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特開2023-135212はんだ付け装置、太陽電池モジュール、及び太陽電池モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135212
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】はんだ付け装置、太陽電池モジュール、及び太陽電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/02 20060101AFI20230921BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230921BHJP
   H01L 31/05 20140101ALN20230921BHJP
【FI】
B23K3/02 S
B23K1/00 330E
H01L31/04 570
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040306
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 武彦
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151DA03
5F151EA05
5F151EA19
5F151FA02
5F151FA04
5F151FA06
5F151JA02
5F251DA03
5F251EA05
5F251EA19
5F251FA02
5F251FA04
5F251FA06
5F251JA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、はんだの接着不良を抑制できるはんだ付け装置、はんだ層の接着不良があっても導電経路を確保できる太陽電池モジュール、及び従来に比べてはんだの接着不良が生じにくい太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】はんだを融解して太陽電池と配線部材を接着させるものであり、長尺状の加熱部材と、加熱部材を鉛直方向に昇降させる昇降機構を有し、加熱部材は、複数の加熱接触部と、複数の凹部を有し、複数の凹部は、加熱部材の長手方向に間隔を空けて形成されており、複数の加熱接触部は、はんだを加熱可能であって、かつ、複数の凹部によって区画されている構成とする。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだを融解して太陽電池と配線部材を接着させるはんだ付け装置であって、
長尺状の加熱部材と、前記加熱部材を鉛直方向に昇降させる昇降機構を有し、
前記加熱部材は、複数の加熱接触部と、複数の凹部を有し、
前記複数の凹部は、前記加熱部材の長手方向に間隔を空けて形成されており、
前記複数の加熱接触部は、前記はんだを加熱可能であって、かつ、前記複数の凹部によって区画されている、はんだ付け装置。
【請求項2】
前記加熱部材の長手方向に隣接する加熱接触部の間隔は、1.5mm以上3.5mm以下である、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項3】
前記複数の加熱接触部は、長手方向において等間隔に配されている、請求項1又は2に記載のはんだ付け装置。
【請求項4】
操作部を有し、
前記昇降機構は、前記操作部を操作することで前記加熱部材を昇降可能であり、
前記昇降機構は、前記加熱部材が上昇する方向に付勢する付勢部材を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のはんだ付け装置。
【請求項5】
太陽電池と、配線部材と、はんだ層を有し、
前記太陽電池は、バスバー電極部を有し、
前記バスバー電極部は、所定の方向に延びており、
前記配線部材は、平面視したときに、前記バスバー電極部と重畳しており、
前記バスバー電極部と前記配線部材が前記はんだ層によって接着された接着領域と、前記バスバー電極部と前記配線部材が前記はんだ層によって接着されていない非接着領域を有し、
前記配線部材は、前記非接着領域において、前記太陽電池と離反する方向に膨らんだ膨張部を複数備えており、
前記複数の膨張部は、前記所定の方向に間隔を空けて配されている、太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記太陽電池は、一辺を有し、
