(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135260
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】膜厚測定装置および膜厚測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20230921BHJP
G01N 27/28 20060101ALI20230921BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20230921BHJP
G01N 27/27 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
G01N27/28 301Z
G01N27/416 341M
G01N27/27 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040386
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】598014825
【氏名又は名称】株式会社クオルテック
(72)【発明者】
【氏名】杉林 祐至
(72)【発明者】
【氏名】朴 潤烈
(72)【発明者】
【氏名】高原 博司
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065BB01
2F065CC19
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF41
2F065FF63
2F065GG03
2F065GG24
2F065HH12
2F065JJ08
2F065LL42
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065RR05
(57)【要約】
【課題】
半田面、電極面に発生した酸化薄膜等の組成、膜厚を精度よく測定する。
【解決手段】
固体電解質171に対電極112、参照電極111が形成されている。固体電解質171と測定対象の薄膜123の周囲には密着部が配置され、密着部の内部には、電荷液124が充填される。固体電解質171の先端部は電荷液124が浸透している。ポテンショスタット119により電極110、参照電極111、対電極112に電圧印加されて、薄膜123が電気化学還元される。光発生器108からの入射光114a2は薄膜123に照射され、反射光114bを受光器117で受光して分光反射率を測定する。電気化学還元によるプラトー電位、分光反射率による膜厚シミュレーション結果から、薄膜123の組成、膜厚を求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
容器と、
前記容器に電解材料を注入する電解材料注入器と、
固体電解質部と、
固体電解質部に配置された対電極と、
前記薄膜と前記対電極間の電位を測定する電位測定器を具備することを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項2】
薄膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
容器と、
前記容器に電解材料を注入する電解材料注入器と、
固体電解質部と、
固体電解質部に配置された対電極と、
前記薄膜と前記対電極間の電位を測定する電位測定器と、
前記薄膜に光を照射する光照射器と、
前記薄膜で反射した前記光を測定する光制御器を具備することを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項3】
薄膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
容器と、
前記容器に洗浄材料を注入する洗浄材料注入器と、
前記容器に注入された洗浄材料を排出する洗浄材料排出器と、
前記容器に電解材料を注入する電解材料注入器と、
固体電解質部と、
固体電解質部に配置された対電極と、
前記薄膜と前記対電極間の電位を測定する電位測定器と、
前記薄膜に光を照射する光照射器と、
前記薄膜で反射した前記光を測定する光制御器を具備することを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項4】
薄膜の膜厚を測定する膜厚測定方法であって、
前記薄膜の分光反射率を測定する第1の工程と、
前記薄膜と対電極間の電位変化を測定する第2の工程と、
前記分光反射率と前記電位変化から、前記薄膜の膜厚を求める第3の工程を実施することを特徴とする膜厚測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハ等の表面に発生する表面酸化膜、プリント印刷基板の銅箔の表面の有機薄膜、表面酸化膜、半田処理により形成される表面酸化膜等の定量分析を行うための膜厚測定装置および膜厚測定方法に関するものである。また、表面有機薄膜、表面酸化膜を容易に除去する被膜除去装置および被膜除去方法に関するものである。また、電気化学還元に用いる電極等のヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハはICの製造工程において、目的に応じて特殊な熱処理を施して製造される。プリント印刷基板の銅箔の大気中の酸素により表面酸化膜が発生し、また、銅箔表面は、酸化、汚染により、無機膜、有機膜等が付着する。銅箔の表面には半田処理により表面酸化膜等が発生する。表面酸化膜等は、耐食性、半田密着性、素子信頼性等を支配し、課題となることから、その組成、膜厚を評価することが製造上重要となる。
【0003】
BGAパッケージの基板実装やフリップチップ接続において未融合などの不具合が生じないためには、リフロー時にバンプ表面の酸化膜を定量的に測定し、酸化膜に対する対処が必要である。そのため、半田バンプ表面の酸化膜の状態を解析し、酸化膜の膜厚、材料組成を評価することが重要である。
【0004】
表面酸化膜等の組成は、熱処理の温度、雰囲気および金属材料の化学成分に影響されるため複雑ある。表面酸化膜等の厚みは、非常に薄いもので数nm、厚いものでは数十μmである。
【0005】
特許文献1には、膜厚測定方法として、グロー放電を行って目的元素とマトリックス元素の発光強度比を測定し、検量線により目的元素の濃度を決定する金属表面酸化膜の定量分析方法が記載されている。
【0006】
薄膜の膜厚は、2次イオン質量分析法(SIMS)、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)等の、いわゆる表面分析法を適用し、酸化膜の組成を、表面からの深さ方向の組成変化と共に評価していた。しかし、迅速性や、金属表面の平均的情報を得るために必要な分析範囲の広さの面で劣るため、ほとんど利用されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
2次イオン質量分析法(SIMS)、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)は必要な分析範囲の広さの面で劣るため、ほとんど利用されていなかった。
【0009】
グロー放電発光分光分析法(以下GDSとも記す)は、分光器系および真空排気系統の変動により発光強度が不安定になり、定量精度が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の膜厚測定装置は、固体電解質171に対電極112、参照電極111が形成されている。固体電解質171と測定対象の薄膜123の周囲には密着部が配置される。密着部の内部には、電荷液124が充填される。固体電解質171の先端部は電荷液124が浸透あるいは充填されている。
【0011】
ポテンショスタット119により電極110、参照電極111、対電極112に電圧印加され、薄膜123が電気化学還元される。光発生器108からの入射光114a2は薄膜123に照射され、反射光114bを受光器117で受光して分光反射率を測定する。電気化学還元によるプラトー電位、プラトー電位の変化時間、分光反射率による膜厚シミュレーション結果から、薄膜123の組成、膜厚を求める。
【発明の効果】
【0012】
分光膜厚測定法と電気化学還元法を実施することにより、測定対象の薄膜材料の組成、構造、膜厚を精度よく測定することができる。
【0013】
洗浄液により、薄膜上の保護膜等を容易に除去することができるため、測定対象の薄膜を露出させることができ、測定対象の酸化薄膜材料等の膜厚を容易に測定することができる。
【0014】
電気化学還元を実施するヘッド部は、固体電解質171で構成されている。そのため、ヘッド部を小さく、省スペースで構成できる。また、ヘッドの先端部にスポンジ状の材質に電解液124を浸透させている。そのため、電解液124が流出することがなく、かつ、電解液124と薄膜123とを密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の膜厚測定装置のブロック図および説明図である。
【
図2】本発明の膜厚測定装置の構成図および膜厚測定方法の説明図である。
【
図3】本発明の膜厚測定装置の構成図および膜厚測定方法の説明図である。
【
図4】本発明の膜厚測定装置の構成図および膜厚測定方法の説明図である。
【
図5】本発明の膜厚測定装置の構成図および膜厚測定方法の説明図である。
【
図6】本発明の膜厚測定装置の構成図および膜厚測定方法の説明図である。
【
図7】本発明の膜厚測定装置の構成図および膜厚測定方法の説明図である。
【
図8】本発明の膜厚測定装置の構成図および膜厚測定方法の説明図である。
【
図13】本発明の膜厚測定装置および膜厚測定方法の説明図である。
【
図14】本発明の膜厚測定方法のフローチャート図である。
