(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135338
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】内臓脂肪面積測定装置、および内臓脂肪面積の測定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20230921BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20230921BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20230921BHJP
【FI】
A61B5/107 100
G01N21/17 610
G01N21/359
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040496
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】510138741
【氏名又は名称】フェニックス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】郷田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅章
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嶺
【テーマコード(参考)】
2G059
4C038
【Fターム(参考)】
2G059AA06
2G059BB08
2G059BB12
2G059EE01
2G059EE02
2G059GG02
2G059HH01
2G059JJ03
2G059MM01
2G059MM14
4C038VA09
4C038VB25
4C038VB28
4C038VB37
4C038VC01
(57)【要約】
【課題】人間の内臓脂肪面積を簡便かつ定量的に測定する装置を提供する。
【解決手段】内臓脂肪面積測定装置10を、被検者Hの腹部の周囲から胴体内に向けて光Lを照射する発光部12と、胴体内で反射してきた光Lを受ける受光部14と、制御部16とで構成する。制御部16において、受光部14で受けた光Lの量に基づいて、発光部14が光Lを照射した位置における腹部の皮下脂肪の厚さを算出し、当該厚さと被検者Hの腹囲周囲径寸法とに基づいて、被検者Hの内臓脂肪面積を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の腹部の周囲から胴体内に向けて光を照射する発光部と、
前記胴体内で反射してきた前記光を受ける受光部と、
制御部とを有しており、
前記制御部は、
前記受光部で受けた前記光の量に基づいて、前記発光部が前記光を照射した位置における前記腹部の皮下脂肪の厚さを算出し、
前記厚さと前記被検者の腹囲周囲径寸法とに基づいて、前記被検者の内臓脂肪面積を算出する
内臓脂肪面積測定装置。
【請求項2】
前記発光部から照射される前記光の波長は、700nm以上1900nm以下の間にピークを有する
請求項1に記載の内臓脂肪面積測定装置。
【請求項3】
前記受光部は、800nm以上1100nm以下の波長を有する前記光を受光する
請求項1に記載の内臓脂肪面積測定装置。
【請求項4】
前記発光部および前記受光部は、互いに10mm以上の間隔をあけて配置される
請求項1から3のいずれか1項に記載の内臓脂肪面積測定装置。
【請求項5】
被検者の腹部の周囲から胴体内に向けて、発光部からの光を照射し、
前記胴体内で反射してきた前記光を受光部で受け、
前記受光部で受けた前記光の量に基づいて、前記発光部が前記光を照射した位置における前記腹部の皮下脂肪の厚さを算出し、
前記厚さと前記被検者の腹囲周囲径寸法とに基づいて、前記被検者の内臓脂肪面積を算出する
内臓脂肪面積の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、健康診断等において被検者の腹部における内臓脂肪面積を簡便かつ定量的に測定する装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康診断等において、メタボリックシンドロームであるかどうかは、腹囲周囲径と、脂質異常、高血圧、高血糖を基準に判断されている。
【0003】
本来、メタボリックシンドロームであるかどうかの判断は、CT(コンピュータ断層撮影)等を用いて一人一人の内臓脂肪面積を測定するべきであるが、今のところ、上述した基準に基づいた判断が行われている。
【0004】
