(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135334
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】サーボシステム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/05 20060101AFI20230921BHJP
H02P 5/00 20160101ALI20230921BHJP
【FI】
G05B19/05 S
H02P5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040490
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松上 雅一
(72)【発明者】
【氏名】大野 悌
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 健治
【テーマコード(参考)】
5H220
5H572
【Fターム(参考)】
5H220AA05
5H220BB07
5H220HH03
5H220JJ12
5H220JJ28
5H220KK05
5H572AA14
5H572DD01
5H572EE03
5H572GG01
5H572GG02
5H572HB07
5H572HC07
5H572JJ02
5H572JJ24
5H572JJ26
5H572KK03
5H572LL07
5H572LL32
(57)【要約】
【課題】サーボシステムによりサーボ制御されるモータが取り付けられた装置が変更されたとき、変更後の装置においても可及的速やかに当該装置でサーボ制御を実行可能とする。
【解決手段】制御装置と、一又は複数のサーボドライバと、を含み、制御対象とする対象装置を変更可能とし、且つ、変更後の該対象装置が有する所定数のモータと該一又は複数のサーボドライバの一部又は全部が対応付けられるサーボシステムであって、対象装置が変更されたことを検知する検知部と、検知部により対象装置が変更されたことが検知されると、該変更後の対象装置が有する所定数のモータの構成情報に基づいて、一又は複数のサーボドライバによって該所定数のモータのサーボ制御が可能となるように、該一又は複数のサーボドライバのそれぞれにおける制御構造を調整する調整部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と、一又は複数のサーボドライバと、を含み、制御対象とする対象装置を変更可能とし、且つ、変更後の該対象装置が有する所定数のモータと該一又は複数のサーボドライバの一部又は全部が対応付けられるサーボシステムであって、
前記対象装置が変更されたことを検知する検知部と、
前記検知部により前記対象装置が変更されたことが検知されると、該変更後の対象装置が有する前記所定数のモータの構成情報に基づいて、前記一又は複数のサーボドライバによって該所定数のモータのサーボ制御が可能となるように、該一又は複数のサーボドライバのそれぞれにおける制御構造を調整する調整部と、
を備える、サーボシステム。
【請求項2】
前記調整部は、前記変更後の対象装置において前記所定数のモータのサーボ制御に用いられる制御パラメータを、前記構成情報に基づいて、前記一又は複数のサーボドライバのうち前記所定数のモータに対応付けられる対応サーボドライバ又は前記所定数のモータの記憶領域から取得し、該取得された制御パラメータを、該対応サーボドライバにおける前記制御構造に設定する、
請求項1に記載のサーボシステム。
【請求項3】
前記制御パラメータは、前記対応サーボドライバの電力供給能力に応じて設定された、前記所定数のモータをサーボ制御するための制御パラメータである、
請求項2に記載のサーボシステム。
【請求項4】
前記調整部は、前記検知部により前記対象装置が変更されたことが検知されると、前記一又は複数のサーボドライバのうち前記所定数のモータに対応付けられる対応サーボドライバに、該所定数のモータに対して所定のゲイン調整処理を実行させ、その実行結果を該対応サーボドライバにおける前記制御構造に設定する、
請求項1に記載のサーボシステム。
【請求項5】
前記所定のゲイン調整処理に関する複数の処理パターンの選択を受け付ける受付部を、更に備え、
前記調整部は、前記受付部によって受け付けられた前記処理パターンに応じて前記所定のゲイン調整処理の内容を変更する、
請求項4に記載のサーボシステム。
【請求項6】
前記所定数のモータのそれぞれが有するエンコーダは、前記一又は複数のサーボドライバの一部又は全部にエンコーダケーブルで接続され、
前記エンコーダケーブルにおける前記サーボドライバ側の端子に、該エンコーダケーブルが接続されている前記モータの識別情報が格納され、
前記調整部は、前記エンコーダケーブルに格納された前記識別情報に基づいて、前記所定数のモータの構成情報を取得する、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のサーボシステム。
【請求項7】
前記一又は複数のサーボドライバは、それぞれ、互いに通信することを可能にするドライバ間通信部を有し、
