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特開2023-13534トリチウム含有水の処理方法、処理事業の方法および処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013534
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】トリチウム含有水の処理方法、処理事業の方法および処理装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/04 20210101AFI20230119BHJP
   C25B 1/01 20210101ALI20230119BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20230119BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230119BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20230119BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20230119BHJP
   H01M 8/06 20160101ALI20230119BHJP
   H01M 8/18 20060101ALI20230119BHJP
   B01D 59/04 20060101ALI20230119BHJP
   B01D 59/26 20060101ALI20230119BHJP
   B01D 59/20 20060101ALI20230119BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B1/01 Z
C25B15/08 302
H01M10/44 A
H01M10/04 Z
H01M8/0656
H01M8/06
H01M8/18
B01D59/04
B01D59/26
B01D59/20
H02J15/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117782
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】519406809
【氏名又は名称】株式会社堤水素研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100151046
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶌 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】堤 香津雄
【テーマコード(参考)】
4K021
5H028
5H030
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AA09
4K021BA02
4K021BC07
4K021CA09
4K021CA15
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA06
5H028CC01
5H028CC17
5H030BB08
5H126BB02
5H126RR01
5H127AB27
5H127AC04
5H127BA02
5H127BA14
5H127BB02
5H127BB09
5H127DC98
(57)【要約】
【課題】トリチウムを含んだトリチウム含有水の処理方法が多数提案されているが、それらはトリチウムを除去して無害化することに焦点を当てたものであり、処理に要するエネルギーが多大であり経済性に課題を有している。
【解決手段】そこで、トリチウム含有水を自然エネルギーによる発電を用いて電気分解して、生じた水素ガスと酸素ガスを燃料電池の発電に用いて、トリチウム含有水の無害化を図る。そして、生成物であるトリチウムを販売すると共に電力を販売することにより経済性に優れた事業方法を提案する。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリチウムを含んだ排水を有償にて引き取り、自然エネルギーにより得られる電力を用いて、前記排水を水電解し、前記水電解により得られた水素を含有するガスからトリチウムガスと水素ガスを分離して、前記トリチウムガスを販売するトリチウム含有水の処理事業。
【請求項2】
前記水電解により得られた酸素ガスと前記トリチウムガスを反応させてトリチウム水を製造して販売する請求項1に記載のトリチウム含有水の処理事業。
【請求項3】
前記水素ガスを燃料電池に供給して前記燃料電池からの電力を販売する請求項1または2に記載のトリチウム含有水の処理事業。
