(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135302
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】物品移動システム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20230921BHJP
G01G 19/18 20060101ALI20230921BHJP
G01G 19/387 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B25J15/00 C
G01G19/18 A
G01G19/387 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040448
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】前田 修一
(72)【発明者】
【氏名】北條 正晃
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707DS06
3C707DS07
3C707ES04
3C707ET01
3C707HS14
3C707HS27
3C707JU02
3C707KS09
3C707KS23
3C707KS33
3C707KV06
3C707KX07
3C707NS07
(57)【要約】
【課題】物品の把持量を容易に調整することができる物品移動システムを提供する。
【解決手段】物品移動システム1は、物品群Xが載置される容器50と、物品を把持する把持爪30aを有する少なくとも1つの把持部30と、容器50を移動させ、容器50内の物品群Xに把持爪30aを挿入させ、物品を把持した把持爪30aを容器50から離す容器駆動部54と、容器駆動部54を制御し、物品群Xに対する把持爪30aの挿入量を調整する調整部72と、調整部72に挿入量の補正値を入力する入力部75と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品群から一部の物品を移動させる物品移動システムであって、
前記物品群が載置される載置部と、
前記物品を把持する把持部材を有する少なくとも1つの把持部と、
前記載置部及び前記把持部の少なくとも一方を移動させ、前記載置部に載置された前記物品群に前記把持部材を挿入させ、前記物品を把持した前記把持部材を前記載置部から離す駆動部と、
前記駆動部を制御し、前記物品群に対する前記把持部材の挿入量を調整する調整部と、
前記調整部に前記挿入量の補正値を入力する入力部と、
を備える、物品移動システム。
【請求項2】
前記調整部に入力される前記補正値は、予め複数の段階に設定されている、請求項1に記載の物品移動システム。
【請求項3】
前記把持部によって把持された前記物品の量を表示する表示部を更に備える、請求項1又は2に記載の物品移動システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの把持部は、複数の把持部である、請求項1~3の何れか一項に記載の物品移動システム。
【請求項5】
前記複数の把持部のそれぞれの前記把持部材に把持された前記物品の重量を算出する重量算出部を更に備える、請求項4に記載の物品移動システム。
【請求項6】
前記把持部及び前記駆動部を制御し、前記重量算出部における算出結果に基づいて組合せ計算を行い、予め設定された目標重量値となる前記把持部の組合せを選択し、選択された前記把持部に前記物品を排出させる制御部を更に備える請求項5に記載の物品移動システム。
【請求項7】
前記載置部に載置された前記物品群の高さを検知するセンサを更に備え、
前記調整部は、前記センサの検知結果に基づいて算出した前記挿入量に前記入力部からの前記補正値を加えることで前記挿入量を調整する、請求項1~6の何れか一項に記載の物品移動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に、物品を把持することで移動させる物品移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、容器に格納される物品群から物品を把持し、計量して排出する物品把持システムが知られている。このシステムでは、制御部が、把持ユニットの下方に容器を位置させ、その後容器を上昇させる。あるタイミングで容器の上昇は停止する。停止した容器内の物品群に、把持ユニットの把持爪が入り込んでいる。制御部は、把持爪を閉状態へと切り替え、把持爪に物品を把持させる。その後容器は下降して水平に移動させられる。この間に、把持ユニットによって把持された物品の重量が計量される。所定の条件が満たされた場合に、制御部は、把持爪による物品の把持を解除し、物品を下方の排出シュートへ排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したシステムでは、物品群に入り込んだ把持爪が閉じることで、物品が把持される。把持される物品の量(把持量)は、把持爪が物品に入り込む長さ(深さ)等に影響される可能性がある。従来のシステムでは、把持ユニットに所望量の物品を把持させることは難しかった。物品の把持量が所望量と大きく異なる(ずれる)と、例えば計量効率等の観点で望ましくない。
【0005】
本開示は、物品の把持量を容易に調整することができる物品移動システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、物品群から一部の物品を移動させる物品移動システムであって、物品群が載置される載置部と、物品を把持する把持部材を有する少なくとも1つの把持部と、載置部及び把持部の少なくとも一方を移動させ、載置部に載置された物品群に把持部材を挿入させ、物品を把持した把持部材を載置部から離す駆動部と、駆動部を制御し、物品群に対する把持部材の挿入量を調整する調整部と、調整部に挿入量の補正値を入力する入力部と、を備える。