【
図15】本発明の膜厚測定装置の構成図および膜厚測定方法の説明図である。
【
図16】本発明の膜厚測定装置のヘッド部の構成図および説明図である。
【
図17】本発明の膜厚測定装置のヘッド部の構成図および説明図である。
【
図18】本発明の膜厚測定装置のヘッド部の構成図および説明図である。
【
図19】本発明の膜厚測定装置のヘッド部の構成図および説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置の構成図および膜厚測定方法を説明する。本発明は、膜厚測定装置および膜厚測定方法に限定されるものではなく、鋼材、半田、めっき板、IC等のバンプ、銅箔、プリント印刷基板、シリコンウエハ等の半導体関連製品、鉄鋼材料、電子機器、電気機器、機械機器、精密機器、構造物、塗装材料等の表面加工あるいは処理方法に関するものである。
【0017】
発明を実施するための形態を説明するための各図面において、同一の機能あるいは類似性を有する要素は同一の符号を付する。説明に不要な事項は図面から省略する。
説明を容易にするため図面等を簡略化あるいは模式化する場合がある。明細書においても説明を省略する場合がある。
【0018】
本発明の実施例は、本明細書、図面に記載しているそれぞれの実施例と一部、または全部を組み合わせることができる。また、一部を変更あるいは改変して組み合わせ、あるいは実施することができる。
【0019】
図1は本発明の膜厚測定装置のブロック図および膜厚測定方法の説明図である。本発明の膜厚測定装置は、対象膜の膜厚の測定だけでなく、表面の酸化膜、有機膜、有機保護膜(OSP:Organic Solderability Preservative)等を除去する機能を有する。
【0020】
有機膜、有機保護膜(OSP)を除去するための洗浄液LAは液体タンク104aに充填される。洗浄液LAは液体タンク104aの充填量を、常時、測定あるいは把握して、一定量を充填する。あるいは浸透させる。洗浄液LAは一例として溶剤である。また、洗浄液LAは、適時、リンス液に置き換えられる。
【0021】
OSPが水溶性の場合、洗浄液LA等は、同じ水溶性の溶剤をベースにする。たとえば、HO-(CH2)2-OH(エチレングリコール)は、水と自由に混和する。HO-(CH2)2-O(CH2)3CH3(エチレングリコール、モノブチルエーテル)は、水に可溶である。HO-(CH2)2-O(CH2)5CH3(エチレングリコール、モノヘキシルエーテル)は、水に微溶である。
【0022】
洗浄液LAとリンス液の関係としては、洗浄液LAがメチルアルコールの場合、リンス液として、アセトン、エタノールベース、イソプロピルアルコール(IPA)が例示される。洗浄液LAがエタノールの場合、リンス液として、アセトン、エタノールベース、イソプロピルアルコール(IPA)が例示される。洗浄液LAがプロピレンアルコールの場合、リンス液として、アセトンが例示される。
【0023】
洗浄液LAが1-ブタノールの場合、リンス液として、アセトン、エタノールベース、イソプロピルアルコール(IPA)が例示される。洗浄液LAがエチレングリコールの場合、リンス液として、イソプロピルアルコール(IPA)が例示される。
電解液LB124は液体タンク104bに充填される。電解液LB124は液体タンク104bの充填量を、常時測定あるいは把握して、一定量を充填される。
【0024】
電解液124として、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩酸水溶液、水酸化ナトリウム、ホウ酸溶液、四ホウ酸ナトリウム溶液等が例示される。
【0025】
電解液124は、固体電解質材料、ゲル状電解液でも良い。電解液124をスポンジ等に含ませて使用しても良い。電解液124を容器105と浸透膜172間に充填させて使用しても良い。
電解質材料が、固体電解質材料、ゲル状電解液の場合は、脱泡器103b、溶液貯蔵器162bは不要であり、容器105内を循環させる必要はない。
【0026】
固体電解質として安定化ジルコニアが例示される。安定化ジルコニアは、ジルコニア(二酸化ジルコニウム ZrO2)に酸化マグネシウムMgO、酸化カルシウムCaOあるいは希土類酸化物を数%添加したものが例示される。また、イットリア安定化ジルコニウム(ZrO2-Y2O3)が例示される。固体電解質材料は、固体電解質171、あるいは固体電解質171部として説明をする。
【0027】
ジルコニアに酸化イットリウム(Y2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化セリウム(CeO2)、酸化マグネシウム(MgO)などの酸化物を添加すると、立方晶が室温でも安定に存在できるようになる。室温で立方晶が安定となったジルコニアを安定化ジルコニア、もしくは部分安定化ジルコニアと呼び、本発明で固体電解質171として使用する。
【0028】
本発明に用いるヘッドのジルコニアの製造方法は主に湿式精製法と乾式精製法の2種類がある。どちらもジルコン、ハデライトなどのジルコニウム鉱石を原料とする。湿式精製法では、選別した鉱石を苛性ソーダで溶融した後、塩酸で分解、濃縮する。さらに、水洗、濾過などの工程を経て、得られた水酸化ジルコニウムを焼成、粉砕することでジルコニア粉末を製造する。
【0029】
乾式精製法では、鉱石を粉砕して不純物を除去した後、選鉱を繰り返し行うことで、純粋なジルコニアを製造する。本発明では、湿式精製法または乾式精製法で製造したジルコニアにめっき技術で、対電極112、参照電極110を形成する。あるいは、対電極112、参照電極110を焼結して形成する。
【0030】
本明細書、図面等において、電解液124を容器105に充填して電気化学還元作用を実施するとして説明するが、電解液124は固体電解材料、ゲル状電解液であっても良い。電解液124または電解材料124は、液状のものだけでない。固体電解材料、ゲル状電解材料も含む。
【0031】
本発明では、容器105は、基板109等を蓋等として、蓋(プリント印刷基板等)と容器105間に電解液124を充填させるとしたがこれに限定されるものではない。たとえば、電解液124をガラスウール、繊維、寒天等の有機物などに浸透、あるいは混合させた状態で使用しても良い。
【0032】
電解液124等が薄膜123等と接触あるいは接する部位に寒天などの電解液124を含有あるいは浸透させる材料、浸透させた構成(浸透膜172)を、配置または設置しても良い。電解液等を含有する寒天等の部位が薄膜123等と接触あるいは接することにより、電気化学還元作用が実現される。
【0033】
電解液124が漏水しないように、
図2、
図15等に図示するように、浸透膜172を形成または配置することが好ましい。浸透膜172としてセロハン、フェロシアン化銅の沈殿膜、コロジオン膜、あるいは膀胱膜等が例示される。また、再生セルロース(セロファン)、アセチルセルロース、ポリアクリロニトリル、テフロン(登録商標)、ポリエステル系ポリマーアロイあるいはポリスルホンの多孔質膜が例示される。
【0034】
電解液124に、ポリアクリル酸塩を含有あるいは混合させても良い。ガラスウール、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、寒天等に電解液124をしみこませることにより、電解液124の漏水、あるいは溶出することを抑制することができる。
【0035】
浸透膜172の作用により、薄膜123と接触させても、電解液124が漏れ出ることはない。また、浸透膜172を介して、薄膜123等に電解液124が接触、浸漬、あるいは充填され、薄膜123等を電気化学還元することができる。
【0036】
脱泡器103は、溶液の気体を脱泡する脱泡装置である。真空(減圧)、心力を利用するものが例示される。その他、超音波、ガス透過膜を利用した脱泡装置でも良い。
液体から気泡を取り除くことで製品の強度や性状、表面性状を均一化することができ、歩留まりや品質の向上が実現できる。
【0037】
真空脱泡装置は、真空ポンプを用いて溶液を減圧することにより、液体内に含まれる気泡を膨張させる。膨張した気泡は浮力により液体表面まで浮き上がり、時間経過とともに表面の液体膜が破壊されることで減圧空気内に排出される。
遠心脱泡装置は、溶液が入った容器が自転および公転する際の遠心力により、密度差のある液体と気体が分離する原理を利用する。
【0038】
脱泡器103aで、脱泡された洗浄液(リンス液)LAは、溶液貯蔵器162aに保持される。溶液貯蔵器162aの液量はレベル検出器161aで検出され、所定の液量を越えないように、液量制御部120で制御される。
【0039】
脱泡器103bで、脱泡された電解液LBは、溶液貯蔵器162bに保持される。溶液貯蔵器162bの液量はレベル検出器161bで検出され、所定の液量を越えないように、あるいは所定の液量以下とならないように、液量制御部120で制御される。
洗浄液(リンス液)LA、電解液LBが液体タンクに注入される液量が制御されて、一定値以上の液量とならないように、液量制御部120で制御される。
【0040】
電磁弁101aは、洗浄液(リンス液)LAをポンプ102aに送出するか遮断するかを制御する。電磁弁101bは、電解液LBをポンプ102aに送出するか遮断するかを制御する。
【0041】
ポンプ102には、流量計(図示せず)が取りけられている。ポンプ102aはトルクおよび回転数により、容器105内に注入する洗浄液(リンス液)LAまたは電解液LBの液量を制御する。
【0042】
洗浄液(リンス液)LAまたは電解液LB124は、容器105に接続されている注液管106を介して、容器105内に注入される。洗浄液(リンス液)LAまたは電解液LB124は、排液管107を介して、容器105から排出される。
【0043】
