(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135121
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】フィルタ
(51)【国際特許分類】
F01N 3/022 20060101AFI20230921BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20230921BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230921BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230921BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20230921BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230921BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
F01N3/022 C ZAB
F01N3/035 A
F01N3/24 E
F01N3/28 301P
B01D46/00 302
B01D53/94 241
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J35/04 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040168
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 尚子
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D058
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB02
3G091AB13
3G091BA07
3G091GA06
3G091GA16
3G091GB01W
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB17Y
3G091HA15
3G190BA21
3G190CA03
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3G190CB14
3G190CB18
3G190CB23
4D058JA37
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4G169AA03
4G169CA03
4G169CA07
4G169CA18
4G169DA06
4G169EA27
(57)【要約】
【課題】温度分布をより低減可能である共に過昇温に伴うフィルタの破損を抑制可能なフィルタを提供する。
【解決手段】フィルタ50は、外壁部51と、外壁部51の内部空間52を複数のセル54に区画する隔壁部53と、セル54のうちの少なくとも中心セル55の内面55sに形成された第1触媒層55pと、セル54の端部を目封じするための目封じ部材57と、セル54のうちの外縁セル56に充填された断熱材60と、を備える。目封じ部材57は、外縁セル56の両端を目封じする第2部材57Bを含む。断熱材60は、第2部材57Bにより目封じされた外縁セル56に充填されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排気ガスが流通する排気通路に配置され、前記排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタであって、
前記排気ガスが流通する内部空間を形成する筒状の外壁部と、
前記外壁部の前記内部空間を、前記排気ガスの流通方向に沿って延びる複数のセルに区画する多孔質の隔壁部と、
前記複数のセルの少なくとも一部の前記セルの内面に形成された第1触媒層と、
前記複数のセルの端部を目封じするための目封じ部材と、
前記複数のセルのうちの一部の前記セルに充填された断熱材と、
を備え、
前記複数のセルは、
前記流通方向からみて前記内部空間の中心部に配置された複数の中心セルと、
前記流通方向からみて前記内部空間の外縁部に配置された複数の外縁セルと、
を含み、
前記第1触媒層は、少なくとも前記中心セルの前記内面に形成されており、
前記目封じ部材は、
互いに隣り合う前記中心セルのうちの一方の前記中心セルの前記流通方向の一端と、互いに隣り合う前記中心セルのうちの他方の前記中心セルの前記流通方向の他端と、を交互に目封じする第1部材と、
前記複数の外縁セルの前記流通方向の両端を目封じする第2部材と、
