IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鉄住金エンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-溶接システム 図1
  • 特開-溶接システム 図2
  • 特開-溶接システム 図3
  • 特開-溶接システム 図4
  • 特開-溶接システム 図5
  • 特開-溶接システム 図6
  • 特開-溶接システム 図7
  • 特開-溶接システム 図8
  • 特開-溶接システム 図9
  • 特開-溶接システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135205
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】溶接システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/095 20060101AFI20230921BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20230921BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20230921BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B23K9/095 515A
B23K31/00 M
B23K9/00 501B
B25J13/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040295
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】三木 聡史
(72)【発明者】
【氏名】片山 翼
(72)【発明者】
【氏名】木村 文映
【テーマコード(参考)】
3C707
4E081
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707KT02
3C707KT04
3C707MS14
3C707MS15
4E081YB02
(57)【要約】
【課題】溶接作業中に溶接の欠陥を検出することができる溶接システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る溶接システムは、鋼材の上を所定方向Y1に移動しつつ鋼材を溶接する溶接ロボット20、を制御する溶接システムであって、溶接ロボット20により溶接される鋼材の溶融池を撮像する撮像手段30と、撮像手段30が溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、溶融池の長さ又は溶融池の幅を計測する計測手段と、計測手段により計測される長さ又は幅に基づき、溶接ロボット20による溶接の欠陥に関する欠陥情報を出力する出力手段と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材の上を所定方向に移動しつつ前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御する溶接システムであって、
前記溶接ロボットにより溶接される前記鋼材の溶融池を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記溶融池の長さ又は前記溶融池の幅を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅に基づき、前記溶接ロボットによる溶接の欠陥に関する欠陥情報を出力する出力手段と、
を備える、
ことを特徴とする溶接システム。
【請求項2】
前記撮像手段は、前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラ、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【請求項3】
前記溶接ロボットに設けられる溶接トーチ、
を更に備え、
前記撮像手段は、前記溶接トーチに対する位置であって前記所定方向とは反対側の位置から、前記溶融池を撮像する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接システム。
【請求項4】
前記鋼材に設けられる建方治具と、
前記建方治具の位置を示す建方治具位置情報を取得する取得手段と、
記憶制御手段と、
を更に備え、
前記撮像手段は、前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラ、を含み、
前記記憶制御手段は、前記取得手段により取得された前記建方治具の位置情報に基づき、前記溶接ロボットの位置であって、前記反対側カメラで前記溶融池を撮像できない位置、をログとして記憶部に記憶させる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項5】
前記撮像手段は、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラと、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側の側面に設けられる所定方向側カメラと、
を含み、
前記計測手段は、前記反対側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記長さ又は前記幅を計測するとともに、前記所定方向側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記幅を計測する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項6】
検出手段、
を更に備え、
前記撮像手段は、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラと、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側の側面に設けられる所定方向側カメラと、
を含み、
前記計測手段は、前記反対側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記長さ又は前記幅を計測し、
前記検出手段は、前記所定方向側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記溶接ロボットによる溶接のバーンスルーを検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項7】
前記溶接ロボットに設けられる溶接トーチと、
制御手段と、
を更に備え、
前記撮像手段は、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラと、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側の側面に設けられる所定方向側カメラと、
を含み、
前記制御手段は、
前記溶接ロボットが前記所定方向に移動する場合には、前記溶接トーチに対する位置であって前記所定方向とは反対側の位置から前記溶融池を撮像するように前記反対側カメラを制御し、
前記溶接ロボットが反転して前記所定方向とは反対の方向に移動する場合に、前記溶接トーチに対する位置であって前記所定方向の側の位置から前記溶融池を撮像するように前記所定方向側カメラを制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項8】
前記欠陥情報は、前記欠陥の兆候に関する兆候情報を含み、
前記兆候情報は、前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅の値に基づき、前記出力手段により出力される、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項9】
前記出力手段により出力される前記兆候情報に基づき、前記溶接ロボットの状態を変更する変更手段、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項8に記載の溶接システム。
【請求項10】
前記状態は、
前記溶接ロボットが前記所定方向に移動する速度と、
前記溶接ロボットが有する溶接トーチの傾斜角であって前記所定方向に対する傾斜角と、
前記溶接ロボットがワイヤを送給する速度と、
前記鋼材に形成される開先と前記溶接ロボットが有する溶接トーチの先端との距離と、
を含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の溶接システム。
【請求項11】
前記欠陥情報は、前記欠陥の発生に関する発生情報を含み、
前記発生情報は、前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅の変化が所定閾値を上回ったことに基づき、前記出力手段により出力される、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項12】
前記出力手段により出力される前記発生情報に基づき、前記溶接ロボットを停止させる停止手段、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項11に記載の溶接システム。
【請求項13】
第1閾値、第2閾値、及び、第3閾値の中から、前記所定閾値をユーザに選択させる、
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の溶接システム。
【請求項14】
前記溶接ロボットの位置であって、前記出力手段が前記欠陥情報を出力する際の位置、に関するログを記憶部に記憶させる記憶制御手段、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項15】
前記出力手段が、前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅のうち、前記出力手段が前記欠陥情報を出力する際に基づいたものを示す情報を記憶部に記憶させる記憶制御手段、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項16】
前記計測手段は、前記画像データの輝度に基づき、前記長さ又は前記幅を計測する、