容器105内には、注入された洗浄液(リンス液)LAまたは電解液LBを攪拌する循環ファン122が配置されている。循環ファン122は、必要に応じて、回転し、容器105内の液を攪拌あるいは循環させる。また、溶液を排出するときは、排液管107に溶液を送出する方向に回転する。
【0044】
注液管106により、洗浄液LAまたは電解液LBが薄膜123等と接触する部位に注液される。排液管107により、洗浄液LAまたは電解液LBが薄膜123等と接触する部位から排液される。
【0045】
本発明の実施例において、理解を容易にするため、あるいは説明を容易にするため、プリント印刷基板109に電極110が形成され、電極110上に酸化膜123、有機膜126等が形成されているとして説明をする。
【0046】
本発明の膜厚測定装置は、基板109を蓋とする容器105内に溶液124が充填されるように構成される。溶液124は、電解液LBまたは洗浄液LAである。なお、容器105の先端部に寒天等からなる電解液LBまたは洗浄液LAが浸透する材料で封止しても良い。寒天等をあるいは浸透膜172が薄膜123に接するようにして洗浄、電気化学還元を実施する。
【0047】
容器内105には、電極110が配置されていることになる。電極110は基板109に形成された配線パターンの一部であり、配線パターンに所定の電位を印加することにより、作用電極(WE)として機能する。また、固体電解質171部には、対電極(CE)、参照電極(RE)が配置される。
【0048】
作用電極(WE)として機能する。また、固体電解質171部の対電極(CE)と作用電極(WE)間に定電流を印加し、参照電極(RE)で電位制御を行うことにより、作用電極(WE)の薄膜123等の形成材料が電気化学的に還元される。
【0049】
電極には分極性電極と非分極性電極がある。分極性電極とは電流を流さずに電位を変えることのできる電極である。作用電極110または対電極112として使用するのがこの電極である。非分極性電極は電位を変えようとすると電流が流れてしまう電極111であり、通常、参照電極(RE)111として使用している。
対電極(CE)112として使われる分極性電極は白金、金、カーボン、水銀が例示される。白金は物理的、化学的安定性が大きく好ましい。
【0050】
水溶液系で使うときは還元方向で水素分子の発生があるので注意が必要である。酸化領域では電極表面の酸化とこれに対応する還元電流が流れる。大抵の固体金属電極で同様の表面の酸化還元対が見られる。
【0051】
塩化物イオンが高濃度で含まれる系では、酸化電位を高くする場合は塩化白金酸イオンとして溶出する可能性がある。金は白金とは、よく使用される。水素分子の発生に対する過電圧は白金より大きいため、還元領域での電位窓は広い。塩化物イオンが多量に含まれ酸化電位を深くする。
【0052】
カーボン電極は種類が多い。最もよく使われるのはグラッシーカーボンである。ミクロにはグラファイトであるが、マクロには名称から想像されるように不定形構造をしている。グラファイトはベンゼンの亀の子が縮合した2次元平面が積層したものである。面の方位による異方性(ベーサル面とエッジ面)がある。
【0053】
参照電極(RE)111は非分極性である。電位を変えようとすると電極自身の表面反応が起こって急激に電流が増大する。参照電極(RE)111は一定電位を保つために電流を流さないように使うのが好ましい。標準は水素電極である。白金表面上で標準状態の水素分子と水素イオンが平衡状態にあるとき、白金極が示す電位をゼロと規定する。
【0054】
甘汞電極はAgを水銀(Hg)に置き換えたものである。飽和甘汞電極(SCE)は内部液が飽和KCl水溶液で水素電極に対して+0.242Vである。非水溶液系では硝酸銀や過塩素酸銀(これらは銀イオンを与える)を非水溶媒に、支持電解質と一緒に溶かした中に銀線を入れたものが用いられる(銀イオン電極)。
【0055】
図1、
図2、
図15等に図示するように、参照電極(RE)111、対電極(CE)112は、固体電解質171に形成または接触するように配置されている。または、固体電解質171の内部に、参照電極(RE)111、対電極(CE)112が形成または配置されている。
図4は本発明の実施態様としての電極(作用電極(WE)110、対電極(CE)112、参照電極(RE)111の配置、構成図である。
図4(a)は注液管106を中心とした電極の配置図であり、
図4(b)は、
図4(a)のAA’線での断面図である。
【0056】
固体電解質171の先端部には、密着部125が配置されている。密着部125は固体電解質171部からの容易な脱着が可能である。したがって、ヘッド部を取り替えることができる。ヘッド部は、還元等を行る電極のサイズに対応して選択できる種々のサイズが準備されている。
【0057】
固体電解質171は円筒形または立法体形である。固体電解質171の側面あるいは所定の箇所に、参照電極111、対電極112が形成または配置されている。固体電解質171と電解液124とは接触あるいは面するように配置されている。
【0058】
固体電解質171と接する密着部125電解液124等が充填される。電解液124等は必要に応じて、ガラスウール、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、寒天等に浸透させる。また、好ましくは電気化学還元を行う薄膜123等と接する面(箇所)に浸透膜172が配置または形成される。浸透膜172を配置することにより、電解液124が流出することがない。
【0059】
図4では、固体電解質171を軸として対電極(CE)112、参照電極(RE)111が形成または配置されている。対電極(CE)112、参照電極(RE)111は、ニッケル、銅、亜鉛等をめっきすることにより形成される。
【0060】
作用電極(WE)110は、一例としてプリント印刷基板109の1つの電極である。作用電極(WE)110は、配線パターンと接続されている。配線パターンにポテンショスタット119のWE端子を接続することにより、還元電極として機能する。
図15は、本発明の膜厚測定装置および膜厚測定方法の説明図である。特に、固体電解質171部の電極配置等を図示している。
【0061】
固体電解質171部の製造方法は以下の実施態様が例示される。固体電解質171部には、参照電極111、対電極112が形成されている。参照電極111は、固体電解質171部の内部に形成されている。
【0062】
ジルコニア粉末は、各種溶剤等と調合・粉砕され、泥状のペーストにされる。これをシート状に形成する。ジルコニアのシートに参照電極111または対電極112となる電極となる金属ペーストを塗布する。電極はNiを使用することが好ましい。その場合は、Niペーストをシートに塗布する。
【0063】
金属ペーストを塗布したジルコニアのシートに、金属ペーストを塗布していないジルコニアのシートを重ねる。重ねたものに圧力をかけて、圧着し一体成型する。この工程は異物の混入を防ぐため、クリーンルームで実施する。
一体成型したジルコニアのブロックに目的とするサイズにカットする。カット後に焼結する。焼結によりジルコニアと内部電極を一体化させる事ができる。
【0064】
焼成の終わったジルコニアのブロックに、ポテンショスタット119と電気的接続をとるために、電極となる金属ペーストを塗布する。Ni内部電極の場合、Cuペーストが塗布され、その後800度前後の温度で焼き付ける。
【0065】
電極を焼き付けた後、その表面にNi及びSnの2層めっきを施す。通常、電解めっきが用いられ、Niめっきは信頼性向上、Snめっきは半田実装をしやすくするために行われる
【0066】
対電極112は、固体電解質171部の側面に形成される。対電極112の表面はSnめっきが形成されているため、リード端子を半田付けし、ポテンショスタット119のCE端子と接続される。
【0067】
参照電極111は、固体電解質171部の上面に形成される。参照電極111の表面はSnめっきが形成されているため、リード端子を半田付けし、ポテンショスタット119のRE端子と接続される。
なお、対電極112と、参照電極111とは位置関係を入れ替えても良い。
【0068】
固体電解質171部は、電解液124と接触している。電解液124が電気化学還元を行う薄膜123等と接触する部位には、必要に応じて浸透膜172を形成または配置する。また、電解液124は、寒天、ガラスウール等に浸透させて使用する。浸透膜172に接する箇所は、電解液124と接することになり、電気化学還元が実施される。
【0069】
図16、
図17、
図18、
図19は、本発明の固体電解質171部の構成あるいは構造の説明図である。ただし、理解を容易にするため模式的に図示している。
図16、
図17、
図18、
図19は、
図4のC方向から見た状態(固体電解質171部を上方向から見た状態)を模式的に図示している。
【0070】
図16、
図17、
図18、
図19でおいて、各固体電解質171部に、対電極112、参照電極111を個別に形成したように図示しているが、これに限定するものではない。たとえば、複数の固体電解質171に対して、1つの対電極112を形成または配置しても良い。参照電極111に対しても同様である。
【0071】
図18等では、参照電極111の周辺部には、空間(空隙)を保持できる。空間に電解液124、洗浄液LAを充填あるいは通過させることができる。たとえば、注液管106、排液管107の機能として使用することができる。また、
図7、
図8等に図示するように、入射光114a2、反射光114bの光路として使用することができる。
【0072】
図16、
図17、
図18、
図19では、固体電解質171は3個または4個として図示しているがこれに限定されるものではない。たとえば、固体電解質171部を細いファイバー状に形成し、これらと束ねてヘッドとして使用、形成、構成しても良い。
【0073】
【0074】
