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  • 特開-ポリウレタンディスパージョン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135166
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ポリウレタンディスパージョン
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/66 20060101AFI20230921BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230921BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230921BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20230921BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
C08G18/66 066
C08G18/00 C
C08G18/10
C08G18/75
C08G18/08 019
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040234
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】山下 達也
(72)【発明者】
【氏名】甲田 千佳子
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA13
4J034CA15
4J034CA22
4J034CB02
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034CC05
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC26
4J034CC44
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC54
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CD05
4J034CD16
4J034CE03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC02
4J034DC43
4J034DF02
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034DG08
4J034DG09
4J034DG14
4J034DG16
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA02
4J034JA12
4J034JA15
4J034JA30
4J034JA32
4J034JA42
4J034LB06
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB12
4J034QB14
4J034QB17
4J034RA07
(57)【要約】
【課題】布帛を捺染する場合において、発色性および密着性に優れ、かつ、布帛の変形に対する追従性に優れ、また、貯蔵安定性に優れるポリウレタンディスパージョンを提供すること。
【解決手段】ポリウレタンディスパージョンは、ポリウレタン樹脂が水分散されてなる。ポリウレタン樹脂はイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との反応生成物である。イソシアネート基末端プレポリマーはポリイソシアネート成分とマクロポリオールおよび親水基含有活性水素化合物を含むポリオール成分との反応生成物である。マクロポリオールはビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物を含む芳香環含有マクロポリオールを含む。ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキシド付加量は、所定の値である。ポリウレタン樹脂の酸価、ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計および芳香環濃度は、所定の値である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂が水分散されてなるポリウレタンディスパージョンであって、
前記ポリウレタン樹脂が、イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応生成物であり、
前記イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、マクロポリオールおよび親水基含有活性水素化合物を含むポリオール成分との反応生成物であり、
前記マクロポリオールは、芳香環含有マクロポリオールを含み、
前記芳香環含有マクロポリオールは、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物を含み、
前記ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキシド付加量は、ビスフェノール骨格1モルに対して、2モル以上10モル以下であり、
前記ポリウレタン樹脂の酸価が、7.0mgKOH/g以上14.0mgKOH/g以下であり、
前記ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、20質量%以下であり、
前記ポリウレタン樹脂における、芳香環濃度が5.0質量%以上15.0質量%以下である、ポリウレタンディスパージョン。
【請求項2】
ポリイソシアネート成分が、脂環族ポリイソシアネートを含む、請求項1に記載のポリウレタンディスパージョン。
【請求項3】
前記親水基含有活性水素化合物が、アニオン性基含有活性水素化合物である、請求項1または2に記載のポリウレタンディスパージョン。
【請求項4】
前記ポリウレタンディスパージョンの乾燥物の破断伸びが、350%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタンディスパージョン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンディスパージョンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット法を用いて、ノズルからインク組成物の液滴を吐出して、布帛を捺染することが知られている。インク組成物は、例えば、色材と、色材を分散させる樹脂とを含む。また、インク組成物は、色材が顔料である場合には、顔料を布帛に物理的に固着させるためのバインダー樹脂を含む。
【0003】
このような樹脂として、例えば、イソフタル酸およびポリオールを反応させて得られるポリエステルポリオールと、親水性基を有するポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタン樹脂を含む顔料分散剤が提案されている(例えば、下記特許文献1の実施例2参照。)。
【0004】
また、バインダー樹脂として、イソフタル酸およびポリオールを反応させて得られるポリエステルポリオールと、親水性基を有するポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタン樹脂を含む水性顔料組成物が提案されている(例えば、下記特許文献1の実施例2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-174876号公報
【特許文献2】特開2015-163678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、布帛(とりわけ、化学繊維)を捺染する場合には、布帛とインク組成物との相互作用を向上させるために、布帛を前処理する場合がある。
【0007】
布帛を前処理すれば、布帛とインク組成物との相互作用によって、インク組成物が布帛の表面において凝集するため、インク組成物の布帛内に対する染み込みが抑制される。これにより、布帛の表面において、色濃度が高くなる(発色性が向上する。)。一方、インク組成物の布帛内に対する染み込みが抑制されると、布帛とインク組成物との密着性が低下する。つまり、発色性と密着性とは、背反関係(トレードオフ関係)を有する。
【0008】
また、布帛の表面に付着した樹脂が、布帛の変形に対して、追従しない場合には、樹脂が剥がれる場合がある。そのため、樹脂には、布帛の変形に対する追従性が要求される。
【0009】
とりわけ、特許文献1の顔料分散剤および特許文献2の水性顔料組成物では、ポリウレタン樹脂における、芳香環濃度が高いため、凝集力が高くなり、樹脂が硬くなる。その結果、布帛の変形に対する追従性が低下するという不具合がある。
【0010】
また、樹脂を含むインク組成物には、貯蔵安定性が要求される。
【0011】
とりわけ、特許文献1の顔料分散剤および特許文献2の水性顔料組成物において、イソフタル酸およびポリオールを反応させて得られるポリエステルポリオールは、加水分解するため、貯蔵安定性が低下するという不具合がある。
【0012】
本発明は、布帛を捺染する場合において、発色性および密着性に優れ、かつ、布帛の変形に対する追従性に優れ、また、貯蔵安定性に優れるポリウレタンディスパージョンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明[1]は、ポリウレタン樹脂が水分散されてなるポリウレタンディスパージョンであって、前記ポリウレタン樹脂が、イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応生成物であり、前記イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、マクロポリオールおよび親水基含有活性水素化合物を含むポリオール成分との反応生成物であり、前記マクロポリオールは、芳香環含有マクロポリオールを含み、前記芳香環含有マクロポリオールは、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物を含み、前記ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキシド付加量は、ビスフェノール骨格1モルに対して、2モル以上10モル以下であり、前記ポリウレタン樹脂の酸価が、7.0mgKOH/g以上14.0mgKOH/g以下であり、前記ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、20質量%以下であり、前記ポリウレタン樹脂における、芳香環濃度が5.0質量%以上15.0質量%以下である、ポリウレタンディスパージョンである。