【0007】
この物品移動システムによれば、駆動部によって載置部及び把持部の少なくとも一方が移動させられ、把持部の把持部材が、物品を把持する。調整部は、物品群に対する把持部材の挿入量を調整するので、挿入量を増大させたり減少させたりすることで、把持部における物品の把持量も調整される。入力部によって、挿入量の補正値が、調整部に入力される。例えば、把持部に所望量の物品を把持させたい場合に、実際の把持量が多かったり少なかったりすることに応じて、挿入量の補正値を調整部に入力することができる。これにより、物品の把持量を容易に調整することができる。
【0008】
調整部に入力される補正値は、予め複数の段階に設定されていてもよい。この場合、物品の把持量を段階的に調整することができる。調整が容易であり、駆動部における厳密な位置制御等も不要である。
【0009】
物品移動システムは、把持部によって把持された物品の量を表示する表示部を更に備えてもよい。この場合、作業者に対して、実際に把持された物品の量を明示できる。作業者は、実際の把持量を見て、補正値の要否や大きさの参考とすることもできる。
【0010】
少なくとも1つの把持部は、複数の把持部であってもよい。この構成によれば、複数の把持部を備えた物品移動システムにおいて、各把持部における物品の把持量を容易に調整することができる。
【0011】
物品移動システムは、複数の把持部のそれぞれの把持部材に把持された物品の重量(質量)を算出する重量算出部を更に備えてもよい。この場合、重量算出部によって、物品の把持量を所望量に調整しやすくなる。
【0012】
物品移動システムは、把持部及び駆動部を制御し、重量算出部における算出結果に基づいて組合せ計算を行い、予め設定された目標重量値となる把持部の組合せを選択し、選択された把持部に物品を排出させる制御部を更に備えてもよい。この場合、各把持部における物品の把持量の調整により、組合せ計量の計量精度及び効率が向上する。
【0013】
物品移動システムは、載置部に載置された物品群の高さを検知するセンサを更に備えてもよい。調整部は、センサの検知結果に基づいて算出した挿入量に入力部からの補正値を加えることで挿入量を調整してもよい。この構成によれば、補正値が加わる前の元の挿入量が正確に算出される。その結果として、挿入量の調整も好適に行われ、把持部に所望量の物品を把持させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、物品の把持量を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る物品移動システムの正面図である。
【
図2】
図2は、複数の把持部を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、物品移動システムのブロック図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、物品群に挿入された把持部材の挿入量が短い(浅い)状態と長い(深い)状態をそれぞれ示す図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(c)は、把持部の把持部材を下方から見た底面図である。
【
図6】
図6は、挿入量の調整に係る各種構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、複数の把持部、載置部、及びセンサの配置を示す平断面図である。
【
図8】
図8は、操作パネルに設けられた操作ボタン及び表示部の一例を示す図である。
【
図9】
図9(a)は所定量の物品を把持するための把持部材の挿入量と面積(開き角)の関係を示す図、
図9(b)は
図9(a)に示される挿入量及び面積に基づく各把持部における実際の把持量を示す図である。
【
図10】
図10(a)は把持部材の補正後の挿入量、面積(開き角)及び把持量の関係を示す図、
図10(b)は
図10(a)に示される挿入量及び面積に基づく各把持部における実際の把持量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
まず
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る物品移動システム1について説明する。
図1に示される物品移動システム1は、容器50に収容された物品群Xから一部の物品を取り出して移動させるシステムである。物品移動システム1は、一部の物品の重量(質量)が目標重量の範囲内となるように、一部の物品を容器50から取り出し、当該物品を外部に排出する。すなわち物品移動システム1は、物品群Xから所定の目標重量の物品を移動させる計量システムである。物品移動システム1によって排出される物品は、例えば、物品移動システム1の後工程で袋に包装されたり、或いは、別の容器に収容されたりして、商品として出荷される。物品は、例えば、スパゲティ等の麺類、糖類を多く含む食品等である。物品は、高い粘着性を有する食品でもよい。物品は、加熱された状態で容器50に収容され、湯気等を生じている食品でもよい。或いは、物品は、軽量で且つ細かく、舞い上がりやすい食品でもよい。
【0018】