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項17】
前記溶接ロボットに設けられる溶接トーチ、
を更に備え、
前記溶接トーチの位置は、前記撮像手段の位置を変更することなく、変更される、
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項18】
前記鋼材は、曲線部を有する鋼管である、
ことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項19】
前記欠陥は、前記溶融池の垂れ落ち、又は、溶接ビードのハンピングである、
ことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材を溶接する際、鋼材の端部同士の間(開先)に溶融池が生じる。この溶融池が硬化する前に脱落すると、溶接不良が発生する。これに対し、下記技術が開示されている。
特許文献1には、溶接進行方向の前側からカメラによってアークおよび溶融池を撮像し、溶融池の先端部を事前に学習した機械学習モデルによって検出し、検出した位置とアークの距離が所定の範囲にある場合に当該距離に基づいて溶接速度の補正量を決定する自動溶接システムが開示されている。
特許文献2には、画像取得部によって溶接ビードの画像を取得し、算出部によって画像の輝度値のばらつきを計算し、算出された輝度値のはらつきに基づいて、判定部によって、溶接ビード上の一部の領域に対応した部位についての欠陥の有無を判定する溶接システムが開示されている。
特許文献3には、溶接時に溶接装置から溶接に関する情報をコントローラが取得し、コントローラ内に保持されている学習済みモデルを用いて溶接異常を判定する溶接システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-79444号公報
【特許文献2】特開2017-148841号公報
【特許文献3】特開2019-188435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、溶融池形状および溶融池の先端位置を機械学習モデルによって判定する。このため、溶接作業中にカメラとアークおよび溶融池の位置関係が変わると、正確に溶融池の形状を検知できなくなる課題がある。
特許文献2に記載の技術は、溶融凝固したあとの溶接ビードを撮像して判定する手法である。このため、溶融池の垂れ落ちのように、溶融状態のときに発生する溶接欠陥を未然に検知することはできない。
特許文献3に記載の技術は、アークの電流電圧波形が溶接状況の情報として反映される。しかしながら、溶融池後端の形状が変化しても、アークから距離がある場合は電流電圧波形に影響を及ぼさない。したがって、当該発明によるシステムでは、溶融池の垂れ落ちを検知することが困難である。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、溶接作業中に溶接の欠陥を検出することができる溶接システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る溶接システムは、鋼材の上を所定方向に移動しつつ前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御する溶接システムであって、前記溶接ロボットにより溶接される前記鋼材の溶融池を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記溶融池の長さ又は前記溶融池の幅を計測する計測手段と、前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅に基づき、前記溶接ロボットによる溶接の欠陥に関する欠陥情報を出力する出力手段と、を備える。
【0007】
この発明によれば、撮像手段が、溶融池を撮像して画像データを出力する。計測手段が、出力された画像データに基づき、溶融池の長さ又は溶融池の幅を計測する。出力手段が、計測された溶融池の長さ又は幅に基づき、溶接ロボットによる溶接の欠陥に関する欠陥情報を出力する。ここで、溶接作業中に硬化する前の溶融池が垂れ落ちると、溶融池の長さ又は幅が急激に小さくなる。あるいは、溶接部の溶融池が一連にならず、途中で途切れると、溶融池が形成されない部位が生じる。これらの事象に対し、上述の構成を備えることで、溶融池が硬化する前に垂れ落ちたり、途切れたりしたことを、溶接作業中に迅速に検出することができる。よって、より高い溶接品質に寄与することができる。
【0008】
また、前記撮像手段は、前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラ、を含む、ことを特徴としてもよい。
【0009】
この発明によれば、撮像手段は、溶接ロボットの側面であって、溶接ロボットが進行する所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラを含む。つまり、反対側カメラは、溶接ロボットの側面に取り付けられ、進行方向の反対側から、溶融池を撮像する。これにより、溶接ロボットが溶接し、溶融池が生じた部位を、溶接ロボットの移動に合わせて追いかけるように撮像することができる。よって、より正確に溶融池の幅及び長さを把握しやすくすることができる。
【0010】
また、前記溶接ロボットに設けられる溶接トーチ、を更に備え、前記撮像手段は、前記溶接トーチに対する位置であって前記所定方向とは反対側の位置から、前記溶融池を撮像する、ことを特徴としてもよい。
【0011】
この発明によれば、撮像手段は、溶接トーチに対する位置であって、溶接ロボットが進行する所定方向とは反対側の位置から、溶融池を撮像する。これにより、溶融池を、溶融池が生じた直後から撮像することができる。よって、硬化が始まる前の状態の溶融池を、より正確に撮像することができる。
【0012】
また、前記鋼材に設けられる建方治具と、前記建方治具の位置を示す建方治具位置情報を取得する取得手段と、記憶制御手段と、を更に備え、前記撮像手段は、前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラ、を含み、前記記憶制御手段は、前記取得手段により取得された前記建方治具の位置情報に基づき、前記溶接ロボットの位置であって、前記反対側カメラで前記溶融池を撮像できない位置、をログとして記憶部に記憶させる、ことを特徴としてもよい。
【0013】
この発明によれば、記憶制御手段は、取得手段により取得された建方治具の位置情報に基づき、溶接ロボットの位置であって、反対側カメラで溶融池を撮像できない位置をログとして記憶部に記憶させる。ここで、鋼材に設けられた建方治具の付近を溶接ロボットによって溶接する時、撮像手段の視界に建方治具が干渉して、溶融池の状態が撮像できなくなることがある。これに対して、溶融池を撮像できない位置をログとして記憶部に記憶させることで、溶接作業後に当該位置の確認を容易に行うことができる。よって、溶接後の確認作業を効率的に行うことができる。
【0014】
また、前記撮像手段は、前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラと、前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側の側面に設けられる所定方向側カメラと、を含み、前記計測手段は、前記反対側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記長さ又は前記幅を計測するとともに、前記所定方向側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記幅を計測する、ことを特徴としてもよい。
【0015】
この発明によれば、計測手段は、反対側カメラが溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、長さ又は幅を計測するとともに、所定方向側カメラが溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、幅を計測する。これにより、例えば、反対側カメラの視界に建方治具が干渉する等の理由により反対側カメラによって溶融池が撮像できなくなった場合であっても、所定方向側カメラによって少なくとも溶融池の幅を撮像することができる。このように、撮像手段に補助的な役割を有する所定方向側カメラを備えることで、より撮像を安定して行うことができる。また、所定方向側と反対方向側との両側にカメラを設けることで、溶接ロボットの進行方向が変わった場合に、いずれかのカメラによって少なくとも溶融池の幅を計測することができる。あるいは、所定方向側カメラと反対側カメラとが、それぞれの役割を交替することができる。よって、より撮像を安定して行うことができる。
【0016】
また、検出手段、を更に備え、前記撮像手段は、前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラと、前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側の側面に設けられる所定方向側カメラと、を含み、前記計測手段は、前記反対側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記長さ又は前記幅を計測し、前記検出手段は、前記所定方向側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記溶接ロボットによる溶接のバーンスルーを検出する、ことを特徴としてもよい。
【0017】
この発明によれば、計測手段は、反対側カメラが溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、溶融池の長さ又は幅を計測する。加えて、検出手段は、所定方向側カメラが溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、溶接ロボットによる溶接のバーンスルーを検出する。このように、計測手段による溶融池の長さ又は幅の計測に加えて、検出手段によるバーンスルーの検出を同時に行うことで、より溶接不良を確実に検出しやすくすることができる。
【0018】
