬送部11~16は、互いに同一構成であり、互いに異なる位置に配置される。搬送部11~16のそれぞれは、互いに独立して駆動してもよい。搬送部11~16によって搬送される商品は、互いに同一でもよいし、互いに異なってもよい。もしくは、搬送部11~16のうち一部によって搬送される商品と、搬送部11~16のうち別の一部によって搬送される商品とは、互いに異なってもよい。搬送部11~16は、二以上のグループに分けられてもよい。例えば、搬送部11~13が第1グループに含まれ、搬送部14~16が第2グループに含まれてもよい。各グループでは、単一種類の商品が搬送されてもよいし、複数種類の商品が搬送されてもよい。
【0018】
センサ6は、搬送機5上の商品の有無を検知する部材であり、搬送機5の上方に位置する。センサ6は、搬送部11~16のそれぞれにおける商品の有無を検知する。センサ6による商品の検知結果は、操作部3に出力される。センサ6は、例えば光学センサである。
【0019】
計量機7は、搬送機5上に位置する商品の重量を計量する装置であり、搬送機5の下方に位置すると共に主部4aに収容される。計量機7は、搬送部11~16のそれぞれに対して接続される複数の計量部(不図示)を有する。これにより、計量機7は、各搬送部11~16上に位置する商品を独立して計量可能である。例えば、計量機7は、搬送部11上に位置する商品と、搬送部13上に位置する別の商品とを、一度に計量可能である。商品の計量結果は、例えば、計量機7に含まれる複数の計量部のそれぞれから、操作部3に出力される。本実施形態では、複数の計量部のそれぞれは、互いに同一構成を有し、互いに異なる位置に配置される。
【0020】
ここで、
図2を参照しながら、搬送部11と、搬送部11に接続される計量部との構成について説明する。
図2に示されるように、搬送部11は、所定方向に沿って順に配置される第1コンベア部11aと、第2コンベア部11bとを備える。第1コンベア部11aと第2コンベア部11bとのそれぞれは、所定方向に沿って商品を搬送する。このため、所定方向は商品の搬送方向に相当すると言える。第1コンベア部11aと、第2コンベア部11bとのそれぞれは、例えば、ローラ、モータ等の回転体(駆動源)、及び搬送ベルトなどを有する。第1コンベア部11aは、第2コンベア部11bに商品である物品Pを搬入するコンベアである。第1コンベア部11a上には、センサ6が配置される。これにより、センサ6は、物品Pの第1コンベア部11aの通過を検知できる。第2コンベア部11bは、第1コンベア部11aから搬送された物品Pを受け取るコンベアである。第2コンベア部11bは、計量された物品Pを計量装置1外に搬送する。第2コンベア部11bの下流側には、過大重量もしくは過少重量と判断される物品Pを振り分ける振分機(図示しない)が配置されてもよい。
【0021】
搬送部11に接続される計量部20は、第2コンベア部11bに装着される。このため、搬送機5にて搬送される物品Pは、第2コンベア部11b上にて計量される。計量部20は、負荷に応じた圧縮及び引張を受ける起歪体21と、第2コンベア部11b上に位置する物品Pを計量する計量セル22とを備える。起歪体21は、第2コンベア部11bを支持する可動剛体部21aと、主部4aに固定される固定剛体部21bとを有する。可動剛体部21aと固定剛体部21bとのそれぞれは、例えば鉛直方向に延在する部材である。可動剛体部21aの一端は第2コンベア部11bの上流側端部に接続され、可動剛体部21aの他端は計量セル22に接続される。固定剛体部21bの一端は計量セル22に接続され、固定剛体部21bの他端は架台4の主部4aに接続される。図示しないが、計量セル22では、起歪体21に貼着された複数のストレインゲージがホイートストンブリッジ回路に接続される。
【0022】
