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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135291
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/04 20060101AFI20230921BHJP
   F28D 7/08 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
F28F3/04 B
F28D7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040427
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】519366237
【氏名又は名称】NatureArchitects株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134094
【弁理士】
【氏名又は名称】倉持 誠
(72)【発明者】
【氏名】須藤 海
(72)【発明者】
【氏名】新谷 国隆
(72)【発明者】
【氏名】山口 総一郎
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA35
3L103DD03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】構造体に関し、より詳しくは、熱交換等の用途に用いることが可能な構造体を提供する。
【解決手段】複数の第1の流路32aが互いに連通して形成される第1の流路空間32と、複数の第2の流路34aが互いに連通して形成される第2の流路空間34とを互いに隔てた状態で形成する隔壁構造30で構成された構造体1が提供される。隔壁構造30の少なくとも一部は、第1の周期曲面の形状から第1の周期曲面とは異なる第2の周期曲面の形状に連続的に変形する第3の周期曲面に基づいて形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の流路が互いに連通して形成される第1の流路空間と、複数の第2の流路が互いに連通して形成される第2の流路空間とを互いに隔てた状態で形成する隔壁構造で構成された構造体であって、
前記隔壁構造の少なくとも一部は、第1の周期曲面の形状から前記第1の周期曲面とは異なる第2の周期曲面の形状に連続的に変形する第3の周期曲面に基づいて形成されている、構造体。
【請求項2】
前記第3の周期曲面は、前記第1の周期曲面と前記第2の周期曲面との合成によって生成される、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記第3の周期曲面は、前記第1の周期曲面と前記第2の周期曲面との合成比が連続的に変化している、請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記隔壁構造は、前記第1の周期曲面の形状を有する第1の面と、前記第2の周期曲面の形状を有する第2の面とを有し、前記第3の周期曲面は前記第1の面と前記第2の面との間に形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項5】
前記第1及び第2の周期曲面は三重周期極小曲面である、請求項1~4のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項6】
前記三重周期極小曲面は、Gyroid曲面、Schwarz・P曲面、Schwarz・D曲面、Fischer-Koch・S曲面およびLidinoid曲面のいずれか1つを含む、請求項5に記載の構造体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の構造体を含む熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は構造体に関し、より詳しくは、熱交換等の用途に用いることが可能な構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ジャイロイドの周期極小曲面によって隔てられた2つの流路を有する気液分離装置が開示されている。また、特許文献2には、各種周期極小曲面によって隔てられた2つの流路を有する熱交換器が開示されている。特許文献1及び特許文献2は、それぞれ、2つの流路を隔てる隔壁に周期極小曲面を用いてその比表面積を大きくすることで、気液分離効率ないし熱交換効率の向上を図ることを意図している。
また、特許文献3には、ユニットセルの大きさが階層的に変化する三重周期極小曲面で形成された熱交換器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-155279号公報
【特許文献2】米国特許第10704841号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0215480号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に開示された構造は、いずれも、単一種類の周期極小曲面に基づいて形成されているため、周期極小曲面の形状に由来する熱交換特性ないし気液分離特性は構造全体にわたって均質である。そのため、構造内において熱交換特性ないし気液分離特性に分布を持たせることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、複数の第1の流路が互いに連通して形成される第1の流路空間と、複数の第2の流路が互いに連通して形成される第2の流路空間とを互いに隔てた状態で形成する隔壁構造で構成された構造体が提供される。隔壁構造の少なくとも一部は、第1の周期曲面の形状から第1の周期曲面とは異なる第2の周期曲面の形状に連続的に変形する第3の周期曲面に基づいて形成されている。
