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特開2023-135282レーザ・アークハイブリッド溶接装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135282
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】レーザ・アークハイブリッド溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/348 20140101AFI20230921BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20230921BHJP
   B23K 9/173 20060101ALI20230921BHJP
   B23K 9/23 20060101ALN20230921BHJP
【FI】
B23K26/348
B23K26/21 F
B23K9/173 A
B23K9/23 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040417
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅之
【テーマコード(参考)】
4E001
4E168
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB06
4E001CA01
4E001CB01
4E001CB04
4E001CC02
4E001DD02
4E001DD04
4E168BA83
4E168BA87
4E168BA88
4E168EA05
4E168FB03
4E168KA04
(57)【要約】
【課題】被接合部の表面被膜を除去しつつ、被接合部の溶け込み深さを確保する。
【解決手段】レーザ・アークハイブリッド溶接装置1は、少なくとも1つのレーザトーチ40と、溶接トーチ10とを備える。レーザトーチ40は、被接合部3に向けて第1レーザ51および第2レーザ52を照射する。溶接トーチ10は、被接合部3との間にアーク25を発生させて被接合部3を溶接する。溶接の進行方向に直交する方向における第1レーザ51の照射領域71の幅W1は、第2レーザ52の照射領域72の幅W2より広い。第1レーザ51を被接合部3に照射して表面被膜を除去した後に、第2レーザ52を被接合部3に照射しつつ被接合部3との間にアーク25を発生させることにより被接合部3を溶接する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合部に向けて第1レーザおよび第2レーザを照射する少なくとも1つのレーザトーチと、
前記被接合部との間にアークを発生させて前記被接合部を溶接する溶接トーチとを備え、
溶接の進行方向に直交する方向における前記第1レーザの照射領域の幅は、前記第2レーザの照射領域の幅より広く、
前記第1レーザを前記被接合部に照射して表面被膜を除去した後に、前記第2レーザを前記被接合部に照射しつつ前記被接合部との間に前記アークを発生させることにより前記被接合部を溶接する、レーザ・アークハイブリッド溶接装置。
【請求項2】
前記第1レーザの出力は、前記第2レーザの出力より低い、請求項1に記載のレーザ・アークハイブリッド溶接装置。
【請求項3】
前記溶接の進行方向に直交する方向における前記第1レーザの照射領域の幅は、前記被接合部の幅に対して0.5倍以上2倍以下である、請求項1または請求項2に記載のレーザ・アークハイブリッド溶接装置。
【請求項4】
前記被接合部を溶接する際に、前記第1レーザの照射位置、前記第2レーザの照射位置および前記アークの発生位置は、前記溶接の進行方向においてこの順に並んでいる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザ・アークハイブリッド溶接装置。
【請求項5】
前記第1レーザおよび前記第2レーザの各々は、1つのレーザトーチから前記被接合部に向けて照射される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーザ・アークハイブリッド溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ・アークハイブリッド溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ照射アーク溶接方法を開示した先行技術文献として、特開2004-298903号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載されたレーザ照射アーク溶接方法においては、被溶接物の溶接予定個所にレーザを照射して消耗電極ガスシールドアーク溶接が行なわれる。被溶接物は、亜鉛めっき鋼板とめっき処理を施していない鋼板とから形成された継手である。亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっきを蒸発させるようにレーザが照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-298903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたレーザ照射アーク溶接方法においては、レーザの照射形状が点形状であり、デフォーカスすることにより照射範囲を確保している。よって、溶け込み深さが要求される場合には、高出力のレーザ発振器が必要になり、設備コストの増加に繋がる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、被接合部の表面被膜を除去しつつ、被接合部の溶け込み深さを確保することができる、レーザ・アークハイブリッド溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づくレーザ・アークハイブリッド溶接装置は、少なくとも1つのレーザトーチと、溶接トーチとを備える。レーザトーチは、被接合部に向けて第1レーザおよび第2レーザを照射する。溶接トーチは、被接合部との間にアークを発生させて被接合部を溶接する。溶接の進行方向に直交する方向における第1レーザの照射領域の幅は、第2レーザの照射領域の幅より広い。第1レーザを被接合部に照射して表面被膜を除去した後に、第2レーザを被接合部に照射しつつ被接合部との間にアークを発生させることにより被接合部を溶接する。
