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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013520
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ウイルス量計測機構
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/33 20060101AFI20230119BHJP
   G01N 15/06 20060101ALI20230119BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230119BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20230119BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
G01N21/33
G01N15/06 D
G01N15/06 C
C12M1/34 D
C12M1/34 B
C12M1/12
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117761
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【テーマコード(参考)】
2G059
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB01
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE12
2G059GG01
2G059GG02
2G059HH03
2G059JJ01
2G059KK01
2G059KK02
2G059MM01
2G059MM05
4B029AA07
4B029AA09
4B029BB13
4B029CC01
4B029FA11
4B029HA06
4B063QA01
4B063QQ10
4B063QQ18
4B063QR79
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成によって、サンプリングされた流体中のウイルス量を略リアルタイムで短時間且つ高精度に計測可能な計測機構を提供する。
【解決手段】ウイルスを含む試料体を流通する流路と、上記流路中の試料体に向かって紫外線を照射する紫外線投光部と、上記紫外線投光部からの紫外線を上記試料体を介して受光する紫外線受光部と、上記紫外線受光部に受光される紫外線の、上記試料体中のウイルスによって変化する紫外線の吸収スペクトルと吸光量とに基づいてウイルス量を算出するウイルス量算出部とを備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスを含む試料体を流通する流路と、
上記流路中の試料体に向かって紫外線を照射する紫外線投光部と、
上記紫外線投光部からの紫外線を上記試料体を介して受光する紫外線受光部と、
上記紫外線受光部に受光される紫外線の、上記試料体中のウイルスによって変化する紫外線の吸収スペクトルと吸光量とに基づいてウイルス量を算出するウイルス量算出部と、を備えることを特徴とするウイルス量計測機構。
【請求項2】
前記試料体を流路へと取り込む取込部と、
紫外線が通過した試料体を排出する排出部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のウイルス量計測機構。
【請求項3】
前記流路上に流動発生部を備え、
上記流動発生部の駆動により、前記取込部から試料体を取り込み、流路を流通させて、排出口より排出することを特徴とする請求項1又は2に記載のウイルス量計測機構。
【請求項4】
前記ウイルス量算出部は、基準吸収スペクトル及び基準吸収量と、紫外線受光部により検出された吸収スペクトル及び吸光量とから算出される吸光量比率に基づいてウイルス量を算出することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のウイルス量計測機構。
【請求項5】
前記ウイルス量算出部は、基準吸収スペクトル及び基準吸収量と、紫外線受光部により検出された吸収スペクトル及び吸光量とから算出される相対吸光量に基づいてウイルス量を算出することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のウイルス量計測機構。
【請求項6】
所定粒径以上の粒子を除去するフィルタを備え、
上記フィルタを通過した試料体に対して紫外線が投光されることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のウイルス量計測機構。
