(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135279
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】用紙綴じ装置、ステッチャー、ステッチャーの制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B42B 4/00 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
B42B4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040409
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】596025412
【氏名又は名称】株式会社ホリゾン
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】望月 潤
(72)【発明者】
【氏名】ブイマイン ハー
(57)【要約】
【課題】資源の無駄を削減するとともにコスト低減及び生産性向上を図ること。
【解決手段】ステッチャーは、往復運動するステッチャーヘッドと、ステッチャーヘッドに針金を送る針金送り部とを備え、ステッチャーヘッドの往復運動のサイクル毎に、針金綴じ位置に配置された用紙束の針金綴じを行う。ステッチャー制御装置50は、ステッチャーヘッドのサイクル毎に、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得しているか否かを判定する判定部62と、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得していないと判定された場合に、今回のサイクルにおいて、針金の供給を行わないように針金送り部を制御する針金送り制御部63とを備える。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動するステッチャーヘッドと、前記ステッチャーヘッドに針金を送る針金送り部とを備え、前記ステッチャーヘッドの往復運動のサイクル毎に、針金綴じ位置に配置された用紙束の針金綴じを行うステッチャーの制御方法であって、
コンピュータが、
前記ステッチャーヘッドのサイクル毎に、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得しているか否かを判定し、
次のサイクルで針金綴じを行う前記用紙束の厚さ情報を取得していないと判定した場合に、今回のサイクルにおいて、針金の供給を行わないように前記針金送り部を制御する
ステッチャーの制御方法。
【請求項2】
前記コンピュータは、
実行中のジョブの最後の用紙束に針金綴じを行うサイクルを行うよりも前に、次のジョブ情報を取得していない場合に、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得していないと判定する請求項1に記載のステッチャーの制御方法。
【請求項3】
前記コンピュータは、
ステッチャーの運転開始時において、前記ステッチャーヘッドに空打ちを行わせる請求項1又は2に記載のステッチャーの制御方法。
【請求項4】
前記コンピュータは、
前記ステッチャーヘッドに空打ちを行わせる前に、運転開始後に最初に針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得し、
空打ちが行われるサイクルにおいて、取得した前記用紙束の厚さに応じた長さの針金を供給するように前記針金送り部を制御する請求項3に記載のステッチャーの制御方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項6】
往復運動するステッチャーヘッドと、前記ステッチャーヘッドに針金を送る針金送り部とを備え、前記ステッチャーヘッドの往復運動のサイクル毎に、針金綴じ位置に配置された用紙束の針金綴じを行うステッチャーの制御装置であって、
前記ステッチャーヘッドのサイクル毎に、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得しているか否かを判定する判定部と、
次のサイクルで針金綴じを行う前記用紙束の厚さ情報を取得していないと判定された場合に、今回のサイクルにおいて、針金の供給を行わないように前記針金送り部を制御する針金送り制御部と
を備えるステッチャーの制御装置。
【請求項7】
前記判定部は、実行中のジョブの最後の用紙束に針金綴じを行うサイクルを行うよりも前に、次のジョブ情報を取得していない場合に、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得していないと判定する請求項6に記載のステッチャーの制御装置。
【請求項8】
ステッチャーの運転開始時において、前記ステッチャーヘッドに空打ちを行わせるヘッド制御部を備える請求項6又は7に記載のステッチャーの制御装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記ステッチャーヘッドに空打ちを行わせる前に、運転開始後に最初に針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得したか否かを判定し、
前記用紙束の厚さ情報を取得していると判定された場合に、前記ヘッド制御部は前記空打ちを行わせ、
前記針金送り制御部は、前記用紙束の厚さ情報を取得していると判定された場合に、空打ちが行われるサイクルにおいて、取得した前記用紙束の厚さに応じた長さの針金を供給するように前記針金送り部を制御する請求項8に記載のステッチャーの制御装置。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかに記載の制御装置を備えるステッチャー。
【請求項11】
請求項10に記載のステッチャーを備える用紙綴じ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙綴じ装置、ステッチャー、ステッチャーの制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送される用紙束を針金で綴じるステッチャーが知られている。
