IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 明智セラミックス株式会社の特許一覧

特開2023-135248難付着性耐火物および連続鋳造用ノズル
<>
  • 特開-難付着性耐火物および連続鋳造用ノズル 図1
  • 特開-難付着性耐火物および連続鋳造用ノズル 図2
  • 特開-難付着性耐火物および連続鋳造用ノズル 図3
  • 特開-難付着性耐火物および連続鋳造用ノズル 図4
  • 特開-難付着性耐火物および連続鋳造用ノズル 図5
  • 特開-難付着性耐火物および連続鋳造用ノズル 図6
  • 特開-難付着性耐火物および連続鋳造用ノズル 図7
  • 特開-難付着性耐火物および連続鋳造用ノズル 図8
  • 特開-難付着性耐火物および連続鋳造用ノズル 図9
  • 特開-難付着性耐火物および連続鋳造用ノズル 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135248
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】難付着性耐火物および連続鋳造用ノズル
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20230921BHJP
   B22D 41/54 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B22D11/10 330T
B22D41/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040363
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000244176
【氏名又は名称】明智セラミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】階戸 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 正成
【テーマコード(参考)】
4E014
【Fターム(参考)】
4E014DA00
4E014DB03
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、連続鋳造用ノズルの溶鋼稼働面に液相膜が形成される温度範囲を広げることができ、鋼種によって、または予熱温度が不十分な場合であっても、連続鋳造用ノズルの溶鋼と接触する部位にアルミナ等の非金属介在物が付着することを抑制して鋼片の品質低下および内孔の狭窄または閉塞を防止することができる難付着性耐火物およびその難付着性耐火物を配した連続鋳造用ノズルを提供する。
【解決手段】本発明の難付着性耐火物10は、連続鋳造用ノズル1の内孔面に配される難付着性耐火物であって、難付着性耐火物10は、ロー石を30~45重量%、アルミナを45~55重量%、CaOおよびSiO、またはCaO-SiO化合物を5~20重量%、MgOを15重量%以下、配合して作製されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造用ノズルの内孔面に配される難付着性耐火物であって、該難付着性耐火物は、ロー石を30~45重量%、アルミナを45~55重量%、CaOおよびSiO、またはCaO-SiO化合物を5~20重量%、MgOを15重量%以下、配合して作製されていることを特徴とする難付着性耐火物。
【請求項2】
前記難付着性耐火物には、黒鉛質原料が添加されていない請求項1に記載の難付着性耐火物。
【請求項3】
前記難付着性耐火物には、SiCが5重量%以下添加されている請求項1または2のいずれかに記載の難付着性耐火物。
【請求項4】
ノズル本体と、該ノズル本体内を貫通して形成され溶鋼が流通するためのノズル内孔とを有し、該ノズル内孔の内孔面には、前記請求項1ないし3のいずれかに記載の前記難付着性耐火物が配されていることを特徴とする連続鋳造用ノズル。
【請求項5】