前記調整部は、前記検知部により前記対象装置が変更されたことが検知されると、前記サーボドライバの数が前記所定数より多い場合には、前記一又は複数のサーボドライバのうちモータが対応付けられた第1ドライバは、前記構成情報に基づいて、前記ドライバ間通信部を介して該一又は複数のサーボドライバのうちモータが対応付けられていない第2ドライバに対して、不要なサーボドライバであることを通知する、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のサーボシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置とサーボドライバを含むサーボシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なサーボシステムでは、モータを駆動するサーボドライバで、サーボ制御のための位置、速度、電流に関する制御ループ演算が行われる。その上位側の制御装置(例えば、PLC等)からサーボドライバに対して位置指令が出される。このようなサーボ制御を実現するためには、駆動対象であるモータに対応した制御パラメータを、当該サーボ制御のための制御構造に設定する必要がある。制御構造とは、サーボ制御の制御ループ演算を実現するための制御演算上の構造体である。
【0003】
したがって、モータをサーボ制御するためにはサーボドライバでの制御構造において制御パラメータの設定が必須となるが、そのため、制御対象となるモータが変更となると、その都度、サーボドライバにおいて設定すべき制御パラメータを更新する必要がある。例えば、特許文献1、2には、モータの機種が変更されると、その変更後の機種に応じた制御パラメータを読み出してサーボ制御に利用する構成が開示されている。また、特許文献3には、同期モータと誘導モータの切り替えを行うサーボ制御装置において、制御部を、両モータに共通する制御部と、各モータに固有の制御部とで構成することで、制御形態が異なるモータを1つのサーボ制御装置で制御可能とする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-48526号公報
【特許文献2】特開2001-245488号公報
【特許文献3】特開2000-270595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サーボシステムが利用される工場等の加工ラインでは、その目的に応じて、利用する加工装置等を変更する場合がある。例えば、特定の仕様の製品を加工する場合には、それ以外の仕様の製品に対して用いていた加工装置ではなく、特定仕様の製品に対応した専用の加工装置を利用するケース等である。このようにサーボシステムが同じままで、その制御対象となる加工装置を別の装置に切り替えようとする場合、装置に取り付けられている、サーボシステムによってサーボ制御される直接の対象であるモータと、サーボシステム側のサーボドライバとの組合せが崩れることになる。一般に、加工装置の機械特性(例えば、モータの駆動対象となる負荷の総イナーシャや、機械剛性等)や、サーボドライバによる電力供給能力とモータ側の電気的特性との相関に基づいて制御パラメータは決定されているため、上記組合せが崩れると、モータの好適なサーボ制御が困難となる。
【0006】
そのためサーボシステムによる制御対象の装置が変更されると、改めてサーボシステムによりサーボ制御を開始するまでに制御パラメータの再設定等、制御を開始するまでに多くの調整時間を要することになり、工程における歩留まりが悪化する要因ともなり得る。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、サーボシステムによりサーボ制御されるモータが取り付けられた装置が変更されたとき、変更後の装置においても可及的速やかに当該装置でサーボ制御を実行可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願開示の一側面に係るサーボシステムは、制御装置と、一又は複数のサーボドライバと、を含み、制御対象とする対象装置を変更可能とし、且つ、変更後の該対象装置が有する所定数のモータと該一又は複数のサーボドライバの一部又は全部が対応付けられるサーボシステムであって、前記対象装置が変更されたことを検知する検知部と、前記検知部により前記対象装置が変更されたことが検知されると、該変更後の対象装置が有する前記所定数のモータの構成情報に基づいて、前記一又は複数のサーボドライバによって該所定数のモータのサーボ制御が可能となるように、該一又は複数のサーボドライバのそれぞれにおける制御構造を調整する調整部と、を備える。
【0009】
このように構成されるサーボシステムでは、当該システムによってサーボ制御されるモータを搭載する装置は、変更可能とされる。すなわち、当該サーボシステムによるサーボ制御の対象となる装置が切り替えにより、サーボシステムの一又は複数のサーボドライバと、装置側のモータとの対応付けが変更される。したがって、このような利用形態を可能にするためには、サーボシステムに含まれるサーボドライバの数と装置に含まれるモータの数である上記所定数を比較したときに、前者が後者以上でなければならない。
【0010】
このようにサーボシステムによる制御対象となる装置が変更可能とされると、一つのサーボドライバに対して、複数種類のモータがその駆動対象として接続されることになるため、サーボシステムを効率的に活用することができる。一方で、このような形態では、サーボドライバの電力供給能力に対して、様々なモータが接続されることを意味する。一般に、モータはその電気的特性を踏まえ、当該モータに適した電力供給能力のサーボドライバを接続し、そのモータとサーボドライバとの組合せを前提として、サーボ制御の制御構造のための制御パラメータが設定されている。したがって、サーボシステムによる制御対象となる装置の変更を可能とするためには、対象となる装置毎に各サーボドライバにおいて適切に制御パラメータを設定しなければならない。当該制御構造とは、サーボ制御の制御ループ演算を実現するための制御演算上の構造体であり、電気的にサーボドライバ内に形成される。
【0011】
