(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135324
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】スコア算出装置及びスコア算出方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230921BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20230921BHJP
G06V 10/62 20220101ALI20230921BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06T7/20 300
G06V10/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040476
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】太田 祥司
(72)【発明者】
【氏名】荒井 正仁
(72)【発明者】
【氏名】竹下 浩
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 篤史
(72)【発明者】
【氏名】松浦 裕幸
【テーマコード(参考)】
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5L049CC12
5L096DA02
5L096FA52
5L096FA69
5L096HA02
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】集団に属する複数の対象者の間でのトラブルについて事前の抑制につなげることが可能なスコア算出装置及びスコア算出方法を提供する。
【解決手段】スコア算出装置は、所定の集団に属する複数の対象者の位置情報の履歴に基づいて、対象者ごとに集団からの孤立度合いを示す孤立スコアを算出する孤立スコア算出部と、対象者の行動情報に基づいて、集団に対して能動的に個人行動を行っている度合いを示す個人行動スコアを算出する個人行動スコア算出部と、他者との関わりに関する対象者ごとの傾向を示す傾向スコアを算出する傾向スコア算出部と、孤立スコアと、個人行動スコアと、傾向スコアとに基づいて、対象期間における対象者ごとに集団における他者とのコミュニケーションの度合いを示すコミュニケーションスコアを算出するコミュニケーションスコア算出部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の集団に属する複数の対象者の位置情報の履歴に基づいて、前記対象者ごとに前記集団からの孤立度合いを示す孤立スコアを算出する孤立スコア算出部と、
前記対象者の行動情報に基づいて、前記集団に対して能動的に個人行動を行っている度合いを示す個人行動スコアを算出する個人行動スコア算出部と、
他者との関わりに関する前記対象者ごとの傾向を示す傾向スコアを算出する傾向スコア算出部と、
前記孤立スコアと、前記個人行動スコアと、前記傾向スコアとに基づいて、対象期間における前記対象者ごとに前記集団における他者とのコミュニケーションの度合いを示すコミュニケーションスコアを算出するコミュニケーションスコア算出部と
を備えるスコア算出装置。
【請求項2】
前記孤立スコア算出部は、前記対象期間における前記対象者と他の前記対象者との距離の平均値と、前記対象期間において前記対象者が他の前記対象者と近接する回数を示すイベント回数と、に基づいて前記孤立スコアを算出する
請求項1に記載のスコア算出装置。
【請求項3】
前記個人行動スコア算出部は、前記対象期間において前記対象者が前記個人行動を行うための対象物と近接したことを前記行動情報として検出した場合、当該検出ごとの前記対象物の種類に基づいて前記個人行動スコアを算出する
請求項1又は請求項2に記載のスコア算出装置。
【請求項4】
前記傾向スコア算出部は、
前記対象者の前記コミュニケーションスコアの履歴と、予め前記対象者について設定された補正用情報とに基づいて前記傾向スコアを算出する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスコア算出装置。
【請求項5】
所定の集団に属する複数の対象者の位置情報の履歴に基づいて、前記対象者ごとに前記集団からの孤立度合いを示す孤立スコアを算出することと、
