(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135247
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】耐酸化性耐火物および連続鋳造用ノズル
(51)【国際特許分類】
B22D 11/10 20060101AFI20230921BHJP
B22D 41/54 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B22D11/10 330T
B22D41/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040362
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000244176
【氏名又は名称】明智セラミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】階戸 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】加知 圭介
【テーマコード(参考)】
4E014
【Fターム(参考)】
4E014DA00
4E014DB03
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、上部に位置する耐火物と当接する接合部に耐酸化性を付与することができ、鋼片の品質の低下や連続鋳造用ノズルの寿命の低下を抑制することができる耐酸化性耐火物およびそれを接合部に配した連続鋳造用ノズルを提供する。
【解決手段】本発明の耐酸化性耐火物10は、上部に位置する耐火物と当接する接合部として配される耐酸化性耐火物であって、Cを15~25重量%、Al
2O
3を30~50重量%、SiO
2を15~30重量%、CaOおよびSiO
2、またはCaO-SiO
2化合物を16~35重量%、SiC、B
4CおよびMe-Siを1~10重量%、MgOを5重量%以下配合して作製されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に位置する耐火物と当接する接合部として配される耐酸化性耐火物であって、該耐酸化性耐火物は、Cを15~25重量%、Al2O3を30~50重量%、SiO2を15~30重量%、CaOおよびSiO2、またはCaO-SiO2化合物を16~35重量%、SiC、B4CおよびMe-Siを1~10重量%、MgOを5重量%以下配合して作製されていることを特徴とする耐酸化性耐火物。
【請求項2】
前記耐酸化性耐火物の厚さは、1~50mmである請求項1に記載の耐酸化性耐火物。
【請求項3】
ノズル本体と、該ノズル本体内を貫通して形成され溶鋼が流通するためのノズル内孔と、上部に位置する耐火物と当接する接合部とを有し、該接合部として前記請求項1または2に記載の前記耐酸化性耐火物が配されていることを特徴とする連続鋳造用ノズルである。
【請求項4】
前記連続鋳造用ノズルは、クイックチェンジタイプの浸漬ノズルである請求項3に記載の連続鋳造用ノズル。
【請求項5】
前記連続鋳造用ノズルは、クイックチェンジタイプの浸漬ノズル以外の浸漬ノズルまたはロングノズルである請求項3に記載の連続鋳造用ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンディッシュからモールドに溶鋼を注入するクイックチェンジタイプの浸漬ノズルまたはそれ以外の浸漬ノズル、取鍋とタンディッシュとの間に配されるロングノズル等の連続鋳造に用いられる連続鋳造用ノズルにおいて、上部に位置する耐火物との接合部として使用して好適な耐酸化性耐火物およびその耐酸化性耐火物を上部に配した連続鋳造用ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
浸漬ノズルやロングノズル等の連続鋳造用ノズルでは、
図11に示すように、上部に位置する耐火物50と当接する接合部60の接合面(摺動面、嵌合面、シール面)60aの耐酸化性が重要となる。この接合面(摺動面、嵌合面、シール面)60aの耐酸化性が不十分であると酸化が進行し、シール性が低下してそれらの間隙から外気が侵入し、鋼片の品質の低下や連続鋳造用ノズルの寿命の低下に繋がる。特に、このクイックチェンジタイプの浸漬ノズル70では、接合面60aに酸化防止剤が塗布されないため接合部60の耐酸化性が極めて重要となる。
【0003】
本件出願人はこのような問題を解決する方法として、先に連続鋳造用ノズルの接合部に耐酸化性耐火物を配した連続鋳造用ノズル(例えば特開平9-1299号公報または特開2004-255389号公報)を提案した。
【0004】
