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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135222
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】晶析システムおよび晶析方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 9/02 20060101AFI20230921BHJP
   B01F 27/94 20220101ALI20230921BHJP
   B01F 25/51 20220101ALI20230921BHJP
   B01F 23/43 20220101ALI20230921BHJP
   B01F 23/45 20220101ALI20230921BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B01D9/02 603D
B01D9/02 603B
B01D9/02 604
B01D9/02 605
B01D9/02 625B
B01D9/02 602E
B01D9/02 625D
B01F27/94
B01F25/51
B01F23/43
B01F23/45
B01J13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040318
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】504298291
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】津崎 裕也
【テーマコード(参考)】
4G035
4G065
4G078
【Fターム(参考)】
4G035AB38
4G035AC31
4G035AC50
4G035AE02
4G065CA12
4G065EA03
4G065EA05
4G065GA01
4G078AA02
4G078AA21
4G078AB11
4G078CA01
4G078CA07
4G078CA15
4G078CA17
4G078DA30
4G078DB01
4G078DC06
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】滞留槽を必須とせずに、晶析装置で結晶化された微粒子を滞留させることができる晶析システムおよび晶析方法を提供する。
【解決手段】晶析システム10Aは、複数の原料溶液を混合して前記複数の前記原料溶液中の原料に由来する粒子を生成させる晶析装置4と、晶析装置4の排出口6から排出される粒子を含むスラリD1を流動させ晶析装置4の導入口5aから晶析装置4内にスラリD1を循環させる循環管路Poと、スラリD1を晶析装置4と循環管路Poとの間で循環させる循環ポンプ30と、を備え、循環管路Poは、蛇行形状をなす屈曲部Ppを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の原料溶液を混合して前記複数の前記原料溶液の中の原料に由来する粒子を生成させる晶析装置と、
前記晶析装置の排出口から排出される前記粒子を含むスラリを流動させ前記晶析装置の導入口から前記晶析装置内に前記スラリを循環させる循環管路と、
前記スラリを前記晶析装置と前記循環管路との間で循環させる循環ポンプと、を備え、
前記循環管路は、蛇行形状をなす屈曲部を有することを特徴とする晶析システム。
【請求項2】
前記循環管路の内径が一定であることを特徴とする請求項1に記載の晶析システム。
【請求項3】
前記屈曲部が複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の晶析システム。
【請求項4】
前記屈曲部の少なくとも一部が温度調節槽の中に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の晶析システム。
【請求項5】
前記屈曲部が、分離可能な、複数の直管部と複数の曲管部と、から構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の晶析システム。
【請求項6】
前記晶析装置は、径方向に貫通する複数の孔を備えるとともに中心軸の回りに回転可能な撹拌翼と、
前記撹拌翼を同心状に内部に収容可能な有底円筒状の反応槽と、
前記反応槽に設けられるとともに前記反応槽の内部に第1の反応液を供給可能な導入口と、
前記撹拌翼に設けられるとともに前記反応槽の内部に第2の反応液を供給可能な給液部と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の晶析システム。
【請求項7】
前記撹拌翼は、円筒状の円筒部と、前記円筒部の内周面に外縁部が固定される円盤状の円盤部と、前記円盤部の平面視の中心から前記中心軸に沿って上方に延びる回転軸と、を備え、
前記円盤部と前記回転軸との内部を前記第2の反応液が流通可能であり、
前記円盤部の前記外縁部に前記給液部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の晶析システム。
【請求項8】
前記給液部は下方に向けて開口していることを特徴とする請求項7に記載の晶析システム。
【請求項9】
前記給液部は径方向外側に向けて開口し前記円筒部を貫通していることを特徴とする請求項7に記載の晶析システム。
【請求項10】
複数の原料溶液を混合して前記複数の前記原料溶液の中の原料に由来する粒子を晶析装置で成長させる晶析ステップと、
前記晶析装置の排出口から排出される前記粒子を含むスラリを、蛇行形状をなす屈曲部を有する循環管路を流動させることで前記晶析装置の導入口まで循環させる循環ステップと、を含む晶析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、晶析システムおよび晶析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の原料溶液を混合し、原料溶液中の原料に由来する粒子を一定の粒径範囲内で得る晶析装置として、特許文献1~特許文献4に記載される晶析装置が知られている。
【0003】
上記のような晶析装置においては、複数の原料溶液の混合液中に設けられた撹拌翼を回転させて、混合液に剪断力を与えることで撹拌を促進させている。より粒子径が均一で高品質な微粒子を生成するためには、複数の原料溶液が互いに接触して粒子が生成する反応が行われる場である反応場に、撹拌翼を高速で回転して発生させた剪断力を効率的に伝達して反応を促進することが重要である。効率的な剪断力の伝達を達成するために、回転子である撹拌翼と、固定子である反応槽や反応液供給ノズルなどとのクリアランスを最小化する試みがなされている。
上記のような晶析装置においては、非特許文献1に記載されるように、滞留槽が設けられ、晶析装置で結晶化された微粒子を滞留槽で滞留させることで、結晶を一定範囲の粒径までに成長させるのに必要な滞留時間を確保している。
【0004】
しかしながら、滞留槽を用いる場合、滞留槽の液レベルを調節することで、滞留槽での滞留時間を調整する必要があるが、滞留槽の液レベルを調節すると滞留槽内の流動状態が変化するため、複雑な流動解析が必要となり、粒径のコントロールが難しく、晶析装置が高価となる要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-137183号公報
【特許文献2】特開2010-022894号公報
【特許文献3】特許第3256801号公報
【特許文献4】特開2016-87590号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】神戸、「渦流式微粒子晶析装置の新展開」、TSK技報、月島機械株式会社、2020年12月、No.23、p.30-32頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、滞留槽を必須とせずに、晶析装置で析出した微粒子を一定の粒径範囲に成長するまで滞留させることができ、滞留条件のコントールが容易な晶析システムおよび晶析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を具備している。