そこで、本願開示のサーボシステムでは、上記のように、検知部により制御対象となる装置(対象装置)の変更が検知されると、その対象装置が有する所定数のモータの構成情報に基づいて、調整部による各サーボドライバにおける制御構造の調整が行われる。当該構成情報とは、対象装置にどのようなモータが搭載されているかを示す情報である。構成情報においては、モータへの供給電力の観点からモータを判別できる情報であることが好ましい。構成情報が明確になることで、サーボシステムの一又は複数のサーボドライバにおいては、どのような駆動電流を供給すべきか、すなわち、対応する適切な制御パラメータを把握することが可能となる。そして、調整部が変更後の対象装置におけるモータの構成情報を踏まえて、モータとサーボドライバとの実際の組合せに対応した制御パラメータを各サーボドライバの制御構造に反映させることで、サーボシステムによる制御対象の装置の変更の際に要する、モータのサーボ制御を開始するための手間を効果的に軽減することができる。
【0012】
ここで、上記サーボシステムにおいて、前記調整部は、前記変更後の対象装置において前記所定数のモータのサーボ制御に用いられる制御パラメータを、前記構成情報に基づいて、前記一又は複数のサーボドライバのうち前記所定数のモータに対応付けられる対応サーボドライバ又は前記所定数のモータの記憶領域から取得し、該取得された制御パラメータを、該対応サーボドライバにおける前記制御構造に設定してもよい。当該制御パラメータは、モータのサーボ制御に利用される制御パラメータや、該制御パラメータに関連する他のパラメータ等であり、モータのサーボ制御のための制御構造の調整に必要な情報である。例えば、前記制御パラメータは、前記対応サーボドライバの電力供給能力に応じて設
定された、前記所定数のモータをサーボ制御するための制御パラメータであってもよい。また、サーボドライバやモータの記憶領域に格納された制御パラメータは、固定的に格納された情報であってもよく、また、適宜、上書き等により更新することが可能な情報であってもよい。このように機能する調整部を備えることで、本願開示のサーボシステムは、新たな対象装置に変更された場合に、当該対象装置に搭載されたモータのサーボ制御の環境を速やかに形成することができる。
【0013】
また、別法として、上記サーボシステムにおいて、前記調整部は、前記検知部により前記対象装置が変更されたことが検知されると、前記一又は複数のサーボドライバのうち前記所定数のモータに対応付けられる対応サーボドライバに、該所定数のモータに対して所定のゲイン調整処理を実行させ、その実行結果を該対応サーボドライバにおける前記制御構造に設定してもよい。所定のゲイン調整処理として、公知の技術を適宜採用することができ、例えば、対応サーボドライバによってモータの周波数応答を計測し、その周波数応答に基づいて速度ループゲインや位置ループゲイン等のゲイン情報を算出する処理を採用できる。このように機能する調整部を備えることで、本願開示のサーボシステムは、対象装置が変更された場合に、その変更時点における対象装置の現状、すなわち使用による経年変化等を好適に反映したサーボ制御の環境を速やかに形成することができる。
【0014】
ここで、上記のサーボシステムは、前記所定のゲイン調整処理に関する複数の処理パターンの選択を受け付ける受付部を、更に備えてもよく、その場合、前記調整部は、前記受付部によって受け付けられた前記処理パターンに応じて前記所定のゲイン調整処理の内容を変更してもよい。このように目的に応じて異なる内容のゲイン調整処理のパターンを準備しておくことで、より好適なサーボ制御の環境を速やかに形成することができる。
【0015】
ここで、上述までのサーボシステムにおいて、前記所定数のモータのそれぞれが有するエンコーダは、前記一又は複数のサーボドライバの一部又は全部にエンコーダケーブルで接続されてよく、また、前記エンコーダケーブルにおける前記サーボドライバ側の端子に、該エンコーダケーブルが接続されている前記モータの識別情報が格納されてもよい。その場合、前記調整部は、前記エンコーダケーブルに格納された前記識別情報に基づいて、前記所定数のモータの構成情報を取得してもよい。一般に、エンコーダケーブルは、サーボ制御のための制御構造上の一経路として、エンコーダとサーボドライバとを接続する。そこで、このエンコーダケーブルにモータの識別情報を関連付けておくことで、本願開示のサーボシステムにおいては、対象装置におけるモータの構成情報を好適に取得することができる。なお、当該構成情報の取得方法については、ユーザに構成情報を入力させ又は選択させる等の、その他の方法を採用してもよい。
【0016】
また、上述までのサーボシステムにおいて、前記一又は複数のサーボドライバは、それぞれ、互いに通信することを可能にするドライバ間通信部を有してもよく、その場合、前記調整部は、前記検知部により前記対象装置が変更されたことが検知されると、前記サーボドライバの数が前記所定数より多い場合には、前記一又は複数のサーボドライバのうちモータが対応付けられた第1ドライバは、前記構成情報に基づいて、前記ドライバ間通信部を介して該一又は複数のサーボドライバのうちモータが対応付けられていない第2ドライバに対して、不要なサーボドライバであることを通知してもよい。サーボドライバの数が所定数より多い場合には、サーボドライバの一部が余ることになる。一方で、余ったサーボドライバは、自己に対してモータが接続されるのか否かについて自己で判断することが困難である。そこで、既にモータが接続され、変更後の装置のモータの構成情報を把握している第1ドライバは、ドライバ間通信部を介することで、モータが接続されていない第2ドライバに対して、不要なサーボドライバであることを通知することができる。この結果、サーボシステムとして、速やかにサーボ制御のための準備、すなわち、制御構造の調整を済ませることができる。
【発明の効果】
【0017】
