(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135150
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】故障判定装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20230921BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20230921BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20230921BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20230921BHJP
B62D 111/00 20060101ALN20230921BHJP
【FI】
B62D6/00 ZYW
B62D101:00
B62D113:00
B62D119:00
B62D111:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040214
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】坂本 有希
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC30
3D232CC32
3D232DA03
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA29
3D232DA33
3D232DA76
3D232DA84
3D232DA87
3D232DA90
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD02
3D232DE20
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】車両のステアリング系の故障を適切に検知すること。
【解決手段】制御装置10は、車速及び操舵角に対する操舵力を推定する車両モデルを構築するモデル構築部103と、車速及び操舵角の実測値を取得すると共に、該車速及び操舵角の実測値を車両モデルに入力し、操舵力の推定値を導出する推定部104と、操舵力の実測値を取得すると共に、該操舵力の実測値と操舵力の推定値とを比較し、これらの値同士の乖離が所定の閾値よりも大きい場合に、車両のステアリング系が故障していると判定する判定部105と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車速及び操舵角に対する操舵力を推定する車両モデルを構築するモデル構築部と、
車速及び操舵角の実測値を取得すると共に、該車速及び操舵角の実測値を前記車両モデルに入力し、操舵力の推定値を導出する推定部と、
操舵力の実測値を取得すると共に、該操舵力の実測値と前記操舵力の推定値とを比較し、これらの値同士の乖離が所定の閾値よりも大きい場合に、車両のステアリング系が故障していると判定する判定部と、を備える故障判定装置。
【請求項2】
前記モデル構築部は、走行時において取得される車速、操舵角、及び操舵力の実測値を学習することにより、構築済みの前記車両モデルを更新する、請求項1記載の故障判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記乖離が前記閾値よりも大きい状態が所定時間以上継続される場合に、車両のステアリング系が故障していると判定する、請求項1又は2記載の故障判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、車両のステアリング系の故障判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の操舵力を推定する装置が記載されている。このような装置によれば、車速等を考慮して、車両の操舵力を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両のステアリング系の故障を検知したい場合に、上述した特許文献1に記載された技術を利用して操舵力を推定し、該操舵力からステアリング系の故障を検知することが考えられる。しかしながら、単に操舵力を推定しただけでは、ステアリング系の故障を適切に検知することができない。また、ドライバが存在する車両においては、ハンドル操作時の違和感(ハンドルが切れない、重い等)に基づきステアリング系の故障を検知することができるが、無人自動運転車両においてはそのようなドライバの感覚に基づく故障検知を行うことができない。このように、従来、無人自動運転車両等においても適切にステアリング系の故障を検知することが求められている。
【0005】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、車両のステアリング系の故障を適切に検知することができる故障判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る故障判定装置は、車速及び操舵角に対する操舵力を推定する車両モデルを構築するモデル構築部と、車速及び操舵角の実測値を取得すると共に、該車速及び操舵角の実測値を車両モデルに入力し、操舵力の推定値を導出する推定部と、操舵力の実測値を取得すると共に、該操舵力の実測値と操舵力の推定値とを比較し、これらの値同士の乖離が所定の閾値よりも大きい場合に、車両のステアリング系が故障していると判定する判定部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る故障判定装置では、車速及び操舵角に対する操舵力を推定する車両モデルが構築され、該車両モデルに基づき導出される操舵力の推定値と操舵力の実測値とが比較されて、これらの値の乖離が所定の閾値よりも大きい場合にステアリング系が故障していると判定される。このような構成によれば、例えば無人自動運転であることによってステアリング系の故障を検知することができない場合であっても、車両モデルに基づき推定される操舵力の値と実車両の操舵力の値とに乖離があった場合に、適切にステアリング系の故障(ハンドルが切れない、重い等)を検知することができる。
