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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135253
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】胆汁吸引カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/14 20060101AFI20230921BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20230921BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
A61M25/14 518
A61M1/00 160
A61M25/00 530
A61M25/14 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040372
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 慶太
【テーマコード(参考)】
4C077
4C267
【Fターム(参考)】
4C077AA15
4C077DD19
4C267AA02
4C267AA03
4C267AA39
4C267BB02
4C267BB09
4C267BB12
4C267BB38
4C267CC22
(57)【要約】
【課題】胆管内の奥に溜まった胆汁を好適に吸引し除去することができる胆汁吸引カテーテルを提供する。
【解決手段】胆管に挿入して胆汁を吸引するためのカテーテル1であって、近位側から遠位側へ長手方向に延在するシャフト2と、シャフト2に設けられ、長手方向に延在し、遠位端に液体吐出口5を有する第1ルーメン4と、シャフト2に設けられ、長手方向に延在し、遠位端に液体吸引口8を有する第2ルーメン7とを有し、液体吐出口5は液体吸引口8よりも3mm以上10mm以下遠位側に位置し、シャフト2は、遠位端から少なくとも近位側に250mm以内の範囲における外径が4.0mm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胆管に挿入して胆汁を吸引するためのカテーテルであって、
近位側から遠位側へ長手方向に延在するシャフトと、
前記シャフトに設けられ、長手方向に延在し、遠位端に液体吐出口を有する第1ルーメンと、
前記シャフトに設けられ、長手方向に延在し、遠位端に液体吸引口を有する第2ルーメンとを有し、
前記液体吐出口は、前記液体吸引口よりも3mm以上10mm以下遠位側に位置し、
前記シャフトは、遠位端から少なくとも近位側に250mm以内の範囲における外径が4.0mm以下である胆汁吸引カテーテル。
【請求項2】
前記シャフトは、前記液体吸引口から近位側に所定の長さを有する第1区間と、前記第1区間よりも近位側の第2区間を有し、
前記第2区間における前記シャフトの外径は、前記第1区間における前記シャフトの外径よりも大きい請求項1に記載の胆汁吸引カテーテル。
【請求項3】
前記第2区間における前記第1ルーメンの内径は、前記第1区間における前記第1ルーメンの内径よりも大きく、
前記第2区間における前記第2ルーメンの内径は、前記第1区間における前記第2ルーメンの内径よりも大きい請求項2に記載の胆汁吸引カテーテル。
【請求項4】
前記第1区間の長さは50mm以上200mm以下である請求項2または3に記載の胆汁吸引カテーテル。
【請求項5】
前記第1区間における前記シャフトの外径は2.5mm以下である請求項2~4のいずれか一項に記載の胆汁吸引カテーテル。
【請求項6】
前記シャフトの長手方向に垂直な断面において、前記第2ルーメンの断面積は前記第1ルーメンの断面積よりも大きい請求項1~5のいずれか一項に記載の胆汁吸引カテーテル。
【請求項7】
前記液体吸引口の外縁は傾斜部を有し、前記傾斜部の遠位端は前記傾斜部の近位端よりも前記第1ルーメンの近くに位置する請求項1~6のいずれか一項に記載の胆汁吸引カテーテル。
【請求項8】
前記液体吸引口よりも遠位側において、前記シャフトは遠位端に向かって外径が小さくなるテーパー部を有する請求項1~7のいずれか一項に記載の胆汁吸引カテーテル。
【請求項9】
前記液体吐出口から吐出する液体は生理食塩水である請求項1~8のいずれか一項に記載の胆汁吸引カテーテル。
【請求項10】
前記第1ルーメンはガイドワイヤルーメンを兼ねている請求項1~9のいずれか一項に記載に記載の胆汁吸引カテーテル。
【請求項11】
肝内胆管に挿入するものである請求項1~10のいずれか一項に記載の胆汁吸引カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆汁吸引カテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
胆石や腫瘍等によって胆管が閉塞したり、胆管内で胆汁の流れが阻害されることにより、胆汁が胆管内に停滞し、細菌感染を引き起こす場合がある。胆汁の細菌感染は胆管炎を招き、さらに細菌を含んだ胆汁が肝臓を通って全身の血液中に流入すると敗血症を引き起こすおそれがある。このような場合、胆管内から胆汁を排出する処置が必要となり、経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD)や内視鏡的胆管ドレナージ(ERBD)などが行われる。
