(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135346
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】心理検査を行う検査者を支援するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/70 20180101AFI20230921BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
G16H50/70
A61B5/16 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040507
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】522104152
【氏名又は名称】岸本 幹史
(71)【出願人】
【識別番号】522104163
【氏名又は名称】大澤 僚也
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 幹史
(72)【発明者】
【氏名】大澤 僚也
【テーマコード(参考)】
4C038
5L099
【Fターム(参考)】
4C038PP03
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】バウムテストを通じて検査者が被験者の心理を正確且つ効率的に検査できるよう検査者を支援する。
【解決手段】バウムの画像を入力としバウムテストに関する指標を出力する機械学習モデルであるバウム解析モデルが用意される。検査者支援システムは、バウムテストの被験者が描いたバウムの画像である対象画像をバウム解析モデルに入力することで、被験者が描いたバウムについて一つ又は複数の指標を取得する。検査者支援システムは、当該取得された一つ又は複数の指標のうちの一つ以上の指標である一つ以上の選択指標に関する情報を、バウムテストの検査者に対し表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バウムの画像を入力としバウムテストに関する指標を出力する機械学習モデルであるバウム解析モデルに、バウムテストの被験者が描いたバウムの画像である対象画像を入力することで、被験者が描いたバウムについて一つ又は複数の指標を取得するバウム解析部と、
前記取得された一つ又は複数の指標のうちの一つ以上の指標である一つ以上の選択指標に関する情報を、バウムテストの検査者に対して表示するユーザインターフェース部と
を備える検査者支援システム。
【請求項2】
前記一つ以上の選択指標に関する情報は、当該一つ以上の選択指標の各々について、選択指標の指標名を含む、
請求項1に記載の検査者支援システム。
【請求項3】
前記一つ以上の選択指標に関する情報は、当該一つ以上の選択指標の各々について、当該選択指標の根拠となったバウム部位のサンプル画像を含む、
請求項1又は2に記載の検査者支援システム。
【請求項4】
前記一つ以上の選択指標に関する情報は、当該一つ以上の選択指標の各々について、当該選択指標についての解釈を表すテキスト文である指標解釈文を含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検査者支援システム。
【請求項5】
前記取得された一つ又は複数の指標の各々の重要度、判別個数及び精度の少なくとも一つを基に、当該一つ又は複数の指標を前記一つ以上の選択指標に最適化する指標最適化部、
を更に備え、
前記一つ又は複数の指標の各々について、
前記重要度は、バウムテストに関する指標毎に重要度を表す情報を含んだ指標情報から特定された値であり、
前記判別個数は、前記対象画像から得られた当該指標の累計であり、
前記精度は、前記バウム解析モデルから当該指標について特定された精度である、
請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の検査者支援システム。
【請求項6】
コンピュータが、バウムの画像を入力としバウムテストに関する指標を出力する機械学習モデルであるバウム解析モデルに、バウムテストの被験者が描いたバウムの画像である対象画像を入力することで、被験者が描いたバウムについて一つ又は複数の指標を取得し、
コンピュータが、前記取得された一つ又は複数の指標のうちの一つ以上の指標である一つ以上の選択指標に関する情報を、バウムテストの検査者向けに表示する、
検査者支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、心理検査を行う検査者を支援する新規な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、精神疾患を患っている患者は多い(例えば、日本国では400万人を超えている)。中でも、うつ病は、社会課題となっている一方、診断と治療が結びついていないことが多い。DMS-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)という診断標準が整備されているものの、ひとえにうつ病といっても、患者の性格や背景、環境などにより、原因が体質なのか、対人関係なのか、原因は千差万別となり、それゆえ、診断がなされても、治療に難渋するケースが多い。