図16は、複数(例として4個)の固体電解質171を使用し、電気化学還元を行うヘッドを形成または構成している。各固体電解質171の周囲には、参照電極111を形成または配置している。
ヘッドの先端部にスポンジ状の材質に電解液124を浸透させている。そのため、電解液124と薄膜123とを密着させることができる。
【0075】
参照電極111の形成(作製)は、参照電極111の形成部に、Cuペーストが塗布され、その後800度前後の温度で焼き付ける。参照電極111を焼き付けた後、その表面にNi及びSnの2層めっきを施す。通常、電解めっきが用いられるが、無電解めっきでも良い。また、必要に応じて、表面に金めっき膜が形成される。
参照電極111は、半田付けされてポテンショスタット119のRE端子と電気的接続される。
【0076】
各固体電解質171の上面には、対電極112を形成または配置している。対電極112の形成(作製)は、対電極112の形成部に、Cuペーストが塗布され、その後800度前後の温度で焼き付ける。対電極112を焼き付けた後、その表面にNi及びSnの2層めっきを施す。通常電、解めっきが用いられる。無電解めっきでも良い。必要に応じて、表面に金めっき膜が形成される。対電極112には、半田付けされてポテンショスタット119のCE端子と電気的接続される。
【0077】
各固体電解質171(固体電解質171a、固体電解質171b、固体電解質171c、固体電解質171d)の参照電極111(参照電極111a、参照電極111b、参照電極111c、参照電極111d)は導電物で形成されている。したがって、各固体電解質171を密着して配置することにより、参照電極111(参照電極111a、参照電極111b、参照電極111c、参照電極111d)は電気的に接続される。
【0078】
各固体電解質171(固体電解質171a、固体電解質171b、固体電解質171c、固体電解質171d)にそれぞれに対電極112(対電極112a、対電極112b、対電極112c、対電極112d)を形成し、各対電極112を電気的に接続している。
【0079】
すべての対電極112と電気的に接続しても良いが、任意の1つ以上の対電極112をポテンショスタット119のCE端子と接続しても良い。CE端子と接続する対電極112の位置、個数を変更することにより、電気化学還元の能力の設定あるいは変更、還元位置を設定あるいは変更することができる。
【0080】
図16の実施例は、各固体電解質171(固体電解質171a、固体電解質171b、固体電解質171c、固体電解質171d)に、参照電極111(参照電極111a、参照電極111b、参照電極111c、参照電極111d)を形成した実施例であった。
【0081】
図17は、別個の参照電極111を使用した例である。参照電極111は金属の切削あるいは金属板を板金加工して作製する。各固体電解質171(固体電解質171a、固体電解質171b、固体電解質171c、固体電解質171d)に密接して、参照電極111を配置または取り付ける。また、必要に応じて、固体電解質171と参照電極111間に電解液124(図示せず)を充填する。他の事項は、
図16と同様あるいは類似であるので説明を省略する。
【0082】
図18は、円筒形の固体電解質171(固体電解質171a、固体電解質171b、固体電解質171c、固体電解質171d)で電気化学還元を行うヘッドを構成した実施例である。
【0083】
固体電解質171は、3個または4個として図示しているがこれに限定されるものではない。たとえば、固体電解質171部を細いファイバー状に形成し、10本以上のこれらと束ねて使用、形成、構成しても良い。細い角状であっても良い。
各固体電解質171の周囲には、参照電極111(参照電極111a、参照電極111b、参照電極111c、参照電極111d)を形成または配置している。
【0084】
参照電極111(参照電極111a、参照電極111b、参照電極111c、参照電極111d)の形成(作製)は、参照電極111の形成部に、Cuペーストが塗布され、その後800度前後の温度で焼き付ける。また、無電化めっき技術で形成しても良い。
【0085】
参照電極111(参照電極111a、参照電極111b、参照電極111c、参照電極111d)を焼き付けた後、参照電極111の表面にNi及びSnの2層めっきを施す。Znめっきを形成しても良い。必要に応じて、表面に金めっき膜が形成される。
【0086】
参照電極111a、参照電極111b、参照電極111c、参照電極111dは密着して配置され、各参照電極111は、電気的に接続されている。参照電極111のうち、少なくとも1つには、半田付け、あるいは圧接されて端子が取りけられる。端子はポテンショスタット119のRE端子と電気的接続される。
【0087】
各固体電解質171の上面には、対電極112を形成または配置している。対電極112の形成(作製)は、対電極112の形成部に、Cuペーストが塗布され、その後、800度前後の温度で焼き付ける。
【0088】
対電極112を焼き付けた後、その表面にNi及びSnの2層めっきを施す。通常電解めっきが用いられる。また、必要に応じて、表面に金めっき膜が形成される。対電極112は、導電ペーストを塗布することにより形成しても良い。
【0089】
参照電極111に対しても同様である。他の実施例に対しても同様である。対電極112には、半田付け、あるいは圧接されて端子が接続され、端子はポテンショスタット119のCE端子と電気的接続される。
【0090】
各固体電解質171(固体電解質171a、固体電解質171b、固体電解質171c、固体電解質171d)の参照電極111(参照電極111a、参照電極111b、参照電極111c、参照電極111d)は導電物で形成されている。したがって、各固体電解質171を密着して配置することにより、参照電極111(参照電極111a、参照電極111b、参照電極111c、参照電極111d)は電気的に接続される。
【0091】
複数の固体電解質171は、容器105に格納する。容器の先端部には、
図2、
図3、
図4に図示するように、電解液124部、浸透膜172が取り付けられている。以上の事項は本発明の他の実施例にも適用できる。
【0092】
各固体電解質171(固体電解質171a、固体電解質171b、固体電解質171c、固体電解質171d)にそれぞれに対電極112(対電極112a、対電極112b、対電極112c、対電極112d)を形成し、各対電極112を電気的に接続している。しかし、すべての対電極112と電気的に接続しても良いが、任意の1つ以上の対電極112をポテンショスタット119のCE端子と接続しても良い。
【0093】
CE端子と接続する対電極112の位置、個数を変更することにより、電気化学還元の能力の設定あるいは変更、還元位置を設定あるいは変更することができる。たとえば、対電極112a、対電極112cをCE端子と接続すれば、斜め方向位置で電気化学還元が実現される。たとえば、対電極112a、対電極112bをCE端子と接続すれば、上方向位置で、電気化学還元が実現される。
【0094】
容器105と固体電解質171間には、空隙(空間)ができる。空間に電解液124、洗浄液LAを充填あるいは通過させることができる。たとえば、注液管106、排液管107の機能として使用することができる。また、
図7、
図8等に図示するように、入射光114a2、反射光114bの光路として使用することができる。
【0095】
図18の実施例は、円筒形の固体電解質171を用いたヘッド部の構成であった。本発明はこれに限定するものではない。たとえば、
図19に図示するように、板状あるいは平面状の固体電解質171を用いでヘッド部を構成しても良い。他の構成等は
図18と同様あるいは類似であるので説明を省略する。
【0096】
図5は、本発明の膜厚測定装置において、作用電極(WE)110、参照電極(RE)111、対電極(CE)112を駆動するポテンショスタットの説明図である。
図5において、ポテンショスタットは3個のオペアンプ135と付属する抵抗器136で構成されている。ポテンショスタットの基本的な機能は3つある。
(1)作用電極(WE)110の電位を参照電極に対して規制する。
(2)作用電極(WE)110に流れる電流を測る。
(3)参照電極(RE)111には電流は流さない。
【0097】
作用電極(WE)110と対電極(CE)112の間に電流が流れ、溶液抵抗による電位降下分のうち対電極(CE)112と参照電極(RE)の間の抵抗による部分はポテンショスタットで制御はできる。しかし、参照電極(RE)111と作用電極(WE)110の間の抵抗分は制御できない。
【0098】
ポテンショスタットは参照電極(RE)111と作用電極(WE)110の間の溶液抵抗による電位降下分込みで電位を制御しているので、この低下分だけ常に意図する値より低めになる。
抵抗による電圧降下分を補うために、余分の電位をかけないとピーク電流がえられる電位に至らないことを示している。
【0099】
ポテンショスタットでは、作用電極(WE)110と参照電極(RE)111の間の溶液抵抗成分に起因する電位降下分だけ差し引いた形で電位コントロールをしていることになる。そのため、ポジティブフィードバックと呼んでいる便宜的な遣り方で、その分を追加、補償する。
【0100】
参照電極(RE)111と作用電極(WE)110の間の溶液抵抗を何らかの方法で測定して、設定電位に加える方式がとられている。溶液抵抗の測定方法の最善はインピーダンス測定による直接的な方法だが、やや煩雑になるので、簡便な方法がとられている。
【0101】
測定時の電流値との積をとり、そのうちの何%かを設定電圧に加えてやるようにフィードバックしてやれば良い。これがiR補償のポジティブフィードバックの内容である。
図5に図示する可変抵抗器Rpf(137)を使って、作用電極(WE)110に流れる電流に比例する電圧を設定電圧Esetに加算する。
【0102】
図5で説明したポテンショスタット回路は、