特許文献1には、往復運動するステッチャーヘッドと、ステッチャーヘッドを駆動する駆動機構と、ステッチャーヘッドに連動して針金を送る送りローラ部と、ステッチャーヘッドに連動して針金を切断するカッター部とを備えるステッチャーが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されるステッチャーは、ステッチャーヘッドの上下動の1サイクルの間に、前のサイクルで用意された針金を用紙束(以下「第1用紙束」という。)に打ち込む動作と、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束(以下「第2用紙束」という。)に打ち込む針金を用意する動作とが並行して行われる。針金を用意する動作は、主に、針金の送り、カット、セットからなる。
【0004】
ここで、ステッチャーヘッドの上下ストローク位置は、今回の1サイクルで針金を打ち込む第1用紙束の厚さに応じて決定されるが、ステッチャーヘッドの上下ストロークと針金の送りとが連動しているため、今回のサイクルで用意される針金(すなわち、次のサイクルで第2用紙束に打ち込まれる針金)の長さも、第1用紙束の厚さに応じた長さとされてしまう。このため、第1用紙束と第2用紙束との厚さが異なる場合には、第1用紙束の厚さに応じた長さの針金が第2用紙束に打ち込まれることとなり、不良冊子となる可能性があった。
そこで、特許文献1では、針金綴じを行った用紙束が良品か否かを自動的に判定し、不良と判定された用紙束を離脱させることとしている。
【0005】
また、近年、ステッチャーヘッドの上下ストロークと連動せずに、任意の長さの針金を供給できるようにしたステッチャーが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のステッチャーによれば、針金綴じを行う用紙束の厚さに応じた長さの針金を用意することができるため、不良品の発生を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-193089号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第102017202571号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献2に開示されている中綴じ機では、ジョブが連続的に流れてきているときは、常に、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の長さにあった針金を用意することができる。
しかしながら、1つのジョブが終了した時点で次のジョブの情報を受け取っていない場合には、次に針金綴じを行う用紙束の厚さがわからない。このため、従来は、実行していたジョブの最終の用紙束の長さに応じた針金が用意された状態で、ステッチャーの運転を停止していた。このため、従来においては、新たなジョブの開始時において、試し打ち用の用紙束を用いて、前のジョブで用意された不適切な長さの針金を打ち込むとともに、新たなジョブの用紙束の厚さに応じた適切な長さの針金を用意する試し打ちが必要であった。
しかしながら、この試し打ちは、用紙束も針金も無駄にすることから資源の無駄遣いにつながり、環境面及びコスト面において好ましくない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、資源の無駄を削減するとともにコスト低減及び生産性向上を図ることのできる用紙綴じ装置、ステッチャー、ステッチャーの制御装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一態様は、往復運動するステッチャーヘッドと、前記ステッチャーヘッドに針金を送る針金送り部とを備え、前記ステッチャーヘッドの往復運動のサイクル毎に、針金綴じ位置に配置された用紙束の針金綴じを行うステッチャーの制御方法であって、コンピュータが、前記ステッチャーヘッドのサイクル毎に、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得しているか否かを判定し、次のサイクルで針金綴じを行う前記用紙束の厚さ情報を取得していないと判定した場合に、今回のサイクルにおいて、針金の供給を行わないように前記針金送り部を制御するステッチャーの制御方法である。
【0010】
本発明の第二態様は、上記制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0011】
本発明の第三態様は、往復運動するステッチャーヘッドと、前記ステッチャーヘッドに針金を送る針金送り部とを備え、前記ステッチャーヘッドの往復運動の1サイクル毎に、針金綴じ位置に配置された用紙束の針金綴じを行うステッチャーの制御装置であって、前記ステッチャーヘッドのサイクル毎に、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得しているか否かを判定する判定部と、次のサイクルで針金綴じを行う前記用紙束の厚さ情報を取得していないと判定された場合に、今回のサイクルにおいて、針金の供給を行わないように前記針金送り部を制御する針金送り制御部とを備えるステッチャーの制御装置である。
【0012】
本発明の第四態様は、上記制御装置を備えるステッチャーである。
【0013】
本発明の第五態様は、上記ステッチャーを備える用紙綴じ装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、資源の無駄を削減するとともにコスト低減及び生産性向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る用紙綴じ装置の一構成例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るステッチャーの概略構成を示したブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るヘッド駆動部の一構成例を示した概略構成図である。
【
図4】X軸方向から見たときのステッチャーの一構成例を示した概略正面図である。
