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特開2023-135123電線引っ掛け治具および電線引っ掛け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135123
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】電線引っ掛け治具および電線引っ掛け方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20230921BHJP
   H01H 33/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H02G1/02
H01H33/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040171
(22)【出願日】2022-03-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔集会名〕 第3回中部電力グループかいぜんコンテスト 〔開催日〕 2021年11月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000212739
【氏名又は名称】株式会社シーテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄一
【テーマコード(参考)】
5G027
5G352
【Fターム(参考)】
5G027AA22
5G352AC02
5G352AE05
5G352AM05
(57)【要約】
【課題】裸電線に対して電気的に接続する作業の作業箇所が高所位置であっても、この接続する作業を地面からでも簡便に接圧状態で実施できる電線引っ掛け治具および電線引っ掛け方法を提供すること。
【解決手段】開閉装置の開閉動作時間測定試験に使用する電線引っ掛け治具2は、所定の長さの棒状に形成された導電性を有する把持体20を備える。把持体20の先端は、電気的に接続された状態で取り付けられた導電性を有するフック体23を備える。フック体23は、電気的に接続された状態で取り付けられ、裸電線1aの外周面に対して弾発力が作用するように挟み込み可能に形成された導電性を有する弾性部材28を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉装置の開閉動作時間測定試験に使用する電線引っ掛け治具であって、
所定の長さの棒状に形成された導電性を有する把持体と、
前記把持体の先端に電気的に接続された状態で取り付けられた前記導電性を有するフック体と、
前記フック体に前記電気的に接続された状態で取り付けられ、裸電線の外周面に対して弾発力が作用するように挟み込み可能に形成された前記導電性を有する弾性部材と、を備えている電線引っ掛け治具。
【請求項2】
請求項1に記載の電線引っ掛け治具であって、
前記フック体の一部は、前記弾性部材が前記裸電線を挟み込むときの前記弾性部材の反り返りを規制する電線引っ掛け治具。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか1つに記載の電線引っ掛け治具であって、
前記弾性部材は、圧縮コイルばねである電線引っ掛け治具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の電線引っ掛け治具であって、
前記把持体と、前記フック体とは、着脱可能となっている電線引っ掛け治具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の電線引っ掛け治具であって、
前記把持体は、前記所定の長さから短くなるように伸縮可能に形成されている電線引っ掛け治具。
【請求項6】
電線引っ掛け方法であって、
所定の長さの棒状に形成された導電性を有する把持体と、前記把持体の先端に電気的に接続された状態で取り付けられた前記導電性を有する弾性部材と、を備えた電線引っ掛け治具の前記弾性部材が裸電線の上方に位置するように前記把持体を持ち上げ、