物品移動システム1は、物品を計量するための計量装置120を備える。計量装置120は、それぞれ複数の把持部30を有する2つのロボットハンド(把持ユニット)15と、ロボットハンド15を水平方向に移動させる2つのハンド駆動部10と、物品群Xが載置される容器(載置部)50と、容器50を鉛直方向及び水平方向にそれぞれ移動させる容器駆動部54とを備える。また物品移動システム1は、ロボットハンド15の各部、ハンド駆動部10、及び容器駆動部54をそれぞれ制御する制御部70を備える。ロボットハンド15、ハンド駆動部10、及び容器駆動部54は、計量装置120の例えば直方体状の本体フレーム121に取り付けられている。
【0019】
物品移動システム1では、例えば同一の構成を備える一対のロボットハンド15が、左右に並設されている。以下の説明において、
図1の正面視左側に配置されたロボットハンド15は第1ロボットハンド15Aと称されることがあり、正面視右側に配置されたロボットハンド15は第2ロボットハンド15Bと称されることがある。ただし、共通する構成及び機能を説明するときには、単にロボットハンド15という名称が用いられる。
【0020】
ロボットハンド15において、例えば、左右方向に並ぶ4つの把持部30が、前後方向(
図1の紙面垂直方向)に4列並べられている。このように、左右方向に並ぶ把持部30の個数をM、前後方向に並ぶ把持部30の個数をN(M,Nは何れも自然数)とすると、ロボットハンド15は、(M×N)個の把持部30が格子点の位置に配列された構成を有する。本実施形態では、各ロボットハンド15は16個の把持部30を有する。容器50の形状や物品の種類などに応じて、ロボットハンド15における把持部30の配列は適宜に変更されてよい。MとNの両方又は何れか一方が4以外の自然数であってもよい。
【0021】
図2に示されるように、各把持部30は、例えば複数の把持爪(把持部材)30aを有しており、把持爪30aを閉じることで物品を把持する。各把持部30は、複数の把持爪30aを駆動する把持部材駆動機構30bを含む。把持部材駆動機構30bは、例えば、モータ又は流体圧を駆動源として、把持爪30aを駆動する。把持爪30aの開閉による物品の把持の仕組みについては後述する。
【0022】
ロボットハンド15は、各把持部30に把持された物品の重量値を計量する複数の計量器40を有する。すなわち、16個((M×N)個)の把持部30に対して、16個((M×N)個)の計量器40が設けられている。ロボットハンド15は、例えば1枚の板状の連結部材16を有している。各把持部30と、各計量器40とは連結部40aを介して一体的に組み立てられている。各計量器40の天面は、取付金具400を介して連結部材16に固定されている。各計量器40の底面には、各把持部30が固定されている。
【0023】
各計量器40は、計量器40の筐体内に収納されたセンサ部と、内部制御部とを含んでいる(何れも図示せず)。センサ部は、例えば、力センサと加速度センサとを含む。力センサとして、例えば、歪みゲージ式ロードセルが採用される。加速度センサは、例えば、歪みゲージ式ロードセルや、MEMS型の小型加速度センサが採用される。
【0024】
物品移動システム1では、例えば同一の構成を備える2つのハンド駆動部10のそれぞれが、第1ロボットハンド15A及び第2ロボットハンド15Bに対応して設けられている。以下の説明において、
図1の正面視左側に配置されて第1ロボットハンド15Aを移動させるハンド駆動部10は第1ハンド駆動部10Aと称されることがあり、正面視右側に配置されて第2ロボットハンド15Bを移動させるハンド駆動部10は第2ハンド駆動部10Bと称されることがある。ただし、共通する構成及び機能を説明するときには、単にハンド駆動部10という名称が用いられる。
【0025】
第1ロボットハンド15A及び第2ロボットハンド15Bを含めた全体において、左右方向に並ぶ8つの把持部30が、前後方向に4列並べられている。すなわち、計量装置120は、4つ×2台(一対)×4列=計32個(一般化すると(M×2×N)個)の把持部30を備える。
【0026】
ハンド駆動部10は、2本の平行に延びるフレーム12と、ロボットハンド15をフレーム12に沿って水平移動させる前後移動機構11とを有している。ハンド駆動部10は、前後移動機構11によって、ロボットハンド15を保持するブロック111を前方又は後方に移動させることができる。ハンド駆動部10は、例えば、ブロック111を移動させるサーボモータ、エアシリンダ等を有する。上記した連結部材16は、例えばネジ止めによってブロック111に連結されている。
【0027】
物品移動システム1では、第1ハンド駆動部10Aが、第1ロボットハンド15Aを前後方向に(水平方向に)移動させ、第2ハンド駆動部10Bが、第2ロボットハンド15Bを前後方向に(水平方向に)移動させる。これにより、容器50内の物品群Xの位置と、各ロボットハンド15において設定される物品把持位置とを合わせることができる。なお、計量装置120において、ハンド駆動部10又は前後移動機構11が省略されてもよい。
【0028】
計量器40の内部制御部は、センサ部で計測される力に基づいて、把持部30が把持している物品の重量を測定する。なお、計量器40は、把持部30の移動時に計測される力に基づいて物品の重量を計量する方式に限定されるものではない。計量器40は、ロードセル等を用いて、静止状態の把持部30が把持している物品の重量を計量するものであってもよい。計量器40の内部制御部は、力センサで計測された力を、加速度センサで計測された加速度で除すことで物品の重量を測定してもよい。各計量器40は、各把持部30の把持爪30aに把持された物品の重量を算出する重量算出部である。
【0029】