本実施形態では、計量部20は、起歪体21及び計量セル22に加えて、A/D変換部を有する。計量セル22は、起歪体21から伝達される負荷に応じた電気信号を上記ホイートストンブリッジ回路から取り出す。この電気信号は、計量セル22による物品Pの計量結果を示すアナログ原信号であり、物品Pが第2コンベア部11b上に位置しているときに得られる。このアナログ原信号は、A/D変換部によってデジタル原信号に変換される。計量部20は、当該デジタル原信号を原信号(計量結果)とし、外部に出力する。搬送部12~16のそれぞれに接続される複数の計量部も、計量部20と同様に生成する原信号(デジタル原信号)を、外部に出力する。これにより、計量機7から操作部3へ送信する原信号のデータ量を低減できる。
【0023】
図1に戻って、表示インターフェース8は、制御部9から出力される表示情報に基づく画像を表示する部材(表示部)である。表示インターフェース8は、例えば、計量機7から出力される原信号をフィルタリング処理して得られる計量信号、当該計量信号に基づいて得られる計量値、搬送機5の搬送条件、商品の特徴設定、商品の計量ピッチ等を表示する。搬送機5の搬送条件は、例えば、搬送部11~16の搬送速度、商品の搬送頻度などである。当該搬送頻度は、例えば計量装置1の上流に位置する生産機の能力に基づいて設定され得る。商品の特徴設定(商品設定)は、例えば、商品の種類、名称、寸法、理想計量値などである。商品の計量ピッチは、例えば、上記搬送速度、商品の寸法、搬送頻度などに基づき、制御部9によって算出される。
【0024】
表示インターフェース8は、外部入力部として機能するタッチパネル8aを有する。これにより、表示インターフェース8が作業者(ユーザ)からの入力を受け付けると、入力内容を示す入力情報は、制御部9に出力される。入力情報は、例えば、搬送部11~16の搬送条件、商品設定などに関するデータである。搬送部11~16の入力情報は、各計量部に関連させて登録される。
【0025】
作業者は、表示インターフェース8を介して搬送部11~16の入力情報(上記搬送条件、上記商品設定など)を個別に入力するが、これに限られない。搬送部11~16が二以上のグループに分けられている場合、作業者は、各グループに上記入力情報を入力してもよい。これにより、所定のグループに含まれる全ての搬送部及び計量部に対して、同一の入力情報が入力される。後述する制御部9は、入力された入力情報を、搬送部11~16(及び複数の計量部)のそれぞれに、もしくは、各グループに登録する。
【0026】
制御部9は、計量装置1に含まれる各部材を制御するコントローラであり、操作部3に内蔵される。制御部9は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random AccessMemory)及びROM(Read Only Memory)等によって構成される。制御部9は、例えば、表示インターフェース8を介して指定された搬送機5の動作を制御する動作信号を、搬送機5へ出力する。また、例えば、第2コンベア部11bに振分機が設けられている場合であって、制御部9が商品の重量が予め設定された適正範囲から逸脱していると判断した場合、制御部9は、当該商品を振り分ける(ラインから除外する)ように、振分機に動作信号を出力する。制御部9は、計量装置1に含まれる各部材の制御だけでなく、各種信号の受信/演算/送信、及び各種信号の記録/読み出し等も実施する処理部である。制御部9による各種信号の演算の例として、商品の計量結果の導出が挙げられる。このため、制御部9は、例えば、搬送機5の制御信号を出力するための駆動回路、計量機7にて生成される原信号から商品の計量値などを演算するための駆動回路、当該原信号から上記精度情報を演算するための駆動回路、各信号及び各情報を記憶する記憶回路等を有する。
【0027】
図3は、制御部の機能的な構成を示す図である。
図3に示されるように、制御部9は、受信部31と、フィルタ部32と、演算部33と、出力部34と、記憶部35とを有する。
【0028】
受信部31は、例えば、計量機7から送信される原信号と、表示インターフェース8から送信される入力情報とを受信する部分である。計量機7から受信部31への原信号の送信と、表示インターフェース8から受信部31への入力情報の送信とのそれぞれは、有線を介して実施されてもよいし、無線を介して実施されてもよい。受信部31は、原信号及び入力情報以外のデータを受信してもよい。
