(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135341
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】電力変換ユニット診断システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
H02M7/12 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040501
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上妻 央
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 尊衛
(72)【発明者】
【氏名】古川 公久
(72)【発明者】
【氏名】河口 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】馬淵 雄一
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA04
5H006AA05
5H006CA01
5H006CA02
5H006CC04
5H006CC08
5H006DB01
5H006DC08
5H006FA03
(57)【要約】
【課題】電力変換ユニットの長寿命化を図る。
【解決手段】電力変換ユニット診断システム100は、交流電源1から交流電力を受け取る入力部と、交流電力を直流電力に変換して出力する出力部と、を有し、少なくとも1つの負荷に直流電力を供給するとともにそれぞれが直列接続された複数の電力変換ユニット10と、複数の電力変換ユニット10を制御する制御部20と、少なくとも一部の複数の電力変換ユニット10の出力部を、1つの負荷に対して並列接続させることが可能な出力側スイッチングユニット40と、を有し、制御部20は、少なくとも一部の複数の電力変換ユニット10の出力部が1つの負荷に並列接続されている場合に、該複数の電力変換ユニット10それぞれの状態を判定し、該複数の電力変換ユニット10それぞれについて、特性が劣化しているか否かを状態に基づいて診断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から交流電力を受け取る入力部と、前記交流電力を直流電力に変換して出力する出力部と、を有し、少なくとも1つの負荷に前記直流電力を供給するとともにそれぞれが前記交流電源に対して直列接続された複数の電力変換ユニットと、
前記複数の電力変換ユニットを制御する制御部と、
前記複数の電力変換ユニットのうち少なくとも一部の複数の前記電力変換ユニットの前記出力部を、1つの前記負荷に対して並列接続させることが可能な出力側スイッチングユニットと、を有し、
前記制御部は、前記少なくとも一部の複数の電力変換ユニットの出力部が前記1つの負荷に並列接続されている場合に、該複数の電力変換ユニットそれぞれの状態を判定し、判定した該複数の電力変換ユニットそれぞれの状態を比較することによって、該複数の電力変換ユニットそれぞれについて、特性が劣化しているか否かを診断する、
ことを特徴とする電力変換ユニット診断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換ユニット診断システムであって、
前記電力変換ユニットは、パワー半導体素子及びコンデンサを有し、
前記電力変換ユニットの状態は、前記パワー半導体素子の熱抵抗変化及び前記コンデンサの温度変化である、
ことを特徴とする電力変換ユニット診断システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換ユニット診断システムであって、
前記制御部は、特性が劣化していると判定された前記電力変換ユニットに対し、前記パワー半導体素子の熱抵抗変化および/または前記コンデンサの温度変化を抑制するように該電力変換ユニットを制御する、
ことを特徴とする電力変換ユニット診断システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換ユニット診断システムであって、
前記制御部は、前記パワー半導体素子の熱抵抗変化を抑制するために、前記電力変換ユニットから出力される電力の変動幅を減少させ、前記コンデンサの温度変化を抑制するために、前記電力変換ユニットから電力が出力されない時間を設ける、
ことを特徴とする電力変換ユニット診断システム。
【請求項5】