図3に図示するポテンショスタット119が対応する。容器105内には、洗浄液(リンス液)LA124または電解液LB124が充填され、循環ファン122が必要に応じて回転させ、溶液124等を循環させる。
【0103】
一例として、半田、端子電極、BGAパッドが作用電極(WE)110となる。作用電極(WE)110、薄膜123、保護膜126等は電解液124で表面が浸透されている。固体電解質171部には、参照電極111、対電極112が形成されている。保護膜126は電気化学還元前に洗浄液LAにより除去しておく。
【0104】
固体電解質171と電解液124とは接触している。したがって、作用電極110と対電極112間に電圧が印加されると、作用電極110の薄膜123等が電気化学還元される。また、参照電極111の電圧により、電気化学還元量は制御される。電解液124は循環ファン122により攪拌される。
【0105】
容器105には、注液管106、排液管107が配置されている。注液管106から、洗浄液LAまたは電解液LBが注液される。排液管107から、洗浄液LAまたは電解液LBが排出される。注液管106、排液管107には液が逆流しないように弁(図示せず)が形成または配置されている。
【0106】
作用電極(WE)110、薄膜123等の表面が、電解液124に充填され、電極に電流を流すと還元反応が起きる。対象物質は、固有の還元電位を持つため、還元に要した時間を測定することで膜厚を算出することができる。
【0107】
図3において、参照電極(RE)111、対電極(CE)112を入れ替えても良い。以上の事項は、
図4、
図15、
図16、
図17、
図18、
図19においても同様である。また、
図4等において、固体電解質171部の表面に対電極112、参照電極111等を形成したように図示しているが、これに限定するものではない。たとえば、
図15等に図示するように、固体電解質171部の内部に対電極112、参照電極111等を形成しても良いことは言うまでもない。
【0108】
図4、
図15、
図16、
図17、
図18、
図19等において、参照電極111は、固体電解質171部の周囲を取り囲むように形成または配置しているように図示しているが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、対電極112、参照電極111を複数の電極として形成して、固体電解質171部の周囲に離散的あるいは個別に配置しても良い。以上の事項は、
図15のように、対電極112、参照電極111を固体電解質171の内部に形成する場合にも適用できることは言うまでもない。
【0109】
固体電解質171の一部を切削あるいは研摩し、凹部等を形成し、凹部等に対電極112、参照電極111等を形成しても良いことは言うまでもない。また、対電極112、参照電極111をペースト状の材料で、固体電解質171部に形成し、乾燥ありは、焼結することにより形成または構成しても良い。
以上の事項、内容、構成は本発明の他の実施例においても適用できる。また、一部または全部を組み合わせることができる。
【0110】
図2、
図4は、
図1の一部の説明図であり、本発明の膜厚測定装置の模式図である。
図2のように、容器105の先端部には、リング状の密着部125が取り付けられている。密着部125はシリコンゴム、ブチルゴム、ポリプロピレン、ニトロゴム等で形成される。密着部125は柔軟性を有し、容器105の先端部と基板109を密着させる。密着部125内には電解液124等が充填される。また、必要に応じて、浸透膜172が配置される。
【0111】
本発明の膜厚測定装置は、膜厚測定を実施するサンプルを含む領域に押し付けることにより、密着部125が変形する。着部125が変形することにより、電解液124等が漏れ出ることが防止される。また、浸透膜172がサンプル(薄膜123等)と密着され、サンプルの表面に電解液124が良好に接するようにできる。したがって、電気化学還元が良好に実現できる。
【0112】
密着部125は、
図2に図示するように、A方向(上方向)、B方向(下方向)に移動できるように構成されている。密着部125のサイズ(直径等)は測定対象のサンプルに対応して取り換えできるように脱着可能に構成されている。また、固体電解質171部も本発明の膜厚測定装置の本体(図示せず)から脱着し、取り替えることができるように構成されている。
【0113】
入射光114aは、対象物(電極110)上に焦点を合わせる必要がある。A方向(上方向)、B方向(下方向)に移動することにより、入射光114aを対象物(電極110)上に焦点を合わせることができる。
【0114】
図4でも説明しているが、固体電解質171部にて参照電極111が配置されている。また、作用電極110と対面する位置で、固体電解質171部の上面には、対電極112が取り付けられている。
【0115】
入射光114a、反射光114bは、電解液124が充填された箇所を通過する。入射光114aは、薄膜123、有機膜126に照射される。入射光114aは、電極110面で反射して反射光114bとなる。
【0116】
なお、
図1の点線で示す光窓127を容器105に形成または配置する。光窓127を介して、容器105の外部に配置した光発生器108からの入射光114aを容器内105に入射させる。反射光114bは、容器105に形成または配置した光窓127を透過し、容器105の外部に配置した受光器117に入射する。
【0117】
光窓127は、石英ガラスで形成することは好ましいが、ライトライムガラス、無アルカリガラス、ナトリウムガラスで形成または構成しても良い。特に、入射光114等が紫外線波長領域の分光透過率(分光反射率)の必要度が小さい場合は、光窓127は、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂材料で形成または構成しても良い。
【0118】
作用電極(WE)110は、一例としてプリント印刷基板109の1つの電極である。たとえば、BGAのバンプ、ICとの接続ランド、スルーホールが例示される。ただし、電極に限定されるものではない。たとえば、シリコンウエハ、鋼板、めっき板、カーボン基板等、導電性があるものであれば、いずれの物であっても良い。たとえば、酸化物であっても良い。
固体電解質171部と電解液124とは接することにより、イオンの流入、イオンの流出が行われる。
【0119】
作用電極(WE)110は、配線パターンと接続されている。配線パターンにポテンショスタット119のWE端子を接続することにより、還元電極として機能する。作用電極(WE)110と対電極112間に電流が印加され、作用電極(WE)110あるいは薄膜123、あるいは表面の薄膜等が連続電気化学還元される。
【0120】
容器105は、洗浄液(リンス液)LAと電解液LBとを入れ替える。最初は、洗浄液(リンス液)LAを容器内105内に注入し、電極110上の有機膜、有機保護膜(OSP:Organic Solderability Preservative)等を除去する。洗浄液(リンス液)LAの排出は、電磁弁101cのオンオフによって実施し、液の排出は、ポンプ102で液LCとして排出する。
その後、洗浄液(リンス液)LAを容器内105内から、排液管107から排出し、電解液LB124を、注液管106から容器105内に注入する。
【0121】
洗浄液(リンス液)LAと電解液LBの注入、排出処理は、液量制御部120により制御する。電極(作用電極(WE)、参照電極(RE)、対電極(CE))の制御は、ポテンショスタット119により制御する。
【0122】
本発明の膜厚測定装置は、薄膜123に光114aを照射し、反射光114bを受光することにより、薄膜123の膜厚あるいは状態を測定する光制御器118を有している。
【0123】
反射光114bにより、分光反射率を測定することにより実現する。分光反射率とは、反射した放射束または光束の分光密度と、入射した放射の分光密度との比で示される。単色放射に関する反射率であり、波長の関数である。
【0124】
基板109上の薄膜123に照射した光の偏光状態の変化から、薄膜の膜厚や屈折率などの光学構造を逆算する(シミュレーションを実施する)。光制御器118は、光の偏光状態等の測定結果から、薄膜の誘電関数をモデル化し、その誘電関数を用いて光の偏光状態の変化について理論的(シミュレーション等)な光学計算を行う。
【0125】
偏光状態に関する計算結果と実験結果との差ができる限り小さくなるように誘電関数モデル内のフィッティングパラメータを数値的に最適化することで、薄膜の誘電関数が決定される。
【0126】
得られた誘電関数から、膜厚の光学定数(屈折率と消衰係数)が算出され、光学異方性のあるモデルを用いることで、光学定数の異方性や配向パラメータを評価することができる。
【0127】
薄膜123の構成材料は既知あるいは既知構成を類似しているため、誘電関数モデル化は容易である。また、ポテンショスタット119等により、電気化学還元法で薄膜123の変化を連続してモニターできる。
【0128】
基板109上に銅(Cu)からなる電極110が形成され、電極110上に、薄膜123(酸化膜)が形成されているとする。光発生器108は、重水素ランプ、ハロゲンランプを有する。
【0129】
重水素ランプは、紫外線領域での連続スペクトルが必要な場合に分光法で使用される。水素を使用するプラズマ「アーク」または放電ランプは、紫外線での出力が高く、可視光線と赤外線での出力が比較的少ない。重水素を使用したランプは、同じ温度で、寿命が長く、UV範囲の遠端での放射率(強度)が通常の水素アークランプの3から5倍である。
【0130】
ハロゲンランプは、シリカ電球やクリア電球、電球型蛍光灯と比較して、非常に小さい。ランプが小さいことから、光発生器108を小さく構成できる。輝度が非常に高く、点光源といえるような光の性質を持っている。