【0006】
本開示の他の特徴事項および利点は、例示的且つ非網羅的に与えられている以下の説明及び添付図面から理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る構造体を示す斜視図である。
図2図1に示した構造体の図示xz平面と平行なA-A線を通る平面に沿って切断した断面を示す図である。
図3図1に示した構造体を、図示xz平面と平行な平面であって、図2に示した断面に対して図示y方向に周期曲面の半周期分だけずらした位置における平面に沿って切断した断面を示す図である。
図4】図(a)は図1に示した構造体の第1の流路空間に第1の流体を充填した状態を示す図であり、図(b)は図1に示した構造体の第2の流路空間に第2の流体を充填した状態を示す図である。
図5】本開示の一実施形態に係る構造体の第1の変形例を示す斜視図である。
図6】図(a)は図5に示した構造体の第1の流路空間に第1の流体を充填した状態を示す図であり、図(b)は図5に示した構造体の第2の流路空間に第2の流体を充填した状態を示す図である。
図7】図(a)は本開示の一実施形態に係る構造体の第2の変形例を示す斜視図であり、図(b)は図(a)に示した構造体の平面図である。
図8】本開示の一実施形態の第3の変形例に係る構造体を一部破断した状態で示す平面図である。
図9図8に示した構造体の斜視図である。
図10図8に示した構造体の全体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0009】
最初に、本開示の一実施形態に係る構造体1の全体構成について説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る構造体を示す斜視図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の構造体1は、互いに隔てられた2つの流路空間12,14を形成する第1の隔壁構造10と、互いに隔てられた2つの流路空間22,24を形成する第2の隔壁構造20と、第1の隔壁構造10と第2の隔壁構造20との間に形成され、互いに隔てられた2つの流路空間32,34を形成する第3の隔壁構造30とを含んでおり、一例としてそれらが一体となって直方体形状に形成されている。本実施形態の説明においては、図1に示すように構造体1の横方向をx軸、奥行き方向をy軸、縦方向をz軸として座標系を定義する。
【0011】
第1の隔壁構造10は、第1の流体を通す複数の第1の流路12a(図2図3参照)が互いに連通して形成される第1の流路空間12と、第2の流体を通す複数の第2の流路14a(図2図3参照)が互いに連通して形成される第2の流路空間14とを形成している。それらの2つの流路空間12,14は第1の隔壁構造10によって互いに隔てられており、2つの流路空間12,14をそれぞれ流れる第1及び第2の流体が互いに混じることはない。第1の隔壁構造10は、第1の周期曲面(本例では、三重周期極小曲面の1つであるSchwarz・P曲面)に基づき、隔壁に所定の厚みを有するように形成されている。
【0012】
第2の隔壁構造20は、第1の流体を通す複数の第1の流路22a(図2図3参照)が互いに連通して形成される第1の流路空間22と、第2の流体を通す複数の第2の流路24a(図2図3参照)が互いに連通して形成される第2の流路空間24とを形成している。それらの2つの流路空間22,24は第2の隔壁構造20によって互いに隔てられており、2つの流路空間22,24をそれぞれ流れる第1及び第2の流体が互いに混じることはない。第2の隔壁構造20は第1の隔壁構造10は第1の周期曲面とは異なる第2の周期曲面(本例では、三重周期極小曲面の1つであるGyroid曲面)に基づき、隔壁に所定の厚みを有するように形成されている。
【0013】
第3の隔壁構造30は、第1の流体を通す複数の第1の流路32a(図2図3参照)が互いに連通して形成される第1の流路空間32と、第2の流体を通す複数の第2の流路34a(図2図3参照)が互いに連通して形成される第2の流路空間34とを形成している。第3の隔壁構造30の第1の流路空間32の一端は第1の隔壁構造10の第1の流路空間12に接続され、他端は第2の隔壁構造20の第1の流路空間22に接続されている。また、第3の隔壁構造30の第2の流路空間34の一端は第1の隔壁構造10の第2の流路空間14に接続され、他端は第2の隔壁構造20の第2の流路空間24に接続されている。これにより、第1の流体は、第1、第3及び第2の隔壁構造10,20,30の第1の流路空間12,32,22を通って流れ、第2の流体は、第1、第3及び第2の隔壁構造10,20,30の第2の流路空間14,34,24を通って流れるようになっている。
【0014】
また、第3の隔壁構造30は、第1の隔壁構造10に接する側から第2の隔壁構造20に接する側にかけて、第1の隔壁構造10の第1の周期曲面(本例ではSchwarz・P曲面)から第2の隔壁構造20の第2の周期曲面(本例ではGyroid曲面)に形状が連続的に変化する第3の周期曲面に基づいて、隔壁に所定の厚みを有するように形成されている。