【0003】
胆管内に挿入して用いられるカテーテルとして、例えば特許文献1には、遠位端側が胆管内に挿入されるカテーテルチューブを備える胆管用ドレナージカテーテルであって、カテーテルチューブは、外径が長手方向に沿って実質的に同一である本体部と、本体部の遠位端側に連なり、遠位端側に向かって外径が細くなる第1テーパー部と、第1テーパー部の遠位端側に連なり、外径が長手方向に沿って実質的に同一である細径直胴部と、細径直胴部の遠位端側に連なり、遠位端側に向かって外径が細くなる第2テーパー部とを有し、細径直胴部の外径が本体部の外径の20~80%であり、細径直胴部の長さが30~250mmである胆管用ドレナージカテーテルが開示されている。特許文献2には、所定の医療行為を行う作業用処置具が挿通自在な複数のルーメンが配設された長尺な挿入部と、挿入部の先端から延設され挿入部を案内するガイド部とを具備し、ガイド部の先端面に開口部が形成され、挿入部およびガイド部に流体供給ルーメンが形成された細長医療部材が開示されている。特許文献2には、挿入部の先端にある開口部から胆管内の胆汁を吸引してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-329314号公報
【特許文献2】特開2011-251140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
胆管内の胆汁をカテーテルにより吸引する場合、胆管入口側の総胆管だけでなく胆管の奥にある肝内胆管内の胆汁も吸引できることが望ましく、これにより胆管内の胆汁の取り残しを少なくすることができる。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、胆管内の奥に溜まった胆汁を好適に吸引し除去することができる胆汁吸引カテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することができた本発明の胆汁吸引カテーテルとは、胆管に挿入して胆汁を吸引するためのカテーテルであって、近位側から遠位側へ長手方向に延在するシャフトと、シャフトに設けられ、長手方向に延在し、遠位端に液体吐出口を有する第1ルーメンと、シャフトに設けられ、長手方向に延在し、遠位端に液体吸引口を有する第2ルーメンとを有し、液体吐出口は、液体吸引口よりも3mm以上10mm以下遠位側に位置し、シャフトは、遠位端から少なくとも近位側に250mm以内の範囲における外径が4.0mm以下であるところに特徴を有する。
【0007】
本発明の胆汁吸引カテーテルは、シャフトの遠位部の胆管内に挿入する部分の外径が4.0mm以下と細く形成されているため、胆管内の奥まで、例えば総胆管を通って肝内胆管まで挿入することができる。シャフトの遠位部を胆管内に挿入した後は、液体吐出口から洗浄液を胆管内に吐出することにより、胆管内に溜まった胆汁を希釈することができる。そのため、胆管内に溜まった胆汁の粘度を下げることができ、液体吸引口から胆汁を吸引することが容易になる。また、液体吐出口が液体吸引口よりも3mm以上10mm以下遠位側に位置することにより、デリバリー性を高めることができ、胆管内のより奥まで洗浄することが容易になるとともに、胆管内の奥に溜まった胆汁まで吸引しやすくなり、胆汁の取り残しを少なくすることができる。例えば、液体吐出口と液体吸引口が長手方向に対して同じ位置にあると、シャフトの外径が大きくなり、デリバリー性が低下するおそれがあるが、液体吐出口が液体吸引口よりも3mm以上遠位側に位置することにより、胆管内のより奥までシャフトを挿入することが容易になる。一方、液体吐出口と液体吸引口が長手方向に対して互いに離れた位置にあると、液体吐出口付近の希釈された胆汁ではなく、希釈されていない胆汁を吸引することになり、吸引の効率が低下するが、液体吐出口が液体吸引口よりも3mm以上10mm以下遠位側に位置することにより、液体吐出口からの洗浄液で希釈された胆汁を効率よく吸引することができる。また、液体吐出口が液体吸引口よりも10mm以下遠位側に位置することにより、液体吸引口よりも遠位側の部分の長さが長くなりすぎず、シャフトの遠位端部の剛性を確保しやすくなり、デリバリー性を高めることができる。
【0008】
シャフトは、液体吸引口から近位側に所定の長さを有する第1区間と、第1区間よりも近位側の第2区間を有し、第2区間におけるシャフトの外径は、第1区間におけるシャフトの外径よりも大きいことが好ましい。このようにシャフトが構成されることにより、シャフトを胆管の奥まで挿入することが容易になる。すなわち、シャフトが第2区間を有することにより、当該区間においてシャフトの剛性が高まり、カテーテルのデリバリー性を高めることができる。一方、シャフトが第1区間を有することにより、内部空間が狭い肝内胆管にシャフトを挿入することが容易になる。
【0009】
第2区間における第1ルーメンの内径は、第1区間における第1ルーメンの内径よりも大きく、第2区間における第2ルーメンの内径は、第1区間における第2ルーメンの内径よりも大きいことが好ましい。これにより、胆管内に挿入されるシャフトの遠位部のデリバリー性を確保しつつ、第1ルーメンと第2ルーメンの近位部の内径を大きくすることで、より効果的に洗浄液を吐出したり、胆汁を吸引することができる。