サーボシステムによりサーボ制御されるモータが取り付けられた装置が変更されたとき、変更後の装置においても可及的速やかに当該装置でサーボ制御を実行可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本願開示のサーボシステムの概略構成を示す第1の図である。
【
図2A】本願開示のサーボシステムに含まれるサーボドライバにおける制御信号の流れを示す図である。
【
図2B】本願開示のサーボシステムに含まれるサーボ制御のための制御構造を示す図である。
【
図3】本願開示のサーボシステムにおいて、サーボ制御の対象となる装置が変更になった際に実行される処理の流れを示す第1のフローチャートである。
【
図4】本願開示のサーボシステムにおいて、エンコーダケーブルを用いた変更後の装置を検知するための信号の流れを示す図である。
【
図5】本願開示のサーボシステムの概略構成を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細を説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。本願開示では、サーボシステムの一つの例示的形態として、制御装置(PLC)にと繋がれるサーボドライバの数を3台とする形態を示すが、サーボドライバの数は1台又は2台でもよく、また
4台以上でも構わない。
【0020】
図1は、サーボシステム1の概略構成を示す図である。サーボシステム1は、制御装置であるPLC5と、PLC5により生成される各制御軸の位置指令に従って、制御対象であるモータをサーボ制御するために、その駆動電流を生成するサーボドライバ4、4a、4b(以下、「サーボドライバ4等」ともいう)を有する。したがって、サーボシステム1は、最大で3つの制御軸を有していることになる。ここで、サーボシステム1による駆動対象は、装置20又は装置30である。装置20はその内部にモータ21、21a、21bの3台を有する加工装置であり、装置30はその内部にモータ21、21a、21bの3台を有する加工装置である。本願の実施形態では、装置20と装置30とを適宜切り替えて駆動することで、ユーザは、所定の結果物を得る。言い換えれば、ユーザは所定の結果物を得るために、サーボシステム1によって駆動される装置を、装置20と装置30とで切り替える必要がある。
図1中の白抜き矢印は、その装置の切り替えを表している。
【0021】
装置20、30の一例としては、例えば、工作機械や搬送装置等のXYテーブルや、複数の関節軸を有する産業用ロボットのアーム等が挙げられる。装置20が有するモータ21、21a、21b(以下、「モータ21等」ともいう)及び装置30が有するモータ31、31a(以下、「モータ31等」ともいう)は、ACサーボモータである。モータ21等、31等にはそれぞれエンコーダ22、22a、22b、32、32aが取り付けられており、当該エンコーダにより各モータの動作に関する信号がフィードバック送信されている。このフィードバック送信される信号(以下、フィードバック信号という)は、たとえばモータ21等の回転軸の回転位置(角度)についての位置情報や、その回転軸の回転速度の情報等を含む。
【0022】
PLC5は、装置20、30の各モータの動作(モーション)に関する動作指令信号を生成する。PLC5で生成された動作指令信号は、位置に関する制御ループ演算を行う位置制御部401、速度に関する制御ループ演算を行う速度制御部402、モータの駆動電流に関する制御ループ演算を行う電流制御部403(
図2Bを参照)を有する、各制御軸
のサーボドライバ4等のサーボ制御部42等に供される。サーボ制御部42等におけるサーボ制御構造の詳細については、後述する。
【0023】
PLC5は、通信部51と検知部52を有する。通信部51は、PCL5によるサーボ制御の対象となるモータに駆動電流を供給するサーボドライバ4等との間で通信を行うための機能部である。したがって、通信相手となるサーボドライバ4等のそれぞれにも対応する通信部41、41a、41bが設けられている。検知部52は、サーボシステム1の制御対象となる装置(対象装置)が変更されたこと、すなわち、上述したように、これまで装置20を駆動していた状態から、装置30を駆動する状態に切り替えること、又は、その逆を検知する機能部である。駆動対象となる装置の切り替えの検知は、例えば、ユーザにより装置を切り替えるための入力がPLC5に対してある場合には、その入力を検知することで当該装置切り替えを検知することができる。別法として、検知部52は、装置の切り替えに際して、サーボドライバ4等に接続されるモータの種別を検知し、検知されたモータ種別の組合せに基づいて、どの装置に切り替えられたかを検知することができる。
【0024】
また、検知部52は、駆動対象となる装置の変更の検知に加えて、変更後の装置におけるモータの構成情報を取得する。装置におけるモータの構成情報とは、装置が有するモータの数やその種類に関する情報であり、サーボドライバ4等によってサーボ制御する際にその制御対象を明らかにするための情報である。
図1に示す例では、装置20にはモータ21等の3台のモータが備えられこと、更に、それぞれのモータの種別に関する情報、すなわち、駆動に要する電力等の電気的特性を把握できる情報等が、装置におけるモータの構成情報の一例として挙げられる。
【0025】
次に、サーボドライバ4等が有する機能部について説明する。なお、サーボドライバ4、4a、4bの何れも、有する機能部については実質的に同一であるから、主にサーボドライバ4に関して説明する。サーボドライバ4は、通信部41、サーボ制御部42、調整部43、受付部44、記憶部45、駆動回路47を有する。通信部41については既に言及しているので、主にその他の機能部について説明する。
