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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135296
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20230921BHJP
   H01H 9/54 20060101ALI20230921BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230921BHJP
【FI】
H02M7/12 N
H01H9/54 F
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040434
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】汪 盛沛
【テーマコード(参考)】
5G034
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5G034AB01
5G034AC20
5H006BB05
5H006CC08
5H006DB01
5H006DC05
5H006FA02
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA10
5H770HA03W
5H770JA11W
5H770JA14W
5H770JA17W
5H770LA02W
5H770LA08W
(57)【要約】
【課題】コンバータから直流電力が出力される直流バスにおける二次的な突入電流を好適に抑制する。
【解決手段】コンバータから直流電力が出力される直流バスの電流を制御する制御装置であって、コンバータから直流バスへの直流電力の出力が開始されたときの突入電流を抑制するための防止回路であって、該直流バスの正極側又は負極側に接続された抵抗と、該抵抗に対して並列に配置されたリレーとを含む防止回路と、リレーがオフにされた状態でコンバータからの直流電力の出力が開始された以降における、直流バスにおける正極側と負極側との間のPN電圧を検出する第1検出部と、コンバータに入力される交流電圧を検出する第2検出部と、第1検出部により検出されるPN電圧と第2検出部により検出される交流電圧とに基づいて、リレーをオフ状態からオン状態に切り替える制御部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバータから直流電力が出力される直流バスの電流を制御する制御装置であって、
前記コンバータから前記直流バスへの直流電力の出力が開始されたときの突入電流を抑制するための防止回路であって、該直流バスの正極側又は負極側に接続された抵抗と、該抵抗に対して並列に配置されたリレーとを含む防止回路と、
前記リレーがオフにされた状態で前記コンバータからの直流電力の出力が開始された以降における、前記直流バスにおける正極側と負極側との間のPN電圧を検出する第1検出部と、
前記コンバータに入力される交流電圧を検出する第2検出部と、
前記第1検出部により検出される前記PN電圧と前記第2検出部により検出される前記交流電圧とに基づいて、前記リレーをオフ状態からオン状態に切り替える制御部と、
を備える、制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2検出部により検出される前記交流電圧と前記第1検出部により検出される前記PN電圧との差分が所定の閾値より低くなったタイミングで、前記リレーをオフ状態からオン状態に切り替える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記差分が前記所定の閾値より低くなる前に、前記PN電圧の時間微分値が所定値より小さくなった場合には、前記リレーをオフ状態からオン状態に切り替える、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記直流バスから直流電力の供給を受けて電動機を駆動するための駆動電流を生成するインバータを備えるドライバユニットである、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記コンバータと前記直流バスを含む、