また、特許文献1に開示されているように、マーカーを用いてメタボリックシンドロームであるかどうかの判断をする手法も開発されているが、一般的とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、健康診断等において人間の内臓脂肪面積を簡便かつ定量的に測定する装置、および方法が求められている。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、人間の内臓脂肪面積を簡便かつ定量的に測定する装置、および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、
被検者の腹部の周囲から胴体内に向けて光を照射する発光部と、
前記胴体内で反射してきた前記光を受ける受光部と、
制御部とを有しており、
前記制御部は、
前記受光部で受けた前記光の量に基づいて、前記発光部が前記光を照射した位置における前記腹部の皮下脂肪の厚さを算出し、
前記厚さと前記被検者の腹囲周囲径寸法とに基づいて、前記被検者の内臓脂肪面積を算出する
内臓脂肪面積測定装置が提供される。
【0009】
好適には、
前記発光部から照射される前記光の波長は、700nm以上1900nm以下の間にピークを有する。
【0010】
好適には、
前記受光部は、800nm以上1100nm以下の波長を有する前記光を受光する。
【0011】
好適には、
前記発光部および前記受光部は、互いに10mm以上の間隔をあけて配置される。
【0012】
本発明の他の局面によれば、
被検者の腹部の周囲から胴体内に向けて、発光部からの光を照射し、
前記胴体内で反射してきた前記光を受光部で受け、
前記受光部で受けた前記光の量に基づいて、前記発光部が前記光を照射した位置における前記腹部の皮下脂肪の厚さを算出し、
前記厚さと前記被検者の腹囲周囲径寸法とに基づいて、前記被検者の内臓脂肪面積を算出する
内臓脂肪面積の測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る内臓脂肪面積測定装置によれば、受光部で受けた光の量に基づいて、発光部が当該光を照射した位置における腹部の皮下脂肪の厚さを算出し、この厚さと被検者の腹囲周囲径寸法とに基づいて、被検者の内臓脂肪面積を算出することができるので、簡便かつ定量的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明が適用された内臓脂肪面積測定装置10を示す図である。
【
図3】一例に係る吸光度のデータの一次微分スペクトルのグラフである。
【
図4】一例に係る吸光度のデータの二次次微分スペクトルのグラフである。
【
図6】被検者Hの腹部の断面モデルを示す図である。
【
図7】一般的なフォトダイオードの感度波長を示すグラフである。
【
図8】変形例1に係る内臓脂肪面積測定装置10の発光部12、バンドパスフィルタ150、およびフォトダイオード152を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(内臓脂肪面積測定装置10の構成)
本発明が適用された実施形態に係る内臓脂肪面積測定装置10について以下に説明する。内臓脂肪面積測定装置10は、
図1に示すように、大略、発光部12と、受光部14と、制御部16とを備えている。
【0016】
発光部12は、被検者Hの腹部の周囲から胴体内に向けて光Lを照射する部分であり、本実施形態では、LEDが使用されている。なお、この発光部12から照射される光Lの波長は、700nm以上1900nm以下の間にピークを有するのが好適である。また、発光部12は、LEDに限定されるものではなく、例えば白熱灯等の他の光源を使用してもよい。
【0017】
受光部14は、発光部12から照射され、被検者Hの胴体内で反射してきた光(反射光)Lを受ける部分である。受光部14には、例えば、分光器や、フォトダイオード、フォトトランジスタ等が使用できる。
【0018】
また、受光部14では、被検者Hの胴体内で反射してきた光(反射光)Lの内、800nm以上1100nm以下の光(反射光)Lを使用する。なお、900nm以上980nm以下の光(反射光)Lを使用するのが好適である。また、920nm以上940nm以下の光(反射光)Lを使用するのがさらに好適である。
【0019】
800nm以上1100nm以下の光(反射光)Lを使用する理由は、この範囲の波長であれば、ヘモグロビンやミオグロビン、および水に吸収される割合が小さいので、被検者Hの体内の深い位置まで光が到達するためである。
【0020】
また、900nm以上980nm以下の光(反射光)Lを使用するのが好適な理由は、この範囲の波長であれば、水に吸収される割合が特に小さく、かつ、脂肪に吸収されやすい波長のピークおよび水に吸収されやすい波長のピークが含まれるので、受光部14で受けた光(反射光)Lの分析結果がわかりやすいからである。