【0007】
この場合、第1レーザにより被接合部の表面被膜を除去しつつ、アーク溶接とともに第2レーザにより被接合部をレーザ溶接することによって、被接合部の溶け込み深さを確保することができる。
【0008】
本発明の一形態においては、第1レーザの出力は、第2レーザの出力より低い。
【0009】
これにより、第1レーザの出力を被接合部の表面被膜の除去に適した出力にして表面被膜を除去しつつ、第2レーザの出力を第1レーザより高くして被接合部の溶け込み深さを確保しやすくすることができる。
【0010】
本発明の一形態においては、溶接の進行方向に直交する方向における第1レーザの照射領域の幅は、被接合部の幅に対して0.5倍以上2倍以下である。
【0011】
これにより、第1レーザを適切な幅にして被接合部の表面被膜を除去することができる。
【0012】
本発明の一形態においては、被接合部を溶接する際に、第1レーザの照射位置、第2レーザの照射位置およびアークの発生位置は、溶接の進行方向においてこの順に並んでいる。
【0013】
この場合、アーク溶接に先行して第2レーザを照射することにより、被接合部を溶融させて溶け込み深さを確保しつつ、アーク溶接を安定化させることができる。
【0014】
本発明の一形態においては、第1レーザおよび第2レーザの各々は、1つのレーザトーチから被接合部に向けて照射される。
【0015】
これにより、1つのレーザトーチにより第1レーザおよび第2レーザを構成することができるため、設備コストを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被接合部の表面被膜を除去しつつ、被接合部の溶け込み深さを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置の構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置に係るレーザの照射部分の構成を示す概略図である。
図3】本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置によって母材が溶接されている状態を示す上面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置によって溶接された母材の接合状態を示す断面図である。
図5】本発明の実施の形態2に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置によって母材が溶接されている状態を示す上面図である。
図6】本発明の実施の形態3に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置に係るレーザトーチの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施の形態に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置について図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0019】
なお、図面においては、溶接の進行方向をDR1方向、溶接の進行方向に直交し、かつ母材表面に並行する方向をDR2方向とする。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置の構成を示す概略図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置1は、溶接トーチ10と、溶接電源装置30と、レーザトーチ40と、レーザ発振装置60とを備える。
【0022】
レーザ・アークハイブリッド溶接装置1は、金属同士の接合に使用される。レーザ・アークハイブリッド溶接装置1によって、互いに接合される母材2の一方と他方とが、突き合わせ溶接継手または重ね隅肉溶接継手などにより被接合部3において接合される。
【0023】
母材2は、たとえば、亜鉛めっき鋼板により構成されている。なお、母材2は、亜鉛めっき鋼板に限定されず、アルミニウム、マグネシウムもしくはチタン、またはこれらの合金などによって構成されていてもよい。
【0024】
溶接トーチ10および溶接電源装置30は、アーク溶接を行なうための機器である。溶接トーチ10は、母材2に向けて、溶接ワイヤ20および図示しないシールドガスを供給する。溶接トーチ10は、被接合部3との間にアーク25を発生させて被接合部3を溶接する。具体的には、溶接トーチ10は、溶接電源装置30から溶接電流の供給を受け、溶接ワイヤ20の先端と母材2との間にアーク25を発生させるとともに、母材2に向けてアルゴンガスまたは炭酸ガスなどのシールドガスを供給することによって、被接合部3を溶接する。
【0025】
溶接電源装置30は、アーク溶接を行なうための溶接電圧および溶接電流を生成し、生成された溶接電圧および溶接電流を溶接トーチ10へ出力する。また、溶接電源装置30は、溶接トーチ10における溶接ワイヤ20の送り速度を制御する。
【0026】
レーザトーチ40は、レーザ・アークハイブリッド溶接装置1に少なくとも1つ設けられている。本実施の形態におけるレーザトーチ40は、レーザ・アークハイブリッド溶接装置1に1つ設けられている。
【0027】
レーザトーチ40およびレーザ発振装置60は、レーザ50を照射するための機器である。レーザトーチ40は、レーザ発振装置60からレーザ光の供給を受け、母材2の被接合部3に向けてレーザ50を照射することによって被接合部3の表面被膜の除去および溶接を行なう。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置に係るレーザの照射部分の構成を示す概略図である。なお、図2においては、発明の理解を容易にするため、アーク溶接に係る構成については図示していない。
【0029】
図2に示すように、本実施の形態に係るレーザトーチ40は、レーザを所望のビームパターンに加工する光学系41を含む。
【0030】
光学系41は、レーザ発振装置60から出力されたレーザ光が通過するようにレーザトーチ40に配置される。光学系41を通過したレーザ光は、母材2に照射され、母材2において照射領域70が形成される。
【0031】
レーザトーチ40は、被接合部3に向けて第1レーザ51および第2レーザ52を照射する。本実施の形態においては、第1レーザ51および第2レーザ52の各々は、1つのレーザトーチ40から被接合部3に向けて照射される。具体的には、第1レーザ51は、母材2の表面に矩形状の照射領域71を形成して照射される。また、第2レーザ52は、母材2の表面に円形状の照射領域72を形成して照射される。