これらのものも接合部に耐酸化性を付与するために有効であるが、本発明者は接合面の表面に溶融層を形成することで耐酸化性を向上させた耐酸化性耐火物を想起し鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-1299号公報
【特許文献2】特開2004-255389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち、本発明の課題は、上部に位置する耐火物と当接する接合部に耐酸化性を付与することができ、鋼片の品質の低下や連続鋳造用ノズルの寿命の低下を抑制することができる耐酸化性耐火物およびそれを接合部に配した連続鋳造用ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するものは、上部に位置する耐火物と当接する接合部として配される耐酸化性耐火物であって、該耐酸化性耐火物は、Cを15~25重量%、Al2O3を30~50重量%、SiO2を15~30重量%、CaOおよびSiO2、またはCaO-SiO2化合物を16~35重量%、SiC、B4CおよびMe-Siを1~10重量%、MgOを5重量%以下、配合して作製されていることを特徴とする耐酸化性耐火物である(請求項1)。
【0008】
前記耐酸化性耐火物の厚さ(縦方向の長さ)は、1~50mmであることが好ましい(請求項2)。
【0009】
また、上記課題を解決するものは、ノズル本体と、該ノズル本体内を貫通して形成され溶鋼が流通するためのノズル内孔と、上部に位置する耐火物と当接する接合部とを有し、該接合部として、前記請求項1または2に記載の前記耐酸化性耐火物が配されていることを特徴とする連続鋳造用ノズルである(請求項3)。
【0010】
前記連続鋳造用ノズルは、クイックチェンジタイプの浸漬ノズルであることが好ましい(請求項4)。前記連続鋳造用ノズルは、クイックチェンジタイプの浸漬ノズル以外の浸漬ノズルまたはロングノズルであってもよい(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した耐酸化性耐火物によれば、上部に位置する耐火物と当接する接合部に耐酸化性を付与することができ、鋼片の品質の低下や連続鋳造用ノズルの寿命の低下を抑制することができる。
請求項2に記載した耐酸化耐火物によれば、上記請求項1の効果をより確実に奏することができる。
請求項3に記載した連続鋳造用ノズルによれば、上部に位置する耐火物と当接する接合部に耐酸化性を付与することができ、鋼片の品質の低下や連続鋳造用ノズルの寿命の低下を抑制することができる。
請求項4に記載した連続鋳造用ノズルによれば、接合面に酸化防止剤が塗布されないクイックチェンジタイプの浸漬ノズルにおいて、上部に位置する耐火物と当接する接合部に耐酸化性を付与することができ、鋼片の品質の低下や連続鋳造用ノズルの寿命の低下を抑制することができる。
請求項5に記載した連続鋳造用ノズルによれば、クイックチェンジタイプの浸漬ノズル以外の浸漬ノズルまたはロングノズルにおいても、上部に位置する耐火物と当接する接合部に耐酸化性を付与することができ、鋼片の品質の低下や連続鋳造用ノズルの寿命の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の連続鋳造用ノズルの一実施例の縦断面図である。
【
図2】
図1に示した連続鋳造用ノズルに配された耐酸化性耐火物の平面拡大図である。
【
図3】本発明の耐酸化性耐火物の作用を説明するための説明図である。
【
図4】本発明の耐酸化性耐火物の一実施例の写真画像である。
【
図5】比較例の耐火物の作用を説明するための説明図である。
【
図7】気体の難通化試験およびその試験結果を説明するための説明図である。
【
図8】酸化量試験、溶損量試験および耐スポーリング性試験およびそれらの試験結果を説明するための説明図である。
【
図9】本発明の連続鋳造用ノズルの他の実施例の縦断面図である。
【
図10】本発明の連続鋳造用ノズルの他の実施例の縦断面図である。
【
図11】従来の連続鋳造用ノズルの作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、上部に位置する耐火物50と当接する接合部10として、Cを15~25重量%、Al2O3を30~50重量%、SiO2を15~30重量%、CaOおよびSiO2、またはCaO-SiO2化合物を16~35重量%、SiC、B4CおよびMe-Siを1~10重量%、MgOを5重量%以下配合して作製された耐酸化性耐火物が配されることで、鋼片の品質の低下や連続鋳造用ノズルの寿命の低下を抑制することができる耐酸化性耐火物およびそれを備えた連続鋳造用ノズル1を実現した。