請求項1に記載の電力変換ユニット診断システムであって、
前記複数の電力変換ユニットの前記入力部間の並列接続を切り替える入力側スイッチングユニットをさらに有し、
前記入力側スイッチングユニットによって複数の前記電力変換ユニットが並列に接続されている場合に、該複数の電力変換ユニットの出力部は単一の直流電源に接続される、
ことを特徴とする電力変換ユニット診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換ユニットの状態を診断するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交流を直流にあるいは直流を交流に変換する電力変換ユニットが多く用いられている。そして、高圧ドライブ、EV充電器、電動機のアプリケーションにおいて、複数の電力変換ユニットを複数の負荷に接続して運転させる、マルチポート電力変換技術の開発が進められている。
【0003】
複数の電力変換ユニットを用いたシステムにおいては、安定的な出力を確保するために、また、一部の電力変換ユニットに故障が生じた場合に迅速に対応できるように、個々の電力変換ユニットの状態を把握する必要がある。
【0004】
複数の電力変換ユニットを用いたシステムに関するものとして特許文献1が挙げられる。特許文献1に記載の防災システムにおいては、電源部の故障に対して迅速な仮復旧を行うことを目的として、電圧変換部が故障した場合に、電圧変換部からの電源供給経路を、外部接続部を介した外部電源装置からの電源供給経路に切替え可能な切替部を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、電源部に故障が生じた後の処置に関するものであり、電源部の故障を未然に防止し、電源部の長寿命化を図ることについては記載されていない。
【0007】
特に、上述したようなマルチポート電力変換技術においては、それが例えば充電器として用いられる場合には、同時充電する電源の台数や各容量に応じてユニットの並列接続数の切り替えを行う。ユニットの寿命は各負荷条件(負荷電流・電流変動、周囲温度)に依存する。一部のユニットに負荷変動回数や運転時間が偏ったり、初期の製造ばらつきがあると、ユニットの寿命が短くなる。そこでユニットの長寿命化には、ユニットの劣化状態を把握し、劣化を抑制するように運転制御を行うことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る電力変換ユニット診断システムは、交流電源から交流電力を受け取る入力部と、交流電力を直流電力に変換して出力する出力部と、を有し、少なくとも1つの負荷に直流電力を供給するとともにそれぞれが交流電源に対して直列接続された複数の電力変換ユニットと、複数の電力変換ユニットを制御する制御部と、複数の電力変換ユニットのうち少なくとも一部の複数の電力変換ユニットの出力部を、1つの負荷に対して並列接続させることが可能な出力側スイッチングユニットと、を有し、制御部は、少なくとも一部の複数の電力変換ユニットの出力部が1つの負荷に並列接続されている場合に、該複数の電力変換ユニットそれぞれの状態を判定し、判定した該複数の電力変換ユニットそれぞれの状態を比較することによって、該複数の電力変換ユニットそれぞれについて、特性が劣化しているか否かを診断する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の電力変換ユニットを同時に運転させている場合に、それぞれの特性変化を個別に判定可能になるため、当該特性変化に基づいて劣化したユニットの制御を適切に調整し、ユニットの高寿命化を図ることができる。
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例に係る電力変換ユニット診断システムの概要を示すブロック図。
【
図2】電力変換ユニット診断システムを用いて行う電力変換ユニットの診断処理を示すフローチャート。
【
図3】制御部が行う電力変換ユニットの制御方法の例を示す図。
【
図4】本発明の他の実施例に係る電力変換ユニット診断システムの概要を示すブロック図。
【
図5】電力変換ユニット診断システムを用いて行う診断処理の他の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に沿って実施例を説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る電力変換ユニット診断システム100(以下では単に「システム100」と呼称する)の概要を示すブロック図である。