【請求項4】
前記水電解がカスケードに行われる請求項1~3のいずれか一項に記載のトリチウム含有水の処理事業。
【請求項5】
前記トリチウムガスと水素ガスの分離が多段に行われる請求項1~4のいずれか一項に記載のトリチウム含有水の処理事業。
【請求項6】
前記燃料電池の発電により生じた水を給水もしくは排水として処理する請求項1~5のいずれか一項に記載のトリチウム含有水の処理事業。
【請求項7】
前記トリチウムガスを圧縮して販売する請求項1~5のいずれか一項に記載のトリチウム含有水の処理事業。
【請求項8】
前記燃料電池が燃料電池畜電池である請求項1~6のいずれか一項に記載のトリチウム含有水の処理事業。
【請求項9】
前記燃料電池もしくは前記燃料電池蓄電池に接続された二次電池の電力を販売する請求項8に記載のトリチウム含有水の処理事業。
【請求項10】
前記二次電池がドーナツ状の電極を積層し、一方の前記電極の外縁が外装体に電気的に接続され他方の前記電極の穴の周縁が集電体に電気的に接続される請求項9に記載のトリチウム含有水の処理事業。
【請求項11】
トリチウムを含んだ排水を有償にて引き取り、自然エネルギーにより得られる電力を用いて、前記排水を水電解し、前記水電解により得られた水素を含有するガスからトリチウムガスと水素ガスを分離すると共に前記水電解により得られた酸素ガスと前記トリチウムガスを反応させてトリチウム水を製造して、前記水素ガスと前記酸素ガスを燃料電池に供給して前記燃料電池から発電を行うトリチウム含有水の処理方法。
【請求項12】
トリチウムを含んだ水を電気分解する水電解装置と、前記水電解装置の陰極から発生するトリチウムガスガスと水素ガスとを分離する分離装置とを備え、前記分離装置で分離された水素ガスと前記水電解装置の陽極から発生する酸素ガスを用いて発電を行う燃料電池を備えたトリチウム含有水の処理装置。
【請求項13】
複数の前記水電解装置がカスケード接続され、請求項12に記載の分離装置が多段で構成される請求項12に記載のトリチウム含有水の処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリチウムを含有する水の処理に関し、トリチウム含有水の処理事業、トリチウム含有水の処理方法およびトリチウム含有水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所から排出されるトリチウムを含んだ水の処理方法として、たとえば、トリチウムを含んだ水を希釈して海洋に放出する方法、乃至は、トリチウムを含んだ水を蒸発処理し高温水蒸気として、大気に放出する方法が提案されている。
【0003】
特許文献1によれば、トリチウム汚染水を低濃度で濃縮して第一トリチウム濃縮水および第一トリチウム除去水を生成する第一濃縮モジュールと、第一濃縮モジュールにて濃縮された第一トリチウム濃縮水を高濃度で再濃縮して第二トリチウム濃縮水および第二トリチウム除去水を生成する第二濃縮モジュールとを備えた技術が提案されている。
【0004】
特許文献2によれば、トリチウム汚染水を加熱して蒸気を発生させ、この蒸気を冷却して凝縮することにより得た復水を逆浸透膜で濃縮液と透過液とに膜分離して、透過液を海水に希釈して外部に排出する。濃縮液は加熱して発生した蒸気を大気へ放出する技術が提案されている。
【0005】
更に、特許文献3によれば、汚染水を加熱して汚染水蒸気を生成するとともに、汚染水蒸気を遠心分離処理して、汚染水蒸気中からトリチウム汚染水を分離するトリチウム水分離工程とを備える技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-188810号公報
【特許文献2】特開2017-20964号公報
【特許文献3】特開2015-80748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載された従来の技術は、トリチウムを含んだ水(以下、トリチウム含有水と称す)を希釈する設備が大規模となるので経済性がなく事業化に不向きである。
【0008】
特許文献2、3に記載された従来の技術は、トリチウム含有水を水蒸気にする必要があり、水の潜熱のためトリチウム含有水を蒸発させるのに多大のエネルギーを必要とするという問題がある。
【0009】
また従来技術は、トリチウムを含んだ水を汚染水としてとらえ、エネルギー消費量をはじめ経済性を確保しつつトリチウムを除去して無害化することに焦点を当てたものである。
【0010】