【0010】
この場合、第1区間の長さは50mm以上200mm以下であることが好ましい。また、第1区間におけるシャフトの外径は2.5mm以下であることが好ましい。
【0011】
シャフトの長手方向に垂直な断面において、第2ルーメンの断面積は第1ルーメンの断面積よりも大きいことが好ましい。これにより、胆汁を吸引する際に、第2ルーメンに胆石等が詰まることが起こりにくくなる。また、第1ルーメンの液体吐出口から洗浄液を勢いよく吐出しやすくなり、胆管内のより奥まで洗浄することが容易になる。
【0012】
液体吸引口の外縁は傾斜部を有し、傾斜部の遠位端は傾斜部の近位端よりも第1ルーメンの近くに位置することが好ましい。このように液体吸引口が形成されていれば、液体吸引口の大きさを広くとることができ、胆汁を吸引しやすくなる。
【0013】
液体吸引口よりも遠位側において、シャフトは遠位端に向かって外径が小さくなるテーパー部を有することが好ましい。このようにシャフトの先端部が形成されることにより、胆管内、特に肝内胆管内にシャフトを挿入しやすくなる。
【0014】
液体吐出口から吐出する液体は生理食塩水であることが好ましい。また、第1ルーメンはガイドワイヤルーメンを兼ねていることが好ましい。
【0015】
本発明の胆汁吸引カテーテルは、肝内胆管に挿入して好適に用いることができる。従って、本発明の胆汁吸引カテーテルは、肝内胆管用の胆汁吸引カテーテルとして有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の胆汁吸引カテーテルによれば、胆管内の奥まで、例えば総胆管を通って肝内胆管まで挿入することができる。また、胆管内のより奥まで洗浄することが容易になるとともに、胆管内の奥に溜まった胆汁まで吸引しやすくなり、胆汁の取り残しを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る胆汁吸引カテーテルの一例を表し、胆汁吸引カテーテルの全体側面図を表す。
図2図1に示した胆汁吸引カテーテルの遠位部の側面図を表す。
図3図1に示した胆汁吸引カテーテルの遠位端部の斜視図を表す。
図4図2に示した胆汁吸引カテーテルの遠位端部の長手方向に沿った断面図を表す。
図5図1に示した胆汁吸引カテーテルのV-V断面図を表す。
図6図2に示した胆汁吸引カテーテルの遠位部の側面図の変形例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、下記実施の形態に基づき本発明の胆汁吸引カテーテルを具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0019】
図1図6を参照して、本発明の実施の形態に係る胆汁吸引カテーテルについて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る胆汁吸引カテーテルの一例であって、胆汁吸引カテーテルの全体側面図を表し、図2は、図1に示した胆汁吸引カテーテルの遠位部の側面図を表し、図3は、図1に示した胆汁吸引カテーテルの遠位端部の斜視図を表し、図4は、図2に示した胆汁吸引カテーテルの遠位端部の長手方向に沿った断面図を表し、図5は、図1に示した胆汁吸引カテーテルのV-V断面図を表し、図6は、図2に示した胆汁吸引カテーテルの遠位部の側面図の変形例を表す。
【0020】
胆汁吸引カテーテル1は、胆管に挿入して胆汁を吸引するために用いられるカテーテルである。本発明の胆汁吸引カテーテル1は、胆管内に液体を供給して胆管内を洗浄しながら、胆管内に溜まった胆汁を吸引することができるものであり、特に胆管の中でも奥まった部分にある肝内胆管に挿入して好適に用いることができるものである。以下、胆汁吸引カテーテルを単に「カテーテル」と称する。
【0021】
カテーテル1は、長手方向に延在するシャフト2を有する。カテーテル1において、長手方向は、シャフト2の延在方向に基づき定められる。カテーテル1は、長手方向に対する一方側と他方側として、近位側と遠位側を有する。近位側とは、カテーテル1の使用者、つまり術者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象側の方向を指す。シャフト2は、長手方向に対する直交方向として、径方向を有する。図1では、図の右側が近位側に相当し、図の左側が遠位側に相当する。
【0022】
シャフト2は、遠位端に液体吐出口5を有する第1ルーメン4と、遠位端に液体吸引口8を有する第2ルーメン7とを有する。第1ルーメン4と第2ルーメン7はそれぞれ長手方向に延在しており、径方向に並んで配置されている。シャフト2は第1チューブ3と第2チューブ6を有し、第1チューブ3の内腔を第1ルーメン4とし、第2チューブ6の内腔を第2ルーメン7とすることができる。第1チューブ3と第2チューブ6は並んで配置され、第1チューブ3の遠位端に液体吐出口5が形成され、第2チューブ6の遠位端に液体吸引口8が形成される。第1チューブ3と第2チューブ6は互いに溶着または接着されて一体化されるか、第1チューブ3と第2チューブ6が保護チューブ9の内腔に配置され、保護チューブ9によって第1チューブ3と第2チューブ6が一体化されていることが好ましい。なお、図面には示されていないが、1つのチューブに2つの内腔を形成して、第1ルーメンと第2ルーメンとすることもできる。