【0026】
サーボ制御部42は、上述したように、サーボドライバ4に形成されるサーボ制御構造を有し、対応付けられたモータのサーボ制御のための制御ループ演算を行う機能部である。
図2A及び
図2Bに基づいて、サーボ制御構造について説明する。
図2Aは、サーボドライバ4に着目したときの、モータ21のサーボ制御に関する制御信号の流れを示す。PLC5から届いた動作指令信号は通信部41によって受信され、サーボ制御部42に供される。サーボ制御部42は内部に有するサーボ制御構造(
図2Bを参照)によって、駆動回路47を駆動するための電流指令を生成する。なお、サーボ制御構造に対しては、モータ21が有するエンコーダ22からのフィードバック信号が、エンコーダケーブル220を介して届けられる。駆動回路47は、いわゆるインバータ装置である。駆動回路47への電力には、図示しない交流電源から送られる交流電力が利用される。本願開示では、駆動回路47は三相交流を受けるタイプのものであるが、単相交流を受けるタイプのものでもよい。駆動回路47によって、モータ21を駆動するための駆動電流が生成される。
【0027】
続いて、
図2Bは、サーボ制御部42が有するサーボ制御構造を示す。当該サーボ制御構造は、位置制御部401、速度制御部402、電流制御部403を備えている。位置制御部401は、例えば、比例制御(P制御)を行う。具体的には、PLC5内で生成される位置指令pcmdと検出位置との偏差である位置偏差に、所定の位置比例ゲインを乗ずることにより速度指令vcmdを算出する。
【0028】
速度制御部402は、例えば、比例積分制御(PI制御)を行う。具体的には、位置制
御部401により算出された速度指令vcmdと検出速度との偏差である速度偏差の積分量に所定の速度積分ゲインを乗じ、その算出結果と当該速度偏差の和に所定の速度比例ゲインを乗ずることにより、トルク指令τcmdを算出する。また、速度制御部402はPI制御に代えてP制御を行ってもよい。
【0029】
電流制御部403は、速度制御部402により算出されたトルク指令τcmdと、駆動回路47からモータ21の巻線に供給された駆動電流との偏差に基づいて電流指令Ccmdを駆動回路47に対して出力する。電流指令Ccmdを受けた駆動回路47は、モータ21の駆動電流を生成する。電流制御部403は、トルク指令に関するフィルタ(1次のローパスフィルタ)や一又は複数のノッチフィルタを含み、制御パラメータとして、これらのフィルタの性能に関するカットオフ周波数等を有していてもよい。
【0030】
そして、サーボ制御構造では、モータ21が有するエンコーダ22の検出信号に基づいて算出された検出位置信号と検出速度信号が、それぞれ位置及び速度に関するフィードバック信号として、位置制御部401、速度制御部402に対してフィードバックされる。サーボ制御部42による制御ループ演算を行うためには、直接の駆動対象であるモータ21やモータ21が組み込まれた装置20の機械的、構造的条件を反映させた制御ゲインやノッチフィルタのカットオフ周波数、その他のパラメータ等の制御パラメータ等の設定が必要になる。
【0031】
また、本願開示の形態では、同一のサーボシステム1によって異なるタイプの装置20、30を駆動することになる。このときサーボシステム1におけるサーボドライバの組合せは、対象となる装置にかかわらず固定されたものである。そのため、サーボシステム1と駆動する装置との組合せによっては、サーボドライバの電力供給能力とモータの組合せが本来あるべき組合せからずれてしまう場合がある。例えば、モータ21は、本来は最大10Aの電力供給能力を有するサーボドライバによって駆動されるものであるのに対して、サーボシステム1に接続される場合、対応する制御軸のサーボドライバ4の最大電流が20Aとなるような場合である。このような場合には、サーボドライバ4による電流の供給上限を10Aに制限し、モータ21の駆動に電磁気的な問題等が生じないようにするための制御パラメータが必要となる。
【0032】
次に、調整部43は、検知部52によって対象装置の変更が検知されたときに、変更後の装置におけるモータの構成情報に基づいて、サーボ制御構造の調整を行う。すなわち、調整部43は、サーボシステム1によって変更後の装置を好適にサーボ制御できるように、制御対象となるモータのサーボ制御のための制御構造を調整する機能部である。変更後の装置におけるモータの構成情報は、検知部52から取得できる。モータの構成情報を取得することで、調整部43は、変更後の装置に搭載されるモータの種別、すなわちサーボドライバ4に対応付けられるモータの種別を把握できる。
【0033】
そして、制御対象となるモータの種別を把握した調整部43は、当該モータをサーボ制御するために必要なサーボ制御構造の調整を行う。調整部43によるサーボ制御構造の調整の具体的な形態として、以下の二つが例示できる。
(第1の調整形態)
第1の調整形態では、調整部43は、モータの構成情報に基づいて、サーボドライバ4に対応付けられたモータ(変更後の装置が装置20である場合にはモータ21、装置30である場合にはモータ31)のための制御パラメータを、記憶部45から取得し、その取得した制御パラメータを用いて、当該モータのサーボ制御が可能となるようにサーボ制御構造を調整する。なお、記憶部45は、サーボシステム1によって制御対象となる装置に関する、各制御軸のモータの制御パラメータに関する情報を記憶、格納するメモリである。記憶部45への制御パラメータに関する情報の格納は、後述する
図3に示す調整処理の
中で行われる。
【0034】
第1の調整形態によれば、以前にサーボシステム1によって装置が制御された際に用い