前記バスバー電極部は、前記一辺に沿って設けられ、かつ前記一辺との最大距離が160mm以下である、請求項5に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載のはんだ付け装置を使用して太陽電池のバスバー電極部に配線部材を接着する太陽電池モジュールの製造方法であって、
表面にはんだ層が被覆された配線部材を太陽電池のバスバー電極部上に載置する工程と、
前記配線部材に前記加熱接触部を近接又は接触させて前記配線部材の表面のはんだ層の一部を融解させる工程を含む、太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け装置、太陽電池モジュール、及び太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から太陽電池は、複数の太陽電池セルを並べて直列接続した太陽電池ストリングを備えた太陽電池モジュールが知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1の太陽電池モジュールでは、隣接する太陽電池セルのうち、一方の太陽電池セルの端部側の部分を他方の太陽電池セルの端部側の部分にオーバーラップさせ、その部分でバスバー電極部同士を銀ペーストで接着している。こうすることで、太陽電池セルの充填率を向上させ、モジュール効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-25933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各太陽電池ストリング間で接続したり、各太陽電池ストリングから電気を取り出したりするためには各太陽電池ストリングの端部にタブ線を接続する必要がある。
そこで、本発明者は、特許文献1の太陽電池モジュールに倣って太陽電池ストリングの端部にタブ線を接続することを試みた。具体的には、本発明者は、特許文献1の太陽電池ストリングのバスバー電極が太陽電池セルの並設方向に対する直交方向にバスバー電極部が延びている利点を生かして、タブ線をバスバー電極部の延び方向に沿ってバスバー電極部の全面にはんだで接着した太陽電池モジュールを試作した。このような構造とすることで大きな接着面積を確保できるので、従来に比べて接着強度が向上すると考えた。
【0005】
しかしながら、試作した太陽電池モジュールでは、熱膨張係数の差によって配線が膨張したものや、配線部材と太陽電池セルのバスバー電極部間に空間ができ、はんだの接着不良が生じるものがあった。
【0006】
そこで、本発明は、はんだの接着不良を抑制できるはんだ付け装置、はんだ層の接着不良があっても導電経路を確保できる太陽電池モジュール、及び従来に比べてはんだの接着不良が生じにくい太陽電池モジュールの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、はんだを融解して太陽電池と配線部材を接着させるはんだ付け装置であって、長尺状の加熱部材と、前記加熱部材を鉛直方向に昇降させる昇降機構を有し、前記加熱部材は、複数の加熱接触部と、複数の凹部を有し、前記複数の凹部は、前記加熱部材の長手方向に間隔を空けて形成されており、前記複数の加熱接触部は、前記はんだを加熱可能であって、かつ、前記複数の凹部によって区画されている、はんだ付け装置である。
【0008】
本様相によれば、加熱部材が長尺状であり、配線部材を一度にはんだ付けすることができるので、配線部材や太陽電池に加わる熱量を管理しやすい。
本様相によれば、加熱接触部の間に凹部が設けられているので、はんだの加熱により配線部材が熱膨張しても配線部材が凹部に逃げるので、接着部分において配線部材に浮きが生じにくく、はんだ加熱時の配線部材の熱膨張に伴うはんだの接着不良を抑制できる。
【0009】
好ましい様相は、前記加熱部材の長手方向に隣接する加熱接触部の間隔は、1.5mm以上3.5mm以下である。
【0010】
本様相によれば、配線部材の応力を緩和しつつ、十分なはんだによる接着強度を確保できる。
【0011】
好ましい様相は、前記複数の加熱接触部は、長手方向において等間隔に配されている。
【0012】
本様相によれば、配線部材と太陽電池がはんだによって均等に接着できるため、配線部材の応力をさらに緩和でき、より高い接着強度を確保できる。
【0013】
好ましい様相は、操作部を有し、前記昇降機構は、前記操作部を操作することで前記加熱部材を昇降可能であり、前記昇降機構は、前記加熱部材が上昇する方向に付勢する付勢部材を備える。
【0014】
本様相によれば、付勢部材によって加熱部材が上昇する方向に付勢されているため、操作部を操作し、作業者が加熱部材を下降させる際の加熱接触部の押圧力を調整しやすく、過剰に配線部材を押圧し、太陽電池に割れが生じることを防止できる。
【0015】