【0003】
患者対し、真に適切な治療を提供するためには、さまざまな観点から患者を理解する必要があり、そのために、通常、心理検査が行われている。バウムテストはその心理検査法の一つである。バウムテストに関する技術として、例えば特許文献1に開示の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の技術は、被検者に受け入れられやすい温かみのあるコメント文を作成することを目的とし(段落0008参照)、その目的を達成するために、バウムテストにおいて被験者が描いた樹木画に該当する被験者向けコメント文を機械的に作成する(段落0056)。
【0006】
しかし、機械的に作成されたコメント文は、被験者の精神疾患の度合やその時の被験者の精神状態によっては、被験者の精神への侵襲となり得る。このため、機械的に作成されたコメントをそのまま被験者へ見せることは好ましくない。
【0007】
また、コメント文が適切であるためには、被験者が描いたバウム(ドイツ語で「木」を意味する)を正確に解釈する必要がある。しかし、治療に結びつけるためのバウムの正確な解釈を機械的に行うことは難しい。
【0008】
以上のような理由から、バウムテストを機械的に行うことは困難であり且つ好ましくない。バウムテストは、検査者により行われるべきである。具体的には、バウムテストにおいて被験者に対し検査者が向き合うことが必要である。
【0009】
しかし、バウムテストにかけられる時間は限られている。また、バウムテストの熟練度は検査者によって異なる。
【0010】
更に、バウムテストの被験者になり得る者(典型的には、精神疾患を患っている又は患っているおそれのある者)の数に対して、バウムテストを行うことができる検査者は少ない。検査者の中心を心理士が担っているが、近年の認知行動療法を中心とする言語的なアプローチへの高まりを背景として、バウムテストのような非言語的なアプローチ手法に習熟した心理士は必ずしも多くない。
【0011】
そこで、本発明の目的は、バウムテストを通じて検査者が被験者の心理を正確且つ効率的に検査できるよう検査者を支援することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
バウムの画像を入力としバウムテストに関する指標を出力する機械学習モデルであるバウム解析モデルが用意される。検査者支援システムは、バウムテストの被験者が描いたバウムの画像である対象画像をバウム解析モデルに入力することで、被験者が描いたバウムについて一つ又は複数の指標を取得する。検査者支援システムは、当該取得された一つ又は複数の指標のうちの一つ以上の指標である一つ以上の選択指標に関する情報を、バウムテストの検査者に対し表示する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バウムテストを通じて検査者が被験者の心理を正確且つ効率的に診断できるよう検査者を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】実施形態に係るシステム全体の物理的な構成例を示す。
【
図4】検査者支援システムの論理的な構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明では、「インターフェース装置」は、一つ以上のインターフェースデバイスでよい。当該一つ以上のインターフェースデバイスは、下記のうちの少なくとも一つでよい。
・一つ以上のI/O(Input/Output)インターフェースデバイス。I/O(Input/Output)インターフェースデバイスは、I/Oデバイスと遠隔の表示用計算機とのうちの少なくとも一つに対するインターフェースデバイスである。表示用計算機に対するI/Oインターフェースデバイスは、通信インターフェースデバイスでよい。少なくとも一つのI/Oデバイスは、ユーザインターフェースデバイス、例えば、キーボード及びポインティングデバイスのような入力デバイスと、表示デバイスのような出力デバイスとのうちのいずれでもよい。
・一つ以上の通信インターフェースデバイス。一つ以上の通信インターフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば一つ以上のNIC(Network Interface Card))であってもよいし二つ以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))であってもよい。
【0016】
また、以下の説明では、「メモリ」は、一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい。
【0017】
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、一つ以上の永続記憶デバイスである。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)であり、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)である。