られた制御パラメータに関する情報を用いて、対象装置が変更されたときに速やかにサーボ制御構造の調整が実現される。なお、制御パラメータに関する情報は、サーボドライバ4に設けられた記憶部45に代えて、サーボドライバ4に対応付けられたモータの記憶領域や、サーボドライバ4に電気的に接続された外部の記憶領域に格納しておき、検知部52が装置変更を検知したときに、調整部43が当該調整領域から制御パラメータに関する情報を取得してきてもよい。
【0035】
(第2の調整形態)
第2の調整形態では、調整部43は、モータの構成情報に基づいて、サーボドライバ4に対応付けられたモータのための制御パラメータのうち、サーボ制御構造の位置制御部401、速度制御部402に設定する制御ゲインを取得するためのゲイン調整処理をサーボドライバ4に実行させる。当該ゲイン調整処理は、周知の技術を採用でき、例えば、各制御軸における周波数応答に基づいて制御ゲインを調整することができる。当該ゲイン調整処理のための制御プログラムは、サーボドライバ4に格納されており、各サーボドライバ4において実行が可能である。各制御軸でのゲイン調整処理が他の制御軸に影響を及ぼさないように、各制御軸で個別にゲイン調整処理を行ってもよく、別法として、装置での各制御軸の連携を踏まえて複数の制御軸で同時にゲイン調整処理を行ってもよい。そして、調整部43は、その調整処理によって取得した制御ゲインを当該モータのサーボ制御構造に反映させる。
【0036】
第2の調整形態によれば、装置変更後に制御ゲインの調整処理を行うため、変更後の装置においてその時点での状況を好適に反映させた制御ゲインを用いてサーボ制御構造を調整することができる。装置によっては使用時間の経過とともに、装置内の摩擦・摩耗状況や剛性等が変化していき、それに伴って最適な制御ゲインも変動する可能性がある。そこで、このように装置変更に伴い調整部43により制御ゲインの調整処理を実行し、それを反映してサーボ制御構造の調整を行うことで、変更後の装置の能力を最大化することができる。なお、ゲイン調整処理で算出されるのは一部の制御ゲインであるから、それ以外の制御パラメータについては必要に応じて上記の第1の調整形態により取得した制御パラメータを利用することができる。
【0037】
また、ゲイン調整処理は、最適な制御ゲインを取得できる一方で、その取得のためにはある程度の時間を要することになり、変更後の装置の速やかな制御開始を阻害するおそれがある。そこで、調整部43が実行可能なゲイン調整処理には複数のパターンが存在し、ユーザは、ゲイン調整処理を実行する場合、いずれのパターンを実行させるかを選択することが可能となるように調整部43を構成してもよい。そして、ユーザによるパターンの選択は、PLC5で入力され、その入力結果が受付部44によって受け付けられる。ゲイン調整処理のパターンとしては、その処理時間に違いが生じるように複数のパターンを設定することができ、例えば、制御軸の可動範囲のうち複数の位置で周波数応答を取得し最適な制御ゲインを取得するパターンや、制御軸の可動範囲のうち予め定められた1か所の位置のみで周波数応答を取得し制御ゲインを取得するパターン、ゲイン調整処理を行わないパターン等が例示できる。また、ゲイン調整処理は、全ての制御軸で行う必要はなく、ユーザが望む一部の制御軸のみで行うようにしてもよい。この場合、ゲイン調整処理のパターンに関する要求とともに、それが実行される制御軸に関する情報も各サーボドライバの受付部に渡される。
【0038】
また、サーボドライバ4aは、サーボドライバ4と同様に、通信部41a、サーボ制御部42a、調整部43a、受付部44a、記憶部45a、駆動回路47aを有する。サー
ボドライバ4bも、サーボドライバ4と同様に、通信部41b、サーボ制御部42b、調整部43b、受付部44b、記憶部45b、駆動回路47bを有する。
【0039】
<調整制御>
ここで、
図3に基づいて、サーボシステム1において実行される調整制御について説明する。当該調整制御は、
図1に示すPLC5及びサーボドライバ4等が有する各機能部が協働して繰返し実行される。なお、本実施形態の説明においては、基本的には、これまでサーボシステム1には装置30が接続されており、それを装置20への接続に切り替えるケースを想定する。このケース以外について言及する場合には、その旨を明示する。したがって、変更前の対象装置は装置30であり、変更後の対象装置は装置20となる。
【0040】
先ず、S101では、サーボシステム1に対して新しい装置が接続されたか否か、すなわち、サーボシステム1によるサーボ制御の対象となる装置が変更されたか否かが判定される。当該判定処理は、検知部52によって行われる。ここで、検知部52による装置20のモータの構成情報の取得について、
図4に基づいて説明する。
図4は、サーボシステム1に装置20が接続された状態、すなわち、対象装置が、装置30から装置20に切り替えられた後の状態を示す。この状態では、サーボシステム1のサーボドライバ4、4a、4bには、それぞれモータ21、21a、21bが対応付けられている。そして、モータ21、21a、21bがそれぞれ有するエンコーダ22、22a、22bは、エンコーダケーブル220、220a、220bで接続され、各モータからのフィードバック信号が、対応付けられたサーボドライバ4等のサーボ制御部42等にフィードバックされている(信号のフィードバックの経路については、図示していない)。
【0041】