【0029】
フィルタ部32は、計量機7から出力される原信号をフィルタリング処理する部分である。フィルタリング処理は、制御部9に記憶される複数のデジタルフィルタの少なくとも一を原信号に適用する処理である。複数のデジタルフィルタのそれぞれは、予め定められた周波数を超える周波数成分を減衰させるローパスフィルタ、搬送機5に含まれる回転体の周波数のノイズを減衰させるノッチフィルタ(バンドストップフィルタ)等から構成される。すなわち、複数のデジタルフィルタの少なくとも一部を選択した場合、フィルタ部32は、原信号に対して多段階のフィルタリング処理を実施できる。各デジタルフィルタには、一又は複数のローパスフィルタ、一又は複数のノッチフィルタが含まれ得る。複数のデジタルフィルタのそれぞれは、互いに周波数帯の減衰量の異なるローパスフィルタを含んでもよいし、互いに異なる周波数帯を減衰させるノッチフィルタを含んでもよい。上記複数のローパスフィルタは、例えば特許5901126号等に記載される可変フィルタであってもよい。
【0030】
フィルタ部32は、搬送機5の動作中、且つ、物品Pの搬送中において、複数の計量部のそれぞれから出力される原信号に対してフィルタリング処理を実施する。これにより、各原信号に対応する複数の計量信号が生成される。得られた複数の計量信号は、例えば
図1に示される制御部9に含まれる演算部33、記憶部35等に出力される。各計量信号は、物品Pの重量を演算するために整えられた波形を有する。本実施形態では、複数の計量部のそれぞれに対して、もしくは、複数の計量部が二以上のグループに分けられる場合の各グループに対して、フィルタリング処理に適用されるフィルタ条件が設定されている。フィルタ条件は、複数のデジタルフィルタの少なくとも一が含まれるフィルタセットである。各計量部、もしくは各グループに設定されるフィルタ条件は、互いに同一でもよいし、互いに異なってもよい。
【0031】
フィルタ部32は、搬送機5の動作中であって搬送機5によって商品が搬送されていないとき(以下、「搬送機5の空運転中」とも称する)において、複数の計量部のそれぞれから出力される原信号に対して、複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用する。このとき、原信号には、複数のデジタルフィルタが1つずつ適用されるだけでなく、2以上のデジタルフィルタの組み合わせが適用されてもよい。これにより、フィルタ部32は、搬送機5の空運転中に得られた各原信号に対して、複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果となる複数の計量信号を生成する。換言すると、フィルタ部32は、計量部ごとに複数の計量信号を生成する。そして、フィルタ部32は、複数の計量信号を演算部33、記憶部35等に出力する。なお、搬送機5が空運転中か否かは、作業者によって判断されてもよいし、自動で判断されてもよい。例えば、搬送機5が動作中であって、センサ6の非検知状態が所定時間以上継続しているとき等に、搬送機5が空運転中であると自動で判断されてもよい。
【0032】
搬送部11~16が二以上のグループに分けられている場合、搬送機5の空運転中において、フィルタ部32は、各グループに含まれる一の計量部から出力される原信号に対して、複数のデジタルフィルタのそれぞれを順次適用してもよい。例えば、搬送部11~13が第1グループに含まれ、搬送部14~16が第2グループに含まれる場合、搬送部11~13のいずれかに接続される計量部(以下、単に第1主計量部と表記されることがある)から出力される原信号と、搬送部14~16のいずれかに接続される計量部(以下、単に第2主計量部と表記されることがある)から出力される原信号とに対して、複数のデジタルフィルタのそれぞれを順次適用する。これにより、フィルタ部32は、グループごとに複数の計量信号を生成し、当該複数の計量信号を演算部33、記憶部35等に出力する。この場合、計量信号の数を低減できる。