【0012】
システム100は、その入力が交流電源1に接続され、互いに直列に接続された複数の電力変換ユニット10a~10c、各電力変換ユニットの状態を判定し、当該状態に基づいて電力変換ユニットの劣化状態を診断する電力変換ユニットコントローラ20、各電力変換ユニットの出力と各負荷との間に接続された直列バス30a~30c、及び該直列バスの接続を切り替える出力側スイッチングユニット40を有する。なお、以下では説明の簡略化のために、個別に言及する場合を除き電力変換ユニット10a~10cを総称して電力変換ユニット10と記載する。他の構成要素についても同様とする。
【0013】
交流電源1と電力変換ユニット10との間には、電源協調、力率改善及び高調波抑制のための交流リアクトル2、及び交流電源1と電力変換ユニット10との間の接続を切り替えるスイッチング素子3が設けられている。
【0014】
また、電力変換ユニット10の出力は負荷51及び53に、出力側スイッチングユニット40によって選択的に接続される。負荷51及び53は例えばEV充電器や電動機であり、各々が特有の負荷電力を出力する。なお、符号52及び54も平滑コンデンサである。
【0015】
各電力変換ユニット10は、パワー半導体素子11及び平滑コンデンサ12を有する。パワー半導体素子11は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタ、ダイオードなどによって構成され、交流電源1から入力された交流電力を直流電力に変換する。平滑コンデンサ12は、パワー半導体素子11によって変換された変動のある直流電圧を安定した直流電圧に変換する。
【0016】
電力変換ユニットコントローラ20は、例えば有線または無線によって電力変換ユニット10と接続されたコンピュータに実装されており、コンピュータに内蔵されたCPU及びメモリを用いて後述する処理を実行する。
【0017】
電力変換ユニット10の出力と負荷51、53との間に設けられた直流バス30は、出力側スイッチングユニット40によって接続が切り替えられる。出力側スイッチングユニット40を構成するスイッチング素子41、42は、機械式スイッチや半導体スイッチ等を任意に採用できる。
【0018】
本実施例において、出力側スイッチングユニット40を構成するスイッチング素子41、42は、そのON/OFFによって各電力変換ユニット10の1つと負荷51、53の一方との間の接続を切り替える構成となっている。
【0019】
具体的には、電力変換ユニット10a~10cと負荷51との間の接続はそれぞれスイッチング素子42a~42cのON/OFFによって切り替えられ、電力変換ユニット10a~10cと負荷53との間の接続はそれぞれスイッチング素子41a~41cのON/OFFによって切り替えられている。
【0020】
そして、
図1においてはスイッチング素子41b、41c及び42aがON状態となっているため、電力変換ユニット10a及び10bは同一の負荷51に接続されている(電流13a及び13b参照)。また、電力変換ユニット10cは負荷53に接続されている。
【0021】
すなわち、本実施例においては、電力変換ユニット10a及び10bは同一の負荷51に接続されているため、その内部のパワー半導体素子11a及び11b、並びに平滑コンデンサ12a及び12bにかかる負荷電力も同一となる。したがって、これらの素子の状態を判定して、ユニット間で比較して分析することにより、電力変換ユニット毎の劣化状態を診断することが可能になる。そして、運転条件が電力変換ユニット間で偏りがある場合には、当該偏りを解消する方向に電力変換ユニットの運転状況を調整することも可能になる。
【0022】
なお、本発明で扱う状態とは、パワー半導体素子の熱抵抗、及び平滑コンデンサの温度である。これらの特性は、電力変換ユニットの劣化に直結し、かつ既存の温度センサ等を用いて容易に測定可能であるため、電力変換ユニットの劣化状態を判定するパラメータとして好適である。
【0023】
図2は、本実施例に係る電力変換ユニット診断システム100が行う処理を示すフローチャートである。まず、ステップS201においては、
図1に示すように複数の電力変換ユニット10が1つの負荷に対して並列に接続され、運転制御される。また、同時に電力変換ユニットコントローラ20は、当該並列に接続されて運転されている複数の電力変換ユニット10の状態を示す状態値を取得する。なお、電力変換ユニットコントローラ20は、例えば診断対象の電力変換ユニット10が負荷に並列接続された時点で状態値を取得してもよいし、稼働中に取得し続けていてもよい。