本発明の第1の態様は、複数の原料溶液を混合して前記複数の前記原料溶液の中の原料に由来する粒子を生成させる晶析装置と、前記晶析装置の排出口から排出される前記粒子を含むスラリを流動させ前記晶析装置の導入口から前記晶析装置内に前記スラリを循環させる循環管路と、前記スラリを前記晶析装置と前記循環管路との間で循環させる循環ポンプとを備え、前記循環管路は、蛇行形状をなす屈曲部を有することを特徴とする晶析システムである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、晶析装置から排出されるスラリが循環管路を流量に応じた流速で流動するため、複雑な流動解析を必要とせずに、前記循環ポンプの流量制御により、容易に晶析システム内のスラリを完全均一混合することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1に態様において、前記循環管路の内径が一定であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、晶析装置から排出されるスラリが、内径が一定の循環管路を流動するため、複雑な流動解析を必要とせずに、前記循環ポンプの流量制御により、容易に晶析システム内のスラリを完全均一混合することができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記屈曲部が複数設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、屈曲部が複数設けられているため、スラリの容量が多い場合でも、複雑な流動解析を必要とせずに、前記循環ポンプの流量制御により、容易に晶析システム内のスラリを完全均一混合することができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1の態様において、前記屈曲部の少なくとも一部が温度調節槽の中に設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、屈曲部の少なくとも一部が温度調節槽の中に設けられているため、前記循環ポンプの流量制御により、容易に晶析システム内のスラリを完全均一混合することができるとともにスラリの熱量を調整することができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1の態様において、前記屈曲部が、分離可能な、複数の直管部と複数の曲管部と、から構成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の第5の態様によれば、前記複数の直管部と前記複数の曲管部の本数を変えることで、前記屈曲部の流路長を調節することができるので、複雑な流動解析を必要とせずに、前記屈曲部の流路長の調節により、スラリの滞留時間を調整することができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1の態様において、前記晶析装置は、径方向に貫通する複数の孔を備えるとともに中心軸の回りに回転可能な撹拌翼と、前記撹拌翼を同心状に内部に収容可能な有底円筒状の反応槽と、前記反応槽に設けられるとともに前記反応槽の内部に第1の反応液を供給可能な前記導入口と、前記撹拌翼に設けられるとともに前記反応槽の内部に第2の反応液を供給可能な給液部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の第6の態様によれば、第2の反応液が、撹拌翼に設けられる給液部から供給されるため、反応液供給ノズルと撹拌翼とが別に設けられる場合のような高い製作精度を必要とせず、第2の反応液を剪断力が最も高い撹拌翼の内外周から至近距離、例えば2mm以内、の範囲に供給することができる。さらに、撹拌翼が径方向に貫通する複数の孔を備えるため、遠心力の影響により第1の反応液と第2の反応液との混合液が撹拌翼の径方向外側に向かって孔を通過して撹拌翼の外周側に移動しながら反応するため、剪断力が最も高い撹拌翼の内外周から至近距離、例えば2mm以内、の範囲での混合液の撹拌をさらに促進させることができる。
【0020】
本発明の第7の態様は、第5の態様において、前記撹拌翼は、円筒状の円筒部と、前記円筒部の内周面に外縁部が固定される円盤状の円盤部と、前記円盤部の平面視の中心から前記中心軸に沿って上方に延びる回転軸と、を備え、前記円盤部と前記回転軸との内部を前記第2の反応液が流通可能であり、前記円盤部の前記外縁部に前記給液部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明の第7の態様によれば、円盤部の外縁部に給液部が設けられているため、第2の反応液を剪断力が最も高い撹拌翼の内外周から至近距離、例えば2mm以内、の範囲に供給することができる。
【0022】
本発明の第8の態様は、第6の態様において、前記給液部は下方に向けて開口していることを特徴とする。
【0023】
本発明の第8の態様によれば、給液部は下方に向けて開口しているため、第2の反応液を剪断力が最も高い撹拌翼の内外周から至近距離、例えば2mm以内、の範囲に供給することができる。
【0024】
本発明の第9の態様は、第6の態様において、前記給液部は径方向外側に向けて開口し前記円筒部を貫通していることを特徴とする。
【0025】
本発明の第9の態様によれば、給液部は径方向外側に向けて開口し前記円筒部を貫通しているため、第2の反応液を剪断力が最も高い撹拌翼の内外周から至近距離、例えば2mm以内、の範囲に供給することができる。
【0026】
本発明の第10の態様は、複数の原料溶液を混合して前記複数の前記原料溶液の中の原料に由来する粒子を晶析装置で成長させる晶析ステップと、前記晶析装置の排出口から排出される前記粒子を含むスラリを、蛇行形状をなす屈曲部を有する循環管路を流動させることで前記晶析装置の導入口まで循環させる循環ステップと、を含む晶析方法である。
【0027】
本発明の第10の態様によれば、晶析装置から排出されるスラリが循環管路を流動するため、複雑な流動解析を必要とせずに、スラリの滞留時間を調整することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、滞留槽を必須とせずに、晶析装置で結晶化された微粒子を滞留させることができる晶析システムおよび晶析方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る第1実施形態の晶析システムの概略図である。
図2】本発明に係る第2実施形態の晶析システムの概略図である。
図3】本発明に係る第3実施形態の晶析システムの概略図である。
図4】本発明に係る第1実施形態の晶析システムの第1の変形例の概略図である。
図5】本発明に係る第1実施形態の晶析システムの第2の変形例の概略図である。
図6】本発明に係る第1実施形態の晶析システムの第3の変形例の概略図である。
図7】本発明に係る第1実施形態の晶析システムの第4の変形例の概略図である。
図8】本発明に係る第1実施形態の晶析システムの第5の変形例の概略図である。
図9】本発明に係る第1実施形態の晶析システムの第6の変形例の概略図である。
図10】本発明に係る第1実施形態の晶析システムの第7の変形例の概略図である。
図11】本発明に係る第1実施形態の晶析システムの第8の変形例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
以下、第1実施形態に係る晶析システム10Aを、図1を参照しながら説明する。
晶析システム10Aは、複数の原料溶液を混合して、これら複数の原料溶液の中の原料に由来する粒子を生成させる晶析装置4と、晶析装置4の下流に設けられ、晶析装置4の排出口6から排出されるスラリD1を晶析装置4の導入口5aまで循環させる循環管路Poと、スラリD1を晶析装置4と循環管路Poとの間で循環させる循環ポンプ30と、を備える。
【0031】
循環管路Poは、蛇行形状の管路である屈曲部Ppを備えている。さらに、循環管路Poは、晶析装置4と屈曲部Ppとを接続する配管22と、循環ポンプ30と屈曲部Ppとを接続する配管23と、循環ポンプ30と晶析装置4とを接続する配管24と、を備えている。なお、屈曲部Ppは、蛇行形状に限定されず、螺旋形状をなしていても良い。
【0032】
循環ポンプ30は、スラリD1を、晶析装置4と屈曲部Ppとの間で流量を調整可能に循環させる機能を有する循環ポンプである。しかしながら、同様の機能を有する装置であれば必ずしも循環ポンプに限定されず、例えば、回転数を制御可能な羽根車が配管23或いは配管24に設けられていても良い。
【0033】