【0014】
本発明[2]は、ポリイソシアネート成分が、脂環族ポリイソシアネートを含む、上記[1]に記載のポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【0015】
本発明[3]は、前記親水基含有活性水素化合物が、アニオン性基含有活性水素化合物である、上記[1]または[2]に記載のポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【0016】
本発明[4]は、前記ポリウレタンディスパージョンの乾燥物の破断伸びが、350%以上である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリウレタンディスパージョンにおいて、ポリウレタン樹脂の酸価は、7.0mgKOH/g以14.0mgKOH/g以下である。上記酸価が、7.0mgKOH/g以上であれば、布帛を捺染する場合において、発色性に優れる。また、上記酸価が、14.0mgKOH/g以下であれば、布帛を捺染する場合において、密着性に優れる。
【0018】
また、このポリウレタンディスパージョンにおいて、ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計が、20.0質量%以下である。上記ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計が、20.0質量%以下であれば、布帛を捺染する場合において、布帛の変形に対する追従性に優れる。
【0019】
また、このポリウレタンディスパージョンにおいて、ポリウレタン樹脂の芳香環濃度が5.0質量%以上15.0質量%以下である。上記芳香環濃度が、5.0質量%以上であれば、発色性および密着性に優れる。また、上記芳香環濃度が、15.0質量%以下であれば、布帛の変形に対する追従性に優れる。
【0020】
また、このポリウレタンディスパージョンにおいて、芳香環含有マクロポリオールは、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物を含む。そのため、貯蔵安定性に優れる。また、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキシド付加量は、ビスフェノール骨格1モルに対して、2モル以上10モル以下である。上記アルキレンオキシド付加量が2モル以上であれば、布帛の変形に対する追従性に優れる。また、上記アルキレンオキシド付加量が10モル以下であれば、発色性と密着性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1A図1Cは、捺染された布帛(捺染物)の模式図を示す。図1Aは、発色性に優れる一方、密着性が低下する捺染物を示す。図1Bは、密着性に優れる一方、発色性が低下する捺染物を示す。図1Cは、発色性および密着性の両立を図る捺染物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ポリウレタンディスパージョンは、ポリウレタン樹脂が水分散されてなる。
【0023】
ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応生成物である。
【0024】
<イソシアネート基末端プレポリマー>
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、マクロポリオールおよび親水基含有活性水素化合物を含むポリオール成分との反応生成物である。
【0025】
[ポリイソシアネート成分]
ポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートの誘導体を含む。
【0026】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0027】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(1,6-HDI)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(1,5-PDI)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2-、2,3-または1,3-ブチレンジイソシアネート、および、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとして、好ましくは、1,6-HDIおよび1,5-PDIが挙げられる。
【0028】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、脂環族ジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4′-、2,4′-または2,2′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)もしくはその混合物(H12MDI)、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、および、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネートが挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとして、好ましくは、IPDI、H12MDI、および、HXDI(好ましくは、1,3-HXDI)が挙げられる。
【0029】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、例えば、4,4′-、2,4′-または2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、o-トリジンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、m-またはp-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、および、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネートが挙げられる。
【0030】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート(1,2-、1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、および、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンが挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとして、好ましくは、XDIが挙げられる。
【0031】
ポリイソシアネートとして、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、および、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとして、ポリウレタンディスパージョンのろ過性を向上させる観点から、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0032】
ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0033】
(ポリイソシアネートの誘導体)
ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートの多量体、アロファネート誘導体、ポリオール誘導体、ビウレット誘導体、ウレア誘導体、オキサジアジントリオン誘導体、カルボジイミド誘導体、ウレトジオン誘導体、および、ウレトンイミン誘導体が挙げられる。
【0034】
ポリイソシアネートの誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0035】
そして、ポリイソシアネート成分は、好ましくは、ポリイソシアネートの誘導体を含まず、ポリイソシアネートからなる。ポリイソシアネート成分は、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネートからなる。
【0036】
[ポリオール成分]
ポリオール成分は、マクロポリオールおよび親水基含有活性水素化合物を含む。
【0037】
(マクロポリオール)
マクロポリオールは、芳香環含有マクロポリオールを含む。
【0038】
芳香環含有マクロポリオールは、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物を含む。そのため、貯蔵安定性に優れる。
【0039】
ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物において、ビスフェノール骨格を有する化合物は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、および、ビスフェノールSが挙げられる。ビスフェノール骨格を有する化合物として、好ましくは、ビスフェノールAが挙げられる。
【0040】
また、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物として、例えば、ビスフェノール骨格を有する化合物のエチレンオキサイド付加物、および、ビスフェノール骨格を有する化合物のプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0041】
このようなビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物として、好ましくは、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、および、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0042】
ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物において、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキシド付加量はビスフェノール骨格1モルに対して、2モル以上、好ましくは、4モル以上、また、10モル以下、好ましくは、8モル以下である。
【0043】
上記アルキレンオキシド付加量が、上記下限以上であれば、布帛(後述)の変形に対する追従性が向上する。
【0044】
一方、上記アルキレンオキシド付加量が、上記下限未満であれば、ウレタン樹脂の合成が困難になる。
【0045】
また、上記アルキレンオキシド付加量が、上記上限以下であれば、密着性および発色性が向上する。
【0046】
一方、上記アルキレンオキシド付加量が、上記上限を超過すると、密着性および発色性が低下する。
【0047】
ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0048】
ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物の含有割合は、ポリオール成分100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、25質量部以上、さらに好ましくは、30質量部以上、また、例えば、97質量部以下、好ましくは、90質量部以下、より好ましくは、70質量部以下、さらに好ましくは、55質量部以下、とりわけ好ましくは、40質量部以下である。
【0049】
また、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物の含有割合は、マクロポリオール100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、25質量部以上、さらに好ましくは、30質量部以上、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、90質量部以下、より好ましくは、70質量部以下、さらに好ましくは、60質量部以下、とりわけ好ましくは、50質量部以下、最も好ましくは、40質量部以下である。
【0050】
芳香環含有マクロポリオールは、その他の芳香環含有マクロポリオールを含むこともできる。
【0051】
その他の芳香環含有マクロポリオールは、水酸基を分子末端に有し、数平均分子量400以上、好ましくは、500以上、また、10000以下、好ましくは、5000以下、より好ましくは、3000以下の化合物である。
【0052】
その他の芳香環含有マクロポリオールの平均官能基数は、特に制限はされないが、好ましくは、2である。
【0053】
その他の芳香環含有マクロポリオールとしては、例えば、芳香環含有ポリエステルポリオール、芳香環含有ポリエーテルポリオール、芳香環含有ポリカーボネートポリオール、芳香環含有ポリウレタンポリオール、芳香環含有エポキシポリオール、芳香環含有ポリオレフィンポリオール、芳香環含有アクリルポリオール、および、芳香環含有ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。
【0054】
その他の芳香環含有マクロポリオールの含有割合は、芳香環含有マクロポリオールに対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下である。
【0055】
芳香環含有マクロポリオールは、好ましくは、その他の芳香環含有マクロポリオールを含まず、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物からなる。
【0056】
とりわけ、芳香環含有マクロポリオールは、貯蔵安定性の観点から、実質的に、芳香環含有ポリエステルポリオールを含まない。
【0057】
芳香環含有マクロポリオールが、実質的に、芳香環含有ポリエステルポリオールを含まないとは、芳香環含有ポリエステルポリオールの含有割合が、芳香環含有マクロポリオールに対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下、さらに好ましくは、0質量%以下であることを意味する。
【0058】
マクロポリオールは、芳香環不含マクロポリオールを含むこともできる。
【0059】
芳香環不含マクロポリオールは、水酸基を分子末端に有し、数平均分子量400以上、好ましくは、500以上、また、10000以下、好ましくは、5000以下、より好ましくは、3000以下の化合物である。
【0060】
芳香環不含マクロポリオールの平均官能基数は、特に制限はされないが、好ましくは、2である。
【0061】
芳香環不含マクロポリオールとして、例えば、芳香環不含ポリエステルポリオール、芳香環不含ポリエーテルポリオール、芳香環不含ポリカーボネートポリオール、芳香環不含ポリウレタンポリオール、芳香環不含エポキシポリオール、芳香環不含ポリオレフィンポリオール、芳香環不含アクリルポリオール、および、芳香環不含ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。芳香環不含マクロポリオールとしては、好ましくは、芳香環不含ポリエーテルポリオール、および、芳香環不含ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0062】
芳香環不含ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0063】
ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオールとしては、例えば、後述する低分子量ポリオールや、公知の低分子量ポリアミンなどを開始剤とする、炭素数2~3のアルキレンオキサイドの付加重合物が挙げられる。
【0064】
炭素数2~3のアルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドが挙げられる。また、これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0065】
ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオールとして、具体的には、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体が挙げられる。
【0066】
また、ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオールとしては、さらに、ポリトリメチレンエーテルグルコールも含まれる。
【0067】
ポリトリメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、植物成分由来の1,3-プロパンジオールの重縮合反応により得られるグリコールが挙げられる。
【0068】
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物(ポリテトラメチレンエーテルグリコール(結晶性))や、テトラヒドロフランなどの重合単位に、アルキル置換テトラヒドロフランや、上記した2価アルコールを共重合した非晶性(非結晶性)ポリテトラメチレンエーテルグリコ
ールが挙げられる。
【0069】
芳香環不含ポリエーテルポリオールとして、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。芳香環不含ポリエーテルポリオールとして、より好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。
【0070】
芳香環不含ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、芳香環不含ポリカーボネートジオールが挙げられる。芳香環不含ポリカーボネートジオールとしては、例えば、後述する低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物、および、2価アルコール(例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオール)と、開環重合物とを共重合したポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0071】
芳香環不含マクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0072】
芳香環不含マクロポリオールの配合割合は、マクロポリオール100質量部に対して、例えば、40質量部以上、好ましくは、45質量部以上、より好ましくは、50質量部以上、さらに好ましくは、60質量部以上、また、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
【0073】
また、貯蔵安定性の観点から、好ましくは、芳香環不含マクロポリオールは、実質的に、芳香環不含ポリエステルポリオールを含まない。
【0074】
芳香環不含マクロポリオールが、実質的に、芳香環不含ポリエステルポリオールを含まないとは、芳香環不含ポリエステルポリオールの含有割合が、マクロポリオールに対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下、さらに好ましくは、0質量%以下であることを意味する。
【0075】
つまり、貯蔵安定性の観点から、マクロポリオールは、実質的に、ポリエステルポリオール(芳香環含有ポリエステルポリオールおよび芳香環不含ポリエステルポリオール)を含まない。
【0076】
マクロポリオールは、実質的に、ポリエステルポリオールを含まないとは、ポリエステルポリオールの含有割合が、マクロポリオールに対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下、さらに好ましくは、0質量%以下であることを意味する。
【0077】
(親水基含有活性水素化合物)
親水基含有活性水素化合物は、親水性基と、2つ以上の活性水素基とを含有する化合物である。なお、活性水素基としては、例えば、水酸基およびアミノ基が挙げられる。
【0078】
また、親水性基としては、例えば、ノニオン性基およびイオン性基が挙げられる。親水基含有活性水素化合物として、より具体的には、例えば、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物、および、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
【0079】
ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、1つ以上のノニオン性基と、2つ以上の活性水素基とを併有する化合物である。ノニオン性基としては、例えば、ポリオキシエチレン基が挙げられる。ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、および、ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールが挙げられる。
【0080】
イオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物、および、カチオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
【0081】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、1つ以上のアニオン性基と、2つ以上の活性水素基とを併有する化合物である。アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基(カルボン酸基)、および、スルホ基(スルホン酸基)が挙げられ、好ましくは、カルボキシ基が挙げられる。また、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物において、活性水素基としては、例えば、水酸基およびアミノ基が挙げられ、好ましくは、水酸基が挙げられる。すなわち、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、カルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物が挙げられる。
【0082】
カルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物としては、例えば、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられる。カルボキシ基含有ポリオールとしては、例えば、ポリヒドロキシアルカン酸が挙げられる。ポリヒドロキシアルカン酸としては、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(別名:ジメチロールプロピオン酸)、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸および2,2-ジメチロール吉草酸が挙げられる。カルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物として、好ましくは、2,2-ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
【0083】
カチオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、1つ以上のカチオン性基と、2つ以上の活性水素基とを併有する化合物である。カチオン性基としては、例えば、3級アミノ基(3級アンモニウム塩を形成可能な3級アミン)が挙げられる。また、カチオン性基を含有する活性水素基含有化合物において、活性水素基としては、例えば、水酸基およびアミノ基が挙げられ、好ましくは、水酸基が挙げられる。すなわち、カチオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、3級アミノ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物が挙げられる。
【0084】
3級アミノ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物としては、例えば、N-アルキルジアルカノールアミンが挙げられる。N-アルキルジアルカノールアミンとしては、例えば、N-メチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミンおよびN-メチルジプロパノールアミンが挙げられる。
【0085】
親水基含有活性水素化合物としては、好ましくは、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。より好ましくは、後述するポリウレタン樹脂の酸価を、所定の範囲にする観点から、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
【0086】
親水基含有活性水素化合物は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0087】
親水基含有活性水素化合物の配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、より好ましくは、3質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0088】
とりわけ、親水基含有活性水素化合物が、アニオン性基(好ましくは、カルボキシ基)を含有する活性水素基含有化合物である場合には、上記配合割合を、上記した範囲内とすることで、後述するポリウレタン樹脂の酸価を、所定の範囲にすることができる。
【0089】
(低分子量ポリオール)
また、ポリオール成分は、低分子量ポリオール(親水基含有活性水素化合物を除く低分子量ポリオール)を含むこともできる。
【0090】
低分子量ポリオールは、数平均分子量40以上400未満、好ましくは、300以下の化合物である。
【0091】
低分子量ポリオールの官能基は、例えば、特に制限はされないが、好ましくは、2である。
【0092】
低分子量ポリオールとしては、例えば、炭素数2~6のジオール、および、その他の低分子量ポリオール(炭素数2~6のジオールを除く)が挙げられる。
【0093】
炭素数2~6のジオールは、数平均分子量40以上400未満、好ましくは300以下であり、水酸基を2つ有する炭素数2~6の化合物であって、例えば、炭素数2~6のアルカンジオール(炭素数2~6のアルキレングリコール)、炭素数2~6のエーテルジオール、および、炭素数2~6のアルケンジオールが挙げられる。
【0094】
炭素数2~6のアルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-または1,3-プロパンジオールもしくはその混合物)、ブチレングリコール(1,2-または1,3-または1,4-ブタンジオールもしくはその混合物)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、および、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールが挙げられる。
【0095】
炭素数2~6のエーテルジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および、ジプロピレングリコールが挙げられ、好ましくは、トリエチレングリコールが挙げられる。炭素数2~6のエーテルジオールとして、好ましくは、トリエチレングリコールが挙げられる。
【0096】
炭素数2~6のアルケンジオールとしては、例えば、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテンが挙げられる。
【0097】
その他の低分子量ポリオールは、数平均分子量40以上400未満、好ましくは、300以下であり、1分子中に水酸基を2つ以上有する化合物であって、例えば、炭素数7以上のジオール(2価アルコール)、および、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられる。
【0098】
炭素数7以上のジオール(2価アルコール)は、数平均分子量40以上400未満、好ましくは、300以下であり、1分子中に水酸基を2つ有する炭素数7以上の化合物であって、例えば、炭素数7~20のアルカン-1,2-ジオール、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、および、ビスフェノールAが挙げられる。
【0099】
また、炭素数7以上のジオール(2価アルコール)としては、例えば、数平均分子量400未満、好ましくは、300以下の、2価のポリアルキレンオキサイドなども挙げられる。そのようなポリアルキレンオキサイドは、例えば、上記した2価アルコールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって、ポリエチレングリコール(ポリオキシエチレンエーテルグリコール)、ポリプロピレングリコール(ポリオキシプロピレンエーテルグリコール)、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)などとして得ることができる。また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られる数平均分子量400未満、好ましくは、300以下のポリテトラメチレンエーテルグリコールも挙げられる。
【0100】
3価以上の低分子量ポリオールは、数平均分子量40以上400未満、好ましくは、300以下であり、1分子中に水酸基を3つ以上有する化合物であって、例えば、3価アルコール(低分子量トリオール)、4価アルコール、5価アルコール、6価アルコール、7価アルコール、および、8価アルコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、および、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノールが挙げられる。4価アルコールとしては、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、および、ジグリセリンが挙げられる。5価アルコールとしては、例えば、キシリトールが挙げられる。6価アルコールとしては、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、および、ジペンタエリスリトールが挙げられる。7価アルコールとしては、例えば、ペルセイトールが挙げられる。8価アルコールとしては、例えば、ショ糖が挙げられる。
【0101】
