IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タイカの特許一覧

<>
  • 特開-医療用枕 図1
  • 特開-医療用枕 図2
  • 特開-医療用枕 図3
  • 特開-医療用枕 図4
  • 特開-医療用枕 図5
  • 特開-医療用枕 図6
  • 特開-医療用枕 図7
  • 特開-医療用枕 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135257
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】医療用枕
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/07 20060101AFI20230921BHJP
   A47G 9/10 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
A61G7/07
A47G9/10 V
A47G9/10 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040381
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】306026980
【氏名又は名称】株式会社タイカ
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史明
【テーマコード(参考)】
3B102
4C040
【Fターム(参考)】
3B102AA02
3B102AB07
3B102AC02
4C040AA21
4C040GG03
(57)【要約】
【課題】人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した患者の床ずれを防止することができると共に、頭部挙上動作を最小限として仰臥位の患者の後頭部に容易に挿入し設置できる医療用枕を提供する。
【解決手段】仰臥位の患者の後頭部に挿入し設置する医療用枕は、圧縮及び圧縮解除を繰り返すことによって空気の排出及び吸入が可能な弾性芯材と、弾性芯材を覆う気密性袋体と、気密性袋体に接続された給排気手段とを備え、弾性芯材は、患者の後頭部を載置する中央部と、中央部の両側に配置される側端部とからなり、中央部の硬さが側端部よりも小さく、気密性袋体内を排気した状態では、弾性芯材が圧縮変形し中央部に側面視凹形状の凹部が形成され、気密性袋体内に給気した状態では、弾性芯材が元の形状へ復元するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仰臥位の患者の後頭部に挿入し設置する医療用枕であって、
圧縮及び圧縮解除を繰り返すことによって空気の排出及び吸入が可能な弾性芯材と、前記弾性芯材を覆う気密性袋体と、前記気密性袋体に接続された給排気手段とを備え、
前記弾性芯材は、前記患者の後頭部を載置する中央部と、前記中央部の両側に配置される側端部とからなり、前記中央部の硬さが前記側端部よりも小さく、前記気密性袋体内を排気した状態では、前記弾性芯材が圧縮変形し前記中央部に側面視凹形状の凹部が形成され、前記気密性袋体内に給気した状態では、前記弾性芯材が元の形状へ復元するように構成されていることを特徴とする医療用枕。
【請求項2】
前記弾性芯材は、前記気密性袋体内を排気した状態において、前記中央部の最薄部の厚さが40mm以下になるように変形可能に構成され、
前記給排気手段は、当該排気した状態を保持可能に構成されていると共に、前記弾性芯材が圧縮された状態で前記患者の後頭部に挿入し設置した後、前記気密性袋体内に給気可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用枕。
【請求項3】
前記弾性芯材は、前記気密性袋体内を排気した状態において、前記中央部の最薄部の厚さをhとし、前記中央部の最薄部から前記側端部側に向かって110mmに位置する点Pが前記側端部に位置し、前記側端部の前記点Pの位置における厚さをHとして、h<Hであり、かつ、Hとhとの差が3mm以上となるよう変形可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用枕。
【請求項4】
前記弾性芯材は、前記気密性袋体内に給気した状態では、前記中央部と前記側端部が同様の厚さを有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の医療用枕。
【請求項5】
前記弾性芯材は、少なくとも一部が厚さ方向に積層構造を有していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の医療用枕。
【請求項6】
前記弾性芯材の長手方向断面視において、前記中央部が逆台形であり、前記側端部が台形であるように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の医療用枕。
【請求項7】
前記中央部は、通気性袋体に樹脂ビーズ又は発泡チップが充填されて構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の医療用枕。
【請求項8】
前記気密性袋体内が大気圧の状態における前記弾性芯材が前記気密性袋体の体積に占める体積占有率が90%以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の医療用枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、介護現場において、特に人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)等の医療機器を装着した仰臥位の患者の後頭部に容易に挿入し設置できる医療用枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高さを調整できる枕として、例えば、充填材の増減や複数の枕芯体ユニットの数の調整によって枕の高さを調整するものが周知されている。このような枕を使用する際に、予め充填材を増減したり、枕芯体ユニットの数を調整したりして枕の高さを変える作業は、手間がかかって煩わしいという問題点があった。そのため、高さを簡易に調整することができる枕が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載されている枕は、芯材の上面と下面に、上下別体のクッション層が積層される枕において、芯材として、連続気泡のフォーム材の周囲に気密性シート素材を、フォーム材の接触面全域に亘って接着して密封包囲し、且つ所定部位に空気取り入れ口を設けている。この枕の高さは、芯材の膨張度によって左右されるため、高さを調整する際に、空気取り入れ口から空気を取り入れ、それまで偏平状態に潰されていた連続気泡のフォーム材は空気を吸って弾性力により自己膨張し、立体的な形状に変化するようになっている。
