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  • 特開-蒸気発生装置及び蒸気発生方法 図1
  • 特開-蒸気発生装置及び蒸気発生方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135129
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】蒸気発生装置及び蒸気発生方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 3/02 20060101AFI20230921BHJP
   F22B 1/28 20060101ALI20230921BHJP
   F22B 35/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
F22B3/02
F22B1/28 Z
F22B35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040177
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】米田 広
(72)【発明者】
【氏名】川村 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】関谷 禎夫
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021AA08
3L021BA08
3L021CA10
3L021DA04
3L021DA38
3L021EA01
3L021FA28
(57)【要約】
【課題】温度が低く、かつ、温度及び流量が変動しやすい温排水等を熱源とし冷媒を用いることなく高圧蒸気を発生させる蒸気発生装置において、熱源からの熱交換量が変動しても安定して高圧蒸気を供給する。
【解決手段】熱交換器と、圧縮機と、制御部と、を備えた蒸気発生装置であって、熱交換器は、熱源媒体流路と、水を供給する給水配管と、電熱ヒータと、を有し、熱源媒体流路は、水を加熱する構成を有し、圧縮機は、熱交換器にて水から発生する低圧蒸気を圧縮して高圧蒸気にする構成を有し、制御部は、圧縮機及び電熱ヒータの出力を調整するものであり、制御部は、電熱ヒータによる加熱が必要かどうかを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、圧縮機と、制御部と、を備え、
前記熱交換器は、熱源媒体流路と、水を供給する給水配管と、電熱ヒータと、を有し、
前記熱源媒体流路は、前記水を加熱する構成を有し、
前記圧縮機は、前記熱交換器にて前記水から発生する低圧蒸気を圧縮して高圧蒸気にする構成を有し、
前記制御部は、前記圧縮機及び前記電熱ヒータの出力を調整するものであり、
前記制御部は、前記電熱ヒータによる加熱が必要かどうかを判定する、蒸気発生装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記熱源媒体流路への供給熱量の変化の履歴である熱源履歴と、
前記低圧蒸気の圧力の履歴である低圧蒸気圧力履歴と、
前記高圧蒸気の圧力の履歴である高圧蒸気圧力履歴と、のうち少なくともいずれか一つに基づいて、
前記圧縮機及び前記電熱ヒータの前記出力のうち少なくともいずれか一方を調整する、請求項1記載の蒸気発生装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電熱ヒータの前記出力の履歴に基づいて、前記電熱ヒータの前記出力を調整する、請求項1記載の蒸気発生装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記熱源媒体流路への供給熱量の予測情報と、
前記高圧蒸気の需要の予測情報と、のうち少なくともいずれか一つに基づいて、
前記圧縮機及び前記電熱ヒータの前記出力のうち少なくともいずれか一方を調整する、請求項1記載の蒸気発生装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記高圧蒸気の圧力が目標圧力よりも高い値を保持するように前記圧縮機の前記出力を調整する、請求項1記載の蒸気発生装置。
【請求項6】
前記電熱ヒータは、水平中心線を基準として前記熱源媒体流路の下方に配置されている、請求項1記載の蒸気発生装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記熱源媒体流路の熱源媒体の温度及び流量、
前記熱交換器に滞留している前記水の温度及び体積、
前記給水配管を流れる前記水の温度、
前記低圧蒸気の温度及び圧力、
並びに前記高圧蒸気の温度及び圧力、のうち少なくともいずれか一つに基づいて、
前記圧縮機及び前記電熱ヒータの前記出力のうち少なくともいずれか一方を調整する、請求項1記載の蒸気発生装置。
【請求項8】
前記熱源媒体流路の熱源媒体は、温排水である、請求項1記載の蒸気発生装置。
【請求項9】
熱交換器と、圧縮機と、制御部と、を備え、
前記熱交換器は、熱源媒体流路と、水を供給する給水配管と、電熱ヒータと、を有する蒸気発生装置を用いて蒸気を発生させる方法であって、
前記熱源媒体流路が、前記水を加熱し、
前記圧縮機が、前記熱交換器にて前記水から発生する低圧蒸気を圧縮して高圧蒸気にし、
前記制御部が、前記圧縮機及び前記電熱ヒータの出力を調整し、