【0021】
さらに、920nm以上940nm以下の光(反射光)Lを使用するのが好適な理由は、水に吸収される割合が特に小さく、かつ、脂肪に吸収されやすい波長のピークが920nm以上940nm以下であり、受光部14で受けた光(反射光)Lの分析結果がさらにわかりやすいからである。
【0022】
また、発光部12および受光部14は、互いに10mm以上の間隔をあけて配置するのが好適である。発光部12と受光部14との間隔をあけるほど、被検者Hの体内の深いところまで光Lが通る。逆に、間隔が10mmよりも短い場合、受光部14に入る光Lのほとんどが、発光部12から放射されて体内の浅いところを通った光Lになってしまい、分厚い皮下脂肪の厚さを測定するのが困難になるためである。
【0023】
また、発光部12および受光部14を被検者Hの腹部周囲に取り付けるベルトに設けてもよいし、発光部12および受光部14をベッドに取り付けてもよい。もちろん、ベッドに取り付けた発光部12および受光部14の位置は、当該ベッドに寝た状態の被検者Hの腹部周囲に対応する位置である。
【0024】
制御部16は、受光部14で受けた光(反射光)Lの量に基づいて、発光部12が光Lを照射した位置における腹部の皮下脂肪の厚さを算出し、当該厚さと被検者Hの腹囲周囲径寸法とに基づいて、被検者Hの内臓脂肪面積を算出する役割を有する部分である。
【0025】
制御部16における内臓脂肪面積の算出の具体例を示す。受光部14に分光器を用いる場合は、受光部14が受けた光(反射光)Lのスペクトルと、あらかじめ測定しておいた発光部12から照射される光Lのスペクトルとの比から各波長における「吸光度」を算出する(吸光度のグラフの例として
図2を参照)。然る後、得られた「吸光度」のデータを二次微分した二次微分スペクトルを算出する(吸光度のデータの一次微分スペクトルの例として
図3を参照。また、二次微分スペクトルの例として
図4を参照。)。
【0026】
そして、二次微分スペクトルの928nm付近の波長の値を用いて、あらかじめ用意しておいた検量線から皮下脂肪厚を求める(検量線の例として
図5を参照)。
【0027】
同様の測定を同じ被検者Hの腹部における別の位置で複数回行うことにより、被検者Hの腹部における皮下脂肪面積を求める。その後、被検者Hの腹囲周囲径寸法と、得られた皮下脂肪の厚さとに基づいて同被検者Hの「内臓脂肪面積」が求められる。
【0028】
ここで、検量線から皮下脂肪厚を求めた後、被検者Hの内臓脂肪面積を求める手順の一例について詳しく説明する。
【0029】
図6に示すように、被検者Hの腹部の断面における中心部から周端部に向けて、順に骨・筋肉・内臓(以下、単に「内臓等100」という)、内臓脂肪110、皮下脂肪120がほぼ同心楕円状に並んでいるモデルを考える。メタボリックシンドロームであるかどうかは、内臓脂肪110の量によって決まり、皮下脂肪120の量はメタボリックシンドロームと関係がない。
【0030】
先ず、被検者Hの腹囲周囲径寸法をメジャー等で測定し、腹囲周囲全体の面積(つまり、
図6における内臓等100、内臓脂肪110、および、皮下脂肪120の合計面積)を算出する。
【0031】
例えば、表1に示すように、腹囲全体の面を楕円として考える。そして、被検者Hの腹囲周囲径寸法測定結果が852mmである場合、これをπで割ることにより(852mm÷π)、長半径と短半径との合計寸法(長半径+短半径)を近似的に算出する。
【0032】
【0033】
真円の場合は、長半径と短半径との比が1:1になるが、上述のように腹囲周囲全体の面を楕円として考えるので、長半径と短半径との比が55:45となるように按分する。この「長半径と短半径との比」は、予め決めておいた割合であってもよいし、腹囲周囲径寸法に応じて割合が決まるように予めグラフ等を作成しておいてもよい。
【0034】
次に、上述した方法で腹部の皮下脂肪の厚さを算出する。例えば、腹部の前側(へそ側)、後側(背中側)、右側、左側の4箇所で皮下脂肪の厚さを算出する。この結果、「前側=20mm」、「後側=10mm」、「右側=14mm」、「左側=14mm」であったとして、長径の寸法から右側および左側の寸法を引き、また、短径の寸法から前側および後側の寸法を引くことにより、内臓等100および内臓脂肪110の楕円面に係る長半径(=134.8mm)および短半径(=106.8mm)を算出する。これにより、内臓等100および内臓脂肪110の楕円面の面積を求めることができる(=452.1cm2)。
【0035】
最後に、内臓等100の面積を求める。この内臓等100の面積は、固定値として予め決めておいてもよいし、あるいは、被検者Hの身長に応じて決まるように予めグラフ等を作成しておいてもよい。本実施形態では、内臓等100の面積として「長半径=130mm、短半径=100mmの楕円」として設定されている。