【0015】
図1においては、図示と説明の明瞭のために、直方体形状の構造体1の各面において各流路空間が開放した状態で描画されているが、各流路空間は、第1及び第2の流体を構造体1内で流す方向に応じて、各面に表れる端部が閉鎖される。例えば、第1の流体を図1の構造体1内を図示左右方向(X軸方向)に流し、第2の流体を図1の構造体1内を図示上下方向(Z軸方向)に流す場合には、構造体1の図示X軸方向左側の面に表れる第1の隔壁構造10の第1の流路空間12の各々の第1の流路12aと、構造体1の図示X軸方向右側の面に表れる第2の隔壁構造20の第1の流路空間22の各々の第1の流路22aとは解放し、その他の面に表れる各々の第1の流路12a,22a,32aの端部は壁面等によって閉鎖される。また、構造体1の図示Z軸方向の上下両側面に表れる第1、第2及び第3の隔壁構造10,20,30の第2の流路空間14,24,34の各々の第2の流路14a,24,34aは解放し、その他の面に表れる各々の第2の流路14a,24a,34aの端部は壁面等によって閉鎖される。
【0016】
このように構成された本実施形態の構造体1によれば、図1の図示左側側面(YZ平面)から第1の隔壁構造10の第1の流路空間12内に流入した第1の流体は、第1の流路空間12を通って第3の隔壁構造30の第1の流路空間32内に流入し、第1の流路空間32を通って第2の隔壁構造20の第1の流路空間22内に流入し、図1の図示右側側面において第1の流路空間22から外部に流出する。なお、第1の流体はこれとは逆方向に流すことも可能である。他方、図1の図示上側面(XY平面)から第1、第2及び第3の隔壁構造10,20,30の各々の第2の流路空間14,24,34内に流入した第2の流体は、互いに連通するそれらの第2の流路空間内14,24,34を通って、図1の図示下側面においてそれらの第2の流路空間14,24,34から外部に流出する。なお、第2の流体はこれとは逆方向に流すことも可能である。
【0017】
次に、本実施形態の構造体1における各隔壁構造10,20について説明する。隔壁構造10,20は、周期曲面に基づいて形成され、一定の厚みを占める壁によって構成することができる。周期曲面としては、例えば、一方の螺旋壁と他方の螺旋壁とによって互いに隣接しかつ互いに隔てられた2つの螺旋空間を形成する二重螺旋スクリューを成す螺旋状の曲面や、周期曲面、とりわけ三重周期極小曲面(以下、「TPMS」:Triply Periodic Minimal Surfaceとも称する。)を用いることができる。
【0018】
ここで、「極小曲面」は、その面積を局所的に最小化する表面であり、その表面は全ての点でゼロ平均曲率を有する。ゼロ平均曲率は、その表面上のすべての点で極小曲面の平均曲率がゼロであることを意味する。平均曲率は2つの主曲率の平均であり、主曲率は極小曲面の表面上の特定の点における法線曲率の最大値および最小値である。極小曲面の表面の各点の反対側には絶対値が等しく正負が反対である曲率を持つ点が存在するため、表面全体での平均曲率はゼロとなる。
【0019】
また、「三重周期極小曲面(TPMS)」は、表面が3つの異なる方向に周期的に繰り返される三重周期的な極小曲面である。三重周期最小曲面は、空間を互いに隔てられた2つの容積に分割する。互いに隔てられた2つの容積は互いに複雑に絡み合う2つの空間を形成し得るが、それらの2つの空間は互いに連通しない。三重周期極小曲面としては、例えばGyroid曲面、Schwarz・P曲面、Schwarz・D曲面、Fischer-Koch・S曲面、Lidinoid曲面が含まれるが、本実施形態において採用し得る三重周期極小曲面はこれらに限定されない。また、本実施形態においては、上記のような三重周期極小曲面の2つ以上を任意に合成して形成された周期極小曲面構造を採用してもよい。
【0020】
本実施形態で示した例では、第1の隔壁構造10はTPMSの一例であるSchwarz・P曲面に基づいて形成され、第2の隔壁構造20は同じくTPMSの一例であるGyroid曲面に基づいて形成されている。
【0021】
ここで、Schwarz・P曲面は、下記の陰関数P(x,y,z)によって表現される。
P(x,y,z)=cos(x)+cos(y)+cos(z)
【0022】
また、Gyroid曲面は、下記の陰関数G(x,y,z)によって表現される。
G(x,y,z)=sin(x)cos(y)+sin(y)cos(z)+sin(z)cos(x)
【0023】
なお、陰関数による曲面は、三次元ユークリッド空間上の点(x,y,z)∈R上に定義された実数値を返す関数f:R→Rに対してf(x,y,z)=0を満たす点(x,y,z)の集合によって定義される。ここで、Rは実数全体の集合を示す。
【0024】
続いて、各隔壁構造10,20,30に形成された第1の流路空間12,22,32及び第2の流路空間14,24,34の構成についてより詳しく説明する。
【0025】
図2は、図1に示した構造体の図示xz平面と平行なA-A線を通る平面に沿って切断した断面を示す図である。図3は、図1に示した構造体を、図示xz平面と平行な平面であって、図2に示した断面に対して図示y方向に周期曲面の半周期分だけずらした位置における平面に沿って切断した断面を示す図である。
【0026】