また、前記溶接ロボットに設けられる溶接トーチと、制御手段と、を更に備え、前記撮像手段は、前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラと、前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側の側面に設けられる所定方向側カメラと、を含み、前記制御手段は、前記溶接ロボットが前記所定方向に移動する場合には、前記溶接トーチに対する位置であって前記所定方向とは反対側の位置から前記溶融池を撮像するように前記反対側カメラを制御し、前記溶接ロボットが反転して前記所定方向とは反対の方向に移動する場合に、前記溶接トーチに対する位置であって前記所定方向の側の位置から前記溶融池を撮像するように前記所定方向側カメラを制御する、ことを特徴としてもよい。
【0019】
この発明によれば、制御手段は、溶接ロボットが所定方向に移動する場合には、溶接トーチに対する位置であって所定方向とは反対側の位置から溶融池を撮像するように反対側カメラを制御し、溶接ロボットが反転して所定方向とは反対の方向に移動する場合に、溶接トーチに対する位置であって所定方向の側の位置から溶融池を撮像するように所定方向側カメラを制御する。これにより、溶接ロボットがいずれの側に移動した場合であっても、撮像手段による溶融池の撮像を継続することができる。
【0020】
また、前記欠陥情報は、前記欠陥の兆候に関する兆候情報を含み、前記兆候情報は、前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅の値に基づき、前記出力手段により出力される、ことを特徴としてもよい。
【0021】
この発明によれば、欠陥情報は、欠陥の兆候に関する兆候情報を含み、兆候情報は、計測手段により計測される長さ又は幅の値に基づき、出力手段により出力される。このように、溶接の欠陥情報に加えて、欠陥の兆候に関する兆候情報を出力手段により出力することで、溶接の欠陥が発生することを未然に察知し、迅速に対応することができる。よって、溶接に品質をより向上することができる。
【0022】
また、前記出力手段により出力される前記兆候情報に基づき、前記溶接ロボットの状態を変更する変更手段、を更に備える、ことを特徴としてもよい。
【0023】
この発明によれば、出力手段により出力される兆候情報に基づき、溶接ロボットの状態を変更する変更手段を更に備える。このように、溶接の欠陥の兆候に対して溶接ロボットの状態を適宜変更することで、溶接の欠陥が発生することを未然に防ぐことができる。
【0024】
また、前記状態は、前記溶接ロボットが前記所定方向に移動する速度と、前記溶接ロボットが有する溶接トーチの傾斜角であって前記所定方向に対する傾斜角と、前記溶接ロボットがワイヤを送給する速度と、前記鋼材に形成される開先と前記溶接ロボットが有する溶接トーチの先端との距離と、を含む、ことを特徴としてもよい。
【0025】
この発明によれば、変更手段によって変更される溶接ロボットの状態は、溶接ロボットが所定方向に移動する速度と、溶接ロボットが有する溶接トーチの傾斜角であって所定方向に対する傾斜角と、溶接ロボットがワイヤを送給する速度と、鋼材に形成される開先と溶接ロボットが有する溶接トーチ先端との距離と、を含む。
【0026】
溶接ロボットの移動速度を変更することで、溶接トーチが溶接部における任意の位置に滞在する時間を調整することができる。溶接トーチの傾斜角を変更することで、溶接後の溶融池の形状への影響を調整することができる。ワイヤを供給する速度を変更することで、溶接後に溶融池となる材質の量を調整することができる。開先と溶接トーチの先端との距離を変更することで、溶接部の温度を調整することができる。このように、溶接ロボットを変更手段によって適宜変更することで、溶接の欠陥が発生する可能性を最小限にすることができる。
【0027】
また、前記欠陥情報は、前記欠陥の発生に関する発生情報を含み、前記発生情報は、前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅の変化が所定閾値を上回ったことに基づき、前記出力手段により出力される、ことを特徴としてもよい。
【0028】
この発明によれば、欠陥情報は、欠陥の発生に関する発生情報を含み、発生情報は、計測手段により計測される溶融池の長さ又は幅の変化が所定閾値を上回ったことに基づき、出力手段により出力される。このように、溶接の欠陥が発生したことを出力手段によって出力することで、欠陥の発生を検知することができる。
【0029】
また、前記出力手段により出力される前記発生情報に基づき、前記溶接ロボットを停止させる停止手段、を更に備える、ことを特徴としてもよい。
【0030】
この発明によれば、出力手段により出力される発生情報に基づき、溶接ロボットを停止させる停止手段を更に備える。つまり、溶接の欠陥が発生したら、停止手段によって溶接ロボットを停止させる。このように、溶接の欠陥の発生に応じて溶接ロボットを停止させることで、欠陥の発生の見落としを防ぐことができる。また、溶接の欠陥が発生した時点で適宜対応ができるようにすることで、溶接の欠陥が継続して発生することを防ぐことができる。
【0031】
また、第1閾値、第2閾値、及び、第3閾値の中から、前記所定閾値をユーザに選択させる、ことを特徴としてもよい。
【0032】
この発明によれば、第1閾値、第2閾値、及び、第3閾値の中から、所定閾値をユーザに選択させる。これにより、ユーザが必要とする溶接の条件に柔軟に対応することができる。よって、ユーザの利便性を向上することができる。
【0033】
また、前記溶接ロボットの位置であって、前記出力手段が前記欠陥情報を出力する際の位置、に関するログを記憶部に記憶させる記憶制御手段、を更に備える、ことを特徴としてもよい。
【0034】
この発明によれば、出力手段が欠陥情報を出力する際の位置に関するログを記憶部に記憶させる記憶制御手段、を更に備える。つまり、欠陥情報と、欠陥情報に係る溶接部の位置とを関連付けて記憶する。よって、溶接作業後に、溶接部におけるどの部位において欠陥又は欠陥の可能性があるかを容易に確認することができる。
【0035】
また、前記出力手段が、前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅のうち、前記出力手段が前記欠陥情報を出力する際に基づいたものを示す情報を記憶部に記憶させる記憶制御手段、を更に備える、ことを特徴としてもよい。
【0036】
この発明によれば、出力手段が、計測手段により計測される長さ又は幅のうち、出力手段が欠陥情報を出力する際に基づいたものを示す情報を記憶部に記憶させる記憶制御手段、を更に備える。つまり、欠陥情報について、溶融池の長さ又は幅のいずれに問題があったかを記憶部に記憶させる。このように、溶接の欠陥に係る情報の詳細を的確に把握することで、欠陥に対する対応を容易に決定することができる。
【0037】
また、前記計測手段は、前記画像データの輝度に基づき、前記長さ又は前記幅を計測する、ことを特徴としてもよい。
【0038】
この発明によれば、計測手段は、画像データの輝度に基づき、溶融池の長さ又は幅を計測する。つまり、溶融池を形成する溶融金属が、高温によって発光した状態である部位を、溶融池と認識する。そして、溶融池であると認識した部位の長さ又は幅を、計測手段によって計測する。これにより、溶融池が硬化した後の部位を、計測する長さ又は幅から除外することができる。よって、溶接の欠陥が発生する可能性がある硬化前の溶融池のみを、計測の対象とすることができる。
【0039】
また、前記溶接ロボットに設けられる溶接トーチ、を更に備え、前記溶接トーチの位置は、前記撮像手段の位置を変更することなく、変更される、ことを特徴としてもよい。
【0040】
この発明によれば、溶接トーチの位置は、撮像手段の位置を変更することなく、変更される。つまり、撮像手段は、溶接トーチの位置の変更に追従しない。溶融池の長さ又は幅の変化は、連続的な変化として計測される。このため、溶接トーチの位置が変わったことによって、撮像手段と溶融池の相対位置が変化した場合でも、相対位置の変化の影響を受けずに垂れ落ちの検出を継続することができる。このため、撮像手段が溶接トーチの位置の変更に追従しないことで、例えば、撮像手段が溶接トーチの位置の変更に追従することで、撮像手段が撮像した画像データにぶれが生じるといったことを防ぐことができる。つまり、撮像手段の向きが変わることによって、計測手段による計測に影響が生じることを防ぐことができる。
【0041】
また、前記鋼材は、曲線部を有する鋼管である、ことを特徴としてもよい。
【0042】
この発明によれば、鋼材は、曲線部を有する鋼管である。本発明に係る溶接システムを、曲線部を有する鋼管に適用することで、上述の作用効果を顕著にもたらすことができる。
【0043】
また、前記欠陥は、前記溶融池の垂れ落ち、又は、溶接ビードのハンピングである、ことを特徴としてもよい。
【0044】
この発明によれば、溶接の欠陥とは、溶融池の垂れ落ち、又は、溶接ビードのハンピングである。溶融池の垂れ落ち又は溶接ビードのハンピングは、溶接の作業中に兆候を検知して適宜対応することで、未然に防ぐことができるものである。上述の構成によって上記欠陥を未然に防ぐことで、より効率的な溶接作業に寄与することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、溶接作業中に溶接の欠陥を検出することができる溶接システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明に係る溶接システムの斜視図である。
図2】本発明に係る溶接ロボットの拡大図である。
図3】処理部の構成を示すブロック図である。
図4】溶融池の長さ及び幅を示す例である。
図5】鋼管の曲線部の平面拡大図である。
図6】溶接ロボットによって鋼管の曲線部を溶接している状態を示す図である。
図7】溶接ロボットによって鋼管の曲線部を溶接する場合の平面模式図である。
図8】撮像手段によって撮像された溶融池の第一例である。
図9】撮像手段によって撮像された溶融池の第二例である。
図10】計測手段によって計測される、溶融池の長さを示すグラフの例である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る溶接システム100を説明する。
溶接システム100は、鋼材を溶接する際に用いられる。本実施形態において、鋼材は、曲線部Rを有する鋼管Pである。鋼管Pは、例えば、建物の柱に用いられる。溶接システム100は、溶接ロボット20を制御する。
溶接システム100は、図1又は図2に示すように、ガイドレール10と、溶接ロボット20と、撮像手段30と、処理部40と、を備える。