請求項4に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバータから直流電力が出力される直流バスの電流を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の電動機を駆動する電源システムとして、直流バスを有するシステムは広く利用されている。この直流バスに対して、直流電力を利用する様々な装置が接続されることで、安定した電力の供給が実現するために、直流バスに対してコンデンサが備えられる場合がある。このような直流バスに供給される直流電力は、入力された交流電力を直流電力に変換するコンバータによって生成される場合がある。そして、コンバータにより直流電力の供給が開始された直後等においては、直流バスに直流電圧が急に印加されることになるため、急峻なパルス状の突入電流が直流バスを流れる場合がある。突入電流は局所的な昇温等を引き起こし、好ましいものではない。そこで、従来技術では、直流バスに突入電流のピーク値を抑制するための防止回路が設けられる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、直流バスに設けられた突入電流によって電源リレーの接点が溶着するのを防止するために、突入電流防止回路のバス電圧に基づいてリレーのオン、オフ制御を行う構成が開示されている。また、特許文献2や特許文献3にも、直流バスに接続されるコンデンサの端子間電圧に基づいてリレーのオン、オフ制御を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-101345号公報
【特許文献2】特開平6-245485号公報
【特許文献3】特開2011-182568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、直流バスにおける突入電流のピーク値を抑制するために、抵抗とリレーを組み合わせた防止回路が使用されることが多い。防止回路では、突入電流が発生する期間においては直流バスに防止回路中の抵抗が接続されることで、突入電流のピーク抑制が図られる。一方で、直流バスに当該抵抗が接続されたままとなると、直流バスの電力が無駄に消費されることになるため、突入電流のピーク値がある程度低下したタイミングでリレーを切り替えて、実質的に抵抗を直流バスから切り離す。
【0006】
上記のように防止回路を使用することで突入電流のピーク値をある程度抑制することは可能である。しかし、リレーを切り替え得るタイミングで、直流バスにおける電流の流れが急に切り替わることになり、二次的な突入電流が生じる可能性がある。特に、直流バスは、そこに直流電力を出力するコンバータ動作の影響も受けることから、二次的な突入電流を好適に抑制するためには、直流バスのみの電気的な状態を考慮するだけでは不十分なおそれがある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、コンバータから直流電力が出力される直流バスにおける二次的な突入電流を好適に抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願開示の一側面に係る制御装置は、コンバータから直流電力が出力される直流バスの電流を制御する制御装置であって、前記コンバータから前記直流バスへの直流電力の出力が開始されたときの突入電流を抑制するための防止回路であって、該直流バスの正極側又は負極側に接続された抵抗と、該抵抗に対して並列に配置されたリレーとを含む防止回路と、前記リレーがオフにされた状態で前記コンバータからの直流電力の出力が開始された以降における、前記直流バスにおける正極側と負極側との間のPN電圧を検出する第1検出部と、前記コンバータに入力される交流電圧を検出する第2検出部と、前記第1検出部により検出される前記PN電圧と前記第2検出部により検出される前記交流電圧とに基づいて、前記リレーをオフ状態からオン状態に切り替える制御部と、を備える。
【0009】
本願開示の制御装置は、コンバータから直流電力が出力される直流バスにおける電流を制御する制御装置である。一般的に、直流バスでは、コンバータから直流電力の供給が開始された直後において、突入電流が流れる場合がある。突入電流は、パルス状の電流であり、そのピーク値が比較的大きいため直流バスに接続される電気機器に対して好ましくない影響を及ぼす可能性がある。そこで、本願開示の制御装置は、抵抗とリレーとを含む防止回路を備える。コンバータからの直流電力の出力開始時においては、リレーがオフ状態とされることで、当該出力開始に起因する突入電流は、防止回路の抵抗に流れ込むことになり、突入電流のピーク値をより低く抑制することができる。したがって、防止回路は、コンバータの出力部が直流バスに接続される部位の近傍(コンデンサの前)に設けられることで、直流バスの下流側(コンバータから遠位側)において突入電流の影響を可及的に軽減することができる。