最初に図2を参照すると、図2に示すxz平面に沿った断面においては、本実施形態の構造体1のうち第1の周期曲面(本例ではSchwarz・P曲面)で形成された第1の隔壁構造10において、複数の第1の流路12aと複数の第2の流路14aとがx軸方向及びz軸方向に互い違いに形成されている。これらの第1の流路12aは、互いに連通して複雑で入り組んだラビリンスを成す、第1の流体を通す第1の流路空間12を形成している。また、これらの第2の流路14aは、互いに連通して複雑で入り組んだラビリンスを成す、第2の流体を通す第2の流路空間14を形成している。
【0027】
また、第2の周期曲面(本例ではGyroid曲面)で形成された第2の隔壁構造20においては、それぞれz軸方向に延びる複数の第1の流路22aと複数の第2の流路24aとがx軸方向に互い違いに配置されるように形成されている。ここで図3を参照すると、図3に示す断面においては、それぞれx軸方向に延びる複数の第1の流路22aと複数の第2の流路24aとがz軸方向に互い違いに配置されるように形成されている。第2の隔壁構造20においても、これらの第1の流路22aは、互いに連通して複雑で入り組んだラビリンスを成す、第1の流体を通す第1の流路空間22を形成し、また、これらの第2の流路24aは、互いに連通して複雑で入り組んだラビリンスを成す、第2の流体を通す第2の流路空間24を形成している。
【0028】
第3の隔壁構造30においても、複数の第1の流路32aと複数の第2の流路34aとが互い違いに形成されている。第3の隔壁構造30は、第1の隔壁構造10と連続的に接続する図示左側部分から、第2の隔壁構造20と連続的に接続する図示右側部分にかけて、第1の周期曲面(本例ではSchwarz・P曲面)の形状から第2の周期曲面(本例ではGyroid曲面)の形状に連続的に形状が変化している。換言すれば、第3の隔壁構造30は、図示左側の第1の隔壁構造10と連続的に接続する境界面(第1の面)と、図示右側部分の第2の隔壁構造20と連続的に接続する境界面(第2の面)とを有し、第1の面から第2の面にかけて、第1の周期曲面(本例ではSchwarz・P曲面)の形状から第2の周期曲面(本例ではGyroid曲面)の形状に連続的に形状が変化する第2の周期曲面の形状を有している。これに伴い、第3の隔壁構造30の第1の流路32aの形状は、第1の隔壁構造10に接する図示左側の境界面部分では第1の周期曲面(本例ではSchwarz・P曲面)に基づいて形成される形状を有し、第2の隔壁構造20に接する図示右側の境界面部分では第2の周期曲面(本例ではGyroid曲面)に基づいて形成される形状を有しており、それらの中間部分では一方の形状から他方の形状に連続的に変化する形状を有している。第3の隔壁構造30においても、これらの第1の流路32aは、互いに連通して複雑で入り組んだラビリンスを成す、第1の流体を通す第1の流路空間32を形成し、また、これらの第2の流路34aは、互いに連通して複雑で入り組んだラビリンスを成す、第2の流体を通す第2の流路空間34を形成している。
【0029】
図4(a)は図1に示した構造体の第1の流路空間に第1の流体を充填した状態を示す図であり、図4(b)は図1に示した構造体の第2の流路空間に第2の流体を充填した状態を示す図である。図4(a)には、構造体1の各隔壁構造10,20,30に形成された第1の流路空間12,22,32が互いに連通して第1の流体が通ることが可能になっていることが示されている。また、図4(b)には、構造体1の各隔壁構造10,20,30に形成された第2の流路空間14,24,34が互いに連通して第2の流体が通ることが可能になっていることが示されている。
【0030】
ここで、第1の周期曲面(本例ではSchwarz・P曲面)の形状から第2の周期曲面(本例ではGyroid曲面)の形状に連続的に形状が変化する第3の周期曲面の形状を有する第3の隔壁構造30を生成する手法について説明する。
【0031】
一般に、陰関数によって表現される曲面に厚みtを持たせてシェル化させたとき、シェル化された陰関数は、
Shell(f(x,y,z),t)=|f(x,y,z)|-t
によって表現される。
【0032】
また、2以上の陰関数の合成は、それぞれ下記のように表現される。
・2つの陰関数f(x,y,z),f(x,y,z)の合成
h(x,y,z)=s(x,y,z)+s(x,y,z)
+s=1, s,s≧0
・3つの陰関数f(x,y,z),f(x,y,z),f(x,y,z)の合成
h(x,y,z)=s(x,y,z)+s(x,y,z)+s(x,y,z)
+s+s=1, s,s,s≧0
・n個の陰関数f(x,y,z),f(x,y,z),・・・,f(x,y,z)の合成
h(x,y,z)=s(x,y,z)+s(x,y,z)+・・・+s(x,y,z)
+s+・・・+s=1, s,s,・・・,s≧0
【0033】
次に、上記の第3の隔壁構造30のように、第1の周期曲面(Schwarz・P曲面)の形状から第2の周期曲面(Gyroid曲面)の形状に連続的に形状が変化する場合について説明すると、シェル化したSchwarz・P曲面及びGyroid曲面の陰関数は、それぞれ、以下のように表現される。
shell(x,y,z)=Shell(P(x,y,z),t)
shell(x,y,z)=Shell(G(x,y,z),t)
【0034】
そして、図1等に示す座標系におけるx軸方向の位置x(xmin→xmax)においてSchwarz・P曲面からGyroid曲面へ連続的に変化する陰関数Mix(x,y,z)は、一例として以下のように表現される。