晶析装置4は、鉛直方向を向いた中心軸O1を備える有底円筒状の反応槽1と、円筒状の撹拌翼Wcと、を備える。撹拌翼Wcは、撹拌翼Wcの平面視の中心から中心軸O1に沿って上方に延びる中空の回転軸3を中心に回転可能であり、中心軸O1を同一の中心軸として反応槽1の内部に収容されている。回転軸3は、晶析装置4の外部に設けられる不図示の原動機からベルトを介して供給される回転力により回転する。なお、原動機はモータやエンジンなど回転動力を発生させる装置であれば特に限定されない。また、回転力を回転軸3に伝達するベルトはチェーンや歯車など回転力を伝達できれば特に限定されない。なお、反応槽1の底面は、図示されるような平面状である他に、下方に対して凸となるコーン形状であっても良い。反応槽1の上部には反応槽1で生成された粒子(結晶)を含むスラリを次工程に排出可能な排出口6が設けられている。排出口6から配管22に排出されたスラリD1の圧力を維持又は調節する圧力指示調整計(Pressure Indication Controller)が配管22に設けられている。
【0034】
反応槽1の下部には第1の反応液L1と循環管路Poを流動したスラリD1が供給される導入口5aが設けられている。第1の反応液L1は、外部の副原料SやSを貯蔵するタンクから副原料SやSが供給され混合されることで生成される。第1の反応液L1の副原料SやSの流量は、燃料指示調節計(Flow Indication Controller)FIC、FICで維持又は調節される。第1の反応液L1は、導入口5aから反応槽1に所望の量だけ供給される。第1の反応液L1の導入口5aからの供給量は、例えば循環ポンプ30の回転数を調節することで所望の量に調整することができる。第1の反応液L1が流れる配管24には必要に応じて圧力計(Pressure Indicator)PIが設けられる。
また、撹拌翼Wcに設けられる給液部5bから第2の反応液L2が反応槽1の中に供給される。第2の反応液L2は、外部の主原料Sを貯蔵するタンクから供給される。第2の反応液L2の流量は、燃料指示調節計FICで維持又は調節される。
反応槽1の中に供給された第1の反応液L1と第2の反応液L2とが反応することで、結晶化された微粒子が生成される。スラリD1は、この微粒子を含んだ流体である。
【0035】
屈曲部Ppは、互いに間隔を空けて略同じ方向を向くように配置された内径r2の複数の直管部(Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6)と、隣接する複数の直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6同士を分離可能、或いは着脱可能に連結する内径r3の複数の曲管部C(C、C、C、C、C)と、複数の直管部を固定する固定板21と、から構成されている。複数の曲管部Cが分離可能であるとは、図1に点線で表示された曲管部Cのように、直管部Po5及び直管部Po6とを接続するように設けられていた曲管部Cを、直管部Po5及び直管部Po6とから分離させることができることを意味する。
曲管部Cと、直管部Po5及び直管部Po6との着脱方法としては、不図示のフランジ部が曲管部Cの両端部と、直管部Po5及び直管部Po6の左端部に設けられており、ボルトやナット等を用いてフランジ部を締め付けたり緩めたりすることで、直管部Po5及び直管部Po6に対して、曲管部Cを着脱しても良い。着脱方法はこれに限定されず、着脱自在であれば、例えば、フランジ部を使用する方法に限らず、直管部Po5及び直管部Po6の左端部に曲管部Cの両端を螺合させることで着脱しても良い。
固定板21は、図1では矩形状となっているが、複数の直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6が固定板21に固定された状態で保持できれば、その素材や形状は特に限定されない。
上記のように、分離可能な、複数の直管部と複数の曲管部Cにおいては、分離させることで容易に直管部及び曲管部Cの内周面を清掃することができるので、晶析システム晶析システム10Aのメンテナンス性を向上させることができる。
【0036】
図1の例では、直管部は、直管部Po1、直管部Po2、直管部Po3、直管部Po4、直管部Po5、直管部Po6の6つの直管部により構成されており、曲管部Cは、曲管部C、曲管部C、曲管部C、曲管部C、曲管部Cの5つの曲管部から構成されているが、この例に限定されない。
直管部Poは、6つ以上の直管部Poから構成されていても良いし、6つ以下の直管部Poから構成されていても良い。直管部Poの個数に合わせて、曲管部Cの個数も増減する。例えば、図1の例において、直管部Po3の右端部に第一端が接続されている曲管部Cの第二端を配管22の左端部に接続しても良い。この場合、曲管部Cに伸縮及び湾曲自在の蛇腹部が設けられていることにより、曲管部Cが伸縮自在であっても良い。
【0037】
このように、屈曲部Ppの管路長、即ち、直管部と曲管部Cの合計の長さ(直管部と曲管部Cの個数)は、スラリD1を所望の滞留時間だけ、滞留させることを目的に要望に応じて調節することができる。即ち、より長い滞留時間が望まれる場合には、直管部と曲管部Cの数を増して屈曲部Ppの管路長を長くすることが望ましく、より短い滞留時間が望まれる場合には、直管部と曲管部Cの数を減らして屈曲部Ppの管路長を短くすることが望ましい。
【0038】
ここで、スラリD1の流速は、スラリD1を構成する粒子の比重と径により決まる。即ち、スラリD1を構成する粒子の比重と径により、スラリD1を構成する粒子の沈降速度が決まるので、スラリD1が配管内で沈降することなく流通されるようにスラリD1の流速を決める。そのため、所望のスラリD1の滞留時間と、スラリD1を沈降させないためのスラリD1の流速とから、屈曲部Ppの管路長を求めることができる。
【0039】
晶析装置4と屈曲部Ppは内径r1の配管22により接続されている。屈曲部Ppと循環ポンプ30は内径r4の配管23により接続されている。循環ポンプ30と晶析装置4は内径r5の配管24により接続されている。
図1の例では、循環管路Poの内径、即ち、配管22の内径r1、直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6の内径r2、曲管部C、C、C、C、Cの内径r3、配管23の内径r4、配管24の内径r5は、同一とされている。この場合、配管22、直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6、曲管部C、C、C、C、C、配管23、配管24の断面積が一定となるため、管路を流れるスラリD1の流動解析が容易となる。しかしながら、上記の例に限定されず、循環管路Poの内径、即ち、配管22の内径r1、直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6の内径r2、曲管部C、C、C、C、Cの内径r3、配管23の内径r4、配管24の内径r5が互いに異なっていても良い。その場合、異なった内径を考慮して流動解析を行えばよい。
【0040】
屈曲部Ppから排出されるスラリD1が流れる配管23には、モータMで駆動される第2循環ポンプ31に接続される管路が接続されている。この管路が配管23からスラリD1を引き抜き、これを集積する事で製品となる。モータMと第2循環ポンプ31との間に燃料指示調節計(Flow Indication Controller)FICが設けられ、晶析システム10Aの外部に引き抜かれるスラリD1の流量の維持又は調節を行う。第2循環ポンプ31は、循環ポンプ30と同様に、流量を調整可能に循環させる機能を有するスラリ排出ポンプである。しかしながら、配管23からスラリD1を引き抜く機能を有する装置であれば必ずしもスラリ排出ポンプに限定されず、例えば、回転数を制御可能な羽根車が管路に設けられていても良い。
スラリD1が外部に引き抜かれた直後の配管23におけるスラリD1の圧力を必要に応じて圧力計(Pressure Indicator)PIでモニターする。
【0041】
このような屈曲部Ppを有する循環管路Poを備える晶析システム10Aによれば、晶析装置4において生成される粒子を含むスラリD1を、循環ポンプ30の流量制御により、容易に完全均一混合することができる。さらに、晶析装置4において生成される粒子を含むスラリD1を、屈曲部Ppの管路長を調節することで、滞留槽を必須とすることなく、所望の時間だけ滞留させることができる。従って、滞留槽を用いる場合に要求されたスラリD1の複雑な流動解析を行うことなく、屈曲部PpにおけるスラリD1の滞留時間を調節することができる。なお、不図示の滞留槽を晶析システム10Aに加えても良い。