【0004】
近年、医療、介護現場において体圧分散マットレス等の床ずれ防止用具が使用されており、また、後頭部の床ずれ防止に有効な枕(例えば、ウレタンフォームを芯材とした枕や樹脂ビーズを充填した枕等)も多数提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4610157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近ごろ、床ずれ防止効果に加えて、使用者の環境・状態に応じた機能設計が求められている。その一例として、人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)等の医療機器を装着した重症患者への床ずれ防止枕においては、頭部挙上動作を最小限として後頭部に設置できることが重要となっている。
【0007】
しかし、従来の枕は、人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した重症患者に使用する場合、厚みが大きく、仰臥位の患者の後頭部に設置する際に、頭部挙上動作が大きくなり、設置が困難である。一方、頭部挙上動作を最小限にするには枕の厚さを小さくすればよいが、単なる厚さを小さくした場合は、底付きし易くなって、頭部の姿勢安定性と体圧分散性能が低下する問題点があった。
【0008】
また、特許文献1の枕は、空気取り入れ口から空気を取り入れ、高さを調整することができるが、人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した重症患者に使用するための医療用枕ではなく、そのため、仰臥位の患者の後頭部に挿入し設置する際に、頭部挙上動作が大きくなり、挿入設置が困難であるという問題点があった。また、患者の頭部を安定して保持することができないという問題点もあった。
【0009】
従って、本発明は従来技術の上述した問題点を解消するものであり、その目的は、人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した患者の床ずれを防止することができると共に、頭部挙上動作を最小限に抑えて仰臥位の患者の後頭部に容易に挿入し設置できる医療用枕を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、医療用枕における後頭部の置載位置を容易に判別できると共に、頭部の姿勢安定性と体圧分散性に優れた医療用枕の提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、仰臥位の患者の後頭部に挿入し設置する医療用枕は、圧縮及び圧縮解除を繰り返すことによって空気の排出及び吸入が可能な弾性芯材と、弾性芯材を覆う気密性袋体と、気密性袋体に接続された給排気手段とを備え、弾性芯材は、患者の後頭部を載置する中央部と、中央部の両側に配置される側端部とからなり、中央部の硬さが側端部よりも小さく、気密性袋体内を排気した状態では、弾性芯材が圧縮変形し中央部に側面視凹形状の凹部が形成され、気密性袋体内に給気した状態では、弾性芯材が元の形状へ復元するように構成されている。
【0012】
医療用枕において、弾性芯材は、患者の後頭部を載置する中央部と、中央部の両側に配置される側端部とからなり、中央部の硬さが側端部よりも小さく、気密性袋体内を排気した状態では、弾性芯材が圧縮変形し中央部に凹部が形成され、気密性袋体内に給気した状態では、弾性芯材が元の形状へ復元するように構成されていることにより、人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した重症患者の床ずれを防止することができると共に、頭部挙上動作を最小限に抑えて仰臥位の患者の後頭部に容易に挿入し設置することができ、挿入後は給気調整によって適正な高さに頭部位置を設定しつつ頭部を安定して保持することができる。また、気密性袋体内を排気した状態において、弾性芯材が圧縮変形して中央部に形成される凹部を医療用枕における後頭部の置載位置として容易に判別できると共に、当該凹部に後頭部を置載することで、気密性袋体内に給気して弾性芯材が元の形状に復元する方向に変形して後頭部を支持する過程においても頭部の姿勢安定性を向上することができる。
【0013】
弾性芯材は、気密性袋体内を排気した状態において、中央部の最薄部の厚さが40mm以下になるように変形可能に構成され、給排気手段は、排気した状態を保持可能に構成されていると共に、弾性芯材が圧縮された状態で患者の後頭部に挿入し設置した後、気密性袋体内に給気可能に構成されていることが好ましい。これにより、仰臥位の患者の後頭部に挿入し設置する際に、頭部挙上動作を最小限することができる。
【0014】
弾性芯材は、気密性袋体内を排気した状態において、中央部の最薄部の厚さをhとし、中央部の最薄部から側端部側に向かって110mmに位置する点Pが側端部に位置し、側端部の点Pの位置における厚さをHとして、h<Hであり、かつ、Hとhとの差が3mm以上となるよう変形可能に構成されていることが好ましい。これにより、気密性袋体内を排気した状態において、弾性芯材が圧縮変形して中央部に形成される凹部を後頭部の置載位置として容易に判別できると共に、患者の頭部を安定して保持することができ、気密性袋体内に給気して弾性芯材が元の形状に復元する間も頭部の姿勢安定性を向上することができ、頸部捻じりや頭部の傾斜を防止することができる。