【0033】
演算部33は、入力された各種情報を演算処理する部分である。演算部33は、搬送機5の動作中、且つ、物品Pの搬送中において、フィルタ部32から出力される計量信号に基づいて商品の重量を演算処理する。これにより、演算部33は、商品の計量値を生成する。演算部33は、計量部ごと、もしくはグループごとに生成された計量値を出力部34に出力する。演算部33は、入力された搬送機5の搬送速度、物品Pの寸法及び搬送頻度によって商品の計量ピッチ(計量間隔)を演算する。演算部33は、上記計量値に基づいて、商品の重量が予め設定された適正範囲から逸脱しているか否かを判断する。この判断結果に応じて、演算部33は、例えば振分機に動作信号を出力する。
【0034】
演算部33は、複数の計量部のそれぞれに対して、フィルタリング処理に適用されるフィルタ条件を設定する。本実施形態では、演算部33は、搬送機5の空運転中に得られた原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果に基づいて、複数のデジタルフィルタの少なくとも一を含むフィルタ条件を設定する。演算部33は、例えば、搬送部11に接続される計量部から出力される原信号に対する複数の計量信号同士を比較する。これにより、当該計量部において最も適切な計量信号を判定する。続いて、演算部33は、判定された計量信号に適用される一のデジタルフィルタもしくは二以上のデジタルフィルタの組み合わせを、フィルタ条件として設定する。そして、演算部33は、判定された計量信号と、設定されたフィルタ条件に関する情報とを記憶部35に出力する。これにより、搬送部11及びそれに接続される計量部に適用されるフィルタ条件が設定される。搬送部12~16に対しても、搬送部11と同様の手法にてフィルタ条件が設定される。
【0035】
搬送部11~16が二以上のグループに分けられている場合、演算部33は、各グループに対して、フィルタリング処理に適用されるフィルタ条件を設定してもよい。搬送部11~13が第1グループに含まれ、搬送部14~16が第2グループに含まれる場合、演算部33は、第1グループの第1主計量部から出力される複数の計量信号同士を比較する。これにより、第1グループにおいて最も適切な計量信号を判定する。続いて、演算部33は、判定された計量信号に適用される一のデジタルフィルタもしくは二以上のデジタルフィルタの組み合わせを、フィルタ条件として設定する。第2グループに対しても、第1グループと同様の手法にてフィルタ条件が設定される。
【0036】
搬送部11~13のそれぞれには、第1グループにて定められるフィルタ条件が設定される。同様に、搬送部14~16のそれぞれには、第2グループにて定められるフィルタ条件が設定される。これにより、搬送部11~16のそれぞれにフィルタ条件を設定する場合と比較して、短時間でフィルタ条件が設定される。なお、搬送部11~16のそれぞれにフィルタ条件が設定されているとき、各グループにフィルタ条件が新たに設定された場合、搬送部11~16に設定されるフィルタ条件は、各グループに設定されるフィルタ条件に上書きされる。
【0037】
計量信号同士の比較は、例えば、計量信号に含まれる波形の振幅の標準偏差に基づいて得られるパラメータ同士を比較することに相当する。このパラメータは、波形の振幅の標準偏差自体でもよいし、当該振幅の微分値の標準偏差でもよいし、当該振幅の二次微分値の標準偏差でもよい。これらの場合、演算部33は、最も小さい標準偏差が得られる計量信号を、所定の計量部もしくは所定のグループにおいて最も適切な計量信号と判定する。計量信号に含まれる波形は、計量装置1及びその周囲によって発生する振動を含む。当該振動は、商品の計量に対するノイズになる。このため、当該波形の振幅の標準偏差が小さいほど、商品の計量に対するノイズが小さいと判断できる。
【0038】