【0023】
カテーテル1を使用の際、第1チューブ3の第1ルーメン4には胆管内に供給する液体(洗浄液)が流通し、第1チューブ3の遠位端の液体吐出口5から液体が胆管内に吐出される。従って、第1チューブ3は近位側開口を有し、第1チューブ3の近位側開口に連通して液体供給部が設けられることが好ましい。液体供給部としては、シリンジやポンプ等が挙げられる。
【0024】
胆管内に溜まった胆汁等は、第2チューブ6の遠位端の液体吸引口8から吸引され、第2チューブ6の第2ルーメン7を通って胆管から排出される。従って、第2チューブ6は近位側開口を有し、第2チューブ6の近位側開口に連通して液体吸引部が設けられることが好ましい。液体吸引部としては、シリンジやポンプ等が挙げられる。液体吸引部のシリンジとして、バックロックシリンジを用いてもよい。
【0025】
第1ルーメン4はガイドワイヤルーメンを兼ねることができる。第1ルーメン4がガイドワイヤルーメンを兼ねることにより、シャフト2の外径を小さくすることができる。また、ガイドワイヤを抜去することなく胆汁を吸引したり、胆管内を洗浄することができ、手技の簡素化、手術時間の短縮につながる。
【0026】
シャフト2の近位側にはハブ10が設けられることが好ましい。ハブ10は、第1ルーメン4に連通した供給接続ポート11と第2ルーメン7に連通した吸引接続ポート12を有し、液体供給部がハブ10の供給接続ポート11に接続され、液体吸引部がハブ10の吸引接続ポート12に接続されることが好ましい。ハブ10を設けることにより、カテーテル1の操作性を高めることができる。
【0027】
ハブ10は、ガイドワイヤポート13をさらに有することが好ましい。ガイドワイヤポート13は第1ルーメン4に連通して設けられることが好ましい。この場合、ハブ10の内部で、第1ルーメン4に連通した内部通路が2つに分岐し、分岐した一方が供給接続ポート11につながり、他方がガイドワイヤポート13につながるように構成される。
【0028】
ハブ10は、他の医療用具を挿入することができる補助ポートをさらに有していてもよい。補助ポートは、例えば第2ルーメン7に連通して設けることができる。この場合、ハブ10の内部で、第2ルーメン7に連通した内部通路が2つに分岐し、分岐した一方が吸引接続ポート12につながり、他方が補助ポートにつながる。他の医療用具の例としては細胞診用のブラシ等が挙げられ、これにより、胆汁吸引後に引き続き、細胞診のための検体採取を行うことができる。
【0029】
ハブ10の内部通路には逆止弁が設けられてもよい。例えば、ハブ10の第1ルーメン4と供給接続ポート11とをつなぐ内部通路に逆止弁を設けることにより、供給接続ポート11から第1ルーメン4に向かう一方向に液体を流すことができる。ハブ10の第2ルーメン7と吸引接続ポート12とをつなぐ内部通路に逆止弁を設けることにより、第2ルーメン7から吸引接続ポート12に向かう一方向に液体を流すことができる。
【0030】
図面には示されていないが、シャフト2の近位側には、第1ルーメン4に接続した第1ハブと第2ルーメン7に接続した第2ハブが設けられてもよい。第1ハブおよび/または第2ハブは、ハブの内部で内部通路が2つ以上に分岐し、それぞれの内部通路に連通する2つ以上のポートを備えていてもよい。例えば、第1ルーメン4に接続した第1ハブは、供給接続ポート11を有し、さらにガイドワイヤポート13を備えていてもよい。第2ルーメン7に接続した第2ハブは、吸引接続ポート12を有し、さらに上記に説明した補助ポートを備えていてもよい。第1ハブおよび/または第2ハブの内部通路には逆止弁が設けられてもよい。
【0031】
シャフト2の長手方向の長さは、例えば、1500mm以上が好ましく、1800mm以上がより好ましく、また3000mm以下が好ましく、2800mm以下がより好ましい。第1ルーメン4と第2ルーメン7の内径は、例えば、0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、0.9mm以上がさらに好ましく、また2.5mm以下が好ましく、2.2mm以下がより好ましく、2.0mm以下がさらに好ましい。
【0032】
シャフト2の長手方向に対する垂直断面において、シャフト2の外縁の形状、第1チューブ3の外縁の形状、第2チューブ6の外縁の形状、第1ルーメン4の形状、第2ルーメン7の形状は特に限定されず、円形、楕円形、長円形、卵形、多角形、不定形等が挙げられる。なお、シャフト2の外縁の形状、第1チューブ3の外縁の形状、第2チューブ6の外縁の形状、第1ルーメン4の形状、第2ルーメン7の形状は、円形、長円形、楕円形または卵形であることが好ましい。
【0033】
シャフト2を構成する第1チューブ3、第2チューブ6、保護チューブ9は、樹脂から構成することができる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
【0034】
シャフト2、第1チューブ3、第2チューブ6、保護チューブ9は、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。シャフト2、第1チューブ3、第2チューブ6、保護チューブ9は、長手方向の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0035】