【0015】
弾性芯材は、気密性袋体内に給気した状態では、中央部と側端部が同様の厚さを有していることが好ましい。これにより、人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した患者への床ずれ防止することができ、体圧分散性に優れた医療用枕の提供することができる。また、人工呼吸器やECMO等の医療機器の配線や配管等の取り廻し時の引っ掛かり等の不具合の解消にも寄与できる。
【0016】
弾性芯材は、少なくとも一部が厚さ方向に積層構造を有していることが好ましい。これにより、弾性芯材が圧縮され変形する際に、中央部の上面に側面視凹形状の凹部を確実に形成することが可能となる。
【0017】
弾性芯材の長手方向断面視において、中央部が逆台形であり、側端部が台形であるように構成されていることが好ましい。これにより、弾性芯材が圧縮され変形する際に、中央部の上面に側面視凹形状の凹部を確実に形成することが可能となる。また、気密性袋体内に給気した状態での使用においては、後頭部の形状にフィットしやすく、頭部の保持安定性を向上させることができる。
【0018】
中央部は、通気性袋体に樹脂ビーズ又は発泡チップが充填されて構成されていることが好ましい。これにより、気密性袋体内に給気した状態において、人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した患者の後頭部形状への追従性が向上し、床ずれを防止する効果を向上することができる。
【0019】
気密性袋体内が大気圧の状態における弾性芯材が気密性袋体の体積に占める体積占有率が90%以上であることが好ましい。これにより、医療用枕の中央部上面を圧し潰すようにして気密性袋体内を排気させ、中央部に所望の凹部を形成することができる。そのため、医療、介護現場での作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、医療用枕は、気密性袋体内を排気した状態では、弾性芯材が圧縮変形し中央部に側面視凹形状の凹部が形成され、気密性袋体内に給気した状態では、弾性芯材が元の形状へ復元するように構成されていることにより、人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した患者の床ずれを防止することができると共に、頭部挙上動作を最小限に抑えて仰臥位の患者の後頭部に容易に挿入し設置することができる。気密性袋体内を排気した状態において、弾性芯材が圧縮変形して中央部に形成される凹部を医療用枕における後頭部の置載位置として容易に判別できると共に、当該凹部に後頭部を置載することで、気密性袋体内に給気して弾性芯材が元の形状へ復元する間も頭部の姿勢安定性を向上することができる。
【0021】
また、弾性芯材は、気密性袋体内を排気した状態において、中央部の最薄部の厚みが40mm以下になるように変形可能に構成され、かつ、中央部の最薄部の厚さをhとし、中央部の最薄部から側端部側に向かって110mmに位置する点Pが側端部に位置し、側端部の点Pの位置における厚さをHとして、h<Hであり、かつ、Hとhとの差が3mm以上となるように変形可能に構成されていることにより、仰臥位の患者の後頭部に容易に挿入し設置する際に、頭部挙上動作を最小限することができる。また、気密性袋体内を排気した状態において、弾性芯材が圧縮変形して中央部に形成される凹部を後頭部の置載位置として容易に判別できると共に、患者の頭部を安定して保持することができ、気密性袋体内に給気して弾性芯材が元の形状に復元する間も頭部の姿勢安定性を向上することができる。
【0022】
さらに、本発明の医療用枕は、弾性芯材が圧縮され変形する際に、中央部の上面に凹部を確実に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態における医療用枕の構成を概略的に示す部分断面斜視図である。
図2図1の医療用枕の弾性芯材の構成を概略的に示す断面図であり、(A)初期(給気)状態の形状であり、(B)圧縮(排気)状態の形状である。
図3図1の医療用枕の使用状態を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態における医療用枕の構成を概略的に示す図であり、(A)全体構成の部分断面斜視図であり、(B)弾性芯材の初期(給気)状態の形状を示す断面図であり、(C)弾性芯材の圧縮(排気)状態の形状を示す断面図である。
図5図4の医療用枕の弾性芯材の一構成例を示す断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態における医療用枕の構成を概略的に示す図であり、(A)部分断面斜視図で、(B)弾性芯材の初期(給気)状態の形状を示す断面図であり、(C)弾性芯材の圧縮(排気)状態の形状を示す断面図である。
図7】本発明の第4の実施形態における医療用枕の構成を概略的に示す図であり、(A)部分断面斜視図で、(B)弾性芯材の初期(給気)状態の形状を示す断面図であり、(C)弾性芯材の圧縮(排気)状態の形状を示す断面図である。
図8】本発明の第5の実施形態における医療用枕の構成を概略的に示す図であり、(A)部分断面斜視図で、(B)弾性芯材の初期(給気)状態の形状を示す断面図であり、(C)弾性芯材の圧縮(排気)状態の形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る医療用枕の実施形態を、図を参照して説明する。
【0025】
図1は本発明の第1の実施形態における医療用枕100の構成を示しており、図2は医療用枕100の構成を示すX-X線断面図であり、同図(A)は弾性芯材10の初期(給気)状態の形状を示しており、(B)は弾性芯材10の圧縮(排気)状態の形状を示している。図3は医療用枕100の使用状態を示しており、同図(A)は医療用枕100を圧縮(排気)状態にし、中央部11に凹部Uを形成させ、仰臥位の患者の後頭部に挿入する前の状態を示しており、(B)は医療用枕100患者の後頭部に挿入した状態を示しており、(C)は医療用枕100を給気状態にし、弾性芯材10が元の形状に復元した状態を示している。