【0010】
防止回路の抵抗により突入電流のピーク値は低下していくが、その後の当該抵抗によるエネルギーの消費を避けるために、防止回路においてはリレーをオフ状態からオン状態に切り替える必要がある。これにより直流バスを流れる電流が当該抵抗を回避でき、以て、直流バスにおけるエネルギーロスを回避できる。ここで、防止回路におけるリレーのオフ状態からオン状態への切替(以下、単に「リレー切替」ともいう)に起因して、二次的な突入電流が発生する可能性がある。この二次的な突入電流のピーク値も比較的高いため、リレーの接点寿命及び周辺機器への影響があるため、そのピーク値をより低く抑制するのが好ましい。
【0011】
そこで、本願開示の制御装置は、第1検出部と第2検出部とを備え、それぞれによりPN電圧とコンバータに入力される交流電圧が検出される。PN電圧は、直流バスに直接関連する要素である。また、上記交流電圧は、直流バスに直流電力を出力するコンバータの動作に強い関連性を有する要素である。したがって、防止回路のリレーのオン動作に起因する二次的な突入電流については、そのオン動作を実行するタイミングを、抵抗でのエネルギー消費がいたずらに長くならず且つ二次的な突入電流のピークが低くなるタイミング、すなわち、オン動作の実行開始時点において、リレーの端子間の電位差を可及的に小さくすることが重要である。そして、本出願人は、当該電位差には、上記のPN電圧と交流電圧の2つの要素が強い関連性を有していることを見出した。そこで、制御部によって、第1検出部と第2検出によって検出された当該PN電圧及び当該交流電圧に基づいて、防止回路におけるリレー切替が実行される。
【0012】
このような構成により、防止回路のリレー切替に起因する二次的な突入電流を好適に抑制することが可能となる。なお、制御装置の一例として、前記直流バスから直流電力の供給を受けて電動機を駆動するための駆動電流を生成するインバータを備えるドライバユニットであってもよい。制御装置であるドライバユニットは、一台又は複数台の電動機を駆動可能なインバータを備えていてもよい。なお、ドライバユニットである前記制御装置は、前記コンバータと前記直流バスを含んで構成されてもよい。更に別法として、制御装置
として、コンデンサにより直流バスの電圧変動を調整するためのコンデンサユニットを例示することもできる。制御装置は、これらの装置以外の構成を有するものであっても構わない。
【0013】
また、上記の制御装置において、前記制御部は、前記第2検出部により検出される前記交流電圧と前記第1検出部により検出される前記PN電圧との差分が所定の閾値より低くなったタイミングで、前記リレーをオフ状態からオン状態に切り替えてもよい。本出願人は、当該差分が、二次的な突入電流のピーク値に強い関連性を有することを見出した。そこで、当該差分が所定の閾値より低くなるタイミングをリレー切替タイミングとすることで、コンバータによる直流電力の出力開始に起因する突入電流だけではなく、二次的な突入電流のピーク値も好適に抑制することができる。なお、コンバータに入力されるのは交流電圧のため時間変動するが、PN電圧との差分を算出する際には、所定位相の交流電圧値(例えば、ピーク電圧値)をその代表値として利用すればよい。
【0014】
また、上記所定の閾値は、直流バスに接続されるコンバータや防止回路の電気的特性を考慮して決定することができる。別法として、上記所定の閾値は、可変調整されてもよい。例えば、直流バスにおける二次的な突入電流のピーク値に関連するパラメータが存在する場合、当該パラメータに応じて所定の閾値を可変調整することができる。当該パラメータとしては、直流バスの温度等が例示できる。
【0015】
上述までの制御装置において、前記制御部は、前記差分が前記所定の閾値より低くなる前に、前記PN電圧の時間微分値が所定値より小さくなった場合には、前記リレーをオフ状態からオン状態に切り替えてもよい。PN電圧の時間微分値、すなわち変化速度が小さくなっていくと、上記差分が所定の閾値より低い状態に至るまでに要する時間が長くなり、結果として、防止回路の抵抗で消費されるエネルギー量が増加してしまうおそれがある。そこで、このような無駄なエネルギー消費を回避するために、PN電圧の時間微分値が所定値より小さくなった場合には、差分が所定の閾値より低くなっていない場合でもリレーをオフ状態からオン状態に切り替えるのが好ましい。当該所定値は、抵抗によるエネルギー消費と二次的な突入電流による悪影響とのバランスを考慮して決定するのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