本願発明は、上述した従来技術における問題点を解消するためになされたものであり、トリチウム含有水の処理に多大なエネルギーを使用することなく、大規模な設備を必要としない経済的に優位なトリチウム含有水の処理装置およびその事業化の方法について提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した目的を達成するために、本発明に係るトリチウム含有水の処理事業は、トリチウムを含んだ排水を有償にて引き取り、自然エネルギーにより得られる電力を用いて、前記排水を水電解し、前記水電解により得られた水素を含有するガスからトリチウムガスと水素ガスを分離して、前記トリチウムガスを販売する
【0012】
この構成によれば、大規模な設備を必要とせず、系統にとって外乱となることが多い自然エネルギーを用いた発電の有効活用を図ることできる。また、エネルギーの消費を抑えたトリチウムを含有する水の処理を行うことができる。また、電気分解を利用することにより、トリチウムを含有する水の減容を図ることができる。
【0013】
本発明に係るトリチウム含有水の処理事業は、前記水電解により得られた酸素ガスと前記トリチウムガスを反応させてトリチウム水を製造して販売する。
【0014】
本発明に係るトリチウム含有水の処理事業は、前記水素ガスを燃料電池に供給して前記燃料電池からの電力を販売する。
【0015】
本発明に係るトリチウム含有水の処理事業は、前記水電解がカスケードに行われる。また、本発明に係るトリチウム含有水の処理事業は、前記トリチウムガスと水素ガスの分離が多段に行われる。
【0016】
本発明に係るトリチウム含有水の処理事業は、前記燃料電池の発電により生じた水を給水もしくは排水として処理する。また、本発明に係るトリチウム含有水の処理事業は、前記トリチウムガスを圧縮して販売する。
【0017】
本発明に係るトリチウム含有水の処理事業は、前記燃料電池が燃料電池畜電池である。この構成において、燃料電池蓄電池は蓄電機能を有した燃料電池である。また、本発明に係るトリチウム含有水の処理事業は、前記燃料電池もしくは前記燃料電池蓄電池に接続された二次電池の電力を販売する。この構成において、蓄電池及び二次電池の放電による電力は応答性に優れている。
【0018】
本発明に係るトリチウム含有水の処理事業は、前記二次電池がドーナツ状の電極を積層し、一方の前記電極の外縁が外装体に電気的に接続され他方の前記電極の穴の周縁が集電体に電気的に接続される。
【0019】
本発明に係るトリチウム含有水の処理方法は、トリチウムを含んだ排水を有償にて引き取り、自然エネルギーにより得られる電力を用いて、前記排水を水電解し、前記水電解により得られた水素を含有するガスからトリチウムガスと水素ガスを分離すると共に前記水電解により得られた酸素ガスと前記トリチウムガスを反応させてトリチウム水を製造して、前記水素ガスと前記酸素ガスを燃料電池に供給して前記燃料電池から発電を行う。
【0020】
本発明に係るトリチウム含有水の処理装置は、トリチウムを含んだ水を電気分解する水電解装置と、前記水電解装置の陰極から発生するトリチウムガスガスと水素ガスとを分離する分離装置とを備え、前記分離装置で分離された水素ガスと前記水電解装置の陽極から発生する酸素ガスを用いて発電を行う燃料電池を備える。また、本発明に係るトリチウム含有水の処理装置は、複数の前記水電解装置がカスケード接続され、請求項12に記載の分離装置が多段で構成される。
【発明の効果】
【0021】
トリチウム含有水からトリチウムを分離処理して、真水の状態で放出することができる。また、トリチウム含有水からトリチウムを取り出して販売することができる。更に、トリチウム含有水の処理事業で発電ができる。トリチウム含有水の処理過程で、再生可能エネルギーの利用を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】トリチウム含有水処理装置の概要を概念的に説明するためのブロック図である。
図2】水電解装置を多重化したときのトリチウム含有水の流れを説明するブロック図である。
図3】分離装置を多重化したときのトリチウム含有水の流れを説明するブロック図である。
図4】積層型二次電池の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0024】
発明者は、原子力発電所から排出されるトリチウムを含んだ水(以降、トリチウム含有水と称す)からトリチウムを除去することを事業化することを考えた。すなわち、トリチウム含有水を無害化するとともに、取り除いたトリチウムを販売することを考えた。トリチウム含有水の処理事業および処理方法の説明の前に、それらを実現するトリチウム含有水の処理装置について説明する。
【0025】
トリチウム含有水の処理装置の構成について図1に示すブロックを用いて説明する。トリチウム含有水処理装置20は主要な構成要素として、水電解装置21、分離装置24および燃料電池25を有している。
【0026】