ここで、サーボドライバ4とモータ21のエンコーダ22とを接続するエンコーダケーブル220について説明する。エンコーダケーブル220のサーボドライバ4側の端子222には、モータ21を識別するための識別情報を格納するメモリ221が設けられている。したがって、端子222がサーボドライバ4のコネクタ450に接続されると、サーボドライバ4が端子222を介してメモリ221内の識別情報にアクセスすることが可能になる。その結果、通信部41を介して、メモリ内の識別情報が、PLC5の検知部52に集約される。サーボドライバ4a、4bとモータ21a、21bのエンコーダ22a、22bとをそれぞれ接続するエンコーダケーブル220a、220bも同様の構成を有しており、端子222a、222bがそれぞれサーボドライバ4a、4bのコネクタ450a、450bに接続されると、メモリ221a、221bに格納されているモータ21a、21bの識別情報が、通信部41a、41bを介してPLC5の検知部52に集約される。
【0042】
この結果、検知部52は、サーボシステム1に接続されているモータ群が、モータ21、21a、21bであることを把握でき、過去にサーボシステム1に接続されたことのある装置が有するモータ群の情報であって、後述するS103の処理により作成される装置情報リストと比較することで、サーボシステム1により制御される装置が装置20であることを把握することができる。これまで制御対象であった装置が装置30であった場合には、その変化をもって検知部52は、サーボシステム1に新しい装置が接続され直したと判定することができる。
【0043】
別法として、ユーザがPLC5においてサーボシステム1に新しい装置を接続する旨の入力を行ってもよい。この場合、ユーザの入力をもって検知部52が、サーボシステム1に新しい装置が接続されたと判定することができる。また、ユーザの入力後に、検知部52は、サーボドライバ4等に接続されているエンコーダケーブル220等のメモリ221等から各モータの識別情報を収集して、装置20におけるモータの構成情報を取得する。
【0044】
S101で肯定判定されると処理はS102へ進み、否定判定されると調整制御は一旦、終了する。そして、S102では、サーボシステム1に新しく接続された装置が、最初の接続か否か、すなわち過去に接続された履歴が無いか否かが判定される。当該判定は、検知部52によって、S103で作成される装置情報リストに基づいて行われる。S102で肯定判定されると処理はS103へ進み、否定判定されると処理はS104へ進む。
【0045】
S103では、サーボシステム1に対して初めて装置が接続された場合に、検知部52による、その装置に搭載されたモータの情報を含む装置情報リストの生成と、各ドライバの記憶部45等への、当該装置における当該モータのサーボ制御のための制御パラメータに関する情報の格納とを行う登録処理が実行される。前者の装置情報リストの生成については、上述したように検知部52が集約した、装置におけるモータの構成情報を用いて、当該装置が未登録(装置情報リストが未作成)である場合に作成される。また、後者の制御パラメータに関する情報の格納については、当該装置の情報と関連付けた形で当該情報が記憶部45等へ格納される。これにより、今後、対象装置の変更が行われた際に、変更後の対象装置に好適に対応するサーボ制御構造を形成するための準備が行われたことになる。なお、最初に格納される制御パラメータは、ユーザにより公知の方法で入力されてよく、また、最初の装置の立ち上げ時に行われるゲイン調整処理等の調整結果を反映させてもよい。S103の登録処理が終了すると、調整制御は一旦、終了する。このとき、登録処理とともにサーボシステム1のサーボドライバ4等には、初めて接続されている対象装置に対応するサーボ制御構造が形成されている。
【0046】
S102で否定判定されると、過去にサーボシステム1に接続されたことがある装置が対象装置となっていることを意味する。したがって、S104では、検知部52が対象装置を特定する。本実施形態では、対象装置として装置20が特定される。続いて、S105では、S104で特定された対象装置のモータの構成情報に基づいて、各サーボドライバにおいて対応付けられているモータの、対象装置におけるサーボ制御を実現するための制御パラメータが、記憶部45等から読み出される。例えば、装置20が対象装置である場合には、そのモータの構成はモータ21、21a、21bであることが装置情報リストから理解できる。そこで、検知部52からサーボドライバ4等の調整部43等に対して、対応付けられたモータ21等の制御パラメータに関する情報を、記憶部45等から読み出すように指示が出され、それを調整部43等が実行する。
【0047】
そして、S106では、上述したように変更された装置において、ゲイン調整処理を行うか否かの判定が行われる。当該判定は、受付部44等が受け付けたユーザのゲイン調整処理のパターン要求に基づいて、調整部43等により行われる。例えば、受付部44等が受け付けるゲイン調整パターンには、制御軸の可動範囲における複数位置で周波数応答を取得し制御ゲインを算出するフル調整パターンと、当該可動範囲の一箇所で周波数応答を取得し制御ゲインを算出する簡易調整パターンと、ゲイン調整処理を行わないパターンの3つが含まれ、ユーザは何れかのパターンを選択する。ユーザによってフル調整パターンと簡易調整パターンの何れかが選択された場合にはS106では肯定判定され、それ以外のパターンが選択された場合にはS106では否定判定される。また、ユーザが一部の制御軸においてのみゲイン調整処理を行うことを望む場合は、その情報も受付部44等に渡される。S106で肯定判定されると処理はS107へ進み、否定判定されると処理はS109へ進む。
【0048】
S107では、調整部43等が、受付部44等で受け付けたパターン要求に基づいて、上記の第2の調整形態で示したゲイン調整処理を実行する。この結果、調整部43等は、各制御軸において又はユーザが要求した制御軸において、現時点で装置の状態に最も適した、サーボ制御構造のための制御ゲインを取得することができる。そして、続くS108では、S105で読み出した制御パラメータに含まれる制御ゲインを、新たに取得した制