シャフト2、第1チューブ3、第2チューブ6、保護チューブ9は、補強層を有していてもよい。補強層により、シャフト2の剛性を高めることができる。補強層は、樹脂から構成された内層と外層の間に配置されることが好ましい。
【0036】
補強層は、金属線や繊維等から構成することができる。金属線を構成する素材としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等が挙げられる。なかでも、ステンレス鋼が好ましい。金属線は、単線であってもよいし、撚線であってもよい。繊維としては、例えば、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等が挙げられる。繊維は、モノフィラメントであってもよいし、マルチフィラメントであってもよい。
【0037】
補強層の形状は、特に限定されないが、らせん状、網目状、編組状が好ましい。なかでも、補強層によってシャフト2の剛性を効果的に高めることができる点から、補強層の形状は編組状であることがより好ましい。
【0038】
シャフト2は、液体吐出口5が液体吸引口8よりも遠位側に位置するように構成される。これにより、液体吐出口5をシャフト2の先端に設けることができ、胆管内のより奥まで挿入し、洗浄・吸引することが容易になる。液体吐出口5は第1ルーメン4の遠位端に形成されるため、第1ルーメン4を通って第1ルーメン4の遠位端まで運ばれた洗浄液は液体吐出口5から遠位側に吐出され、液体吐出口5よりも遠位側の胆管の内部を洗浄することが可能となる。また、胆汁は比較的粘度が高く、細菌感染した胆汁であればさらに粘度が高くなるところ、液体吐出口5から洗浄液を胆管内に吐出することにより、胆管内に溜まった胆汁が希釈され、粘度を下げることができる。一方、液体吸引口8は液体吐出口5よりも近位側に位置しており、これにより胆管内に溜まった胆汁の吸引が容易になる。すなわち、液体吸引口8が液体吐出口5よりも近位側に位置することにより、液体吸引口8からは、洗浄液により希釈され粘度が低下した胆汁を吸引しやすくなる。そのため、液体吸引口8から胆汁を吸引することが容易になり、また吸引した胆汁が第2ルーメン7内で詰まりにくくなる。
【0039】
液体吐出口5は液体吸引口8よりも3mm以上10mm以下遠位側に位置する。このように液体吐出口5と液体吸引口8が位置することにより、カテーテル1のデリバリー性を高めることができ、胆管内のより奥まで洗浄することが容易になるとともに、胆管内の奥に溜まった胆汁を吸引しやすくなり、胆汁の取り残しを少なくすることができる。例えば、液体吐出口5と液体吸引口8が長手方向に対して同じ位置にあると、シャフト2の外径が大きくなり、デリバリー性が低下するおそれがあるが、液体吐出口5が液体吸引口8よりも3mm以上遠位側に位置することにより、胆管内のより奥までシャフト2を挿入することが容易になる。一方、液体吐出口5と液体吸引口8が長手方向に対して互いに離れた位置にあると、液体吐出口8付近の希釈された胆汁ではなく、希釈されていない胆汁を吸引することになり、吸引の効率が低下する。しかし、液体吐出口5が液体吸引口8よりも3mm以上10mm以下遠位側に位置することにより、未希釈の胆汁を吸引することが抑えられ、洗浄液で希釈された胆汁を吸引しやすくなる。さらに、液体吐出口5が液体吸引口8よりも10mm以下遠位側に位置することにより、シャフト2の遠位端部において、液体吸引口8よりも遠位側の部分の長さ(すなわち第1チューブ3が存在し第2チューブ6が存在しない部分の長さ)が長くなりすぎず、シャフト2の遠位端部の剛性を確保しやすくなり、カテーテル1のデリバリー性を高めることができる。好ましくは、液体吐出口5は液体吸引口8よりも4mm以上遠位側に位置し、また8mm以下が好ましく、7mm以下がより好ましい。なお、液体吐出口5と液体吸引口8の離隔距離は、液体吐出口5の近位端と液体吸引口8の遠位端の間の長手方向の離隔距離を計測することにより求める。
【0040】
シャフト2は、遠位端から少なくとも近位側に250mm以内の範囲における外径が4.0mm以下となっている。このようにシャフト2が構成されることにより、シャフト2を胆管内の奥まで、例えば総胆管を通って肝内胆管まで挿入することが可能となる。肝内胆管は総胆管よりも内部空間が狭いため、例えば外径が5.0mmのシャフト2では胆管の奥にある肝内胆管まで挿入することが難しい。しかし、シャフト2の遠位端から少なくとも近位側に250mm以内の範囲において、シャフト2の外径を4.0mm以下に形成することにより、総胆管を通って肝内胆管の奥までシャフト2を挿入することができる。なお、ここで説明したシャフト2の外径は、シャフト2の長手方向の垂直断面における外縁の最大径を意味する。すなわち、シャフト2の長手方向の垂直断面における外縁の形状が円形である場合は、円の直径を意味し、非円形である場合は、最大径(長径)を意味する。
【0041】
シャフト2は、遠位端から少なくとも近位側に250mm以内の範囲の全部において外径が4.0mm以下となっており、それよりも近位側の区間においても外径が4.0mm以下となっていてもよい。シャフト2において外径が4.0mm以下となるのは、シャフト2の遠位端から近位側に300mm以内の範囲であってもよく、500mm以内の範囲であってもよく、1000mm以内の範囲であってもよく、実質的にシャフト2の長手方向の全範囲であってもよい。