水電解装置21にはトリチウム含有水保存タンク31からトリチウムを含むトリチウム含有水が供給される。水電解装置21には、外部電源30が接続されていて、水電解装置21に必要な直流電力を供給する。外部電源30は、例えば、太陽光発電設備30-1および風力発電設備30-2が挙げられる。外部電源30は自然エネルギーを利用した発電装置からの電力であればよく、バイオマス発電であってもよい。電気分解を助けるためにトリチウム含有水には少量の電解物質が添加されている。
【0027】
水電解装置21にはトリチウム含有水を収容する電解槽と、外部電源30の正極に接続された陽極と、外部電源30の負極に接続された陰極とを備えている(いずれも図示せず)。陰極と陽極にトリチウム含有水が接触した状態で両電極間に電圧を印加すると、陰極における還元反応により陰極から水素ガスが発生する。還元反応に際してトリチウム含有水に含まれるトリチウムも還元されて、陰極から水素ガスと共にトリチウムガスが発生する。
【0028】
水素ガスとトリチウムガスの混合ガスは、水電解装置21から水素タンク22に送られる。水素タンク22の水素ガスとトリチウムガスの混合ガスは、分離装置24で水素ガスとトリチウムガスに分離される。分離方法としては、深冷分離法、圧力スイング法および遠心分離法が挙げられるがこれらに限定されるものでない。例えば、液化へリウムで水素とトリチウムの混合ガスを冷却すると、凝縮点の高いトリチウムが先に液化するので、水素ガスと分離がされる。この方法は、深冷分離法と称されている。
【0029】
トリチウム水(THO)の分子量は19であるのに対して、水の分子量は18であり、その差は小さく両者の分離を難しくしている。一方、トリチウムの分子量は4に対して、水素の分子量は2であり、比重は倍半分の関係となる。トリチウムと水素では比重の他、拡散速度、凝固点および沸点も大きく異なる。このため、トリチウム含有水の状態でトリチウムを分離するより、トリチウム含有水を電気分解してガス化してトリチウムを分離する方が容易となり、経済的にも優れたものとなる。
【0030】
分離装置24で分離されたトリチウムガス(HT)は、トリチウムタンク26に送られる。トリチウムタンク26に蓄えられたトリチウムは適当な圧力に圧縮されてボンベに詰められて出荷される。分離装置24で分離された水素ガス(H)は、一旦、水素チャンバー27を経由して、燃料電池25に燃料ガスとして供給される。
【0031】
水電解装置21の陽極から発生した酸素ガスは酸素タンク23を経由して燃料電池25に送られる。水素チャンバー27からの水素ガスと、酸素タンク23からの酸素ガスにより燃料電池25は発電を行い外部に電力を供給する。このとき、水素と酸素の酸化還元反応により純度の高い水が副産物として生成される。
【0032】
燃料電池25は、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電装置として機能する。水素ガスはアノードで電気化学的に酸化され水素イオンと電子に分解される。一方、酸素ガスはカソードで電解液を通ってきた水素イオンと電子により還元されて水を生成する。燃料電池25の反応は電気化学的燃焼により進むので、化学的燃焼のように反応が高温にはならず、エネルギー変換効率が高いという特徴がある。なお、燃料電池は周知のものを用いることができる。
【0033】
トリチウムタンク26のトリチウムガスは、燃焼室28において酸素タンク23からの酸素ガスにより酸化燃焼して高純度のトリチウム水(HTO)を作り出す。
【0034】
図2は、図1の水電解装置の変形例となる実施形態である。図2において、3つの水電解装置の電解槽33がカスケードに接続されている。トリチウム含有水保存タンク31からのトリチウム含有水が最初の水電解装置の電解槽33-1に供給され、電解槽33-1のトリチウム含有水が自然エネルギーを利用した電力(kw)により電気分解され、負極から水素と酸素の混合ガスが、正極から酸素ガスが発生する。発生した水素ガスおよび酸素ガスを燃料電池に供給すれば、燃料電池は発電することができる。
【0035】
トリチウム含有水を第1電気分解装置の第1電解槽33-1に供給して第1電解槽33-1のトリチウム含有水を電気分解し、前記第1電解槽の底部のトリチウム含有水を第2電気分解装置の第2電解槽33-2に供給して第2電解槽33-2のトリチウム含有水を電気分解し、前段の電気分解装置の電解槽の底部のトリチウム含有水を次段の電気分解装置の電解槽33-3に供給して第3電解槽33-3のトリチウム含有水を電気分解する。最終段の電気分解装置の電解槽の底部のトリチウム含有水を取り出すことにより、格段における電気分解の作用によりトリチウム含有水の減容を図ることができる。トリチウム含有水の減容事業に有利に作用する。
【0036】
トリチウム水は水に比べて比重が大きいので電解槽の底部には高濃度のリチウム水が溜まりやすい。各電解槽の底部から次段の電解槽へと下流の電解槽に移動する都度トリチウム含有水のトリチウム濃度は上昇する。このように水電解装置の電解槽をカスケード接続することにより、トリチウム含有水のトリチウム濃度は上昇して、トリチウム含有水の減容を図ることが可能となる。