前記弾性部材の隙間に前記裸電線が前記上方から挟み込まれるように前記持ち上げた前記把持体を引き下げる電線引っ掛け治具の引掛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線引っ掛け治具に関し、詳しくは、開閉装置の開閉動作時間測定試験に使用する電線引っ掛け治具および電線引っ掛け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特別高圧変電所に設置されている開閉装置(例えば、遮断器であり、以降、遮断器を例に説明する)は、安全性を確保する観点から定期的に点検が行われている。この点検で行われる動作試験の項目の1つに、遮断器の主回路の接点の開閉状況を把握する試験(開閉動作時間測定試験)がある(特許文献1参照)。この開閉動作時間測定試験を行うために、遮断器の1次側の裸電線と2次側の裸電線に対して試験器の1次側のリード線と2次側のリード線をそれぞれ接続する必要がある。なお、この開閉動作時間測定試験の際に、主回路の接点の開閉動作にともない遮断器に生じる衝撃によって各裸電線が揺れ動き、各裸電線から各リード線が外れる恐れがある。この外れ防止の対策として、各裸電線に接続する各リード線を各リード線の先端に繋いだクランプ等によって挟み込んだ状態(接圧状態)とすることが考えられる。これにより、遮断器の開閉動作時間測定試験の際に各裸電線が揺れ動いても、この揺れ動いた各裸電線から各リード線が外れることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-264872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、1次側の裸電線は遮断器の上部に引き込まれ、2次側の裸電線は遮断器の上部から引き出されている。すなわち、1次側および2次側の裸電線は、一般的に、高所位置(地面から、例えば、5m程度の高さ位置)に敷設されている。そのため、これら1次側および2次側の裸電線に各リード線を接続する接続箇所の高さ位置も高所になる。したがって、この接続作業を行う作業者の安全を確保する観点から、この作業個所の下に足場等を組む必要があった。この問題を解決するために、各リード線の代わりにアースフック(接地作業を行うための棒状のフック)を代用して各裸電線に対する接続作業を行うことが考えられた。すなわち、足場等を組む必要なく、各裸電線に対してアースフックをそれぞれ引っ掛ける作業を地面から行うことが考えられた。しかしながら、アースフックは、接地線として、使用目的と比べ過大に太い、本来の目的である所要の電流容量を踏まえた電線(例えば60mm2)が使用されているため、その扱いに苦慮する上、先端に電線を把持するためのクランプがついていることから、その操作機構部も含めると全体としてかなりの重量(例えば長さによるが10kg程度以上)となり、その長尺性と相まって狭隘な場所で作業を行うことは非常に困難である。また、軽量化のためクランプがない簡易構造のアースフックでは、各裸電線に対するアースフックの接続が接圧状態とならないため、遮断器の開閉動作時間測定試験の際に各裸電線が揺れ動くと、この揺れ動いた各裸電線から引っ掛けたアースフックが脱落する恐れがあった。そこで、裸電線に対して電気的に接続する作業の作業箇所が高所位置であっても、この接続する作業を地面からでも簡便に接圧状態で実施できる電線引っ掛け治具および電線引っ掛け方法が従来必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの特徴において、開閉装置の開閉動作時間測定試験に使用する電線引っ掛け治具は、所定の長さの棒状に形成された導電性を有する把持体を備える。把持体の先端は、電気的に接続された状態で取り付けられた導電性を有するフック体を備える。フック体は、電気的に接続された状態で取り付けられ、裸電線の外周面に対して弾発力が作用するように挟み込み可能に形成された導電性を有する弾性部材を備える。
【0006】