本発明の一つの様相は、太陽電池と、配線部材と、はんだ層を有し、前記太陽電池は、バスバー電極部を有し、前記バスバー電極部は、所定の方向に延びており、前記配線部材は、平面視したときに、前記バスバー電極部と重畳しており、前記バスバー電極部と前記配線部材が前記はんだ層によって接着された接着領域と、前記バスバー電極部と前記配線部材が前記はんだ層によって接着されていない非接着領域を有し、前記配線部材は、前記非接着領域において、前記太陽電池と離反する方向に膨らんだ膨張部を複数備えており、前記複数の膨張部は、前記所定の方向に間隔を空けて配されている、太陽電池モジュールである。
【0016】
本様相によれば、配線部材がバスバー電極部の複数個所ではんだ層により接着されているので、はんだ層の接着不良があっても導電経路を確保できる。
【0017】
好ましい様相は、前記太陽電池は、一辺を有し、前記バスバー電極部は、前記一辺に沿って設けられ、かつ前記一辺との最大距離が160mm以下である。
【0018】
本様相によれば、バスバー電極部と一辺の距離が近いので、配線部材が太陽電池の受光の妨げになりにくい。
【0019】
本発明の一つの様相は、上記したはんだ付け装置を使用して太陽電池のバスバー電極部に配線部材を接着する太陽電池モジュールの製造方法であって、表面にはんだ層が被覆された配線部材を太陽電池のバスバー電極部上に載置する工程と、前記配線部材に前記加熱接触部を近接又は接触させて前記配線部材の表面のはんだ層の一部を融解させる工程を含む、太陽電池モジュールの製造方法である。
【0020】
本様相によれば、従来に比べてはんだ層の接着不良が生じにくい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のはんだ付け装置によれば、はんだの接着不良を抑制できる。
本発明の太陽電池モジュールによれば、はんだ層の接着不良があっても導電経路を確保できる。
本発明の太陽電池モジュールの製造方法によれば、従来に比べてはんだの接着不良が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態のはんだ付け装置の自然状態の右側面図である。
図2図1のはんだ付け装置の自然状態の左側面図である。
図3図1のはんだ付け装置の自然状態の正面図である。
図4図1の加熱部材の説明図であり、(a)は加熱部材の斜視図であり、(b)は加熱部材の正面図である。
図5】本発明の第1実施形態の太陽電池モジュールの説明図であり、(a)は太陽電池モジュールを模式的に示した斜視図であり、(b)は(a)のA-A断面図であり、理解を容易にするために第1封止シート及び第2封止シートのハッチングを省略している。
図6図5(a)の太陽電池モジュールの要部の断面斜視図であり、理解を容易にするために第1封止シート、第2封止シート、及び第2保護部材を省略している。
図7図6の太陽電池モジュールの要部の平面図である。
図8図7の太陽電池モジュールの要部の断面図であり、(a)は図7のB-B断面の端面図であり、(b)は図7のC-C断面図である。
図9図6の太陽電池セルの説明図であり、(a)は第1主面側からみた平面図であり、(b)は第2主面側からみた平面図である。
図10図1のはんだ付け装置において操作ハンドル部を操作し、操作ハンドル部を下げたときのはんだ付け装置の側面図である。
図11図1のはんだ付け装置によってはんだ付けする際のはんだ付け装置と太陽電池セルと配線部材の関係を表す説明図であり、(a)ははんだ付け直前の要部の断面図であり、(b)ははんだ付けの中途の要部の断面図である。
図12図1のはんだ付け装置によってはんだ付けする際のはんだ付け装置と太陽電池セルと配線部材の関係を表す説明図であり、(a)ははんだ付けした直後の要部の断面図であり、(b)は加熱部材を離したときの要部の斜視図である。
図13】本発明の他の実施形態の加熱部材の説明図であり、(a)は凹部が三角形状の場合の正面図であり、(b)は凹部が半円状の場合の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、特に断りのない限り、はんだ付け装置1の上下方向の位置関係については、図1のような作業者が操作ハンドル部10を操作していない無負荷状態、すなわち、自然状態を基準とする。
【0024】
本発明の第1実施形態のはんだ付け装置1は、はんだによって太陽電池セル110の集電極121,122に接続配線部材111を接着するものである。
はんだ付け装置1は、図1図10のように、昇降機構によって加熱部材12が鉛直方向に昇降する昇降式のはんだこて装置であり、作業者が操作ハンドル部10を操作してはんだ付けを行う半自動型のはんだこて装置である。
はんだ付け装置1は、図1図3のように、ベース部2と、主軸部3と、スタンド部5と、付勢部材6と、位置固定部7と、ガイド軸部8と、操作ハンドル部10と、支持部11と、加熱部材12を備えている。