【0018】
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリでよい。
【0019】
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスである。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスであるが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部又は全部を行うハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0020】
また、以下の説明では、「kkk部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよいし、一つ以上のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)によって実現されてもよい。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/又はインターフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機又は計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0021】
また、以下の説明では、「xxxテーブル」といった表現にて、入力に対して出力が得られる情報を説明することがあるが、当該情報は、どのような構造のデータでもよいし(例えば、構造化データでもよいし非構造化データでもよいし)、入力に対する出力を発生するニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムやランダムフォレストに代表されるような学習モデルでもよい。従って、「xxxテーブル」を「xxx情報」と言うことができる。また、以下の説明において、各テーブルの構成は一例であり、一つのテーブルは、二つ以上のテーブルに分割されてもよいし、二つ以上のテーブルの全部又は一部が一つのテーブルであってもよい。
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態では、バウムテストを用いた心理検査は、検査者が被験者と対面し行うが、オンラインで行われてもよい。また、以下、用語の定義は、下記の通りであるとする。
・被験者:バウムテストを受ける者。
・検査者:バウムテストを用いた心理検査を実施し、その検査の結果を基に、アセスメントを行う者であり、例えば心理士。
・診断者:検査者から得られたアセスメントを基に、被験者の治療へと繋がる診断を行う者であり、例えば医師(典型的には精神科医)。医師は、検査者と診断者を兼ねた者でもよい。
【0023】
【0024】
被験者10が来院し(S51)、診断者15が、被験者10の問診を行う(S61)。その問診の結果を基に、検査者20が、被験者10の診察を開始する(S71)。
【0025】
検査者20の指示を受けて、被験者10がバウムを描く(S52)。バウムは、紙に描かれてもよいし、情報処理端末の表示デバイス(例えば、タブレット型の情報処理端末のタッチパネル)に描かれてもよい。
【0026】
描かれたバウムの画像である対象画像が、検査者を支援する計算機システムである検査者支援システム13に入力される。対象画像は、紙に描かれたバウムの撮影画像でもよいし、情報処理端末の表示デバイスに描かれたバウムの画像でもよい。
【0027】
検査者支援システム13は、入力された対象画像を解析する(S81)。具体的には、バウム解析モデル251が予め用意されており、検査者支援システム13は、対象画像をバウム解析モデル251に入力することで、被験者が描いたバウムについて一つ又は複数の指標を取得する。バウム解析モデル251は、バウムの画像を入力としバウムテストに関する指標を出力する機械学習モデルである。バウム解析モデル251は、典型的には、ニューラルネットワークのような深層学習モデルであり、教師データを用いて学習されたモデルである。教師データは、例えば、バウム毎に、バウムの画像(入力データ)とそのバウムについて注目すべき指標(出力としての正解データ)とを含む。
【0028】
検査者支援システム13は、S81の解析により取得された一つ又は複数の指標のうちの一つ以上の指標に関する情報を選択する(S82)。この「一つ以上の指標」の各々を、便宜上、「選択指標」と呼ぶ。S81の解析により取得された一つ又は複数の指標の全て又は一部の指標の各々が選択指標である。以下、一つの選択指標を例に取る。
【0029】
検査者支援システム13は、選択指標の出現傾向の統計を表す情報を特定する(S83)。また、例えば、検査者支援システム13は、選択指標についての解釈を表すテキスト文である指標解釈文をレコメンドとして特定する(S84)。また、例えば、検査者支援システム13は、選択指標に関する参考文献を特定する(S85)。検査者支援システム13は、S82で選択された指標、S83で特定された統計、S84で特定されたレコメンド、及び、S85で特定された参考文献を表す情報を表示する(S86)。S83~S85の少なくとも一つが行われないでもよい。