【0037】
図1に示した分離装置24の代わりに、図3に示すように、3台の分離装置41-1、41-2、41-3を直列に接続すれば、トリチウムの収量が増え、歩留まりの向上が期待できる。水素タンク20からのトリチウムを含んだガスは分離装置40に送られる。格段の分離装置41-1、2,3を経由するにつれてトリチウムの純度が向上する。
【0038】
以下に、トリチウム含有水からトリチウムを除去する方法および事業化について説明する。すなわち、発明者は、トリチウム含有水を無害化するとともに、取り除いたトリチウムを販売する方法およびその事業化することを考えた。
【0039】
トリチウム含有水を有償もしくは無償にて発電所から引き取り、自然エネルギーを利用した発電所からの電力によりトリチウム含有水を水電解して、水電解により生じた水素とトリチウムの混合ガスを分離装置でトリチウムガスと水素ガスに分離して、トリチウムガスは圧縮して販売する。水電解で生じた酸素ガスと前記トリチウムガスを燃焼させてトリチウム水として販売する。水電解で生じた酸素ガスと分離装置で生じた水素ガスとを燃料電池に導き燃料電池の発生電力を販売する。
【0040】
本発明の実施例のトリチウム含有水の処理装置を用いて事業化を行った場合の利益の概算を計算してみる。自然エネルギーの単価を20円/kWhとし、燃料電池での通常売電単価を24円/kWhとし、燃料電池の高出力の売電単価を100円/kWhとし、トリチウムガスの単価を100円/kWhとすると、単位当たりの利益は142円/kWhとなる。100MWの自然エネルギー発電の稼働率を20%とすると、年間の電力量は20MWx24hx365日=175200MWh/yearとなり、上記の単価を掛け合わせて142x175200x1000≒248億円/yearの利益が期待できる。トリチウム含有水を有償で引き取った場合は、利益は更に増える。
【0041】
原子力発電所からトリチウム含有水を減容することを条件にトリチウム含有水を引取り、水電解することによりトリチウム含有水を減容して、顧客に戻すもしくは廃棄する事業化は、発電所側および事業者側の両者にとりメリットのある取引となる。トリチウム含有水が減容するので顧客にとってメリットがあり、トリチウム含有水からトリチウムを分離して販売すれば業者にとってもメリットがある。
【0042】
電力の需給において、発生電力と消費電力はバランスしている必要がある。しかるに、自然エネルギーを利用した太陽光発電および風力発電による電力は電力系統の外乱となることがある。自然エネルギーを利用した発電は自然条件に左右されるので、電力を必要とするときに電力の供給ができず、電力を必要としないときに電力が発生することがある。本発明の実施形態のトリチウム含有水処理方法を活用することにより、電力の需給調整を図ることができる。
【0043】
系統の電力に余剰が生じたときは、水電解装置を運転してトリチウム含有水の水電解により生じた水素ガスと酸素ガスを一時的に貯蔵する。需要電力が増えて電力不足が生じたときは、電力余剰時に蓄えた水素ガスおよび酸素ガスを用いて燃料電池を運転すれば、燃料電池の電力で需要電力の不足を補うことできる。このようにすれば、自然エネルギーを用いた発電を無駄にすることなく活用を図ることができる。
【0044】
従来の燃料電池は、ガス拡散電極という気体と液体と固体が同時に接触する線を反応の空間にしているため、反応空間が少なく、反応速度が遅い。電力不足が生じたときに即応力に劣る。しかし、燃料電池蓄電池であれば、放電時には二次電池として電気エネルギーを取り出すことができるので、急速放電が可能となり、負荷追従性を向上させることができる。
【0045】
燃料電池蓄電池は通常の燃料電池とは異なり、その電極には活物質が塗布されている。その電極自体が活物質である場合もある。負極は水素吸蔵合金を有しており、正極は水酸化マンガンを有している。セパレータには水酸化カリウム水溶液が保持されている。
【0046】
燃料電池蓄電池の電極が初期充電された後、さらに電流を供給し続けると、負極からは水素ガスが発生し、正極からは酸素ガスが発生する。水素ガスは、水素貯蔵室に貯蔵され、酸素ガスは酸素貯蔵室に貯蔵される。
【0047】
燃料電池蓄電池の放電時には、負極と正極との間で、放電反応が起こる。これにより、外部回路に電流が流れる。このとき、負極及び正極の電気量は、放電によって減少する。負極及び正極の減少した電気量分は、水素貯蔵室および酸素貯蔵室に貯蔵された水素ガスおよび酸素ガスによる充電によって補われる。これにより、負極および正極の充電状態が維持される。
【0048】
燃料電池もしくは燃料電池蓄電池に積層型の二次電池を接続して、この積層型二次電池からの電力を販売すれば、更に、即応性を増すことができる。後述する積層型二次電池であれば冷却性能が優れているので大電流での充放電が可能となる。緊急の電力不足にも対応することができ利便性が増し、電力販売に有利に働く。