そのため、弾性部材が裸電線の上方に位置するように、電線引っ掛け治具の把持体を掴んで地面から持ち上げる。その後、持ち上げた電線引っ掛け治具の把持体を引き下げる。すると、引き下げた電線引っ掛け治具の弾性部材に裸電線が下方から入り込む。そのため、この弾性部材に裸電線が上方から挟み込まれた状態となる。このとき、裸電線を挟み込んだ弾性部材が軸方向に沿って広がるように弾性変形する。これにより、挟み込まれた裸電線の外周面に対して弾性部材から弾発力が作用する。そのため、弾性部材が従来技術のクランプ等と同等の作用を果たすため、裸電線に対する弾性部材の接続を接圧状態にできる。なお、把持体は、所定の長さ(地面に立つ作業者が把持体を掴んだ状態において、電線引っ掛け治具の先端部位が裸電線に届く長さ)を有している。そのため、裸電線に対して接続する作業の作業箇所が高所位置であっても、この接続する作業を地面からでも簡便に接圧状態で実施できる。
【0007】
本開示の他の特徴において、フック体の一部は、弾性部材が裸電線を挟み込むときの弾性部材の反り返りを規制する。
【0008】
そのため、裸電線を挟み込むときの弾性部材が上方に向けて逃げる(ズレ動く)ことがない。したがって、電線引っ掛け治具の弾性部材に裸電線をしっかり挟み込むことができる。
【0009】
本開示の他の特徴において、弾性部材は、圧縮コイルばねである。
【0010】
そのため、圧縮コイルばねといった汎用な部材を使用して実施できる。
【0011】
本開示の他の特徴において、把持体と、フック体とは、着脱可能となっている。
【0012】
そのため、裸電線の径に合わせて各種サイズの圧縮コイルばねを用意する必要があっても、把持体を共用できる。
【0013】
本開示の他の特徴において、把持体は、所定の長さから短くなるように伸縮可能に形成されている。
【0014】
そのため、把持体を短くすると、電線引っ掛け治具がコンパクトになる。したがって、電線引っ掛け治具の持ち運びが容易となる。
【0015】
本開示の他の特徴において、電線引っ掛け方法は、まず、電線引っ掛け治具の弾性部材が裸電線の上方に位置するように把持体を持ち上げる。なお、電線引っ掛け治具は、所定の長さの棒状に形成された導電性を有する把持体と、把持体の先端に電気的に接続された状態で取り付けられた導電性を有する弾性部材を備えている。次に、弾性部材の隙間に裸電線が上方から挟み込まれるように持ち上げた把持体を引き下げる。
【0016】
そのため、弾性部材が裸電線の上方に位置するように、電線引っ掛け治具の把持体を掴んで地面から持ち上げる。その後、持ち上げた電線引っ掛け治具の把持体を引き下げる。すると、引き下げた電線引っ掛け治具の弾性部材に裸電線が下方から入り込む。そのため、この弾性部材に裸電線が上方から挟み込まれた状態となる。このとき、裸電線を挟み込んだ弾性部材が軸方向に沿って広がるように弾性変形する。これにより、挟み込まれた裸電線の外周面に対して弾性部材から弾発力が作用する。そのため、弾性部材が従来技術のクランプ等と同等の作用を果たすため、裸電線に対する弾性部材の接続を接圧状態にできる。なお、把持体は、所定の長さ(地面に立つ作業者が把持体を掴んだ状態において、電線引っ掛け治具の先端部位が裸電線に届く長さ)を有している。そのため、裸電線に対して接続する作業の作業箇所が高所位置であっても、この接続する作業を地面からでも簡便に接圧状態で実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る遮断器の開閉動作時間測定試験を説明する模式図である。
図2図1の遮断器の開閉動作時間測定試験に使用する電線引っ掛け治具の全体斜視図である。
図3図2の電線引っ掛け治具の主要部を拡大した正面図である。
図4図3において、遮断器の開閉動作時間測定試験を行う前の状態を示している。
図5図4において、遮断器の開閉動作時間測定試験を行っている最中の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態を、図1~5を参照して説明する。はじめに、開閉装置の一例である遮断器1と、遮断器1の開閉動作時間測定試験において使用する電線引っ掛け治具2および試験器3を個別に説明する。
【0019】
まず、図1を参照して、遮断器1を説明する。遮断器1は、例えば、特別高圧変電所に設置されているものであって、遮断器本体10の内部に接点11が設けられている。接点11は、操作スイッチ(図示しない)によって遮断器1の主回路を開閉(入-切)するものである。
【0020】
接点11の1次側(上流側)は、1次側の導体12を介して1次側の端子台13と電気的に接続されている。1次側の端子台13は、1次側の裸電線1aと電気的に接続されている。また、接点11の2次側(下流側)は、2次側の導体12を介して2次側の端子台13と電気的に接続されている。2次側の端子台13は、2次側の裸電線1aと電気的に接続されている。よって、主回路の接点11を閉じると、1次側の裸電線1aと2次側の裸電線1aが電気的に接続される。