【実施例0014】
本発明の連続鋳造用ノズルを
図1に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例の連続鋳造用ノズル1は、ノズル本体2と、ノズル本体2内を貫通して形成され溶鋼が流通するためのノズル内孔3と、上部に位置する耐火物50と当接する接合部10とを有し、接合部10は、Cを15~25重量%、Al
2O
3を30~50重量%、SiO
2を15~30重量%、CaOおよびSiO
2、またはCaO-SiO
2化合物を16~35重量%、SiC、B
4CおよびMe-Siを1~10重量%、MgOを5重量%以下配合して作製された耐酸化性耐火物であることを特徴とする連続鋳造用ノズルである。以下、各構成について順次詳述する。
【0015】
この実施例の連続鋳造用ノズル1は、タンディッシュとモールドとの間に配置され、溶鋼をタンディッシュからモールドへ注入する際に使用される浸漬ノズルである。
【0016】
この連続鋳造用ノズル1の上部には上記耐酸化性耐火物(接合部)10が配されており、その上面は、上部に位置する耐火物(この実施例では、溶鋼流量を制御するための耐火物)50との接合面(摺動面)10aに構成されている。接合部10の中央には、
図2に示すように溶融金属流通孔12が設けられている。
【0017】
この実施例の連続鋳造用ノズル1は、クイックチェンジタイプの浸漬ノズルである。一般的な浸漬ノズルの交換作業は、鋳造を一旦中断してタンディッシュを上昇させた後、モールドから引き上げて新品と交換する方法が採用されている。従って、交換作業に要する時間が長くなればモールド内の溶鋼が凝固し、連続鋳造を再開できなくなるため迅速に行うことが重要である。
【0018】
この点、クイックチェンジタイプの浸漬ノズル1は、タンディッシュを上昇させることなく浸漬ノズル1を短時間で交換できる。すなわち、上部に位置する耐火物(この実施例では、溶鋼流量を制御するための耐火物)50の下に、上端に接合面(摺動面)10aを有する浸漬ノズル1が水平方向に摺動可能に配され、鋳造を中断することなく、新しい浸漬ノズル1をモールド内溶鋼中に浸漬した状態で摺動機構部(図示しない)にセットし、浸漬ノズル1の接合面(摺動面)10aが上部に位置する耐火物50の下面を摺動しながら、使用中の浸漬ノズル1を瞬時に押し出すことで、新しい浸漬ノズル1を鋳造位置にセッ卜することができるタイプの浸漬ノズルである。
【0019】
ノズル本体2は、アルミナ-黒鉛質耐火物にて構成されており、略円筒体でその上部には首部7が一体成形されている。首部7は接合部10と共にメタルケース9で覆われて一体化されている。
【0020】
ノズル本体2の中心部には、溶鋼が流れるノズル内孔3がノズル本体2の上端から下方に向かって貫通して形成されている。ノズル内孔3は、上端開口8に連通しており、下部においては水平方向に対向して設けられた吐出口6a,6bに連通している。ノズル本体2のスラグラインに位置する部位付近2aはより耐食性が高い耐火物にて構成されている。
【0021】
連続鋳造用ノズル1の寸法は、例えば全長が約160mm、ノズル内孔3の直径が約60mm、ノズル本体2の直径が160mmである。そして、耐酸化性耐火物10の厚みは1から50mm程度である。なお、この寸法は一例であって、本発明を限定するものではなく、鋳造される鋳片の寸法により適宜設計変更される。
【0022】
そして、連続鋳造用ノズル1の最上部(首部7の上面)に設けられた接合部10として、本発明の耐酸化性耐火物が配されている。この耐酸化性耐火物は、Cを15~25重量%、Al2O3を30~50重量%、SiO2を15~30重量%、CaOおよびSiO2、またはCaO-SiO2化合物を16~35重量%、SiC、B4CおよびMe-Siを1~10重量%、MgOを5重量%以下配合して混練、成形および熱処理されて作製されている。
【0023】
Cは、耐火物の耐スポーリング性を高めるための成分である。Cが15重量%未満であると耐スポーリング性が低下し、25重量%を超えて配合されると耐溶損性が低下することから、Cの配合範囲は15~25重量%が適している。
【0024】
耐酸化性耐火物には、Al2O3が30~50重量%配合されている。Al2O3は、耐火物の強度と耐溶損性を高めるための成分であり、Al2O3が30重量%未満であると耐溶損性が低下し、50重量%を超えて配合されると耐スポーリング性が低下する。
【0025】
耐酸化性耐火物には、SiO2が15~30重量%配合されている。SiO2は接合部10の接合面10a表層に溶融層11を形成するために配合する成分である。SiO2が15重量%未満であると、耐スポーリング性が低下するからであり、30重量%を超えて配合されると耐溶損性が低下するからである。