コンバータから直流電力が出力される直流バスにおける二次的な突入電流を好適に抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電力供給システムの概略構成を示す図である。
図2図1に示す電力供給システムに含まれるドライバユニット及びコンデンサユニットの回路構成を概略的に示す図である。
図3図2に示す電力供給システムにおいて、突入電流を抑制するための処理の流れを示すフローチャートである。
図4図3に示す処理が行われた際の、突入電流の挙動を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細を説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。本願開示では、制御装置の一つの例示的形態として、モータを駆動するための駆動電力の供給を行うためのドライバユニットとコンデンサユニットを示すが、これら以外の装置にも本願開示の制御装置に関する技術思想を適用することができる。
【0019】
図1は、モータに駆動電力を供給する電力供給システムの概略構成を示す図である。当該電力供給システムは、コンバータ10、コンデンサユニット15、ドライバユニット20で構成される。コンバータ10は、交流電源7からケーブル7aを経て交流電力の供給を受けて直流電力を出力する。出力された直流電力は、コンバータ10に隣接するように配置されたコンデンサユニット15とドライバユニット20に直流バス11(後述の図2を参照)を通して供給される。この直流バス11は、直流電力の通電経路であり、コンバータ10、コンデンサユニット15、ドライバユニット20の間に形成される。コンデンサユニット15とドライバユニット20のそれぞれが、本願開示の制御装置に相当する。
【0020】
ドライバユニット20は、図示しないPLC(Programmable Logic Controller)等)か
らの指令に基づいて、モータ2のサーボ制御を司る。ドライバユニット20の制御部210(後述の図2を参照)は、演算処理を司るCPUやメモリを有するコンピュータであり、そこで所定の制御プログラム等を実行することで様々な機能を発揮することができる。例えば、制御部210は、ネットワークを介して上位装置からモータ2の動作(モーション)に関する動作指令信号と、モータ2に搭載されたエンコーダから検出信号とを受けとって、モータ2の駆動に関するサーボ制御に関する指令値を算出する。そして、ドライバユニット20は、その算出された指令値に応じて、対応するモータを駆動するための駆動電力を、動力線2aを介してモータ2に供給する。なお、制御部210は、直流バス11、21を流れる突入電流を抑制するための処理に関する制御も実行するように構成されるが、その詳細については後述する。更に、制御部210は、モータ2に関し、これらの制御以外の制御も司るように構成されてもよい。
【0021】
また、コンデンサユニット15は、内部にモータ2からの回生電力を蓄電可能なコンデンサ155を有するユニットである。当該コンデンサ155に回生電力を蓄電することで、モータ2の回生時に直流バス11、151の電圧が過度に上昇することを抑制でき、また、蓄電した電力をモータ2の駆動に利用することができる。電力供給システムの構築に当たって、コンデンサユニット15は必須の構成ではなく、モータ2の動作条件や負荷条件等を考慮してコンデンサユニット15の利用の有無やコンデンサユニット15に内蔵されるコンデンサ155の容量等を決定すればよい。
【0022】
モータ2は、所定の設備装置を駆動するために、ドライバユニット20によって駆動制御される。ドライバユニット20にはインバータ26が内蔵され、インバータ26によりモータ2の駆動電流が生成される。一例として、設備装置としては、各種の機械装置(例えば、産業用ロボットのアームや搬送装置)が例示でき、モータ2はその設備装置を駆動するアクチュエータとして装置内に組み込まれている。また、モータ2は、ACサーボモータである。別法として、モータ2は誘導モータやDCモータであってもよい。モータ2は、それぞれのロータの回転に連動して回転する検出円盤を有し、ロータの回転状態を検出可能なエンコーダを備える。更には、モータ2はリニアモータでもよく、その場合、可動子の位置検出はリニアエンコーダが用いられる。
【0023】