前記対象者の行動情報に基づいて、前記集団に対して能動的に個人行動を行っている度合いを示す個人行動スコアを算出することと、
他者との関わりに関する前記対象者ごとの傾向を示す傾向スコアを算出することと、
前記孤立スコアと、前記個人行動スコアと、前記傾向スコアとに基づいて、前記対象者ごとに前記集団における他者とのコミュニケーションの度合いを示すコミュニケーションスコアを算出することと
を含むスコア算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スコア算出装置及びスコア算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
学校、幼稚園、保育園等の施設において、いじめ等のトラブルが懸念されている。特許文献1~3には、対象者の映像情報、音声情報、感情情報等を用いていじめ等のトラブルを検出する検出システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-096836号公報
【特許文献2】特開2020-123204号公報
【特許文献3】特開2018-112831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に記載のシステムでは、いじめ等のトラブルに遭っている児童又はトラブルに加担している児童を区別した上で、けが等の事後事象の検出、不当ワード等の直接的事象の検出等を行うものである。しかしながら、いじめ等のトラブルについては、トラブルが顕在化する前に、対象の児童及び周囲の児童に働きかけを行う等の対策を行うことで、事前に抑制できることが好ましい。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、集団に属する複数の対象者の間でのトラブルについて事前の抑制につなげることが可能なスコア算出装置及びスコア算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスコア算出装置は、所定の集団に属する複数の対象者の位置情報の履歴に基づいて、前記対象者ごとに前記集団からの孤立度合いを示す孤立スコアを算出する孤立スコア算出部と、前記対象者の行動情報に基づいて、前記集団に対して能動的に個人行動を行っている度合いを示す個人行動スコアを算出する個人行動スコア算出部と、他者との関わりに関する前記対象者ごとの傾向を示す傾向スコアを算出する傾向スコア算出部と、前記孤立スコアと、前記個人行動スコアと、前記傾向スコアとに基づいて、対象期間における前記対象者ごとに前記集団における他者とのコミュニケーションの度合いを示すコミュニケーションスコアを算出するコミュニケーションスコア算出部とを備える。
【0007】
本発明に係るスコア算出方法は、所定の集団に属する複数の対象者の位置情報の履歴に基づいて、前記対象者ごとに前記集団からの孤立度合いを示す孤立スコアを算出することと、前記対象者の行動情報に基づいて、前記集団に対して能動的に個人行動を行っている度合いを示す個人行動スコアを算出することと、他者との関わりに関する前記対象者ごとの傾向を示す傾向スコアを算出することと、前記孤立スコアと、前記個人行動スコアと、前記傾向スコアとに基づいて、前記対象者ごとに前記集団における他者とのコミュニケーションの度合いを示すコミュニケーションスコアを算出することとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、集団に属する複数の対象者の間でのトラブルについて事前の抑制につなげることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るスコア算出装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、対象者の位置情報の検出結果の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、対象者及び対象物の位置情報の検出結果の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るスコア算出装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るスコア算出装置及びスコア算出方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