そして、本実施形態のはんだ付け装置1は、加熱部材12に主な特徴の一つを有している。以下、このことを踏まえて、各構成部材について説明する。
【0025】
(ベース部2)
ベース部2は、はんだ付け装置1の土台を形成する部位であり、ワークである太陽電池セル110を載置する載置部20を備えている。
【0026】
(主軸部3)
主軸部3は、ベース部2から立設(直立)し、上下方向に延びる棒状のコラムである。
主軸部3は、図1図2のように、上下方向の中間部に第1角度調整部25を備えている。
主軸部3は、第1角度調整部25を操作することで、主軸部3がベース部2に対して周方向に相対的に回転し、ベース部2の載置部20上の太陽電池セル110に対する加熱部材12の相対角度を調整することが可能となっている。
【0027】
(スタンド部5)
スタンド部5は、支持部11及び加熱部材12を主軸部3に対して固定するヘッドであり、図2のようにガイド軸部8の上下方向における位置を調整するガイド用位置調整部30を備えている。
ガイド用位置調整部30は、操作することでガイド軸部8のスタンド部5に対する相対位置を調整することが可能となっている。
本実施形態のガイド用位置調整部30は、蝶ボルトであり、緩めることでガイド軸部8のスタンド部5に対する上下方向の相対位置を調整可能にし、締めることでガイド軸部8を締め付けてガイド軸部8のスタンド部5に対する上下方向の相対位置を固定可能となっている。
【0028】
(付勢部材6)
付勢部材6は、弾性を有する弾性部材であり、図1図2のように、主軸部3を囲むように設けられ、スタンド部5を主軸部3に沿って上方側に向かって付勢する部材である。
付勢部材6は、具体期には圧縮ばねであり、主軸部3の周囲に螺旋状に巻かれている。すなわち、付勢部材6は、スタンド部5から圧縮力が加わると、弾性変形し、その復元力によってスタンド部5を上方側に向かって付勢することが可能となっている。
【0029】
(位置固定部7)
位置固定部7は、スタンド部5の上限位置を調整する部位であり、スタンド部5の一部と係合し、スタンド部5の上方への移動を規制する部位である。
位置固定部7は、図1のように、位置固定部7の上下方向の位置を調整する位置調整部31を備えている。
本実施形態の位置調整部31は、クランプスクリューであり、締めることで位置固定部7の主軸部3の延び方向(上下方向)への移動を制限し、緩めることで位置固定部7の主軸部3の延び方向(上下方向)への移動が可能となっている。
【0030】
(ガイド軸部8)
ガイド軸部8は、スタンド部5の移動方向を上下方向に規制する規制部材であり、図1のように、主軸部3の軸方向と平行に延びた棒状のストップバーである。
【0031】
(操作ハンドル部10)
操作ハンドル部10は、作業者が操作する操作部であり、ガイド軸部8に対して傾斜した棒状体である。
操作ハンドル部10は、図1のように、リンク機構32を介してスタンド部5と位置固定部7に接続されており、操作ハンドル部10の回転力を、リンク機構32を介してスタンド部5の上下方向の移動力に変換可能となっている。
【0032】
(支持部11)
支持部11は、図1のように、スタンド部5の下部に設けられ、加熱部材12を支持する部位である。
支持部11は、支持シャフト部35と、支持金具部36と、第2角度調整部37を備えている。
第2角度調整部37は、支持シャフト部35の周方向に対する支持金具部36の角度を調整し、ベース部2の載置部20上の太陽電池セル110に対する加熱部材12の相対角度を調整する部位である。
本実施形態の第2角度調整部37は、支持シャフト部35を挟むものであり、緩めることによって支持シャフト部35を周方向に移動可能とし、締めることで支持シャフト部35の周方向の移動を制限可能となっている。
支持部11は、第2角度調整部37を操作することで、支持部11がスタンド部5に対して回転可能となり、回転させることで太陽電池セル110に対する加熱部材12の角度を調整することが可能となっている。
【0033】
(加熱部材12)
加熱部材12は、接続配線部材111の表面のはんだ層156を加熱する加熱ヒーターである。
加熱部材12は、図4(a)のように、所定の方向(長手方向A1)に矩形波状に延びた長尺状の部材であり、正面視したときに、凸部と凹部が交互に繰り返した凹凸形状をしている。
本実施形態の加熱部材12は、図4(b)のように、正面視したときに矩形波状の凹凸形状となっている。
加熱部材12は,図4のように、複数の加熱接触部50と、凹部51を備えている。
【0034】
加熱接触部50は、凹部51の底部に対して下方側に高さをもって突出した凸部であって、加熱部材12の延び方向(短手方向B1)に対する直交方向に延びた凸条であり、正面視したときに四角形状となっている。