【0021】
遮断器1は、このように構成されている。このように構成される遮断器1は、地面4に設置されている。なお、1次側の裸電線1aは遮断器1の上部に引き込まれ、2次側の裸電線1aは遮断器1の上部から引き出されている。すなわち、これら1次側の裸電線1aおよび2次側の裸電線1aは、高所位置(地面4から、例えば、5m程度の高さ位置)に敷設されている。
【0022】
次に、図2~3を参照して、電線引っ掛け治具2を説明する。電線引っ掛け治具2は、作業者(図示しない)が掴み可能な棒状の把持体20と、略逆U形状のフック体23と、弾性部材である圧縮コイルばね28を備えている。把持体20は、長手方向に沿って伸縮可能(例えば、1m~3mの範囲で調整可能)に構成されている。この把持体20を伸ばした状態を所定の長さ(例えば、3m)とする。
【0023】
この所定の長さとは、地面4に立つ作業者が電線引っ掛け治具2を掴んだ状態において、この電線引っ掛け治具2の先端部位(把持体20、圧縮コイルばね28等)が1次側および2次側の裸電線1aに届く長さのことである。
【0024】
フック体23は、上述したように略逆U形状に構成されており、基部24と、基部24に対向する先端部25と、基部24と先端部25を繋ぐ中間部26を備えている。把持体20の先端部20aとフック体23の基部24は、螺合によって締結されている。そのため、把持体20とフック体23とは、着脱可能となっている。
【0025】
圧縮コイルばね28の一端部28aは、圧縮コイルばね28の螺旋部28cがフック体23の内部23aに位置するようにフック体23の先端部25に2か所の溶接によって接合されている。この2か所の接合個所を接合部29と記す。このとき、圧縮コイルばね28の螺旋部28cは、フック体23の中間部26に当接状態若しくは僅かな隙を介した状態となっている。
【0026】
また、圧縮コイルばね28の他端部28bは、フック体23の基部24を境に反対側に位置する状態となっている。これら把持体20、フック体23、圧縮コイルばね28および接合部29は、いずれも導電性を有する部材から構成されている。そのため、電線引っ掛け治具2は、圧縮コイルばね28~把持体20に至るまで導通状態(電気的に接続された状態)となっている。電線引っ掛け治具2は、このように構成されている。
【0027】
次に、図1を参照して、試験器3を説明する。試験器3は、遮断器1の主回路の接点11の開閉状況を把握する試験(動作時間を測定する開閉動作時間測定試験)を行うものである。試験器3の試験器本体30は、1次側のリード線31と2次側のリード線31を備えている。1次側のリード線31の先端部31aは、電線引っ掛け治具2の把持体20の基端部20bを挟み可能なクリップ32を備えている。
【0028】
2次側のリード線31の先端部31aも、電線引っ掛け治具2の把持体20の基端部20bを挟み可能なクリップ32を備えている。これら1次側のリード線31およびクリップ32は、いずれも導電性を有する部材から構成されている。そのため、試験器3は、1次側のリード線31~クリップ32に至るまで導通状態となっている。このことは、2次側のリード線31においても同様である。試験器3は、このように構成されている。
【0029】
続いて、図1、4~5を参照して、遮断器1の開閉動作時間測定試験の事前作業について説明する。この開閉動作時間測定試験は、上述した電線引っ掛け治具2と、試験器3を使用して実施するものである。なお、以下の説明において、1次側の作業の説明を行うが、これと同じ作業を2次側でも行うものとする。
【0030】
まず、1次側の電線引っ掛け治具2の基端部20bに1次側のリード線31のクリップ32を挟み込む作業を行う(図1参照)。そのため、1次側の電線引っ掛け治具2の圧縮コイルばね28~試験器3の1次側のリード線31に至るまで導通状態となる。次に、1次側の電線引っ掛け治具2の把持体20を伸ばす作業を行う。これにより、把持体20が所定の長さとなるため、後述する1次側の裸電線1aに対して1次側のリード線31を接続する作業の作業個所が高所位置であっても、この接続する作業を地面4から実施できる。