を含み、
前記断熱材は、前記第2部材により目封じされた前記外縁セルに充填されている、
フィルタ。
【請求項2】
前記断熱材は、前記第1触媒層における煤の燃焼温度よりも低温で前記煤を燃焼させる第2触媒層を含む、
請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記断熱材は、前記第2触媒層がコートされた複数の中空ビーズを含む、
請求項2に記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、微粒子捕集装置が記載されている。この微粒子捕集装置は、内部にフィルタを備えている。このフィルタは、多孔質のセラミックのハニカムセルの入口と出口を交互に目封じしたモノリスハニカム型ウォールフロータイプのフィルタである。この微粒子捕集装置は、中央部と外周部とを有している。外周部では、セルの両端部に目封じ部材が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の微粒子捕集装置では、比較的に低温となりやすい外周部に、保温効果を有する空気層を設けることにより、強制再生時の温度分布を低減することを図っている。
【0005】
しかし、上述したように、特許文献1に記載の粒子捕集装置では、外周部に空気層が形成されるものの、ウォールフロータイプのセル壁を通じて外周部と中央部とのガスの入れ替わりが発生するため、断熱効果が十分でない。また、特許文献1に記載の粒子捕集装置では、外周部の温度が強制再生時でも中央部ほど上昇せず、外周部のセルに入り込む煤が除去できずに溜まっていく。このため、溜まった煤に着火することで過昇温に伴うフィルタ破損のおそれがある。
【0006】
本開示は、温度分布をより低減可能である共に過昇温に伴うフィルタの破損を抑制可能なフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るフィルタは、エンジンからの排気ガスが流通する排気通路に配置され、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタであって、排気ガスが流通する内部空間を形成する筒状の外壁部と、外壁部の内部空間を、排気ガスの流通方向に沿って延びる複数のセルに区画する多孔質の隔壁部と、複数のセルの少なくとも一部のセルの内面に形成された第1触媒層と、複数のセルの端部を目封じするための目封じ部材と、複数のセルのうちの一部のセルに充填された断熱材と、を備え、複数のセルは、流通方向からみて内部空間の中心部に配置された複数の中心セルと、流通方向からみて内部空間の外縁部に配置された複数の外縁セルと、を含み、目封じ部材は、互いに隣り合う中心セルのうちの一方の中心セルの流通方向の一端と、互いに隣り合う中心セルのうちの他方の中心セルの流通方向の他端と、を交互に目封じする第1部材と、複数の外縁セルの流通方向の両端を目封じする第2部材と、を含み、断熱材は、第2部材により目封じされた外縁セルに充填されている。
【0008】
このフィルタでは、排気ガスが流通する複数のセルのうち、外縁部に位置するセルの両端が目封じされている。そして、当該目封じされたセルには、断熱材が充填されている。よって、中心部のセルと外縁部のセルとの間でのガスの入れ替わりが抑制され、断熱効果が向上される。よって、外縁部に単に空気層を形成する場合と比較して、温度分布がより低減される。また、同様の理由から、外縁部に位置するセル内に煤が溜まりにくい。よって、過昇温に伴うフィルタの破損が抑制される。
【0009】
本開示に係るフィルタでは、断熱材は、第1触媒層における煤の燃焼温度よりも低温で煤を燃焼させる第2触媒層を含んでもよい。この場合、外縁部のセルに(わずかに)混入する煤を、過昇温を避けつつ燃焼除去することが可能となる。
【0010】
本開示に係るフィルタでは、断熱材は、第2触媒層がコートされた複数の中空ビーズを含んでもよい。この場合、外縁部のセルに、中心部のセルと入れ替わりが生じない空気層(中空ビーズの内部の空気)を確保することが可能となり、断熱効果がより向上される。また、第2触媒層の表面積の増大により触媒性能が向上される。この結果、外縁部のセルに混入する煤を効率よく燃焼除去することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、温度分布をより低減可能である共に過昇温に伴うフィルタの破損を抑制可能なフィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る排気浄化装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたDPF装置のフィルタの模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示されたフィルタを概略的に示す正面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示されたフィルタの効果を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して一実施形態に係るフィルタについて説明する。なお、各図において、同一の要素又は相当する要素には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る排気浄化装置を示す模式図である。