前記制御部が、前記電熱ヒータによる加熱が必要かどうかを判定する、蒸気発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気発生装置及び蒸気発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の使用量削減は、社会課題であり、蒸気ボイラを用いる生産ラインも、対策が求められている。そこで、蒸気ボイラの熱源として、重油等を用いる燃焼器に代わる構成を有するものが開発されてきている。
【0003】
特許文献1には、工場排水等から排熱を回収して蒸気を生成するヒートポンプ式蒸気生成装置であって、排熱回収器(蒸発器)において温水から熱を回収して冷媒を加熱し、圧縮機により冷媒を圧縮し、冷媒の凝縮器において被加熱水を加熱して蒸気を生成するヒートポンプ部を有するものが開示されている。
【0004】
特許文献2には、プロセス蒸気の圧力値を、低圧から高圧へ変換するのみならず、高圧から低圧へも変換することができるプロセス蒸気の制御装置であって、スクリュー式ロータを用いて、中圧蒸気を減圧し、低圧蒸気を昇圧するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-161248号公報
【特許文献2】特開2008-19812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のヒートポンプ式蒸気生成装置においては、冷媒を用いるヒートポンプを介して蒸気を生成している。このため、熱の移動に関与する熱交換器が2つ必要である。また、ヒートポンプに用いる冷媒が必要であり、冷媒が特定されていないが、通常、冷媒としてはフロン系冷媒が用いられている。
【0007】
特許文献2に記載のプロセス蒸気の制御装置においては、定常的に供給されている低圧蒸気を高圧蒸気にしている。
【0008】
本開示の目的は、温度が低く、かつ、温度及び流量が変動しやすい温排水等を熱源とし冷媒を用いることなく高圧蒸気を発生させる蒸気発生装置において、熱源からの熱交換量が変動しても安定して高圧蒸気を供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の蒸気発生装置は、熱交換器と、圧縮機と、制御部と、を備え、熱交換器は、熱源媒体流路と、水を供給する給水配管と、電熱ヒータと、を有し、熱源媒体流路は、水を加熱する構成を有し、圧縮機は、熱交換器にて水から発生する低圧蒸気を圧縮して高圧蒸気にする構成を有し、制御部は、圧縮機及び電熱ヒータの出力を調整するものであり、制御部は、電熱ヒータによる加熱が必要かどうかを判定する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、温度が低く、かつ、温度及び流量が変動しやすい温排水等を熱源とし冷媒を用いることなく高圧蒸気を発生させる蒸気発生装置において、熱源からの熱交換量が変動しても安定して高圧蒸気を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の蒸気発生装置を示す概略構成図である。
図2図1の蒸気発生装置の制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しつつ、本開示の実施例を詳細に説明する。
【0013】
図1は、実施形態の蒸気発生装置を示す概略構成図である。
【0014】
本図において、蒸気発生装置100は、熱交換器10と、圧縮機20と、制御部30と、を備えている。
【0015】
熱交換器10は、熱源媒体流路12と、電熱ヒータ14と、を内蔵している。また、熱交換器10には、減圧弁16を有する給水配管18が接続されている。熱源媒体流路12及び電熱ヒータ14は、熱交換器10に供給される水(液体)と接触するように配置されている。給水配管18を介して熱交換器10に供給された水は、熱源媒体流路12及び電熱ヒータ14のうち少なくともいずれか一方により加熱される。この場合に、水は、熱交換器10の上部からシャワー状に分散して供給するようにしてもよい。熱源媒体流路12に供給される熱源は、工場等において用途がほとんど得られない100℃未満の温排水等である。
【0016】
なお、熱交換器10に供給される水は、熱交換面におけるスケールの発生を抑制するため、給水配管18の上流側にイオン交換水製造装置等の水質管理装置を設置して、不純物を除去することが望ましい。
【0017】
圧縮機20は、熱交換器10で発生する低圧蒸気を吸引し、高圧蒸気を吐出するように構成されている。また、圧縮機20は、制御部30からの制御信号を受けて回転数を増減するように構成されている。電熱ヒータ14の出力(発熱量)も、制御部30により調整されるように構成されている。なお、制御部30は、蒸気発生装置100に内蔵されたIC、CPU等のハードウェアにより実現してもよいし、外部又は遠隔地に設置されたコンピュータに格納されたプログラム等により実現してもよい。
【0018】
熱交換器10の内部は、圧縮機20による吸引により減圧されている。このため、熱交換器10の内部の水は、100℃未満で沸騰する。給水配管18の減圧弁16は、熱交換器10の内部の減圧状態を保つために設けられている。したがって、上記の低圧蒸気は、例えば約60℃で沸騰が起こっている場合には、その水温に対応する飽和蒸気圧と同等の圧力を有する。また、高圧蒸気は、圧縮機20により所望の圧力とすることは可能であるが、通常は、100℃程度から200℃程度の水温に対応する飽和蒸気圧と同等の圧力とする。