出力部34は、例えば、制御部9にて生成される各種情報及び各種信号と、記憶部35に記憶される各種情報及び各種信号を外部に出力する。出力部34は、例えば、各計量部もしくは各グループにおける商品の計量値(計量結果)、各計量部のフィルタ条件、計量ピッチなどを表示情報として表示インターフェース8に出力する。出力部34は、搬送機5の搬送速度を制御するための動作信号を搬送機5に出力し、振分機に対する動作信号を当該振分機に出力する。出力部34から搬送機5への動作信号の出力等は、有線を介して実施されてもよいし、無線を介して実施されてもよい。各計量部もしくは各グループにおける商品の計量値を表示インターフェース8に表示させるため、出力部34は、各計量部の計量値、もしくは各グループの計量値を集計する。
【0039】
記憶部35は、表示インターフェース8を介して入力される入力情報と、制御部9にて生成される各種情報及び各種信号とを記憶する。記憶部35は、計量部ごと、もしくはグループ毎に予め設定されるフィルタ条件を記憶する。記憶部35は、フィルタ条件を設定した日時を記憶する。加えて、記憶部35は、当該日時に設定されたフィルタ条件と、上記原信号自体と、当該原信号に基づいた計量信号、及び計量値とを関連付けて記憶する。これにより、作業者は、上記フィルタ条件が選択されたときの計量装置1の計量状況等を容易に確認できる。
【0040】
次に、
図4を参照しながら本実施形態に係る計量装置1によるデジタルフィルタの自動選択方法について説明する。
図4は、デジタルフィルタの選択方法を説明するためのフローチャートである。
【0041】
まず、計量装置1の計量条件を設定する(ステップS1)。ステップS1では、まず、表示インターフェース8を介して、搬送機5の搬送条件、商品設定、商品の搬送頻度などが設定される。計量条件の少なくとも一部は、計量装置1によって自動的に設定もしくは調整されてもよい。例えば、作業者が表示インターフェース8を介して商品の種類を選択することによって、搬送部11~16の搬送速度などが自動的に設定もしくは調整されてもよい。設定された計量条件は、表示インターフェース8に表示される。これにより、作業者が設定した計量条件の是非を容易に確認できる。
【0042】
次に、商品が搬送されていない状態にて搬送機5を動作させたとき(すなわち、搬送機5を空運転させたとき)の原信号を取得する(ステップS2)。ステップS2では、例えば、計量機7は、商品を計量する前に指定された搬送速度にて搬送部11~16を約5秒間空運転させたときの各原信号を取得する。各原信号は、制御部9に出力される。なお、搬送部11~16が二以上のグループに分けられているとき、各グループにおける主計量部から出力される原信号が制御部9に出力される。
【0043】
次に、取得された各原信号に対して、複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用する(ステップS3)。ステップS3では、フィルタ部32が、上記各原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用してフィルタリング処理する。これにより、フィルタ部32は、計量部ごと、もしくは、グループごとに、複数の計量信号を生成する。
【0044】
次に、計量部ごと、もしくは、グループごとにおける計量信号同士を比較する(ステップS4)。ステップS4では、例えば、計量部ごともしくはグループごとに、複数の計量信号のそれぞれに含まれる波形の振幅の標準偏差を演算する。続いて、演算部33は、各標準偏差の大小を比較する。ここでは、演算部33は、計量部ごともしくはグループごとに、最も小さい標準偏差が得られる波形となる計量信号を決定する。
【0045】
次に、計量部ごと、もしくは、グループごとにフィルタ条件を設定する(ステップS5)。ステップS5では、演算部33は、ステップS4にて決定した計量信号を生成するために用いたデジタルフィルタを選択する。計量部ごと、もしくは、グループごとに選択されたデジタルフィルタを、フィルタ条件とする。以上により、商品の計量を実施する前に、商品を計量するときに用いられるフィルタ条件が自動で設定予約される。