紫外線領域の波長は、重水素ランプからの発光光を使用し、可視光および赤外領域の光はハロゲンランプからの発光光を使用する。
【0131】
図6等に図示しているように、光発生器108が発生した入射光114a1は回折格子116に入射する。回折格子116(Gratings:グレーティング)は、種々の波長が混ざった光(白色光)を波長ごとにわける(分散)光学素子である。回折格子116は、多数の平行スリットが等間隔で配列した構造である。
なお、回折格子116は平行スリット状のものに限定されるものではなく、プリズムを使用した回折格子(分光器)でも良い。
【0132】
回折格子116を移動させ、所定波長間隔の波長の入射光114a2を取り出す。入射光114a2はレンズ115aで集光する、あるいは光の方向が電極110面に照射されるように調整される。
【0133】
入射光114a2を薄膜123に照射される。薄膜123あるいは電極110の構成材料は入射光114a2を反射あるいは吸収し、反射した反射光114bは、レンズ115bで集光され、受光器117で光-電気変換される。
各波長の光に対する反射光114bは、各波長の入射光114a2に対する強度となる。この波長に対する強度から、分光反射率が測定あるいは取得できる。
【0134】
分光反射率から、基板109上の薄膜123の膜厚や屈折率などの光学構造を逆算する。光制御器118は、光の偏光状態等の測定結果から、薄膜の誘電関数をモデル化し、その誘電関数を用いて光の偏光状態の変化について理論的な光学計算を行い、薄膜123等の膜厚を求める。
【0135】
分光膜厚測定法では、測定対象物の裏面での反射光の影響をなくす必要があるが、本発明の膜厚測定装置では、測定対象物は銅電極110等で構成され、入射光114aはすべて銅電極110等で反射または吸収されるため、反射光の影響を受けか、影響が少ない。
【0136】
図12は、分光膜厚測定法で、電極110の分光反射率を測定した実施例である。電極110は銅(Cu)で形成されている。分光膜厚測定法で、電極110のCuの分光反射率を測定した例である。点線で示すようにCuは長波長領域で反射率が高く、700nmの近赤外では良好な反射率を示す。
【0137】
電極110に薄膜123として酸化銅(CuO)が形成されている場合の分光反射率を実線で示す。酸化銅(CuO)は、可視光の範囲で、反射率が低く、長波長領域で透過率が高くなる。
【0138】
酸化銅(CuO)の膜厚は、酸化銅(CuO)の光学モデルと分光反射率から、シミュレーションにより求めることができる。したがって、分光膜厚測定法で、分光反射率(分光透過率)を測定することにより、測定対象の材料の有無、膜厚を推定または求めることができる。
【0139】
薄膜123は、酸化膜あるいは有機膜であり、光透過性を有する。電極110は銅等の金属膜であるから、入射光114a2を反射する。薄膜123は、構成する材料の屈折率、減衰係数にしたがって、分光透過率(分光反射率)を示す。
【0140】
洗浄液(または、リンス液)LAまたは電解液LBは、水の屈折率である1.33に近似である。薄膜123の酸化物が銅の二酸化銅(CuO2)とすると、屈折率は2.17である。二酸化銅は光学モデルが既知であり、膜厚計算におけるシミュレーションフィティングが容易である。
【0141】
薄膜123の酸化物が銅の酸化銅(CuO)とすると、屈折率は2.63である。酸化銅は光学モデルが既知であり、膜厚計算におけるシミュレーションフィティングが容易である。
【0142】
薄膜123の構成物が二酸化銅、酸化銅として光学モデルを規定し、膜厚計算におけるシミュレーションを実施すれば、薄膜123の膜厚を計算することができる。
【0143】
二酸化銅(CuO2)、酸化銅(CuO)は、洗浄液(リンス液)LAまたは電解液LB124との屈折率差が大きく、電極110の銅の反射率も比較的高いため、反射光114の強度も大きく、安定した測定を実現できる。この光学的な膜厚測定方法を分光膜厚法と呼ぶ。
【0144】
薄膜123に、洗浄液(リンス液)LAまたは電解液LBが充填されていない状態(空気、窒素)の場合は、屈折率1.0と、二酸化銅(CuO2)の屈折率は2.17、酸化銅(CuO)の屈折率は2.63との差になるため、屈折率差が大きく、安定した測定を実現できる。
【0145】
薄膜123が、半導体素子等に使用するシリコン(Si)の酸化物の場合は、二酸化ケイ素(SiO2)の屈折率は1.46、一酸化ケイ素(SiO)の屈折率は、1.90である。洗浄液(リンス液)LAまたは電解液LBとの屈折率差が小さいが、二酸化ケイ素(SiO2)、一酸化ケイ素(SiO)の光学モデルは確立しているため、精度よく膜厚計算を行うことができる。
【0146】
反射光114bの測定による分光膜厚測定法と、ポテンショスタットでの電気化学還元法は同時に実施することができる。反射光114bから薄膜123の膜厚が測定あるいは取得でき、電気化学還元法においても、膜厚が測定あるいは取得することができる。2つの方法を組み合わせることができることにより、精度よく、薄膜123の膜厚、材質を測定あるいは把握することができる。
【0147】
分光膜厚測定法は、薄膜123の光学モデルが精度よく構築できている場合は、求められる膜厚精度が高い。しかし、薄膜123は、たとえば、二酸化銅(Cu2O)、酸化銅(CuO)の2層で構成されている場合、二酸化銅(Cu2O)と酸化銅(CuO)との混合物で構成あるいは形成されている場合は、精度の良い光学モデルでモデル化はできない。したがって、計算あるいはシミュレーションで求められる膜厚精度は低下する。
【0148】
電気化学還元法は、ポテンショスタットで制御し、定電流で電極(WE)に還元反応を起こし、電位E(V)の時間変化を記録あるいは測定する。記録あるいは測定されるプラトー(Plateau)により、薄膜123の形成材料量を定量的に測定あるいは把握することができる。しかし、定量的な厚みとしての膜厚を測定あるいは把握することは難しい。
【0149】
本発明は、分光膜厚測定法により、薄膜123等の膜厚を定量的に測定することができる。また、電気化学還元法により、薄膜123等の形成材料および形成材料量を定量的に測定することができる。
【0150】
したがって、分光膜厚測定法により、薄膜123等の膜厚を定量的に測定することができる。分光膜厚測定法と電気化学還元法の相乗効果により、薄膜材料123等の膜厚、形成材料量、形成材料を定量的かる精度よく測定することができる。
【0151】
分光膜厚測定法と電気化学還元法とは同時に実施することができるため、薄膜123等の電位(V)と測定しなから、薄膜123等の膜厚を測定することができるため、還元されている材料とその材料の変化点を正確に把握することができる。把握した変化点を用いて分光膜厚測定法の光学モデルに、常時あるいは適時にフィードバックすることにより、精度の良い膜厚計算(膜厚シミュレーション)を実現できる。
【0152】
分光膜厚測定法前に洗浄液LAを容器105に充填し、有機膜126を除去する方式を実施する。そのため、良好に電気化学還元法を実施することができる。また、分光膜厚測定法で有機膜126の膜厚測定ができるため、洗浄液LAを容器105に充填する時間を正確に見積もることができる。
【0153】
図6は対象物(薄膜123等)の膜厚を測定するための分光膜厚測定法の構成図および説明図である。
図6では、レンズ115(レンズ115a、レンズ115b)として凹面鏡として図示しているがこれに限定されるものではなく、凸レンズ等で構成しても良い。集光光学系は凹レンズと凸レンズ等と組わせても構成しても良い。また、凹面鏡を使用することができる。
【0154】
一例として、
図13に図示するように、基板109上に銅(Cu)からなる電極110が形成され、電極110上に、薄膜123(酸化膜等、薄膜123a、薄膜123b)、有機膜126が形成されているとする。
【0155】
光発生器108は、重水素ランプおよびハロゲンランプを有する。重水素ランプは主として紫外線波長領域の光の発生を受け持ち、ハロゲンランプは主として可視光、赤外線光の発生を受け持つ。
【0156】
光発生器108が発生した入射光114a1は回折格子(プリズム等も含む)116に入射する。回折格子(プリズム等も含む)116(Gratings:グレーティング)は、種々の波長が混ざった光(白色光)を波長ごとに分離する光学素子である。回折格子116は、多数の平行スリットが等間隔で配列した構造である。
【0157】
回折格子116への入射光114a1は、回折格子116で波長ごとに分光される。分光された光114a2は、レンズあるいは反射鏡115aで光の方向を変化させ、薄膜123等を照明する。
回折格子116を移動させること、あるいは回折格子116への光入射位置を移動させることにより、所定波長間隔の波長の入射光114a2を取り出す。
【0158】
入射光114a2は、所定の波長範囲で連続的に変化させた光でなくともよい。たとえば、630nmの一定波長に固定し、この波長を照射し、反射光114bの大きさを連続してモニターしてもよい。反射光114bの大きさにより、膜厚の変化を知ることができる。したがって、本発明の膜厚測定装置の分光反射率の測定あるいは取得は一定の波長で測定しても良い。
レンズ115位置、または、基板109位置を変化させて、入射光114a2が対象物(電極110)に焦点を結ぶように位置調整される。
【0159】
入射光114a2を薄膜123に照射される。薄膜123あるいは電極110の構成材料は入射光114a2を反射あるいは吸収し、反射した反射光114bは、レンズ115bで集光され、受光器117で、光-電気変換される。
【0160】
分光膜厚測定法では、基準となるベースとなる反射率を事前に測定する必要がある。反射率はベースとなる反射率を基準(100%)としてその比率(%)として測定される。
【0161】