【0026】
耐酸化性耐火物には、CaOおよびSiO2、またはCaO-SiO2化合物が16~35重量%配合されている。CaOも接合部10の接合面10a表層に溶融層11を形成するために配合する成分である。これらが接合部10の接合面10a表層に溶融層11を形成すると、上部に位置する耐火物50と接合面(摺動面)10aとがこの平滑な溶融層11によってシール性が向上し、上部に位置する耐火物50と接合面(摺動面)10aとの間隙への外気侵入が抑止され、接合面(摺動面)10aや連続鋳造用ノズル内部の酸化が抑制される。これにより、鋼片の品質の低下や連続鋳造用ノズルの寿命の低下も抑制される。
【0027】
CaOおよびSiO2、またはCaO-SiO2化合物の配合重量比率は、16~35重量%であることが好ましい。これは、16未満であると溶融層11の形成が不十分となり、35重量%を超えて配合すると、溶損量が高くなり過ぎるからである。なお、これらの配合には、CaO成分単体とSiO2成分単体との組み合わせ、CaO-SiO2化合物のみの他、CaO成分単体またはSiO2成分単体のいずれかとCaO-SiO2化合物の組み合わせも含まれる。
【0028】
耐酸化性耐火物には、SiC、B4CおよびMe-Siが1~10重量%配合されている。これらSiC、B4CおよびMe-Siは、材質の耐酸化性を向上させるために配合するものであり、SiC、B4CおよびMe-Siが1重量%未満であると、効果が不十分であり、SiC、B4CおよびMe-Si2が10重量%を超えて配合されると、耐スポーリング性が低下して亀裂が生じるおそれがあるからである。
【0029】
耐酸化性耐火物には、MgOが5重量%以下の範囲内で添加されている。MgOは、CaOおよびSiO2、またはCaO-SiO2と共に低融物を生成させるために添加される。なお、MgOの添加量を5重量%以下とするのは、MgOの添加量が5重量%を超えると、耐スポーリング性が低下して亀裂が生じるおそれがあるからである。
【0030】
上記成分を配合した組成物を耐酸化性耐火物に成形するためには、結合材として、熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂、フラン樹脂等を5~15重量%配合し、ノズルの形状に対応させて成形し焼成する。この成形方法は、均一に成形体を圧縮する点でCIPが好ましい。また、焼成温度は1000~1300℃程度が好ましい。さらに、焼成雰囲気としては酸化性雰囲気よりも還元性雰囲気、すなわち非酸化性雰囲気が配合した樹脂を酸化させない点から好ましい。
【0031】
連続鋳造用ノズル1の最上部(首部7の上面)に耐酸化性耐火物(接合部)10を配する方法としては、ノズル本体2の成形と同時に一体成形する方法、耐酸化性耐火物(接合部)10を別に成形および焼成しておき、モルタル等を介してノズル本体2の最上部(首部7の上面)に配置する方法等が挙げられる。
【0032】
(各種比較試験)
本発明の耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)および比較例の耐火物(比較例1ないし比較例9)について行った各種比較試験を以下説明する。
図8に示した表において、配合が異なる混合物に5~10重量%の範囲内の粉末及び溶液のフェノール樹脂を添加し、それらを混練して得られた組成物にて、
図3に示した30mm×30mm×30mmの寸法を有する成形体を作製した。得られた成形体の各々を1000℃から1200℃の範囲内の温度で還元焼成して
図8の表に示した本発明の耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)および比較例の耐火物(比較例1ないし比較例9)を作製した。
【0033】
(気体の難通化試験)
本発明の耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)および比較例の耐火物(比較例1)をそれぞれ酸化防止剤無添加で電気炉内に配し(
図3(a))、1350℃、1450℃または1550℃でそれぞれ加熱した。
【0034】
本発明の耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)は、1350℃、1450℃または1550℃のいずれの温度でも、耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)の接合面10aの周囲に溶融層11が形成され(
図3(b))、溶融層11によって外気を通さず気体の難通化効果を示した(
図3(c))。また、これらの断面は