【0026】
図1図3に示すように、本実施形態に係る医療用枕100は、圧縮及び圧縮解除を繰り返すことによって空気の排出及び吸入が可能な弾性芯材10と、弾性芯材10を覆う気密性袋体20と、気密性袋体20に接続された給排気手段30と、気密性袋体20を覆う外装材40とを備えている。
【0027】
弾性芯材10は、患者の後頭部を載置する中央部(頭部置載部)11と、この中央部11の両側に配置される側端部12とからなり、中央部11の硬さが側端部12よりも小さく、気密性袋体20内を排気した状態では、弾性芯材10が圧縮変形し中央部11に側面視凹形状の凹部Uが形成され、即ち、中央部11の厚さが側端部12より小さくなる。一方、気密性袋体20内に給気した状態では、弾性芯材10が元の形状へ復元するように構成されている。なお、本発明において、弾性芯材10の元の形状へ復元は、元の形状及び患者の後頭部を支持可能な形状まで復元する形態を含むものであり、目安として元の形状厚みに対して85%以上となる厚みに復元することが好ましい。弾性芯材10は、例えば、ウレタン、シリコーン、オレフィン、天然ゴム等の樹脂発泡体を用いることができる。中央部11の硬さ(JIS K6400-2A法)は、80~150Nであり、側端部12の硬さは、中央部11の硬さの1.5~2.5倍である。即ち、中央部11の反発弾性率が側端部12よりも小さい。この弾性芯材10は、図2(B)中の矢印に示すように、外部から圧縮又は吸気することで、給排気手段30から排気して弾性芯材10が圧縮されて、気密性袋体20内を排気状態にすることができる。気密性袋体20内を排気した状態において、凹部Uは、中央部11の上面側のみに形成される場合と、底面側にも同時に形成される場合とがあり、凹部Uが形成された中央部11の最薄部の厚さ(図2(B)中h)が排気した状態において40mm以下、好ましくは35mm以下に変形できるように構成されている。また、弾性芯材10は、気密性袋体20内を排気した状態において、中央部11の最薄部の厚さをhとし、中央部11の最薄部から側端部12側に向かって110mmに位置する点Pが側端部12に位置し、側端部12の点Pの位置における厚さをHとして、h<Hであり、かつ、Hとhとの差(H-h)が3mm以上となるよう変形可能に構成されている。また、中央部11の密度が側端部12よりも小さい。これにより、頭部挙上動作を最小限に抑えて仰臥位の患者の後頭部に容易に挿入し設置することができ、気密性袋体20内を排気した状態において、中央部11に形成される凹部Uを後頭部の置載位置としてより容易に判別できると共に、気密性袋体20内に給気して弾性芯材10が元の形状に復元する間も頭部の姿勢安定性をより向上することができる。さらに、弾性芯材10は、気密性袋体20内に給気した状態では、中央部11と側端部12が同様の厚さを有している。これにより、体圧分散性を向上し、人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した患者への床ずれ防止することができる。また、中央部11と側端部12との高さが同じで余分な凹凸部が少なくなるため、人工呼吸器やECMO等の医療機器の配線や配管等の取り廻し時の引っ掛かり等の不具合の解消にも寄与できる。
【0028】
気密性袋体20は、弾性芯材10を覆うものであり、ウレタン、その他合成樹脂、ゴム等のシート材から形成されている。なお、シート材としては気密性と伸縮性を有する材質であれば限定しない。例えば、気密性袋体20には、厚み100μmのポリウレタンフィルムを用いる。また、気密性袋体20内を排気及び給気した状態としたときの上述の各作用を効率よく発現させる観点から、気密性袋体20内が大気圧の状態における弾性芯材10が気密性袋体20の体積に占める体積占有率が90%以上であることが好ましい。
【0029】
給排気手段30は、気密性袋体20の一端側に装着され、空気の排出及び吸入が可能で、排気中に逆流を防止する逆止弁などの逆流防止手段を備えるものであれば良い。例えば、市販のエアーマット、圧縮袋等に使用されている各種の逆止弁を用いることができる。この給排気手段30は、排気した状態を保持可能に構成されていると共に、弾性芯材10が圧縮された状態で仰臥位の患者の後頭部に挿入し設置した後、給排気手段30の操作で内部空間への空気流入ができ、気密性袋体20内に給気可能に構成されている。給排気手段30は、空気充填量を微調整できるものも好ましい。また、給排気手段30は、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、又はABS樹脂等で形成されている。また、本実施形態においては、一つの給排気手段30で排気と給気の両方に対応可能な例であるが、給気と排気とをそれぞれ別部品で構成してもよい。
【0030】
外装材40は、袋状に形成された、弾性芯材10及び気密性袋体20を収容するものである。この外装材40は、給排気手段30が外部に露出可能に構成されている。また、外装材40の素材には、種々の柔らかい、例えば、綿、麻、ポリエチレン等の繊維材料を採用することが好ましい。なお、この外装材40は、取り替え、交換可能であることが好ましい。
【0031】
図3に示すように、医療用枕100を使用する際に、まず、図3(A)に示すように、医療用枕100の給排気手段30から排気して弾性芯材10が圧縮された状態として、中央部11に凹部Uを形成させる。ここで、給排気手段30から排気する方法としては、ポンプで吸気する方法や、給排気手段30が取付けられている方向に向かって巻くように圧し潰していく方法などが適用できる。次に、中央部11に凹部Uが挿入できる程度に仰臥位の患者の頭部を少し持ち上げ、医療用枕100の中央部11の凹部Uを仰臥位の患者の後頭部の置載位置として、凹部Uを後頭部下のスペースに挿入し設置する(図3(B)参照)。そして、患者の後頭部を医療用枕100の中央部11の凹部Uに載せた後、給排気手段30の逆止弁を開けて、外部から空気を取り入れて弾性芯材10を元の形状に復元する方向に後頭部を保持しながら凹部10の凹底部の厚みが増すように変形させて、適正な高さで頭部を支持するようにする(図3(C)参照)。このように、頭部挙上動作を最小限に抑えて仰臥位の患者の後頭部に容易に挿入し位置決めをして設置することができる。また、凹部Uに後頭部を置載することで、給気して弾性芯材10を元の形状に復元する方向に変形して後頭部を支持する状態に至る過程においても頭部の姿勢安定性を向上することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の医療用枕100は、弾性芯材10と、気密性袋体20と、給排気手段30と、外装材40とを備え、気密性袋体20内を排気した状態では、弾性芯材10が圧縮変形し中央部11に側面視凹形状の凹部Uが形成され、気密性袋体20内に給気した状態では、弾性芯材10が元の形状に復元するように構成されている。