【
図5】
図4に示されるステッチャーヘッドを拡大して示した図である。
【
図6】Y軸方向から見たときのステッチャーの一構成例を示した概略側面図である。
【
図7】
図6に示されるステッチャーヘッドを拡大して示した図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るステッチャーヘッドがホームポジションにある状態をX軸方向から見たときの概略図である。
【
図9】
図8に示したステッチャーヘッドをY軸方向から見たときの概略図である。
【
図10】
図8に示したステッチャーヘッドにおける打ち込み部の状態を示した概略図である。
【
図11】
図9に示したステッチャーヘッドにおける打ち込み部の状態を示した概略図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るステッチャーヘッドの下降時における一態様をX軸方向から見たときの概略図である。
【
図13】
図12に示したステッチャーヘッドをY軸方向から見たときの概略図である。
【
図14】
図12に示したステッチャーヘッドにおける打ち込み部の状態を示した概略図である。
【
図15】
図13に示したステッチャーヘッドにおける打ち込み部の状態を示した概略図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係るステッチャーヘッドが下死点にある状態をX軸方向から見たときの概略図である。
【
図17】
図16に示したステッチャーヘッドをY軸方向から見たときの概略図である。
【
図18】
図16に示したステッチャーヘッドにおける打ち込み部の状態を示した概略図である。
【
図19】
図17に示したステッチャーヘッドにおける打ち込み部の状態を示した概略図である。
【
図20】本発明の一実施形態に係るステッチャー制御装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
【
図21】本発明の一実施形態に係るステッチャー制御装置が備える機能の一例を示した機能ブロック図である。
【
図22】本発明の一実施形態に係るステッチャーの制御方法の処理手順の一例を示したフロチャートである。
【
図23】本発明の一実施形態に係るステッチャーの制御方法の処理手順の一例を示したフロチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る用紙綴じ装置、ステッチャー、ステッチャーの制御装置及び制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。用紙綴じ装置の一例として、製本を行う際に使用される中綴じ機が挙げられる。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る用紙綴じ装置1の一構成例を示す概略構成図である。
図1に示すように、用紙綴じ装置1は、例えば、搬送ユニット2と、ストッパ(図示略)と、ステッチャー10とを備えている。
搬送ユニット2は、用紙束Pを搬送路Fに沿って一方向に搬送する。ストッパは、用紙束Pを搬送路Fに設けられた所定の綴じ位置Sに位置決めする。ステッチャー10は、綴じ位置Sに配置された用紙束Pの所定位置を針金綴じする。具体的には、ステッチャー10は、ステッチャーヘッド15の往復運動の1サイクル毎に、所定の綴じ位置Sに供給された用紙束Pの所定箇所を針金綴じする。
【0018】
本実施形態において、搬送ユニット2は、2つ折りにされた用紙束Pを鞍掛け状態で搬送し、ステッチャー10は、2つ折りにされた用紙束Pの折り線の所定位置を針金綴じする場合を例示しているが、この例に限定されない。すなわち、用紙束Pは水平面上に配置される形で搬送されてもよく、針金綴じする位置は、用紙の端部やその他の部位であってもよい。
【0019】
搬送ユニット2は、搬送路Fの搬送方向(Y軸方向)に間隔をあけて配置され、それぞれ搬送方向に直交する水平な軸(X軸方向)の周りに回転可能に支持された第1のプーリー対3と、第2のプーリー対4とを備えている。第1のプーリー対3は、例えば、鉛直方向(Z軸方向)に互いに間隔をあけて配置された上側プーリー3aと、下側プーリー3bとを備えている。第2のプーリー対4は、例えば、鉛直方向(Z軸方向)に互いに間隔をあけて配置された上側プーリー4aと、下側プーリー4bとを備えている。これら第1のプーリー対3と第2のプーリー対4との間には、エンドレスベルト5が掛け渡されている。エンドレスベルト5には、一定の間隔をあけて送り爪6が設けられている。
【0020】
第1のプーリー対3及び第2のプーリー対4を構成するいずれかのプーリー(例えば、プーリー4b)にモータなどの動力源から動力が伝達されて回転することにより、エンドレスベルト5が移動し、エンドレスベルト5に間隔をあけて鞍掛けされた用紙束が搬送方向に沿って移動する。具体的には、用紙綴じ装置1の前工程の処理装置(例えば、折機等)から用紙束Pが搬送路F上に供給されるたびに、その都度、送り爪6が用紙束Pの後端に当接する。そして、用紙束Pが搬送路F上を鞍掛け状態で綴じ位置Sに向けて搬送され、ストッパ(図示略)に位置決めされて、綴じ位置Sに停止するように構成されている。
なお、搬送ユニット2の構成は、上記例に限定されず、公知の様々な構成を採用することが可能である。
【0021】
図2は、本実施形態に係るステッチャー10の概略構成を示したブロック図である。
図2に示すように、ステッチャー10は、ステッチャーヘッド15、ヘッド駆動部20、針金送り部12、及びステッチャー制御装置50を備えている。
【0022】
ステッチャーヘッド15は、例えば、鉛直方向(Z軸方向)に往復運動し、往復運動の1サイクル毎に、綴じ位置Sに配置された用紙束の針金綴じを行う。
ヘッド駆動部20は、ステッチャーヘッド15を往復運動させる駆動部である。
針金送り部12は、ステッチャーヘッド15に針金を供給する。針金送り部12は、例えば、送りローラ12a及びローラ駆動部12bを備えている。