また、3価以上の低分子量ポリオールとしては、例えば、数平均分子量40以上400未満、好ましくは、300以下の、3価以上のポリアルキレンオキサイドも挙げられる。そのようなポリアルキレンオキサイドは、例えば、上記した3価以上の低分子量ポリオール、または、公知のポリアミンを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリエチレンポリプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)として得ることができる。
【0102】
低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0103】
低分子量ポリオールの配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、また、例えば、15質量部以下である。
【0104】
ポリオール成分は、好ましくは、低分子量ポリオールを含まず、マクロポリオールおよび親水基含有活性水素化合物からなる。
【0105】
[イソシアネート基末端プレポリマーの調製]
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させることにより得られる。
【0106】
ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させる方法としては、公知の重合方法(例えば、バルク重合および溶液重合)が選択され、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な観点から、溶液重合が選択される。
【0107】
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒(溶剤)に、上記成分を配合して、反応させる。
【0108】
この反応において、ポリオール成分中の活性水素基(水酸基および/またはアミノ基)に対するポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、1を超過し、例えば、1.2以上、好ましくは、1.3以上、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。このような場合において得られる反応生成物の末端官能基は、イソシアネート基である。つまり、イソシアネート基末端プレポリマーが得られる。
【0109】
反応条件として、反応温度は、例えば、20℃以上、また、例えば、110℃以下である。また、反応時間は、1時間以上、また、例えば、20時間以下である。
【0110】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、および、N-メチルピロリドンが挙げられる。有機溶媒として、好ましくは、アセトニトリルが挙げられる。
【0111】
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、反応触媒(例えば、アミン系、スズ系、および、鉛系)を添加してもよい。
【0112】
また、上記反応において、未反応のポリイソシアネート成分および/または未反応のポリオール成分を、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
【0113】
これにより、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーが得られる。
【0114】
なお、溶液重合によって、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させる場合には、イソシアネート基末端プレポリマーは、イソシアネート基末端プレポリマーおよび有機溶媒を含む反応液として得られる。
【0115】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、少なくとも1つ(好ましくは、複数、さらに好ましくは、2つ)の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーである。そのイソシアネート基の含有量(溶剤を除いた固形分換算のイソシアネート基含量、すなわち、イソシアネート基濃度)は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1.0質量%以上、また、例えば、5.0質量%以下、好ましくは、4.0質量%以下である。
【0116】
また、反応生成物に、イオン性基が含まれている場合には、好ましくは、中和剤を添加して中和し、イオン性基の塩を形成させる。
【0117】
中和剤としては、イオン性基がアニオン性基の場合には、慣用の塩基が採用される。慣用の塩基としては、例えば、アンモニア、炭素数1~20のアミン化合物またはアルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムなど)が挙げられる。炭素数1~20のアミン化合物としては、例えば、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミンおよびモノエタノールアミンなどの1級アミン、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン、メチルプロパノールアミンなどの2級アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、および、トリエタノールアミンなどの3級アミンが挙げられる。また、イオン性基がカチオン性基の場合には、慣用の酸が採用される。慣用の酸としては、例えば、炭素数1~7のモノまたはジカルボン酸類、炭素数1~20のスルホン酸類、および、無機酸類が挙げられる。炭素数1~7のモノまたはジカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸およびコハク酸が挙げられる。炭素数1~20のスルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸が挙げられる。無機酸類としては、例えば、塩酸、硫酸、および、硝酸が挙げられる。
【0118】
とりわけ、イオン性基がアニオン性基(好ましくは、カルボキシ基)である場合には、中和剤は、アニオン性基1当量あたり、0.6当量以上、好ましくは、0.8当量以上の割合で添加し、また、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1.1当量以下の割合で添加する。
【0119】
<鎖伸長剤>
鎖伸長剤としては、例えば、上記した低分子量ポリオール、および、アミノ基含有化合物が挙げられる。
【0120】
アミノ基含有化合物としては、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アミノアルコール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、および、ヒドラジンまたはその誘導体が挙げられる。
【0121】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、および、トリレンジアミンが挙げられる。
【0122】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジアミンもしくはその混合物が挙げられる。
【0123】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0124】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、および、1,3-ジアミノペンタンが挙げられる。
【0125】
アミノアルコールとしては、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)、および、2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノール(別名:N-(2-アミノエチル)イソプロパノールアミン)が挙げられる。
【0126】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED―2003、EDR-148、XTJ-512が挙げられる。
【0127】
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、および、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が挙げられる。第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、および、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、および、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン)が挙げられる。
【0128】
ヒドラジンまたはその誘導体としては、例えば、ヒドラジン(ヒドラジン一水和物を含む)、コハク酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、および、アジピン酸ジヒドラジドが挙げられる。ヒドラジンまたはその誘導体として、好ましくは、ヒドラジン一水和物が挙げられる。
【0129】
鎖伸長剤として、好ましくは、ヒドラジンまたはその誘導体が挙げられる。
【0130】
また、鎖伸長剤は、例えば、水溶液(鎖伸長剤水溶液)として調製することもできる。
【0131】
鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0132】
<ポリウレタン樹脂の調製>
ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを反応させることにより得られる。
【0133】
詳しくは、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを、例えば、水中で反応させ、ポリウレタン樹脂(ポリウレタンディスパージョン)を得る。
【0134】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、水に、イソシアネート基末端プレポリマーを添加することにより、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに、鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。
【0135】