【0030】
検査者20は、検査者支援システム13により表示された情報(選択指標、統計、レコメンド及び参考文献の少なくとも一つを表す情報)を基に、被験者10の心理検査を行う。心理検査は、下記を含む。
・検査者20は、バウムを解釈する(S72)。
・検査者20は、被験者10に質問をする(S73)。被験者10が、その質問に対する回答をする(S53)。S73の質問とS53の回答は、典型的には繰り返される。
【0031】
検査者20は、心理検査の結果を基に、被験者10の心理のアセスメントを行う(S74)。S74では、例えば、アセスメントとしての所見が検査者20により検査者の端末に入力される。
【0032】
診断者15が、そのアセスメントを基に、被験者10を診断する(S62)。S62の診断を基に、必要があれば、被験者10は、治療のための行動をとる(S54)。
【0033】
なお、検査者20は、このバウムテストに関する情報(例えば、描かれたバウムの画像、表示された指標名、バウムに対する検査者20の解釈、被験者10に対する質問、被験者10からの回答、及び、検査者20が出した診断、のうちの少なくとも一部を表す情報)を、検査者支援システム13に入力し、入力された情報が、検査者支援システム13により保存されてよい。
【0034】
S82~S85で選択又は特定された要素を表す情報の表示は、異なるタイミングで異なるUI(User Interface)にされてよいが、本実施形態では、
図2に例示する通り、同一タイミングで一つのUIにされる。以下、この一つのUIを、「検査者支援UI」と呼ぶ。
【0035】
【0036】
検査者支援UI300は、典型的にはGUI(Graphical User Interface)であり、バウム画像301と、指標画像セット302と、指標名リスト303と、統計リスト304と、リコメンド/参考テーブル663とを表示する。
【0037】
バウム画像301は、被験者10により描かれたバウムの画像である。
【0038】
指標画像セット302は、バウム画像301をバウム解析モデル251に入力することにより得られた一つ又は複数の指標のうちの一つ以上の選択指標について、当該一つ以上の選択指標が該当する一つ又は複数のバウム部位の各々の名称を表す。また、指標画像セット302は、当該一つ又は複数のバウム部位の各々について、当該バウム部位に属する選択指標の根拠としての一つ又は複数のサンプル画像を含む。サンプル画像は、サンプルとしてのバウム部位の画像である。
【0039】
指標名リスト303は、選択指標の指標名のリストである。統計リスト304は、選択指標の出現傾向の統計のリストである。
【0040】
リコメンド/参考テーブル663は、選択指標毎に、指標名と、指標解釈文と、参考とを表す。参考は、選択指標に関する参考文献を表す。
【0041】
バウムテストに関する指標として多くの指標が存在する(例えば、約80もの指標が存在する)。また、バウムテストを用いた心理検査にかけられる時間は限られている(例えば20分程度)。限られた時間の中で多くの指標から注目すべき指標を検査者20が目視で見つけることは容易ではない。
【0042】
本実施形態では、上述したバウム解析モデル251が用意され、バウム解析モデル251に対象画像(被験者10により描かれたバウムの画像)が入力されることで、一つ又は複数の指標が取得される。そして、検査者20に対し、当該取得された一つ又は複数の指標のうちの一つ以上の選択指標に関する情報が表示される。これにより、バウムテストを通じて検査者20が被験者10の心理を正確且つ効率的に検査できる。また、本実施形態によれば、被験者10に関して入力される情報は、被験者10により描かれたバウムの画像のみでもよく、被験者10の個人情報は必要とされない。
【0043】
表示される「一つ以上の選択指標に関する情報」は、当該一つ以上の選択指標の各々について、選択指標の指標名を含んでよい。これにより、検査者20は、迅速に、バウムの解釈の観点としての指標を特定できる。
【0044】
また、表示される「一つ以上の選択指標に関する情報」は、当該一つ以上の選択指標の各々について、当該選択指標の根拠となったバウム部位のサンプル画像を含んでよい。これにより、検査者20は、バウム部位単位で、対象画像におけるバウム部位とサンプル画像とを比較することで、バウム解析モデル251を用いた画像解析により得られた指標が正しいか否かを目視で判断することができる。例えば、対象画像におけるバウム部位がサンプル画像と大きく異なっている場合、バウム解析モデル251を用いて得られた指標が誤っている可能性が高いと判断することができる。
【0045】
また、表示される「一つ以上の選択指標に関する情報」は、当該一つ以上の選択指標の各々について、当該選択指標についての指標解釈文を含んでよい。これにより、検査者20は、当該選択指標に基づく質問を、その指標解釈文を基に迅速に決定できる。
【0046】