【0019】
電熱ヒータ14は、熱源媒体流路12の下方に配置されている。熱源媒体流路12の水平中心線と電熱ヒータ14の水平中心線との高さの差は、図中にdで表している。ここで、水平中心線とは、物体の上部及び下部と等距離にある水平方向の中心線をいう。
【0020】
水平中心線を基準として電熱ヒータ14を熱源媒体流路12の下方に配置することにより、給水量が減少しても、電熱ヒータ14が水で覆われる可能性が高いため、空焚きを防止することができる。また、電熱ヒータ14に通電する際(オンにする際)には、熱交換器10の内部に供給された水の滞留量が少なくとも電熱ヒータ14の全体を覆う程度であることが望ましい。
【0021】
図2は、図1の蒸気発生装置の制御方法を示すフロー図である。
【0022】
図2においては、熱交換器10に供給された水を、熱源媒体が流れる熱源媒体流路12との熱交換により加熱する(工程S110)。そして、加熱により発生する蒸気(低圧蒸気)を圧縮機20で圧縮する(工程S120)。電熱ヒータ14による加熱が必要かどうかを判定する(工程S130)。必要と判定された場合は、電熱ヒータをオンにする(工程S140)。そして、高圧蒸気の圧力を調整する(工程S150)。
【0023】
一方、工程S130において電熱ヒータ14による加熱が不要と判定された場合は、電熱ヒータをオンにすることなく工程S150に進む。
【0024】
上述の構成により、熱源媒体からの熱が不足する場合であっても、高圧蒸気を安定して供給することができる。
【0025】
本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含むものである。また、本開示は、必ずしも上述の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0026】
以下、本開示に係る望ましい実施形態について、まとめて説明する。
【0027】
蒸気発生装置においては、制御部は、熱源媒体流路への供給熱量の変化の履歴である熱源履歴と、低圧蒸気の圧力の履歴である低圧蒸気圧力履歴と、高圧蒸気の圧力の履歴である高圧蒸気圧力履歴と、のうち少なくともいずれか一つに基づいて、圧縮機及び電熱ヒータの出力のうち少なくともいずれか一方を調整する。
【0028】
このように、過去の外部環境、蒸気の圧力等の履歴情報を制御のフィードフォワード情報として用いることにより、高圧蒸気を安定して供給することができる。
【0029】
制御部は、電熱ヒータの出力の履歴に基づいて、電熱ヒータの出力を調整する。
【0030】
このような過去の運転履歴情報を制御のフィードフォワード情報として用いて電熱ヒータを制御することにより、高圧蒸気を安定して供給することができる。
【0031】
制御部は、熱源媒体流路への供給熱量の予測情報と、高圧蒸気の需要の予測情報と、のうち少なくともいずれか一つに基づいて、圧縮機及び電熱ヒータの出力のうち少なくともいずれか一方を調整する。
【0032】
このように、例えば、外部の生産管理システムから得られる将来の熱に関する需要及び供給の予測情報を制御のフィードフォワード情報として用いて、圧縮機及び電熱ヒータを制御することにより、高圧蒸気を安定して供給することができる。
【0033】
制御部は、高圧蒸気の圧力が目標圧力よりも高い値を保持するように圧縮機の出力を調整する。
【0034】
これにより、例えば、履歴情報及び将来予測情報から高圧蒸気の供給不足が予想される場合には、高圧蒸気の圧力低下を最小限に抑え、高圧蒸気を安定して供給することができる。
【0035】
電熱ヒータは、水平中心線を基準として熱源媒体流路の下方に配置されている。
【0036】
制御部は、熱源媒体流路の熱源媒体の温度及び流量、熱交換器に滞留している水の温度及び体積、給水配管を流れる水の温度、低圧蒸気の温度及び圧力、並びに高圧蒸気の温度及び圧力、のうち少なくともいずれか一つに基づいて、圧縮機及び電熱ヒータの出力のうち少なくともいずれか一方を調整する。
【0037】
熱源媒体流路の熱源媒体は、温排水である。
【0038】
蒸気発生方法は、熱交換器と、圧縮機と、制御部と、を備え、熱交換器は、熱源媒体流路と、水を供給する給水配管と、電熱ヒータと、を有する蒸気発生装置を用いて蒸気を発生させる方法であって、熱源媒体流路が、水を加熱し、圧縮機が、熱交換器にて水から発生する低圧蒸気を圧縮して高圧蒸気にし、制御部が、圧縮機及び電熱ヒータの出力を調整し、制御部が、電熱ヒータによる加熱が必要かどうかを判定する。
【0039】
以下、本開示の技術による効果について、まとめて説明する。
【0040】
排熱(温排水等)の熱量が変動しても、低圧蒸気の発生量を維持できるため、安定して高圧蒸気を供給することができる。
【0041】
熱交換器に供給された水を直接加熱するため、熱源媒体を加熱する場合に比べて、熱の損失を少なくすることができる。
【0042】
熱交換器に供給された水を直接加熱するため、負荷変動への追随性が高く、安定した制御が可能となる。
【0043】
冷媒を用いたヒートポンプが不要であり、構成要素として必要な熱交換器が1つで済む。
【符号の説明】
【0044】
10:熱交換器、12:熱源媒体流路、14:電熱ヒータ、16:減圧弁、18:給水配管、20:圧縮機、30:制御部、100:蒸気発生装置。
図1
図2