ベースとなる反射率を測定するため、反射率が高い銀、アルミニウム等の反射膜を有する反射板を、電極110位置に配置し(入射光114aの焦点位置に配置し)、基準分光反射率を測定する。反射光114bは測定された基準分光反射率に対する反射率を測定する。測定された分光反射率特性と、測定対象の薄膜123等の光学モデルとを用いて薄膜123等の膜厚を計算する。
図6では、入射光114aは、薄膜123等に対して、斜め方向から入射させるとしたが本発明の膜厚測定装置はこれに限定されるものではない。
図7、
図8は、薄膜123等の平面に対して、垂直方向から入射光114aと入射させ、垂直方向に反射光114bを取り出す光学系である。
【0162】
図7では、光発生器108からの入射光114a1は、ミラー128で方向を変化させ、ハーフミラー151を通過して、薄膜123に垂直方向から入射する。入射光114a2は、注液管106の中央部を通過する。
【0163】
入射光114a2は、薄膜123で反射し、反射した光は、再び注液管106(または排液管107等)の中央部を通過する。反射光114bは、ハーフミラー151の反射面で反射して受光器117に入射する。
図8は、
図7のハーフミラー151の位置に、偏光ビームスプリッタ152を使用した実施例である。
【0164】
光発生器108からの入射光114a1は、ミラー128で方向を変化させ、偏光ビームスプリッタ152の光分離面(偏光面)153を通過して、入射光114a2は、偏光となり、薄膜123に垂直方向から入射する。入射光114a2は、注液管106の中央部を通過する。
【0165】
入射光114a2は、薄膜123で反射し、偏光を乱された反射した光114bは、再び注液管106の中央部を通過する。反射光114bは、偏光ビームスプリッタ152の光分離面(偏光面)153で反射して、受光器117に入射する。偏光ビームスプリッタ152を用いることにより、装置の光照射部をコンパクトに構成することができる。
【0166】
図7、
図8の実施例において、入射光114a2、反射光114bは注液管106内を通過するとしたがこれに限定するものではない。入射光114a2は、薄膜123の上方から入射し、反射光114bは、排液管107、注液管106以外の場所を通過させるように構成しても良い。
【0167】
図9は、電気化学還元法による膜厚測定方法の説明図である。一実施態様として、電極等に錫を含有する半田が形成され、半田表面に酸化錫(酸化錫SnO、二酸化錫SnO
2)からなる薄膜123が形成(発生)している場合を例示している。半田が電極110に対応する。半田110は作用電極110とし、対電極112間に電流が供給される。
【0168】
図9において、横軸は時間である。説明を容易にするため、また、理解を容易にするため、時間(分:min)で表現している。縦軸は電位(V)である。還元時間は、流す定電流の大きさにより変化する。
【0169】
半田110の表面に電解液124を充填し、半田を電極110として微小電流を流すと還元反応が起きる。各物質は、固有の還元電位(V)を持つ、あるいは変化することから、還元に要した時間を測定することで膜厚を算出(推定)できる。
【0170】
電気化学還元法は、ポテンショスタット119で制御し、定電流で電極(WE)に還元反応を起こし、電位E(V)の時間変化を記録する。記録されるプラトー(Plateau)の電位により、薄膜123の形成材料量を定量的に測定することができる。
【0171】
図9は、半田のSn表面の測定例である。縦軸は電位(E(V))であり、横軸は時間(min)である。縦軸の電位はカロメル電極に対する場合と、銀(Ag)電極の場合で異なる。また、電解液(たとえば、AgCl)でも異なる。電位E(V)は、電解液、電極の種類により、補正すれば良い。
Aの第1のプラトーは、電位が-0.85~-1.06Vであり、SnOと推定される。還元時間が30sec(0.5min)の場合、膜厚は11Åである。
【0172】
Bの第2のプラトーは、電位が-1.06~-1.18Vであり、SnO2と推定される。還元時間が100secの場合、膜厚は15Åである。Cの部分は、電位が-1.2Vであり、Snの水素発生電位であると推測される。
Aの第1のプラトーでは、SnOがSnに変化し、Bの第1のプラトーでは、SnO2がSnに変化していると推定される。
【0173】
本発明の膜厚測定装置における電気化学還元法は、測定時間が短く、コストも安い。また、価数が異なる酸化膜の切り分け、あるいは判別が可能である。測定対象は、金属酸化膜として、Cu、Ag、Sn、Si、半田の酸化物が例示される。また、金属膜厚としてSi、Ni、Cu、Ag、Sn、Au、Agが例示される。
【0174】
図11は、本発明の薄膜123上に有機膜126等で被覆されている場合の電気化学還元の状態を示す説明図である。有機膜126として汚染による有機膜もあるが、電極上に有機保護膜(OSP:Organic Solderability Preservative)を形成する場合もある。
【0175】
たとえば、プリント印刷基板(PWB)製造工程において使用される耐熱性の水溶性プリフラックス(OSP)である。鉛フリー半田の高温および複数回実装に対して、優れた半田濡れ性を有している。OSPは多くの種類がメーカーから販売されている。
【0176】
図11では、一例として、2種類のOSP(OSP1、OSP2)を図示している。
図11において、OSP1がない場合(OSP1が除去された状態)のCuで形成された電極の電位変化をCu1で示している。OSP2がない場合(OSP2が除去された状態)のCuで形成された電極の電位変化をCu2で示している。
【0177】
図11のOSP1はプラトーがほとんどない。OSP2は第1のプラトーはあるが、酸化還元電位が70sec以上で一定電位となっている。Cuだけの場合は、変化の大きなプラトーはなく、緩やかな変化である。実線で示す線(Cu2)は、プラトーの段差がある。短い点線で示す線(Cu1)も、プラトーの段差がある。実線で示す線(Cu2)と短い点線で示す線(Cu1)は、プラトーの平坦部に時間が異なる。
【0178】
第1のプラトーはCu2Oと推測され、第2のプラトーは、CuOと推測される。Cu2では40sec以上では一定となり、Cu2の還元電位と推測される。Cu1では60sec以上では一定となり、Cu1の還元電位と推測される。
【0179】
図11で示すように、OSP(OSP1、OSP2)が形成されていると、OSP下のCu酸化膜は測定できていない可能性が強い。OSP1を除去すると、薄膜123が露出し、酸化還元電位を良好に測定することができる。同様に、OSP2を除去すると、薄膜123が露出し、酸化還元電位を良好に測定することができる。したがって、酸化膜からなる薄膜123の膜厚を測定するためには、OSPを除去する必要がある。
【0180】
本発明の膜厚測定装置は、洗浄液LAを容器105に注液して、OSP等の有機膜126を除去することができる。また、分光膜厚測定法により、有機膜(有機保護膜OSP)126の有無、膜厚を測定することができる。
【0181】
本発明は、洗浄液LAを容器105に注液する前に、分光膜厚測定法で、有機膜126の有無、有機膜の推定膜厚を測定あるいは取得する。推定膜厚とするのは、有機膜126の光学モデルが不明確な場合である。光学モデルが既知の場合は、精度よく膜厚を求めることができる。
【0182】
分光膜厚測定法で、有機膜126が観測されない場合、洗浄液LAを容器105に注液せず、電解液LBを注液する。電解液LBを注液前には、薄膜123の有無、薄膜123の推定膜厚を測定あるいは取得する。
【0183】
有機膜126が存在する場合(有機膜126がある)、洗浄液LAを注液する。分光膜厚測定法で、有機膜126の膜厚の変化状態(分光反射率)を監視あるいは取得する。洗浄液LAを注液時には、必要に応じて、循環ファン122を動作させ、洗浄液LAを容器105内に循環させる。また、洗浄液LAの注液と排液を行う。
【0184】
有機膜126の膜厚の変化状態(分光反射率)を監視あるいは取得する。分光膜厚測定法では、分光反射率の変化で有機膜126の有無、膜厚の変化を把握することができる。洗浄液LAは、無機材料からなる薄膜123は除去せず、有機材料の有機膜126を除去できる。
【0185】
本発明の膜厚測定装置、膜厚測定方法では、必要に応じて、洗浄液LAでOSPを除いた後、電気化学還元法を実施する。また、同時にあるいは順次に分光膜厚測定法を実施する。
【0186】
なお、洗浄液LAでの洗浄時、電解液124での電解時に、超音波(超音波振動による洗浄、攪拌)を印加することより、洗浄能力等を高めることができる。超音波は容器105に印加しても良いが、基板109に印加する方が効果は高い。
【0187】
厚くOSPが塗布されている場合は、薄膜123の膜厚測定に支障をきたす場合もあるが、洗浄液LAの実施、分光膜厚測定法を実施することにより安定した測定ができる。
【0188】
図10は、一実施態様として、電気化学還元法による測定は、電解溶液(ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、塩化カリウム)を用いて定電流(30μA/cm
2)あるいは所定電流で電極110表面に還元反応を起こし、電位の時間変化を記録した実施例である。
【0189】
密着部125は、直径3.5mmのシリコンゴムパッドを用いている。密着部125は
図2に図示するように、AまたはB方向に移動させ、基板109との密着状態、および分光膜厚測定法での焦点位置を調整する。
【0190】
図10に付記した時間は、リフローでの放置時間を示す。リフローでの放置時間が長くなるほど、電極110に形成される酸化膜(薄膜123の膜厚)が厚くなると想定される。
図10のグラフで示すように、プラトーの時間は、30minで最も長く、1minでは短い。
【0191】