【0042】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る晶析システム10Bを、図2を参照しながら説明する。以下では、第1実施形態と異なる点のみ説明し、第1実施形態と同じ部材には同じ参照番号を付し説明を省略する。
【0043】
晶析システム10Bは、屈曲部Pp(第1屈曲部)に加えて第2屈曲部Ppaが設けられている点で第1実施形態の晶析システム10Aと異なっている。
【0044】
第2屈曲部Ppaは、第1屈曲部Ppと同様の構成を有する。配管22の途中から、第2屈曲部Ppaに向かって分岐する配管22aが延びている。また、第2屈曲部Ppaから排出されるスラリD1は、配管23aを経由して、第1屈曲部Ppから排出されるスラリD1が流通する配管23に合流する。
【0045】
図2に示されるように、配管22aの入り口と配管23aの出口には、弁V1と弁V2が設けられている。弁V1と弁V2とを開弁することで、第1屈曲部Ppと第2屈曲部Ppaの両方にスラリD1を流すことができる。一方、弁V1と弁V2とを閉弁することで、第1屈曲部PpのみにスラリD1を流すことができ、第1実施形態の晶析システム10Aと同様の構成とすることができる。
【0046】
このような晶析システム10Bによれば、スラリD1の流量に応じて、第1屈曲部Ppに加えて第2屈曲部PpaにもスラリD1を流すことができる。
【0047】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る晶析システム10Cを、図3を参照しながら説明する。以下では、第1実施形態と異なる点のみ説明し、第1実施形態と同じ部材には同じ参照番号を付し説明を省略する。
【0048】
晶析システム10Cは、屈曲部Ppの少なくとも一部が温度調節槽13の中に設けられている点で第1実施形態の晶析システム10Aと異なっている。
【0049】
温度調節槽13は、不図示のポンプ等により、冷水等の冷媒CWが温度調節槽13の内部を一方向に流れる状態を維持している部材である。このような温度調節槽13の中に、屈曲部Ppの少なくとも一部を設けた場合、屈曲部Ppの直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6に冷媒が衝突する。この場合、屈曲部Ppの直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6を流れるスラリD1と冷媒CWとの間で、直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6を構成する部材を介して熱交換が行われる。よって、スラリD1を冷却又は加熱することができる。
ここで、図3の場合は、冷媒CWの流れ方向に対して直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6が略垂直に設けられているが、必ずしも冷媒CWの流れ方向に対して直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6が略垂直に設けられていなくとも良く、垂直ではない角度を付けて設けられていても良い。また、屈曲部Ppの曲管部Cにおいて冷媒CWとの熱交換が行われても良いし、屈曲部Ppの直管部と曲管部Cとの両方で冷媒CWとの熱交換が行われても良い。
【0050】
ここで、屈曲部Ppのうち、直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6の長さ、或いは直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6の数を調節することで、スラリD1に対する温度調整能力を調整することができる。例えば、直管部Po1を流れる熱量Qを有するスラリD1から熱量Q1が熱交換により冷媒CWに移動したとすると、直管部Po2を流れる熱量(Q-Q1)を有するスラリD1から熱量Q2が熱交換により冷媒CWに移動する。さらに、直管部Po3を流れる熱量(Q-(Q1+Q2))を有するスラリD1から熱量Q3が熱交換により冷媒CWに移動すると、直管部Po4を流れるスラリD1の熱量は(Q-(Q1+Q2+Q3))となる。これを所望の回数繰り返すことで、スラリD1の熱量を低減させることができるので、スラリD1を所望の量だけ冷却することができる。スラリD1を加熱する場合も同様である。
【0051】
このような晶析システム10Cによれば、冷媒CWと熱交換が行われる屈曲部Ppの管路長、即ち、直管部Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6の管路長、或いは数を調節することで、スラリD1を所望の量だけ冷却又は加熱することができる。
【0052】
<第1実施形態の第1の変形例>
以下、第1実施形態に係る晶析システム10Aの第1の変形例に係る晶析システム10A1を、図4を参照して説明する。以下の説明では、第1実施形態に係る晶析システム10Aと異なる点のみ説明し、同じ部材には同じ参照番号を付し、その説明を省略する。
【0053】
第1の変形例に係る晶析システム10A1では、晶析装置4aが撹拌翼Wを備えている点で晶析装置4と異なっている。
【0054】
撹拌翼Wは、円筒部2と、円筒部2の内周面2iに外縁部が固定される円盤状の円盤部8と、を備えている。円盤部8は、円筒部2の高さが概ね半分となる位置に設けられるが、この例に限定されず、円筒部2の高さの概ね半分よりも下側や上側に設けられても良い。円盤部8の平面視の中心に回転軸3が固定されている。回転軸3の中空の内部は管路P1とされている。円盤部8の内部には複数の管路P2が中心から放射状に外縁部に向かって延びている。回転軸3の管路P1と円盤部8の管路P2とは連通している。撹拌翼Wの回転軸3には、晶析装置4の外部に設けられる主原料Sを貯蔵するタンクから第2の反応液L2が供給される。第2の反応液L2は、ロータリージョイントRを介して回転軸3の中空の管路P1に供給され、その後、円盤部8の管路P2に供給される。管路P2の反応槽1の径方向外側の先端は下方に向けて開口しており第2の反応液L2が排出される給液部5bとされている。従って、円盤部8には、給液部5bが円盤部の周方向に間隔を空けて複数設けられている。給液部5bの個数は例えば8個設けられている。給液部5bの個数は限定されないが、中心軸O1に対して対称に設けることが望ましい。
【0055】
本変形例においては、撹拌翼Wの円筒部2の内周面2iと給液部5bの中心との距離は2mm以下とされている。また、撹拌翼Wの円筒部2の外周面2oと反応槽1の内周面1iとの距離(クリアランス)をL3、撹拌翼W(円筒部2)の中心軸O1に沿う高さをHとすると、HとL3との比であるH/L3が10以上であることが好ましい。また、H/L3が25以上であることがより好ましい。従って、この実施例と異なるサイズの装置を使用する場合であっても、この比を基に同様の装置を製作することができる。撹拌翼Wは、5m/秒以上50m/秒以下の周速で回転する。
なお、H/L3の比率は、目的によって、上述の比率と異なる場合がある。例えば、結晶破砕を抑制したい場合には、比率を上記の値から下げても良い。
【0056】
撹拌翼Wの円筒部2には、円筒部2の径方向に貫通する複数の孔hが設けられている。これらの孔hは、第1の反応液L1、第2の反応液L2、或いはその混合液が流通可能とされている。そのため、第1の反応液L1、第2の反応液L2、或いはその混合液は、複数の孔hを通じて、撹拌翼Wの内側から外側に、又は撹拌翼Wの外側から内側に移動可能である。なお、孔hに加えて、円盤部8に中心軸O1方向に貫通する複数の孔9が設けられていても良い。この場合、第1の反応液L1、第2の反応液L2、或いはその混合液は、複数の孔hに加えて孔9を通じても撹拌翼Wの内側から外側に、又は撹拌翼Wの外側から内側に移動可能となる。
【0057】
このような晶析装置4aにおいて、導入口5aから所望量の第1の反応液L1を反応槽1に供給する。供給される第1の反応液L1の量は、反応槽1を満たす程度(満液状態)でも良いし、或いは、撹拌翼Wが回転した際に第1の反応液L1が反応槽1の中心軸O1を中心として円運動を行うことにより第1の反応液L1に発生する遠心力により反応槽1の内周面1iに押し付けられて、反応槽1の内周面1iに第1の反応液L1の液膜が形成される程度に供給しても良い。以下では、第1の反応液L1が満液状態になる程度供給される場合を想定して説明する。また、第1の反応液L1を上述の満液状態または液膜形成状態となる程度に供給した後に第1の反応液L1の供給を止めてから反応槽1で反応をさせても良いし、第1の反応液L1を上述の満液状態または液膜形成状態となる程度の流量に維持しながら反応槽1での反応を継続的に行っても良い。