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水(水分散水と称する場合がある。)50~1000質量部の割合において、水を攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを添加する。
【0136】
その後、鎖伸長剤は、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.8以上1.2以下の割合となるように、滴下する。
【0137】
鎖伸長剤の滴下終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。反応完結までの反応時間は、例えば、0.1時間以上、また、例えば、10時間以下である。
【0138】
なお、上記とは逆に、水をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに、鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
【0139】
また、この方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
【0140】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。これにより、水分散液(ポリウレタンディスパージョン)として調製されたポリウレタン樹脂を得る。
【0141】
ポリウレタン樹脂の酸価は、7.0mgKOH/g以上、好ましくは、8.0mgKOH/g以上、より好ましくは、9.0mgKOH/g以上、また、14.0mgKOH/g以下、好ましくは、13.0mgKOH/g以下、より好ましくは、11.0mgKOH/g以下である。
【0142】
上記酸価は、例えば、アニオン性基(好ましくは、カルボキシ基)を含有する活性水素基含有化合物の配合割合を調整することによって、上記範囲に調整される。
【0143】
上記酸価が、上記下限以上であれば、布帛(後述)を捺染する場合において、発色性が向上する(つまり、布帛(後述)の表面において、色濃度が高くなる。)。
【0144】
一方、上記酸価が、上記下限未満であれば、布帛(後述)を捺染する場合において、発色性が低下する。
【0145】
また、上記酸価が、上記上限以下であれば、布帛(後述)を捺染する場合において、密着性が向上する。
【0146】
一方、上記酸価が、上記上限を超過すると、布帛(後述)を捺染する場合において、密着性が低下する。
【0147】
上記酸価は、上記成分の仕込み比から算出することができる。
【0148】
また、ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、20.0質量%以下、好ましくは、19.0質量%以下、より好ましくは、17.0質量%以下、さらに好ましくは、16.0質量%以下、また、例えば、5.0質量%以上、好ましくは、10.0質量%以上、より好ましくは、12.0質量%以上、さらに好ましくは、13.0質量%以上、とりわけ好ましくは、14.0質量%以上、最も好ましくは、15.0質量%以上である。
【0149】
ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計が、上記上限以下であれば、布帛(後述)を捺染する場合において、布帛(後述)の変形に対する追従性、および、風合いが向上する。
【0150】
一方、ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計が、上記上限を超過すると、布帛(後述)を捺染する場合において、布帛(後述)の変形に対する追従性、および、風合いが低下する。
【0151】
また、ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計が、上記下限以上であれば、布帛(後述)を捺染する場合において、発色性、密着性、および、色移り(例えば、洗濯時に捺染された布帛の色が他の布帛に移ること)の抑制が向上する。
【0152】
なお、ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、原料成分の仕込み比から算出することができる。
【0153】
また、ポリウレタン樹脂における、芳香環濃度は、5.0質量%以上、好ましくは、6.0質量%以上、より好ましくは、8.0質量%以上、さらに好ましくは、10.0質量%以上、また、15.0質量%以下、好ましくは、12.0質量%以下、より好ましくは、11.0質量%以下である。
【0154】
上記芳香環濃度が、上記下限以上であれば、布帛(後述)を捺染する場合において、発色性および密着性に優れる。
【0155】
一方、上記芳香環濃度が、上記下限未満であれば、布帛(後述)を捺染する場合において、発色性および密着性が低下する。
【0156】
また、上記芳香環濃度が、上記上限以下であれば、布帛(後述)を捺染する場合において、布帛(後述)の変形に対する追従性に優れる。
【0157】
一方、上記芳香環濃度が、上記上限を超過すると、布帛(後述)を捺染する場合において、布帛(後述)の変形に対する追従性が低下する。
【0158】
上記芳香環濃度は、原料成分の仕込み比から算出することができる。
【0159】
ポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0160】
<ポリウレタンディスパージョンの使用>
ポリウレタンディスパージョンは、インク組成物において、色材を分散させる樹脂として、好適に用いられる。また、色材が顔料である場合は、顔料を布帛に物理的に固着させるためのバインダー樹脂として、好適に用いられる。
【0161】
インク組成物は、布帛を捺染するための原料である。
【0162】
布帛としては、例えば、天然繊維および化学繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、綿、絹、羊毛、麻が挙げられる。化学繊維としては、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、および、ポリアミド繊維が挙げられる。
【0163】
ポリウレタンディスパージョンを、インク組成物において、色材を分散させる樹脂として用いる場合には、インク組成物は、色材と、上記ポリウレタンディスパージョンとを含む。
【0164】
色材としては、特に限定されず、公知の色材を用いることができる。
【0165】
ポリウレタンディスパージョンは、インク組成物において、色材を分散させる成分である。
【0166】
ポリウレタンディスパージョンの配合割合は、色材100質量部に対して、例えば、500質量部以上、また、例えば、1000質量部以下、好ましくは、700質量部以下である。
【0167】
そして、インク組成物は、色材およびポリウレタンディスパージョンを混合することにより調製される。
【0168】
また、インク組成物には、必要により、公知の添加剤(例えば、保湿剤、浸透剤、キレート剤、防腐剤およびpH調整剤)を配合することもできる。つまり、インク組成物は、必要により、公知の添加剤を含む。保湿剤、浸透剤、キレート剤、防腐剤およびpH調整剤は、特開2021-165353号公報に記載されているものを用いることができる。
【0169】
また、インク組成物は、水および/または有機溶剤(例えば、エチレングリコール)で希釈することもできる。
【0170】
また、ポリウレタンディスパージョンを、インク組成物において、顔料を布帛に物理的に固着させるためのバインダー樹脂として用いる場合には、インク組成物は、顔料と、上記ポリウレタンディスパージョンと、必要により、顔料分散液を含む。
【0171】
顔料としては、特に限定されず、公知の顔料を用いることができる。
【0172】
ポリウレタンディスパージョンは、インク組成物において、顔料を布帛に物理的に固着させるためのバインダー樹脂である。
【0173】
顔料分散液は、顔料を分散させる分散剤である。
【0174】
そして、インク組成物は、顔料と、ポリウレタンディスパージョンと、必要により、顔料分散液とを混合することにより調製される。
【0175】
また、インク組成物には、上記添加剤を添加することもできる。また、インク組成物は、水および/または有機溶剤(例えば、エチレングリコール)で希釈することもできる。
【0176】
次いで、このインク組成物を用いて、布帛を捺染する方法について、詳述する。
【0177】
インク組成物を用いて、布帛を捺染するには、まず、布帛を前処理する。布帛を前処理しなければ、布帛とインク組成物との相互作用が弱く、インク組成物が布帛内に染み込み、その結果、発色性が低下する。とりわけ、布帛が化学繊維である場合には、天然繊維と比べて、上記の相互作用が弱いため、上記した発色性の低下が顕著となる。
【0178】
一方、布帛を前処理すれば、布帛とインク組成物との相互作用によって、インク組成物が布帛の表面において凝集するため、インク組成物の布帛内に対する染み込みが抑制される。これにより、発色性が向上する。
【0179】
布帛を前処理するには、布帛を前処理剤で処理する。
【0180】
前処理剤としては、例えば、有機酸およびその塩(例えば、ギ酸、ギ酸ナトリウム、酢酸、および、酢酸ナトリウム)、多価金属塩、および、カチオン性化合物が挙げられる。前処理剤としては、好ましくは、有機酸が挙げられる。より好ましくは、酢酸および酢酸ナトリウムが挙げられる。前処理剤は、水溶液として調製することもできる。
【0181】
布帛を前処理剤で処理するには、布帛に、前処理剤を塗布する。布帛に前処理剤を塗布する方法としては、公知の方法(例えば、スプレー法)が選択される。
【0182】
次いで、インク組成物を布帛に塗布する。インク組成物を布帛に塗布する方法としては、公知の方法(例えば、スプレー法、インクジェット法)が選択される。これにより、インク組成物を布帛に塗布する。
【0183】
次いで、布帛(インク組成物が塗布された布帛)を加熱する。
【0184】
加熱温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上、また、例えば、170℃以下である。また、加熱時間は、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上、また、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下、より好ましくは、15分以下である。
【0185】
これにより、布帛が捺染される(つまり、捺染物が得られる。)。
【0186】
インク組成物は、上記したポリウレタンディスパージョンを含むため、発色性および密着性に優れ、かつ、布帛の変形に対する追従性に優れる捺染物を製造することができる。