本発明の膜厚測定装置は、電気化学還元法の実施と同時、あるいは順次に分光膜厚測定法を実施する。分光膜厚測定法で、薄膜123の膜厚を測定できる。薄膜123が、Cu2O、CuO、Cu部が混在あるいは積層されて構成あるいは形成されている場合分光膜厚測定法では、積層あるいは混在の状態は分光透過率の差として把握できる。しかし、各層(たとえば、Cu2O、CuO)の膜厚を把握することが難しい。
【0192】
電気化学還元法では、
図9、
図11のグラフで示すように、第1プラトー、第2プラトーを観測でき、各プラトーの時間を測定できるため、各層の構成材料の組成は把握できる。構成材料の組成を把握できると、分光膜厚測定法での各層の光学モデルの精度を向上あるいは確定できるため、各層を分離して膜厚形成することができる。
【0193】
たとえば、薄膜123がSn関連の層で構成されている場合、電気化学還元法ではたとえば、-0.85V~-1.05Vの電位区間(第1プラトー)に要した時間からSnOの厚みを、-1.05V~-1.15Vの電位区間(第2プラトー)に要した時間からSnO2の厚みとなる。酸化膜がすべて除去されると最終的に約-1.30VのSnの水素発生電位になる。
【0194】
また、第1プラトーはアモルファスのSnOであり、第2プラトーは結晶質のSnO2あるいはSnOとSnO2などの混在層あると把握することができる。各層の膜厚は、各構成材料の光学モデルを使用し、分光膜厚測定法で求めることができる。
【0195】
図13、
図14は、本発明の膜厚測定方法の説明図である。
図13は、説明のための薄膜123等の構成図である。
図14は本発明の膜厚測定方法のフローチャート図である。
【0196】
図13に図示するように、基板109上の電極110には、たとえば、酸化膜からなる薄膜123a、薄膜123bが発生し、薄膜123上に有機膜126が形成されている。
【0197】
分光膜厚測定法では、基準となるベースとなる反射率を事前に測定する必要がある。反射率はベースとなる反射率を基準(100%)としてその比率(%)として測定される。
【0198】
分光膜厚測定法による反射率のベースとなる反射率を測定するため、反射率が高い銀(Ag)、アルミニウム(Al)等の反射膜を有する反射板を測定する。薄膜123等の反射光114bの反射率は、反射板の反射率をベースラインとして、測定される(S01)。
【0199】
反射板の反射率の測定は、密着部125の位置調整を行い、入射光114aの焦点位置に、測定対象物(薄膜123等)に焦点となるように調整される(S02)。
【0200】
次に、有機膜126に入射光114aを照射し、反射光114bを測定する。この時は、容器105に洗浄液LAを注入しない。ただし、洗浄液LAを注入後、有機膜126が剥離等しない前に、分光膜厚測定法で反射光114bを測定できる場合は、この限りではない。
本発明の分光膜厚測定法で、有機膜126等に入射光114aを照射し、有機膜126等からの反射光114bを測定する(S03)。
【0201】
反射光114bは測定された基準分光反射率に対する反射率を測定する。反射光114bを測定された分光反射率特性と、測定対象の有機膜126、薄膜123等の光学モデルとを用いて、有機膜126、薄膜123等の膜厚を計算する(S04)。工程S04等は、有機膜126が形成されていない場合は必要がない。また、有機膜126の有無だけば必要な場合は、有機膜126の膜厚計算は不要である。
【0202】
有機膜126が形成されている場合、あるいは有機膜126に対応する汚染膜がある場合は、有機膜126等を除去する。有機膜126の除去のために、洗浄液LAを容器105に注入する。洗浄液LAを注入する(S05)と、分光膜厚測定法での膜厚計算には、空気(大気 屈折率1.0)を洗浄液LAの屈折率に対応させて計算、補正する。
洗浄液LAを注入する(S05)ことにより、洗浄液LAにより有機膜126が溶解する、あるいは剥離されて薄膜123上から除去される。
有機膜126の溶解あるいは剥離状態は、本発明の膜厚測定方法の分光膜厚測定法で検知できる。
【0203】
なお、本発明の膜厚測定方法は、膜厚の測定だけでなく、薄膜123、有機膜126の除去方法(薄膜等を除去する方法、薄膜等除去装置)に関しても、本発明の技術的思想の範疇である。
膜厚測定方法の分光膜厚測定法で有機膜126が検知されないことから、有機膜126が薄膜123上から除去されたことを確認できる。
【0204】
次に、あるいは継続して、入射光114aを照射し、反射光114bを測定する(S06)。薄膜123がどのような構成あるいは組成であるかは光学モデルが推定であるため、分光膜厚測定法では、精度よくシミュレーションすることが難しい。また、薄膜123が何層の薄膜で構成されているかは不明であることが多い。また、複数の組成の材料が混合されて構成されている場合もある。
【0205】
図13の実施例では、薄膜123は、薄膜123a、薄膜123bで形成または構成されているとして説明をする。計算あるいはシミュレーションで求められた薄膜123aの膜厚データ、薄膜123bの膜厚データが計算される(S07)。また、薄膜123aの膜厚データ、薄膜123bの膜厚データは記録される。
【0206】
本発明の電気化学還元法では、プラトーの電位、プラトーの回数、プラトーの時間で、薄膜123を構成している材料の種類、組成、化学記号を把握することができる。この薄膜123を構成している材料の種類、組成、化学記号から、光学モデルを決めることができる。光学モデルと、分光膜厚測定法で計算した膜厚とを考慮する。また、補正することにより、高い精度で、薄膜123a、薄膜123bの膜厚、組成等を決定することができる。
【0207】
次に、洗浄液LAを排液管107から排出し、電解液LBを注液管106から容器105に注入する(S08)。この際、循環ファン122は、洗浄液LAを排液管107から排出するように回転する。
S08以降の工程は、本発明の電気化学還元法と本発明の分光膜厚測定法の両方あるいは片方が交互あるいは同時に実施される。
本発明の分光膜厚測定法はSa1~Sa3である。発明の電気化学還元法はSb1~Sb3である。
【0208】
本発明の分光膜厚測定法は、入射光114aを照射し、反射光114bを測定する(Sa1)。入射光114aは薄膜123に焦点される。薄膜123を反射した光は反射光114bとして、受光器117に入射される(Sa1)。入射光114a、反射光114bは、
図2、
図13に図示するように、溶液124中を進行する。
また、分光膜厚測定法と同時に、あるいは、適時に本発明の電気化学還元法を実施する(Sb1)。
【0209】
分光膜厚測定法で、薄膜123a、薄膜123bの膜厚計算する(Sa2)。電気化学還元法では、第1のプラトーの電位と時間から薄膜123bが検出あるいは取得される(sb2)。次に第2のプラトーの電位と時間から薄膜123aが検出あるいは取得される(Sb3)。
【0210】
電気化学還元法で、第1のプラトーが終了することにより、薄膜123bが除去されたことになる。したがって、本発明の分光膜厚測定法した膜厚は、薄膜123aに対応する膜厚になる。
【0211】
薄膜123bと薄膜123aが残存するときは、反射光114bは、薄膜123bと薄膜123aによる分光反射率が測定されている(Sa2)。薄膜123bが除去され、薄膜123aが残存するときは、反射光114bは、薄膜123bによる分光反射率が測定されている(sa3)。
【0212】
したがって、電気化学還元法でのプラトーの電位、時間状態から、薄膜123a、薄膜123bの材料組成、薄膜123の残存状態が把握できる。薄膜123a、薄膜123bの材料組成等がわかると光学モデルを構築でき、分光膜厚測定法による膜厚計算が精度よく実施することができる(sa2、Sa3)。
【0213】
入射光114aを薄膜123等に照射し、反射光114bを測定するだけでは、薄膜123がどのような構成あるいは組成であるかの光学モデルは推定で実施することになる。電気化学還元法では、第1のプラトーの電位と時間、第2のプラトーの電位と時間等、プラトーの回数と電位と時間から各薄膜の組成、構造、化学モデルを決定できる。本発明の電気化学還元法と本発明の分光膜厚測定法の両方あるいは片方が交互あるいは同時にすることにより、各薄膜123等の膜厚、組成等が精度よく決定あるいは取得できる。分光膜厚測定法と分光膜厚測定法とは相乗効果を発揮する。
【0214】
上述の実施形態および添付の図面は好ましい実施形態の例示であり、本明細書、本図面等に記載した実施例は、相互に一部または全部と組み合わせることができる。
また、本発明は請求範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で多様な形態の置換、変形および変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0215】
本発明は、半田、プリント印刷基板の銅箔の酸化膜等を定量的に測定することができる。表面酸化膜等は、耐食性、半田密着性、素子信頼性等を支配する要因となることから、その組成、膜厚を評価できる。本発明は産業発展に寄与する。こ
【符号の説明】
【0216】
101 電磁弁
102 ポンプ
103 脱泡器
104 液体タンク
105 容器
106 注液管
107 排液管
108 光発生器
109 基板
110 電極(作用電極(WE))
111 参照電極(RE)
112 対電極(CE)
114a 入射光
114b 反射光
115 レンズ
116 回折格子
117 受光器
118 光制御器
119 ポテンショスタット
120 液量制御部
121 コントローラ
122 循環ファン
123 薄膜(有機膜、酸化膜)
124 溶液(電解液、洗浄液)
125 密着部
126 有機膜
127 光窓
128 ミラー
135 オペアンプ
136 抵抗器
151 ハーフミラー
152 偏光ビームスプリッタ
153 光分離面
161 レベル検出器
162 溶液貯蔵器
171 固体電解質
172 浸透膜