前記連続鋳造用ノズルは、鋳型内溶鋼に浸漬される部分全体が前記難付着性耐火物にて作製されている請求項4に記載の連続鋳造用ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンディッシュからモールドに溶鋼を注入する浸漬ノズル、ロングノズル、タンディッシュ上ノズル等の連続鋳造に用いられる連続鋳造用ノズルにおいて、溶鋼と接触する内孔面に配して好適な難付着性耐火物およびその難付着性耐火物を内孔面に配した連続鋳造用ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼片の鋳造に際して、連続鋳造用ノズルの内孔面では、溶鋼中のアルミナ等の非金属介在物が付着・合体・脱落を繰り返し、それらが溶鋼流と共に鋼片内に取り込まれて鋼片の欠陥となり品質の低下を招くことがある。また、連続鋳造用ノズルの内孔面にアルミナ等の非金属介在物が付着して内孔を狭窄ひいては閉塞させることがある。
【0003】
本件出願人はこの問題を解決する方法として、先に連続鋳造用ノズルを構成する耐火物や内孔面に配する耐火物に、ロー石を主成分として組成された耐火物を使用した連続鋳造用ノズル(例えば特開平10-166117号公報、特開平11-114659号公報、特開平11-285792号公報または特開2014-73528号公報)を提案した。
【0004】
ところで、上記ロー石を主成分とした耐火物がアルミナ等の非金属介在物に対して難付着機能を有するのは、ロー石の半溶融温度が1500℃前後であるため、溶鋼稼働面にガラス皮膜の液相膜を形成するためである。
【0005】
しかし、ロー石の半溶融温度は1500℃前後であり溶鋼温度に近いため、鋼種によっては溶鋼稼働面に液相膜が十分に形成されないことがあった。また、連続鋳造用ノズルの予熱温度が不十分の場合、ロー石が溶融されず溶鋼稼働面に液相膜が形成されないことから、アルミナ等の非金属介在物に対する難付着機能が十分に発揮されないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-166117号公報
【特許文献2】特開平11-114659号公報
【特許文献3】特開平11-285792号公報
【特許文献4】特開2014-73528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、連続鋳造用ノズルの溶鋼稼働面に液相膜が形成される温度範囲を広げることができ、鋼種によって、または予熱温度が不十分な場合であっても、連続鋳造用ノズルの溶鋼と接触する部位(溶鋼稼働面)にアルミナ等の非金属介在物が付着することを抑制して鋼片の品質低下および内孔の狭窄または閉塞を防止することができる難付着性耐火物およびその難付着性耐火物を配した連続鋳造用ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するものは、連続鋳造用ノズルの内孔面に配される難付着性耐火物であって、該難付着性耐火物は、ロー石を30~45重量%、アルミナを45~55重量%、CaOおよびSiO、またはCaO-SiO化合物を5~20重量%、MgOを15重量%以下、配合して作製されていることを特徴とする難付着性耐火物である(請求項1)。
【0009】
前記難付着性耐火物には、黒鉛質原料が添加されていないことが好ましい(請求項2)。前記難付着性耐火物には、SiCが5重量%以下添加されていてもよい(請求項3)。
【0010】
また、上記課題を解決するものは、ノズル本体と、該ノズル本体内を貫通して形成され溶鋼が流通するためのノズル内孔とを有し、該ノズル内孔の内孔面には、前記請求項1ないし3のいずれかに記載の前記難付着性耐火物が配されていることを特徴とする連続鋳造用ノズルである(請求項4)。
【0011】
前記連続鋳造用ノズルは、鋳型内溶鋼に浸漬される部分全体が前記難付着性耐火物にて作製されていてもよい(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した難付着性耐火物によれば、連続鋳造用ノズルの溶鋼稼働面に液相膜が形成される温度範囲を広げることができ、鋼種によって、または予熱温度が不十分な場合であっても、連続鋳造用ノズルの溶鋼と接触する部位にアルミナ等の非金属介在物が付着することを抑制して鋼片の品質低下および内孔の狭窄または閉塞を防止することができる。
請求項2に記載した難付着性耐火物によれば、黒鉛質原料を添加しないことで溶鋼稼働面の平滑性をより高くすることができる。