例えば、排出口6に不図示の開度調整バルブを設け、この開度調整バルブの開度を調整することにより、反応槽1を、満液状態と液膜が形成される液膜状態とのいずれかに選択することができる。
【0058】
反応槽1が第1の反応液L1で満たされた状態において、撹拌翼Wを回転させるとともに、第2の反応液L2を給液部5bから撹拌翼Wの円筒部2の内周面2iに沿って排出することで、第2の反応液L2を反応槽1内に供給する。こうすることで、給液部5bから撹拌翼Wの円筒部2の内周面2iに沿って排出された第2の反応液L2が、第1の反応液L1で満たされた反応槽1のうちで撹拌翼Wの円筒部2の内周面2i近傍で撹拌翼Wの回転に伴って回転している第1の反応液L1と接触する。こうして第1の反応液L1と第2の反応液L2とが接触することにより反応が発生して粒子が生成される。
【0059】
この際、第1の反応液L1に、5m/秒以上50m/秒以下の周速で回転している撹拌翼Wの給液部5bから第2の反応液L2を供給することで、第2の反応液L2を第1の反応液L1と均一に混合することができる。
【0060】
ここで、撹拌翼Wの回転に伴って回転している第1の反応液L1と、5m/秒以上50m/秒以下の周速で回転している撹拌翼Wの給液部5bから排出される第2の反応液L2と、これらの混合液に発生する遠心力により、第1の反応液L1、第2の反応液L2、及び混合液(以下、まとめて混合液と呼ぶ場合がある)は撹拌翼Wの円筒部2の径方向外側に移動し、撹拌翼Wの円筒部2に設けられた複数の孔hを通って反応槽1の内周面1iに衝突し、その後、反応槽1の内周面1iに沿って上下方向に移動する。主に下方に移動した混合液は、撹拌翼Wの回転により生じる遠心力に起因する径方向外側に向かう流れに引き寄せられて再び撹拌翼Wの円筒部2に設けられた複数の孔hを通って反応槽1の内周面1iに衝突し、その後、反応槽1の内周面1iに沿って上下方向に移動することで対流が生まれる。ここで、複数の孔hを混合液が通過する際、絞り流路の効果により、混合液は径方向外側に加速されるので、混合液の径方向外向きの流速は、複数の孔h近傍で最も高い。さらに、5m/秒以上50m/秒以下の周速で回転する撹拌翼Wの円筒部2の外周面2o及び内周面2iと固定されている反応槽1の内周面1iとの間に存在する混合液には、周方向に剪断力が与えられる。混合液に与えられる剪断力は撹拌翼Wの円筒部2の内周面2iと外周面2oとに近ければ近い程大きい。混合液に与えられる剪断力は、得られる粒子の粒子径と均一性を決定する大きな要因となる。特に与えられる剪断力が大きければ大きい程、微細な粒子径を持つ粒子を得ることができる。
【0061】
本変形例の晶析装置4aでは、給液部5bが、円盤部8の外縁部に設けられている。具体的には上記のように撹拌翼Wの円筒部2の内周面2iと給液部5bの中心との距離が2mm以下とされている。そのため、給液部5bから撹拌翼Wの円筒部2の内周面2iに沿って排出される第2の反応液L2と、撹拌翼Wの円筒部2の内周面2i近傍で撹拌翼Wの回転に伴って回転している第1の反応液L1と、が初めて接触して反応を開始する反応開始ポイントには、遠心力と絞り流路の効果による径方向外側に向かう流れに加えて剪断力が最大限に与えられる。よって、与えられる剪断力が最も大きい領域を反応開始ポイントとすることができる。具体的には、撹拌翼Wの円筒部2の内周面2iと外周面2oから至近距離、例えば2mm以内、の領域に反応開始ポイントを形成することができる。ここで、混合液は上記の複数の孔hを通って円筒部2の内周側から外周側に移動可能である。従って、反応開始ポイントにおける第1の反応液L1と第2の反応液L2との撹拌が剪断力により促進される。そのため、より均一な第1の反応液L1と第2の反応液L2との混合が反応開始ポイントから開始され、混合液の流れに沿って反応が起こる場である反応場で混合及び反応が行われることで微細かつ均一な径を有する粒子を生成することができる。ここで、反応開始ポイントは反応が開始される領域を指し、反応場は反応が起きる場全体を指す。従って、反応開始ポイントは反応場に含まれる。
なお、撹拌翼Wの上部に相当する反応槽1の内周面に不図示のバッフル(邪魔板)が設けられていても良い。バッフルは、反応槽1が満液の状態においては、渦の発生を抑制し混合液の撹拌を促進させる効果がある。一方、反応槽1が満液ではなく混合液の液膜が形成される状態においてはバッフルを設ける必要はない。
なお、バッフルは必須の構成ではなく、設けなくても良い。例えば、反応槽1における回転軸3が挿入される箇所に不図示のメカニカルシールを設け、気相部の無い完全な満液状態とする場合、渦の発生が抑制されるため、バッフルを設けなくても良い。バッフルを設けない場合、流路抵抗が低減され、原動機Mの動力を低減できる。
【0062】
なお、満液状態ではなく液膜が形成される状態においても満液状態の場合と同様の効果が得られる。
【0063】
このような晶析装置4aを含む第1の変形例に係る晶析システム10A1によれば、晶析装置4aにおける反応生成物の粒子径、粒度分布、真球度などの粒子品質に影響を与える剪断力、第1の反応液L1の循環量、スラリの滞留時間を個別に調整することができ、より一層、粒子品質の制御性能を向上することができる。
【0064】
<第1実施形態の第2の変形例>
以下、第1実施形態に係る晶析システム10Aの第2の変形例に係る晶析システム10A2を、図5を参照して説明する。第2の変形例の晶析装置4bでは、第1の変形例の晶析装置4aの撹拌翼Wが撹拌翼Waである点に相違がある。以下の説明では、撹拌翼Wとの相違点のみ説明し、重複している箇所の説明は省略する。
撹拌翼Waは、円盤部8の外縁部に設けられる給液部5bが円筒部2を貫通して径方向外側に開口している点において撹拌翼Wと異なっている。このような撹拌翼Waでは、径方向外側に開口する給液部5bから第2の反応液L2が排出されるので、第2の反応液L2と、第1の反応液L1と第2の反応液L2との混合液の径方向(水平方向)への分散性が高い。このような撹拌翼Waを備える晶析装置4bを用いることでも、撹拌翼Wを備える晶析装置4aと同様の効果を奏することができる。なお、円盤部8に中心軸O1方向に貫通する不図示の複数の孔9が設けられていても良い。このような、複数の孔9は、混合液の一部を複数の孔9を介して攪拌翼Wの下側と上側とを流通可能とすることで、攪拌翼Wにかかる動力的な負荷を低減する効果があるが、複数の孔9を通過した混合液は攪拌翼W廻りの反応場を通過せずに反応場をショートパスしてしまうため、複数の孔9を設けない場合に比べ、均一で微細な粒子を製造する効果は低下する。従って、目的の粒子品質と所要動力を鑑みて、孔9の適用を選択することができる。
【0065】
このような晶析装置4bを含む第2の変形例に係る晶析システム10A2によれば、晶析装置4bにおける反応生成物の粒子径、粒度分布、真球度などの粒子品質に影響を与える剪断力、第1の反応液L1の循環量、スラリの滞留時間を個別に調整することができ、より一層、粒子品質の制御性能を向上することができる。
【0066】
<第1実施形態の第3の変形例>
以下、第1実施形態に係る晶析システム10Aの第3の変形例に係る晶析システム10A3を、図6を参照して説明する。
第3の変形例の晶析装置4cでは、第2の変形例における撹拌翼Waが撹拌翼Wbである点に相違がある。以下の説明では、撹拌翼Waとの相違点のみ説明し、重複している箇所の説明は省略する。
撹拌翼Wbは、撹拌翼Waにおける円盤部8より上側の円筒部2において、径方向に貫通する複数の孔hが閉塞されているとともに、円筒部8の内周面2iに外縁部が固定される第2円盤部15が円筒部2の上端部に設けられている。第2円盤部15は円盤状の部材であり、その平面視の中心に回転軸3が貫通する孔を有する。回転軸3が貫通する孔を除き、中心軸O1方向に第2円盤部15を貫通する孔はない。従って、第2円盤部15の内側に第1の反応液L1、第2の反応液L2、及びその混合液が入り込むことはない。
このような撹拌翼Wbでは、円盤部8より上側の円筒部2に径方向に貫通する複数の孔hが設けられておらず、また、円筒部8の内周面2iに外縁部が固定される第2円盤部15が円筒部2の上端部に設けられている。そのため、撹拌翼Wbが回転する際の撹拌翼Wbの抵抗力が低減され、撹拌翼Waよりも少ない動力で撹拌翼Wbを運転することができる。