【0031】
次に、1次側の電線引っ掛け治具2の圧縮コイルばね28が1次側の裸電線1aの上方に位置するように、1次側の電線引っ掛け治具2の把持体20の下部を掴んで地面4から持ち上げる作業を行う(図4参照)。このとき、1次側の裸電線1aの軸方向A(図4において、紙面の手前-奥方向)に対して圧縮コイルばね28の軸方向B(図4において、左-右方向)が略直交するように、1次側の電線引っ掛け治具2の把持体20を持ち上げる。
【0032】
次に、持ち上げた1次側の電線引っ掛け治具2の把持体20を引き下げる作業を行う。すると、引き下げた1次側の電線引っ掛け治具2の圧縮コイルばね28の螺旋部28cの隙間28dに1次側の裸電線1aが下方から入り込む(図5参照)。そのため、この螺旋部28cの隙間28dに1次側の裸電線1aが上方から挟み込まれた状態となる。すなわち、1次側の裸電線1aに電線引っ掛け治具2が引っ掛けられる。これらの記載が、特許請求の範囲に記載の「電線引っ掛け治具2の引掛方法」に相当する。これにより、1次側の裸電線1aと1次側の電線引っ掛け治具2の圧縮コイルばね28が導通状態となる。
【0033】
すなわち、1次側の裸電線1aに対して1次側のリード線31が電気的に接続される。そのため、図1に示すように、遮断器1、1次側の裸電線1a、1次側の電線引っ掛け治具2、1次側のリード線31、試験器3、2次側のリード線31、2次側の電線引っ掛け治具2、2次側の裸電線1aとループになり電気回路が形成される。したがって、遮断器1の開閉動作時間測定試験の事前作業が完了するため、遮断器1の開閉動作時間測定試験を実施できる。
【0034】
なお、図5から明らかなように、上述したように1次側の裸電線1aが圧縮コイルばね28の隙間28dに上方から挟み込まれると、この1次側の裸電線1aを挟み込んだ螺旋部28cの隙間28dが軸方向Bに沿って広がるように螺旋部28cが弾性変形する。これにより、挟み込まれた1次側の裸電線1aの外周面に対して圧縮コイルばね28の螺旋部28cから弾発力が作用する。そのため、圧縮コイルばね28が従来技術のクランプ等と同等の作用を果たすため、1次側の裸電線1aに対する圧縮コイルばね28の接続を接圧状態にできる。
【0035】
したがって、接圧状態を確保後は、当該電線引っ掛け治具2を掴んだ手を離して試験を行うことが可能で、加えて遮断器1の開閉動作時間測定試験の際に各裸電線1aが揺れ動いても、この揺れ動いた各裸電線1aから各圧縮コイルばね28が外れることを防止できる。なお、この接圧状態は、上述したように、地面4から1次側の電線引っ掛け治具2の把持体20を持ち上げた後に引き下げる作業と、その際の圧縮コイルばね28からの弾発力を利用して成し得ることができる。そのため、1次側の裸電線1aに対して接続する作業の作業個所が高所位置であっても、この接続する作業を地面4からでも簡便に接圧状態で実施できる。
【0036】
また、上述したように、1次側の裸電線1aが圧縮コイルばね28の隙間28dに挟み込まれるとき、圧縮コイルばね28は、他端部28bが上方に向けて反り返ろうとする動きをする。しかし、図4から明らかなように、圧縮コイルばね28の螺旋部28cがフック体23の中間部26に干渉するため、この反り返ろうとする動きが規制される。そのため、この挟み込みにともなって圧縮コイルばね28が上方に向けて逃げる(ズレ動く)ことがない。したがって、1次側の電線引っ掛け治具2の圧縮コイルばね28の螺旋部28cの隙間28dに1次側の裸電線1aをしっかり挟み込むことができる。この中間部26が、特許請求の範囲に記載の「フック体の一部」に相当する。
【0037】
また、上述したように1次側の裸電線1aを挟み込んだ状態において、1次側の引っ掛け治具2を1次側の裸電線1aの軸方向Aに沿って動かすと、この1次側の裸電線1aの表面に付着している汚れを除去できる。そのため、1次側の裸電線1aに対する1次側の電線引っ掛け治具2の圧縮コイルばね28の電気的な接触を十分に確保できる。なお、上述したように1次側の裸電線1aを挟み込んだ状態から、1次側の電線引っ掛け治具2を持ち上げると、この挟み込んだ状態を解消できる。そのため、この挟み込み状態も簡便に解消できる。
【0038】