請求項3に記載した難付着性耐火物によれば、SiCを添加することにより耐酸化性を向上させることができ、予熱時に酸化して難付着性能が低下することを抑制できる。
請求項4または5に記載した連続鋳造用ノズルによれば、連続鋳造用ノズルの溶鋼稼働面に液相膜が形成される温度範囲を広げることができ、鋼種によって、または予熱温度が不十分な場合であっても、連続鋳造用ノズルの溶鋼と接触する部位にアルミナ等の非金属介在物が付着することを抑制して鋼片の品質低下および内孔の狭窄または閉塞を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の連続鋳造用ノズルの一実施例の縦断面図である。
図2図1に示した連続鋳造用ノズルの作用を説明するための説明図である。
図3】本発明の難付着性耐火物の一実施例を説明するための断面写真画像である。
図4】本発明の難付着性耐火物の作用を説明するための説明図である。
図5】比較例の耐火物の作用を説明するための説明図である。
図6】本発明の連続鋳造用ノズルの他の実施例の縦断面図である。
図7】従来の連続鋳造用ノズルの作用を説明するための説明図である。
図8】従来の耐火物を説明するための断面写真画像である。
図9】気体の難通化試験およびその試験結果を説明するための説明図である。
図10】付着量試験、溶損量試験および耐スポーリング性試験およびそれらの試験結果を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、ロー石を30~45重量%、アルミナを45~55重量%、CaOおよびSiO、またはCaO-SiO化合物を5~20重量%、MgOを15重量%以下、配合して作製された難付着性耐火物10を内孔面4に配することで、連続鋳造用ノズルの溶鋼稼働面に液相膜が形成される温度範囲を広げることができ、鋼種によって、または予熱温度が不十分な場合であっても、連続鋳造用ノズルの溶鋼と接触する部位にアルミナ等の非金属介在物(低融点介在物)が付着することを抑制して鋼片の品質低下および内孔の狭窄または閉塞を防止することができる連続鋳造用ノズル1を実現した。
【実施例0015】
本発明の連続鋳造用ノズルを図1に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例の連続鋳造用ノズル1は、ノズル本体2と、ノズル本体2内を貫通して形成され溶鋼が流通するためのノズル内孔3とを有し、ノズル内孔3の内孔面4には、ロー石を30~45重量%、アルミナを45~55重量%、CaOおよびSiO、またはCaO-SiO化合物を5~20重量%、MgOを15重量%以下、配合して作製された難付着性耐火物10が配されている。以下、各構成について順次詳述する。
【0016】
この実施例の連続鋳造用ノズル1は、タンディッシュとモールドとの間に配置され、溶鋼をタンディッシュからモールドへ注入する際に使用される浸漬ノズルである。この連続鋳造用ノズル1の溶鋼が流れるノズル内孔3の内孔面4には上記難付着性耐火物10が配されており、ノズル本体2は従来のアルミナ-黒鉛質耐火物にて構成されている。
【0017】
ノズル本体2は、略円筒体でその上部には上方に向かって拡径した首部7が一体成形されている。ノズル本体2の中心部には、溶鋼が流れるノズル内孔3がノズル本体2の上端から下方に向かって貫通して形成されている。ノズル内孔3は、上端開口8に連通しており、下部においては水平方向に対向して設けられた吐出口6a,6bに連通している。
【0018】
連続鋳造用ノズル1の寸法は、例えば全長が約160mm、ノズル内孔3の直径が約60mm、ノズル本体2の直径が160mmであり、肉厚が約50mmである。そして、難付着性耐火物10の厚みは2から15mm程度である。なお、この寸法は一例であって、本発明を限定するものではなく、鋳造される鋳片の寸法により適宜設計変更される。
【0019】
他方、図6に示した連続鋳造用ノズル20は、鋳型内溶鋼に浸漬される部分全体を上記難付着性耐火物10にて作製した浸漬ノズルであり、他は連続鋳造用ノズル1と同様である。連続鋳造用ノズル1と同一構成部分について同一符号を付す。
【0020】