【0048】
ガイドレール10は、鋼管Pの周囲に環状に取り付けられる。ガイドレール10には、溶接ロボット20が配置される。本実施形態において、ガイドレール10の周方向における一方の方向を所定方向Y1、所定方向Y1とは反対の方向を反対方向Y2と呼称する。
溶接ロボット20は、鋼管Pの上を所定方向Y1に移動しつつ鋼管Pを溶接する。本実施形態において、溶接ロボット20は、立向上進溶接及び横向溶接により鋼管Pを溶接する。図2に示すように、溶接ロボット20は、本体部21と、溶接トーチ22と、アーム部23と、溶接ケーブル24と、固定部材25と、を少なくとも備える。
【0049】
本体部21は、溶接ロボット20の基台となる部位である。本体部21は、ケース部21aと、スライド部21bと、を備える。
ケース部21aは、内部に溶接ロボット20の主要な構成を収容する。また、ケース部21aの外側面には、後述する撮像手段30が設けられる。
【0050】
スライド部21bは、ガイドレール10に配置される部位である。溶接ロボット20は、スライド部21bがガイドレール10に対して摺動することで、所定方向Y1又は反対方向Y2に移動する。また、ケース部21aとスライド部21bとは、相対移動が可能である。具体的には、ケース部21aは、スライド部21bを基準として、鋼管Pの軸方向に沿う一方の方向である第1軸方向X1と、他方の方向である第2軸方向X2への移動と、鋼管Pの側から離れる方向である第1方向Z1と、鋼管Pに接近する方向である第2方向Z2への移動が可能である。本体部21とスライド部21bとの相対移動には、任意の構成が好適に用いられる。例えば、本体部21とスライド部21bとの間に配置されたアクチュエータによって移動する。
【0051】
溶接トーチ22は、鋼管P同士を溶接する部位である。溶接トーチ22による溶接は、アーク溶接が好適に用いられる。溶接トーチ22の先端部から鋼管Pの溶接部へ向けて放電することで、鋼管P同士を溶接する。
アーム部23は、本体部21と溶接トーチ22との間に設けられ、溶接トーチ22を支持する。アーム部23は、溶接トーチ22の傾斜角を変更可能である。
具体的には、アーム部23は、図2に示すように、所定方向Y1に沿う方向である第1周方向T1と、反対方向Y2に沿う方向である第2周方向T2とに、溶接トーチ22の先端を移動させるようにして溶接トーチ22の傾斜角を変更可能である。
【0052】
また、アーム部23は、所定方向Y1及び反対方向Y2に直交する方向である第1直交方向B1と、第1直交方向B1とは反対の方向である第2直交方向B2に、溶接トーチ22の先端を移動させるようにして溶接トーチ22の傾斜角を変更可能である。
ここで、鋼管Pの溶接作業を行う際には、図1に示すように、鋼管P同士を仮固定する建方治具Eが設けられる。このため、上述のようにアーム部23によって溶接トーチ22の傾斜角を変更することで、建方治具Eと溶接トーチ22が干渉することを防ぐ。
【0053】
溶接ケーブル24は、溶接ロボット20の溶接トーチ22に一端が接続され、且つ、溶接ロボット20とは異なる装置(例えば、不図示のワイヤ送給機)に他端が接続される。溶接ケーブルは、溶接トーチ22に向けて、溶接ワイヤを供給したり、溶接トーチ22に電圧を付加したりする役割を有する。
【0054】
固定部材25は、溶接ケーブル24の一端と溶接ケーブル24の他端との間の一部分を、溶接ロボット20の本体部21に固定する。以下において、当該部位を固定部分と呼称することがある。
固定部材25によって固定部分を把持することで、例えば、溶接ロボット20がガイドレール10を移動することに伴って溶接ケーブル24における固定部分よりも他端側が引っ張られても、溶接ケーブル24の一端から固定部分との間における溶接ケーブル24は、本体部21に対して相対移動しなくなる。
このように、固定部材25は、溶接ケーブルの一端に接続された溶接トーチ22が、溶接ケーブルに引っ張られて位置がずれるといったことを防ぐ役割を有する。
【0055】
撮像手段30は、溶接ロボット20により溶接される鋼材の溶融池Mを撮像する。ここで、溶融池Mとは、図3に示すように、鋼材を溶接した際に生じる溶接ビードWBの、硬化する前の状態のものをいう。撮像手段30は、反対側カメラ31と、所定方向側カメラ32と、カメラアーム33と、カメラスライド部34とを含む。
【0056】
反対側カメラ31は、溶接ロボット20の本体部21の側面であって、所定方向Y1の側とは反対側の側面に設けられる。反対側カメラ31は、溶接トーチ22に対する位置であって所定方向Y1とは反対側の位置から、溶融池Mを撮像する。つまり、反対側カメラ31は、溶接トーチ22によって溶接された鋼管P同士の間において、溶融池Mが生じた直後の状態を撮像する。
【0057】
所定方向側カメラ32は、溶接ロボット20の本体部21の側面であって、所定方向Y1の側の側面に設けられる。所定方向側カメラ32は、溶接トーチ22に対する位置であって所定方向Y1の側の位置から、溶融池Mを撮像する。
カメラアーム33は、反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32を本体部21の側面に取り付ける棒状の部材である。カメラアーム33の一方の端部には、反対側カメラ31又は所定方向側カメラ32が取り付けられる。このとき、カメラアーム33と反対側カメラ31又は所定方向側カメラ32との間には、例えば、球関節が設けられ、前記球関節によって角度調整が可能であることが好ましい。前記角度調整は、例えば、手動により行われてもよいし、アクチュエータを制御することにより行われてもよい。
【0058】
前記球関節による反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32の角度調整は、次のようにされることが好ましい。ここで、溶接トーチ22の先端が第1周方向T1又は第2周方向T2に移動すると、溶接トーチ22の先端と反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32との相対位置が変化する。このような場合に、溶接トーチ22の先端が移動しうる全ての範囲が、反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32の両方の視野に含まれるように調整することが好ましい。
カメラアーム33の他方の端部は、カメラスライド部34に取り付けられる。
【0059】
カメラスライド部34は、カメラアーム33の他方の端部が取り付けられるレール状の部材である。カメラスライド部34は、溶接ロボット20の本体部21の側面に取り付けられる。カメラスライド部34は、カメラアーム33を第1軸方向X1及び第2軸方向X2に摺動可能に支持する。これにより、反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32は、本体部21に対して第1軸方向X1及び第2軸方向X2に相対移動が可能である。前記相対移動は、例えば、アクチュエータを制御することによって行われる。
【0060】
反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32の、本体部21に対する前記相対移動は、例えば、本体部21が第1軸方向X1又は第2軸方向X2に移動した時、反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32が追従して移動しないようにするためにされる。これにより、反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32が、鋼管Pの溶接部に発生する溶融池Mに対して相対移動しないようにする。
【0061】
このため、溶接作業中において、本体部21が所定方向Y1又は反対方向Y2、及び第1方向Z1又は第2方向Z2に移動すると、反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32は前記移動に追従して移動する。これに対し、本体部21が第1軸方向X1又は第2軸方向X2に移動しても、反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32は前記移動に追従しない。
【0062】
また、上述のように、溶接トーチ22と、溶接トーチ22を支持するアーム部23も、溶接ロボット20の本体部21に設けられる。溶接トーチ22の位置は、アーム部23によって変更される。したがって、溶接トーチ22の位置は、撮像手段30の位置を変更することなく、変更される。つまり、撮像手段30は、溶接トーチ22の移動に追従しない。
【0063】
ここで、溶接作業中に溶接の欠陥が発生する兆候を検知した時、欠陥の発生を回避するために、溶接トーチ22の傾斜角を変更することがある(後述する)。このとき、溶接トーチ22の先端と反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32との相対位置が変化する。つまり、撮像手段30によって溶接トーチ22を撮像する際の、いわゆるねらい角が変化する。
【0064】
上述の構成による、本体部21の第1方向Z1及び第2方向Z2、又は第1軸方向X1及び第2軸方向X2の移動は、上述のように溶接トーチ22の先端と反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32との相対位置が変化した時、反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32によって溶接トーチ22の先端をより好適な位置から撮像するために行われる。
【0065】
処理部40は、上述の各構成を、鋼管Pの溶接作業に合わせ適宜制御するための演算装置である。処理部40は、溶接ロボット20のケース部21aの内部に配置される。図4に示すように、処理部40は、計測手段41と、出力手段42と、取得手段43と、記憶制御手段44と、記憶部45と、検出手段46と、制御手段47と、変更手段48と、停止手段49と、を備える。
【0066】
計測手段41は、撮像手段30が溶融池Mを撮像して出力する画像データに基づき、溶融池Mの長さL又は溶融池Mの幅Wを計測する。具体的には、計測手段41は、画像データの輝度に基づき、長さL又は幅Wを計測する。ここで、長さLとは、図3に示すように、溶融池Mの、鋼管Pの周方向に沿う方向の寸法である。幅Wとは、長さLに直交する方向の寸法である。
【0067】