容器50は、物品群Xが載置される部材である。水平移動および鉛直移動する保持部52に、容器50が保持又は載置されている。容器50は、例えば容器駆動部54により、第1ロボットハンド15Aの下方に位置する第1位置P1と、第2ロボットハンド15Bの下方に位置する第2位置P2との間を移動可能である。第1位置P1と第2位置P2とは左右方向に離れており、第1位置P1に位置する容器50が占有する領域と第2位置P2に位置する容器50が占有する領域とはオーバーラップしない。容器50は、上方に向けて開放された直方体状の容器である。容器50は、平面視において、複数の把持部30が配列された領域よりも少し大きい大きさを有する。容器50は、平面視において、複数の把持部30を包囲できるような形状及び大きさを有する。容器50は、1つのロボットハンド15にちょうど対応する形状及び大きさを有する。
【0030】
容器50が第1位置P1に位置する場合、容器50を上方に移動させて第1ロボットハンド15Aの把持部30に近づけることで、当該把持部30が容器50内の物品群Xから物品を把持可能である。このとき、第2ロボットハンド15Bの把持部30は容器50内の物品群Xから物品を把持することができない。また容器50が第2位置P2に位置する場合、容器50を上方に移動させて第2ロボットハンド15Bの把持部30に近づけることで、当該把持部30が容器50内の物品群Xから物品を把持可能である。このとき、第1ロボットハンド15Aの把持部30は容器50内の物品群Xから物品を把持することができない。
【0031】
容器50の内部に収容される物品群Xの量が減少すると、人又は機械によって、内部の物品群Xの量が減少した容器50が、新たな(物品群Xが多く収容されている)容器50と交換される。なお、容器50が交換される代わりに、物品移動システム1が、容器50に物品を供給するための物品供給機構を備えていてもよい。
【0032】
容器駆動部54は、モータ、流体圧を駆動源として、容器50を上下方向(鉛直方向)及び左右方向(水平方向)に移動させる。容器駆動部54は、計量装置120に隣接する図示しないフレームに固定された駆動ボックス55と、駆動ボックス55に設けられた平行な2本の第1軸L1及び第2軸L2を中心にそれぞれ揺動可能な第1メインアーム部56A及び第2メインアーム部56Bと、第1メインアーム部56Aの先端及び第2メインアーム部56Bの先端にそれぞれ回動可能に連結された第1サブアーム部57A及び第2サブアーム部57Bとを有する。駆動ボックス55は、例えば、ロボットハンド15が取り付けられたフレームの後方に隣接する別のフレーム上に固定される。第1軸L1及び第2軸L2は、前後方向(
図1の紙面垂直方向且つ水平方向)に延びる。第1サブアーム部57Aの先端及び第2サブアーム部57Bの先端はそれぞれ保持部52の後端に回動可能に連結されている。これらのリンク機構により、保持部52が支持されている。
【0033】
第1メインアーム部56A及び第2メインアーム部56Bは、それぞれ、駆動ボックス55に収容された別個のモータによって任意の方向を向くように揺動する。第1メインアーム部56A及び第2メインアーム部56Bに対する第1サブアーム部57A及び第2サブアーム部57Bの各回動軸は、第1軸L1及び第2軸L2に平行である。例えば、第2メインアーム部56Bに対する第2サブアーム部57Bの回動角度は調整可能となっている。保持部52に対する第1サブアーム部57A及び第2サブアーム部57Bの各回動軸も、第1軸L1及び第2軸L2に平行である。第1軸L1及び第2軸L2の位置を固定点として、第1メインアーム部56A、第1サブアーム部57A、第2メインアーム部56B、第2サブアーム部57B、及び保持部52が六角形のうちの五辺を構成している。容器駆動部54は、これらの構成により2軸パラレルリンク機構を有している。容器駆動部54は、制御部70によって制御されて各アーム部を回動させることで、保持部52を上下方向及び左右方向に移動させる。保持部52の姿勢は、ロッド58によって水平に維持される。
【0034】
制御部70の制御により、保持部52は水平な姿勢を維持しつつ、第1位置P1、第1位置P1よりも第1ロボットハンド15Aに近接した位置、第2位置P2、第2位置P2よりも第2ロボットハンド15Bに近接した位置に移動自在である。これにより、第1ロボットハンド15Aに対する容器50の相対位置、第2ロボットハンド15Bに対する容器50の相対位置が調整自在となっている。なお、上記構成に限られず、容器駆動部54が、保持部52を左右方向に移動させる左右移動機構と、保持部52を鉛直方向に移動させる鉛直移動機構とを有してもよい。そのような2軸駆動機構によっても、容器50の位置を調整自在である。
【0035】
容器駆動部54は、保持部52及び容器50を上昇させることで、ロボットハンド15に容器50及び物品群Xを近接させる。保持部52及び容器50を下降させることで、ロボットハンド15から容器50及び物品群Xを離隔させる。容器駆動部54は、容器50に収容された(載置された)物品群Xに把持爪30aを挿入させ、物品を把持した把持爪30aを容器50から離す。言い換えれば、第1ロボットハンド15A及び第2ロボットハンド15Bは、容器50内の物品群Xに各把持部30の把持爪30aを差し込んで物品の一部を把持する。
【0036】
物品移動システム1は、2つの排出シュート60を備えている。例えば同一の大きさ及び形状を有する2つの排出シュート60が、左右に並設されている。以下の説明において、
図1の正面視左側に配置された排出シュート60は第1排出シュート60Aと称されることがあり、正面視右側に配置された排出シュート60は第2排出シュート60Bと称されることがある。ただし、共通する構成及び機能を説明するときには、単に、排出シュート60という名称が用いられる。
【0037】