そして、ノズル内孔3の内孔面4の内側には本発明の難付着性耐火物10が配されている。この難付着性耐火物10は、アルミナとロー石とを主成分とし、CaOおよびSiO、またはCaO-SiO化合物、MgO等を添加して混練、成形および熱処理されたものである。
【0021】
難付着性耐火物10の主成分の一つであるアルミナは、難付着性耐火物10の強度を付与すると共に液相膜の粘性を上げるための成分である。アルミナの配合重量比率が45重量%未満であると耐溶損性が低下し、55重量%を超えて配合されると難付着性が低下することから、45~55重量%の範囲が好ましい。
【0022】
難付着性耐火物10の主成分の他の一つであるロー石は、半溶融温度が1500℃前後であり、溶鋼と接触する溶鋼稼動面12において溶融しガラス皮膜の液相膜11を形成することから、溶鋼稼動面12の組織を平滑にし、このガラス皮膜の液相膜11により耐火物組織を通しての空気の巻き込みを抑制する。
【0023】
具体的には、図2に示すように、難付着性耐火物10がノズル内孔3の内孔面4に配された連続鋳造用ノズル1は、連続鋳造が稼働している間にノズル内孔3に溶鋼15が通り、または溶鋼15中に浸漬されることによって、溶鋼と接触する部位に難付着性耐火物10が液相化した液相膜11が形成される。液相膜11は、液相化した難付着性耐火物10によって表面の凹凸を均し、溶鋼と接触する側に平滑な溶鋼稼働面12を形成する。液相膜11の厚さは、0.5mm~1.0mm程度であって、連続鋳造の稼動直後は薄く、連続鋳造の稼動中に漸次厚くなり、所定の厚さで平衡して安定するように形成される。これは溶鋼流によって液相膜11が剥がれ落ち、溶鋼の熱によって漸次液相化された新たな液相膜11が形成されるからである。連続鋳造の稼動中は、このような平滑な液相膜11が絶えず形成されることにより、溶鋼中のアルミナ13等による非金属介在物(低融点介在物)14が溶鋼稼働面12に付着することが抑制されるため、ノズル閉塞の進行を抑制することができ、早期のノズル閉塞が防止される。
【0024】
また、緻密化された液相膜11は、高温環境下の連続鋳造用ノズル1のノズル本体2内で発生した一酸化炭素ガス(COガス)をはじめとする各種ガス16の通過を妨げる難通化効果を発揮する。これによって、溶鋼15中に例えば一酸化炭素ガス16を起因とするアルミナの発生を抑制し、当該アルミナに係る非金属介在物(低融点介在物)14が析出することを抑制でき、発生した非金属介在物(低融点介在物)14が溶鋼稼働面12に付着して連続鋳造用ノズル1を閉塞することを抑制できる。
【0025】
ロー石の配合重量比率は、内孔面4にガラス皮膜の液相膜11を積極的に生成させ、かつ、耐スポーリング性を維持するために30重量%以上が好ましい。ロー石が45重量%を超えて配合されると耐溶損性が低下するから、45重量%以下であることが好ましい。
【0026】
ロー石の種類としては、パイロフィライト質ロー石、カオリン質ロー石、セリサイト質ロー石の三種類いずれも使用できるが、使用時に溶鋼と接触する溶鋼稼働面12が半溶融化し、液相膜11の形成と溶鋼15との耐溶損性を考えると耐火度SK29~32のパイロフィライト質ロー石が好ましい。カオリン質ロー石では耐火度がSK33~36と高く、逆にセリサイト質ロー石では耐火度がSK26~29と低いのでいずれも望ましくないからである。
【0027】
ロー石としては、800℃以上で仮焼し、結晶水を消失させたロー石を使用することが好ましい。仮焼しないロー石を配合して成形したノズルを焼成すると、ロー石中の結晶水が500~800℃で放出され、この時、熱膨張率が異常に大きくなり、成形体に亀裂が入るためである。
【0028】
ロー石は、粒径250μm以下を全ロー石配合比量の60重量%以下としたものであることが好ましい。ロー石の粒度が平均粒径250μm以下をロー石配合重量比の60%以上とした場合には、成形時のラミネーション等の組織欠陥を生じやすく、また連続鋳造用ノズルとしての使用時においては、ロー石粒子の軟化変形が生じやすいため60%以下であることが好ましい。
【0029】
CaOおよびSiO、またはCaO-SiO化合物は、液相膜11が形成される温度を下げて液相膜11を生成し易くするため配合するものであり、これらにより、液相膜11が形成される温度範囲が広くなる。
【0030】