Mix(x,y,z)=(1-s)Pshell(x,y,z)+sGshell(x,y,z)
s=(x-xmin)/(xmax-xmin
ただし、xminはx軸上の第1の隔壁構造10と第3の隔壁構造30との接続位置を示し、xmaxはx軸上の第3の隔壁構造30と第2の隔壁構造20との接続位置を示す。
【0035】
上記の陰関数Mix(x,y,z)によれば、Pshell(x,y,z)とGshell(x,y,z)との合成比Pshell(x,y,z):Gshell(x,y,z)が、x軸上の位置xminにおける1:0からx軸上の位置xmaxにおける0:1へ一次関数的に連続的に変化することが理解できる。したがって、陰関数Mix(x,y,z)に基づいて、第1の隔壁構造10の第1の周期曲面(Schwarz・P曲面)の形状から第2の隔壁構造20の第2の周期曲面(Gyroid曲面)の形状に連続的に変化する第3の周期曲面で構成される第3の隔壁構造30を生成することができる。
【0036】
なお、ある周期曲面から他の周期曲面へ連続的に変化する曲面を表現する陰関数としては、上記のような一次関数の他にも、2次関数・3次関数等のn次関数、多項式関数、三角関数等を始めとする任意の関数を、単独であるいは任意に組み合わせて用いることができる。
【0037】
隔壁構造を構成する周期曲面の種類・形状が異なれば、それぞれの隔壁構造が形成する第1及び第2の流路の形状や流路径等も異なるため、隔壁構造を例えば熱交換器に用いた場合には、熱交換特性、圧力損失特性、耐圧特性等が異なることとなる。より具体的には、周期曲面を表現する陰関数に表れるCos項とSin項との積の次元がそれに基づいて形成される隔壁構造の流路径に関係しており、周期曲面を表現する陰関数に表れるCos項とSin項との積の次数が高くなるほど流路径が小さくなる。そのため、Cos項とSin項との積の次数が低い陰関数で表現される周期曲面で構成される隔壁構造は流路径が比較的大きいことから流体流動性に優れ(圧力損失が少ない)、Cos項とSin項との積の次数が高い陰関数で表現される周期曲面で構成される隔壁構造は流路径が比較的小さいことから隣接する2つの異なる流体間の熱伝達特性に優れる(熱交換効率が高い)といった、互いに異なる特性を有する。
【0038】
本実施形態の構造体1の例では、第1の隔壁構造10は、Cos項とSin項との積が1次式で表される第1の周期曲面(Schwarz・P曲面)に基づいて構成されており流路径が比較的大きいことから、流体流動性に優れる(圧力損失が少ない)。一方、第2の隔壁構造20は、Cos項とSin項との積が2次式で表される第2の周期曲面(Gyroid曲面)に基づいて構成されており流路径が比較的小さいことから、隣接する2つの異なる流体間の熱伝達特性に優れる(熱交換効率が高い)。そして、第3の隔壁構造30は、第1の周期曲面(Schwarz・P曲面)から第2の周期曲面(Gyroid曲面)に連続的に変形する第3の周期曲面に基づいて、第1の隔壁構造10と第2の隔壁構造20との間を連続的に接続するように構成されている。したがって、本実施形態の構造体1は、これら3つの異なる周期国面に基づいた隔壁構造10,20,30毎に異なる特性を備えている。
【0039】
そのため、一例として、図1等に示す構造体1の第1の隔壁構造10の図示左側の端面から第1の流路空間12内に第1の流体を流入させ、第1の隔壁構造10から第3の隔壁構造30、さらには第2の隔壁構造20を通して、第2の隔壁構造20の図示右側の端面から流出させる場合には、流体の入口領域では圧力損失を抑える一方で、出口領域に向かうに連れて熱交換効率を高めるといったように、構造体1の熱交換特性に分布及び勾配の幅を持たせることができる。
【0040】
特に、第3の隔壁構造30は、第1の周期曲面(Schwarz・P曲面)から第2の周期曲面(Gyroid曲面)に連続的に変形する第3の周期曲面に基づいて、第1の隔壁構造10と第2の隔壁構造20との間を連続的に接続するように構成されているので、第3の隔壁構造30の内部において流路の種類・形状、流路径が次第に変化することから、第3の隔壁構造30内部における特性(例えば熱交換器の場合には、圧力損失、熱伝達率、耐圧、比重等の各種特性)を変化させることができる。さらに、上記のように構成された第3の隔壁構造30は、形状が次第に変化する方向(図示x軸方向)に対して直交する方向(y軸・z軸方向)においては周期性を維持した状態に形成されるので、熱交換器に用いられる場合の単位構造としての各種性能を算出しやすいという利点がある。
【0041】
[変形例]
次に、本実施形態の構造体1の変形例について説明する。
【0042】
<第1の変形例>
図5は、本開示の一実施形態に係る構造体の第1の変形例を示す斜視図である。また、図6(a)は図5に示した構造体の第1の流路空間に第1の流体を充填した状態を示す図であり、図5(b)は図5に示した構造体の第2の流路空間に第2の流体を充填した状態を示す図である。
【0043】
本変形例に示す構造体1Aは、図示左側のyz面に沿った第1の面における第1の周期曲面(Schwarz・P曲面)の形状から、構造体1Aの中央部における図示右側のyz面に沿った第2の面における第2の周期曲面(Gyroid曲面)の形状に連続的に形状が変化する周期曲面に基づいて形成された第1の部分40aと、上記第2の面における第2の周期曲面(Gyroid曲面)の形状から、図示右側のyz面に沿った第3の面における第3の周期曲面(Schwarz・D曲面)の形状に連続的に形状が変化する周期曲面に基づいて形成された第2の部分40bとを有する隔壁構造40で形成されている。上記の第2の面は第1の部分40aと第2の部分40bとの境界面である。隔壁構造40は、第1の流体を通す複数の第1の流路が互いに連通して形成される第1の流路空間42と、第2の流体を通す複数の第2の流路が互いに連通して形成される第2の流路空間44とを形成している。