図1は、本実施形態に係るスコア算出装置100の一例を示す機能ブロック図である。
図1に示すスコア算出装置100は、所定の集団に属する複数の対象者について、集団における他者とのコミュニケーションの度合いを示すコミュニケーションスコアを対象者ごとに算出する。本実施形態において、所定の集団としては、例えば学校、幼稚園、保育園等が挙げられる。複数の対象者としては、これら学校、幼稚園、保育園等に所属する児童等が挙げられる。
【0012】
スコア算出装置100は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の記憶装置を有する。
図1に示すように、スコア算出装置100は、孤立スコア算出部10と、個人行動スコア算出部20と、傾向スコア算出部30と、コミュニケーションスコア算出部40と、記憶部50とを備える。
【0013】
孤立スコア算出部10は、所定の集団に属する複数の対象者の位置情報の履歴に基づいて、孤立スコアを算出する。孤立スコアは、対象者ごとに集団からの孤立度合いを示すスコアである。孤立スコア算出部10は、例えば対象期間における対象者と他の対象者との距離の平均値と、対象期間において対象者が他の対象者と第1時間以上近接する回数を示すイベント回数と、に基づいて孤立スコアを算出することができる。
【0014】
孤立スコア算出部10は、対象者ごとに位置情報を座標として検出する。位置情報としては、例えば撮影装置60により撮影された撮影データに基づいて算出される。撮影装置60により撮影された撮影データは、記憶部50に記憶することができる。撮影装置60は、例えば学校の教室等、対象者が行動する場所に配置しておくことができる。この場合、孤立スコア算出部10は、例えば教室の所定位置を基準とした座標平面における座標として位置情報を算出することができる。
【0015】
孤立スコア算出部10は、撮影データに基づいて、例えば画像処理により個々の対象者を区別して抽出する。孤立スコア算出部10は、抽出した個々の対象者についてフレームごとに位置情報を算出する。
【0016】
孤立スコア算出部10は、算出した位置情報に基づいて、対象者ごとに、所定期間における当該対象者と他の対象者との距離の平均値を算出する。所定期間については、例えば休憩時間、登校から下校までの時間、等の期間を設定することができる。孤立スコア算出部10は、例えばフレームごとに対象者と他の対象者との距離を算出し、フレーム数により平均値を算出することができる。
【0017】
孤立スコア算出部10は、例えば以下の式に示すように平均値(A)を算出する。なお、以下の式は、1人の対象者に着目した場合のものである。
A=Σ0~M-2Σ0~N-1(Distancem,n)/(N・(M-1))
ただし、Distanceは、1つのフレームにおける対象者と他の対象者との距離を示す。Mはフレーム内における対象者と他の対象者との合計人数を示す。mは、他の対象者を示す数値である。他の対象者の1人目は、m=0で示される。他の対象者の最後は、m=M-2で示される。nは、フレーム番号を示す。最初のフレームは、n=0で示される。また、最後のフレームは、n=N-1で示される。
【0018】
孤立スコア算出部10は、算出した位置情報に基づいて、対象者ごとに、当該対象者と他の対象者とが近接したか否かを検出する。対象者と他の対象者とが近接した場合、当該対象者と他の対象者との間で会話等のコミュニケーションをとるためのイベントが発生したと推定することができる。したがって、孤立スコア算出部10は、対象者ごとに、当該対象者と他の対象者とが近接したことを検出した場合、当該対象者と他の対象者との間でイベントが発生したと判定し、イベント回数を1回カウントする。
【0019】
孤立スコア算出部10は、例えばパーソナルスペースの概念に基づいて、個体距離(0.45m以上1.2m未満)、密接距離(0m以上0.45m未満)等の範囲ごとに区分し、区分ごとに異なる時間を近接検出のための時間である第1時間として設定することができる。例えば、個体距離に対応する第1時間を15秒と設定し、密接距離に対応する第1時間を5秒と設定することができる。この場合、孤立スコア算出部10は、所定期間において、対象者と他の対象者との間が15秒以上個体距離となった場合、及び対象者と他の対象者との間が5秒以上密接距離となった場合に近接したことを検出してイベントが発生したと判定し、イベント回数を1回カウントする。
【0020】