【0067】
このような晶析装置4cを含む第3の変形例に係る晶析システム10A3によれば、晶析装置4cにおける反応生成物の粒子径、粒度分布、真球度などの粒子品質に影響を与える剪断力、第1の反応液L1の循環量、スラリの滞留時間を個別に調整することができ、より一層、粒子品質の制御性能を向上することができる。
【0068】
<第1実施形態の補足説明>
ここで、図1図3に戻って、第1~第3の実施形態の撹拌翼Wcを詳細に説明する。
第1実施形態における晶析装置4では、図4に示される、第1の変形例の晶析装置4aの撹拌翼Wが撹拌翼Wcである点に相違がある。以下の説明では、撹拌翼Wとの相違点のみ説明し、重複している箇所の説明は省略する。
撹拌翼Wcは、図1に示されるように、撹拌翼Wにおける円盤部8より上側の円筒部2において、径方向に貫通する複数の孔hが閉塞されているとともに、円筒部8の内周面2iに外縁部が固定される第2円盤部15が円筒部2の上端部に設けられている。第2円盤部15は円盤状の部材であり、その平面視の中心に回転軸3が貫通する孔を有する。回転軸3が貫通する孔を除き、中心軸O1方向に第2円盤部15を貫通する孔はない。従って、第2円盤部15の内側に第1の反応液L1、第2の反応液L2、及びその混合液が入り込むことはない。
このような撹拌翼Wcでは、円盤部8より上側の円筒部2に径方向に貫通する複数の孔hが設けられておらず、また、円筒部8の内周面2iに外縁部が固定される第2円盤部15が円筒部2の上端部に設けられているので、撹拌翼Wcが回転する際の撹拌翼Wcの抵抗力が低減される。そのため、撹拌翼Wよりも少ない動力で撹拌翼Wcを運転することができる。
【0069】
このような晶析装置4を含む第1実施形態に係る晶析システム10Aによれば、晶析装置4における反応生成物の粒子径、粒度分布、真球度などの粒子品質に影響を与える剪断力、第1の反応液L1の循環量、スラリの滞留時間を個別に調整することができ、より一層、粒子品質の制御性能を向上することができる。
【0070】
<第1実施形態の第4の変形例>
以下、第1実施形態に係る晶析システム10Aの第4の変形例に係る晶析システム10A4を、図7を参照して説明する。
第4の変形例の晶析装置4dでは、第1の変形例の晶析装置4aの撹拌翼Wが撹拌翼Wdである点に相違がある。以下の説明では、撹拌翼Wとの相違点のみ説明し、重複している箇所の説明は省略する。
撹拌翼Wdは、図7に示されるように、円盤部8が円筒部2の上端部に設けられている点において撹拌翼Wと異なっている。また、円筒部2の高さが撹拌翼Wの円筒部2の高さの半分程度である。このような撹拌翼Wdを備える晶析装置4dを用いることでも、撹拌翼Wを備える晶析装置4と同様の効果を奏することができる。また、円盤部8よりも上方に円筒部2が設けられていないため、撹拌翼Wdを撹拌翼Wよりも軽量とすることができる。また撹拌翼Wdを簡易な構造とすることができるので、撹拌翼Wよりも少ない動力で撹拌翼Wdを運転することができ、晶析装置4の省エネ化と、撹拌翼Wdの製造の容易化が期待できる。さらに、円筒部2の高さが短く抑えられているため、晶析装置4dを小型化することができる。なお、円盤部8に中心軸O1方向に貫通する不図示の複数の孔9が設けられていても良い。その場合、撹拌翼Waの円盤部8に中心軸O1方向に貫通する複数の孔9が設けられている場合と同様の効果が期待できる。
【0071】
このような晶析装置4dを含む第4の変形例に係る晶析システム10A4によれば、晶析装置4dにおける反応生成物の粒子径、粒度分布、真球度などの粒子品質に影響を与える剪断力、第1の反応液L1の循環量、スラリの滞留時間を個別に調整することができ、より一層、粒子品質の制御性能を向上することができる。
【0072】
<第1実施形態の第5の変形例>
以下、第1実施形態に係る晶析システム10Aの第5の変形例に係る晶析システム10A5を、図8を参照して説明する。
第5の変形例の晶析装置4eでは、第1の変形例の晶析装置4aの撹拌翼Wが撹拌翼Weである点に相違がある。以下の説明では、主に撹拌翼Wとの相違点のみ説明し、重複している箇所の説明は省略する。
撹拌翼Weは、図8に示されるように、円柱状の円柱部20と、円柱部20の上端部に円柱部20と同心状に設けられる円盤基部18と、円盤基部18の平面視の中心から中心軸O1に沿って上方に延びる回転軸3と、円柱部20の径方向外側に円柱部20と同心状に設けられる円筒状の多孔板18Pと、を備えている。多孔板18Pには多孔板18Pを径方向に貫通する複数の孔18hが設けられており、第1の反応液L1と第2の反応液L2と、その混合液は、複数の孔18hを流通可能である。多孔板18Pは、円盤基部18の外縁から下方に延びている。回転軸3と円盤基部18と円柱部20とのそれぞれの内部に設けられる管路P1、P2、P3を第2の反応液が流通可能である。管路P1、P2、P3はそれぞれ連通している。管路P2は、管路P1の下端部から中心軸O1を中心に放射状に径方向外側に向かって延びている。管路P3は、管路P2の径方向外側の端部から中心軸O1に沿って下方に延びている。管路P2と管路P3は円柱部20の内部に形成されている。円柱部20の外周面20oに上下方向に間隔を空けて複数の給液部50bが設けられている。撹拌翼Weが回転すると、回転軸3と円盤基部18と円柱部20と多孔板18Pとが一体に回転する。
このような撹拌翼Weでは、円柱部20の外周面20oに上下方向に間隔を空けて設けられた複数の給液部50bから第2の反応液L2が反応槽1内に供給され、反応槽1内の第1の反応液L1と混合し反応しながら、多孔板18Pの複数の孔18hを流通する。そのため、第1の反応液L1と第2の反応液L2とを、より均一に混合することができる。
多孔板18Pの複数の孔18hを通過した混合液は、反応槽1の内周1iに衝突し、その後、反応槽1の内周面1iに沿って上下方向に移動する。下方に移動した混合液は、撹拌翼Weの回転により生じる遠心力に起因する径方向外側に向かう流れに引き寄せられて再び撹拌翼Weの多孔板18Pの複数の孔18hを通って反応槽1の内周面1iに衝突し、その後、反応槽1の内周面1iに沿って上下方向に移動することで対流が生まれる。ここで、複数の孔18hを混合液が通過する際、絞り流路の効果により、混合液は径方向外側に加速されるので、混合液の径方向外向きの流速は、複数の孔18h近傍で最も高い。さらに、5m/秒以上50m/秒以下の周速で回転する撹拌翼Weの円柱部20の外周面20o及び多孔板18Pの内外周面と、固定されている反応槽1の内周面1iとの間に存在する混合液には、周方向に剪断力が与えられる。混合液に与えられる剪断力は撹拌翼Weの円柱部20の外周面2oと多孔板18Pの内外周面に近ければ近い程大きい。混合液に与えられる剪断力は、得られる粒子の粒子径と均一性を決定する大きな要因となる。特に与えられる剪断力が大きければ大きい程、微細な粒子径を持つ粒子を得ることができる。撹拌翼Weを用いた場合、撹拌翼Wを用いる場合よりも、剪断力の影響をより多くの箇所に与えることができるため、均一で微細な粒子を製造することができる。
給液部50bから供給される第2の反応液L2は、剪断力の最も高い撹拌翼Weの内外周、即ち、円柱部20の外周面20o及び多孔板18Pの内外周面から至近距離、例えば2mm以内、の範囲に供給することができる。
図8の例では、給液部50bが、円柱部20の上下方向に4個設けられているが、給液部50bの個数は図8の例に限定されず、反応槽1のサイズに応じて増減しても良い。
【0073】
このような晶析装置4eを含む第5の変形例に係る晶析システム10A5によれば、晶析装置4eにおける反応生成物の粒子径、粒度分布、真球度などの粒子品質に影響を与える剪断力、第1の反応液L1の循環量、スラリの滞留時間を個別に調整することができ、より一層、粒子品質の制御性能を向上することができる。
【0074】
<第1実施形態の第6の変形例>
以下、第1実施形態に係る晶析システム10Aの第6の変形例に係る晶析システム10A6を、図9を参照して説明する。
第6の変形例の晶析装置4fでは、第1の変形例の晶析装置4aの撹拌翼Wが撹拌翼Wfである点に相違がある。以下の説明では、主に撹拌翼Wとの相違点のみ説明し、重複している箇所の説明は省略する。