【0044】
図6(a)には、隔壁構造40の第1の流路空間42が連通して第1の流体が通ることが可能になっていることが示されている。また、図6(b)には、隔壁構造40の第2の流路空間44が連通して第2の流体が通ることが可能になっていることが示されている。
【0045】
本変形例の構造体1Aにおける隔壁構造40も、上述した手法を用いて構成することができる。なお、TPMSであるSchwarz・D曲面は下記の陰関数D(x,y,z)によって表現される。
D(x,y,z)=sin(x)sin(y)sin(z)+cos(x)cos(y)cos(z)
【0046】
上記の陰関数D(x,y,z)によって表現されるように、隔壁構造40の第2の部分40bの図示右側の端面は、Cos項とSin項との積が3次式で表される第3の周期曲面(Schwarz・D曲面)に基づいて構成されている。したがって、隔壁構造40の第2の部分40bの図示右側の部分では、Cos項とSin項との積が2次式で表される第2の周期曲面(Gyroid曲面)に基づいて構成された隔壁構造40の第2の部分40bの図示左側部分の流路径よりもさらに流路径が小さくなることから、隔壁構造40の第2の部分40bの図示左側部分よりもさらに熱伝達特性に優れる(熱交換効率がさらに高い)。
【0047】
本変形例による構造体1Aは、図1等に示す構造体1の第1の隔壁構造10(Schwarz・P曲面:1次式)の一番大きい流路径の流路と、第2の隔壁構造20(Gyroid曲面:2次式)の2番目に大きい流路径の流路とに加えて、Schwarz・D曲面(3次式)に基づいて形成される3番目に大きい流路径の流路を備えるので、流路径の大きさが3段階に変化することとなり、一番大きい流路径と一番小さい流路径との比をより大きくして、構造体1A内における熱交換に関する特性の分布・勾配の幅をより大きくすることができる。
【0048】
<第2の変形例>
図7(a)は本開示の一実施形態に係る構造体の第2の変形例を示す斜視図であり、図7(b)は図(a)に示した構造体の平面図である。
【0049】
図1図3に示した構造体1及び図5に示した構造体1Aの各隔壁構造は、単位ユニットサイズにおける周期曲面の繰り返し数が同じとなるように構成されている。より具体的には、いずれの隔壁構造も、単位ユニットサイズにおける周期曲面の繰り返し数が1周期となるように構成されている。これに対し本変形例は、単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が異なる2以上の周期曲面を連続的に変化させて形成された隔壁構造を含む構造体1Bを提供する。
【0050】
図7(a)及び図7(b)に示す本変形例の構造体1Bは、図示左側のyz面に沿う端面(第1の面)から図示x軸に沿って第1の面と平行に位置する第2の面にかけて、単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が1周期の第1の周期曲面(Schwarz・D曲面)の形状から単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が2周期の第2の周期曲面(Gyroid曲面)の形状に連続的に変形する周期曲面に基づいて形成された第1の部分50aと、第2の面から図示x軸に沿って第2の面と平行に位置する第3の面にかけて、単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が2周期の第2の周期曲面(Gyroid曲面)の形状から単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が2周期の第3の周期曲面(Schwarz・D曲面)の形状に連続的に変形する周期曲面に基づいて形成されたに第2の部分50bと、第3の面から図示x軸に沿って第3の面と平行に位置する第4の面にかけて、単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が2周期の第3の周期曲面(Schwarz・D曲面)の形状から単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が4周期の第4の周期曲面(Gyroid曲面)の形状に連続的に変形する周期曲面に基づいて形成された第3の部分50cと、第4の面から図示x軸に沿って第4の面と平行に位置する第5の面(図示右側の端面)にかけて、単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が4周期の第4の周期曲面(Gyroid曲面)の形状から単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が4周期の第5の周期曲面(Schwarz・D曲面)の形状に連続的に変形する周期曲面に基づいて形成された第4の部分50dとを有する隔壁構造50で形成されている。ここで、上記の第2の面は第1の部分50aと第2の部分50bとの境界面であり、第3の面は第2の部分50bと第3の部分50cとの境界面であり、第4の面は第3の部分50cと第4の部分50dとの境界面である。隔壁構造50は、第1の流体を通す複数の第1の流路が互いに連通して形成される第1の流路空間52と、第2の流体を通す複数の第2の流路が互いに連通して形成される第2の流路空間54とを形成している。