計測手段41は、例えば、反対側カメラ31が溶融池Mを撮像して出力する画像データに基づき、溶融池Mの長さL又は幅Wを計測する。あるいは、所定方向側カメラ32が溶融池Mを撮像して出力する画像データに基づき、溶融池Mの幅Wを計測する。長さL及び幅Wの計測の方法としては、図3に示す溶融池Mの長さLを検出し、その長手方向に直行する方向に幅Wを検出すればよい。
【0068】
溶融池Mの長さL及び幅Wは、例えば、以下の条件であることが好ましい。なお、以下の説明において、図5に示す鋼管Pの曲線部Rの曲率半径rは、40mmであるとする。また、溶融池Mの長さLは、20mm±10mmを維持することが好ましいものとする。
図6及び図7に示すように、溶接ロボット20が鋼管Pの曲線部Rを通過する際、撮像手段30によって撮像される溶融池Mの形状が変化する。具体的には、図8及び図9に示すように、溶接ロボット20が曲線部Rに入るとき、もしくは溶接ロボット20が曲線部Rから出るとき、溶融池Mの長さLは連続的に変化する。
【0069】
これに対し、鋼管Pの曲線部Rの曲率半径rが40mmの場合、溶融池Mの長さLが20mmでは、曲線部Rの溶接中でも溶融池Mの長さLは直線区間とほぼ同様の見え方になる。このため、反対側カメラ31及び所定方向側カメラ32と、溶接トーチ22の先端との相対位置が変わらないように、上述の本体部21の移動を制御することで、撮像手段30によって同一の条件で溶接トーチ22の先端を撮像することに寄与する。
【0070】
上述のように、反対側カメラ31は、溶融池Mが生じた直後の状態を撮像するため、溶融池Mの長さLを計測する際に好適である。これに対し、所定方向側カメラ32のある側には溶融池Mが位置しないため、所定方向側カメラ32が撮像する画像によっては溶融池Mの長さLを測定することができない。このため、所定方向側カメラ32が撮像する画像によっては、溶融池Mの幅Wのみ測定する。
【0071】
出力手段42は、計測手段41により計測される長さL又は幅Wに基づき、溶接ロボット20による溶接の欠陥に関する欠陥情報を出力する。本実施形態において、溶接の欠陥とは、溶融池Mの垂れ落ち、又は、溶接ビードWBのハンピングである。
【0072】
溶融池Mの垂れ落ちは、鋼管P同士の間において溶融池Mを構成する溶接ワイヤの量が過剰となることで、溶融池Mが重くなることで生じる。溶融池Mの垂れ落ちは、例えば、溶接ロボット20の移動速度に対して溶接ワイヤの供給速度が過剰となることで生じる。溶融池Mの垂れ落ちが発生するときは、溶融池Mの長さLに対して溶融池Mの幅Wが大きいことが特徴である。垂れ落ちが発生した部位の溶融池Mによっては、十分な溶接ビードWBが形成されず、溶接不良となる。
【0073】
ハンピングは、溶融池Mが鋼管P同士の間において途切れることである。ハンピングは、鋼管P同士の間において溶融池Mを構成する溶接ワイヤの量が不足することで生じる。ハンピングは、例えば、溶接ワイヤの供給速度に対して溶接ロボット20の移動速度が過剰となることで生じる。ハンピングが発生するときは、溶融池Mの長さLに対して溶融池Mの幅Wが小さいことが特徴である。また、正常な溶接を行った場合よりも、溶融池Mが長くなることが特徴である。ハンピングが発生した部位の溶融池Mによっても、十分な溶接ビードWBが形成されず、溶接不良となる。
【0074】
出力手段42が出力する欠陥情報は、兆候情報と、発生情報と、を含む。
兆候情報は、欠陥の兆候に関する情報である。つまり、溶融池Mの垂れ落ちや、溶接ビードWBのハンピングが発生する兆候に関する情報である。
溶融池Mの垂れ落ちの兆候は、例えば、溶融池Mの幅Wが基準を超えて大きくなることである。あるいは、溶融池Mの長さLに対する溶融池Mの幅Wの比が、基準を超えて大きくなることである。
ハンピングの兆候は、例えば、溶融池Mの長さLが基準を超えて大きくなることである。あるいは、溶融池Mの長さLに対する溶融池Mの幅Wの比が、基準を超えて小さくなることである。
兆候情報は、計測手段41により計測される長さL又は幅Wの値に基づき、出力手段42により出力される。
【0075】
発生情報は、欠陥の発生に関する情報である。つまり、溶融池Mの垂れ落ちや、溶接ビードWBのハンピングが発生したことに関する情報である。発生情報は、計測手段41により計測される長さL又は幅Wの変化(微分値)が所定閾値を上回ったことに基づき、出力手段42により出力される。
【0076】
所定閾値は、溶融池Mの長さL又は幅Wについて定められる。溶融池Mの垂れ落ちや、ハンピングが発生すると、溶融池Mが途切れたことによって、溶融池Mの長さL又は幅Wが急激に小さくなる。このような変化は、例えば、図10に示す溶融池Mの長さLと時間とのグラフにおける欠陥発生部Xのように、急激に変化することが特徴である。図10に示す欠陥発生部Xにおいては、溶融池Mの長さLの変化量が-5mmとなっている。このため、本実施形態において、発生情報に係る溶融池Mの長さLの変化量の閾値は-5mmとすることができる。
あるいは、溶融池Mの垂れ落ちやハンピングの兆候があると、溶融池Mの長さLが閾値を超えて大きくなる。図10のグラフにおいては、溶融池Mの長さLが26mmを超えた直後に、欠陥発生部Xが生じる。このため、本実施形態において、兆候情報に係る溶融池Mの長さLの閾値は26mmとすることができる。
【0077】
溶融池Mの垂れ落ちやハンピングが発生したと判断するための所定閾値は、ユーザ毎の溶接に係る条件に合わせて適宜設定することが可能である。具体的には、例えば、予め定められた第1閾値、第2閾値、及び、第3閾値の中から、所定閾値をユーザに選択させることが可能である。前記選択は、例えば、溶接システム100に備えられた制御盤等によって操作されることが好ましい。
【0078】
なお、本実施形態では、出力手段42は、例えば、下記のような場合に、溶接ビードWBの垂れ落ちの兆候情報を出力する。
(1)計測手段41により計測される溶融池Mの幅Wが、溶接ビードWBの垂れ落ちを検出するために用いられる所定幅閾値より、大きいか否か出力手段42が判定し、出力手段42により長いと判定された場合。
(2)計測手段41により計測される溶融池Mの長さLに対する溶融池Mの幅Wの比が、溶接ビードWBの垂れ落ちを検出するために用いられる所定基準閾値より、大きいか否か出力手段42が判定し、出力手段42により大きいと判定された場合。
【0079】
また、本実施形態では、出力手段42は、例えば、下記のような場合に、溶接ビードWBの垂れ落ちの発生情報を出力する。
(1)計測手段41により計測される溶融池Mの長さL又は幅Wの変化が、溶接ビードWBの垂れ落ちの検出するために用いられる所定長さ変化閾値又は所定幅変化閾値より、大きいか否かを出力手段42が判定し、出力手段42により大きいと判定された場合。
【0080】
さらに、本実施形態では、出力手段42は、例えば、下記のような場合に、溶接ビードWBのハンピングの兆候情報を出力する。
(1)計測手段41により計測される溶融池Mの長さLが、溶接ビードWBのハンピングを検出するために用いられる所定長さ閾値より、長いか否かを出力手段42が判定し、出力手段42により長いと判定された場合。
(2)計測手段41により計測される溶融池Mの幅Wが、溶接ビードWBのハンピングを検出するために用いられる所定幅閾値より、小さいか否かを出力手段42が判定し、出力手段42により小さいと判定された場合。
(3)計測手段41により計測される溶融池Mの長さLに対する溶融池Mの幅Wの比が、溶接ビードWBのハンピングを検出するために用いられる所定基準閾値より、小さいか否かを出力手段42が判定し、出力手段42により小さいと判定された場合。
【0081】
なお、本実施形態では、出力手段42は、例えば、下記のような場合に、溶接ビードWBのハンピングの発生情報を出力する。
(1)計測手段41により計測される溶融池Mの幅Wが、溶接ビードWBのハンピングを検出するために用いられる所定幅閾値より、小さいか否かを出力手段42が判定し、出力手段42により小さいと判定され、且つ、計測手段41により計測される溶融池Mの長さLの変化が、溶接ビードWBのハンピングを検出するために用いられる所定長さ変化閾値より、大きいか否かを出力手段42が判定し、出力手段42により大きいと判定された場合。
(2)計測手段41により計測される溶融池Mの長さL又は幅Wの変化が、溶接ビードWBのハンピングを検出するために用いられる所定長さ幅変化閾値より、大きいか否かを出力手段42が判定し、出力手段42により大きいと判定された場合。
【0082】
取得手段43は、建方治具Eの位置を示す建方治具位置情報を取得する。上述のように、建方治具Eとは、図1に示すように、鋼管Pの端部同士の間を繋ぐように設けられた、仮止め用の治具である。溶接システム100による鋼管Pの溶接を行う際は、この治具が取り付けられた状態のまま溶接する。このため、撮像手段30の位置によっては、建方治具Eが反対側カメラ31又は所定方向側カメラ32の視界に干渉して溶融池Mの撮像ができなくなることがある。このため、取得手段43が建方治具Eの位置情報を取得することによって、建方治具Eによって溶融池Mの撮像ができなかった部位を別途作業者の目視によって確認するといった対策を執るための参考とする。
取得手段43は、例えば、センシング処理部のセンシング処理結果に基づき、建方治具Eの位置情報を取得する。センシング処理部は、建方治具Eの位置を取得するためのセンシング処理を行う部位である。
取得手段43は、入力部の入力結果に基づき、建方治具Eの位置情報を取得してもよい。入力部は、建方治具Eの位置をユーザに入力させる部位である。
【0083】
記憶制御手段44は、記憶部45に対して情報を記憶させるための部位である。記憶制御手段44は、例えば、コンピュータ等に用いられる公知の書き込み装置である。具体的には、例えば、CPUの処理ブロックの一部である。
記憶制御手段44は、例えば、溶接ロボット20の位置であって、出力手段42が欠陥情報を出力する際の位置と、その位置で出力手段42から出力された欠陥情報が発生情報であるのか、それとも兆候情報であるのか、に関するログを記憶部45に記憶させる。この情報は、溶接作業後においてどの部位に欠陥が発生したかを特定するために用いられる。
【0084】
記憶制御手段44は、出力手段42が、計測手段41により計測される長さL又は幅Wのうち、出力手段42が欠陥情報を出力する際に基づいたものを示す情報と、その欠陥情報が発生情報であるのか、それとも兆候情報であるのか、を対応づけて記憶部45に記憶させる。この情報は、例えば、溶接システム100が何を根拠として欠陥が発生したと判断したかの調査に用いられる。
【0085】