撹拌翼Wfは、図9に示されるように、円柱状の円柱部20と、円柱部20の平面視の中心から中心軸O1に沿って上方に延びる回転軸3と、円柱部20の径方向外側に円柱部20と同心状に設けられる円筒状の多孔板18Pと、を備えている。多孔板18Pには多孔板18Pを径方向に貫通する複数の孔18hが設けられており、第1の反応液L1と第2の反応液L2と、その混合液は、複数の孔18hを流通可能である。多孔板18Pは、円柱部20の外周面2oから径方向外側に延びる接続棒11に固定されている。回転軸3と円柱部20のそれぞれの内部に設けられる管路P1、P2、P3を第2の反応液が流通可能である。管路P1、P2、P3はそれぞれ連通している。管路P2は、管路P1の下端部から中心軸O1を中心に放射状に径方向外側に向かって延びている。管路P3は、管路P2の径方向外側の端部から中心軸O1に沿って下方に延びている。管路P2と管路P3は円柱部20の内部に形成されている。円柱部20の外周面20oに上下方向に間隔を空けて複数の給液部50bが設けられている。撹拌翼Wfが回転すると、回転軸3と円柱部20と接続棒11と多孔板18Pとが一体に回転する。接続棒11は、円柱部20の周方向に等間隔を空けて複数設けられている。接続棒11は2個以上設けられていることが好ましい。接続棒11は円柱部20の高さの概ね半分の位置に設けられているが、この例に限定されず、円柱部20の高さの概ね半分より上側か下側に設けられていても良い。
このような撹拌翼Wfでは、円柱部20の外周面20oに上下方向に間隔を空けて設けられた複数の給液部50bから第2の反応液L2が反応槽1内に供給され、反応槽1内の第1の反応液L1と混合し反応しながら、多孔板18Pの複数の孔18hを流通する。そのため、第1の反応液L1と第2の反応液L2とを、より均一に混合することができる。
多孔板18Pの複数の孔18hを通過した混合液は、反応槽1の内周1iに衝突し、その後、反応槽1の内周面1iに沿って上下方向に移動する。上下方向に移動した混合液は、撹拌翼Wfの回転により生じる遠心力に起因する径方向外側に向かう流れに引き寄せられて再び撹拌翼Wfの多孔板18Pの複数の孔18hを通って反応槽1の内周面1iに衝突し、その後、反応槽1の内周面1iに沿って上下方向に移動することで対流が生まれる。ここで、複数の孔18hを混合液が通過する際、絞り流路の効果により、混合液は径方向外側に加速されるので、混合液の径方向外向きの流速は、複数の孔18h近傍で最も高い。さらに、5m/秒以上50m/秒以下の周速で回転する撹拌翼Wfの円柱部20の外周面20o及び多孔板18Pの内外周面と、固定されている反応槽1の内周面1iとの間に存在する混合液には、周方向に剪断力が与えられる。混合液に与えられる剪断力は撹拌翼Wfの円柱部20の外周面2oと多孔板18Pの内外周面に近ければ近い程大きい。混合液に与えられる剪断力は、得られる粒子の粒子径と均一性を決定する大きな要因となる。特に与えられる剪断力が大きければ大きい程、微細な粒子径を持つ粒子を得ることができる。撹拌翼Wfを用いた場合、剪断力の影響をより多くの箇所に与えることができるため、均一で微細な粒子を製造することができる。
給液部50bから供給される第2の反応液L2は、剪断力の最も高い撹拌翼Wfの内外周、即ち、円柱部20の外周面20o及び多孔板18Pの内外周面から至近距離、例えば2mm以内、の範囲に供給することができる。
図9の例では、給液部50bが、円柱部20の上下方向に4個設けられているが、給液部50bの個数は図10の例に限定されず、反応槽1のサイズに応じて増減しても良い。
【0075】
このような晶析装置4fを含む第6の変形例に係る晶析システム10A6によれば、晶析装置4fにおける反応生成物の粒子径、粒度分布、真球度などの粒子品質に影響を与える剪断力、第1の反応液L1の循環量、スラリの滞留時間を個別に調整することができ、より一層、粒子品質の制御性能を向上することができる。
【0076】
<第1実施形態の第7の変形例>
以下、第1実施形態に係る晶析システム10Aの第7の変形例に係る晶析システム10A7を、図10を参照して説明する。
第7の変形例の晶析装置4gでは、第5の変形例の晶析装置4eの撹拌翼Weが撹拌翼Wgである点に相違がある。以下の説明では、撹拌翼Weとの相違点のみ説明し、重複している箇所の説明は省略する。
撹拌翼Wgは、図10に示されるように、第5の変形例の撹拌翼Weよりも、円柱部2の外周面20oと多孔板18Pの内周面との間隔が広い。また、撹拌翼Weにおける、径方向外側に開口する給液部50bから、さらに径方向外側に延びる延長管12が設けられており、延長管12の先端が給液部50bとされている。
このような撹拌翼Wgによれば、円柱部20の外周面20oと多孔板18Pの内周面との間隔を広くすることができるので、円柱部20と多孔板18Pとの間に、第1の反応液L1と、第2の反応液L2と、これらの混合液と、が流入し易くなる。そのため、反応液の循環を促進させることができるので、均一で微細な粒子を製造することができる。また、給液部50bから供給される第2の反応液L2は、剪断力の最も高い撹拌翼Wgの内外周、即ち、多孔板18Pの内外周面から至近距離、例えば2mm以内、の範囲に供給することができる。
【0077】
このような晶析装置4gを含む第7の変形例に係る晶析システム10A7によれば、晶析装置4gにおける反応生成物の粒子径、粒度分布、真球度などの粒子品質に影響を与える剪断力、第1の反応液L1の循環量、スラリの滞留時間を個別に調整することができ、より一層、粒子品質の制御性能を向上することができる。
【0078】
<第1実施形態の第8の変形例>
以下、第1実施形態に係る晶析システム10Aの第8の変形例に係る晶析システム10A8を、図11を参照して説明する。
第8の変形例の晶析装置4hでは、第6の変形例の晶析装置4fの撹拌翼Wfが撹拌翼Whである点に相違がある。以下の説明では、撹拌翼Wfとの相違点のみ説明し、重複している箇所の説明は省略する。
撹拌翼Whは、図11に示されるように、第8の変形例の撹拌翼Wfよりも、円柱部20の外周面20oと多孔板18Pとの間隔が広い。また、撹拌翼Wfにおける、径方向外側に開口する給液部50bから、さらに径方向外側に延びる延長管12が設けられており、延長管12の先端が給液部50bとされている。
このような撹拌翼Whによれば、円柱部20の外周面20oと多孔板18Pの内周面との間隔を広くすることができるので、円柱部20と多孔板18Pとの間に、第1の反応液L1と、第2の反応液L2と、これらの混合液と、が流入し易くなる。そのため、反応液の循環を促進させることができるので、均一で微細な粒子を製造することができる。また、給液部50bから供給される第2の反応液L2は、剪断力の最も高い撹拌翼Wgの内外周、即ち、多孔板18Pの内外周面から至近距離、例えば2mm以内、の範囲に供給することができる。
【0079】
このような晶析装置4hを含む第8の変形例に係る晶析システム10A8によれば、晶析装置4hにおける反応生成物の粒子径、粒度分布、真球度などの粒子品質に影響を与える剪断力、第1の反応液L1の循環量、スラリの滞留時間を個別に調整することができ、より一層、粒子品質の制御性能を向上することができる。
【0080】
上記の変形例のうち、給液部5bが下方に開口している、第1実施形態に係る晶析装置4の撹拌翼Wc、第1の変形例に係る晶析装置4aの撹拌翼W、及び、第4の変形例に係る晶析装置4dの撹拌翼Wdでは、第1の反応液L1と第2の反応液L2とを、より均一に混合することができる。
【0081】
<晶析方法>
なお、上記実施形態と変形例に記載される晶析システムを使用することで粒子を生成することを、晶析方法として見なすことができる。
【0082】
例えば、第1実施形態の晶析システム10Aは、複数の原料溶液を混合して前記複数の前記原料溶液の中の原料に由来する粒子を晶析装置4で成長させる晶析ステップと、晶析装置4の排出口6から排出される粒子を含むスラリD1を、蛇行形状をなす屈曲部Ppを有する循環管路Poを流動させることで晶析装置4の導入口5aまで循環させる循環ステップと、を含む晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第1実施形態の晶析装置システム10Aと同様の効果を得ることができる。
【0083】
さらに、第1実施形態の晶析システム10Aは、晶析システム10Aにおいて、循環管路Poの内径が一定である晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第1実施形態の晶析システム10Aと同様の効果を得ることができる。
【0084】
さらに、第2実施形態の晶析システム10Bは、晶析システム10Aにおいて、屈曲部Ppが複数設けられている晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第2実施形態の晶析システム10Bと同様の効果を得ることができる。