孤立スコア算出部10は、算出した平均値(A)及びイベント回数(B)に基づいて、以下の式に示すように孤立スコア(S1)を算出する。孤立スコア算出部10は、算出した孤立スコアS1を記憶部50に記憶する。
S1=α・A+(1-α)・(Max-B)
ただし、αは重みを示す数であり、0≦α≦1とすることができる。また、Maxはイベント回数Bの最大値を示す。イベント回数Bの値は、Maxに到達したらそれ以上は増加しないものとする。
【0021】
孤立スコアS1は、高いほど対象者が孤立している度合いが高いことを示し、低いほど対象者が孤立している度合いが低いことを示している。孤立スコアS1は、他の対象者との距離の平均値が大きく、イベント回数が少ないほど高くなる。逆に、孤立スコアS1は、他の対象者との距離の平均値が小さく、イベント回数が多いほど低くなる。
【0022】
個人行動スコア算出部20は、対象者の行動情報に基づいて、個人行動スコアを算出する。個人行動スコアは、集団に対して能動的に個人行動を行っている度合いを示すスコアである。個人行動スコア算出の基となる対象者の行動情報とは、対象者が個人行動を行うための対象物との近接状況の情報であり、個人行動スコア算出部20は、対象期間において対象者が個人行動を行うための対象物と近接したことを検出した場合、当該検出ごとの対象物の種類に基づいて個人行動スコアを算出する。上記の対象物としては、例えばおもちゃ、教科書、ノート、鉛筆、書籍等が挙げられる。対象者が上記のような対象物と近接している場合、当該対象者が対象物を用いて能動的に個人行動を行っていると推定することができる。
【0023】
個人行動スコア算出部20は、撮影装置60の撮影データに基づいて、画像処理等を行うことにより対象物の種類と、当該対象物の位置情報とを検出することができる。個人行動スコア算出部20は、記憶部50に記憶される対象者の位置情報と、算出した対象物の位置情報とに基づいて、対象者と対象物との距離を算出する。
【0024】
個人行動スコア算出部20は、所定期間において、対象者ごとに、当該対象者と対象物とが近接したことを検出した場合、当該対象者が個人行動を行ったと判定する。個人行動スコア算出部20は、例えば対象者と対象物とが上記した密接距離(0m以上0.45m未満)にある状態又は対象者と対象物とが接触している状態が第2時間以上継続した場合に、対象者と対象物とが近接していると検出することができる。
【0025】
個人行動スコア算出部20は、対象者が個人行動を行うための対象物と第2時間以上近接したことを検出した場合、当該検出ごとの対象物の種類に基づいて、以下の式で示すように個人行動スコア(S2)を算出する。個人行動スコア算出部20は、算出した個人行動スコアS2を記憶部50に記憶する。
S2=Σ0~H-1(Kg,h)
ただし、Kは検出ごとの重みを示す値であり、gはオブジェクトの種類を示す値である。例えば、おもちゃAに対応する値はg=1、K1,h=10、おもちゃBに対応する値はg=2、K2,h=8、教科書に対応する値はg=3、K3,h=5、等のように予め設定しておき、設定結果を記憶部50にテーブル等の情報として記憶しておくことができる。hは何回目の検出かを示す値であり、Hは総検出回数である。
【0026】
個人行動スコアS2は、高いほど対象者が能動的に個人行動を行っている度合いが高いことを示し、低いほど対象者が能動的に個人行動を行っている度合いが低いことを示している。個人行動スコアS2は、対象物との近接が検出されない場合には0となる。また、個人行動スコアS2は、重みづけの値の大きい対象物を用いるほど高くなる。
【0027】
傾向スコア算出部30は、傾向スコアを算出する。傾向スコアは、他者との関わりに関する対象者ごとの傾向を示すスコアである。傾向スコア算出部30は、対象者のコミュニケーションスコアの履歴と、予め対象者について設定された補正用情報とに基づいて傾向スコアを算出することができる。
【0028】
傾向スコア算出部30は、対象者について過去の所定期間(例えば、過去1年等)に算出されたコミュニケーションスコアの平均値を典型値として算出する。この場合、傾向スコア算出部30は、記憶部50に記憶されたコミュニケーションスコアを用いることができる。補正用情報については、例えば対象者がどの程度個人行動を行う傾向にあるかを対象者の教師、保護者等が評価した値とすることができる。補正用情報については、例えばアンケート等により値を設定することができる。対象者が新入園児童であった場合等で、対象者についての過去のコミュニケーションスコアが記憶部50に記憶されていない場合、同年代の一般的な児童のコミュニケーションスコアの平均値を典型値としてもよい。