ここで、図1に示す電力供給システムにおいて、電力供給装置に相当するドライバユニット20及びコンデンサユニット15の構成について、図2に基づいて説明する。当該電力供給システムにおいて、交流電源7から供給された交流電力がコンバータ10により直流電力に変換され、直流バス11に出力される。そして、直流バス11に対してドライバユニット20やコンデンサユニット15が脱着可能に構成されている。したがって、ユーザはメンテナンス等の目的で必要に応じて、直流バス11に接続される装置を取り外したり取り付けたりすることが可能である。
【0024】
ドライバユニット20の内部回路、特に、直流バス11から供給される直流電力が入力
される入力部200の構成について説明する。入力部200は、外部からの直流電力がドライバユニット20内において入力される部位であり、入力部200に入力された直流電力は、下流側に位置するインバータ26に供される。インバータ26そのものは公知の技術によるものであるから、その詳細については説明を割愛する。
【0025】
入力部200において、直流バス21のプラス側経路には、ドライバユニット20が接続される直流バス11にコンバータ10から直流電力が供給され始めたときに、直流バス11から入力部200に突入電流が流れ込むのを防止するための防止回路を構成する、抵抗22とリレー23が設けられている。当該防止回路において、抵抗22とリレー23は並列に接続されており、リレー23がオフの状態ではプラス側経路を流れる電流が抵抗22を通過し、リレー23がオンの状態では電流が抵抗22をバイパスするように流れる。より具体的には、コンバータ10から直流電力が供給され始めた時点ではリレー23はオフ状態となっており、プラス側経路において抵抗22を経て電流が流れることで、突入電流のピーク値が抑制される。そして、その突入電流が検出された後にリレー23がオン状態とされることで、直流バス11からの供給電力が抵抗22によって消費されることを回避できる。なお、当該防止回路による突入電流の抑制処理の詳細については、後述する。別法として、抵抗22に代えてPTC(Positive Temperature Coefficient)を利用でき、また、リレー23に代えて半導体スイッチ素子を利用できる。この点については、後述の抵抗152、リレー153についても同様である。
【0026】
この他に、入力部200には、プラス経路とマイナス経路との間にコンデンサ25が配置されている。コンデンサ25は、直流バス21の電圧変動を許容範囲内に抑えるべく配置され、ドライバユニット20に駆動されるモータ2からの回生電力の蓄電も可能である。また、コンデンサ25に蓄電された電力を放電させるための放電回路24が、プラス経路とマイナス経路との間に接続されている。放電回路24は電力消費のための抵抗と、その抵抗への電圧印加を制御するためのスイッチ回路を有しており、当該スイッチ回路の駆動は、制御部210によって適宜制御される。更に、入力部200において、プラス経路とマイナス経路との間のPN電圧を検出する検出部27が設けられている。検出部27によって検出されたPN電圧は、制御部210に引き渡される。
【0027】
また、電力供給システムでは、コンバータ10に入力される交流電圧(ケーブル7aにおける交流電圧)を検出する検出部8が設けられている。そして、ドライバユニット20の制御部210に対して、検出部8によって検出された交流電圧が送信される。
【0028】
次に、コンデンサユニット15について説明する。コンデンサユニット15は、モータを駆動するためのユニットではないため、ドライバユニット20のようにインバータ26を内蔵はしないが、その入力部150については、ドライバユニット20の入力部200と電気的に概ね同等の構成を有する。すなわち、入力部150は、直流バス151のプラス側経路に設けられた、突入電流の防止回路を構成する抵抗152とリレー153、直流バス151のプラス経路とマイナス経路との間に設けられた、コンデンサ155、放電回路154を有する。
【0029】
このようにドライバユニット20とコンデンサユニット15によって構成される電力供給システムによって、モータ2の駆動制御のための駆動電力の供給や、モータ2からの回生電力の回収等が実現されることになる。ここで、電力供給システムが稼働を開始するタイミング、すなわち、コンバータ10から直流バス11に対して直流電力の供給が開始されるタイミングを想定する。この時点では、ドライバユニット20やコンデンサユニット15が有するコンデンサ25、155には電荷が蓄えられていない。そこで、コンバータ10からの直流電力の出力が開始されると、ドライバユニット20やコンデンサユニット15内の直流バス21、151において、パルス状の突入電流が発生する。このとき、防