排出シュート60は漏斗状の部材である。排出シュート60は、ロボットハンド15の下方に配置される。具体的には、第1ロボットハンド15Aの下方に第1排出シュート60Aが配置され、第2ロボットハンド15Bの下方に第2排出シュート60Bが配置される。第1ロボットハンド15Aと第1排出シュート60Aとの間に容器50の第1位置P1が位置し、第2ロボットハンド15Bと第2排出シュート60Bとの間に容器50の第2位置P2が位置する。
【0038】
第1排出シュート60Aは、容器50が第2位置P2に位置する時に、第1ロボットハンド15Aの把持部30が把持を解除して落下させる物品を受けて物品移動システム1の外部に排出する。同様に、第2排出シュート60Bは、容器50が第1位置P1に位置する時に、第2ロボットハンド15Bの把持部30が把持を解除して落下させる物品を受けて物品移動システム1の外部に排出する。このようにして、第1ロボットハンド15A及び第2ロボットハンド15Bは、各把持部30により把持した物品を移載先の位置に移載する。すなわち、本明細書において、各ロボットハンド15による「把持の解除」とそれに伴う「物品の落下」は、排出シュート60への物品の移載を意味する。
【0039】
なお本実施形態では、2つの排出シュートを用いているが、これに限定されるものではなく、第1ロボットハンド15Aおよび第2ロボットハンド15Bが1つの排出シュートを共有してもよい。その場合、1つの排出シュートの上部開口は、平面視において第1位置P1及び第2位置P2の全体を包含する大きさ及び位置に設定される。また、排出シュートを使用せず、ロボットハンド15から落下した物品を直接外部に排出してもよい。
【0040】
図2は、物品移動システム1のブロック図である。
図2において、制御部70は、把持部材駆動機構30b、容器駆動部54などの物品移動システム1の各種構成の動作の制御を実施する。制御部70は、計量器40が計量した物品の重量値を利用した組合せ計算等を実施する。制御部70は、CPU等のプロセッサ、ROMおよびRAM等のメモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部70は、ハンド駆動部10、把持部材駆動機構30b、計量器40、容器駆動部54と電気的に(又は通信可能に)接続されている。制御部70には、理想重量値等が操作パネル100を介して入力される。
【0041】
制御部70は、CPUがメモリに記憶されているプログラムを実行することで、ハンド駆動部10、把持部材駆動機構30b、容器駆動部54等の物品移動システム1の各種構成の動作の制御や、計量器40が計量した物品の重量値を利用した組合せ計算等を行う。制御部70の各種機能は、ソフトウェアで実現されなくてもよく、ハードウェアで実現されても、ハードウェアとソフトウェアとが協働することで実現されてもよい。
【0042】
制御部70は、ハンド駆動部10および容器50を移動させ、把持部30と、容器50とを近づける。制御部70は、把持部材駆動機構30bを制御して、容器50に載置された物品群Xの物品の一部を、各把持部30の把持爪30aに把持させる。
【0043】
各計量器40は、その計量器40に対応する把持部30が把持する物品の重量値を計量する。各把持部30によって把持された物品の重量値は、制御部70によって取得される。制御部70は、把持部30の把持する物品の重量値に基づいて組合せ計算を行う。組合せ計算は、把持部30のそれぞれが把持する物品の重量値を足し合わせた結果、その合計値が目標重量値となる重量値の組合せを見つける処理である。制御部70は、まず、各重量値を取得する。続いて、制御部70は、組合せ計算の結果に基づいて、目標重量値となる重量値の組合せに対応する把持部30の把持爪30aを選択し、選択した把持部30の把持を解除する制御を実施する。このとき、制御部70は、排出シュート60の上方で把持部30による物品の把持を解除することによって、物品を排出シュート60内に落下させる。そして目標重量値の物品が、排出シュート60から排出させる。目標重量値となる重量値の組合せが不可能である場合であって、目標重量値の近傍となる重量値の組合せに対応する把持部30の把持爪30aを見つけた場合、制御部70は、当該組み合わせに対応する把持部30を選択し、選択した把持部30の把持を解除する制御を実施する。当該制御は、例えば、目標重量値となる重量値の組合せに対応する把持部30以外の把持部30の重量値を用いて実施される。
【0044】
目標重量値は、目標となる重量値(目標重量値、又は理想重量値)を含む一定の重量範囲であり、予め設定される。例えば、目標重量値の下限は目標重量値の90%、もしくは95%であり、目標重量値の上限は目標重量値の110%、もしくは105%である。また、目標重量値の近傍は、例えば、上記下限の90%以上100%未満、もしくは上記下限の95%以上100%未満でもよいし、上記上限の100%より大きく110%以下、もしくは上記上限の100%より大きく105%以下でもよい。
【0045】
以上のとおり、本実施形態の物品移動システム1において、制御部70は、把持部材駆動機構30b(把持部30)及び容器駆動部54を制御し、計量器40における算出結果に基づいて組合せ計算を行い、予め設定された目標重量値となる把持部30の組合せを選択する。制御部70は、選択された複数の把持部30に物品を排出させる。
【0046】
図1、
図3及び
図7に示されるように、保持部52の可動領域の上方には、前後方向(
図1の紙面垂直方向)に並べられた複数のセンサ9が設けられている。本実施形態では、把持部30の当該方向における列数(上記N。具体的には4列)に対応させて、4つのセンサ9が取り付けられている。4つのセンサ9は、例えば本体フレーム121に固定されており、鉛直下方に向けて光を照射すると共に物品群Xの表面で反射した反射光を検知する。これにより、各センサ9は、容器50内の物品群Xにおける把持爪30aの差し込み方向(上下方向)の物品高さ(物品群Xの高さ)を検知する。