【0187】
また、ポリウレタンディスパージョンの乾燥物の破断伸びは、例えば、300%以上、布帛の変形に対する追従性を向上させる観点から、好ましくは、350%以上、より好ましくは、400%以上、さらに好ましくは、450%以上、とりわけ好ましくは、500%以上である。
【0188】
なお、上記破断伸びの測定方法は、後述する実施例において詳述する。
【0189】
<作用効果>
ポリウレタンディスパージョンにおいて、ポリウレタン樹脂の酸価と、ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計と、ポリウレタン樹脂の芳香環濃度とが、所定値である。そのため、布帛を捺染する場合において、発色性および密着性に優れ、かつ、布帛の変形に対する追従性に優れる。
【0190】
一方、発色性と密着性とは、背反関係(トレードオフ関係)を有する。
【0191】
詳しくは、図1Aに示すように、布帛1を捺染する場合において、ポリウレタンディスパージョン2(具体的には、ポリウレタンディスパージョン2を含むインク組成物)の大部分が、布帛1の表面3に留まると、布帛1の表面3において色濃度が高くなり、発色性が向上する。一方、このような場合には、ポリウレタンディスパージョン2(具体的には、ポリウレタンディスパージョン2を含むインク組成物)は、布帛1内に、ほとんど染み込んでいないため、布帛1とポリウレタンディスパージョン2(具体的には、ポリウレタンディスパージョン2を含むインク組成物)との間の密着性が低下する。
【0192】
また、図1Bに示すように、ポリウレタンディスパージョン2(具体的には、ポリウレタンディスパージョン2を含むインク組成物)の大部分が、布帛1内に、染み込むと密着性が向上する。一方、このような場合には、ポリウレタンディスパージョン2(具体的には、ポリウレタンディスパージョン2を含むインク組成物)が、布帛1の表面3に、ほとんど存在しないため、発色性が低下する。
【0193】
そのため、発色性および密着性の両立を図るためには、布帛1の表面3に留まるポリウレタンディスパージョン2(具体的には、ポリウレタンディスパージョン2を含むインク組成物)と、布帛1内に染み込むポリウレタンディスパージョン2(具体的には、ポリウレタンディスパージョン2を含むインク組成物)とを調整することが検討される。具体的には、図1Cに示すように、ポリウレタンディスパージョン2(具体的には、ポリウレタンディスパージョン2を含むインク組成物)を、布帛1の表面3に残存しつつ、かつ、布帛1の表面3に染み込む程度に調整する。
【0194】
一方、図1Cに示すように、発色性および密着性の両立を図ることができたとしても、布帛1の表面3に残存するポリウレタンディスパージョン2が、硬くなりすぎると、布帛の変形に対する追従性が低下する。そうすると、布帛の変形によって、ポリウレタンディスパージョン2が剥がれる場合がある。
【0195】
これに対して、このポリウレタンディスパージョンでは、ポリウレタン樹脂の酸価と、ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計と、ポリウレタン樹脂の芳香環濃度と、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキシド付加量とを、所定値に調整することで、発色性および密着性の両立を図るとともに、布帛の変形に対する追従性を向上させることができる。
【0196】
具体的には、ポリウレタン樹脂の酸価が高くなると、布帛における前処理剤(好ましくは、有機酸イオン)との相互作用によって、布帛の表面で、ポリウレタンディスパージョン(具体的には、ポリウレタンディスパージョンを含むインク組成物)が凝集しやすくなる。そうすると、発色性を向上できる一方、密着性が低下する傾向がある。
【0197】
一方、ポリウレタン樹脂の酸価が低くなると、布帛における前処理剤(好ましくは、ギ酸イオン)との相互作用によって、ポリウレタンディスパージョン(具体的には、ポリウレタンディスパージョンを含むインク組成物)が、凝集しにくくなる。その結果、ポリウレタンディスパージョン(具体的には、ポリウレタンディスパージョンを含むインク組成物)が、布帛内に染み込みやすくなる。そうすると、密着性を向上できる一方、発色性が低下する傾向がある。
【0198】
そして、このポリウレタンディスパージョンでは、酸価が、所定の範囲に調整されているため、発色性および密着性の両立を図ることができる。
【0199】
また、ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計が高くなると、ポリウレタンディスパージョン(具体的には、ポリウレタンディスパージョンを含むインク組成物)が、凝集しやすくなる。その結果、ポリウレタンディスパージョン(具体的には、ポリウレタンディスパージョンを含むインク組成物)が、布帛の表面に留まりやすくなり、ポリウレタンディスパージョンが硬くなる傾向がある。そうすると、布帛の変形に対する追従性が低下する傾向がある。
【0200】
そして、このポリウレタンディスパージョンでは、ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計が、所定値以下に調整されている。そのため、布帛の変形に対する追従性を向上させることができる。
【0201】
また、ポリウレタン樹脂の芳香環濃度が大きくなると、ポリウレタンディスパージョン(具体的には、ポリウレタンディスパージョンを含むインク組成物)の凝集力が高くなり、硬くなる傾向がある。そうすると、布帛の変形に対する追従性が低下する傾向がある。
【0202】
一方、ポリウレタン樹脂の芳香環濃度が小さくなると、ポリウレタンディスパージョンの凝集力が弱まり、ポリウレタンディスパージョンを含むインク組成物が布帛の表面に留まりにくくなることから、発色性および密着性が低下する傾向がある。
【0203】
そして、このポリウレタンディスパージョンでは、ポリウレタン樹脂の芳香環濃度が、所定の範囲に調整されている。そのため、発色性および密着性を向上させ、かつ、布帛の変形に対する追従性を向上させることができる。
【0204】
また、このポリウレタンディスパージョンにおいて、芳香環含有マクロポリオールは、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物を含み、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキシド付加量は、ビスフェノール骨格1モルに対して、2モル以上10モル以下である。上記アルキレンオキシド付加量が2モル以上であれば、布帛の変形に対する追従性に優れる。また、上記アルキレンオキシド付加量が10モル以下であれば、発色性と密着性に優れる。
【0205】
なお、このポリウレタンディスパージョンでは、ポリウレタン樹脂の酸価と、ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計と、ポリウレタン樹脂における芳香環濃度と、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキシド付加量とは、理解の容易のために、それぞれ独立して説明したが、実際にはそれぞれが独立して効果を発揮するものではなく、これらが相互に依存して、相乗的に効果を発揮するものである。
【0206】
また、このポリウレタンディスパージョンにおいて、芳香環含有マクロポリオールは、ビスフェノール骨格を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物を含む。そのため、貯蔵安定性に優れる。
【0207】
また、インクジェット法を用いて、ノズルから、上記ポリウレタンディスパージョンを含むインク組成物の液滴を吐出して、布帛を捺染する場合には、ノズルからの吐出性が要求される。
【0208】
このポリウレタンディスパージョンでは、ポリウレタン樹脂の酸価と、ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計と、ポリウレタン樹脂における芳香環濃度とが、上記の値であるため、粘度を調整でき、かつ、目詰まりを抑制でき、その結果、ノズルからの吐出性を向上させることができる。
【実施例0209】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0210】
<成分の詳細>
1,3-HXDI:1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、商品名「タケネート600、」、三井化学社製
IPDI:イソホロンジイソシアネート、VestanatIPDI、エボニック社製
12MDI:メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、商品名「Vestanat H12MDI」、エボニック社製
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート、東ソー社製
PDI:1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、商品名「スタビオPDI」、三井化学社製
XDI:1,3-キシリレンジイソシアネート、商品名「タケネート500」、三井化学
TDI:トリレンジイソシアネート
BPX-11:ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のプロピレンオキサイド付加量2モル、ADEKA社製
BA-2:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加量2モル、日本乳化剤社製
BA-4JU:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加量4モル、日本乳化剤社製
BA-6U:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加量6モル、日本乳化剤社製
BA-8:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加量8モル、日本乳化剤社製
BA-10:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加量10モル、日本乳化剤社製
BPA-16:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加量16モル、日本乳化剤社製