【0008】
モデル構築部は、走行時において取得される車速、操舵角、及び操舵力の実測値を学習することにより、構築済みの車両モデルを更新してもよい。このような構成によれば、一度構築した車両モデルが、実際の走行時における実測値に基づき更新されるため、車両の個体差や経年劣化を考慮して、より対象車両の状態に則した車両モデルを構築することができる。このことで、車両モデルに基づくステアリング系の故障検知の精度を向上させることができる。
【0009】
判定部は、乖離が閾値よりも大きい状態が所定時間以上継続される場合に、車両のステアリング系が故障していると判定してもよい。このような構成によれば、例えば路面の状態等によって瞬間的に実測値と推定値との乖離が大きくなってしまった等のノイズを排除(このようなノイズによって故障と判定されてしまうことを回避)して、ステアリング系の故障検知の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、車両のステアリング系の故障を適切に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る自動運転システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】車両モデル構築の第1の例の処理を示すフローチャートである。
【
図3】車両モデル構築の第2の例の処理を示すフローチャートである。
【
図4】車両モデル構築の第3の例の処理を示すフローチャートである。
【
図5】制御装置により実行される故障判定手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、自動運転システム1の構成例を示すブロック図である。自動運転システム1は、車両に搭載されており、車両の自動運転を制御する。本実施形態では、車両が、ドライバ無しで走行する無人自動運転車両であるとして説明する。また、自動運転システム1では、後述する制御装置10(故障判定装置)によって、車両のステアリング系が故障しているか否かが判定される(詳細は後述)。自動運転システム1は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信器20と、地図データベース30と、周辺状況センサ40と、車両状態センサ50と、通信装置60と、走行装置70と、制御装置10と、を備えている。
【0014】
GPS受信器20は、複数のGPS衛星から送信される信号を受信し、受信信号に基づいて車両の位置及び方位を算出する。GPS受信器20は、算出した情報を制御装置10に送信する。
【0015】
地図データベース30は、道路における各レーンの境界位置を示す情報等を予め記憶しているデータベースである。地図データベース30は、例えば所定の記憶装置に格納されている。
【0016】
周辺状況センサ40は、車両の周囲の状況を検出する。周辺状況センサ40としては、例えば、ライダー、レーダー、カメラ等が用いられる。ライダーは、光を利用して車両の周囲の物標を検出する。レーダーは、電波を利用して車両の周囲の物標を検出する。カメラは、車両の周囲の状況を撮像する。周辺状況センサ40は、検出した情報を制御装置10に送信する。
【0017】
車両状態センサ50は、車両の走行状態を検出する。車両状態センサ50としては、例えば、車速センサ、舵角センサ、ヨーレートセンサ、横加速度センサ、ステアリングのトルクセンサ、などが例示される。車速センサは、車両の速度を検出する。舵角センサは、車両の操舵角を検出する。ヨーレートセンサは、車両のヨーレートを検出する。横加速度センサは、車両に作用する横加速度を検出する。車両状態センサ50は、検出した情報を制御装置10に送信する。
【0018】
通信装置60は、例えばV2X通信(車車間通信および路車間通信)を行う。具体的には、通信装置60は、他の車両との間でV2V通信(車車間通信)を行う。また、通信装置60は、周囲のインフラとの間でV2I通信(路車間通信)を行う。V2X通信を通して、通信装置60は、車両の周囲の環境に関する情報を取得することができる。通信装置60は、取得した情報を制御装置10に送信する。なお、通信装置60は、例えばV2X通信によって、外部より走行経路指示を受信してもよい。
【0019】
走行装置70は、操舵装置、駆動装置、制動装置、トランスミッション等を含んでいる。操舵装置は、車輪を転舵する。駆動装置は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置としては、エンジンや電動機が例示される。制動装置は、制動力を発生させる。
【0020】
制御装置10は、車両の自動運転を制御する自動運転制御を行う。制御装置10は、プロセッサ、記憶装置、及び入出力インタフェースを備えるマイクロコンピュータである。制御装置10は、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる。制御装置10は、入出力インタフェースを通して各種情報を受け取る。そして、制御装置10は、受け取った情報に基づいて自動運転制御を行う。
【0021】
制御装置10は、自動運転制御に係る機能ブロックとして、取得部101と、自動運転制御部102と、を備えている。これらの機能ブロックは、制御装置10のプロセッサが記憶装置に格納された制御プログラムを実行することにより実現される。制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されていてもよい。