【請求項7】
前記フィルタを通過した試料体に含まれるウイルス以外の粒子をカウントし、所定数以下の場合に、試料体に対して紫外線が投光されることを特徴とする請求項6に記載のウイルス量計測機構。
【請求項8】
前記ウイルス量算出部による算出結果を表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のウイルス量計測機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中のウイルス量を計測するウイルス量計測機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鳥インフルエンザや新型コロナウイルス等のように空気感染の可能性があるウイルスが問題になっている。特に、住環境が高気密化している生活空間においては、安全性を確保するために、ウイルス量を確認し、汚染度合いを認識することによって、高濃度に汚染された空間を避けることが重要である。そこで、短時間でリアルタイムに室内はもとより大気中のウイルス量を計測できる技術の出現が望まれている。
【0003】
従来、ウイルス量の測定方法としては、細胞のウイルス感染性、より詳しくは特定種の細胞の特定ウイルスに対する感染性の有無を利用して、感染による細胞からのウイルス抗原の増加量或いは生存細胞数の経時的変化を測定する方法、ウイルス感染細胞変性効果を利用するプラーク法、電子顕微鏡によるウイルス像の観察法が用いられている。
【0004】
これらの測定方法は、通常3時間以上の測定時間を要し、肉眼測定の場合には高度の熟練が要求されている。そのため、近年では、短時間での測定を可能とし、熟練を要しない以下のような技術が開発されている。
【0005】
特開2015-159808(特許文献1)に開示されるウイルス量の計測方法は、空中のウイルスを基板に捕集し、捕集したウイルスから抽出されたDNAに染色試薬を注入して発光させて、この発光量からウイルス濃度を算出している。
【0006】
特開平3-54467(特許文献2)に開示されるウイルス量の計測方法は、液体中のウイルス量を計測するものであって、ウイルスを吸着する圧電振動子が配置される容器内にウイルスが含まれる溶液を密閉して収容し、圧電振動子にウイルスが吸着した状態の振動数と固有振動数の差から、ウイルス濃度を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-159808号公報
【特許文献2】特開平3-54467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、習熟を必要とせずに、一定程度、短い時間でウイルス量を測定することが可能になっているが、計測するためには、まず、ウイルスを基板に捕集する必要があり、さらに、ウイルスからDNAを抽出・染色する必要があったりと、計測までに多くの工程を要する。
【0009】
特許文献2も、習熟を必要とせずに、一定程度、短い時間でウイルス量を測定することが可能になっているが、計測するためには、溶液を容器に収容する必要があり、また、計測を開始した後、ウイルスが圧電振動子に吸着されるまで待つ時間が必要であった。また、圧電振動子にウイルスが吸着されるため、測定後には、圧電振動子を洗浄する必要があり、洗浄が不十分な場合には、正確な計測ができないという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、簡単な構造によって、サンプリングされた流体中のウイルス量を略リアルタイムで短時間且つ高精度に計測可能な計測機構を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のウイルス量計測機構は、ウイルスを含む試料体を流通する流路と、上記流路中の試料体に向かって紫外線を照射する紫外線投光部と、上記紫外線投光部からの紫外線を上記試料体を介して受光する紫外線受光部と、上記紫外線受光部に受光される紫外線の、上記試料体中のウイルスによって変化する紫外線の吸収スペクトルと吸光量とに基づいてウイルス量を算出するウイルス量算出部とを備える。
【0013】