【0024】
そして、ステップS202において、いずれかのユニットのPM(Power Module:パワー半導体素子)の熱抵抗の増分値、および/またはCAP(Capacitor:平滑コンデンサ)の温度の増分値が規定値以上に達しているか判定する。
【0025】
ステップS202で“No”の場合にはステップS201へと戻り並列運転が継続される。ステップS202で“Yes”だった場合には、ステップS203へと移行し、いずれのユニットのいずれの素子が劣化しているかを判定する。
【0026】
劣化した素子がいずれかの電力変換ユニット10のパワー半導体素子11であった場合(ステップS204)には、ステップS205へと移行し、パワー半導体素子11の劣化を抑制する制御を行う。劣化した素子がいずれかの電力変換ユニット10の平滑コンデンサ12であった場合(ステップS206)には、ステップS207へと移行し、平滑コンデンサ12の劣化を抑制する制御を行う。なお、当該制御を一度行った場合には、電力変換ユニット10の稼働を終了させるまで継続して行う。
【0027】
これらの、素子の劣化を抑制するための処理について
図3を用いて説明する。
図3(a)は、
図2の処理において測定対象であった複数の電力変換ユニットが並列接続されている負荷から出力される負荷電力を示す。
【0028】
図2中のステップS205、すなわち劣化した素子がパワー半導体素子11である場合には、
図3(b)に示す制御モード1の制御を行う。具体的には、当該劣化したと判定されたパワー半導体素子11を有する電力変換ユニット10から出力される電力が一定となるように(電力の変動幅を減少させるように)、パワー半導体素子11に供給する信号を制御する。これは、パワー半導体素子11の熱抵抗特性の劣化は、出力電圧の変動に起因するからである。
【0029】
図2中のステップS207、すなわち劣化した素子が平滑コンデンサ12である場合には、
図3(c)に示す制御モード2の制御を行う。具体的には、当該劣化したと判定された平滑コンデンサ12を有する電力変換ユニット10を運転しない時間を設け、当該ユニットから電力を出力しない時間を設ける。これは、平滑コンデンサ12の温度の劣化は、電力出力に起因するからである。
【0030】
本実施例においては、複数の電力変換ユニット10を単一の負荷に対して並列接続して同一の運転状況とした上で以上のような制御とすることで、電力変換ユニット10間における素子の状態変化を比較することが可能になり、この比較に基づいて各電力変換ユニット10の劣化状態を判定することが可能になっている。また、劣化状態に応じて、パワー半導体素子11の熱抵抗劣化および/または平滑コンデンサ12の温度劣化を抑制するように制御信号を調整し、各電力変換ユニット10間に生じている運転環境の不均衡も解消することが可能になっている。
【0031】
次に、本発明の他の実施例に係る電力変換ユニット診断システムについて、
図4を用いて説明する。
図4に示すシステム100が
図1に示すシステム100と異なる点は、各電力変換ユニット10の入力側に、各電力変換ユニット10の入力間の並列接続を切り替える入力側スイッチングユニット60を有することである。
【0032】
入力側スイッチングユニット60はスイッチング素子61a及び61bを有する。スイッチング素子61aがON状態のときは電力変換ユニット10a及び10bが並列接続される。スイッチング素子61bがON状態のときは電力変換ユニット10b及び10cが並列接続される。スイッチング素子61a及び61bのいずれもがON状態のときは電力変換ユニット10a、10b及び10cの全てが並列接続される。
【0033】
図4においてはスイッチング素子61bのみがON状態であり、ゆえに電力変換ユニット10b及び10cが並列接続されている。交流回路中のスイッチング素子3はOFF状態であり、ゆえに交流電源1は電力変換ユニットとは接続されていない。また、出力側スイッチングユニット40においてはスイッチング素子41b及び41cがON状態となっており、ゆえに電力変換ユニット10b及び10cの出力は負荷53に接続されている。
【0034】
ここで、本実施例において負荷53は蓄電池である。
【0035】
以上のような構成とすると、蓄電池53を電源として、並列接続された電力変換ユニット10b、10cの間に、
図4中の矢印14で示されるような電流が流れる。
【0036】
このときも、
図2と同様のフローを実行することにより、各電力変換ユニット10の劣化状態を判定でき、さらに素子の劣化を抑制するように運転を制御することが可能である。