【0042】
シャフト2の遠位端から近位側に250mm以内の範囲における外径は3.5mm以下であることが好ましく、3.0mm以下がより好ましい。これにより、シャフト2を肝内胆管に挿入することがさらに容易になる。一方、液体吸引口8の近位端よりも近位側におけるシャフト2の外径の下限は、1.0mm以上が好ましく、1.3mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましい。これにより、カテーテル1のデリバリー性を高めることができる。なお、液体吸引口8よりも遠位側におけるシャフト2の外径は、液体吸引口8よりも近位側におけるシャフト2の外径よりも小さくなる。
【0043】
シャフト2は、液体吸引口8から近位側に所定の長さを有する第1区間14と、第1区間14よりも近位側の第2区間15を有し、第2区間15におけるシャフト2の外径が第1区間14におけるシャフト2の外径よりも大きく形成されていることが好ましい。このようにシャフト2が構成されることにより、シャフト2を肝内胆管まで挿入することが容易になる。すなわち、シャフト2が第2区間15を有することにより、第2区間15におけるシャフト2の剛性が高まり、カテーテル1のデリバリー性を高めることができる。一方、シャフト2が第1区間14を有することにより、内部空間が狭い肝内胆管にシャフト2を挿入することが容易になる。
【0044】
第2区間15における第1ルーメン4の内径は、第1区間14における第1ルーメン4の内径よりも大きいことが好ましい。また、第2区間15における第2ルーメン7の内径は、第1区間14における第2ルーメン7の内径よりも大きいことが好ましい。これにより、胆管内に挿入されるシャフト2の遠位部のデリバリー性を確保しつつ、第1ルーメン4と第2ルーメン7の近位部の内径を大きくすることで、より効果的に洗浄液を吐出したり、胆汁を吸引することができる。第1ルーメン4と第2ルーメン7は、どちらか一方のみがこのように形成されていてもよいが、両方がこのように形成されていることが好ましい。
【0045】
第1区間14と第2区間15は、シャフト2の遠位端から近位側に250mm以内の範囲に形成されることが好ましく、第2区間15は当該範囲よりもさらに近位側に延在していることが好ましい。従って、第1区間14ではシャフト2の外径が4.0mm以下となっており、第2区間15においてもシャフト2の外径が4.0mm以下となっていることが好ましい。
【0046】
第1区間14の長さは、例えば50mm以上200mm以下であることが好ましい。これにより、シャフト2を肝内胆管に挿入することが容易になる。第1区間14の長さは70mm以上がより好ましく、90mm以上がさらに好ましく、また180mm以下がより好ましく、160mm以下がさらに好ましい。第2区間15の長さは、100mm以上であることが好ましく、300mm以上がより好ましく、500mm以上がさらに好ましい。第2区間15は、シャフト2の近位部まで延在していてもよい。
【0047】
第1区間14におけるシャフト2の外径は2.5mm以下であることが好ましく、2.4mm以下がより好ましく、2.3mm以下がさらに好ましい。これにより、シャフト2の第1区間14およびそれより遠位側の部分を肝内胆管に挿入しやすくなる。第1区間14におけるシャフト2の外径の下限は、1.0mm以上が好ましく、1.3mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましい。
【0048】
第2区間15におけるシャフト2の外径は、4.0mm以下が好ましく、3.5mm以下がより好ましく、3.0mm以下がさらに好ましく、また1.5mm以上が好ましく、1.8mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましい。第2区間15におけるシャフト2の外径はまた、第1区間14におけるシャフト2の外径よりも0.1mm以上大きいことが好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましく、また1.0mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましく、0.6mm以下がさらに好ましい。
【0049】
第1区間14における第1ルーメン4の内径は1.3mm以下が好ましく、1.1mm以下がより好ましく、1.0mm以下がさらに好ましく、また0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、0.9mm以上がさらに好ましい。第2区間15における第1ルーメン4の内径は、第1区間14における第1ルーメン4の内径よりも0.1mm以上大きいことが好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。第2区間15における第1ルーメン4の内径は2.0mm以下が好ましく、1.8mm以下がより好ましく、1.5mm以下がさらに好ましい。
【0050】