PTMG-2000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量2000、三菱ケミカル社製
UH-200:UH-200:ポリカーボネートジオール、数平均分子量2000、宇部興産社製
1,4-BG:1,4-ブタンジオール、富士フィルム和光純薬製
BA:ビスフェノールA.三菱ケミカル社製
DMPA:2,2-ジメチロールプロピオン酸、Perstorp社製
TEA:トリエチルアミン、富士フィルム和光純薬製
HYD・HO:ヒドラジン一水和物、富士フィルム和光純薬製
【0211】
<芳香環含有ポリエステルポリオールの調製>
調製例1
多塩基酸として、イソフタル酸(IPA)330.6gおよびセバシン酸(SbA)402.5gと、多価アルコールとして、エチレングリコール(EG)72.8gおよびネオペンチルグリコール(NPG)376.5gとを混合した。そして、その混合液に、オクチル酸錫(エステル化触媒)0.1gを添加し、窒素気流下、反応温度を180~220℃に調整し、多塩基酸と低分子量ポリオールとをエステル化反応させた。次いで、所定量の水およびグリコールを留出させて、ポリエステルポリオールを調製した。ポリエステルポリオールの水酸基価は44.9mgKOH/gであった。また、ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は2499であった。
【0212】
調製例2
特開2015-174876号公報に記載の合成例2に準拠して、芳香族ポリエステルポリオールを合成した。具体的には、温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、イソフタル酸42.1質量部、セバシン酸21.4質量部、アジピン酸9.3質量部、エチレングリコール7.7質量部、ネオペンチルグリコール25.8質量部、ブタンジオール11.2質量部、および、ジブチル錫オキサイド0.05質量部を仕込み180~230℃24時間エステル化した後、酸価が1以下になるまで230℃で24時間重縮合反応して、芳香族ポリエステルポリオール(酸価0.3、水酸基価56.1、芳香族環式濃度2.53mol/kg)を得た。
【0213】
<ポリウレタンディスパージョンの調製>
実施例1
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、BPX-11 81.5質量部、DMPA(親水基含有活性水素化合物)8.4質量部およびアセトニトリル79.2質量部を仕込んだ。次いで、1.3-HXDI(ポリイソシアネート成分)91.7質量部を添加し、NCO濃度が、1.9質量%になるまで70℃でウレタン化反応を実施し、イソシアネート基末端プレポリマー(イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液)を得た。
【0214】
次いで、この反応液に、アセトニトリル151.0質量部を添加し、30℃まで冷却した後、TEA(中和剤)6.2質量部を添加した。
【0215】
次いで、攪拌を続けながらイオン交換水(水分散水)816.7質量部を、徐々に添加してイソシアネート基末端プレポリマーを水分散させた。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーの水分散液を調製した。
【0216】
次いで、イソシアネート基末端プレポリマーの水分散液に、HYD・HO 4.5質量部を添加し、その後、1時間反応させた。
【0217】
次いで、50℃減圧下で、アセトニトリルを留去した後、イオン交換水を配合し、ポリウレタンディスパージョン(固形分30質量%)を調製した。
【0218】
実施例2~実施例21、および、比較例1~比較例9
実施例1と同様の手順に基づいて、ポリウレタンディスパージョン(固形分30質量%)を調製した。但し、配合処方を、表1~表4に従い変更した。なお、比較例9は、合成時にゲル化した。
【0219】
<評価>
[酸価]
各実施例および各比較例のポリウレタン樹脂の酸価を、原料成分の仕込み比から算出した。その結果を表1~表4に示す。
【0220】
[ウレタン基およびウレア基濃度]
各実施例および各比較例のポリウレタン樹脂のウレタン基およびウレア基濃度を、原料成分の仕込み比から算出した。その結果を表1~表4に示す。
【0221】
[芳香環濃度]
各実施例および各比較例のポリウレタン樹脂の芳香環濃度を、原料成分の仕込み比から算出した。その結果を表1~表4に示す。
【0222】
[破断伸び]
各実施例および各比較例のポリウレタンディスパージョン(PUD)を、乾燥厚み200μmとなるようにポリプロピレン製トレーに塗布し、室温(25℃)で1日乾燥させた後、110℃、1時間加熱して物性測定サンプルを作製した。引張圧縮試験機(Model205N、インテスコ社製)を用いて、23℃、引張速度300mm/分の条件で引張試験し、破断伸び(%)を求めた。その結果を、表1~表4に示す。
【0223】
[発色性]
カナキン3号(綿100%)の生地をたて210mm、よこ30mmに裁断して、布帛として準備した。次いで、酢酸4.5g、酢酸ナトリウム6.2g、および、水89.3gを混合し、前処理剤を調製した。次いで、各実施例および各比較例のポリウレタンディスパージョン(固形分濃度35質量%)34.3g、色材(ダイストーンXカラー ブルーMX、松井色素化学工業所製、有効成分25質量%)8.0g、エチレングリコール20.0gおよび水37.7gを混合し、インク組成物を調製した。
【0224】
次いで、布帛に対して、スプレーを用いて、約1.2gの前処理剤を塗布した。次いで、布帛に対して、スプレーを用いて、約2gのインク組成物を塗布した。
【0225】
その後、この布帛を、110℃10分で、熱処理した。これにより、捺染物を得た。
【0226】
捺染物について、発色性を目視にて観測した。発色性について、以下の基準で評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
4:生地上に造膜し、発色性が大幅に高かった。
3:生地上に造膜し、発色性がやや高かった。
2:インク組成物が生地に浸透してしまい、発色性がやや低かった。
1:インク組成物が生地に浸透してしまい、発色性が大幅に低かった。
【0227】
[密着性]
カナキン3号を、たて50mm、よこ50mmに切り取り、蒸留水で湿らせ、摩擦用白布とした。発色性試験で得られた捺染物と摩擦用白布をNo.428学振形摩耗試験機(株式会社安田精機製作所製、摩擦試験機II形)に取り付け、荷重200g、振れ幅100mm、往復回数100回(30回/分)で試験した。試験後の捺染物について、インク層のカナキン3号に対する密着性を目視にて観測した。密着性について、以下の基準で評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
4:インク層が剥がれることなく、インク膜は全て残存した。
3:インク層の一部が剥がれたが、インク膜は半分以上残存した。
2:インク層が半分以上剥がれてしまった。
1:インク層が全て剥がれてしまった。
【0228】
[色移り]
密着性試験で得られた摩擦用白布について、分光色差計(Spectro Color Meter 2000、日本電色工業株式会社)を用いて、L値(値が高いほど白色で汚染度合いが小さい)を測定した。なお試験前の摩擦用白布のL値は90以上であった。色移りについて、以下の基準で評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
4:L値が90以上で、色移りが確認されなかった。
3:L値が85以上90未満でわずかに色移りが確認された。
2:L値が70以上85未満で色移りが確認された。
1:L値が70以下で大幅に色移りが確認された。
【0229】
[風合い]
発色性試験で得られた捺染物を、触手にて観察した。風合いについて、以下の基準で評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
4:柔軟性があった。
3:やや柔軟性が感じられた。
2:やや硬さが感じられた。
1:硬かった。
【0230】
[追従性]
カナキン3号の代わりにポリエステル製平ゴムを用いたこと以外は、発色性試験で得られた捺染物の作製方法に従って、捺染物を作製した。
【0231】
得られた捺染物をたて方向に1.5倍伸長し、戻す操作を10回繰り返した後のインク層の状態を目視にて観測した。追従性について、以下の基準で評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
4:特に変化は見られなかった。
3:インク層の一部で浮きが確認されたが、割れは確認されなかった。
2:インク層の一部で浮きと割れが確認された。
1:インク層の大部分で割れが確認された。
【0232】
[溶剤希釈粘度]
各実施例および各比較例のポリウレタンディスパージョン(固形分濃度35質量%)に蒸留水を加えて、固形分濃度が20質量%となるように調製し、粘度計(機種TVB-25L、東機産業株式会社製)で25℃における粘度を測定した。さらに、蒸留水の代わりにトリエチレングリコールを用いたこと以外は、同様の方法で25℃における粘度を測定した。トリエチレングリコールで調製したときの粘度が、蒸留水で調製したときの粘度に対する増粘率を、以下の基準で評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
4:2.0倍未満であった。
3:2.0倍以上5.0倍未満であった。
2:5.0倍以上10.0倍未満であった。
1:10倍以上であった。
【0233】
[ポリウレタンディスパージョンの濾過性(PUD濾過性)]
各実施例および各比較例のポリウレタンディスパージョン(固形分濃度35質量%)20gをシリンジで吸い取り、穴径の異なるシリンジフィルターを取り付けた状態で押し出し、濾過性を以下の基準で評価した。その結果を表1~表4に示す。
{基準}
4:0.8μmを全て通過した。
3:3μmを全て通過した。
2:5μmを全て通過した。
1:5μmを全て通過しなかった。
【0234】
[貯蔵安定性]
発色性と密着性の評価がそれぞれ3以上の各実施例および各比較例について、発色性試験で調製したインク組成物を60℃2ヵ月保管し、発色性試験に記載の方法で印捺物を作成した。得られた印捺物について、発色性および密着性を評価した。貯蔵安定性について、以下の基準で評価した。その結果を表1~表4に示す。
(基準)
〇:発色性および密着性の評価が3以上であった。
×:発色性および密着性の評価が2以下であった。
【0235】
【表1】
【0236】
【表2】
【0237】
【表3】
【0238】
【表4】
図1