【0037】
また、本実施例に係るシステム100においては
図5に示すフローが実行される。まずステップS501にて、電力変換ユニット10が接続された負荷(蓄電池)の出力を電力変換ユニット10の診断に適した範囲にするために電源を調整する。
【0038】
調整完了後、ステップS502へと移行し、診断対象の電力変換ユニット10を並列接続させ、診断を開始する。そして、電力変換ユニットコントローラ20は各電力変換ユニット10の状態値を取得する(ステップS503)。その後は
図2と同様の処理を実行し、電力変換ユニット10の劣化状態を診断する。
【0039】
以上説明したように本実施例においては、交流電源1の稼働を必要としないため、別の負荷51に電力を供給する必要がない場合(例えば負荷51が設置された工場が稼働しない夜間等)に自己完結的にユニットの状態を診断することが可能となり、効率及びコストの面で好適である。
【0040】
また、
図1の例とは異なり、本実施例においては、診断対象の電力変換ユニットを自由に任意の組み合わせとすることができる。したがって、例えば工場の稼働中(日中)に診断できなかったユニットを夜間に診断する等、診断の完全性を担保することが可能になる。
【0041】
以上で説明した本発明の実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)本発明に係る電力変換ユニット診断システムは、交流電源から交流電力を受け取る入力部と、交流電力を直流電力に変換して出力する出力部と、を有し、少なくとも1つの負荷に直流電力を供給するとともにそれぞれが交流電源に対して直列接続された複数の電力変換ユニットと、複数の電力変換ユニットを制御する制御部と、複数の電力変換ユニットのうち少なくとも一部の複数の電力変換ユニットの出力部を、1つの負荷に対して並列接続させることが可能な出力側スイッチングユニットと、を有し、制御部は、少なくとも一部の複数の電力変換ユニットの出力部が1つの負荷に並列接続されている場合に、該複数の電力変換ユニットそれぞれの状態を判定し、判定した該複数の電力変換ユニットそれぞれの状態を比較することによって、該複数の電力変換ユニットそれぞれについて、特性が劣化しているか否かを診断する。
【0042】
上記構成により、複数の電力変換ユニットを同時に運転させている場合に、それぞれの特性変化を個別に判定可能になるため、当該特性変化に基づいて劣化したユニットの制御を適切に調整し、ユニットの高寿命化を図ることができる。
【0043】
(2)電力変換ユニットは、パワー半導体素子及びコンデンサを有し、電力変換ユニットの状態は、パワー半導体素子の熱抵抗変化及びコンデンサの温度変化である。これらの状態は、電力変換ユニットの劣化に直結するものであるが、既存の温度センサ等によって容易に測定可能であるため、電力変換ユニットの劣化度合も容易に判定することができる。
【0044】
(3)制御部は、特性が劣化していると判定された電力変換ユニットに対し、パワー半導体素子の熱抵抗変化および/またはコンデンサの温度変化を抑制するように該電力変換ユニットを制御する。より具体的には、制御部は、パワー半導体素子の熱抵抗変化を抑制するために、電力変換ユニットから出力される電力の変動幅を減少させ、コンデンサの温度変化を抑制するために、電力変換ユニットから電力が出力されない時間を設ける。これにより、例えば電力変換ユニットに供給する制御信号を調整するのみで容易に本発明の効果を得ることができる。
【0045】
(4)複数の電力変換ユニットの入力部間の並列接続を切り替える入力側スイッチングユニットをさらに有し、入力側スイッチングユニットによって複数の電力変換ユニットが並列に接続されている場合に、該複数の電力変換ユニットの出力部は単一の直流電源に接続される。このように、交流電源の稼働を必要としないため、別の負荷に電力を供給する必要がない場合(例えば負荷が設置された工場が稼働しない夜間等)に自己完結的にユニットの状態を診断することが可能となり、効率及びコストの面で好適である。
【0046】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 交流電源、10a~10c 電力変換ユニット、11a~11c パワー半導体素子、12a~12c 平滑コンデンサ、20 電力変換ユニットコントローラ(制御部)、40 出力側スイッチングユニット、51、53 負荷、60 入力側スイッチングユニット、100 電力変換ユニット診断システム