あるいは、取得手段43により取得された建方治具位置情報に基づき、溶接ロボット20の位置であって、反対側カメラ31で溶融池Mを撮像できない位置、をログとして記憶部45に記憶させる。この情報は、溶接作業後においてどの部位に目視確認の必要があるかを特定するために用いられる。
【0086】
記憶部45は、上述の各情報が、記憶制御手段44によって記憶させられる部位である。記憶部45には、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。
【0087】
検出手段46は、所定方向側カメラ32が溶融池Mを撮像して出力する画像データに基づき、溶接ロボット20による溶接のバーンスルーを検出する。バーンスルーとは、溶接作業時に発生した溶融池Mが、鋼管Pに溶接トーチ22が接近する側の表面(例えば、鋼管Pの外周面)とは反対の側の表面(例えば、鋼管Pの内周面)においても液面を形成し、アークの圧力によって溶融池Mが反対側に吹き飛ばされ、鋼材が貫通することをいう。このバーンスルーも、鋼管P同士の溶接部に十分な溶接ビードWBが形成されない要因であるため、溶接の欠陥の1つである。
【0088】
制御手段47は、撮像手段30を制御する。撮像手段30は、例えば、溶接ロボット20が所定方向Y1に移動する場合には、溶接トーチ22に対する位置であって所定方向Y1とは反対側の位置から溶融池Mを撮像するように反対側カメラ31を制御する。また、撮像手段30は、溶接ロボット20が反転して所定方向Y1とは反対の方向(反対方向Y2)に移動する場合に、溶接トーチ22に対する位置であって所定方向Y1側の位置から溶融池Mを撮像するように所定方向側カメラ32を制御する。これにより、制御手段47は、随時溶融池Mの撮像を行えるようにすることに寄与する。
【0089】
変更手段48は、出力手段42により出力される兆候情報に基づき、溶接ロボット20の状態を変更する。これにより、溶接作業中において溶融池Mの垂れ落ちやハンピングが発生することを未然に防ぐ。溶接ロボット20の状態とは、溶接ロボット20が所定方向Y1に移動する速度、溶接ロボット20が有する溶接トーチ22の傾斜角であって所定方向Y1に対する傾斜角、溶接ロボット20が溶接ワイヤを送給する速度、又は、鋼材に形成される開先と溶接ロボット20が有する溶接トーチ22先端との距離である。
【0090】
具体的には、例えば、溶融池Mの垂れ落ちの兆候を検知した場合は、次のように状態を変更する。すなわち、溶接ロボット20の移動速度を上げる。溶接トーチ22の傾斜角を、溶接ロボット20のアーム部23によって次のように変更する。すなわち、例えば、溶接ロボット20の移動速度を維持しつつ又は上げつつ、溶接トーチ22の先端が進行方向の側に移動するよう、溶接トーチ22を傾斜させる。溶接トーチ22へ溶接ワイヤを送給する速度を下げる。鋼材に形成される開先と溶接ロボット20が有する溶接トーチ22先端との距離を大きくする。
【0091】
また、ハンピングの兆候を検知した場合は、次のように状態を変更する。すなわち、溶接ロボット20の移動速度を下げる。溶接トーチ22の傾斜角を、溶接ロボット20のアーム部23によって次のように変更する。すなわち、例えば、溶接ロボット20の移動速度を維持しつつ又は下げつつ、溶接トーチ22の先端が進行方向と反対の側に移動するよう、溶接トーチ22を傾斜させる。溶接トーチ22へ溶接ワイヤを送給する速度を上げる。鋼材に形成される開先と溶接ロボット20が有する溶接トーチ22先端との距離を小さくする。
【0092】
停止手段49は、出力手段42により出力される発生情報に基づき、溶接ロボット20を停止させる。これにより、停止手段49は、溶接作業中に溶接の欠陥が発生した場合に、溶接ロボット20が溶接作業を継続することを防ぐ。停止手段49は、例えば、溶接ロボット20の移動を停止させる。このとき、溶接トーチ22を鋼管Pの外周面から離れるように移動させてもよい。あるいは、停止手段49は、溶接ロボット20の電源を切り、機能を停止させることで、溶接ロボット20を停止させてもよい。
【0093】
処理部40の、記憶部45を除く各構成は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとメモリとを備え、予め構成された制御プログラムを実行することで、それぞれの機能を担保される。また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、処理部40を制御するプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0094】
コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
あるいは、記憶部45の領域を適宜分割することで、処理部40を制御するプログラムを記憶する領域を確保してもよい。あるいは、記憶部45と異なる記憶装置に、プログラムを記憶させてもよい。
【0095】
以上説明したように、本実施形態に係る溶接システム100によれば、撮像手段30が、溶融池Mを撮像して画像データを出力する。計測手段41が、出力された画像データに基づき、溶融池Mの長さL又は溶融池Mの幅Wを計測する。出力手段42が、計測された溶融池Mの長さL又は幅Wに基づき、溶接ロボット20による溶接の欠陥に関する欠陥情報を出力する。ここで、溶接作業中に硬化する前の溶融池Mが垂れ落ちると、溶融池Mの長さL又は幅Wが急激に小さくなる。あるいは、溶接部の溶融池Mが一連にならず、途中で途切れると、溶融池Mが形成されない部位が生じる。これらの事象に対し、上述の構成を備えることで、溶融池Mが硬化する前に垂れ落ちたり、途切れたりしたことを、溶接作業中に迅速に検出することができる。よって、より高い溶接品質に寄与することができる。
【0096】
また、撮像手段30は、溶接ロボット20の側面であって、溶接ロボット20が進行する所定方向Y1の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラ31を含む。つまり、反対側カメラ31は、溶接ロボット20の側面に取り付けられ、進行方向の反対側から、溶融池Mを撮像する。これにより、溶接ロボット20が溶接し、溶融池Mが生じた部位を、溶接ロボット20の移動に合わせて追いかけるように撮像することができる。よって、より正確に溶融池Mの幅W及び長さLを把握しやすくすることができる。
【0097】
また、撮像手段30は、溶接トーチ22に対する位置であって、溶接ロボット20が進行する所定方向Y1とは反対側の位置から、溶融池Mを撮像する。これにより、溶融池Mを、溶融池Mが生じた直後から撮像することができる。よって、硬化が始まる前の状態の溶融池Mを、より正確に撮像することができる。
【0098】
また、記憶制御手段44は、取得手段43により取得された建方治具Eの位置情報に基づき、溶接ロボット20の位置であって、反対側カメラ31で溶融池Mを撮像できない位置をログとして記憶部45に記憶させる。ここで、鋼材に設けられた建方治具Eの付近を溶接ロボット20によって溶接する時、撮像手段30の視界に建方治具Eが干渉して、溶融池Mの状態が撮像できなくなることがある。これに対して、溶融池Mを撮像できない位置をログとして記憶部45に記憶させることで、溶接作業後に当該位置の確認を容易に行うことができる。よって、溶接後の確認作業を効率的に行うことができる。
【0099】
また、計測手段41は、反対側カメラ31が溶融池Mを撮像して出力する画像データに基づき、長さL又は幅Wを計測するとともに、所定方向側カメラ32が溶融池Mを撮像して出力する画像データに基づき、幅Wを計測する。これにより、例えば、反対側カメラ31の視界に建方治具Eが干渉する等の理由により反対側カメラ31によって溶融池Mが撮像できなくなった場合であっても、所定方向側カメラ32によって少なくとも溶融池Mの幅Wを撮像することができる。このように、撮像手段30に補助的な役割を有する所定方向側カメラ32を備えることで、より撮像を安定して行うことができる。また、所定方向Y1側と反対方向Y2側との両側にカメラを設けることで、溶接ロボット20の進行方向が変わった場合に、いずれかのカメラによって少なくとも溶融池Mの幅Wを計測することができる。あるいは、所定方向側カメラ32と反対側カメラ31とが、それぞれ役割を交替することができる。よって、より撮像を安定して行うことができる。
【0100】
また、計測手段41は、反対側カメラ31が溶融池Mを撮像して出力する画像データに基づき、溶融池Mの長さL又は幅Wを計測する。加えて、検出手段46は、所定方向側カメラ32が溶融池Mを撮像して出力する画像データに基づき、溶接ロボット20による溶接のバーンスルーを検出する。このように、計測手段41による溶融池Mの長さL又は幅Wの計測に加えて、検出手段46によるバーンスルーの検出を同時に行うことで、より溶接不良を確実に検出しやすくすることができる。
【0101】
また、制御手段47は、溶接ロボット20が所定方向Y1に移動する場合には、溶接トーチ22に対する位置であって所定方向Y1とは反対側の位置から溶融池Mを撮像するように反対側カメラ31を制御し、溶接ロボット20が反転して所定方向Y1とは反対の方向に移動する場合に、溶接トーチ22に対する位置であって所定方向Y1の側の位置から溶融池Mを撮像するように所定方向側カメラ32を制御する。これにより、溶接ロボット20がいずれの側に移動した場合であっても、撮像手段30による溶融池Mの撮像を継続することができる。
【0102】
また、欠陥情報は、欠陥の兆候に関する兆候情報を含み、兆候情報は、計測手段41により計測される長さL又は幅Wの値に基づき、出力手段42により出力される。このように、溶接の欠陥情報に加えて、欠陥の兆候に関する兆候情報を出力手段42により出力することで、溶接の欠陥が発生することを未然に察知し、迅速に対応することができる。よって、溶接に品質をより向上することができる。
【0103】
また、出力手段42により出力される兆候情報に基づき、溶接ロボット20の状態を変更する変更手段48を更に備える。このように、溶接の欠陥の兆候に対して溶接ロボット20の状態を適宜変更することで、溶接の欠陥が発生することを未然に防ぐことができる。
【0104】
また、変更手段48によって変更される溶接ロボット20の状態は、溶接ロボット20が所定方向Y1に移動する速度と、溶接ロボット20が有する溶接トーチ22の傾斜角であって所定方向Y1に対する傾斜角と、溶接ロボット20がワイヤを送給する速度と、鋼材に形成される開先と溶接ロボット20が有する溶接トーチ22先端との距離と、を含む。