【0036】
ここまでで、「内臓等100+内臓脂肪110の面積」(=452.1cm2)、および、「内臓等100の面積」(=408.4cm2)がそれぞれ算出されているので、「内臓等100+内臓脂肪110の面積」から「内臓等100の面積」を引くことにより、「内臓脂肪110の面積」(=43.7cm2)が算出される。
【0037】
このようにして算出された「内臓脂肪110の面積」に基づいてメタボリックシンドロームであるかどうかの判定を行う。なお、例えば「腹囲周囲径および皮下脂肪の厚さ」を横軸、「内臓脂肪110の面積」を縦軸とした検量線を用いて、「内臓脂肪110の面積」を直接的に求めてもよい。
【0038】
(本実施形態に係る内臓脂肪面積測定装置10の特徴)
本実施形態に係る内臓脂肪面積測定装置10によれば、受光部14で受けた光Lの量に基づいて、発光部12が当該光Lを照射した位置における腹部の皮下脂肪の厚さを算出し、この厚さと被検者Hの腹囲周囲径寸法とに基づいて、被検者Hの内臓脂肪面積を算出することができるので、簡便かつ定量的に測定することができる。
【0039】
また、BIA (Bioelectrical Impedance Analysis) 法と違い、本実施形態に係る測定方法は光を用いているため、素材の種類に依存するものの薄いシャツや肌着等を着用した上からでも測定できる。また、電極PADなどの使い捨ての部品が不要である。
【0040】
さらに、電極を密着させるためのゲル等が不要であるため測定時の不快さを軽減でき、測定後の清拭が不要である。また、電流を流さないのでペースメーカを使用していても測定できる。また、内臓の状態の影響を受けにくい(バリウムを飲んでいたり、ガスがたまっていたり、内臓を摘出していたり、金属が埋め込まれていたり)等の利点がある。
【0041】
(変形例1)
上述した実施形態では、分光器を用いて、受光部14が受けた光(反射光)Lのスペクトルと、あらかじめ測定しておいた発光部12から照射される光Lのスペクトルとの比から各波長における「吸光度」を算出していたが、この分光器に変えてフォトダイオードを用いてもよい。
【0042】
フォトダイオードを用いて「吸光度」を求める方法の一例について説明する。一般的に、フォトダイオードは
図7に示すように広い範囲の感度波長を有している。そのため、必要な波長の情報のみを取り出すためには、光源側で必要な波長のみの光を放射するか、あるいは、受光側で必要な波長の光のみを受光する必要がある。
【0043】
そこで、例えば受光側で必要な波長の光を受光する場合、
図8に示すように、複数種類(図示例では4種類)を組み合わせて円板状に形成されたバンドパスフィルタ150を使用する。このバンドパスフィルタ150における4つの領域AからDではそれぞれ透過させる光の波長が異なっている。なお、
図8の手前側が被検者Hに対応する。
【0044】
このバンドパスフィルタ150における、発光部12から放射され被検者H内で反射してきた光Lから見て反対側にフォトダイオード152が配置される。フォトダイオード152が配置された位置は、円板状のバンドパスフィルタ150の中心位置からずれており、当該バンドパスフィルタ150が回転することにより、フォトダイオード152の正面に位置するバンドパスフィルタ150の領域AからDが順に変わっていくようになっている。なお、フォトダイオード152の中心部は切欠かれており、発光部12はこの切欠きに対応するフォトダイオード152の中心位置に配置されている。
【0045】
これにより、フォトダイオード152によって4種類の波長の光における吸光度を測定することができる。バンドパスフィルタ150における領域を増加させていくことで、
図2に示したような吸光度のグラフを得ることができる。
【0046】
バンドパスフィルタ150を回転させない場合は、測定すべき波長の種類数だけフォトダイオード152を用意し、各フォトダイオード152の正面に所望の波長の光だけを透過させる個別のバンドパスフィルタ(上述したバンドパスフィルタ150の各領域に相当)を配置することになる。
【0047】
なお、発光側で必要な波長の光のみを発光する場合は、フォトダイオード152に変えて、発光部12をバンドパスフィルタ150の反対側に配置することになる。
【0048】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
10…内臓脂肪面積測定装置
12…発光部、14…受光部、16…制御部
100…内臓等、110…内臓脂肪、120…皮下脂肪
150…バンドパスフィルタ、152…フォトダイオード
L…光、H…被検者