また、本発明のウイルス量計測機構は、前記試料体を流路へと取り込む取込部と、紫外線が通過した試料体を排出する排出部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のウイルス量計測機構は、前記流路上に流動発生部を備え、上記流動発生部の駆動により、前記取込部から試料体を取り込み、流路を流通させて、排出口より排出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のウイルス量計測機構は、前記ウイルス量算出部は、基準吸収スペクトル及び基準吸収量と、紫外線受光部により検出された吸収スペクトル及び吸光量とから算出される吸光量比率に基づいてウイルス量を算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のウイルス量計測機構は、前記ウイルス量算出部は、基準吸収スペクトル及び基準吸収量と、紫外線受光部により検出された吸収スペクトル及び吸光量とから算出される相対吸光量に基づいてウイルス量を算出することを特徴とする。
【0017】
また、本発明のウイルス量計測機構は、所定粒径以上の粒子を除去するフィルタを備え、上記フィルタを通過した試料体に対して紫外線が投光されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のウイルス量計測機構は、前記フィルタを通過した試料体に含まれるウイルス以外の粒子をカウントし、所定数以下の場合に、試料体に対して紫外線が投光されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のウイルス量計測機構は、前記ウイルス量算出部による算出結果を表示する表示部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な構造によって、サンプリングされた流体中のウイルス量を略リアルタイムで短時間且つ高精度に計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第一の実施形態に係るウイルス量計測機構を示す概略図である。
図2】(a)は試料気体の初期状態を示す模式図であり、(b)は試料気体の状態の遷移を示す模式図である。
図3】非計測粒子カウントユニットを示す斜視図である。
図4】ウイルス量検出ユニットを示す正面図である。
図5】第一の実施形態に係るウイルス量計測機構を示すブロック図である。
図6】第一の実施形態のウイルス量計測機構の動作を示すフローチャートである。
図7】ウイルス量検出ユニットの他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明のウイルス量計測機構の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は第一の実施形態に係るウイルス量計測機構を示す概略図、図2(a)は試料気体の初期状態を示す模式図(b)は試料気体の状態の遷移を示す模式図、図3は非計測粒子カウントユニットを示す斜視図、図4はウイルス量検出ユニットを示す正面図、図5は第一の実施形態に係るウイルス量計測機構を示すブロック図、図6は第一の実施形態のウイルス量計測機構の動作を示すフローチャートである。図1、2、3、4、7において、白抜き矢印は、試料気体Sの流動方向を示している。また、図2、4、7において、太線矢印は、照射された紫外線の進行方向を示している。
【0023】
図1を参照しながらウイルス量計測機構の概要を説明する。ウイルス量計測機構は、計測対象である流体、例えば、屋内空間における空気を取込部Linから取込み、取込んだ試料気体Sを排出部Loutへと流通させる中空角管状の管路Lを有し、管路L上には、上流側から下流側(図1における上側から下側)に向かって、フィルタユニット1、非計測粒子カウントユニット2、ウイルス量検出ユニット3とを備えている。
【0024】
フィルタユニット1と取込部Linとの間の管路L(流路)上には、流動発生部としてのポンプP或いはファンF等が設けられ、ポンプP或いはファンF等の駆動により、上流側の取込部Linから取込んだ試料気体Sが、管路L内で下流の排出部Loutに向かって流通される。ポンプP或いはファンF等の取付け位置は、フィルタユニット1と取込部Linとの間に限られず、試料気体Sを管路L内で取込部Linから排出部Loutに向かって流動させることができれば、ウイルス量検出ユニット3と排出部Loutとの間等、適宜の位置に設けることができる。
【0025】
非計測粒子カウントユニット2の下流側の管路L上には流路切替バルブBが設けられ、ウイルス量検出ユニット3側に向かう管路Lと、フィルタユニット1の上流側(ここでは、さらにポンプP或いはファンF等の上流側としている)に還流する管路Lとに選択的に切替え可能となっている。なお、管路Lは、断面略四角形の中空角管状に限られず、断面略円形の中空円管状、その他、断面略多角形の中空多角管形状等であっても良い。
【0026】