【0085】
さらに、第3実施形態の晶析システム10Cは、晶析システム10Aにおいて、屈曲部Ppの少なくとも一部が温度調節槽の中に設けられている晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第3実施形態の晶析システム10Cと同様の効果を得ることができる。
【0086】
さらに、第1実施形態の晶析システム10Aは、屈曲部Ppが、分離可能な、複数の直管部と複数の曲管部Cと、から構成されている晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第1実施形態の晶析システム10Aと同様の効果を得ることができる。
【0087】
さらに、第1実施形態の晶析システム10Aの第1の変形例に係る晶析システム10A1は、晶析システム10Aにおいて、晶析装置4aが、径方向に貫通する複数の孔hを備えるとともに中心軸O1回りに回転する撹拌翼Wと、この撹拌翼Wを同心状に内部に収容する有底円筒状の反応槽1と、この反応槽1の内部に第1の反応液L1を供給する導入口5aと、撹拌翼Wに設けられるとともに第2の反応液L2を供給可能な給液部5bと、を備え、第1の反応液L1を導入口5aから反応槽1に供給する第1給液ステップと、第2の反応液L2を給液部から反応槽1に供給する第2給液ステップと、を備える晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第1実施形態の晶析システム10Aの第1の変形例に係る晶析システム10A1と同様の効果を得ることができる。
【0088】
さらに、第1実施形態の晶析システム10Aの第1の変形例に係る晶析システム10A1は、晶析システム10A1において、撹拌翼Wが、円筒状の円筒部2と、円筒部2の内周面に外縁部が固定される円盤状の円盤部8と、円盤部8の平面視の中心から中心軸O1に沿って上方に延びる回転軸3と、をさらに備え、円盤部8と回転軸O1との内部を第2の反応液L2が流通可能であり、第2給液ステップでは円盤部8の外縁部から下方に向けて第2の反応液L2を供給する晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第1実施形態の晶析システム10Aの第1の変形例に係る晶析システム10A1と同様の効果を得ることができる。
【0089】
さらに、第1実施形態の晶析システム10Aの第2の変形例に係る晶析システム10A2は、第1実施形態の晶析システム10Aの第1の変形例に係る晶析システム10A1において、撹拌翼Wは、円筒状の円筒部2と、円筒部2の内周面2iに外縁部が固定される円盤状の円盤部8と、円盤部8の平面視の中心から中心軸に沿って上方に延びる回転軸O1と、をさらに備え、円盤部8と回転軸O1との内部を第2の反応液L2が流通可能であり、第2給液ステップでは円盤部8の外縁部から円筒部2を貫通して径方向外側に向けて第2の反応液L2を供給する晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第1実施形態の晶析システム10Aの第2の変形例に係る晶析システム10A2と同様の効果を得ることができる。
【0090】
さらに、第1実施形態の晶析システム10A、及び第1実施形態の晶析システム10Aの第3の変形例に係る晶析システム10A3は、第1実施形態の晶析システム10Aの第1の変形例の晶析システム10A1の撹拌翼W、及び第1実施形態の晶析システム10Aの第2の変形例の晶析システム10A2の撹拌翼Waにおいて、円盤部8より上側の円筒部2において、径方向に貫通する複数の孔hが閉塞されているとともに、円筒部2の内周面に外縁部が固定される円盤状の第2円盤部15が円筒部2の上端部に設けられている晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第1実施形態の晶析システム10A、及び第1実施形態の晶析システム10Aの第3の変形例に係る晶析システム10A3と同様の効果を得ることができる。
【0091】
さらに、第1実施形態の晶析システム10Aの第4の変形例に係る晶析システム10A4は、第1実施形態の晶析システム10Aの第1の変形例の晶析システム10A1の撹拌翼Wにおいて、円盤部8が撹拌翼Wの上端部に設けられる晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第1実施形態の晶析システム10Aの第4の変形例に係る晶析システム10A4と同様の効果を得ることができる。
【0092】
さらに、第1実施形態の晶析システム10Aの第5の変形例に係る晶析システム10A5は、第1実施形態の晶析システム10Aの第1の変形例に係る晶析システム10A1において、撹拌翼Wが、円柱状の円柱部20と、円柱部20の上端部に前記円柱部と同心状に設けられる円盤基部18と、円盤基部18の平面視の中心から中心軸O1に沿って上方に延びる回転軸3と、円柱部20の径方向外側に円柱部20と同心状に設けられる円筒状の多孔板18Pと、を備え、多孔板18Pは、円盤基部18の外縁から下方に延びており、回転軸O1と円盤基部18と円柱部20との内部を第2の反応液L2が流通可能であり、第2給液ステップでは、円柱部20の外周面20oに上下方向に間隔を空けて設けられた複数の給液部50bから径方向外側に向けて第2の反応液L2を供給する晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第1実施形態の晶析システム10Aの第5の変形例に係る晶析システム10A4と同様の効果を得ることができる。
【0093】
さらに、第1実施形態の晶析システム10Aの第6の変形例に係る晶析システム10A6は、第1実施形態の晶析システム10Aの第1の変形例に係る晶析システム10A1において、撹拌翼Wが、円柱状の円柱部20と、円柱部20の平面視の中心から中心軸O1に沿って上方に延びる回転軸3と、円柱部20の径方向外側に円柱部20と同心状に設けられる円筒状の多孔板18Pと、を備え、多孔板18Pは、円柱部20の外周面20oから径方向外側に延びる接続棒11に固定されており、回転軸O1と円柱部20との内部を第2の反応液L2が流通可能であり、第2給液ステップでは、円柱部20の外周面20oに上下方向に間隔を空けて設けられた複数の給液部50bから径方向外側に向けて第2の反応液L2を供給する晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第1実施形態の晶析システム10Aの第6の変形例に係る晶析システム10A6と同様の効果を得ることができる。
【0094】
さらに、第1実施形態の晶析システム10Aの第7の変形例に係る晶析システム10A7は、第1実施形態の晶析システム10Aの第5の変形例に係る晶析システム10A5、又は第1実施形態の晶析システム10Aの第6の変形例に係る晶析システム10A6において、複数の給液部50bから径方向外側に向かって延びる延長管12が設けられ、第2給液ステップでは、延長管12の先端から第2の反応液L2を供給する晶析方法と見なすことができる。このような晶析方法によれば、第1実施形態の晶析システム10Aの第7の変形例に係る晶析システム10A7及び第8の変形例に係る晶析システム10A8と同様の効果を得ることができる。
【0095】
以上、この発明の実施形態とその変形例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態とその変形例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等や実施形態と変形例の相互の組み合わせも含まれる。
【0096】
例えば、上記実施形態では、第1の反応液L1と第2の反応液L2との2種類の反応液を混合させて生成物を得たが、3種類以上の反応液を混合させても良い。
【符号の説明】
【0097】
1 反応槽
2 円筒部
3 回転軸
4 晶析装置
5a 導入口
5b 給液部
6 排出口
8 円盤部
9、h 孔
10A、10B、10C、10A1、10A2、10A3、10A4、10A5、10A6、10A7、10A8 晶析システム
22、23、24 配管
30 循環ポンプ
31 第2循環ポンプ
Po 循環管路
Pp 屈曲部
Po1、Po2、Po3、Po4、Po5、Po6 直管部
C、C、C、C、C、C 曲管部
W、Wa、Wb、Wc、Wd、We、Wf、Wg、Wh 撹拌翼
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11