【0046】
以上に説明した本実施形態に係る計量装置1の作用効果について、以下に説明する比較例を用いながら説明する。比較例に係る計量装置では、計量装置1と同様に複数の搬送部を有する搬送機と、複数の搬送部のそれぞれに接続される複数の計量部を有する計量機とを備える。比較例においては、各計量部には同一のフィルタ条件が自動設定される。ここで、計量装置において各計量部の位置は、当然に互いに異なる。このため、例えば、各計量部と、計量装置内の震動源(例えば、搬送部に含まれるモータなど)との間隔は、互いに異なる。加えて、各計量部と、計量装置外の震動源(例えば、計量装置よりも上流に位置する生産機など)との間隔も、互いに異なる。よって、上述したような震動源の影響度合いは、計量部によって異なる。したがって、比較例において設定されるフィルタ条件は、計量部によっては適切である一方で、計量部によっては適切ではないこと(すなわち、より適切なフィルタ条件が存在すること)がある。この場合、各計量部の計量精度がばらついてしまう。
【0047】
これに対して本実施形態に係る計量装置1では、制御部9は、複数の計量部のそれぞれに対して、もしくは、複数の計量部が二以上のグループに分けられる場合の各グループに対して、フィルタリング処理に適用されるフィルタ条件を自動で設定する。これにより、複数の計量部のそれぞれに対して、もしくは、各グループに対して、適切なフィルタ条件を設定できる。よって、各計量部、もしくは、各グループの計量精度のばらつきを低減可能である。
【0048】
本実施形態では、制御部9の演算部33は、搬送部11~16の動作中であって搬送部11~16によって物品が搬送されていないときに、複数のデジタルフィルタのそれぞれを原信号に適用した結果に基づいて、複数のデジタルフィルタの少なくとも一を含むフィルタ条件を設定する。このため、搬送部11~16の空運転中に、各計量部もしくは各グループに対するフィルタ条件を自動設定できる。
【0049】
本実施形態では、制御部9は、複数の計量部のそれぞれに、もしくは、各グループに、異なる商品設定を登録してもよい。この場合、各計量部に異なる大きさの商品が流れる場合などにおいても、各商品を適切なタイミングで計量可能になる。
【0050】
本実施形態では、制御部9は、複数の計量部のそれぞれの計量結果、もしくは、各グループの計量結果を集計してもよい。この場合、集計された情報に基づいて、各計量部もしくは各グループの計量精度などを容易に確認できる。
【0051】
以上、本発明の一側面に係る計量装置の実施形態について説明したが、本発明の一側面は、上記実施形態に限定されない。
【0052】
上記実施形態では、各計量部、もしくは、各グループに対して一度にフィルタ条件が設定されるが、これに限られない。例えば、複数の計量部のうち特定の計量部のみフィルタ条件が設定されてもよい。また、複数の搬送部が二以上のグループに分けられる場合、特定のグループのみフィルタ条件が設定されてもよい。この場合、特定のグループに含まれる全ての計量部のフィルタ条件が一度に設定されてもよいし、当該全ての計量部ごとのフィルタ条件が設定されてもよい。これらの場合、フィルタ条件が設定されない計量部に接続される搬送部も空運転する。
【0053】
上記実施形態では、計量部は、デジタル原信号を原信号とし、外部に出力するが、これに限られない。計量部は、取得したアナログ原信号を原信号とし、外部に出力してもよい。この場合、例えば制御部がアナログ原信号をデジタル変換してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…計量装置、2…本体部、3…操作部、4…架台、5…搬送機、6…センサ、7…計量機、8…表示インターフェース、8a…タッチパネル、9…制御部、11~16…搬送部、20…計量部、21…起歪体、21a…可動剛体部、21b…固定剛体部、22…計量セル、31…受信部、32…フィルタ部、33…演算部、34…出力部、35…記憶部。