第1区間14における第2ルーメン7の内径は1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましい。第2区間15における第2ルーメン7の内径は第1区間14における第2ルーメン7の内径よりも0.1mm以上大きいことが好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。第2区間15における第2ルーメン7の内径は1.5mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、2.5mm以上がさらに好ましい。第1区間14における第2ルーメン7の内径は第1区間14における第1ルーメン4の内径よりも0.1mm以上大きいことが好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。なお、第1区間14と第2区間15における第2ルーメン7の内径の上限は、第1区間14と第2区間15におけるシャフトの外径に応じて適宜設定すればよい。
【0051】
上記に説明した第1ルーメン4と第2ルーメン7の内径と外径は、これらの形状が円形以外の場合は円相当径を意味する。例えば第1ルーメン4の内径を例に取ると、第1ルーメン4の内径の長さと等しい長さの円周の直径が円相当径となる。
【0052】
第2区間15におけるシャフト2の外径を第1区間14におけるシャフト2の外径よりも大きくするには、例えば、(1)保護チューブ9を設けず、第1チューブ3の外径を第1区間14よりも第2区間15で大きくする態様、(2)保護チューブ9を設けず、第2チューブ6の外径を第1区間14よりも第2区間15で大きくする態様、(3)保護チューブ9を設けず、第1チューブ3の外径と第2チューブ6の外径を第1区間14よりも第2区間15で大きくする態様、(4)第1チューブ3と第2チューブ6を内腔に配置する保護チューブ9の外径を第1区間14よりも第2区間15で大きくする態様、(5)保護チューブ9を第1区間14には設けず第2区間15に設ける態様等が挙げられる。また、これらの態様において、第1チューブ3の内径(すなわち第1ルーメン4の内径)が第1区間14よりも第2区間15で大きく形成されることが好ましく、第2チューブ6の内径(すなわち第2ルーメン7の内径)が第1区間14よりも第2区間15で大きく形成されることが好ましい。図面では、(4)の態様で、第2区間15におけるシャフト2の外径が第1区間14におけるシャフト2の外径よりも大きく形成されている。
【0053】
第1チューブ3の内径および/または外径を第1区間14よりも第2区間15で大きくする場合、第2チューブ6の内径および/または外径を第1区間14よりも第2区間15で大きくする場合、または、第1チューブ3の内径および/または外径を第1区間14よりも第2区間15で大きくし、第2チューブ6の内径および/または外径を第1区間14よりも第2区間15で大きくする場合、内径および/または外径の異なるチューブを互いに溶着または接着して第1チューブ3および/または第2チューブ6を作製してもよいし、チューブ押出時に内径および/または外径の異なる金型を使用して第1チューブ3および/または第2チューブ6を作製してもよい。第1区間14と第2区間15の境界では、チューブの内径および/または外径が段状に切り替わっていてもよいし、傾斜状(テーパー状)に切り替わっていてもよい。
【0054】
シャフト2の長手方向に垂直な断面において、第2ルーメン7の断面積は第1ルーメン4の断面積よりも大きいことが好ましい(図5を参照)。これにより、胆汁を吸引する際に、第2ルーメン7に胆石等が詰まることが起こりにくくなる。また、第1ルーメン4の液体吐出口5から洗浄液を勢いよく吐出しやすくなり、胆管内のより奥まで洗浄することが容易になる。第2ルーメン7の断面積は、例えば、第1ルーメン4の断面積の1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、また4.0倍以下が好ましく、3.0倍以下がより好ましく、2.5倍以下がさらに好ましい。なお、図5では、保護チューブ9と第1チューブ3および第2チューブ6の間に隙間が存在しているが、保護チューブ9と第1チューブ3および第2チューブ6の間には隙間が存在しなくてもよい。例えば第1チューブ3と第2チューブ6を保護チューブ9の内腔に配置した後、さらにその外側に熱収縮チューブを被せて熱加工することにより、保護チューブ9と第1チューブ3および第2チューブ6の間に隙間がないように形成することができる。
【0055】
液体吸引口8は傾斜状に形成されていることが好ましい。具体的には、液体吸引口8の外縁は傾斜部を有し、傾斜部の遠位端は傾斜部の近位端よりも第1ルーメン4の近くに位置することが好ましい。このように液体吸引口8が形成されていれば、液体吸引口8の大きさを広くとることができ、胆汁を吸引しやすくなる。また、傾斜部の遠位端が傾斜部の近位端よりも第1ルーメン4の近くに位置することにより、液体吸引口8より近位側にある胆汁を吸引しやすくなる。液体吸引口8の外縁は直線状に形成されていてもよく、非直線状に形成されていてもよい。
【0056】
液体吸引口8の外縁は直線状に形成された傾斜部を有し、当該傾斜部に切欠き部や突出部が形成されていてもよい。具体的には、シャフト2において、第2チューブ6が配されている側を上側とし、第1チューブ3が配されている側を下側としたとき、液体吸引口8の外縁は傾斜部において上側から下側に向かって遠位側に直線状に傾斜しており、当該傾斜部に切欠き部や突出部が形成されていてもよい。傾斜部には、切欠き部と突出部のどちらか一方のみ形成されていてもよく、両方が形成されていてもよい。このように液体吸引口8の外縁が形成されていれば、液体吸引口8から胆汁を吸引する際に、液体吸引口8に胆石が嵌まり込んだり、胆石によって液体吸引口8が塞がることが起こりにくくなる。