ステッチャー制御装置50は、ステッチャーヘッド15及び針金送り部12を制御する。ステッチャー制御装置50は、例えば、ヘッド駆動部20を制御することにより、ステッチャーヘッド15の往復運転を制御する。また、ステッチャー制御装置50は、ローラ駆動部12bを制御することにより、送りローラ12aからステッチャーヘッド15に供給される針金の長さを制御する。
【0023】
図3は、本実施形態に係るヘッド駆動部20の一構成例を示した概略構成図である。
図3に示されるX軸及びZ軸は、
図1に示したX軸、Y軸、Z軸とそれぞれ対応している。
図1に示すように、本実施形態では、用紙束Pの搬送方向に平行な軸をY軸、水平面上においてY軸と平行な軸をX軸、X軸及びY軸と共に直交する軸をZ軸として定義する。
【0024】
図3に示すように、ヘッド駆動部20は、ステッチャーヘッド15に一端(同図において右端)が回動可能に接続された第1揺動軸21と、第1揺動軸21の他端(左端)に回動可能に接続された第1連結軸23と、第1連結軸23の下端に回動可能に接続された揺動板25と、揺動板25の下方に設けられた回転板27とを備えている。
【0025】
回転板27は、図示しないモータから動力を得て回転する動力軸29によって一方向に回転する。回転板27には、カム溝27aが設けられている。このカム溝27a内を走行するカムローラ25aが揺動板25に設けられている。カムローラ25aの動作に応じて、揺動板25は、支点25b回りに揺動する。この支点25b回りの揺動によって、第1連結軸23が略上下方向に往復動する。この第1連結軸23の往復動によって、第1揺動軸21が支点21aを中心として揺動する。この第1揺動軸21の揺動によって、第1揺動軸21の一端(右端)に接続されたステッチャーヘッド15が上下方向に往復動する。
【0026】
回転板27には、第2揺動軸31の一端(同図において左端)が回動可能に接続されている。回転板27の回転に応じて第2揺動軸31が支点31aを中心として揺動し、第2揺動軸31の他端(右端)に回動可能に接続されたクリンチャー33を上下方向に駆動する。クリンチャー33は、ステッチャーヘッド15の下方に用紙束Pを挟んだ位置に設けられている。クリンチャー33は、上端に爪部35を備える。爪部35は、用紙束Pに打ち込まれた針金Wの突き出た部分を折り曲げる。
【0027】
なお、上述したヘッド駆動部20の構成は一例であり、公知のヘッド駆動部の構成を適宜採用することが可能である。また、上述した構成では、ヘッド駆動部20がクリンチャー33を駆動する場合を例示して説明したが、この例に限定されない。例えば、クリンチャー33を駆動するための駆動部をヘッド駆動部20とは別個に設けることとしてもよい。
【0028】
図4は、X軸方向から見たときのステッチャー10の一構成例を示した概略正面図、
図5は、
図4に示したステッチャーヘッド15を拡大して示した拡大図である。また、
図6は、Y軸方向から見たときのステッチャー10の一構成例を示した概略側面図、
図7は、
図6に示したステッチャーヘッド15を拡大して示した拡大図である。
【0029】
図4~
図7に示すように、ステッチャー10は、針金リール11、針金送り部12、カッター14、針金保持器15a、及びステッチャーヘッド15を備えている。針金送り部12は、針金リール11から針金Wをステッチャーヘッド15、具体的には、針金保持器15aに供給する。針金送り部12は、例えば、送りローラ12aと、ローラ駆動部12bとを備えている。送りローラ12aは、例えば、針金Wを挟むように設けられたローラ対を備えている。ローラ対のいずれか一方のローラの回転軸には、例えば、ローラ駆動部12bが備えるモータ13が直結又は動力伝達機構を介して連結されている。モータ13の動力によって送りローラ12aが回転させられることにより、針金Wが針金保持器15aに供給される。モータ13の一例として、例えば、ステッピングモータが挙げられる。このように、針金送り部12は、ステッチャーヘッド15の往復運動のストローク長さに依存せずに、任意の長さの針金Wを送り出すことが可能な自走式の構成とされている。
なお、針金送り部12の構成についてはこの例に限られない。針金送り部12は、次のサイクルで針金綴じされる用紙束の厚さに応じた長さの針金を送るような自走式の構造とされていればよく、公知の針金送り機構を採用することが可能である。
【0030】
針金保持器15aは、針金送り部12から送られる針金W,W1を把持する。ここで、針金W1は、今回のサイクルで用紙束に打ち込まれる針金であり、用紙束の厚さに応じた長さにカットされた針金を意味し、説明の便宜上、針金送り部12から供給される針金Wと区別する。針金保持器15aは、支点16を中心として揺動可能な構成とされている。例えば、針金保持器15aは、図示しないモータから動力を得て、支点16を中心として揺動する。針金保持器15aの揺動は、例えば、ステッチャー制御装置50によって制御される。
針金保持器15aには、針金Wが通る溝が形成されており、その溝の前方、換言すると、ステッチャーヘッド15側には、針金W(W1)を把持するための把持部15fが設けられている。
【0031】
カッター14は、上下方向(Z軸方向)にスライド可能に設けられ、針金保持器15aによって把持された針金Wを切断する。カッター14のスライド移動は、例えば、ステッチャー制御装置50によって制御される。
ステッチャーヘッド15は、例えば、逆U字型に形成されており、後述するように、針金保持器15aが保持している針金W1をU字型に曲げるための曲げ部15c、U字型に折られた後の針金W1を保持するための溝15e、針金W1を用紙束に打ち込むための打ち込み部15b(
図10参照)等を備えている。
【0032】
ステッチャー10は、ステッチャーヘッド15の往復運動、本実施形態では、上下動の1サイクルの間に、前のサイクルで用意された針金W1を用紙束(以下「用紙束P1」という。)に打ち込む動作と、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束(以下「用紙束P2」という。)に打ち込む針金Wを用意する動作とを並行して行う。
【0033】
次に、ステッチャー10の基本的な一サイクル(一往復)における一連の動作について説明する。ステッチャーヘッド15が一往復する毎に、次の動作が実行される。本実施形態では、ステッチャーヘッド15がホームポジションから往復動作を行いホームポジションに再び戻るまでの一往復を1サイクルと定義する。また、以下のステッチャーの動作は、ステッチャー制御装置50によってヘッド駆動部20、ローラ駆動部12b、針金保持器15a、カッター14が駆動制御されることにより実現される。