【0047】
図1及び
図7に示されるように、各センサ9は、第1ロボットハンド15A及び第2ロボットハンド15Bの間の中央位置において投受光を行う。各センサ9は、容器駆動部54によって保持部52及び容器50が第1位置P1と第2位置P2との間を移動させられる途中において、左右方向における把持部30の位置及び個数(上記M。具体的には4つ)に対応する回数、物品の高さを検知する。検知のタイミングは、容器駆動部54の左右方向の移動速度を考慮して、(例えば容器駆動部54の移動と同期するように)制御部70によって調整されてもよい。これにより、第1位置P1から第2位置P2へ、又は第2位置P2から第1位置P1へと容器50が移動する(通過する)毎に、容器50内の左右方向(移動方向)及び前後方向に格子状に分布する16点(複数の把持部30の平面的な配置に対応する複数点)についての高さ検知信号が出力される。
【0048】
制御部70は、複数のセンサ9と電気的に(又は通信可能に)接続されている。制御部70は、各センサ9の検知結果に基づいて、各把持部30における物品群Xに対する把持爪30aの挿入量及び開き角を算出する。容器50内の各部において、物品の高さはまちまちである。一方で、容器50(保持部52)は水平な姿勢を維持してロボットハンド15に近接させられる。したがって、ある高さに位置する容器50に対し、各把持部30における把持爪30aの挿入量は一定(均一)ではない(
図4(a)又は
図4(b)参照)。
【0049】
制御部70は、例えば、所望の把持量の物品を把持させるための挿入量及び開き角の対応関係を記憶している(
図9(a)参照)。制御部70は、各センサ9からの高さ検知信号を入力すると、容器50及び物品群Xの上下方向の位置を設定し、それに応じた各把持部30における挿入量を算出する。制御部70は、更に、記憶している対応関係を参照し、各把持部30における挿入量に対応した把持爪30aの開き角を算出する。制御部70は、第1ロボットハンド15A及び第2ロボットハンド15Bの何れか(物品を把持すべき何れか一方)に対し、算出した挿入量及び開き角が実現されるよう、把持動作を制御する。
【0050】
図5を参照して、把持爪30aの動作及び開き角について説明する。
図5(a)~
図5(c)は、把持部30の把持爪30aを下方から見た底面図である。本実施形態では、把持爪30aは、
図2に示されるように、棒状又は指状の部材の先端に、物品を引っ掛けることができるように内側へ屈曲させた爪を形成している。各把持部30は、複数(例えば、3つ以上)の把持爪30a(第1把持爪部)を有している。なお、
図3等に描画されている把持爪30aの数や形状は例示に過ぎず、把持部材の構成は適宜変更可能である。
【0051】
図5(a)に示されるように、各把持部30を把持爪30a側(下側)から視たとき、複数の把持爪30aは周方向に並べて配置されている。また複数の把持爪30aは、周方向に概ね等間隔に並べて配置されている。複数の把持爪30aは径方向に移動可能である。把持部30は、互いに離れた状態にある把持爪30aを、把持部材駆動機構30bによって径方向内向きに動かして互いに近づいた状態にすることによって、複数の把持爪30aの間に物品を挟み込んで物品を把持する。把持部30は、互いに近づいた状態にある把持爪30aを、把持部材駆動機構30bによって径方向外向きに動かして互いに離れた状態にすることによって、物品の把持を解除する。言い換えると、ロボットハンド15の複数の把持爪30aは、少なくとも、第1状態と第2状態とのいずれかの状態に切り換えられる。第1状態は、把持爪30a同士の相対距離を第1距離まで縮めて物品を把持する状態である(
図5(b)参照)。第2状態は、把持爪30a同士の相対距離を第1距離より大きい第2距離まで広げて物品の把持を解除する状態である。第2状態は、例えば、把持部30の把持爪30aを仮想円C1の位置まで閉じた状態(
図5(c)参照)でもよい。第2状態が把持爪30aの初期状態とみなされてもよい。
【0052】
第1状態における把持爪30aの第1距離は、制御部70によって把持部材駆動機構30bが制御されることにより、適宜に調整可能である。上記した開き角が決まると、この第1距離が一意に決まる。ロボットハンド15の把持動作の制御において、開き角と第1距離は、同意である。開き角は、例えば、
図5(b)に示される把持爪30aの先端(図示中央寄りの部分)の位置に対して近似される円形領域の面積として表されてもよい(
図9(a)参照)。
【0053】
以下、
図6を参照して、物品移動システム1が備える把持量の補正機能に係る構成について説明する。制御部70は、各把持部30の位置における物品群Xの高さと、挿入量及び開き角の対応関係とに基づいて、容器50(保持部52)の位置を決定し、各把持部30における把持爪30aの開き角を決定する。制御部70は、決定した各値(位置及び開き角に関する値)が実現されるよう、容器駆動部54及び把持部材駆動機構30bを制御する。一方、物品移動システム1では、作業者によって幾らかの調整が可能となっている。
図6には、制御部70に係る機能ブロック図が示されている。
図6に示されるように、制御部70は、取得部71、調整部72、受付部73、補正値決定部74、及び記憶部76を有している。一方、物品移動システム1は、作業者によって操作される第1操作ボタン101及び第2操作ボタン102を含む操作パネル100(
図8も参照)を備えている。操作パネル100は、例えば本体フレーム121に固定され、作業者の手が届きやすい位置に配置されてもよい。
【0054】