【0033】
これにより、人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した患者の床ずれを防止することができると共に、頭部挙上動作を最小限に抑えて仰臥位の患者の後頭部に容易に挿入し設置できる。また、気密性袋体20内を排気した状態において、弾性芯材10が圧縮変形して中央部11に形成される凹部Uを医療用枕100における後頭部の置載位置として容易に判別できると共に、凹部Uに後頭部を置載することで、気密性袋体20内に給気して弾性芯材10が元の形状に復元する方向に変形して後頭部を支持する過程も含めて頭部の姿勢安定性を向上することができる。
【0034】
また、患者後頭部の置載位置を視認しやすく、医療用枕100を正しい位置に設置することができることから、患者の頭部を正しい位置に置載して安定して保持することができ、医療用枕100を装着する作業時においても、頸部捻じりや頭部の傾斜を防止することができる。
【0035】
さらに、気密性袋体20内が大気圧の状態における弾性芯材10が気密性袋体20の体積に占める体積占有率が90%以上であることにより、医療用枕100の気密性袋体20内を排気させ、中央部11に所望の凹部Uを形成する作業を安定的に実施することができる。そのため、医療、介護現場での作業性を向上することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
図4は本発明の第2の実施形態における医療用枕100Aの構成を示しており、同図(A)は医療用枕100Aの構成を概略的に示す部分断面斜視図であり、(B)は弾性芯材10Aの初期(給気)状態の形状(A-A線断面)を示しており、(C)は弾性芯材10Aの圧縮(排気)状態の形状を示している。
【0037】
図4に示すように、本実施形態に係る医療用枕100Aは、圧縮及び圧縮解除を繰り返すことによって空気の排出及び吸入が可能な弾性芯材10Aと、弾性芯材10Aを覆う気密性袋体20と、気密性袋体20に接続された給排気手段30と、気密性袋体20を覆う外装材40とを備えている。この医療用枕100Aにおいて、弾性芯材10Aの構成が上述した第1の実施形態と異なる以外、上述した第1の実施形態と同様の構成を有している。ここで、その詳細な説明を省略する。また、本実施形態に係る医療用枕100Aの使用方法は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0038】
弾性芯材10Aは、患者の後頭部を載置する中央部(頭部置載部)11Aと、この中央部11Aの両側に配置される側端部12Aと、中央部11A及び側端部12Aの下部に積層された下層部13Aとから構成されている。この弾性芯材10Aは、中央部11Aの硬さが側端部12Aよりも小さく、下層部13Aの硬さが側端部12Aより小さく、中央部11Aより大きくなるように構成されている。即ち、中央部11Aの反発弾性率が側端部12Aよりも小さい。また、この弾性芯材10Aは、図4(C)中の矢印に示すように、外部から圧縮又は吸気することで、給排気手段30から排気して弾性芯材10Aが圧縮されて、気密性袋体20内を排気状態にすることができる。気密性袋体20内を排気した状態では、弾性芯材10Aが圧縮変形し中央部11Aに側面視凹形状の凹部Uが形成され、気密性袋体20内に給気した状態では、弾性芯材10Aが元の形状へ復元するように構成されている。気密性袋体20内を排気した状態での中央部11Aへの凹部Uの形成において、下層部13Aは中央部11Aよりも変形し難いため、第1の実施形態のように中央部11の上面側と底面側の両方に凹部Uが形成され難くなり、中央部11A側に凹部Uが形成されるように機能する。また、気密性袋体20内に給気した状態で使用した場合に中央部11Aの底付きを低減することができる。この弾性芯材10Aは、気密性袋体20内を排気した状態において、中央部11Aの最薄部の厚さ(図4(C)中h)が40mm以下、好ましくは35mm以下に変形できるように構成され、また、上述した第1の実施形態と同様に(図2参照)、中央部11Aの最薄部の厚さをhとし、中央部11Aの最薄部から側端部12A側に向かって110mmに位置する点Pが側端部12Aに位置し、側端部12Aの点Pの位置における厚さをHとして、h<Hであり、かつ、Hとhとの差(H-h)が3mm以上となるよう変形可能に構成されている。また、中央部11Aの密度が側端部12Aよりも小さい。
【0039】
図5は、弾性芯材10Aの一構成例を示している。図5に示すように、中央部11Aの長手方向の寸法は160mmであり、1対の側端部12Aの長手方向の寸法はそれぞれ70mmである。中央部11A及び1対の側端部12Aの高さは30mmであり、下層部13Aの高さは20mmである。弾性芯材10Aの各部の硬さ及び密度を、下記の表1に示している。表1に示すように、中央部11Aの硬さが側端部12Aよりも小さく、下層部13Aの硬さが側端部12Aより小さく、中央部11Aより大きくなるように構成されており、かつ、中央部11Aの密度が側端部12Aよりも小さく、下層部13Aの密度が中央部11A及び側端部12Aより大きくなるように構成されている。
【0040】
【表1】
【0041】