【0022】
取得部101は、自動運転制御に必要な情報を取得する。取得部101による情報取得処理は、所定のサイクルで繰り返し実行される。取得部101は、GPS受信器20から車両の位置及び方位を取得する。取得部101は、地図データベース30から道路のレーンに関する情報等を取得する。取得部101は、周辺状況センサ40によって検出された車両の周囲の情報を取得する。取得部101は、車両状態センサ50によって検出された車両の状態を示す情報を取得する。取得部101は、通信装置60から走行経路指示等の情報を取得する。
【0023】
自動運転制御部102は、取得部101によって取得された情報に基づき、全体経路(車両が走行する全体の経路)を生成する。自動運転制御部102は、走行経路指示に加えて、車両の位置及び方位、道路のレーン等の情報、車両の周囲の情報、並びに、車両の状態を示す情報等を考慮して、全体経路を生成してもよい。自動運転制御部102は、生成した全体経路に基づき、実際に車両が走行する目標経路をリアルタイムに生成する。目標経路生成は、車両が走行している間、所定のサイクルで繰り返し実行される。自動運転制御部102は、生成した目標経路に基づき、車両の経路追従制御を行う。自動運転制御部102は、従来から周知の追従制御技術を用いて、目標経路に追従して車両が走行するように、走行装置70に含まれる各装置を制御する。
【0024】
制御装置10は、さらに、無人で走行する車両のステアリング系が故障しているか否かを判定する。制御装置10は、ステアリング系の故障判定に係る機能ブロックとして、モデル構築部103と、推定部104と、判定部105と、を備えている。これらの機能ブロックは、制御装置10のプロセッサが記憶装置に格納された制御プログラムを実行することにより実現される。制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されていてもよい。
【0025】
モデル構築部103は、車速及び操舵角に対する操舵力を推定する車両モデルを構築する。このような車両モデルは、操舵力と、車速及び操舵角とが相関関係を有していることに基づき構築されるものである。以下では、モデル構築部103による車両モデル構築の3つの例(第1~第3の例)について説明する。
【0026】
図2は、車両モデル構築の第1の例の処理を示すフローチャートである。第1の例では、モデル構築部103は、事前に実施される実車実験時の実測値データに基づいて、車速及び操舵角に対する操舵力を推定する車両モデルを構築する。
【0027】
具体的には、
図2に示されるように、モデル構築部103は、最初に、実車実験時の特性データを取得する(ステップS1)。ここでの特性データとは、少なくとも、車速、操舵角、及び操舵力の実測値データである。
【0028】
つづいて、モデル構築部103は、取得した特定データを学習することにより、推定トルクMAPを作成する(ステップS2)。ここでの推定トルクMAPとは、車速及び操舵角と、操舵力とが紐づいたマップデータである。
【0029】
つづいて、モデル構築部103は、実車実験時における操舵失陥時データを取得する(ステップS3)。ここでの操舵失陥時データとは、実車実験時においてステアリング系が故障している状態における、車速、操舵角、及び操舵力の実測値データである。
【0030】
つづいて、モデル構築部103は、取得した操舵失陥時データに基づき、後述する故障判定時の閾値を決定する(ステップS4)。ここでの閾値とは、車両モデルから導出される操舵力の推定値と操舵力の実測値とがどの程度乖離していたらステアリング系が故障していると判定するかの閾値である。閾値は、例えば、一方の値と他方の値とが2~10倍以上異なる等に設定されてもよい。
【0031】
モデル構築部103は、ステップS2で作成された推定トルクMAPと、ステップS4で決定された閾値とに基づき車両モデルを構築し、該車両モデルを使用する(ステップS5)。
【0032】
図3は、車両モデル構築の第2の例の処理を示すフローチャートである。第2の例では、モデル構築部103は、各構造の情報から特定される設計値に基づいて、車速及び操舵角に対する操舵力を推定する車両モデルを構築する。
【0033】
具体的には、
図3に示されるように、モデル構築部103は、最初に、操舵系の構造の情報を収集する(ステップS11)。
【0034】
つづいて、モデル構築部103は、収集した構造の情報から特定される設計値に基づき、車速及び操舵角から操舵力をシミュレーションするプラントモデルを設計する(ステップS12)。
【0035】
つづいて、モデル構築部103は、収集した構造の情報から、操舵系失陥時の必要トルク(操舵力)を計算により導出し、導出結果に基づいて後述する故障判定時の閾値を決定する(ステップS13)。
【0036】
モデル構築部103は、ステップS12で設計されたプラントモデルと、ステップS13で決定された閾値とに基づき車両モデルを構築し、該車両モデルを使用する(ステップS14)。
【0037】
図4は、車両モデル構築の第3の例の処理を示すフローチャートである。第3の例では、モデル構築部103は、第1の例と同様の処理によって車両モデルを構築した後に、走行時(マニュアル走行、自動運転時)において取得される操舵特性を更に学習して、構築済みの車両モデルを更新する。
【0038】
具体的には、
図4に示されるように、ステップS101~S105の処理は、上述した第1の例のステップS1~S5の処理と同様である。第3の例では、さらに、ステップS106の処理を実行する。
【0039】