ここで、ポンプP或いはファンFは、流体を流動可能であれば、如何なる構造を適用してもよい。例えば、軸流ファン(プロペラファン)、斜流ファン、遠心ファン(多翼ファン、シロッコファン、ラジアルファン、プレートファン、ターボファン、リミットロードファン、エアフォイルファン等)、遠心軸流ファン、過流ファン、横断流ファン(クロスフローファン等)、遠心ポンプ、プロペラポンプ、粘性ポンプ、回転ポンプ等を適用することができる。なお、ウイルス量計測機構が、気体や液体に流れのある領域に設置されるか、または、ウイルス計測機構自体を移動することによって、気体や液体が取込部Linから取込まれて、排出部Loutへと管路Lを流動することができれば、ポンプP或いはファンFは必ずしも必要ではない。
【0027】
図2(a)に示すように、試料気体Sは、屋内空間などから管路Lに取込まれた初期状態において、計測対象となるウイルスと、該ウイルス以外の例えば、タバコの煙や微小粒子状物質(PM2.5)や塵埃等の非計測対象粒子と、媒質としての空気により構成される。
【0028】
続いて、各ユニットの詳細について以下に説明する。フィルタユニット1は、主として非計測対象粒子を除去するフィルタを有して成る。試料気体Sの透過流速を高めながら、ウイルスの除去精度を高めるために、フィルタの公称孔径は、1μm以下が好適であり、さらに好ましくは、0.1μm~0.3μmに設定することができる。フィルタとしては、粗塵用フィルタ、中高性能フィルタ(MEPAフィルタ)、HEPAフィルタ、ULPAフィルタ等が挙げられるが、HEPAフィルタが好ましい。
【0029】
エアロゾルのように気体中に浮遊する微小な液体、即ち、マイクロドロップレット中にウイルスが含まれた状態の試料気体Sが取込まれた場合には、フィルタで、マイクロドロップレットを構成する水分を吸収或いは蒸散して、核となるウイルスを下流側へと送出することができる。
【0030】
ここで、フィルタタイプとしては、活性炭、不織布、静電フィルタ、グラスファイバ等を挙げることができる。また、媒質が液体である場合、デプスフィルタやスクリーンフィルタ等の方式が挙げられるが、スクリーンフィルタが好ましく、スクリーンフィルタとしては、例えば、精密ろ過、限外ろ過、逆浸透ろ過等を挙げることができる。
【0031】
このように、試料気体Sをフィルタユニット1に通過させることによって、後工程でウイルス量を計測する際にノイズとなる非計測対象粒子の多く、または、全てがフィルタに捕捉されて除去される。
【0032】
図2(b)を参照しながら、試料気体Sの状態の遷移を示す。なお、図2(b)は、各ユニット1、2、3をわかりやすく簡易的に示したものであるため、各部の構成及び設置位置は、各ユニット1、2、3の本段落以外での詳細な説明と必ずしも一致するものではない。図面左の取込部Linより取込まれた試料気体Sは、初期状態にあって、非計測粒子と計測対象粒子とを含んだ状態にある。図面右へと流動してフィルタユニット1を通過すると、試料気体Sは、非計測粒子が除去された状態となり、該状態の試料気体Sが非計測粒子カウントユニット2及びウイルス量検出ユニット3を通過することになる。
【0033】
図3を参照しながら、非計測粒子カウントユニット2について説明する。非計測粒子カウントユニット2は、フローセル21と、レーザ光源22と、散乱光受光部23とを備える。
【0034】
フローセル21は、透光性を有する石英ガラス製であって、管路Lと略同サイズの断面寸法の中空角管状を成し、管路Lの途中に配置される。勿論、中空部の上流側の入口面積と下流側の出口面積は、他の部分に比べて小さく構成しても良く、或いは、入口面積と出口面積とが、管路Lと同一で、入口と出口の間の面積が小さくなるように構成しても良い。フローセル21は、後述するレーザ光源22と散乱光受光部23とによる非計測粒子のカウントができれば、全体が透光性を有する必要はなく、材質は透光性材料であれば、石英ガラス製に限られない。また、フローセル21の形状は、断面略四角形の中空角管状に限られず、断面略円形の中空円管状、その他、断面略多角形の中空多角管形状等であっても良い。
【0035】
レーザ光源22は、フローセル21に向けてレーザ光を照射するように配置され、該レーザ光は、角管状のフローセル21の一側面に略垂直に入射して、フローセル21内の試料気体Sに照射される。散乱光受光部23は、フローセル21の該一側面に隣接する他側面に対向する位置、すなわち、レーザ光源22に対して90°の角度位置に配置され、試料気体S中の非計測対象粒子にレーザ光が照射されることによって発生する散乱光を受光する。
【0036】
以上の構成により、非計測粒子カウントユニット2は、レーザ光源22からのレーザ光が、フローセル21内の流路を流通する試料気体Sに照射されると、試料気体S内に残留する非計測対象粒子によってレーザ光が散乱し、該散乱光がレーザ光の光軸から90°の位置に設けられた散乱光受光部23で捕捉される。これによって、後述する制御ユニット4で非計測対象粒子が検出され、散乱光の受光回数をカウントすることによって、非計測対象粒子数がカウントされる。なお、レーザ光源22及び散乱光受光部23としては、半導体レーザ及びフォトダイオードを適用できるが、非計測対象粒子をカウントできれば、これに限られない。また、非計測対象粒子のカウントに光散乱方式を用いたが、その他の方式としては、光遮蔽方式等が挙げられる。