【0034】
〔ホームポジション〕
本実施形態において、ホームポジションは、ステッチャーヘッド15の上死点に設定されている。
図8は、ステッチャーヘッド15がホームポジションにある状態をX軸方向から見たときの概略図、
図9は、ステッチャーヘッド15がホームポジションにある状態をY軸方向から見たときの概略図である。また、
図10は、
図8に示したステッチャーヘッド15における打ち込み部15bの状態を示した概略図、
図11は、
図9に示したステッチャーヘッド15における打ち込み部15bの状態を示した概略図である。
【0035】
図8及び
図9に示すように、ホームポジションにおいて、針金保持器15aの把持部15fがステッチャーヘッド15の溝15eと重なるように配置される。このホームポジションでは、針金保持器15aの把持部15fが今回のサイクルで針金綴じを行う用紙束P1の厚さに応じた長さにカットされた針金W1を把持している。なお、以下の説明において、用紙束P1は、このサイクルで針金綴じが行われる用紙束を、用紙束P2は、次のサイクルで針金綴じが行われる用紙束を意味するものとする。
【0036】
更に、ホームポジションにおいて、針金送り部12が駆動されることにより、針金Wが針金保持器15aに供給される。このとき、針金送り部12は、用紙束P2の厚さ情報に基づいてステッチャー制御装置50によって制御される。これにより、用紙束P2の厚さに応じた長さの針金Wが送られる。
また、
図10及び
図11に示すように、ステッチャーヘッド15に設けられた打ち込み部15bは、ステッチャーヘッド15における所定位置(基準位置)に配置されている。
【0037】
〔下降状態〕
図12は、ステッチャーヘッド15の下降時における一態様をX軸方向から見たときの概略図、
図13は、
図12に示したステッチャーヘッド15をY軸方向から見たときの概略図である。また、
図14は、
図12に示したステッチャーヘッド15における打ち込み部15bの状態を示した概略図、
図15は、
図13に示したステッチャーヘッド15における打ち込み部15bの状態を示した概略図である。
【0038】
ステッチャーヘッド15が上死点から下降し始めると、針金保持器15aに把持されていた針金W1は、ステッチャーヘッド15の底面部である曲げ部15cによってU字型に曲げられる。そして、ステッチャーヘッド15が更に下降することにより、針金保持器15aの把持部15fに把持されていたU字型の針金W1は、ステッチャーヘッド15に設けられた針金把持部(図示略)に受け渡される。ステッチャーヘッド15は、針金W1を把持したまま、下死点まで下降を続ける。また、このとき打ち込み部15bもステッチャーヘッド15とともに下降を続ける(
図14及び
図15参照)。
【0039】
一方、針金保持器15aは、針金W1を受け渡した後、ホームポジションの状態から支点16を中心として揺動することで、ステッチャーヘッド15から離れる方向に所定量後退し、
図13に示される状態となる。針金送り部12からの針金Wが針金保持器15aの把持部15fに把持された状態となると、カッター14が下方にスライドすることにより、針金Wが切断される。これにより、次のサイクルで用紙束に打ち込まれる針金W1が用意される。
【0040】
ここで、針金送り部12の針金Wの送り開始タイミング及び送り終了タイミングについては、特に限定されない。例えば、針金送り部12による針金Wの供給が終了した後に、ステッチャーヘッド15が下降を開始してもよい。また、ステッチャーヘッド15が下降し始めた後に、針金送り部12による針金Wの送りが開始されてもよい。
【0041】
〔下死点〕
図16は、ステッチャーヘッド15が下死点にある状態をX軸方向から見たときの概略図、
図17は、
図16に示したステッチャーヘッド15をY軸方向から見たときの概略図である。また、
図18は、
図16に示したステッチャーヘッド15における打ち込み部15bの状態を示した概略図、
図19は、
図17に示したステッチャーヘッド15における打ち込み部15bの状態を示した概略図である。
【0042】
ステッチャーヘッド15が下死点に到達すると、ステッチャーヘッド15の下端(曲げ部15c)が用紙束P1の上面を押さえるとともに、打ち込み部15bは更に下降し、針金W1を用紙束P1に完全に打ち込む。このとき、クリンチャー33の爪部35が用紙束P1から突き出た針金Wの脚部を折り曲げることにより、針金綴じが完了する。
【0043】
針金綴じが完了すると、ステッチャーヘッド15は、ホームポジションに向けて上昇し、また、その上昇とともに、針金保持器15aは、ホームポジションの状態に向けて支点16を中心として揺動する。
そして、上述したサイクルが繰り返し行われることにより、針金綴じを連続的に行うことが可能となる。
【0044】
なお、上述した針金保持器15aの動きやステッチャーヘッドの一サイクル動作は、一例であり、これに限られない。例えば、ステッチャーヘッド15のホームポジションは、上死点に限られない。例えば、上死点と下死点との中間点にホームポジションが設けられてもよい。また、ステッチャーヘッド15の1サイクルの間に、次の1サイクルで針金綴じを行う用紙束の針金が用意されていればよいから、針金送りの開始及び終了のタイミング、針金を切断するタイミングは、適宜設計することが可能である。また、今回のサイクルで針金綴じを行う針金W1の針金保持器15aからステッチャーヘッド15への受け渡しタイミングについても一例であり、針金を打ち付けるまでの任意のタイミングで針金保持器15aからステッチャーヘッド15に受け渡しが完了していればよい。
また、ステッチャーヘッドの構成や針金保持器15a等の構成や構造も一例であり、この例に限れず、従来の構造を適宜採用することが可能である。
【0045】
次に、本実施形態に係るステッチャー制御装置50について説明する。