【0051】
隔壁構造によって形成される2つの流路の流路径は、単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が小さいほど大きく、周期繰り返し数が大きいほど小さくなる。また、隔壁構造によって形成される2つの流路の流路径は、流路を形成する周期曲面を表す陰関数におけるCos項とSin項との積の次数が高いほど小さくなる。そのため、本変形例の構造体1Bでは、隔壁構造50の、単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が1周期の第1の周期曲面(Schwarz・D曲面)の形状から単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が2周期の第2の周期曲面(Gyroid曲面)の形状に変形する第1の部分50aにおける流路径が一番大きく、単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が1周期の第4の周期曲面(Gyroid曲面)の形状から単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が1周期の第5の周期曲面(Schwarz・D曲面)の形状に変形する第4の部分50dにおける流路径が一番小さい。したがって、隔壁構造50によって形成される2つの流路の流路径は、第1の部分50aから第4の部分50dに向かうに連れて次第に小さくなる。
【0052】
このように、本変形例の構造体1Bの隔壁構造50は、互いに異なる周期曲面を、単位ユニットサイズにおける周期繰り返し数が次第に多くなるように連続的に変化させるようにして形成されているので、隔壁構造50によって形成される2つの流路の一方の端部(図5の図示左側)における流路径と、他方の端部(図5の図示右側)における流路径との比をより大きくすることができる。これにより、構造体1Bの内部における熱交換特性の分布・勾配の幅をより大きくすることが可能となる。
【0053】
<第3の変形例>
図8は、本開示の一実施形態の第3の変形例に係る構造体を一部破断した状態で示す正面図である。図9図8に示した構造体の斜視図であり、図10図8に示した構造体の全体を示す斜視図である。
【0054】
図8に示すように、本変形例における構造体1Cは、図示左側のyz面に沿う端面(第1の面)から図示x軸に沿って第1の面と平行に位置する第2の面にかけて、第1の周期曲面(Schwarz・P曲面)の形状から第2の周期曲面(Gyroid曲面)の形状に連続的に変形する周期曲面に基づいて形成された第1の部分60aと、第2の面から図示x軸に沿って第2の面と平行に位置する第3の面にかけて、第2の周期曲面(Gyroid曲面)の形状から第3の周期曲面(Schwarz・D曲面)の形状に変形する周期曲面に基づいて形成された第2の部分60bと、第3の面から図示x軸に沿って第3の面と平行に位置する第4の面との間に、第3の周期曲面(Schwarz・D曲面)に基づいて形成された第3の部分60cと、第4の面から図示x軸に沿って第4の面と平行に位置する第5の面にかけて、第3の周期曲面(Schwarz・D曲面)の形状から第4の周期曲面(Gyroid曲面)の形状に連続的に変形する周期曲面に基づいて形成された第4の部分60dと、第5の面から図示x軸に沿って第5の面と平行に位置する第6の面(図示右側の端面)にかけて、第4の周期曲面(Gyroid曲面)の形状から第5の周期曲面(Schwarz・P曲面)の形状に連続的に変形する周期曲面に基づいて形成された第5の部分60eとを有する隔壁構造60を備えている。ここで、上記の第2の面は第1の部分60aと第2の部分60bとの境界面であり、第3の面は第2の部分60bと第3の部分60cとの境界面であり、第4の面は第3の部分60cと第4の部分60dとの境界面であり、第5の面は第4の部分60dと第5の部分60eとの境界面である。
【0055】
隔壁構造60は、第1の流体を通す複数の第1の流路が互いに連通して形成される第1の流路空間62と、第2の流体を通す複数の第2の流路が互いに連通して形成される第2の流路空間64とを形成している。第1の周期曲面(Schwarz・P曲面)、第2の周期曲面(Gyroid曲面)、第3の周期曲面(Schwarz・D曲面)、第4の周期曲面(Gyroid曲面)、第5の周期曲面(Schwarz・P曲面)のCos項とSin項との積の次数は、それぞれ、1次、2次、3次、2次、1次であるので、隔壁構造60が形成する第1及び第2の流路の流路径は、第1の部分60aから第3の部分60cに向かうに連れて次第に小さくなり、第3の部分60cから第5の部分60eに向かうに連れて次第に大きくなる。
【0056】
図8及び図9に加えて図10を参照すると、構造体1Cはさらに、隔壁構造60を収容する空間を形成する周囲壁面66を有する。周囲壁面66は、隔壁構造60の図示zx平面に沿った両面全体と、図示xy平面に沿った下側面の全体及び上側面の一部とに接している。周囲壁面66が隔壁構造60に接する部分では、隔壁構造60の第1及び第2の流路の端部が周囲壁面66によって閉じられている。
【0057】