【0032】
第1レーザ51の出力は、第2レーザ52の出力より低い。なお、第1レーザ51および第2レーザ52の出力は、光学系41の設計によって任意に設定することができる。
【0033】
図3は、本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置によって母材が溶接されている状態を示す上面図である。図4は、本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置によって溶接された母材の接合状態を示す断面図である。
【0034】
図3および図4に示すように、母材2は、第1母材4および第2母材5によって構成されている。第1母材4および第2母材5の各々に、溶接進行方向(DR1方向)に沿ってアーク25による溶接およびレーザ50の照射が行なわれることによって、被接合部3において第1母材4と第2母材5とが互いに接合される。DR1方向に沿って溶融池90を形成しつつ被接合部3が接合される。
【0035】
第1レーザ51は、被接合部3の表面被膜を除去する。第2レーザ52は、被接合部3を溶融する。第1レーザ51を被接合部3に照射して表面被膜を除去した後に、第2レーザ52を被接合部3に照射しつつ被接合部3との間にアーク25を発生させることにより被接合部3を溶接する。
【0036】
溶接の進行方向に直交する方向(DR2方向)における第1レーザ51の照射領域71の幅W1は、第2レーザ52の照射領域72の幅W2より広い。第1レーザ51が照射領域71の範囲に照射されDR1方向に進行することによって、母材2の表面被膜を除去しつつ、レーザ痕73が照射領域71の後方に形成される。
【0037】
溶接の進行方向に直交する方向(DR2方向)における第1レーザ51の照射領域71の幅W1は、被接合部3の幅W3に対して0.5倍以上2倍以下である。これにより、第1レーザ51によって、アーク溶接および第2レーザ52による溶接に対して、被接合部3の表面被膜を除去するために十分な幅を確保することができる。
【0038】
被接合部3を溶接する際に、第1レーザ51の照射位置である照射領域71、第2レーザ52の照射位置である照射領域72およびアーク25の発生位置は、溶接の進行方向(DR1方向)においてこの順に並んでいる。アーク溶接に先行して第2レーザ52で被接合部3を溶融させることによって、アーク溶接を安定化させることができる。なお、DR1方向における第2レーザ52の照射領域72とアーク25との距離は、たとえば、2mm以上3mm以下である。
【0039】
ここで、本実施の形態におけるレーザ・アークハイブリッド溶接装置1を用いて母材に対してレーザ・アークハイブリッド溶接を行なった試験結果について説明する。
【0040】
第1母材および第2母材の各々は、2.3mmの板厚を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)である。第1母材および第2母材の各々を突き合わせた後、1つのレーザを5.0kWの出力でデフォーカスしながら表面被膜を除去しつつ、溶接速度を4.0m/minおよび溶接電流を250Aの条件下において、アーク溶接を行なった。その結果、レーザによる被接合部の溶融が不足して、突き合わせ継手の完全溶け込み溶接はできなかった。
【0041】
一方、レーザをDOEにより回折して第1レーザと第2レーザとに分岐させ、第1レーザを溶接進行方向に直交する方向の照射幅を5.0mm、1.0kWの出力で照射し、第2レーザを4.0kWの出力で溶接を行なった。その結果、突き合わせ継手の完全溶け込み溶接として裏波溶接を行なうことができた。これにより、本実施の形態における条件下のレーザ・アークハイブリッド溶接を行なうことによって、亜鉛めっきされたGA鋼板の第1母材および第2母材を、亜鉛めっきを除去しつつ、溶け込み深さを確保して溶接することが可能であることを確認することができた。
【0042】
本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置1においては、レーザトーチ40により被接合部3に向けて第1レーザ51および第2レーザ52を照射し、溶接の進行方向に直交する方向(DR2方向)における第1レーザ51の照射領域71の幅W1を第2レーザ52の照射領域72の幅W2より広くすることによって、第1レーザ51で被接合部3の表面被膜を除去しつつ、アーク25による溶接とともに第2レーザ52で被接合部3を溶融させることによって、被接合部3の溶け込み深さを確保することができる。
【0043】
本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置1においては、第1レーザ51の出力が第2レーザ52の出力より低いことにより、レーザ光の使用目的に応じた出力にすることによって、第1レーザ51の出力を第2レーザ52より低くして被接合部3の表面被膜の除去に適した出力とし、第2レーザ52の出力を第1レーザ51より高くして被接合部3の溶け込み深さを確保しやすくすることができる。
【0044】
本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置1においては、溶接の進行方向に直交する方向(DR2方向)における第1レーザ51の照射領域71の幅W1が、被接合部3の幅W3に対して0.5倍以上2倍以下であることにより、第1レーザ51を適切な幅W1にして被接合部3の表面被膜の除去作用を確保することができる。
【0045】
本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置1においては、被接合部3を溶接する際に、第1レーザ51の照射位置、第2レーザ52の照射位置およびアーク25の発生位置が溶接の進行方向(DR1方向)においてこの順に並んでいることにより、第1レーザ51により被接合部3の表面被膜を除去した後に、アーク溶接に先行して第2レーザ52で被接合部3を溶融させることによって、アーク溶接を安定化させることができる。
【0046】
本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置1においては、第1レーザ51および第2レーザ52の各々は、1つのレーザトーチ40から被接合部3に向けて照射されることにより、1つのレーザトーチ40により第1レーザ51および第2レーザ52を構成することができるため、設備コストを抑制することができる。また、1つのDOE41を変更するのみで第1レーザ51および第2レーザ52の出力を変更することができるため、溶接条件を容易に変更することができる。