加熱接触部50は、操作ハンドル部10を操作したときに、太陽電池セル110の接続配線部材111と接触し、接続配線部材111の表面のはんだ層156を加熱し、融解させる部位である。
加熱接触部50は、図4(a)のように、加熱部材12の長手方向A1において間隔を空けて配されており、本実施形態では等間隔に配されている。
図4(b)に示される加熱接触部50の幅D1は、10mm以上15mm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、接着時において接続配線部材111の応力を緩和しつつ、十分なはんだ層156による接着強度を確保できる。
【0035】
凹部51は、加熱接触部50に対して上方側に深さをもって窪んだ部位であり、正面視したときに四角形状となっている。
凹部51は、加熱接触部50の境界部分に設けられ、隣接する加熱接触部50を区画する部位であり、加熱部材12の延び方向に対する直交方向(短手方向B1)に延びた凹溝である。
凹部51は、加熱部材12の長手方向A1に間隔を空けて配されており、本実施形態では等間隔に配されている。
図4(b)に示される凹部51の幅D2は、1.5mm以上3.5mm以下であることが好ましい。
【0036】
(太陽電池モジュール100)
太陽電池モジュール100は、図5(a)のように、一又は複数の太陽電池ストリング101(101a~101f)と、引出配線部材102(102a~102c)と、第1保護部材103と、第2保護部材105と、第1封止シート106と、第2封止シート107を備えている。
太陽電池ストリング101は、図5(b)のように、複数の太陽電池セル110と、接続配線部材111と、導電性接着剤112を備えている。
【0037】
(太陽電池セル110)
太陽電池セル110は、光電変換基板120と、第1集電極121と、第2集電極122を備えている。
【0038】
光電変換基板120は、図5のように、第1主面125と、第2主面126を有した板状基板であり、光電変換部130の第1主面125側に第1透明電極層131が積層され、第2主面126側に第2透明電極層132が積層された透明導電性基板である。
【0039】
光電変換部130は、PN接合を有し、光エネルギーを電気エネルギーに変換する部位である。
【0040】
透明電極層131,132は、透明性と導電性を有する透明導電層であり、具体的には、酸化インジウム錫(ITO)やタングステンドープ酸化インジウム(IWO)などの透明導電性酸化物で構成された透明導電性酸化物層である。
【0041】
第1集電極121は、第2集電極122と対をなし、第2集電極122とともに光電変換基板120で光電変換された電気エネルギーを光電変換基板120から取り出す取出電極である。
集電極121,122は、図9のように、光電変換基板120の両主面125,126上に部分的に形成されたものであり、主に金属電極層で構成されている。
金属電極層は、透明電極層131,132よりも導電性を有する金属層である。
金属電極層は、透明電極層131,132よりも導電率が高いものであれば特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル、パラジウム等で構成することができる。
【0042】
また、第1集電極121は、図9(a)のように、第1主面125側から光電変換基板120を平面視したときに、第1バスバー電極部150aと、第1フィンガー電極部151aで構成されている。
第2集電極122は、図9(b)のように、第2主面126側から光電変換基板120を平面視したときに、第2バスバー電極部150bと、第2フィンガー電極部151bで構成されている。
バスバー電極部150a,150bは、縦方向Y(並設方向)に幅をもち、横方向Xに延びる部位である。
すなわち、バスバー電極部150a,150bは、少なくとも一部が横辺に沿って延びており、最近接する横辺(一辺)との最大距離が160mm以下であることが好ましい。
また、バスバー電極部150a,150bは、最近接する横辺との最大距離が当該横辺の長さの1/20以上1/3以下であることが好ましい。
これらの範囲であれば、バスバー電極部150a,150bが端に寄っているので、接続配線部材111が太陽電池セル110の受光の妨げになりにくい。
【0043】
フィンガー電極部151a,151bは、図9のように、バスバー電極部150a,150bの中間部から櫛歯状に延びる部位である。
フィンガー電極部151a,151bは、バスバー電極部150a,150bの延び方向(横方向X)に対する交差方向に延びており、本実施形態では、バスバー電極部150a,150bの延び方向に対する直交方向(縦方向Y)に延びている。すなわち、フィンガー電極部151a,151bは、横方向Xに幅をもち、縦方向Yに延びている。