御ゲインに更新する。このとき、記憶部45等に格納されている制御パラメータに関する情報も更新される。
【0049】
そして、S109では、調整部43等は、ゲイン調整処理を行った場合には調整後の制御ゲインが反映された制御パラメータを、ゲイン調整処理を行っていない場合には記憶部45等から読み出した制御パラメータを、各制御軸のサーボドライバ4等に形成されるサーボ制御構造に設定する。これにより、サーボシステム1に接続する装置が変更された場合に、変更後の装置に対応したサーボ制御構造がサーボドライバ4等に好適に形成される。その結果、変更後の装置においても、可及的速やかに当該装置でサーボ制御を実行することが可能となる。
【0050】
ここで、上記の通り、対象装置が装置30から装置20に変更された場合には、サーボシステム1の制御軸の最大数3に対応する数のモータが各サーボドライバ4等に接続されるが、逆に、対象装置が装置20から装置30に変更された場合には、サーボシステム1の制御軸の最大数3より少ない数のモータ(2台のモータ)がサーボドライバ4、4aに接続され、サーボドライバ4bについては接続されるモータが存在しないことになる。このような場合、サーボドライバ4bの調整部43bは、検知部52から、装置30のモータの構成情報に基づいて装置30においてはサーボドライバ4bに対応するモータは存在しない旨、すなわち、サーボドライバ4bは不要である旨の通知を受け、サーボ制御部42bによるサーボ制御が行われないように調整される。
【0051】
<変形例>
本願開示のサーボシステム1の変形例について、
図5に基づいて説明する。
図5は、本変形例に係るサーボシステム1の概略構成を示す図である。
図1に示す概略構成と
図5に示す概略構成で相違する点は、本変形例では、対象装置の変更を検知する検知部がPLC5ではなく、サーボドライバ4に形成されている点と、サーボシステム1に含まれるサーボドライバ4、4a、4bが、PLC5との通信線(すなわち、PLC5の通信部51と、サーボドライバ4等の通信部41等との間の通信線)とは別の通信線で互いに通信可能に接続されている点である。後者に関連して、サーボドライバ間の通信を可能にするために、サーボドライバ4、4a、4bにはそれぞれドライバ間通信部48、48a、48bが設けられ、各ドライバ間通信部による通信を「ドライバ間通信」と言う。このドライバ間通信は、PLC5との通信と比べて通信速度が速く、またPLC5での処理を経ないためサーボドライバ間での信号の授受をより速やかに実現することができる。
【0052】
検知部46は、機能的にはPLC5に形成される検知部52と同じであり、サーボシステム1における対象装置が変更されたことを検知等する機能部である。検知部46は、検知部52が行う、対象装置におけるモータの構成情報の収集も行う。したがって、
図4に示した、各モータの識別情報の収集については、サーボドライバ4においては、メモリ221に格納されているモータ21の識別情報が検知部46に渡され、メモリ221a、221bに格納されているモータ21a、21bの識別情報は、ドライバ間通信を介して、サーボドライバ4a、4bからサーボドライバ4に渡されて検知部46が取得することになる。また、検知部46からサーボドライバ4a、4bの調整部43a、43bに対する指令(S105の制御パラメータの読み出しや、S107のゲイン調整処理等に関する指令)もドライバ間通信を介して授受される。
【0053】
このように構成されるサーボシステム1においても、
図3に示した調整制御は実行可能であることは理解できる。なお、検知部46は、サーボシステム1に含まれる何れかのサーボドライバに配置されればよいが、好ましくは、変更後の対象装置におけるモータの数が最少の1台である場合に、接続されるサーボドライバが特定のサーボドライバに固定されている場合(例えば、サーボドライバ4)には、その固定されているサーボドライバ内
に検知部46を配置するのが好ましい。また、対象装置が装置20から装置30に変更された場合のように、変更後の対象装置におけるモータの数が、サーボシステム1の制御軸の最大数3より少ない場合、接続されるモータが存在しないサーボドライバが生じることになる。このようなサーボドライバの調整部に対しては、検知部46から、ドライバ間通信を介して、変更後の対象装置のモータの構成情報に基づいて対応するモータは存在しない旨、すなわち、当該サーボドライバは不要である旨の通知を受ける。これにより、接続されるモータが存在しないサーボドライバにおいては、サーボ制御が行われないように調整される。
【0054】
<付記1>
制御装置(5)と、一又は複数のサーボドライバ(4、4a、4b)と、を含み、制御対象とする対象装置を変更可能とし、且つ、変更後の該対象装置が有する所定数のモータと該一又は複数のサーボドライバ(4、4a、4b)の一部又は全部が対応付けられるサーボシステム(1)であって、
前記対象装置が変更されたことを検知する検知部(52、46)と、
前記検知部(52、46)により前記対象装置が変更されたことが検知されると、該変更後の対象装置が有する前記所定数のモータの構成情報に基づいて、前記一又は複数のサーボドライバ(4、4a、4b)によって該所定数のモータのサーボ制御が可能となるように、該一又は複数のサーボドライバ(4、4a、4b)のそれぞれにおける制御構造を調整する調整部(43、43a、43b)と、
を備える、サーボシステム。
【符号の説明】
【0055】
1 サーボシステム
21、21a、21b、31、31a モータ
5 PLC
20、30 装置
42、42a、42b サーボ制御部
43、43a、43b 調整部
44、44a、44b 受付部
45、45a、45b 記憶部
46 検知部
52 検知部
220、220a、220b エンコーダケーブル
221、221a、221b メモリ