【0029】
傾向スコア算出部30は、典型値(C)及び補正用情報(D)に基づいて、以下の式で示すように傾向スコア(S3)を算出する。傾向スコア算出部30は、算出した傾向スコアS3を記憶部50に記憶する。
S3=C+D
コミュニケーションスコア算出部40は、孤立スコアと、個人行動スコアと、傾向スコアとに基づいて、コミュニケーションスコアを算出する。コミュニケーションスコアは、対象者ごとに集団における他者とのコミュニケーションの度合いを示すスコアである。
【0030】
コミュニケーションスコア算出部40は、以下の式で示すようにコミュニケーションスコア(S4)を算出する。コミュニケーションスコア算出部40は、算出したコミュニケーションスコアS4を記憶部50に記憶する。
S4=β/S1+(1-β)・S2・S3
ただし、βは重みを示す数であり、0≦β≦1とすることができる。
【0031】
コミュニケーションスコアは、孤立スコアが低く、個人行動スコア及び傾向スコアが高いほど高い値となる。
【0032】
記憶部50は、各種情報を記憶する。記憶部50は、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等のストレージを有している。なお、記憶部50として、リムーバブルディスク等の外部記憶媒体が用いられてもよい。記憶部50は、上記の孤立スコア算出部10、個人行動スコア算出部20、傾向スコア算出部30、コミュニケーションスコア算出部40において処理を実行するためのデータ及びプログラムを記憶する。
【0033】
記憶部50は、撮影装置60により撮影された撮影データを記憶する。記憶部50は、孤立スコア算出部10における算出結果を記憶する。孤立スコア算出部10における算出結果としては、例えば対象者ごとの位置情報、孤立スコア等が挙げられる。記憶部50は、個人行動スコア算出部20における算出結果を記憶する。個人行動スコア算出部20における算出結果としては、例えば対象者ごとの位置情報、対象物ごとの種類及び位置情報、個人行動スコア等が挙げられる。記憶部50は、傾向スコア算出部30における算出結果を記憶する。傾向スコア算出部30における算出結果としては、例えば対象者ごとの典型値、補正用情報、傾向スコア等が挙げられる。記憶部50は、コミュニケーションスコア算出部40における算出結果を記憶する。コミュニケーションスコア算出部40における算出結果としては、例えばコミュニケーションスコア等が挙げられる。
【0034】
次に、本実施形態に係るスコア算出方法を説明する。本実施形態に係るスコア算出方法では、学校、幼稚園、保育園等の施設において、撮影装置60により教室、体育館、グラウンド等の各場所を撮影し、撮影データをスコア算出装置100に供給する。
【0035】
スコア算出装置100において、孤立スコア算出部10は、供給された撮影データに基づいて、児童等の複数の対象者を個別に抽出し、各対象者の位置情報をフレームごとに検出する。
図2は、対象者の位置情報の検出結果の一例を示す図である。
図2は、所定期間における検出結果の例を模式的に示している。
図2に示す例では、教室内に存在する複数の対象者Pの位置情報が示されている。以下、
図2に示す状態が第1時間以上継続した場合を例に挙げて説明する。また、複数の対象者Pを区別する場合、対象者P1~P9と表記する。
【0036】
孤立スコア算出部10は、検出した各対象者の位置情報を記憶部50に記憶させる。このとき、孤立スコア算出部10は、供給された撮影データについて、映像としては記憶部50に記憶させないようにすることができる。これにより、対象者の行動について過度な記録となることを抑制でき、トラブルの加害者となる対象者を不用意に目立たせなくすることができる。
【0037】
孤立スコア算出部10は、算出した位置情報に基づいて、対象者と他の対象者との距離の平均値を算出する。また、孤立スコア算出部10は、算出した位置情報に基づいて、対象者ごとに、当該対象者と他の対象者とが第1時間以上近接したか否かを検出し、検出結果に基づいてイベント回数を算出する。
【0038】