なお、指標解釈文は、被験者10に対する質問文それ自体を含まない。質問文は、指標解釈文を基に検査者20により決定される。具体的には、異なる複数の検査者に対して同じ指標(同じ指標解釈文)が提供されたとしても、検査者によって、その指標解釈文の解釈が異なり、故に、被験者に対する質問も異なる。例えば、或るバウム部位の表現が、体を切ることを連想したが故の表現なのか、或いは、その日見かけた物の表現なのかは、バウム解析モデル251を用いた解析から特定することはできない。検査者20は、正確なアセスメント(典型的には所見、評価などの意味)のためにバウム部位の背景(指標の背景)を正しく理解する必要があり、そのためには、被験者10に適切に質問にすることが必要である。指標と質問は1:1に対応しない。検査者20は、複数の選択指標についての指標解釈文の組合せを基に質問を決定することもできる。
【0047】
また、表示される「一つ以上の選択指標に関する情報」は、当該一つ以上の選択指標の各々について、当該選択指標の出現傾向の統計(例えば、年代別の出現率)を表す情報を含んでよい。これにより、検査者20は、選択指標の統計を基に、被験者10により描かれたバウムをより正確に解釈することができる。例えば、バウム解析モデル251を用いた解析は、画像の解析であり、画像が表すバウムが描かれた背景(例えば、被験者10の年代)は、バウム解析モデル251を用いた解析では考慮されていない。被験者10の個人情報の入力が不要であるため、検査者20が、選択指標それ自体に加え、選択指標に紐づけられている統計を基に、バウムを解釈することができる。
【0048】
また、表示される「一つ以上の選択指標に関する情報」は、当該一つ以上の選択指標の各々について、当該選択指標に関する参考文献を表す情報を含んでよい。これにより、検査者20は、選択指標についての参考文献を基に、被験者10の心理をより正確に検査することができる。
【0049】
以下、本実施形態を詳細に説明する。
【0050】
図3は、実施形態に係るシステム全体の物理的な構成例を示す。
【0051】
検査者支援システム13と、検査者端末11とが、通信ネットワーク(例えばインターネット)160を介して通信する。
【0052】
検査者端末11は、情報処理端末(例えば、デスクトップ型、モバイル型又はタブレット型のパーソナルコンピュータ)であり、例えば、入力デバイス113(例えばキーボードやマウス)、表示デバイス114(例えば表示デバイス)、インターフェース装置111、記憶装置112及びプロセッサ115を備える。入力デバイス113及び表示デバイス114は、タッチパネルのような一体型デバイスでもよい。インターフェース装置111に入力デバイス113及び表示デバイス114が接続され、インターフェース装置111を通じて検査者支援システム13と通信が行われる。インターフェース装置111及び記憶装置112にプロセッサ115が接続される。検査者端末11は、このような物理的な情報処理端末に代えて、仮想的な情報処理端末(例えば、サーバ上の仮想マシン)でもよい。
【0053】
検査者支援システム13は、通信ネットワーク160に接続されたフロントエンドサーバ23と、フロントエンドサーバ23に通信ネットワーク170を介して接続されるバックエンドサーバ33とを有する。通信ネットワーク170に代えて専用線が採用されてもよいし、通信ネットワーク170は通信ネットワーク160と同じ通信ネットワークでもよい。
【0054】
フロントエンドサーバ23は、インターフェース装置131、記憶装置132及びそれらに接続されたプロセッサ133を備える。インターフェース装置131を介して検査者端末11及びバックエンドサーバ33と通信が行われる。記憶装置132は、プロセッサ133に実行されるコンピュータプログラム、及び、プロセッサ133に参照又は更新されるデータを格納する。プロセッサ133は、記憶装置132に記憶されたコンピュータプログラムを実行する。
【0055】
バックエンドサーバ33は、インターフェース装置141、記憶装置142及びそれらに接続されたプロセッサ143を備える。インターフェース装置141を介してフロントエンドサーバ23と通信が行われる。記憶装置142は、プロセッサ143に実行されるコンピュータプログラム、及び、プロセッサ143に参照又は更新されるデータを格納する。プロセッサ143は、記憶装置142に記憶されたコンピュータプログラムを実行する。
【0056】
検査者支援システム13は、本実施形態では、一つ以上の物理的な計算機の一例としてのフロントエンドサーバ23及びバックエンドサーバ33で構成された物理的な計算機システムであるが、物理的な計算機システムに代えて、物理的な計算機システム(例えばクラウド基盤)に基づく仮想的な計算機システム(例えば、クラウドコンピューティングサービスやアプリケーションサービス)でもよい。検査者支援システム13は、フロントエンドサーバ23及びバックエンドサーバ33のように異なる複数のサーバで構成されていることに代えて、一つのサーバで構成されてもよい。
【0057】
図4は、検査者支援システム13の論理的な構成例を示す。
【0058】