【0037】
図4を参照しながら、ウイルス量検出ユニット3について説明する。ウイルス量検出ユニット3は、フローセル31と、紫外線光源32と、分光器33と、紫外線受光部34とを備える。
【0038】
フローセル31は、紫外線透過性を有する石英ガラス製であって、管路Lと略同サイズの断面寸法の中空角管状を成し、管路Lの途中に配置される。勿論、中空部の上流側の入口面積と下流側の出口面積は、他の部分に比べて小さく構成しても良く、或いは、入口面積と出口面積とが、管路Lと同一で、入口と出口の間の面積が小さくなるように構成しても良い。フローセル31は、ウイルス量の検出ができれば、全体が紫外線透過性を有する必要はなく、また、材質は紫外線透過性材料であれば、石英ガラス製に限られない。また、フローセル21の形状は、断面略四角形の中空角管状に限られず、断面略円形の中空円管状、或いは、断面略多角形の中空多角管形状であっても良い。
【0039】
紫外線光源32は、紫外線を照射する光源である。紫外線光源32としては、例えば、キセノンフラッシュランプ(185~2000nm)や重水素ランプ(185~400nm)等が挙げられる。
【0040】
分光器33は、角管状のフローセル31の一側面に対向する位置に設けられ、紫外線光源32からの紫外線を分光してフローセル31の該一側面に略垂直に入射するように照射する。分光器33は、紫外線光源32の紫外線を受けて、計測に用いる波長の光を回折格子によって単色光に分光するもので、波長250~300nmの範囲で、例えば、10nm間隔に分光してフローセル31に向かって照射する。分光器によって設定される波長の範囲及び間隔は、計測対象となるウイルスに影響を与え、ウイルスの種類と量に応じて、吸収スペクトルが変化すると共に吸光量が変化し得るように設定されていれば良い。
【0041】
紫外線受光部34は、フローセル31の一側面と反対側の他側面に対向する位置に設けられ、フローセル31内の試料気体Sを通過した紫外線を受光する。紫外線受光部34としては、シリコンフォトダイオードや光電子倍増管等が挙げられる。
【0042】
以上の構成により、ウイルス量検出ユニット3は、紫外線光源32から照射された紫外線が、分光器33を介して所定の波長の単色光に分光されて、フローセル31内の流路を流通する試料気体Sに照射され、透過した紫外線が紫外線受光部34で受光される。紫外線は、試料気体Sを通過する際、計測対象ウイルスのDNAに作用して、水和現象、ダイマー形成、分解などの光化学反応を引き起こし、その結果、ウイルスを不活化するが、このとき、吸収スペクトルが特定波長付近、例えば、240~270nm付近が主として減衰することによって、吸収スペクトルが変化すると共に吸光量が変化することになる。この吸収スペクトルの変化と吸光量の変化を後述する制御ユニット4によって処理することで、ウイルス量を算出することが可能となる。
【0043】
本実施形態では、紫外線投光部を紫外線光源と分光器により構成し、複数波長の紫外線を照射するようにしているが、それぞれ異なる波長の紫外線を発生する複数の紫外線ランプや紫外線LED(Light Emitting Diode)等を組み合わせて紫外線投光部を構成しても良い。
【0044】
図5に示すように、制御ユニット4には、非計測粒子カウントユニット2、ウイルス量検出ユニット3、表示ユニット6が接続され、非計測粒子カウントユニット2、ウイルス量検出ユニット3及び表示ユニット6などの動作を制御する。また、図5に図示しないが、制御ユニット4は、ポンプP或いはファンF等や流路切替バルブB等のウイルス量計測機構の駆動に関わる被制御機器の駆動も制御している。
【0045】
制御ユニット4は、制御部41と、記憶部42とを備える。制御部41は、非計測粒子カウント部41aと、吸光量比率算出部41bと、ウイルス量算出部41c等を備え、記憶部42は、基準吸収スペクトル及び基準吸光量のデータ42aと、基準吸光量比率とウイルス量との相関データ42b等を記憶している。
【0046】
非計測粒子カウント部41aは、非計測粒子カウントユニット42の散乱光受光部23によって検知される、散乱光の検知回数及び大きさから非計測対象粒子の粒子数を検出する。
【0047】