図2に示す例において、孤立スコア算出部10は、対象者P1~P9のそれぞれについて、他の対象者Pとの間の距離の平均値を算出する。また、孤立スコア算出部10は、対象者P1と対象者P2とが第1時間以上近接していることを検出する。この場合、対象者P1及び対象者P2のイベント回数を1回カウントする。また、孤立スコア算出部10は、対象者P3、P4、P5、P6が第1時間以上近接していることを検出する。この場合、対象者P3、P4、P5、P6のイベント回数を1回カウントする。また、孤立スコア算出部10は、対象者P7~P9については、他の対象者Pと近接していないため、イベント回数をカウントしない。孤立スコア算出部10は、算出した平均値及びイベント回数に基づいて、孤立スコアを算出する。
図2に示す例では、対象者P7~P9の孤立スコアは、対象者P1~P6の孤立スコアに比べて高くなる。
【0039】
個人行動スコア算出部20は、供給された撮影データに基づいて、対象物を個別に抽出し、対象物の位置情報を検出する。
図3は、対象者及び対象物の位置情報の検出結果の一例を示す図である。
図3は、所定期間における検出結果の例を模式的に示している。
図3に示す例では、教室内に存在する複数の対象者Pの位置情報及び対象物Qの位置情報が示されている。以下、
図3に示す状態が第2時間以上継続した場合を例に挙げて説明する。また、複数の対象者Pを区別する場合には対象者P1~P9と表記し、対象物Qを区別する場合には対象物Q1、Q2と表記する。
【0040】
個人行動スコア算出部20は、画像処理等により、対象物Qを検出する。個人行動スコア算出部20は、検出した対象物Qの種類及び位置情報を検出する。個人行動スコア算出部20は、対象物Qの位置情報と、孤立スコア算出部10で検出された対象者Pの位置情報とに基づいて、対象者Pごとに、当該対象者Pと対象物Qとが第2時間以上近接したか否かを検出する。
図3に示す例では、対象者P7、P8の個人行動スコアは、対象者P1~P6、P9の孤立スコアに比べて高くなる。
【0041】
図3に示す例において、個人行動スコア算出部20は、対象者P1~P6、P9については、対象物と近接していないため、検出しない。個人行動スコア算出部20は、対象者P7について、対象物Q1と第2時間以上近接していることを検出する。個人行動スコア算出部20は、対象者P8について、対象物Q2と第2時間以上近接していることを検出する。個人行動スコア算出部20は、検出結果に基づいて個人行動スコアを算出する。
【0042】
傾向スコア算出部30は、対象者ごとに典型値及び補正用情報を算出し、算出結果に基づいて傾向スコアを算出する。
【0043】
コミュニケーションスコア算出部40は、それぞれ算出された孤立スコアと、個人行動スコアと、傾向スコアとに基づいて、コミュニケーションスコアを算出する。コミュニケーションスコアは、孤立スコアが低く、個人行動スコア及び傾向スコアが高いほど高い値となる。
【0044】
例えば、
図2及び
図3に示す例において、対象者P9は孤立スコアが高く、個人行動スコアが低いため、コミュニケーションスコアが低くなると推定される。一方、対象者P9は、1人で考え事をする傾向が高いなど、対象物が無くても能動的に個人行動を行う傾向が高い場合も考えられる。このような場合、対象者P9の傾向スコアが高く算出される。このため、受動的に個人行動を行わざるを得ない対象者と区別して評価することができる。
【0045】
複数の対象者を管理する管理者は、算出されたコミュニケーションスコアに基づいて、集団における他者とのコミュニケーションの度合いを対象者ごとに把握できる。例えば、コミュニケーションスコアが顕著に低下する等、コミュニケーションスコアの変動があった場合に対策を講じることにより、いじめ等のトラブルの事前抑制につなげることができる。
【0046】
図4は、本実施形態に係るスコア算出装置100の動作の流れを示すフローチャートである。
図4に示すように、スコア算出装置100において、孤立スコア算出部10は、複数の対象者の位置情報の履歴に基づいて、対象者ごとに孤立スコアを算出する(ステップS10)。ステップS10において、孤立スコア算出部10は、対象期間における対象者と他の対象者との距離の平均値と、対象期間において対象者が他の対象者と第1時間以上近接する回数を示すイベント回数と、に基づいて孤立スコアを算出する。
【0047】
次に、個人行動スコア算出部20は、対象者の行動情報に基づいて、集団に対して能動的に個人行動を行っている度合いを示す個人行動スコアを算出する(ステップS20)。個人行動スコア算出部20は、行動情報として対象期間において対象者が個人行動を行うための対象物と第2時間以上近接したことを検出した場合、当該検出ごとの対象物の種類に基づいて個人行動スコアを算出する。
【0048】