止回路のリレー23はオフ状態となっており、したがって突入電流は抵抗22を通ってコンデンサ25が配置されている直流バス21の下流側へと流れていく。
【0030】
突入電流は、そのピーク値が過度に高くなると直流バス21に接続される電気機器等に好ましくない影響を及ぼすため、上記の通りピーク値を抑制すべく抵抗22を通るように防止回路のリレー23が制御されている。しかし、突入電流のピーク値が低くなった状態で抵抗22を通過する状態を維持すると、抵抗22による電力消費の影響が無視できなくなり好ましくない。そこで、突入電流のピーク値がある程度低くなったタイミングで、防止回路のリレー23をオフ状態からオン状態に切り替えて、直流バス21を流れる電流が抵抗22をバイパスできるようにする。しかしながら、防止回路におけるリレー23のオン状態への切替は、電流が流れる経路が瞬間的に変化することになるため、当該切替タイミングで、比較的ピーク値の高いパルス状の電流、すなわち二次的な突入電流が発生する恐れがある。この二次的な突入電流についても、その高いピーク値に起因して直流バス21に接続される電気機器等に好ましくない影響を及ぼすおそれがある。そこで、ドライバユニット20は、二次的な突入電流の抑制を図るための構成を有している。
【0031】
詳細には、制御部210は、図3に示す突入電流の抑制処理を実行するように構成されている。図3は、ドライバユニット20の直流バス21における突入電流の抑制処理の流れを示すフローチャートである。当該抑制処理は、所定間隔のタイミングで制御部210によって繰返し実行される。図4は、図3に示す抑制処理が行われる際の、突入電流に関連する各パラメータの推移を示す図である。図4に示す各パラメータは、(a)及び(A)が、検出部8によって検出される交流電圧ピーク値(線L1、L10で示されるものは3相整流後の電圧値例)と検出部27によって検出されるPN電圧(線L2、L4で示さ
れるもの)を表し、(b)及び(B)が、直流バス21を流れる突入電流を表し、(c)及び(C)が、防止回路におけるリレー23のオン(ON)状態、オフ(OFF)状態の推移を表している。(b)及び(B)に関連し、P1~P4は、突入電流のピークを示している。また、図4において、図面左側に並ぶ(a)~(c)はコンバータ10に印加される直流電圧L1のピーク値が相対的に低いケースの各パラメータの推移を示し、図面右側に並ぶ(A)~(C)はコンバータ10に印加される直流電圧L10のピーク値が相対的に高いケースの各パラメータの推移を示している。両ケースの直流電圧の差はΔV_AC_peakで表されており、例えば、当該電圧差は交流電源7の電圧変動等に起因すると考えられる。
【0032】
ここで、図3に示す突入電流の抑制処理について、図4を参照しながら説明する。なお、電力供給システムにおいてコンバータ10が稼働開始するタイミングでは、防止回路のリレー23はオフ状態とされている。先ず、S101では、コンバータ10が稼働開始し、直流バス11を介してドライバユニット20の直流バス21に電源が投入されたか否かが判定される。電力供給システムにおいて、例えば、コンバータ10、コンデンサユニット15、ドライバユニット20は図示しない上位装置(PLC等)と制御信号線で接続されているので、当該制御信号線を介してドライバユニット20はコンバータ10の稼働状態を把握可能である。S101で肯定判定されると処理はS102へ進み、否定判定されると図3の抑制処理は一度終了される。
【0033】
次にS102では検出部27によってドライバユニット20におけるPN電圧が検出され、S103で検出部8によってコンバータ10に印加される交流電圧が検出される。そして、S104で、S102で検出されたPN電圧とS103で検出された交流電圧とに基づいて、防止回路におけるリレー23をオフ状態からオン状態に切り替える切替タイミングが到来したか否かが判定される。具体的には、交流電圧とPN電圧との差分が、所定の閾値より低くなったときに、当該切替タイミングが到来したと判定することができる。なお、交流電圧は時間変動するため、所定位相時点での電圧値(例えば、振幅値(ピーク
値)の最大値)をその代表値として、交流電圧とPN電圧との差分を算出すればよい。別法として、交流電圧振幅の中心値をその代表値として、交流電圧とPN電圧との差分を算出してもよい。
【0034】