吸光量比率算出部41bは、ウイルス量検出ユニット3の紫外線受光部34より吸収スペクトル及び吸光量を取得し、該吸収スペクトル及び吸光量と、記憶部42に記憶された基準吸収スペクトル及び基準吸光量のデータ42aとから吸光量の比率を算出する。基準吸収スペクトル及び基準吸光量のデータ42aは、計測対象となるウイルスや非計測対象粒子等が略含まれていない状態の参照試料から得られる吸収スペクトル及び吸光量であって、予め準備しておいても良く、或いは、後述する他の実施形態のように、分岐した紫外線によって計測対象ウイルスや非計測対象粒子が略含まれていない参照試料の吸収スペクトルと吸光量を計測することによって、これを基準吸収スペクトル及び基準吸光量のデータとしても良い。
【0048】
ウイルス量算出部41cは、吸光量比率算出部41bによって算出された吸光量の比率と、基準吸光量と所定の吸光量との比率である基準吸光量比率におけるウイルス量の相関関係から得られる基準吸光量比率とウイルス量との相関データ42bとからウイルス量を算出する。基準吸光量比率とウイルス量との相関データ42bは、一つ或いはいくつかの異なる吸光量比率におけるウイルス量を例えば既存の目視によるプラーク法等によって予め計量し分析したものを適用することが挙げられる。吸光量比率に代えて、基準吸光量と計測される吸光量との差である相対吸光量を算出し、これを基準吸光量と所定の吸光量との差である基準相対吸光量におけるウイルス量の相関関係から得られる基準相対吸光量とウイルス量との相関データを用いて、ウイルス量を算出するようにしても良い。ウイルス量を示す値としては、ウイルスの数(個数)や濃度(μg/mL)等を好適に用いることができる。
【0049】
ここで、記憶部42に、ウイルスの種類毎に予め取得して成る、基準吸光スペクトルデータと、基準吸光量比率とウイルス量等の相関データと、を記憶しておけば、吸光スペクトルからウイルスを判別し、該判別した特定のウイルスにおけるウイルス量を計測することができる。また、不活化されたウイルスは、吸収スペクトルが変わると考えられることから、吸収スペクトルを検出することによって、ウイルスの状態を検出することが可能となる。
【0050】
表示ユニット6は、ウイルス量算出部41cによって算出されたウイルス量を視覚的に認識できるように表示する。表示方法としては、ウイルスの数(個数)や濃度(μg/mL)等の具体的な数値で表示したり、「多」「少」等のように抽象的に表示してもよく、また、図やグラフや色の濃淡等を用いて直観的に認識できるような表示としても良い。
【0051】
図6に示すフローチャートに基づいて、上記の構成に基づく動作を説明する。
【0052】
ポンプP或いはファンF等を駆動することによって、取込部Linからウイルス量計測機構周辺の空気が試料気体Sとして取込まれる(ステップ1)。取込まれた試料気体Sは、管路L内を流通し、フィルタユニット1のフィルタにおいて、試料気体S内に含まれる、例えば、0.3μmよりも大きな非計測対象粒子の除去が成される(ステップ2)。
【0053】
試料気体Sは、非計測粒子カウントユニット2において、フローセル21内の流路を流通する際にレーザ光源22からのレーザ光が照射され、除去しきれなかった非計測対象粒子によって散乱した散乱光が、散乱光受容部23に受光される。これにより、非計測対象粒子の粒子数がカウントされ、非計測対象粒子の粒子数が所定数以下であるかが判断される(ステップ3)。
【0054】
ここで、非計測対象粒子の粒子数が所定数以下である場合、後工程でのウイルス量の検出に影響を及ぼさない程度に十分に非計測対象粒子が除去されたと判断されたものとして、流路切替バルブBを駆動せずに、試料気体Sはウイルス量検出ユニット3へと送られてステップ4へと進み、粒子数が多い場合、流路切替バルブBが駆動されて流路が切替えられて、試料気体SはポンプP或いはファンF等の前の管路Lへと還流され、再度ステップ2へと進む。
【0055】
ウイルス量検出ユニット3において、紫外線光源32からの紫外線が分光器33を介して、フローセル31内の試料気体Sに対して照射され、試料気体S内のウイルスによって吸収された透過光が紫外線受光部34で受光され、該試料気体Sの吸収スペクトルと吸光量が取得される(ステップ4)。
【0056】
取得された吸収スペクトル及び吸光量と、基準吸収スペクトル及び基準吸光量のデータ42aとの対比から吸光量の比率を算出し(ステップ5)、さらに、該吸光量の比率と、基準吸光量比率とウイルス量との相関データ42bとからウイルス量を算出する(ステップ6)。
【0057】
算出されたウイルス量に基づいて、ウイルス量を視覚的に認識できるように値及び/又はグラフ等を生成して、表示ユニット6に表示する(ステップ7)。ウイルス量が計測された試料気体Sは、排出口Loutから、大気中へと排出される(ステップ8)。
【0058】
以上のような第一の実施形態におけるウイルス量計測機構は、簡易な構成によって、室内はもとより大気中等のサンプリングされた気体中のウイルス量を略リアルタイムに計測することが可能となる。