記憶部76は、上記した対応関係を記憶している。取得部71は、センサ9から出力された高さ検知信号を取得する。調整部72は、容器駆動部54を制御し、各把持部30における物品群Xに対する把持爪30aの挿入量を調整する。また調整部72は、各把持部30における把持爪30aの開き角を調整する。調整部72は、取得部71が取得した物品群Xの高さと、記憶部76に記憶された挿入量及び開き角の対応関係とに基づいて、容器50(保持部52)の位置を算出し、各把持部30における把持爪30aの開き角を算出する。調整部72は、算出した各値(位置及び開き角に関する値)が実現されるよう、容器駆動部54及び把持部材駆動機構30bを制御する。
【0055】
本実施形態の物品移動システム1では、制御部70が、各把持部30における把持爪30aの挿入量の補正値を調整部72に入力する入力部75を備えている。調整部72は、センサ9の検知結果に基づいて算出した挿入量に、入力部75により入力された補正値を加えることで、挿入量を調整する。挿入量の補正値は、例えば、受付部73及び補正値決定部74によって決定される。受付部73は、作業者によって第1操作ボタン101及び/又は第2操作ボタン102が操作された場合に、操作内容に示される補正値を受け付ける。補正値は、例えば予め複数の段階(例えば、レベル1~5の5段階等)に設定されていてもよい。その場合に、作業者によって第1操作ボタン101及び/又は第2操作ボタン102が操作され、所定の段階が選択されると、補正値決定部74が、当該段階に応じた挿入量の補正値を算出する。第1操作ボタン101は、第1ロボットハンド15Aに係る把持爪30aの挿入量を補正するためのボタンである。第2操作ボタン102は、第2ロボットハンド15Bに係る把持爪30aの挿入量を補正するためのボタンである。補正値は、具体的な挿入量の長さ(例えばミリメートル単位の長さ)で設定されてもよい。
【0056】
図8を参照して操作パネル100の一例について説明する。
図8に示されるように、操作パネル100は、各種の表示部を含んでいる。操作パネル100は、1回の組合せ計量毎に落下した物品の落下重量を示す落下重量表示部103と、把持部30あたりの把持重量の平均値を示す平均把持重量表示部104と、前回計量時の排出回数を示す前回排出回数表示部105と、容器50内の16点の各部における物品の高さを示す物品高さ表示部106と、容器50内の物品高さの平均値を示す平均物品高さ表示部107とを含む。操作パネル100は、平均把持重量表示部104において、各把持部30によって把持された物品の量を表示する。物品高さ表示部106には、各把持部30の位置に対応させて物品の高さが示されているので、作業者は、計量動作の途中で物品群Xを均す作業を行ってもよい。操作パネル100は、更に、設定済みの目標重量値を示す目標重量表示部108と、現在の実際の能力(毎分の計量回数)を示す能力表示部109とを含む。
【0057】
操作パネル100は、落下重量表示部103の直下に配置された第1補正量表示部101C及び第2補正量表示部102Cを含む。第1補正量表示部101C及び第2補正量表示部102Cは、第1ロボットハンド15Aにおける補正値と、第2ロボットハンド15Bにおける補正値とをそれぞれ表示する。第1補正量表示部101C及び第2補正量表示部102Cの直下には、上記した第1操作ボタン101及び第2操作ボタン102が設けられている。第1操作ボタン101は、第1ロボットハンド15Aにおいて挿入量を増加させるための(すなわち正の補正値を入力するための)増加ボタン101aと、その挿入量を減少させるための(すなわち負の補正値を入力するための)減少ボタン101bとを含む。第2操作ボタン102は、第2ロボットハンド15Bにおいて挿入量を増加させるための(すなわち正の補正値を入力するための)増加ボタン102aと、その挿入量を減少させるための(すなわち負の補正値を入力するための)減少ボタン102bとを含む。例えば、各ボタンを1回押す毎に、補正値が1mmずつ変化してもよいし、長押しによって補正値が増加又は減少してもよい。或いは、補正値が段階的に設定されている場合には、各ボタンを1回押す毎に補正値のレベルが1段階ずつ変化してもよい。第1操作ボタン101及び第2操作ボタン102を用いた操作結果が、第1補正量表示部101C及び第2補正量表示部102Cにそれぞれ表示される。
【0058】
作業者は、1回の組合せ計量毎に落下した物品の落下重量、把持部30あたりの把持重量の平均値、前回計量時の排出回数、容器50内の各部における物品の高さ、及び容器50内の物品高さの平均値の何れか1つ又は何れか2つ以上(全部を含む)を参照して、第1操作ボタン101及び/又は第2操作ボタン102を用いた補正の度合いを決定することができる。作業者は物品の把持量が適切であるか補正値による調整が必要か否か等を判断し易いので、より好適な把持量の調整が可能となる。入力部75は、補正値を調整部72に入力する。なお、制御部70において、補正値決定部74が、作業者による操作内容と、平均把持重量、前回排出回数及び平均物品高さの少なくとも何れか1つとを参照して、補正値を決定(換算)してもよい。補正値決定部74が省略されてもよい。作業者による操作内容を受付部73が受け付け、入力部75が、調整部72に補正値を入力してもよい。
【0059】
本実施形態の物品移動システム1によれば、容器駆動部54によって容器50が移動させられ、把持部30の把持爪30aが、物品を把持する。制御部70の調整部72は、物品群Wに対する把持爪30aの挿入量を調整する(
図4(a)及び