ステップS106では、モデル構築部103は、走行時(マニュアル走行、自動運転時)において取得される操舵特性、具体的には、車速、操舵角、及び操舵力の実測値を更に学習することにより、車両モデルの推定トルクMAPの情報を更新する。モデル構築部103は、このような実測値の学習及び推定トルクMAPの更新を、継続的に実施してもよい。このように、実走行における実測値を推定トルクMAPに反映させることにより、車両の個体差や経年劣化を考慮して、より対象車両の状態に則した車両モデルを構築することができる。
【0040】
図1に戻り、推定部104は、車速及び操舵角の実測値を取得すると共に、該車速及び操舵角の実測値を、車両モデルに入力し、操舵力の推定値を導出する。推定部104は、例えば、車両状態センサ50の車速センサによって取得された車速の実測値を、取得部101を介して取得する。また、推定部104は、例えば、車両状態センサ50の舵角センサによって取得された操舵角の実測値を、取得部101を介して取得する。そして、推定部104は、車速及び操舵角の実測値を、モデル構築部103によって構築された車両モデルに入力することにより、車速及び操舵角の実測値に応じた操舵力の推定値を導出する。
【0041】
判定部105は、操舵力の実測値を取得すると共に、該操舵力の実測値と操舵力の推定値とを比較し、これらの値同士の乖離が所定の閾値よりも大きい場合に、車両のステアリング系が故障していると判定する。判定部105は、例えば、車両状態センサ50のステアリングのトルクセンサによって取得された操舵力の実測値を、取得部101を介して取得する。そして、判定部105は、取得した操舵力の実測値と、推定部104によって推定されている操舵力の推定値とを比較(互いに同じタイミングの値同士を比較)し、これらの値同士の乖離が、モデル構築部103によって導出済みの閾値よりも大きい場合に、車両のステアリング系が故障していると判定する。
【0042】
判定部105は、上述した乖離が閾値よりも大きい状態が所定時間以上継続される場合に限って、車両のステアリング系が故障していると判定してもよい。これは、例えば路面の状態等によって瞬間的に実測値と推定値との乖離が大きくなってしまう等のノイズによって故障と判定されてしまうことを回避するための処理である。所定時間は、例えば0.5~1秒程度に設定されてもよい。
【0043】
次に、制御装置10により実行される故障判定手順(上記推定部104及び判定部105による処理の手順)について、
図5を参照して説明する。
図5は、制御装置10により実行される故障判定手順を示すフローチャートである。
図5に示される処理は、モデル構築部103によって車両モデルが構築されていることを前提として実施される。
【0044】
図5に示されるように、最初に、車速及び操舵角の実測値が取得される(ステップS501)。つづいて、取得された車速及び操舵角の実測値が車両モデルに入力され、操舵力の推定値が導出される(ステップS502)。
【0045】
つづいて、操舵力の実測値が取得される(ステップS503)。そして、操舵力の実測値と操舵力の推定値との乖離が所定の閾値よりも大きいか否かが判定される(ステップS504)。
【0046】
ステップS504において、乖離が所定の閾値よりも大きくないと判定された場合には、車両のステアリング系が故障していないと判定される(ステップS505)。一方で、ステップS504において、乖離が所定の閾値よりも大きいと判定された場合には、車両のステアリング系が故障していると判定される(ステップS506)。以上が、車両のステアリング系の故障判定手順である。
【0047】
次に、本実施形態に係る制御装置10の作用効果について説明する。
【0048】
本実施形態に係る制御装置10は、車速及び操舵角に対する操舵力を推定する車両モデルを構築するモデル構築部103と、車速及び操舵角の実測値を取得すると共に、該車速及び操舵角の実測値を車両モデルに入力し、操舵力の推定値を導出する推定部104と、操舵力の実測値を取得すると共に、該操舵力の実測値と操舵力の推定値とを比較し、これらの値同士の乖離が所定の閾値よりも大きい場合に、車両のステアリング系が故障していると判定する判定部105と、を備える。
【0049】
本実施形態に係る制御装置10では、車速及び操舵角に対する操舵力を推定する車両モデルが構築され、該車両モデルに基づき導出される操舵力の推定値と操舵力の実測値とが比較されて、これらの値の乖離が所定の閾値よりも大きい場合にステアリング系が故障していると判定される。このような構成によれば、例えば無人自動運転であることによってステアリング系の故障を検知することができない場合であっても、車両モデルに基づき推定される操舵力の値と実車両の操舵力の値とに乖離があった場合に、適切にステアリング系の故障(ハンドルが切れない、重い等)を検知することができる。
【0050】
モデル構築部103は、走行時において取得される車速、操舵角、及び操舵力の実測値を学習することにより、構築済みの車両モデルを更新してもよい。このような構成によれば、一度構築した車両モデルが、実際の走行時における実測値に基づき更新されるため、車両の個体差や経年劣化を考慮して、より対象車両の状態に則した車両モデルを構築することができる。このことで、車両モデルに基づくステアリング系の故障検知の精度を向上させることができる。
【0051】
判定部105は、乖離が閾値よりも大きい状態が所定時間以上継続される場合に、車両のステアリング系が故障していると判定してもよい。このような構成によれば、例えば路面の状態等によって瞬間的に実測値と推定値との乖離が大きくなってしまった等のノイズを排除(このようなノイズによって故障と判定されてしまうことを回避)して、ステアリング系の故障検知の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
10…制御装置(故障判定装置)、103…モデル構築部、104…推定部、105…判定部。