具体的には、鋼種によって、または予熱温度が不十分な場合、図7に示すように従来のロー石を配合した耐火物30を配しても、温度がロー石の溶融温度に達しないと液相膜11が形成されないことがあったが、CaOおよびSiO、またはCaO-SiO化合物が配合されることにより、温度がロー石の溶融温度に達しない場合でも、連続鋳造の稼動中は、平滑な液相膜が絶えず形成され、ロー石を配合することによる上記効果(アルミナ等の非金属介在物(低融点介在物)の付着抑制効果およびガスの難通化効果)をより確実に発揮することができる。
【0031】
CaOおよびSiO、またはCaO-SiO化合物の配合重量比率は5~20重量%であることが好ましい。これは、5重量%未満であると、液相膜を生成し易くする上記効果が十分でないからであり、20重量%を超えて配合されると、耐溶損性が異常に低下するからである。なお、これらの配合には、CaO成分単体とSiO成分単体との組み合わせ、CaO-SiO化合物のみの他、CaO成分単体またはSiO成分単体のいずれかとCaO-SiO化合物の組み合わせも含まれる。
【0032】
難付着性耐火物10には、MgOが15重量%以下の範囲内で添加されている。MgOが添加されるのは、ロー石よりMgOを添加した方がより低融点化できるからである。なお、MgOの添加量を15重量%以下とするのは、MgOの添加量が15重量%を超えると、耐スポーリング性が低下するからである。
【0033】
難付着性耐火物10には、黒鉛質原料が添加されないことが好ましい。黒鉛質原料を添加しないことにより、断熱性能がより優れたものとなり、溶鋼稼働面12をより平滑にできるからである。
【0034】
難付着性耐火物10には、SiCが5重量%以下の範囲内で添加されていてもよい。SiCを添加することにより耐酸化性を向上させることができ、予熱時に酸化して難付着性能が低下することを抑制できる。なお、SiCの添加量を5重量%以下とするのは、SiCの添加量が5重量%を超えると、耐溶損性が低下するからである。
【0035】
上記主成分であるアルミナとロー石に、CaOおよびSiO、またはCaO-SiO化合物等を配合または添加した組成物を難付着性耐火物10に成形するためには、結合材として、熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂、フラン樹脂等を5から15重量%配合し、ノズルの形状に対応させて成形し焼成する。この成形方法は、均一に成形体を圧縮する点でCIPが好ましい。また、焼成温度は1000から1300℃程度が好ましい。さらに、焼成雰囲気としては酸化性雰囲気よりも還元性雰囲気、すなわち非酸化性雰囲気が配合した樹脂を酸化させない点から好ましい。
【0036】
内孔3の内孔面3aに難付着性耐火物10を配する方法としては、ノズル本体2の成形と同時に一体成形する方法、ノズル本体2のみを成形した後、ノズル内孔3の内孔面にコーティングしたり流し込み成形する方法、さらには、難付着性耐火物10を別に成形および焼成しておき、モルタル等を介してノズル本体2に配置する方法等が挙げられる。
【0037】
(各種比較試験)
本発明の難付着性耐火物(実施例1ないし4)および従来のロー石を配合した耐火物(比較例1ないし9)について行った各種比較試験を以下説明する。
図10に示した表において、配合が異なる混合物に5~10重量%の範囲内の粉末及び溶液のフェノール樹脂を添加し、それらを混練して得られた組成物にて、図4に示した30mm×30mm×300mmの寸法を有する成形体を作製した。得られた成形体の各々を1000℃から1200℃の範囲内の温度で還元焼成して図10の表に示した本発明の難付着性耐火物(実施例1ないし実施例4)および従来のロー石を配合した耐火物(比較例1ないし比較例9)を作製した。
【0038】
(気体の難通化試験)
本発明の難付着性耐火物(上記実施例1ないし実施例4)および従来のロー石を配合した耐火物(上記比較例1)(図4(a))をそれぞれ酸化防止剤無添加で電気炉内に配し、1450℃と1550℃でそれぞれ加熱した。
【0039】
従来のロー石を配合した耐火物(比較例1)は、1550℃の温度では、ロー石を配合した耐火物(比較例1)の周囲に液相膜11が形成され(図4(b))、液相膜11によって外気を通さず気体の難通化効果を示した(図4(c))。また、この断面は、酸化しておらず黒いままであり脱炭していなかった(図3)。