実施形態に係る電線引っ掛け治具2は、上述したように構成されている。この構成によれば、電線引っ掛け治具2は、所定の長さ(例えば、3m)の棒状に形成された導電性を有する把持体20を備えている。把持体20の先端には、電気的に接続された状態で取り付けられた導電性を有するフック体23を備えている。フック体23は、電気的に接続された状態で取り付けられ、弾発力を介して1次側の裸電線1a(2次側の裸電線1a)の外周面を挟み込み可能に形成された導電性を有する圧縮コイルばね28を備えている。
【0039】
そのため、圧縮コイルばね28が1次側の裸電線1aの上方に位置するように、1次側の電線引っ掛け治具2の把持体20を掴んで地面4から持ち上げる。その後、持ち上げた1次側の電線引っ掛け治具2の把持体20を引き下げる。すると、引き下げた1次側の電線引っ掛け治具2の圧縮コイルばね28の螺旋部28cの隙間28dに1次側の裸電線1aが下方から入り込む。そのため、この螺旋部28cの隙間28dに1次側の裸電線1aが上方から挟み込まれた状態となる。このとき、1次側の裸電線1aを挟み込んだ螺旋部28cの隙間28dが軸方向Bに沿って広がるように螺旋部28cが弾性変形する。これにより、挟み込まれた1次側の裸電線1aの外周面に対して圧縮コイルばね28の螺旋部28cから弾発力が作用する。そのため、圧縮コイルばね28が従来技術のクランプ等と同等の作用を果たすため、1次側の裸電線1aに対する圧縮コイルばね28の接続を接圧状態にできる。なお、この接圧状態は、地面4から1次側の電線引っ掛け治具2を持ち上げた後に引き下げる作業と、その際の圧縮コイルばね28からの弾発力を利用して成し得ることができる。したがって、1次側の裸電線1aに対して接続する作業の作業箇所が高所位置であっても、この接続する作業を地面4からでも簡便に接圧状態で実施できる。
【0040】
また、この構成によれば、フック体23の中間部26は、圧縮コイルばね28が1次側および2次側の裸電線1aを挟み込むときの圧縮コイルばね28の反り返りを規制する。そのため、裸電線1aを挟み込むときの圧縮コイルばね28が上方に向けて逃げる(ズレ動く)ことがない。したがって、電線引っ掛け治具2の圧縮コイルばね28の螺旋部28cの隙間28dに裸電線1aをしっかり挟み込むことができる。
【0041】
また、この構成によれば、弾性部材は、圧縮コイルばね28である。そのため、圧縮コイルばね28といった汎用な部材を使用して実施できる。
【0042】
また、この構成によれば、把持体20とフック体23とは、着脱可能となっている。そのため、裸電線1aの径に合わせて各種サイズの圧縮コイルばね28を用意する必要があっても、把持体20を共用できる。
【0043】
また、この構成によれば、把持体20は、所定の長さから短くなるように伸縮可能に形成されている。そのため、把持体20を短くすると、電線引っ掛け治具2がコンパクトになる。したがって、電線引っ掛け治具2の持ち運びが容易となる。
【0044】
実施形態を上記構造を参照して説明したが、本発明の目的を逸脱せずに多くの交代、改良、変更が可能であることは当業者であれば明らかである。したがって、実施形態は、添付された請求項の精神と目的を逸脱しない全ての交代、改良、変更を含み得る。例えば、実施形態は、特別な構造に限定されず、下記のように変更が可能である。
【0045】
実施形態では、弾性部材の例として、圧縮コイルばね28を説明した。これに代えて、板ばね等であっても構わない。また、把持体20の先端部20aとフック体23の基部24の締結の例として、螺合を説明した。これに代えて、係合、嵌合等でも構わない。
【0046】
実施形態では、『開閉装置』の一例として、遮断器1を説明した。これに代えて、断路器、負荷開閉器、スイッチギヤ(遮断器1並びに断路器などを一体化したもの(GIS))等であっても構わない。
【0047】
実施形態では、圧縮コイルばね28の一端部28aがフック体23の先端部25に2か所の溶接によって接合されている例を説明した。これに代えて、溶接個所は、1か所でも、3か所以上でも構わない。また、この接合が溶接に限定されることなく、公知の接合(例えば、ロック、締結、嵌め合い等)で行われても構わない。
【符号の説明】
【0048】
1 遮断器(開閉装置)
1a 裸電線
2 電線引っ掛け治具
20 把持体
23 フック体
28 圧縮コイルばね(弾性部材)
図1
図2
図3
図4
図5