【0059】
次に、図7を参照しながら、ウイルス量検出ユニットの他の実施形態を説明する。他の実施形態のウイルス量検出ユニット300は、参照用の基準吸収スペクトルと基準吸光量を取得するために分光器330からのレーザ光をハーフミラー350で分岐して、参照試料Rが収容された参照試料収容セル310bを透過した透過光を参照側紫外線受光部340bで受光するように構成している点で、第一の実施形態と相違する。
【0060】
ウイルス量検出ユニット300は、第一の実施形態における、フローセル31、紫外線光源32、分光器33、紫外線受光部34に対応して、フローセル310a、紫外線光源320、分光器330、試料側紫外線受光部340aを備え、さらに、参照試料R、参照試料収容セル310b、参照側紫外線受光部340b、ハーフミラー350を備える。フローセル310a、紫外線光源320、分光器330、試料側紫外線受光部340aは、第一の実施形態と略同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0061】
参照試料収容セル310bは、管路Lとは別に設けられ、計測条件がフローセル310aと略同一になるように、フローセル310aと略同様の形状及び材質で形成される。参照試料収容セル310bの中空部内には、試料気体Sから計測対象ウイルスや非計測対象粒子が略除かれた状態の空気等の気体である参照試料Rが収容される。
【0062】
参照側紫外線受光部340bは、参照試料収容セル310bの一側面と反対側の他側面に対向する位置に設けられ、参照試料収容セル310b内の参照試料Rを通過した紫外線を受光する。参照側紫外線受光部340bとしては、シリコンフォトダイオードや光電子倍増管等を挙げることができる。
【0063】
フローセル310aと参照試料収容セル310bとは90°の角度をもって配置され、ハーフミラー350によって分岐された一方の紫外線は、フローセル310aの一側面に対して垂直に入射し、他方の紫外線は、参照試料収容セル310bの一側面に対して垂直に入射する。ハーフミラー350からフローセル310aまでの光路長と、ハーフミラー350から参照試料収容セル310bまでの光路長は略同一に設定され、また、フローセル310aから試料側紫外線受光部340aまでの光路長と、参照試料収容セル310bから参照側紫外線受光部340bの光路長は略同一に設定される。すなわち、ハーフミラー350から試料側紫外線受光部340aまでの光路長と、ハーフミラー350から参照側紫外線受光部340bまでの光路長を同一に設定することによって、試料気体Sと参照試料Rとの計測条件を揃えている。
【0064】
ウイルス量検出ユニット300は、以上の構成により、紫外線光源320から照射された紫外線は、分光器330を介して所定の波長の単色光に分光されて、ハーフミラー350に投光される。ハーフミラー350により分岐された一方の紫外線は、フローセル310a内の流路を流通する試料気体Sに照射され、透過した紫外線は、試料側紫外線受光部340aで受光される。他方の紫外線は、参照試料収容セル310b内に収容される参照試料Rに照射され、透過した紫外線は、参照側紫外線受光部340bで受光される。試料側紫外線受光部340aにより取得される試料気体Sの吸収スペクトル及び吸光量と、参照側紫外線受光部340bにより取得される参照用の基準吸収スペクトル及び基準吸光量とから、制御ユニットでは吸光量比を算出する。
【0065】
以上の構成により、第一の実施形態と同様の効果に加え、基準吸収スペクトル及び基準吸光量を同一の紫外線光源から分岐した紫外線を使用して取得することにより、紫外線光源の光量が経年劣化等の影響によって変化しても、正確な吸収量を算出することが可能となる。
【0066】
上記第一及びその他の実施形態に示したウイルス量計測機構において、試料気体Sを流通する管路L、フローセル21、31、310aの中空部が流路を構成している。
【0067】
上記第一及びその他の実施形態に示したウイルス量計測機構は、試料体として、試料気体、即ち、気体中のウイルス量を計測しているが、これに限らず、液体中のウイルス量を計測する機構としても適用できる。その場合、ウイルス量計測機構は、試料体である、水等の計測対象とする液体を媒質とした試料液体がポンプPによって、取込部から取込まれて管路L内に流通される。
【符号の説明】
【0068】
L 管路
S 試料気体
1 フィルタユニット
2 非計測粒子カウントユニット
22 レーザ光源
23 散乱光受光部
3 ウイルス量検出ユニット
32 紫外線光源(紫外線投光部)
33 分光器(紫外線投光部)
34 紫外線受光部
4 制御ユニット
6 表示ユニット

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7