本実施形態において、図5に示す構成、寸法を基本構成とし、弾性芯材(フォーム)各部の組み合わせを変えて、実施例1~6の医療用枕を作成した。表2には、それぞれの構成寸法、及び評価結果を示している。表2において、弾性芯材(フォーム)10A各部の材料構成について、中央部A1~A6は、(株)ブリヂストン社製連続気泡型ウレタンフォーム(型番EPV)であり、両端部B1~B6は、(株)イノアックコーポレーション社製続気泡型ウレタンフォーム(型番EAH-H)であり、下層部Cは、(株)ブリヂストン社製連続気泡型ウレタンフォーム(型番EOO)である。また、弾性芯材(フォーム)10Aを覆う気密性袋体は、日本マタイ社製ウレタンフィルム(型番エスマーURS ES85#10)とした。給排気手段は市販の樹脂製空気栓(株式会社丸昌社製 ビニールストッパーWP-21)を気密性袋体に溶着して設けた。
【0042】
各実施例の医療用枕に対する評価は、(1)挿入作業性と(2)頭部置載位置の視認性に対して行った。
【0043】
(1)挿入作業性について、仰向けに寝た被験者の後頭部とベッドの間に排気して変形させた医療用枕を中央部から挿入する操作時の最大挙上高さで評価を行った。ここで、頭部の挙上高さが35mm以下である場合を優良「◎」とし、挙上高さが35mm超~40mmであった場合を良「○」とし、挙上高さが40mm超の場合を可「△」とする。
【0044】
(2)頭部置載位置の視認性について、排気して変形させた状態で後頭部を載置する領域が凹部Uとして識別できるかを目視で評価することを行った。ここで、識別できる場合を良「○」とし、凹部Uとしては識別できるが凹部Uと両端部12Aとの境界が明確ではない場合を可「△」とする。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示すように、気密性袋体20内を排気した状態において、中央部最薄部厚さhが40mm以下、かつHとhとの差(H-h)が3mm以上の場合(実施例1から実施例4の場合)は、挿入作業性及び頭部置載位置の視認性がともに良以上の結果が得られる。一方、Hとhとの差(H-h)が3mm以下の場合(例えば、実施例5の場合)は、挿入作業性が良いが、Hとhとの差(H-h)が3mm以上の場合に比べて凹部Uの視認性が小さく、頭部置載位置の視認性が可「△」となり、中央部最薄部厚さhが40mmを越えた場合(例えば、実施例6の場合)は、中央部最薄部厚さhが40mmの場合(実施例3)に比べて後頭部の最大挙上高さが大きく、挿入作業性が可「△」となることから、挿入作業性及び頭部置載位置の視認性を両立する条件として、中央部最薄部厚さhが40mm以下、かつHとhとの差(H-h)が3mm以上の場合が好ましいことがわかる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の医療用枕100Aは、弾性芯材10Aと、気密性袋体20と、給排気手段30と、外装材40とを備え、弾性芯材10Aは、患者の後頭部を載置する中央部11Aと、この中央部11Aの両側に配置される側端部12Aと、中央部11A及び側端部12Aの下部に積層された下層部13Aとから構成され、かつ、気密性袋体20内を排気した状態では、弾性芯材10Aが圧縮変形し中央部に側面視凹形状の凹部Uが形成され、気密性袋体20内に給気した状態では、弾性芯材10Aが元の形状に復元するように構成されている。
【0048】
これにより、人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した患者の床ずれを防止することができると共に、頭部挙上動作を最小限に抑えて仰臥位の患者の後頭部に容易に挿入し設置できる。また、気密性袋体20内を排気した状態において、弾性芯材10Aが圧縮変形して中央部11Aに形成される凹部Uを医療用枕100Aにおける後頭部の置載位置として容易に判別できると共に、凹部Uに後頭部を置載することで、気密性袋体20内に給気して弾性芯材10Aが元の形状に復元する方向に変形して後頭部を支持する過程も含めて頭部の姿勢安定性を向上することができる。また、下層部13Aを設けることで、弾性芯材10Aが圧縮され変形する際に、中央部11Aの下面の変形が抑えられ、中央部11Aの上面に側面視凹形状の凹部Uを確実に形成することが可能となる。
【0049】
(第3の実施形態)
図6は本発明の第3の実施形態における医療用枕100Bの構成を示しており、同図(A)は医療用枕100Bの構成を概略的に示す部分断面斜視図であり、(B)は弾性芯材10Bの初期(給気)状態の形状(B-B線断面)を示しており、(C)は弾性芯材10Bの圧縮(排気)状態の形状を示している。
【0050】
図6に示すように、本実施形態に係る医療用枕100Bは、圧縮及び圧縮解除を繰り返すことによって空気の排出及び吸入が可能な弾性芯材10Bと、弾性芯材10Bを覆う気密性袋体20と、気密性袋体20に接続された給排気手段30と、気密性袋体20を覆う外装材40とを備えている。この医療用枕100Bにおいて、弾性芯材10Bの構成が上述した第1の実施形態と異なる以外、上述した第1の実施形態と同様の構成を有している。ここで、その詳細な説明を省略する。また、本実施形態に係る医療用枕100Bの使用方法は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0051】
弾性芯材10Bは、患者の後頭部を載置する中央部(頭部置載部)11Bと、この中央部11Bの両側に配置される側端部12Bと、中央部11Bの下部に積層された下層部13Bと、側端部12Bの下部に積層された下層部14Bとから構成されている。この弾性芯材10Bは、中央部11Bの硬さが側端部12Bよりも小さく、下層部13Bの硬さが側端部12Bより小さく、中央部11Bより大きくなるように構成され、下層部14Bの硬さが下層部13Bより大きくなるように構成されている。即ち、中央部11Bの反発弾性率が側端部12Bよりも小さい。この弾性芯材10Bは、図6(C)中の矢印に示すように、外部から圧縮又は吸気することで、給排気手段30から排気して弾性芯材10Bが圧縮されて、気密性袋体20内を排気状態にすることができる。気密性袋体20内を排気した状態では、弾性芯材10Bが圧縮変形し中央部11Bに側面視凹形状の凹部Uが形成され、気密性袋体20内に給気した状態では、弾性芯材10Bが元の形状へ復元するように構成されている。気密性袋体20内を排気した状態での中央部11Bへの凹部Uの形成において、下層部13Bと下層部14Bの硬さを上記のように設定することによって、凹部Uの形態(形状や底面側への同時形成など)を様々に調整するように設計できる。