図1に示される排気浄化装置1は、例えばバスやトラック等の大型車両、産業車両に搭載され、エンジン10によって発生した排気ガスを浄化するためのものである。排気浄化装置1が搭載される車両は、例えばエンジン10を発電用の動力源として利用する、いわゆるシリーズ方式のハイブリッド車であってもよい。エンジン10から発生する一酸化炭素(NO)や二酸化炭素(NO
2)等をまとめて窒素酸化物(NOx)と称する場合がある。
【0015】
エンジン10は、ディーゼルエンジン等の内燃機関であり、例えばハイブリッド車である場合、バッテリの残存容量が低下したときに駆動する。エンジン10は、複数のシリンダ10aを備えている。複数のシリンダ10aには、複数のシリンダ10a内に空気を供給する吸気マニホールド12、及び、複数のシリンダ10aから排出ガスを排出する排気マニホールド13が接続されている。
【0016】
吸気マニホールド12には、吸気通路14が接続されている。吸気通路14には、吸気の上流側からコンプレッサ15及びインタークーラー16が順に設けられている。コンプレッサ15には、吸気が流入する導入管17が接続されている。導入管17にはエアクリーナ18が設けられている。
【0017】
排気マニホールド13には、タービン19を介して排気通路20が接続されている。タービン19は、連結軸を介してコンプレッサ15に連結されている。タービン19は、エンジン10の排気マニホールド13から排出された排出ガスの流れによって回転する。コンプレッサ15は、タービン19の回転に伴って回転し、導入管17から空気(吸気)を取り込み、圧縮された空気を吸気通路14へ送り出す。すなわち、コンプレッサ15及びタービン19は、ターボチャージャーを構成する。吸気通路14内に導入された空気は、吸気マニホールド12を通って複数のシリンダ10aへ導入される。複数のシリンダ10a内に導入された空気は各シリンダ10a内で圧縮される。
【0018】
また、エンジン10の複数のシリンダ10aに近接した位置には、複数のインジェクタ24がそれぞれ設けられている。複数のインジェクタ24は、燃料供給路23が接続されている。燃料供給路23には、燃料ポンプが接続されている。燃料ポンプは、燃料タンクに貯えられた軽油等の燃料を、燃料供給路を介して複数のインジェクタに圧送する。複数のインジェクタ24は、燃料タンクから供給された燃料を複数のシリンダ10a内にそれぞれ噴射する。
【0019】
インジェクタ24からの燃料は、圧縮された空気中に噴射されることより各シリンダ10a内で燃焼され、各シリンダ10a内に配置されたピストンをシリンダ10a内で往復移動させる。ピストンが往復運動することにより、エンジン10が駆動される。
【0020】
排気浄化装置1は、排気通路20に設けられた浄化ユニット30を備えている。浄化ユニット30は、排気通路20に配置されたDPF(Diesel Particulate Filter)装置31を有している。DPF装置31は、例えば多数の通気孔が形成されたセラミック製のフィルタ50(
図2参照)であり、排気ガスに含まれる煤等を含む粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するためのものである。
【0021】
また、浄化ユニット30は、DPF装置31よりも排気ガスの上流側に配置されたDOC(Diesel Oxidation Catalyst)装置32を有している。DOC装置32は、例えばセラミック製の担体と当該担体上に担持される酸化触媒を含み、排気ガスに含まれる炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)等を酸化して浄化する。DOC装置32に含まれる酸化触媒としては、白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属触媒が挙げられる。
【0022】
図2は、
図1に示されたDPF装置のフィルタを示す模式的な断面図である。
図3は、
図2に示されたフィルタを概略的に示す正面図である。