周囲壁面66は、隔壁構造60の図示左右側の端部との間にそれぞれ第1及び第2の空間66a,66bを形成している。第1の空間66aには隔壁構造60の第1の部分60aの図示左側面が露出し、第2の空間66bには隔壁構造60の第5の部分60eの図示右側面が露出している。第1の部分60aの図示左側面においては、各々の第2の流路の開口部が閉じるように形成され、第5の部分60eの図示右側面においては、各々の第2の流路の開口部が閉じるように形成されている。周囲壁面66の第1及び第2の空間66a,66bを形成する部分には、それぞれ、第1及び第2の開口部62a,62bが設けられている。
【0058】
また、周囲壁面66は、隔壁構造60の図示上側に第3及び第4の空間66c,66dを形成している。第3の空間66cには隔壁構造60の第1及び第2の部分60a,60bの一部が露出し、第4の空間66dには隔壁構造60の第4及び第5の部分60d,60eの一部が露出している。第3の空間66cに露出している第1及び第2の部分60a,60bの一部においては、各々の第1の流路の開口部が閉じるように形成され、第4の空間66dに露出している第4及び第5の部分60d,60eの一部においては、各々の第1の流路の開口部が閉じるように形成されている。周囲壁面66の第3及び第4の空間66c,66dを形成する部分には、それぞれ、第3及び第4の開口部64a,64bが設けられている。
【0059】
このように構成された構造体1Cによれば、例えば、第1の開口部62aから構造体1C内に第1の流体を流入させると、第1の流体は第1の空間66aを経て隔壁構造60の第1の部分60aの図示左側面において開口している各第1の流路から隔壁構造60内に流入し、隔壁構造60内の第1の部分60aから第5の部分60eにわたって連通している第1の流路空間62を通って、隔壁構造60の第5の部分60eの図示右側面から第1の空間66b内に流れ出て、最後に第2の開口部62bから構造体1Cの外部に流出する。一方、第3の開口部64aから構造体1C内に第2の流体を流入させると、第1の流体は第3の空間66cを経て、第3の空間66cに露出している隔壁構造60の第1及び第2の部分60a,60bの一部の図示上側面において開口している各第2の流路から隔壁構造60内に流入し、隔壁構造60内の第1の部分60aから第5の部分60eにわたって連通している第2の流路空間64を通って、第4の空間66dに露出している隔壁構造60の第4及び第5の部分60d,60eの一部の図示上側面から第4の空間66d内に流れ出て、最後に第4の開口部62dから構造体1Cの外部に流出する。なお、第1及び第2の流体をそれぞれ上記とは逆方向に流しても良いし、各流路を流す第1及び第2の流体を入れ替えてもよい。
【0060】
第1の流路空間62に流れる第1の流体と、第2の流路空間64を流れる第2の流体とに温度差がある場合、一方の流体が有する熱が、各流路空間62,64を隔てる隔壁構造60の壁を伝導して、他方の流体へ伝達する。これにより、一方の流体が他方の流体によって加熱され、逆に他方の流体が一方の流体によって冷却される熱交換が行われる。このように、本変形例の構造体1Cは熱交換の用途として機能し得る。本変形例の構造体1Cは、例えば、各種工業用の熱交換器や、航空エンジン、発電プラント等で用いられる熱交換器にも適用可能である。
【0061】
隔壁構造60の第1及び第5の部分60a,60eは、Cos項とSin項との積が1次式で表されるSchwarz・P曲面から2次式で表されるGyroid曲面に変形する部分であり、それによって形成される第1及び第2の流路の流路径は比較的大きい。そのため、特に、第1及び第3の空間66a,66cから隔壁構造60内に流体が流入する際の圧力損失を抑えることができる。
【0062】
一方、隔壁構造60の第3の部分60cは、Cos項とSin項との積が3次式で表されるSchwarz・D曲面に基づいて形成されており、それによって形成される第1及び第2の流路の流路径は比較的小さいため、第1及び第2の流体との熱伝達特性を高めることができる。
【0063】
このように、本変形例の構造体1Cは、複数の異なる周期曲面の間で連続的に変形する周期曲面に基づいて形成された隔壁構造60で構成されているので、隔壁構造60内に熱交換に関する各種特性の分布・勾配の幅を持たせることができる。
【0064】
本実施形態及び各変形例の構造体の一部又は全部は、例えば、付加製造技術を用いて樹脂材料もしくは金属材料等によって形成することが可能である。付加製造技術としては、一例として、3D印刷技術、光硬化性樹脂を用いた光造形技術等を用いることができる。ただし、本実施形態の構造体の製造に付加製造技術を用いることは必須ではなく、構造体が他の製造技術(例えば、切削、モールド成形、射出成形、粉末圧縮成形、レーザー加工等)で製造できる形状である場合には、付加製造技術以外のこれらの製造技術を用いて製造してもよい。
【0065】
以上、開示の実施形態及び変形例を通じて本開示を説明したが、上述の実施形態及び変形例は、請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本開示の実施形態及び変形例の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本開示の技術的範囲に含まれ得る。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の流路が互いに連通して形成される第1の流路空間と、複数の第2の流路が互いに連通して形成される第2の流路空間とを互いに隔てた状態で形成する隔壁構造を有する構造体