【0040】
しかし、従来のロー石を配合した耐火物(比較例1)は、1450℃の温度(ロー石の半溶融温度より低い低温域)では、ロー石を配合した耐火物(比較例1)の周囲に液相膜が形成されず(図5(b))、外気を通し、気体の難通化効果を示さなかった(図5(c))。また、この断面は、酸化して白くなり脱炭していた。これらの試験結果をまとめると、図9のようになる。
これらのことより、耐火物(比較例1)では、鋼種によってまたは予熱温度が不十分な場合等、ロー石の半溶融温度より低い低温域においては液相膜が形成されず、液相膜が形成されることによる効果(アルミナ等の非金属介在物の付着抑制効果およびガスの難通化効果)が得られないことが確認された。
【0041】
これに対して、本発明の難付着性耐火物(実施例1ないし実施例4)は、1450℃と1550℃のいずれの温度でも、難付着性耐火物(実施例1ないし実施例4)周囲に液相膜11が形成され(図4(b))、液相膜11によって外気を通さず気体の難通化効果を示した(図4(c))。また、これらの断面は、酸化しておらず黒いままであり脱炭していなかった(図3)。
これらの試験結果より、本発明の難付着性耐火物(実施例1ないし実施例4)では、連続鋳造用ノズルの溶鋼稼働面に液相膜が形成される温度範囲を広げられており、鋼種によってまたは予熱温度が不十分な場合でも液相膜が形成され、ロー石を配合することによる効果(アルミナ等の非金属介在物の付着抑制効果およびガスの難通化効果)を発揮することが確認された。
【0042】
(付着量試験および溶損量試験)
本発明の難付着性耐火物(実施例1ないし実施例4)および従来のロー石を配合した耐火物(比較例1ないし比較例9)をそれぞれ、0.02から0.05重量%の範囲内のアルミニウムを含有する1550℃の温度の溶鋼中に10分間浸漬して、溶鋼稼働面に対する付着物の最大厚さを測定する付着量試験と、溶損の進行具合を測定する溶損量試験を行った。いずれの試験結果も比較例1を指数1とし、指数が大きくなるほど、付着量が多く、溶損が進行していることとなる。
【0043】
付着量については、図10に示した表にあるように、難付着性耐火物(実施例1ないし実施例4)はいずれも比較例1より低く抑えられ、同様に付着量が低く抑えられる比較例2ないし比較例4に比して溶損量も抑えられることが確認された。
【0044】
(耐スポーリング性試験)
本発明の難付着性耐火物(実施例1ないし実施例4)および従来のロー石を配合した耐火物(比較例1ないし比較例9)をそれぞれ電気炉において1500℃の温度で30分間加熱し、その後、水によって急冷して耐スポーリング性を調査した。
【0045】
耐スポーリング性については、図10に示した表にあるように、難付着性耐火物(実施例1ないし実施例4)および従来のロー石を配合した耐火物(比較例7を除く。)に割れは発生せず、比較例7のみに亀裂が発生した。比較例7と実施例4との相違は、比較例7が実施例4のSiC5重量%に代えてMgO5重量%を追加してMgO20重量%とした点であり、これによって耐スポーリング性が低下したと推測される。本発明の難付着性耐火物(実施例1ないし実施例4)については耐スポーリング性に関して特に問題は確認されなかった。
【0046】
上記各種試験の結果から、ロー石を30~45重量%、アルミナを45~55重量%、CaOおよびSiO、またはCaO-SiO化合物を5~20重量%、MgOを15重量%以下、配合して作製された難付着性耐火物10をノズル内孔に配することで、連続鋳造用ノズルの溶鋼稼働面に液相膜が形成される温度範囲を広げることができ、鋼種によって、または予熱温度が不十分な場合であっても、連続鋳造用ノズルの溶鋼と接触する部位にアルミナ等の非金属介在物(低融点介在物)が付着することを抑制して鋼片の品質低下および内孔の狭窄または閉塞を防止できることが確認された。
【符号の説明】
【0047】
1 連続鋳造用ノズル
2 ノズル本体
3 ノズル内孔
4 内孔面
5 耐火物
6 吐出口
7 首部
8 上端開口
10 難付着性耐火物
11 液相膜
12 溶鋼稼働面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10