【0105】
溶接ロボット20の移動速度を変更することで、溶接トーチ22が溶接部における任意の位置に滞在する時間を調整することができる。溶接トーチ22の傾斜角を変更することで、溶接後の溶融池Mの形状への影響を調整することができる。ワイヤを供給する速度を変更することで、溶接後に溶融池Mとなる材質の量を調整することができる。開先と溶接トーチ22の先端との距離を変更することで、溶接部の温度を調整することができる。このように、溶接ロボット20を変更手段48によって適宜変更することで、溶接の欠陥が発生する可能性を最小限にすることができる。
【0106】
また、欠陥情報は、欠陥の発生に関する発生情報を含み、発生情報は、計測手段41により計測される溶融池Mの長さL又は幅Wの変化が所定閾値を上回ったことに基づき、出力手段42により出力される。このように、溶接の欠陥が発生したことを出力手段42によって出力することで、欠陥の発生を検知することができる。
【0107】
また、出力手段42により出力される発生情報に基づき、溶接ロボット20を停止させる停止手段49を更に備える。つまり、溶接の欠陥が発生したら、停止手段49によって溶接ロボット20を停止させる。このように、溶接の欠陥の発生に応じて溶接ロボット20を停止させることで、欠陥の発生の見落としを防ぐことができる。また、溶接の欠陥が発生した時点で適宜対応ができるようにすることで、溶接の欠陥が継続して発生することを防ぐことができる。
【0108】
また、第1閾値、第2閾値、及び、第3閾値の中から、所定閾値をユーザに選択させる。これにより、ユーザが必要とする溶接の条件に柔軟に対応することができる。よって、ユーザの利便性を向上することができる。
【0109】
また、出力手段42が欠陥情報を出力する際の位置に関するログを記憶部45に記憶させる記憶制御手段44、を更に備える。つまり、欠陥情報と、欠陥情報に係る溶接部の位置とを関連付けて記憶する。よって、溶接作業後に、溶接部におけるどの部位において欠陥又は欠陥の可能性があるかを容易に確認することができる。
【0110】
また、出力手段42が、計測手段41により計測される長さL又は幅Wのうち、出力手段42が欠陥情報を出力する際に基づいたものを示す情報を記憶部45に記憶させる記憶制御手段44、を更に備える。つまり、欠陥情報について、溶融池Mの長さL又は幅Wのいずれに問題があったかを記憶部45に記憶させる。このように、溶接の欠陥に係る情報の詳細を的確に把握することで、欠陥に対する対応を容易に決定することができる。
【0111】
また、計測手段41は、画像データの輝度に基づき、溶融池Mの長さL又は幅Wを計測する。つまり、溶融池Mを形成する溶融金属が、高温によって発光した状態である部位を、溶融池Mと認識する。そして、溶融池Mであると認識した部位の長さL又は幅Wを、計測手段41によって計測する。これにより、溶融池Mが硬化した後の部位を、計測する長さL又は幅Wから除外することができる。よって、溶接の欠陥が発生する可能性がある硬化前の溶融池Mのみを、計測の対象とすることができる。
【0112】
また、溶接トーチ22の位置は、撮像手段30の位置を変更することなく、変更される。つまり、撮像手段30は、溶接トーチ22の位置の変更に追従しない。溶融池Mの長さ又は幅Wの変化は、連続的な変化として計測される。このため、溶接トーチ22の位置が変わったことによって、撮像手段30と溶融池Mの相対位置が変化した場合でも、相対位置の変化の影響を受けずに垂れ落ちの検出を継続することができる。このため、撮像手段30が溶接トーチ22の位置の変更に追従しないことで、例えば、撮像手段30が溶接トーチ22の位置の変更に追従することで、撮像手段30が撮像した画像データにぶれが生じるといったことを防ぐことができる。つまり、撮像手段30の向きが変わることによって、計測手段41による計測に影響が生じることを防ぐことができる。
【0113】
また、鋼材は、曲線部Rを有する鋼管Pである。本発明に係る溶接システム100を、曲線部Rを有する鋼管Pに適用することで、上述の作用効果を顕著にもたらすことができる。
【0114】
また、溶接の欠陥とは、溶融池Mの垂れ落ち、又は、溶接ビードのハンピングである。溶融池Mの垂れ落ち又は溶接ビードのハンピングは、溶接の作業中に兆候を検知して適宜対応することで、未然に防ぐことができるものである。上述の構成によって上記欠陥を未然に防ぐことで、より効率的な溶接作業に寄与することができる。
【0115】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、カメラアーム33は、伸縮可能の構造を備えてもよい。
また、処理部は、溶接ロボット20の本体部の内部に配置されなくてもよい。例えば、外部装置に備えられ、本体部とケーブルを介して接続されてもよい。
【0116】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0117】
20 溶接ロボット
22 溶接トーチ
30 撮像手段
31 反対側カメラ
32 所定方向側カメラ
41 計測手段
42 出力手段
43 取得手段
44 記憶制御手段
45 記憶部
46 検出手段
47 制御手段
48 変更手段
49 停止手段
100 溶接システム
E 建方治具
M 溶融池
P 鋼管
R 曲線部
W 幅
WB 溶接ビード
Y1 所定方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材の上を所定方向に移動しつつ前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御する溶接システムであって、
前記溶接ロボットにより溶接される前記鋼材の溶融池を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記溶融池の長さ又は前記溶融池の幅を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅に基づき、前記溶接ロボットによる溶接の欠陥に関する欠陥情報を出力する出力手段と、
を備える、
ことを特徴とする溶接システム。
【請求項2】
前記撮像手段が赤外線カメラである場合を除く、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【請求項3】
前記鋼材に設けられる建方治具と、
前記建方治具の位置を示す建方治具位置情報を取得する取得手段と、
記憶制御手段と、
を更に備え、
前記撮像手段は、前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラ、を含み、
前記記憶制御手段は、前記取得手段により取得された前記建方治具の位置情報に基づき、前記溶接ロボットの位置であって、前記反対側カメラで前記溶融池を撮像できない位置、をログとして記憶部に記憶させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接システム。
【請求項4】
前記撮像手段は、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラと、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側の側面に設けられる所定方向側カメラと、
を含み、
前記計測手段は、前記反対側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記長さ又は前記幅を計測するとともに、前記所定方向側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記幅を計測する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項5】
検出手段、
を更に備え、
前記撮像手段は、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラと、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側の側面に設けられる所定方向側カメラと、
を含み、
前記計測手段は、前記反対側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記長さ又は前記幅を計測し、
前記検出手段は、前記所定方向側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記溶接ロボットによる溶接のバーンスルーを検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項6】
前記溶接ロボットに設けられる溶接トーチと、
制御手段と、
を更に備え、
前記撮像手段は、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラと、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側の側面に設けられる所定方向側カメラと、
を含み、
前記制御手段は、
前記溶接ロボットが前記所定方向に移動する場合には、前記溶接トーチに対する位置であって前記所定方向とは反対側の位置から前記溶融池を撮像するように前記反対側カメラを制御し、
前記溶接ロボットが反転して前記所定方向とは反対の方向に移動する場合に、前記溶接トーチに対する位置であって前記所定方向の側の位置から前記溶融池を撮像するように前記所定方向側カメラを制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項7】
前記欠陥情報は、前記欠陥の兆候に関する兆候情報を含み、
前記兆候情報は、前記計測手段により計測される前記長さに対する前記幅の比が、溶接ビードの垂れ落ちを検出するために用いられる所定基準閾値より、大きいと判定された場合に、前記出力手段により出力される、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項8】
前記欠陥情報は、前記欠陥の兆候に関する兆候情報を含み、
前記出力手段により出力される前記兆候情報に基づき、前記溶接ロボットの状態を変更する変更手段、
を更に備え、
前記状態は、前記溶接ロボットが有する溶接トーチの傾斜角であって前記所定方向に対する傾斜角、及び/又は、前記溶接ロボットがワイヤを送給する速度、を含み、