図2では、排気ガスの流通方向に沿った断面が示され、
図3では、排気ガスの流通方向からの正面が示されている。
図2,3に示されるように、フィルタ50は、外壁部51を含む。外壁部51は、排気ガスが流通する内部空間52を形成している。外壁部51は、例えば円筒といった筒状に形成されており、両端部が開放されている。
【0023】
フィルタ50は、隔壁部53を含む。隔壁部53は、外壁部51内に設けられ、内部空間52を複数のセル54に区画している。セル54は、それぞれ、内部空間52における排気ガスの流通方向FDに沿って延在している。セル54は、流通方向FDからみたとき、例えば、六角形といった多角形状を呈しており、ハニカム構造を成すように配列されている。隔壁部53は、例えば、多孔質のコージュライトやSiCといったセラミック材料により形成され、例えばコージュライトやSiCで形成された外壁部51と接合されている。これにより、フィルタ50は、ウォールフロータイプのフィルタとして構成されている。
【0024】
ここで、内部空間52(フィルタ50)は、中心部52Aと外縁部52Bとを含む。ここでは、内部空間52は、例えば円柱といった柱状の中心部52Aを、例えば円筒といった筒状の外縁部52Bが囲うように配置されて形成されている。中心部52Aは、流通方向FDからみて、内部空間52の中心Cを含む領域である。
【0025】
一般に、フィルタ50のような構造を有するフィルタにあっては、排気ガスの流通方向からみたとき、中心から外縁に向かうにつれて排気ガスの温度が低くなる傾向がある。そして、フィルタ50にあっては、中心部52Aと外縁部52Bとの境界は、例えば、中心Cからの距離Rが、一般のフィルタ(後述する目封じ部材58及び断熱材60を有さないフィルタ)における中心からの距離の変化量に対する排気ガスの温度の変化量の絶対値が最も大きくなる位置に設定され得る。フィルタ50では、中心Cから当該境界までの範囲DAが中心部52Aとされ、当該境界から外縁までの範囲DBが外縁部52Bとされ得る。ただし、中心部52Aと外縁部52Bとの境界は、別の基準に基づいて設定されてもよい。
【0026】
このように、フィルタ50の内部空間52は、中心部52Aと外縁部52Bとを含む。したがって、複数のセル54は、中心部52Aに配置された複数の中心セル55と、外縁部52Bに配置された複数の外縁セル56と、を含むこととなる。そして、フィルタ50では、少なくとも中心セル55の内面55s(隔壁部53の表面)に形成された第1触媒層55pを含む。第1触媒層55pは、粒子状物質の煤等を燃焼させるための酸化触媒であり、例えば酸化アルミニウム等の担体と白金系の材料から構成され得る。
【0027】
フィルタ50は、以上の複数のセル54のそれぞれの端部を目封じするための目封じ部材57を含む。より具体的には、目封じ部材57は、互いに隣り合う中心セル55のうちの一方の中心セル55の流通方向FDの一端54pと、互いに隣り合う中心セル55のうちの他方の中心セル55の流通方向FDの他端54rと、を交互に目封じする第1部材57Aを含む。また、目封じ部材57は、複数の外縁セル56の流通方向FDの両端(一端54p及び他端54r)を目封じする第2部材57Bを含む。第1部材57A及び第2部材57Bは、例えばセラミック等の材料から形成され得る。
【0028】
ここで、フィルタ50は、複数のセル54のうちの一部のセル54に充填された断熱材60をさらに含む。より具体的には、断熱材60は、複数のセル54のうち、上記のように第2部材57Bにより両端が目封じされた外縁セル56のそれぞれに充填されている。断熱材60は、例えばセラミック等から構成される中空ビーズ62と、中空ビーズ62の表面に形成された第2触媒層63と、を含む。
【0029】
換言すれば、断熱材60は、第2触媒層63がコートされた複数の中空ビーズ62を含む。中空ビーズ62の径は、隔壁部53の細孔の径よりも大きくされており、例えば20μ~50μm程度である。第2触媒層63は、第1触媒層55pにおける煤の燃焼温度よりも低温で煤を燃焼させるための触媒であり、例えば、AgCeO2、CeO2/ArO2等の材料から構成され得る。このように、外縁セル56に断熱材60が充填されることにより、外縁セル56内に、少なくとも中空ビーズ62の内部の空間62sに相当する空気層であって、中心セル55を流通する排気ガスと入れ替わらない空気層が確保される。
【0030】
引き続いて、フィルタ50の作用・効果について説明する。
図4の(a)の各グラフは、フィルタの中心からの位置と温度の関係を示している。グラフA1は、第1比較例に係る従来のフィルタのグラフであり、グラフA2は第2比較例に係る従来のフィルタのグラフであり、グラフA3は本実施形態に係るフィルタ50のグラフである。第1比較例(グラフA1)は、外縁部に両端が目封じされたセルを含まず、全てのセルが交互に目封じされたフィルタであり、第2比較例(グラフA2)は、外縁部に両端が目封じされたセルを含むものの、当該目封じされたセルに断熱材が充填されていないフィルタの場合を示している。