図20は、本実施形態に係るステッチャー制御装置50のハードウェア構成の一例を示した図である。ステッチャー制御装置(Controller)50は、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)51、主記憶装置(Main Memory)52、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)53を備えている。また、ステッチャー制御装置50は、通信インターフェース54、外部インターフェース55、入力デバイス56、出力デバイス57などを備えていてもよい。
【0046】
CPU51は、例えば、バスを介して接続された二次記憶装置53に格納されたOS(Operating System)によりステッチャー10の制御を行うとともに、二次記憶装置53に格納された各種プログラムを実行することにより各種処理を実行する。CPU51は、1つ又は複数設けられており、互いに協働して処理を実現してもよい。
【0047】
主記憶装置52は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPU51の実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
【0048】
二次記憶装置53は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置53は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどである。二次記憶装置53の一例として、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)フラッシュメモリなどが挙げられる。二次記憶装置53は、例えば、Windows(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)等のステッチャー10の制御を行うためのOS、BIOS(Basic Input/Output System)、周辺機器類をハードウェア操作するための各種デバイスドライバ、各種アプリケーションソフトウェア、及び各種データやファイル等を格納する。また、二次記憶装置53には、各種処理を実現するためのプログラムや、各種処理を実現するために必要とされる各種データが格納されている。二次記憶装置53は、複数設けられていてもよく、各二次記憶装置53に上述したようなプログラムやデータが分割されて格納されていてもよい。
【0049】
通信インターフェース54は、ネットワークに接続して他の装置と通信を行い、情報の送受信を行うためのインターフェースとして機能する。例えば、通信インターフェース54は、有線又は無線により他の装置と通信を行う。無線通信として、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、移動通信システム(3G、4G、5G、6G、LTE等)、無線LANなどの回線を通じた通信が挙げられる。有線通信の一例として、有線LAN(Local Area Network)などの回線を通じた通信が挙げられる。
【0050】
外部インターフェース55は、外部機器と接続するためのインターフェースである。外部機器の一例として、外部モニタ、USBメモリ、外付けHDD、外付けカメラ等が挙げられる。なお、
図16に示した例では、外部インターフェースは、1つしか図示されていないが、複数の外部インターフェースを備えていてもよい。
【0051】
入力デバイス56の一例として、タッチパネル、キーボードなどが挙げられる。入力デバイス56をオペレータが操作することにより、例えば、用紙綴じ装置1やステッチャー10に対して所定の動作を実行させるための指示及び数値等を入力することができる。
出力デバイス57の一例として、ディスプレイ、プリンタなどが挙げられる。なお、タッチパネルは、入力デバイス56の機能と出力デバイス57の機能を有している。
【0052】
ここで、ステッチャー制御装置50は、搬送ユニット2を制御する搬送制御装置と情報の授受を行い、用紙束Pへの針金綴じを実現する。また、ステッチャー制御装置50は、搬送ユニット2を制御する搬送制御装置の機能を更に有し、用紙綴じ装置1の全体を制御する制御装置として実現されてもよい。
【0053】
図21は、本実施形態に係るステッチャー制御装置50が備える機能の一例を示した機能ブロック図である。
【0054】
ステッチャー制御装置50が備える各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置53などに記憶されており、このプログラムをCPU(プロセッサ)51が主記憶装置52に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置53に予めインストールされている形態や、他の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一例として、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどが挙げられる。
【0055】
図21に示すように、ステッチャー制御装置50は、例えば、ヘッド制御部61と、判定部62と、針金送り制御部63とを備えている。
ヘッド制御部61は、ステッチャーヘッド15の制御を行う。具体的には、ヘッド制御部61は、ヘッド駆動部20を制御することにより、ステッチャーヘッド15の上下運動の制御等を行う。また、ヘッド制御部61は、今回のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報に応じて、ステッチャーヘッド15の下死点の位置を変更してもよい。
【0056】
判定部62は、ステッチャーヘッド15のサイクル毎に、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得しているか否かを判定する。
針金送り制御部63は、例えば、ローラ駆動部12bを制御することにより、送りローラ12aの回転量を制御し、ステッチャーヘッド15への針金Wの供給を制御する。
【0057】
針金送り制御部63は、例えば、判定部62によって、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得していると判定された場合に、用紙束の厚さ情報に基づいてローラ駆動部12bを制御することにより、送りローラ12aの回転量を制御し、針金綴じを行う用紙束Pの厚さに応じた長さの針金Wをステッチャーヘッド15に供給する。