図4の写真画像に示すように、酸化しておらず黒いままであり脱炭していなかった。この試験結果より、本発明の耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)では、連続鋳造用ノズルの接合面10aに溶融層11が形成されて接合部10の酸化が抑制されることが確認された。
【0035】
これに対して、比較例の耐火物(比較例1)は、1350℃、1450℃または1550℃のいずれの温度でも、耐火物の周囲に溶融層は形成されず(
図5(b))、外気を通し、気体の難通化効果を示さなかった(
図5(c))。これらの試験結果をまとめると、
図7のようになる。
また、これらの断面は
図6の写真画像に示すように、酸化して白くなり脱炭していた。この試験結果より、耐火物(比較例1)では、溶融層11が形成されず酸化が抑制されていないことが確認された。
【0036】
(酸化量試験)
本発明の耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)および従来の耐火物(比較例1ないし比較例9)をそれぞれ同一条件で加熱して加熱前と加熱後の重量差(減少量=酸化量)を測定する酸化量試験を行った。試験結果は比較例1を指数1とし指数が大きくなるほど酸化量が多いことを意味する。
【0037】
酸化量については、
図8に示した表にあるように、耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)はいずれも比較例1より低く抑えられることが確認された。
【0038】
(溶損量試験)
本発明の耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)および従来の耐火物(比較例1ないし比較例9)をそれぞれ、0.02から0.05重量%の範囲内のアルミニウムを含有する1550℃の温度の溶鋼中に10分間浸漬して溶損の進行具合を測定する溶損量試験を行った。試験結果は比較例1を指数1とし、指数が大きくなるほど溶損が進行していることとなる。
【0039】
溶損量については、
図8に示した表にあるように、耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)はいずれも比較例1より少し高くはなるが問題となる程度でないことが確認された。
【0040】
(耐スポーリング性試験)
本発明の耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)および従来の耐火物(比較例1ないし比較例9)をそれぞれ電気炉において1500℃の温度で30分間加熱し、その後、水によって急冷して耐スポーリング性を調査した。
【0041】
耐スポーリング性については、
図8に示した表にあるように、耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)および比較例1、3、4、7、9に割れは発生せず、他方、比較例2、5、6、8には亀裂が発生した。本発明の耐酸化性耐火物(実施例1ないし実施例5)については耐スポーリング性に関して特に問題は確認されなかった。
【0042】
つぎに、
図9に示した連続鋳造用ノズル20について説明する。
この実施例の連続鋳造用ノズル20と前述した連続鋳造用ノズル1は共に浸漬ノズルである点で同様であるが、連続鋳造用ノズル1がクイックチェンジタイプの浸漬ノズルであるのに対して、連続鋳造用ノズル20は一般的な浸漬ノズルである点で異なる。連続鋳造用ノズル1と同様の構成部分について同一符号を付し説明を省略する。このように、本発明の連続鋳造用ノズルには、クイックチェンジタイプの浸漬ノズル以外の浸漬ノズルも含まれる。
【0043】
さらに、
図10に示した連続鋳造用ノズル30について説明する。
この実施例の連続鋳造用ノズル30と前述した連続鋳造用ノズル1との基本的な相違は、連続鋳造用ノズル1が浸漬ノズルであるのに対して、連続鋳造用ノズル30がロングノズルである点である。
【0044】
この実施例の連続鋳造用ノズル30は、ノズル本体32と、ノズル本体32内を貫通して形成され溶鋼が流通するためのノズル内孔33と、上部に位置するコレクターノズルなどの耐火物40の接続面41と嵌合する嵌合面38を備えた接合部39とを有し、接合部39はCを15~25重量%、Al2O3を30~50重量%、SiO2を15~30重量%、CaOおよびSiO2、またはCaO-SiO2化合物を16~35重量%、SiC、B4CおよびMe-Siを1~10重量%、MgOを5重量%以下、配合して作製された耐酸化性耐火物にて構成されているロングノズルである。34は内孔面、35は下端開口、36は上端開口、32aはノズル本体2のスラグラインに位置する部位付近以下に配されたより耐食性が高い耐火物である。このように本発明の連続鋳造用ノズルの範疇にはロングノズルも包含される。