【0044】
(接続配線部材111)
接続配線部材111は、太陽電池セル110から電気を取り出す取出配線である。
接続配線部材111は、図7のように、横方向Xに延びた梯子状の梯子配線であり、図8(b)のように、金属製の芯体部155の表面にはんだ層156がコーティングされたはんだ被覆配線である。
接続配線部材111は、図6図7のように、第1配線部160と、第2配線部161と、接続配線部162a~162eを備えている。
第1配線部160は、バスバー電極部150a,150bの大部分の延び方向(横方向X)に延びている。
第1配線部160は、図8(a)のように、ベース部163a~163fと、複数の膨張部165a~165eを備えている。
ベース部163a~163fは、はんだ層156によってバスバー電極部150a(150b)と接続される部位である。
膨張部165a~165eは、熱膨張によってベース部163a~163fに対して膨張した部位であり、ベース部163a~163fに対して隆起した隆起部である。
膨張部165a~165eは、バスバー電極部150a(150b)から浮き上がっており、バスバー電極部150a(150b)との間に空間が形成されている。
膨張部165a~165eは、密度がベース部163a~163fの密度よりも小さい。
【0045】
第2配線部161は、図7のように、太陽電池セル110の並設方向(太陽電池ストリング101の延び方向、縦方向Y)において第1配線部160と間隔を空けて平行に延びている。
接続配線部162a~162eは、第1配線部160から交差して延び、第1配線部160の中間部と第2配線部161の中間部を接続する部位である。
各接続配線部162a~162eは、太陽電池セル110の並設方向(縦方向Y)に延びており、それぞれ平行となっている。
【0046】
(導電性接着剤112)
導電性接着剤112は、導電性と接着性を有するものであり、図5(b)のように隣接する太陽電池セル110,110のバスバー電極部150a,150bを接着する接着剤である。
導電性接着剤112は、導電性と接着性を有するものであれば特に限定されるものではない。導電性接着剤112としては、例えば、金属微粒子を含む樹脂や金属ペーストが使用できる。
【0047】
(引出配線部材102)
引出配線部材102(102a~102c)は、接続配線部材111と接続され、太陽電池ストリング101から外部に電力を引き出す配線である。
引出配線部材102a,102bは、図5(a)のように、一方の端部側が接続配線部材111と接続され、接続配線部材111とは反対側の端部側が図示しない端子ボックスと接続されている。引出配線部材102cは、接続配線部材111,111に跨って設けられ、接続配線部材111,111同士を電気的に接続している。
すなわち、引出配線部材102cは、各太陽電池ストリング101a~101c(101d~101f)を電気的に並列接続しており、太陽電池ストリング101a~101cと太陽電池ストリング101d~101fを電気的に直列接続している。
【0048】
(保護部材103,105)
第1保護部材103は、図5(b)のように、太陽電池モジュール100の第1主面170を構成し、各太陽電池ストリング101a~101fの第1主面170側を保護する部材である。
第1保護部材103は、透明性を有する透明保護材であり、例えば、ガラス基板や透明樹脂フィルムなどを使用できる。
第2保護部材105は、太陽電池モジュール100の第2主面171を構成し、太陽電池ストリング101a~101fの第2主面171側を保護する部材である。
第2保護部材105は、ガラス基板や透明樹脂フィルムなどの透明保護材や、金属フィルムなどの光反射保護材、黒色樹脂フィルムなどの光吸収保護材などが使用できる。
【0049】
(封止シート106,107)
封止シート106,107は、透明性と封止性を有した透明封止シートであり、太陽電池ストリング101(101a~101f)を挟んで保護部材103,105を接着するものである。
封止シート106,107は、透明性と封止性と接着性を有していれば、特に限定されるものではない。封止シート106,107としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)シートやオレフィンシート、EVA(エチレンビニルアセテート)シートなどの透明樹脂シートが使用できる。
【0050】
ここで、太陽電池モジュール100の各部位の位置関係について説明する。
【0051】
太陽電池モジュール100は、図5(a)のように、複数の太陽電池ストリング101a~101fが横方向Xに並設されており、太陽電池ストリング101a~101cと太陽電池ストリング101d~101fは、裏表逆転している。