図4(b)参照)。挿入量を増大させたり減少させたりすることで、把持部30における物品の把持量も調整される。入力部75によって、挿入量の補正値が調整部72に入力される。例えば、把持部30に所望量の物品を把持させたい場合に、実際の把持量が多かったり少なかったりすることに応じて、挿入量の補正値を調整部72に入力することができる。これにより、物品の把持量を容易に調整することができる。
【0060】
図9及び
図10を参照して、本実施形態の制御に関する考え方を説明する。制御部70は、
図9(a)に示されるように、所望の把持量の物品を把持させるための挿入量及び開き角の対応関係を記憶している。基本的な容器50の移動制御及び把持部30における把持制御は、この対応関係に基づいて行われる。その結果、例えば、
図9(b)に示される把持量が実現される。各挿入量に対応した把持量が、所望の把持量に比して足りない場合又は多すぎる場合には、1回の組合せ計量毎に落下した物品の落下重量、把持部30あたりの把持重量の平均値、前回計量時の排出回数、容器50内の各部における物品の高さ、及び容器50内の物品高さの何れかが不適切な結果となる場合がある。そのような場合に、作業者によって操作パネル100が操作され、任意の正又は負の補正値が入力される。例えば正の補正値が入力された場合には、
図10(a)に示されるように、
図9(a)の対応関係が補正値の分だけ右の方(プラス側)へスライドする。
図4(a)及び
図4(b)には、挿入量の増分ΔD(シフト量)が示されている。挿入量の増分ΔDは、容器50の高さの変化量に等しい。補正値が加えられた結果、
図10(b)に示されるように、把持量が全体的に増加する。
図10では、正の補正値が入力された場合が示されているが、負の補正値が入力された場合も同様に考えられ、対応関係が補正値の分だけ左の方(マイナス側)へスライドし、把持量が全体的に減少する。このような現象(予定の把持量よりも減ってしまうような傾向)は、例えばパスタ等の滑りやすい物品において生じやすい。本実施形態の補正機能によれば、より好適な計量が実現される。
【0061】
調整部72に入力される補正値は、予め複数の段階に設定されている。これにより、物品の把持量を段階的に調整することができる。調整が容易であり、容器駆動部54における厳密な位置制御等も不要である。
【0062】
操作パネル100の平均把持重量表示部104等によれば、作業者に対して、実際に把持された物品の量が明示される。作業者は、実際の把持量を見て、補正値の要否や大きさの参考とすることもできる。
【0063】
各ロボットハンド15が複数の把持部30を有する。複数の把持部30を備えた物品移動システム1において、各把持部30における物品の把持量を容易に調整することができる。
【0064】
ロボットハンド15に設けられた計量器40によって、物品の把持量を所望量に調整しやすくなる。
【0065】
制御部70が組合せ計量を行う。各把持部30における物品の把持量の調整により、組合せ計量の計量精度及び効率が向上する。
【0066】
調整部72は、センサ9の検知結果に基づいて算出した挿入量に入力部75からの補正値を加えることで挿入量を調整する。これにより、補正値が加わる前の元の挿入量が正確に算出される。その結果として、挿入量の調整も好適に行われ、把持部30に所望量の物品を把持させることができる。
【0067】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、容器50(保持部52)を移動させてロボットハンド15に近接させることで、ロボットハンド15が物品を把持する構成について例示した。しかしこの構成とは違って、ロボットハンド15又は把持部30を移動(例えば下降)させて容器50に近接させることで、ロボットハンド15又は把持部30が物品を把持する構成を採ってもよい。その場合、ロボットハンド15又は把持部30に、適宜の公知の移動機構が設けられる。ロボットハンド15又は把持部30を移動(例えば上昇)させることで、物品を把持した把持爪30aを容器50から離すことができる。
【0068】
ロボットハンドによる物品の移載は、「把持の解除」とそれに伴う「排出シュートへの物品の落下」に限られない。物品を把持したロボットハンドが、水平方向又は鉛直方向に移動して別の容器、別のホッパ、又はコンベア等の搬送装置に物品を移載してもよい。
【0069】
ロボットハンドが、1つのみの把持部を有してもよい。物品群Xの高さを検知するセンサは、省略されてもよい。
【0070】
物品移動システムが、組合せ計量を行わなくてもよい。物品移動システムにおいて、把持部により把持された物品の重量を算出する重量算出部が設けられず、物品が移載された後にその重量が算出されてもよい。
【0071】
操作パネル100における第1操作ボタン101及び第2操作ボタン102が省略されてもよい。制御部70の入力部75が、補正値決定部74において決定された補正値を調整部72に入力してもよい。その場合には、補正値決定部74は、1回の組合せ計量毎に落下した物品の落下重量、把持部30あたりの把持重量の平均値、前回計量時の排出回数、容器50内の各部における物品の高さ、及び容器50内の物品高さの平均値の何れか1つ又は何れか2つ以上(全部を含む)に基づいて補正値を決定してもよい。作業者による操作を介さずに、物品の把持量が自動的に調整される。
【符号の説明】
【0072】
1…物品移動システム、9…センサ、10…ハンド駆動部、15…ロボットハンド、15A…第1ロボットハンド、15B…第2ロボットハンド、30…把持部、30a…把持爪(把持部材)、40…計量器(重量算出部)、50…容器(載置部)、52…保持部、54…容器駆動部、60…排出シュート、70…制御部、72…調整部、75…入力部、100…操作パネル、101…第1操作ボタン、102…第2操作ボタン、103…落下重量表示部、104…平均把持重量表示部、120…計量装置、X…物品群。