【0049】
図4に示す積層タイプの二次電池1は、外装体5と集電棒7と外装体内部に収納される電極体3とを主な構成要素として備えている。外装体5は、有底の円筒缶2と、円筒缶の開口部2cに取付けられた円盤状の蓋部材6とから構成されている。蓋部材6は、電極体3を収納後に、円筒缶の開口部2cにおいて密に嵌合されている。密閉構造が確保されている。
【0050】
正極3aと、負極3bと、正極3aと負極3bの間に介在するセパレータ3cとから構成される電極体3は、円筒缶2の軸方向(図4のX方向)に積層して外装体5の内部に収納されている。正極の外縁部3abは円筒缶の内面2aと接触しており、正極3aと円筒缶2は電気的に接続されている。電極体3の中央には集電棒7が貫通している。負極の穴の周縁部3baは軸部7aと接触して、負極3bと集電棒7は、電気的に接続されている。
【0051】
負極3bの外径は円筒缶2の内径より少し大きいので、負極3bは円筒缶2に強く押し当てられ、密に接触している。負極3bで発生した熱は直接円筒缶2に伝えられる。また、正極3aで発生した熱はセパレータ3cを介して負極3bに伝えられる。セパレータ3cは熱を伝えにくいが、薄く1枚のみであるので、熱の伝導に大きな妨げとならない。以上のようにして、電極3a,3bで発生した熱は小さな熱勾配で円筒缶2に伝えらる。電池内部で発生する熱は速やかに外部に放出されるので積層タイプの二次電池内部の温度上昇を抑制することを可能にしている。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係るトリチウム含有水の処理事業は、産業用の事業として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 積層型二次電池
2 円筒缶
3 電極体
4 絶縁板
5 外装体
6 蓋部材
7 集電体
10 外装体
11 負極端子
13 電解液
14 負極
15 セパレータ
16 正極
17 絶縁部材
18 水素貯蔵室
19 酸素貯蔵室
20 トリチウム含有水処理装置
21 水電解装置
22 水素タンク
23 酸素タンク
24 分離装置
25 燃料電池
26 トリチウムタンク
27 水素チャンバー
28 燃焼室
30 外部電源
31 トリチウム含有水保存タンク
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリチウムを含んだ排水を有償にて引き取り、自然エネルギーにより得られる電力を用いて、前記排水を水電解し、前記水電解により得られた水素を含有するガスからトリチウムガスと水素ガスを分離して、前記トリチウムガスおよび前記水素ガスを製造するトリチウム含有水の処理方法。
【請求項2】
前記水電解により得られた酸素ガスと前記トリチウムガスを反応させてトリチウム水を製造する請求項1に記載のトリチウム含有水の処理方法。
【請求項3】
前記水電解がカスケードに行われる請求項1~3のいずれか一項に記載のトリチウム含有水の処理方法。
【請求項4】
前記トリチウムガスと水素ガスの分離が多段に行われる請求項1~3のいずれか一項に記載のトリチウム含有水の処理方法。
【請求項5】
前記燃料電池の発電により生じた水を給水もしくは排水として処理する請求項1~4のいずれか一項に記載のトリチウム含有水の処理方法。
【請求項6】
前記燃料電池が燃料電池畜電池である請求項1~5のいずれか一項に記載のトリチウム含有水の処理方法。
【請求項7】
前記二次電池がドーナツ状の電極を積層し、一方の前記電極の外縁が外装体に電気的に接続され他方の前記電極の穴の周縁が集電体に電気的に接続される請求項6に記載のトリチウム含有水の処理方法。
【請求項8】
トリチウムを含んだ排水を有償にて引き取り、自然エネルギーにより得られる電力を用いて、前記排水を水電解し、前記水電解により得られた水素を含有するガスからトリチウムガスと水素ガスを分離して、前記トリチウムガスおよび前記水素ガスを販売するトリチウム含有水処理事業の方法。
【請求項9】
前記水電解により得られた酸素ガスと前記トリチウムガスを反応させてトリチウム水を製造して販売する請求項8に記載のトリチウム含有水処理処理事業の方法。
【請求項10】
前記水素ガスを燃料電池に供給して前記燃料電池からの電力、および、前記燃料電池に接続された二次電池の電力を販売する請求項8または9に記載のトリチウム含有水処理処理事業の方法。
【請求項11】
有償で引き取ったトリチウムを含んだ水を電気分解する水電解装置と、前記水電解装置の陰極から発生するトリチウムガスガスと水素ガスとを分離する分離装置とを備え、前記分離装置で分離された水素ガスと前記水電解装置の陽極から発生する酸素ガスを用いて燃料電池を用いて発電を行うトリチウム含有水の処理装置。