太陽電池ストリング101a~101fは、図5(b)のように、封止シート106,107によって挟まれており、さらに封止シート106,107の外側から保護部材103,105によって挟まれている。
太陽電池ストリング101は、平面視したときに、縦方向Yにおいて隣接する太陽電池セル110,110に重なり部分があり、当該重なり部分に一方の太陽電池セル110の第1バスバー電極部150aと他方の太陽電池セル110の第2バスバー電極部150bが位置している。そして、第1バスバー電極部150aと第2バスバー電極部150bは、導電性接着剤112によって接着されている。
縦方向Yの端部に位置する太陽電池セル110,110は、図8(b)のように、バスバー電極部150a,150bに接続配線部材111,111の第1配線部160,160がそれぞれ接続されている。
接続配線部材111の第2配線部161には、引出配線部材102が接続されている。
【0052】
続いて、本実施形態の太陽電池モジュール100の製造方法について説明する。
【0053】
本実施形態の太陽電池モジュール100の製造方法は、主な工程として、太陽電池セル形成工程と、配線接続工程と、ストリング形成工程と、引出配線工程と、封止工程を含んでいる。
【0054】
まず、複数の太陽電池セル110を形成する(太陽電池セル形成工程)。
【0055】
続いて、本実施形態の主な特徴の一つであり、太陽電池セル110に接続配線部材111を接続する配線接続工程に移行する。
【0056】
配線接続工程では、まず、はんだ付け装置1のベース部2の載置部20上に太陽電池セル110を載置する。
【0057】
このとき、図11(a)のように、加熱部材12の真下に太陽電池セル110のバスバー電極部150a(150b)が位置するように太陽電池セル110を配置する。
【0058】
続いて、必要に応じて、角度調整部25,37によって太陽電池セル110に対する加熱部材12の角度を調整する。
【0059】
このとき、加熱部材12の延び方向(長手方向A1)が太陽電池セル110のバスバー電極部150a(150b)の延び方向(横方向X)と平行となるように加熱部材12の角度を調節する。
【0060】
加熱部材12の位置が鉛直方向の投影面上に太陽電池セル110のバスバー電極部150a(150b)が位置するように位置合わせが完了すると、図10のように、作業者が付勢部材6の付勢力に逆らって操作ハンドル部10を下方側に下げる。
そうすると、リンク機構32によって加熱部材12が下降し、図11(b)のように、加熱部材12の各加熱接触部50が接続配線部材111に接触し、接続配線部材111の表面のはんだ層156が融解し、太陽電池セル110のバスバー電極部150a(150b)と接続配線部材111がはんだ層156によって接着される(配線接続工程)。
【0061】
このときの加熱接触部50の温度は、はんだ層156を融解可能な温度であり、150℃以上300℃以下であることが好ましく、200℃以上250℃以下であることがより好ましい。
操作ハンドル部10を操作したときの加熱接触部50の太陽電池セル110への圧力は、30N以上40N以下であることが好ましい。
加熱時間は、1秒以上5秒以下であることが好ましい。
太陽電池セル110の表側と裏側で加熱時間が相違していてもよい。
【0062】
また、このとき、太陽電池セル110のバスバー電極部150a(150b)には、各加熱接触部50が接触する部分と接触しない部分があり、バスバー電極部150a(150b)と接続配線部材111がはんだ層156によって接着される接着領域180と、バスバー電極部150a(150b)と接続配線部材111がはんだ層156によって接着されない非接着領域181が形成される。そして、接続配線部材111には、図12のように、非接着領域181において太陽電池セル110と離反する方向に膨らんだ膨張部165a~165eが複数形成される。
【0063】
配線接続工程が終了し、太陽電池セル110に接続配線部材111が接着されると、太陽電池セル110を縦方向Yに並べていき、導電性接着剤112によって隣接する太陽電池セル110,110のバスバー電極部150a,150bを接続して、各太陽電池セル110が電気的に直列接続し、太陽電池ストリング101を形成する(ストリング形成工程)。
【0064】
続いて、太陽電池ストリング101を横方向Xに並べていき、第2配線部161に引出配線部材102をはんだ等の導電性接着剤によって接着し、接続配線部材111に引出配線部材102を接続する(引出配線工程)。
【0065】