前記出力手段が前記兆候情報を出力したとき、前記変更手段は、前記溶接トーチの先端が前記溶接ロボットの進行方向の側、又は前記進行方向と反対の側に移動するよう、前記傾斜角を変更し、及び/又は、前記溶接ロボットが前記ワイヤを送給する速度を上げ、又は下げる、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項9】
前記欠陥情報は、前記欠陥の発生に関する発生情報を含み、
前記発生情報は、前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅の変化が所定閾値を上回ったことに基づき、前記出力手段により出力される、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項10】
前記出力手段により出力される前記発生情報に基づき、前記溶接ロボットを停止させる停止手段、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項9に記載の溶接システム。
【請求項11】
第1閾値、第2閾値、及び、第3閾値の中から、前記所定閾値をユーザに選択させる、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の溶接システム。
【請求項12】
前記溶接ロボットの位置であって、前記出力手段が前記欠陥情報を出力する際の位置、に関するログを記憶部に記憶させる記憶制御手段、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項13】
前記出力手段が、前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅のうち、前記出力手段が前記欠陥情報を出力する際に基づいたものを示す情報を記憶部に記憶させる記憶制御手段、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項14】
前記計測手段は、前記画像データの輝度に基づき、前記長さ又は前記幅を計測する、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項15】
前記溶接ロボットに設けられる溶接トーチ、
を更に備え、
前記溶接トーチの位置は、前記撮像手段の位置を変更することなく、変更される、
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項16】
前記鋼材は、曲線部を有する鋼管である、
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項17】
前記欠陥は、前記溶融池の垂れ落ち、又は、溶接ビードのハンピングである、
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の溶接システム。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材の上を所定方向に移動しつつ前記鋼材を溶接する溶接ロボット、を制御する溶接システムであって、
前記溶接ロボットにより溶接される前記鋼材の溶融池を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記溶融池の長さ又は前記溶融池の幅を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測される前記長さに対する前記幅の比に基づき、前記溶接ロボットによる溶接の欠陥に関する欠陥情報を出力する出力手段と、
を備え、
前記欠陥情報は、前記欠陥の兆候に関する兆候情報を含む、ことを特徴とする溶接システム。
【請求項2】
前記撮像手段が赤外線カメラである場合を除く、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【請求項3】
前記鋼材に設けられる建方治具と、
前記建方治具の位置を示す建方治具位置情報を取得する取得手段と、
記憶制御手段と、
を更に備え、
前記撮像手段は、前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラ、を含み、
前記記憶制御手段は、前記取得手段により取得された前記建方治具の位置情報に基づき、前記溶接ロボットの位置であって、前記反対側カメラで前記溶融池を撮像できない位置、をログとして記憶部に記憶させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接システム。
【請求項4】
前記撮像手段は、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラと、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側の側面に設けられる所定方向側カメラと、
を含み、
前記計測手段は、前記反対側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記長さ又は前記幅を計測するとともに、前記所定方向側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記幅を計測する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項5】
検出手段、
を更に備え、
前記撮像手段は、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラと、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側の側面に設けられる所定方向側カメラと、
を含み、
前記計測手段は、前記反対側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記長さ又は前記幅を計測し、
前記検出手段は、前記所定方向側カメラが前記溶融池を撮像して出力する画像データに基づき、前記溶接ロボットによる溶接のバーンスルーを検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項6】
前記溶接ロボットに設けられる溶接トーチと、
制御手段と、
を更に備え、
前記撮像手段は、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側とは反対側の側面に設けられる反対側カメラと、
前記溶接ロボットの側面であって前記所定方向の側の側面に設けられる所定方向側カメラと、
を含み、
前記制御手段は、
前記溶接ロボットが前記所定方向に移動する場合には、前記溶接トーチに対する位置であって前記所定方向とは反対側の位置から前記溶融池を撮像するように前記反対側カメラを制御し、
前記溶接ロボットが反転して前記所定方向とは反対の方向に移動する場合に、前記溶接トーチに対する位置であって前記所定方向の側の位置から前記溶融池を撮像するように前記所定方向側カメラを制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項7】
記兆候情報は、前記計測手段により計測される前記長さに対する前記幅の比が、溶接ビードの垂れ落ちを検出するために用いられる所定基準閾値より、大きいと判定された場合に、前記出力手段により出力される、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項8】
記出力手段により出力される前記兆候情報に基づき、前記溶接ロボットの状態を変更する変更手段、
を更に備え、
前記状態は、前記溶接ロボットが有する溶接トーチの傾斜角であって前記所定方向に対する傾斜角、及び/又は、前記溶接ロボットがワイヤを送給する速度、を含み、
前記出力手段が前記兆候情報を出力したとき、前記変更手段は、前記溶接トーチの先端が前記溶接ロボットの進行方向の側、又は前記進行方向と反対の側に移動するよう、前記傾斜角を変更し、及び/又は、前記溶接ロボットが前記ワイヤを送給する速度を上げ、又は下げる、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項9】
前記欠陥情報は、前記欠陥の発生に関する発生情報を含み、
前記発生情報は、前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅の変化が所定閾値を上回ったことに基づき、前記出力手段により出力される、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項10】
前記出力手段により出力される前記発生情報に基づき、前記溶接ロボットを停止させる停止手段、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項9に記載の溶接システム。
【請求項11】
第1閾値、第2閾値、及び、第3閾値の中から、前記所定閾値をユーザに選択させる、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の溶接システム。
【請求項12】
前記溶接ロボットの位置であって、前記出力手段が前記欠陥情報を出力する際の位置、に関するログを記憶部に記憶させる記憶制御手段、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項13】
前記出力手段が、前記計測手段により計測される前記長さ又は前記幅のうち、前記出力手段が前記欠陥情報を出力する際に基づいたものを示す情報を記憶部に記憶させる記憶制御手段、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項14】
前記計測手段は、前記画像データの輝度に基づき、前記長さ又は前記幅を計測する、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項15】
前記溶接ロボットに設けられる溶接トーチ、
を更に備え、
前記溶接トーチの位置は、前記撮像手段の位置を変更することなく、変更される、
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項16】
前記鋼材は、曲線部を有する鋼管である、
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項17】
前記欠陥は、前記溶融池の垂れ落ち、又は、溶接ビードのハンピングである、
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の溶接システム。