なお、S104における判定条件は、以下の式1で表すことができる。
V_AC_peak-V_PN < VF_D+V_R+Va ・・・(式1)
V_AC_peak:交流電圧のピーク値
V_PN :PN電圧
VF_D :コンバータ10の電気特性に基づく電圧要素
V_R :抵抗22の電気特性に基づく電圧要素
Va :その他の調整要素
式1の右辺の「VF_D+V_R+Va」が上記所定の閾値に相当する。すなわち、S104においては、交流電圧とPN電圧との差分が、直流バス11、21に関連する電気機器の電気特性に基づく閾値より低くなるときに、防止回路のリレー23のオン状態への切替が許可される(肯定判定される)ことになる。そして、S104で肯定判定されると処理はS105へ進み、否定判定されるとS102以降の処理が繰り返される。
【0035】
そして、S105では、S104で肯定判定されたことを踏まえて、リレー23をオフ状態からオン状態に切り替える。このように交流電圧とPN電圧との相関に基づいてリレー23の切替処理を行うことで、コンバータ10に印加される交流電圧の変動の影響をキャンセルさせて、定常的に安定した電圧環境下でリレー23の切替処理が実行されることになる。その結果、リレー23の切替処理に起因する二次的な突入電流のピーク値を、定常的に低い値に抑制することができ、直流バス11、21に接続される電気機器を突入電流から好適に保護することができる。
【0036】
ここで、図4に基づいて、図3の抑制処理の作用効果について説明する。上述したように、図4の左側(a)~(c)は、交流電圧が比較的低いケースに対応し、右側(A)~(C)は、交流電圧が比較的高いケースに対応するものであり、両者の交流電圧の相違は、ピーク電圧でΔV_AC_peakである。ここで、図4におけるタイミングt1は、コンバータ10が稼働開始したタイミングである。したがって、タイミングt1以降に、線L2や線L4で示すように、PN電圧が時間経過とともに立ち上がっていく。また、PN電圧の立ち上がり直後においては、直流バスに急激に電流が流れ始めることになるため、(b)及び(B)に示すように、突入電流のピークP1、P1’が出現することになる。なお、このピークP1、P1’は、防止回路の抵抗22により軽減されたものであるが、図4の右側のケースでは交流電圧が高くなっている分、ピークP1’はピークP1よりも高い値となる。
【0037】
ここで、交流電圧が比較的低いケースにおいて、突入電流が流れ始めて、式1に従った上記S104の判定処理の結果肯定判定されるタイミングが、タイミングt2となり、また、(c)に線L11で示すように防止回路のリレー23が、タイミングt2でオフ状態からオン状態に切り替えられる。このとき、交流電圧とPN電圧の差分は、図4においてV_AC_peak-V_PN(t2)で表されている。この差分は、上記の式1の条件を満たすものである。そして、タイミングt2における二次的な突入電流のピークはP2で表されている。式1に示す所定の閾値を調整することで、防止回路のリレー23の切替タイミングt2と、そのときの二次的な突入電流のピークP2を想定のものに調整することができ、以て、二次的な突入電流による悪影響を好適に回避できる。
【0038】
また、図4において、参考として、防止回路のリレー23の切替タイミングをタイミングt2よりも早いタイミングt3で、(c)に線L12で示すように防止回路のリレー23が、オフ状態からオン状態に切り替えられると、そのタイミングt3で、二次的な突入
電流のピークP3が出現することになる。このとき、交流電圧とPN電圧の差分は、図4においてV_AC_peak-V_PN(t3)で表されており、この差分は、上記の式1の条件を満たしていない。そのため、ピークP3は上記のピークP2よりも大きくなり、二次的な突入電流による悪影響が懸念される。
【0039】
次に、交流電圧が比較的高いケースについて説明する(図4の右側(A)~(C)を参照)。この場合、交流電圧が比較的低いケースと比べて高いため、式1に従った上記S104の判定処理の結果肯定判定されるタイミングが、上記のタイミングt2よりも遅いタイミングt4となる。そして、(C)に線L14で示すように防止回路のリレー23が、タイミングt4でオフ状態からオン状態に切り替えられる。そして、この結果、タイミングt4で、二次的な突入電流のピークP4が出現することになる。このとき、交流電圧とPN電圧の差分は、図4においてV_AC_peak-V_PN(t4)で表されている。この差分は、上記の式1の条件を満たすものであるから、交流電圧が比較的低いケースにおける差分V_AC_peak-V_PN(t2)と概ね同程度となる。その結果、交流電圧が比較的高くなった場合でも、二次的な突入電流のピークP4のピーク値を、交流電圧が比較的低いケースにおける二次的な突入電流のピークP2のピーク値と同程度とすることができる。