針金送り制御部63は、例えば、判定部62によって、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得していないと判定された場合には、今回のサイクルにおいて、針金の供給を行わないように針金送り部12を制御する。具体的には、針金送り制御部63は、今回のサイクルにおいて、ローラ駆動部12bの駆動を停止する。
【0058】
次に、本実施形態に係るステッチャー制御装置50によって実行されるステッチャー制御方法について
図22~
図23を参照して説明する。
図22及び
図23は、本実施形態に係るステッチャー10の制御方法の処理手順の一例を示したフロチャートである。本実施形態に係るステッチャー制御方法は、運転を開始するときと運転を停止するときの針金送りに特徴を有する。以下、図を参照して説明する。また、以下の説明においては、ジョブ情報を取得することで、用紙束の厚さ情報を取得する場合を例示して説明する。また、以下の例において、1つのジョブ情報で規定される用紙束は、全て同じ厚さであるものとする。
【0059】
まず、用紙綴じ装置1の運転停止時において、ステッチャーヘッド15は、上述したホームポジションに配置されている。
【0060】
用紙綴じ装置1の運転が開始されると、ステッチャー制御装置50は、ジョブ情報、換言すると、これから針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得したか否かを判定する(SA1)。ジョブ情報は、例えば、用紙束の冊数、用紙束の厚さ情報を含む情報である。ジョブ情報は、例えば、前処理機から通信回線を通じて受信してもよいし、入力デバイス56を介してオペレータによって入力されてもよい。前処理機の一例として、丁合機、用紙集積機等が挙げられる。なお、ジョブ情報に、用紙束の枚数と用紙を特定する識別情報が含まれている場合には、用紙束の枚数と用紙1枚当たりの厚みデータに基づいて用紙束の厚みを演算によって求めることとしてもよい。また、ジョブ情報に用紙一枚当たりの厚みデータが含まれている場合には、センサなどで用紙束の用紙枚数をカウントし、カウント値と用紙一枚当たりの厚みデータとから用紙束の厚さを演算することとしてもよい。
【0061】
ステッチャー制御装置50は、ジョブ情報を取得していない場合は(SA1:NO)、取得するまで待機状態となる。一方、ジョブ情報を取得した場合には(SA1:YES)、ステッチャー制御装置50は、取得したジョブ情報に含まれている用紙束の厚さ情報を取得し(SA2)、続いて、ヘッド駆動部20を駆動し、ステッチャーヘッド15を一往復運転(1サイクル)させることにより空打ちをさせるとともに、次の用紙束の針金を用意する(SA3)。
【0062】
具体的には、ステッチャー制御装置50は、ステッチャーヘッド15をホームポジションから下降させる。ステッチャーヘッド15がホームポジションにある状態から下死点に到達するまでの期間において、ステッチャー制御装置50は、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ、すなわち、ステップSA2で取得した用紙束の厚さ情報に応じて針金送り部12を制御する。これにより、上述したように、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束P(すなわち、今回のジョブの1冊目の用紙束)の厚さに応じた長さの針金Wが針金保持器15aに送られる。そして、針金保持器15aの把持部15fに把持された状態でカッター14によって切断されることにより、次のサイクルのための針金W1が用意される。
一方、ステッチャーヘッド15が下死点に到達すると、打ち込み部15bによる打ち込み動作が完了する。しかしながら、この時点では、ステッチャーヘッド15は、針金を把持していない状態にある。したがって、打ち込み部15bは、空打ちを行うこととなる。空打ちが行われた後、ステッチャーヘッド15はホームポジションに移動する。
【0063】
このようにして、空打ちが行われると、搬送ユニット2の搬送が開始され、針金綴じを行う最初の用紙束Pが綴じ位置Sに配置されることとなる。
【0064】
続いて、ステッチャー制御装置50は、綴じ位置Sに用紙束Pが配置されたか否かを判定する(SA4)。綴じ位置Sに用紙束がないと判定した場合には(SA4:NO)、綴じ位置Sに用紙束が配置されるまで待機状態となる。一方、綴じ位置Sに用紙束が配置されていると判定した場合には(SA4:YES)、続いて、このサイクルで針金綴じを行う用紙束Pが実行中のジョブにおいて最後の用紙束か否かを判定する(SA5)。最後の用紙束であるか否かは、例えば、ステッチャー制御装置50に接続されたカウンタ(図示略)で、針金綴じ位置Sに送られる用紙束の冊子数をカウントすることにより判定することが可能である。また、最後の用紙束に印刷されたコードを読み取ることで判定することとしてもよい。
【0065】
この結果、最後の用紙束でないと判定した場合には(SA5:NO)、ステッチャー制御装置50は、次に針金綴じを行う用紙束P2の厚さを取得する(SA6)。この処理は、例えば、ジョブ情報に含まれる用紙束P2の厚さ情報を確認することで代替してもよい。
【0066】
続いて、ステッチャー制御装置50は、ヘッド駆動部20を駆動し、ステッチャーヘッド15を一往復運転(1サイクル)させる。これにより、綴じ位置Sにある用紙束に針金を打ち込ませる。また、ステッチャー制御装置50は、針金送り部12を制御して次の用紙束の厚さに応じた長さの針金をステッチャーヘッド15に供給させ、次の用紙束の針金を針金保持器15aに把持させる(SA7)。このようにして、今回のサイクルにおける針金綴じが完了すると、ステップSA4に戻り、後続の処理を行う。
【0067】
そして、ステップSA4~SA7の処理が繰り返し行われることにより、ステッチャーヘッド15の1サイクル毎に用紙束への針金の打ち込みと、次のサイクルで針金綴じが行われる用紙束の厚さに応じた長さの針金が用意される。そして、ステップSA5において、綴じ位置Sに設定された用紙束が、実行中のジョブの最後の用紙束であると判定した場合には(SA5:YES)、次のジョブ情報を取得したか否かを判定する(SA8)。