【0047】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置について説明する。本発明の実施の形態2に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置は、レーザトーチの構成が本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置1と異なるため、本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置1と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0048】
図5は、本発明の実施の形態2に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置によって母材が溶接されている状態を示す上面図である。図5に示すように、本発明の実施の形態2に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置においては、第1レーザおよび第2レーザの各々が、1つのレーザトーチから被接合部3に向けて照射される。
【0049】
レーザトーチは、図示しないミラーおよび駆動モータを含む。ミラーにレーザを当てて駆動モータによりミラーを駆動させることによって、レーザを走査することができる。これにより、第1レーザの照射領域71Aおよび第2レーザの照射領域72Aの形状になるように図5中の矢印方向にレーザを走査する。
【0050】
第1レーザおよび第2レーザの走査は、レーザ発振装置の制御プログラムによって制御される。第1レーザおよび第2レーザを走査する制御プログラムにより、照射領域の変更などの溶接条件を容易に変更することができる。なお、レーザの走査方向は、図5中の方向に限定されない。
【0051】
本発明の実施の形態2に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置においては、レーザトーチ内のミラーおよび駆動モータにより被接合部3に向けて第1レーザおよび第2レーザを走査して照射することによって、第1レーザで被接合部3の表面被膜を除去しつつ、アークによる溶接とともに第2レーザで被接合部3を溶融させることによって、被接合部3の溶け込み深さを確保することができる。
【0052】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置について説明する。本発明の実施の形態3に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置は、レーザトーチの構成が本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置1と異なるため、本発明の実施の形態1に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置1と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0053】
図6は、本発明の実施の形態3に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置に係るレーザトーチの構成を示す概略図である。なお、図6においては、発明の理解を容易にするため、溶接トーチは図示していない。
【0054】
図6に示すように、本発明の実施の形態3に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置は、第1レーザ発振装置61と、第2レーザ発振装置62と、第1レーザトーチ45と、第2レーザトーチ46とを備える。第1レーザ発振装置61からレーザ光が出力され、第1レーザトーチ45を通過することにより、第1レーザ51Bが母材2に照射される。また、第2レーザ発振装置62からレーザ光が出力され、第2レーザトーチ46を通過することにより、第2レーザ52Bが母材2に照射される。
【0055】
第1レーザトーチ45は、光学系41Bを含む。光学系41Bは、レーザ光が通過するように第1レーザトーチ45に配置される。第1レーザ51Bは、光学系41Bを通過して母材2に照射され、母材2において照射領域71Bが形成される。
【0056】
第2レーザトーチ46は、レンズ48を含む。レンズ48をレーザが通過することにより、第2レーザ52Bが集光されて、母材2に照射され、照射領域72Bが形成される。なお、第2レーザトーチ46にレーザを加工する光学系が設けられていてもよい。
【0057】
第1レーザ51Bの照射位置、第2レーザ52Bの照射位置および図示しないアークの発生位置は、この順で溶接の進行方向(DR1方向)に並んでいることが望ましい。なお、本実施の形態においては、第1レーザ51Bの照射位置、アークの発生位置、第2レーザ52Bの照射位置が、この順で溶接の進行方向に並んでいてもよい。この場合、DR1方向において、第2レーザ52Bに対してアーク溶接を先行させることによって、溶け込み深さを確保した後に第2レーザ52Bにより被接合部の内部を撹拌することができる。
【0058】
本発明の実施の形態3に係るレーザ・アークハイブリッド溶接装置においては、第1レーザ51Bおよび第2レーザ52Bを別々のレーザトーチから出力することによって、母材2の表面被膜を除去する第1レーザ51Bを出力する第1レーザ発振装置61を低出力仕様にすることができるため、レーザ・アークハイブリッド溶接装置のレーザ照射におけるランニングコストを抑制することができる。
【0059】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではない。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 レーザ・アークハイブリッド溶接装置、3 被接合部、10 溶接トーチ、25 アーク、40 レーザトーチ、51,51B 第1レーザ、52,52B 第2レーザ、70,71,71A,71B,72,72A,72B 照射領域、W1,W2,W3 幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6