次に、傾向スコア算出部30は、他者との関わりに関する前記対象者ごとの傾向を示す傾向スコアを算出する(ステップS30)。ステップS30において、傾向スコア算出部30は、対象者のコミュニケーションスコアの履歴と、予め対象者について設定された補正用情報とに基づいて傾向スコアを算出する。
【0049】
次に、コミュニケーションスコア算出部40は、孤立スコアと、個人行動スコアと、傾向スコアとに基づいて、対象期間における対象者ごとに集団における他者とのコミュニケーションの度合いを示すコミュニケーションスコアを算出する(ステップS40)。
【0050】
以上のように、本実施形態に係るスコア算出装置100は、所定の集団に属する複数の対象者の位置情報の履歴に基づいて、対象者ごとに集団からの孤立度合いを示す孤立スコアを算出する孤立スコア算出部10と、対象者の行動情報に基づいて、集団に対して能動的に個人行動を行っている度合いを示す個人行動スコアを算出する個人行動スコア算出部20と、他者との関わりに関する対象者ごとの傾向を示す傾向スコアを算出する傾向スコア算出部30と、孤立スコアと、個人行動スコアと、傾向スコアとに基づいて、対象期間における対象者ごとに集団における他者とのコミュニケーションの度合いを示すコミュニケーションスコアを算出するコミュニケーションスコア算出部40とを備える。
【0051】
また、本実施形態に係るスコア算出方法は、所定の集団に属する複数の対象者の位置情報の履歴に基づいて、対象者ごとに集団からの孤立度合いを示す孤立スコアを算出することと、対象者の行動情報に基づいて、集団に対して能動的に個人行動を行っている度合いを示す個人行動スコアを算出することと、他者との関わりに関する対象者ごとの傾向を示す傾向スコアを算出することと、孤立スコアと、個人行動スコアと、傾向スコアとに基づいて、対象者ごとに集団における他者とのコミュニケーションの度合いを示すコミュニケーションスコアを算出することとを含む。
【0052】
この構成によれば、所定の集団に属する複数の対象者について、対象者ごとにコミュニケーションスコアを算出することができる。このため、算出されたコミュニケーションスコアを用いることで、例えば事後事象、直接的事象等が検出される前に対策を行うことができる。これにより、集団に属する複数の対象者の間でのトラブルについて事前の抑制につなげることが可能となる。また、コミュニケーションスコアの算出において個人行動スコア及び傾向スコアを用いることにより、例えば1人でいることが能動的な事象か否か、1人でいることが好きか否か、等のように対象者ごとの傾向が考慮される。このため、対象者に適合したコミュニケーションスコアを算出することができる。
【0053】
本実施形態に係るスコア算出装置100において、孤立スコア算出部10は、対象期間における対象者と他の対象者との距離の平均値と、対象期間において対象者が他の対象者と近接する回数を示すイベント回数と、に基づいて孤立スコアを算出する。この構成によれば、対象者の孤立スコアを高精度に算出することができる。
【0054】
本実施形態に係るスコア算出装置100において、個人行動スコア算出部20は、対象期間において対象者が個人行動を行うための対象物と近接したことを行動情報として検出した場合、当該検出ごとの対象物の種類に基づいて個人行動スコアを算出する。この構成によれば、対象者の個人行動スコアを高精度に算出することができる。
【0055】
本実施形態に係るスコア算出装置100において、傾向スコア算出部30は、対象者のコミュニケーションスコアの履歴と、予め対象者について設定された補正用情報とに基づいて傾向スコアを算出する。この構成によれば、対象者の傾向スコアを高精度に算出することができる。
【0056】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、撮影装置60の撮影データに基づいて対象者の位置情報を検出する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、赤外線センサ、GPS等の他の手段を用いて対象者の位置情報を検出する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
P,P1~P9対象者、Q,Q1,Q2…対象物、10…孤立スコア算出部、20…個人行動スコア算出部、30…傾向スコア算出部、40…コミュニケーションスコア算出部、50…記憶部、60…撮影装置、100…スコア算出装置