【0068】
この結果、次のジョブ情報を取得している場合には(SA8:YES)、ステップSA6に移行し、次のジョブ情報から次に針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得する(SA6)。そして、ステッチャー制御装置50は、ヘッド駆動部20を駆動し、ステッチャーヘッド15を1サイクル駆動させることにより、綴じ位置Sにある今回のジョブの最後の用紙束に針金を打ち込むとともに、次に実行するジョブの最初の用紙束の針金Wを用意させ(SA7)、ステップSA4に戻り、以降の処理を行う。これにより、1つのジョブの終了時に、次のジョブの情報を取得していた場合には、これら2つのジョブを連続的に実行することが可能となる。
【0069】
一方、ステップSA8において、次のジョブ情報を取得していない場合には(SA8:NO)、ステッチャー制御装置50は、ヘッド駆動部20を駆動し、ステッチャーヘッド15を一往復運転(1サイクル)させる制御を行う一方で、針金送り部12を駆動させずに、針金送りを停止させる(SA9)。これにより、綴じ位置Sにある用紙束に針金は打ち込まれるが、次の用紙束の針金は用意されないこととなる。すなわち、針金保持器15aが針金を把持することなく、ステッチャーヘッド15がホームポジションに戻ることとなる。
【0070】
続いて、ステッチャー制御装置50は、運転終了か否かを判定する(SA10)。すなわち、運転終了の入力がされたか否かを判定する。この結果、運転終了である場合には(SA10:YES)、当該処理を終了する。一方、運転終了でない場合には(SA10:NO)、ステップSA1に戻り、次のジョブ情報を取得されるまで待機状態となる。なお、この間、運転停止の指令を取得した場合には、運転を停止する。
【0071】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る用紙綴じ装置1、ステッチャー10、ステッチャー制御装置50及び制御方法によれば、ステッチャーヘッド15の上下動の1サイクル毎に、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得しているか否かを判定し、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得していないと判定した場合に、今回のサイクルにおいて、針金の供給を行わないように針金送り部12を制御する。一方、ステッチャー制御装置50は、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得していると判定した場合には、今回のサイクルにおいて、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報に基づく長さの針金を供給するように針金送り部12を制御する。
【0072】
これにより、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得していない場合には、針金保持器15aが針金を把持することなく、ステッチャーヘッド15が停止される。これにより、次に実行するジョブ情報を取得した場合には、そのジョブ情報から次に針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得した上で、ステッチャーヘッド15の空打ちを行い、更に、その空打ちにおいて、次に針金綴じを行う用紙束の厚さに応じた長さの針金を用意することとなる。
また、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報を取得している場合には、今回のサイクルにおいて、次のサイクルで針金綴じを行う用紙束の厚さ情報に基づく長さの針金が供給され、用意される。これにより、次のサイクルにおいても、そのサイクルで針金綴じが行われる用紙束の厚さに応じた長さの針金を用紙束に打ち込むことが可能となる。
【0073】
このように、ステッチャーヘッド15を停止させるサイクルにおいて、針金送りを停止し、かつ、ステッチャーヘッド15の駆動開始時において、空打ちを行うこととしたので、資源の無駄を削減するとともにコスト低減及び生産性向上を図ることが可能となる。
【0074】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
また、上記実施形態で説明したステッチャー制御方法の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0075】
なお、上述した実施形態では、ジョブ情報から用紙束の厚さ情報を取得する場合について説明したが、この例に限定されない。例えば、各用紙束に付されたバーコードを読み取ることによって、用紙束毎に用紙束の厚さ情報を取得し、ステッチャーヘッド15の上下動サイクル毎に、用紙束の厚さ情報を取得したか否かを判定することとしてもよい。
また、用紙束の厚み情報の取得方法については、その他の公知の手法によって取得することとしてもよい。例えば、搬送ユニット2における用紙束Pの搬送流れにおいて、所定の綴じ位置Sよりも上流側に、厚さを検出するセンサを設け、そのセンサによって用紙束の厚さ情報を取得することとしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 :用紙綴じ装置
2 :搬送ユニット
6 :送り爪
10 :ステッチャー
11 :針金リール
12 :針金送り部
12a :送りローラ
12b :ローラ駆動部
13 :モータ
14 :カッター
15 :ステッチャーヘッド
15a :針金保持器
15b :打ち込み部
15c :曲げ部
15e :溝
15f :把持部
16 :支点
20 :ヘッド駆動部
33 :クリンチャー
35 :爪部
50 :ステッチャー制御装置
51 :CPU
52 :主記憶装置
53 :二次記憶装置
54 :通信インターフェース
55 :外部インターフェース
56 :入力デバイス
57 :出力デバイス
61 :ヘッド制御部
62 :判定部
63 :針金送り制御部