【0057】
図6には、液体吸引口8の外縁に切欠き部を設けた例を示した。図6では、液体吸引口8の外縁は直線状に形成された傾斜部17を有し、傾斜部17に切欠き部18が形成されている。傾斜部17では、液体吸引口8の外縁は、液体吸引口8の上端と下端を結ぶ仮想直線と重なるように形成され、切欠き部18では、当該仮想直線よりも液体吸引口8の外縁が近位側に位置する。なお、傾斜部17に突出部が形成される場合は、突出部では、液体吸引口8の上端と下端を結ぶ仮想直線よりも液体吸引口8の外縁が遠位側に位置する。
【0058】
液体吸引口8よりも遠位側において、シャフト2は遠位端に向かって外径が小さくなるテーパー部16を有することが好ましい。このようにシャフト2の先端部が形成されることにより、胆管内、特に肝内胆管内にシャフト2を挿入しやすくなる。テーパー部16は、シャフト2が先細りになるように加工してもよく、テーパー形状を有する別部材をシャフト2の先端に取り付けてもよい。
【0059】
液体吐出口5の外縁は、長手方向に対して垂直に延びるように形成されていることが好ましい。また、液体吐出口5の外縁は、面取りされたり、側面視で丸まって形成されていることが好ましい。このように液体吐出口5の外縁が形成されていれば、胆管内にシャフト2を挿入する際に、胆管を傷つけにくくなる。
【0060】
液体吐出口5から吐出する液体、すなわち洗浄液は生理食塩水であることが好ましい。これにより、生理食塩水で胆管内の胆汁を希釈しながら、胆管内の胆汁を液体吸引口8から吸引することができ、胆管内の洗浄を効果的に行うことができる。例えば胆管内に感染胆汁がある場合は、胆管内を洗浄することにより、結石の発生や胆汁のうっ滞を抑えることができる。
【0061】
液体吐出口5からの洗浄液の吐出と液体吸引口8からの胆汁の吸引は、同じタイミングで行ってもよく、異なるタイミングで行ってもよく、また交互に行ってもよい。このように胆管内を洗浄することにより、胆管内の胆汁を効率よく吸引することができ、また胆管内の内圧が過度に高まることを防止できる。そのため、感染胆汁が肝臓を通って全身の血管内に流入することによる敗血症の発生を抑えることができる。
【0062】
洗浄液として生理食塩水を用いることにより、胆汁との比重差により胆汁を効率的に吸引できるという効果も得られる。内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)の際などには患者は主に腹臥位または左側臥位の状態で処置が施されるが、この状態では、胆管の入口は胆管の内部よりも上側に位置することとなる。この状態でカテーテル1を使用し、液体吐出口5から生理食塩水を吐出すると、生理食塩水は胆汁よりも比重が軽いため、生理食塩水を胆管の奥まで流入したとき、生理食塩水が上澄みとして上がってきて、胆汁を生理食塩水と効率的に混合し希釈することができる。そのため、希釈した胆汁を液体吸引口8から吸引することにより、胆管内の胆汁を効率的に除去することができる。
【0063】
液体吐出口5からは造影剤を吐出してもよい。例えば、生理食塩水により胆管内を洗浄した後、引き続き液体吐出口5から造影剤を胆管内に注入することにより、胆管内の画像診断をより行いやすくなる。
【0064】
シャフト2は、X線透視下等での位置を確認しやすくするために、放射線不透過物質を含んでいてもよい。放射線不透過物質としては、例えば、鉛、バリウム、ヨウ素、タングステン、金、白金、イリジウム、白金イリジウム合金、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金、パラジウム、タンタル等が挙げられる。例えば、シャフト2の近位端部や遠位端部に放射線不透過マーカーが設けられることが好ましく、これにより、X線透視下で体腔内におけるシャフト2の位置を確認することができる。
【0065】
シャフト2は、外面が親水性ポリマーによりコーティングされていてもよい。これにより、シャフト2を内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネルに挿入する際に、鉗子チャンネルへの挿入を容易にすることができる。親水性ポリマーとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ2-ヒドロキシエチルメタアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸共重合体等の親水性ポリマーが挙げられる。
【符号の説明】
【0066】
1:胆汁吸引カテーテル
2:シャフト
3:第1チューブ
4:第1ルーメン
5:液体吐出口
6:第2チューブ
7:第2ルーメン
8:液体吸引口
9:保護チューブ
10:ハブ
11:供給接続ポート
12:吸引接続ポート
13:ガイドワイヤポート
14:第1区間
15:第2区間
16:テーパー部
17:傾斜部
18:切欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6