【0040】
なお、仮に交流電圧が比較的低いケースにおけるタイミングt2の際のPN電圧と同じPN電圧になるタイミングt5で、(C)に線L15で示すように防止回路のリレー23が、オフ状態からオン状態に切り替えられるとする。タイミングt5は、タイミングt4よりも早いタイミングである。この場合、そのタイミングt5で、二次的な突入電流のピークP5が出現することになる。タイミングt5では交流電圧が比較的高く、そのためコンデンサ25の端子間電圧が高くなり、ピークP5のピーク値は、上記のピークP2、P4のピーク値を超えるものとなる。
【0041】
このように図3に示す抑制処理によれば、コンバータ10に印加される交流電圧の変動の影響を受けることなく、安定して二次的な突入電流のピークP2を想定の状態に制御することができ、以て、二次的な突入電流による悪影響を好適に回避できる。
【0042】
<変形例1>
図3に示す抑制処理では、S104で肯定判定されて防止回路のリレー23の切替処理が実行される。ここで、何らかの要因で直流バス21におけるPN電圧の時間微分値(変化速度)が過度に小さくなってしまうと、突入電流が流れ始めてS104の処理で肯定判定されるまでに過度に長い時間を要してしまうおそれがある。この場合、直流バスの電流が抵抗22を通り続けることになるため、無駄なエネルギー消費が生じてしまうので好ましくない。そこで、抑制処理において、リレー23の切替タイミングが到来する前に(すなわち、S104で肯定判定される前に)、PN電圧の時間微分値が所定値よりも小さくなった場合にはリレー23をオフ状態からオン状態に切り替えてもよい。当該所定値は、抵抗22によるエネルギー消費と二次的な突入電流のピーク値とのバランスを踏まえて適宜設定すればよい。
【0043】
また、図3に示す抑制処理のS104において、式1の右辺の所定の閾値を、直流バス21の温度等のパラメータに基づいて可変調整してもよい。これは直流バスの温度によって、出現する二次的な突入電流のピーク値が変動し得ることを考慮したものである。所定の閾値は、更に他の要因に基づいて可変調整しても構わない。
【0044】
<変形例2>
上述までの実施形態では、ドライバユニット20における抑制処理について言及したが、当該抑制処理は、コンデンサユニット15にも適用することができる。その場合、コン
デンサユニット15における直流バス151のPN電圧を検出する検出部を設けるとともに、当該PN電圧と検出部8により検出される交流電圧とをコンデンサユニット15の制御部に引き渡し、上記の抑制処理を実行すればよい。
【0045】
<変形例3>
更に、上述までの実施形態におけるドライバユニット20は、コンバータ10及び直流バス11を含むユニットとして構成されてもよい。すなわち、この場合、ドライバユニット20には交流電力が入力され、その内部のコンバータ10によって直流電力に変化され、それが直流バス11に出力される構成となる。そして、直流バス11における直流電力が、インバータ26へ供給される。
【0046】
<付記1>
コンバータ(10)から直流電力が出力される直流バス(11,21)の電流を制御する制御装置(20)であって、
前記コンバータ(10)から前記直流バス(11,21)への直流電力の出力が開始されたときの突入電流を抑制するための防止回路であって、該直流バス(21)の正極側又は負極側に接続された抵抗(22)と、該抵抗(22)に対して並列に配置されたリレー(23)とを含む防止回路と、
前記リレー(23)がオフにされた状態で前記コンバータ(10)からの直流電力の出力が開始された以降における、前記直流バス(21)における正極側と負極側との間のPN電圧を検出する第1検出部(27)と、
前記コンバータ(10)に入力される交流電圧を検出する第2検出部(8)と、
前記第1検出部(27)により検出される前記PN電圧と前記第2検出部(8)により検出される前記交流電圧とに基づいて、前記リレー(23)をオフ状態からオン状態に切り替える制御部(210)と、
を備える、制御装置。
【符号の説明】
【0047】
2 モータ
7 交流電源
8 検出部
10 コンバータ
11、21 直流バス
15 コンデンサユニット
20 ドライバユニット
24 放電回路
25 コンデンサ
26 インバータ
27 検出部
210 制御部
図1
図2
図3
図4