この弾性芯材10Bは、気密性袋体20内を排気した状態において、中央部11Bの最薄部の厚さ(図6(C)中h)が40mm以下、好ましくは35mm以下に変形できるように構成され、また、上述した第1の実施形態と同様に(図2参照)、中央部11Bの最薄部の厚さをhとし、中央部11Bの最薄部から側端部12B側に向かって110mmに位置する点Pが側端部12Bに位置し、側端部12Bの点Pの位置における厚さをHとして、h<Hであり、かつ、Hとhとの差(H-h)が3mm以上となるよう変形可能に構成されている。また、中央部11Bの密度が側端部12Bよりも小さい。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の医療用枕100Bは、弾性芯材10Bと、気密性袋体20と、給排気手段30と、外装材40とを備え、弾性芯材10Bは、患者の後頭部を載置する中央部11Bと、この中央部11Bの両側に配置される側端部12Bと、中央部11Bの下部に積層された下層部13Bと、側端部12Bの下部に積層された下層部14Bとから構成され、かつ、気密性袋体20内を排気した状態では、弾性芯材10Bが圧縮変形し中央部に側面視凹形状の凹部Uが形成され、気密性袋体20内に給気した状態では、弾性芯材10Bが元の形状に復元するように構成されている。医療用枕100Bは、気密性袋体20内を排気した状態における凹部Uの形態(形状や底面側への同時形成など)を様々に設計できつつ、上述した第2の実施形態における医療用枕100Aと同様な効果が得られる。
【0053】
(第4の実施形態)
図7は本発明の第4の実施形態における医療用枕100Cの構成を示しており、同図(A)は医療用枕100Cの構成を概略的に示す部分断面斜視図であり、(B)は弾性芯材10Cの初期(給気)状態の形状(C-C線断面)を示しており、(C)は弾性芯材10Cの圧縮(排気)状態の形状を示している。
【0054】
図7に示すように、本実施形態に係る医療用枕100Cは、圧縮及び圧縮解除を繰り返すことによって空気の排出及び吸入が可能な弾性芯材10Cと、弾性芯材10Cを覆う気密性袋体20と、気密性袋体20に接続された給排気手段30と、気密性袋体20を覆う外装材40とを備えている。この医療用枕100Cにおいて、弾性芯材10Cの構成が上述した第1の実施形態と異なる以外、上述した第1の実施形態と同様の構成を有している。ここで、その詳細な説明を省略する。また、本実施形態に係る医療用枕100Cの使用方法は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0055】
弾性芯材10Cは、患者の後頭部を載置する中央部(頭部置載部)11Cと、この中央部11Cの両側に配置される側端部12Cとから構成されている。この弾性芯材10Cの長手方向断面視において、中央部11Cが逆台形であり、側端部12Cが台形であるように構成されている。また、弾性芯材10Cは、中央部11Cの硬さが側端部12Cよりも小さくなるように構成されている。即ち、中央部11Cの反発弾性率が側端部12Cよりも小さい。この弾性芯材10Cは、図7(C)中の矢印に示すように、外部から圧縮又は吸気することで、給排気手段30から排気して弾性芯材10Bが圧縮されて、気密性袋体20内を排気状態にすることができる。気密性袋体20内を排気した状態では、弾性芯材10Cが圧縮変形し中央部11Cに側面視凹形状の凹部Uが形成され、気密性袋体20内に給気した状態では、弾性芯材10Cが元の形状へ復元するように構成されている。気密性袋体20内を排気した状態での中央部11Cへの凹部Uの形成において、中央部11Cが逆台形であり、側端部12Cが台形とすることによって、後頭部を置載する側に優先的に凹部Uを形成し易くできると共に、気密性袋体20内に給気した状態での使用においては、後頭部の形状にフィットしやすく、頭部の支持安定性を向上させることができる。この弾性芯材10Cは、気密性袋体20内を排気した状態において、中央部11Cの最薄部の厚さ(図7(C)中h)が40mm以下、好ましくは35mm以下に変形できるように構成され、また、上述した第1の実施形態と同様に(図2参照)、中央部11Cの最薄部の厚さをhとし、中央部11Cの最薄部から側端部12C側に向かって110mmに位置する点Pが側端部12Cに位置し、側端部12Cの点Pの位置における厚さをHとして、h<Hであり、かつ、Hとhとの差(H-h)が3mm以上となるよう変形可能に構成されている。また、中央部11Cの密度が側端部12Cよりも小さい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の医療用枕100Cは、弾性芯材10Cと、気密性袋体20と、給排気手段30と、外装材40とを備え、弾性芯材10Cは、患者の後頭部を載置する中央部11Cと、この中央部11Cの両側に配置される側端部12Cとを有し、弾性芯材10Cの長手方向断面視において、中央部11Cが逆台形であり、側端部12Cが台形であるように構成され、かつ、気密性袋体20内を排気した状態では、弾性芯材10Cが圧縮変形し中央部に側面視凹形状の凹部Uが形成され、気密性袋体20内に給気した状態では、弾性芯材10Cが元の形状に復元するように構成されている。医療用枕100Cは、上述した第1の実施形態における医療用枕100と同様な効果が得られる。また、弾性芯材10Cの長手方向断面視において、中央部11Cが逆台形であり、側端部12Cが台形であるように構成されているため、弾性芯材10Cが圧縮され変形する際に、中央部11Cの上面に側面視凹形状の凹部Uを後頭部を置載する側に確実に形成することが可能となる。また、気密性袋体20内に給気した状態での使用においては、後頭部の形状にフィットしやすく、頭部の保持安定性を向上させることができる。
【0057】
(第5の実施形態)
図8は本発明の第5の実施形態における医療用枕100Dの構成を示しており、同図(A)は医療用枕100Dの構成を概略的に示す部分断面斜視図であり、(B)は弾性芯材10Dの初期(給気)状態の形状(D-D線断面)を示しており、(C)は弾性芯材10Dの圧縮(排気)状態の形状を示している。
【0058】