続いて、引出配線部材102が接続された太陽電池ストリング101を封止シート106,107及び保護部材103,105で挟み、熱圧着することで各太陽電池セル110を封止する(封止工程)。
【0066】
その後、必要に応じて端子ボックス等を取り付けて太陽電池モジュール100が完成する。
【0067】
本実施形態のはんだ付け装置1によれば、加熱部材12が長手方向A1に延びており、接続配線部材111を一度にはんだ付けすることができるので、接続配線部材111や太陽電池セル110に加わる熱量を管理しやすい。
【0068】
本実施形態のはんだ付け装置1によれば、加熱部材12の加熱接触部50の間に凹部51が形成されているため、はんだ層156の加熱により接続配線部材111が熱膨張しても接続配線部材111が凹部51に逃げるので、接着部分において接続配線部材111に浮きが生じにくく、はんだ層156を加熱する際の接続配線部材111の熱膨張に伴うはんだ層156の接着不良を抑制できる。
【0069】
本実施形態のはんだ付け装置1によれば、加熱接触部50を水平姿勢のまま昇降できるので、均一に加熱でき、太陽電池セル110や接続配線部材111に加わる熱量を管理しやすい。
【0070】
本実施形態のはんだ付け装置1によれば、付勢部材6によって加熱部材12が上昇する方向に向かって付勢されているため、加熱接触部50が太陽電池セル110に加える押圧力を調整しやすく、過剰な圧力が太陽電池セル110に加わることを防止できる。その結果、太陽電池セル110の割れの発生を抑制できる。
【0071】
このように、本実施形態のはんだ付け装置1によれば、はんだ層156の加熱温度に依存する未着や、熱量に依存するはんだ層156とバスバー電極部150a(150b)との間の界面破壊、加熱接触部50からの圧力に依存するセル割れのそれぞれの不良を抑制できる。その結果、太陽電池モジュール100の発電量の低下や負荷変動による断線を抑制でき、高品質の太陽電池モジュール100を製造できる。
【0072】
本実施形態の太陽電池モジュール100によれば、接続配線部材111がバスバー電極部150a(150b)の複数個所ではんだ層156により接着されているので、はんだ層156の一部分の接着不良があっても他の部分による導電経路を確保できる。
【0073】
上記した実施形態では、凹部51は、正面視したときに四角形状であったが、本発明はこれに限定されるものではない。凹部51の形状は、例えば、図13(a)のように正面視したときに三角形状や五角形状、六角形状などの多角形状であってもよいし、図13(b)のように半円形状や半楕円状であってもよい。
【0074】
上記した実施形態では、凹部51は、横方向Xのみに間隔を空けて並設されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。凹部51は、縦方向Yにも間隔を空けて並設されていてもよい。
【0075】
上記した実施形態では、配線接続工程をストリング形成工程の前に実施したが、本発明はこれに限定されるものではない。配線接続工程をストリング形成工程後に実施してもよいし、引出配線工程後に実施してもよい。
【0076】
上記した実施形態では、バスバー電極部150a,150bと接続配線部材111を接着するはんだとして接続配線部材111の表面に設けられたはんだ層156を使用したが、本発明はこれに限定されるものではない。接続配線部材111とは独立したはんだを使用してもよい。はんだの種類は、特に限定されるものではなく、例えば、クリームはんだやはんだボールなどが使用できる。
【0077】
上記した実施形態では、接続配線部材111に加熱接触部50を直接接触させて接続配線部材111の表面のはんだ層156の一部を融解したが、本発明はこれに限定されるものではない。加熱接触部50を接続配線部材111の表面のはんだ層156に近接させてはんだ層156を融解させてもよいし、加熱接触部50を伝熱体を介して間接的に接続配線部材111の表面のはんだ層156を融解させてもよい
【0078】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0079】
1 はんだ付け装置
6 付勢部材
10 操作ハンドル部(操作部)
12 加熱部材
50 加熱接触部
51 凹部
100 太陽電池モジュール
110 太陽電池セル(太陽電池)
111 接続配線部材(配線部材)
150a 第1バスバー電極部(バスバー電極部)
150b 第2バスバー電極部(バスバー電極部)
156 はんだ層(はんだ)
165a~165e 膨張部
180 接着領域
181 非接着領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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