【0031】
グラフA1,A2に示されるように、外縁部に両端が目封じされたセルが設けられていない第1比較例に比べて、外縁部に両端が目封じされたセルが設けられた第2比較例によれば、外縁部の温度低下がやや抑制される。これに対して、グラフA3に示されるように、外縁部の両端が目封じされたセル(外縁セル56)に断熱材60が充填されたフィルタ50によれば、外縁部52Bでの温度低下がさらに抑制される。
【0032】
図4の(b)の各グラフは、一定時間使用した後の、フィルタの中心からの位置と煤の堆積量との関係を示すグラフである。グラフB1は、第1比較例に係る従来のフィルタのグラフであり、グラフB2は第2比較例に係る従来のフィルタのグラフであり、グラフB3は本実施形態に係るフィルタ50のグラフである。
【0033】
グラフB1に示されるように、第1比較例に係るフィルタでは、相対的に低温となる外縁部に向かうにつれて、煤の堆積量が増加する。また、グラフB2に示されるように、第2比較例に係るフィルタによれば、第1比較例と比較して、外縁部の煤の堆積量が低減されているものの、或る程度の煤が堆積する。これに対して、グラフB3に示されるように、本実施形態に係るフィルタ50によれば、外縁部の煤の堆積量がさらに低減される。
【0034】
以上説明したように、フィルタ50では、排気ガスが流通する複数のセル54のうち、外縁部52Bに位置する外縁セル56の両端が目封じされている。そして、当該目封じされた外縁セル56には、断熱材60が充填されている。よって、中心部52Aの中心セル55と外縁部52Bの外縁セル56との間でのガスの入れ替わりが抑制され、断熱効果が向上される。よって、外縁部52Bに単に空気層を形成する場合と比較して、温度分布がより低減される。この結果、フィルタ50の中心部52Aをより均一に暖めて煤の再生効率が向上されると共に、フィルタ50の外縁部52Bにわずかに混入する煤も燃焼除去することが可能となる。また、同様の理由から、外縁部52Bに位置する外縁セル56内に煤が溜まりにくい。よって、過昇温に伴うフィルタ50の破損が抑制される。
【0035】
また、フィルタ50では、断熱材60が、第1触媒層55pにおける煤の燃焼温度よりも低温で煤を燃焼させる第2触媒層63を含んでいる。このため、外縁部52Bの外縁セル56にわずかに混入する煤を、例えば強制再生の際に、過昇温を避けつつ燃焼除去することが可能となる。
【0036】
さらに、フィルタ50では、断熱材60が、第2触媒層63がコートされた複数の中空ビーズ62を含んでいる。このため、外縁部52Bの外縁セル56に、中心部52Aの中心セル55と入れ替わりが生じない空気層(中空ビーズ62の内部の空間62sの空気)を確保することが可能となり、断熱効果がより向上される。また、第2触媒層63の表面積の増大により触媒性能が向上される。この結果、外縁部52Bの外縁セル56に混入する煤を効率よく燃焼除去することができる。なお、中空ビーズ62の粒径を隔壁部53の細孔径よりも大きくすることにより、外縁セル56からの断熱材60の漏れを防ぐことが可能となる。
【0037】
以上の実施形態は、本開示の一側面を説明したものである。したがって、本開示は、上述したフィルタ50を任意に変形したものとされ得る。例えば、中心セル55の内面55sに加えて、外縁セル56の内面にも第1触媒層55pを形成してもよい。或いは、外縁セル56の内面に対して第2触媒層63を形成してもよい。このように、第1触媒層55pは、複数のセル54のうちの少なくとも一部(中心セル55)の内面に形成されていればよい。
【0038】
また、断熱材60は、中空ビーズ62に第2触媒層63をコートしたものに限定されず、任意である。例えば、断熱材60では、中空ビーズ62に代えて中実のビーズが使用されてもよいし、粒子状(ビーズ)でなくてもよい。さらには、断熱材60は、ビーズを使用するものに限定されず、空気層のみの状態よりも断熱効果が高ければよい。
【0039】
さらに、外壁部51、隔壁部53、第1触媒層55p、及び、第2触媒層63といった各部の材料は、上記の例に限定されず任意に選択され得る。
【符号の説明】
【0040】
50…フィルタ、51…外壁部、52…内部空間、52A…中心部、52B…外縁部、53…隔壁部、54…セル、54p…一端、54r…他端、55…中心セル、55s…内面、55p…第1触媒層、56…外縁セル、57…目封じ部材、57A…第1部材、57B…第2部材、60…断熱材、62…中空ビーズ、63…第2触媒層。