図8に示すように、本実施形態に係る医療用枕100Dは、圧縮及び圧縮解除を繰り返すことによって空気の排出及び吸入が可能な弾性芯材10Dと、弾性芯材10Dを覆う気密性袋体20と、気密性袋体20に接続された給排気手段30と、気密性袋体20を覆う外装材40とを備えている。この医療用枕100Cにおいて、弾性芯材10Dの構成が上述した第1の実施形態と異なる以外、上述した第1の実施形態と同様の構成を有している。ここで、その詳細な説明を省略する。また、本実施形態に係る医療用枕100Dの使用方法は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0059】
弾性芯材10Dは、患者の後頭部を載置する中央部(頭部置載部)11Dと、この中央部11Dの両側に配置される側端部12Dとから構成されている。中央部11Dは通気性袋体15Dに樹脂ビーズ又は発泡チップが充填されて構成されている。また、弾性芯材10Dは、中央部11Dの硬さ(即ち、樹脂ビーズ又は発泡チップが通気性袋体15Dに充填された状態における硬度)が側端部12Dよりも小さくなるように構成されている。この弾性芯材10Dは、図8(C)中の矢印に示すように、外部から圧縮又は吸気することで、給排気手段30から排気して弾性芯材10Dが圧縮されて、気密性袋体20内を排気状態にすることができる。気密性袋体20内を排気した状態では、弾性芯材10Dが圧縮変形し中央部11Dに側面視凹形状の凹部Uが形成され、気密性袋体20内に給気した状態では、弾性芯材10Dが元の形状へ復元するように構成されている。この弾性芯材10Dは、気密性袋体20内を排気した状態において、中央部11Dの最薄部の厚さ(図8(C)中h)が40mm以下、好ましくは35mm以下に変形できるように構成され、また、上述した第1の実施形態と同様に(図2参照)、中央部11Dの最薄部の厚さをhとし、中央部11Dの最薄部から側端部12D側に向かって110mmに位置する点Pが側端部12Dに位置し、側端部12Dの点Pの位置における厚さをHとして、h<Hであり、かつ、Hとhとの差(H-h)が3mm以上となるよう変形可能に構成されている。中央部11Dが通気性袋体15Dに樹脂ビーズ又は発泡チップが充填されて構成されていることによって、気密性袋体20内に給気した状態において、患者の後頭部形状への追従性が向上し、床ずれを防止する効果を向上することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の医療用枕100Dは、弾性芯材10Dと、気密性袋体20と、給排気手段30と、外装材40とを備え、弾性芯材10Dは、患者の後頭部を載置する中央部11Dと、この中央部11Dの両側に配置される側端部12Dとを有し、中央部11Dは通気性袋体に樹脂ビーズ又は発泡チップが充填されて構成されている。かつ、医療用枕100Dにおいて、気密性袋体20内を排気した状態では、弾性芯材10Dが圧縮変形し中央部に側面視凹形状の凹部Uが形成され、気密性袋体20内に給気した状態では、弾性芯材10Dが元の形状に復元するように構成されている。医療用枕100Dは、上述した第1の実施形態における医療用枕100と同様な効果が得られる。また、中央部は、通気性袋体に樹脂ビーズ又は発泡チップが充填されて構成されているため、気密性袋体20内に給気した状態において、人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した患者の後頭部形状への追従性が向上し、床ずれを防止する効果を向上することができる。
【0061】
なお、上述した実施形態の医療用枕100、100A、100B、100C、100Dにおいて、気密性袋体20を覆う外装材40を有する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。外装材40を設けなくても良い。
【0062】
また、上述した実施形態の医療用枕100、100A、100B、100Cにおいて、弾性芯材10、10A、10B、10Cの中央部11、11A、11B、11Cと側端部12、12A、12B、12Cには、異なる硬さを有する弾性樹脂発泡体(樹脂フォーム)を用いる例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、異なる硬さを有する樹脂製三次元網状構造体、又は三次元編物を用いても良い。なお、弾性芯材にスリット、肉抜き、貫通孔等の加工を行うことにより中央部と側端部の硬さ(見かけ硬度)を調整するようにしても良い。
【0063】
また、上述した実施形態の医療用枕100、100A、100B、100C、100Dにおいて、弾性芯材10、10A、10B、10C、10Dは、気密性袋体20内に給気した状態では、中央部11、11A、11B、11C、11Dと側端部12、12A、12B、12C、12Dが同様の厚さを有する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
さらに、上述した実施形態の医療用枕100Dにおいて、弾性芯材10Dは通気性袋体に樹脂ビーズ又は発泡チップが充填されて構成された中央部11Dと側端部12Dとから構成されている例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。中央部11Dの下部に、又は中央部11D及び側端部12Dの下部に積層された下層部をさらに有するようにしても良い。
しても良い。
【0065】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、医療、介護現場において、特に人工呼吸器やECMO等の医療機器を装着した仰臥位の患者の床ずれ防止、後頭部に容易に挿入し設置し、頭部の姿勢安定性と体圧分散性を向上する目的に利用できる。
【符号の説明】
【0067】
10、10A、10B、10C、10D 弾性芯材
11、11A、11B、11C、11D 中央部(頭部置載部)
12、12A、12B、12C、12D 側端部
13A、13B、14B 下層部
15D 通気性袋体
20 気密性袋体
30 給排気手段
40 外装材
100、100A、100B、100C、100D 医療用枕
U 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8