フロントエンドサーバ23の記憶装置132に、結果テーブル201、統計テーブル202及び参考テーブル203が格納される。結果テーブル201には、適宜に処理結果としての情報が格納される。統計テーブル202には、指標毎に、当該指標の出現傾向の統計を表す情報が格納されている。結果テーブル201及び参考テーブル203については後述する。なお、図示しないが、フィードバックテーブルが検査者支援システム13(又は外部の記憶システム)に格納されてよい。フィードバックテーブルには、バウムテスト毎に、バウムテストに関し検査者20からフィードバックされた情報(例えば、描かれたバウムの画像、表示された指標名、バウムに対する検査者20の解釈、被験者10に対する質問、被験者10からの回答、及び、検査者20が出したアセスメント、のうちの少なくとも一部を表す情報)が格納されてよい。フィードバックテーブルの少なくとも一部の情報が、例えば教師データとして、バウム解析モデル251の学習に用いられてもよい。
【0059】
フロントエンドサーバ23のプロセッサ133にコンピュータプログラムが実行されることにより、UI部211及び指標最適化部212といった機能が実現される。UI部211は、検査者20に対しUIを提供する(検査者端末11に表示用情報を提供する)。指標最適化部212は、バウム解析モデル251を用いた解析の結果として得られた一つ又は複数の指標を一つ以上の指標(選択指標)に最適化する。
【0060】
バックエンドサーバ33の記憶装置142に、指標テーブル252及びバウム解析モデル251が格納される。指標テーブル252については後述する。
【0061】
バックエンドサーバ33のプロセッサ143にコンピュータプログラムが実行されることにより、バウム解析部261及び指標取得部262といった機能が実現される。バウム解析部261は、バウム解析モデル251を用いた解析を行う。指標取得部262は、当該解析により得られた指標毎に、当該指標に紐づく情報を指標テーブル252から取得する。
【0062】
なお、
図4に示す配置(検査者支援システム13における機能とテーブルの配置)は、一例である。検査者支援システム13におけるいずれの機能もいずれのテーブルもいずれのサーバに配置されてもよい。また、上述したように、検査者支援システム13が一つのサーバで構成され、その一つのサーバに、
図4に例示の機能及びテーブルが備えられてもよい。
【0063】
【0064】
指標テーブル252は、バウムテストに関する指標毎に、レコードを有する。各レコードは、バウム部位501、分類502、指標ID503、早期型504、重要度505、指標名506、指標状態507及び指標解釈508といった情報を有する。一つの指標を例に取る。
【0065】
バウム部位501は、指標が属するバウム部位を表す。分類502は、指標が属する分類を表す。バウム部位501が、第1の分類を表す情報に相当し、分類502が、第1の分類の下位の第2の分類を表す情報に相当する。
【0066】
指標ID503は、指標のIDを表す。早期型504は、指標が早期型か否か(発達早期に表れ成長と共に消失していく指標か否か)を表す。“0”が、早期型ではないことを意味し、“1”が、早期型を意味する。
【0067】
重要度505は、指標の重要度を表す。数値が高い程、指標の重要度が高い。
【0068】
指標名506が、指標の名称を表す。本実施形態では、指標テーブル252において、指標名506が主キーに相当する。指標状態507は、指標の状態、例えば、指標が属するバウム部位の表現の詳細を表す。
【0069】
指標解釈508は、指標の指標解釈文である。指標解釈文は、
図2に例示した通り、検査者端末11に表示される。
【0070】
指標テーブル252は、指標毎に、サンプル画像(又はサンプル画像へのリンク)を含んでいてよい。すなわち、
図2に例示されたサンプル画像(バウム部位毎のサンプル画像)は、指標テーブル252を参照することにより取得されてよい。
【0071】
【0072】
参考テーブル203は、バウムテストに関する指標毎に、レコードを有する。各レコードは、指標名601と、対応する参考文献の在り処を特定するための参考情報(例えば、著者名602、タイトル603、掲載誌名604、出版年605、巻数606、始めページ607、終わりページ608及びURL609)といった情報を有する。一つの指標を例に取る。
【0073】
指標名601は、指標の名称を表す。著者名602は、指標についての情報が掲載されている参考文献の著者の名前を表す。タイトル603は、参考文献のタイトルを表す。掲載誌名604は、参考文献が掲載された学会誌等(学会誌又はその他書籍)の名前を表す。出版年605は、学会誌等が出版された年を表す。巻数606は、学会誌等の該当巻数を表す。始めページ607は、学会誌等における参考文献の先頭ページを表す。終わりページ608は、学会誌等における参考文献の末尾ページを表す。URL609は、参考文献へのリンクとしてのURLを表す。
【0074】
図7及び
図8は、結果テーブル201の構成例を示す。
【0075】
結果テーブル201は、例えばバウムテスト毎に(バウム画像毎に)用意される。結果テーブル201は、指標毎に、レコードを有する。この「指標毎」は、予め定義された指標毎であってもよいし、バウム画像の解析により得られた(バウム解析モデル251から出力された)指標毎であってもよい。
【0076】
各レコードは、判別結果701、精度702、判別個数703、バウム部位704、分類705、指標ID706、早期型707、重要度708、指標名709、指標状態710、指標解釈711、重要712、統計713、著者名714、タイトル715、掲載指名716、出版年717、巻数718、始めページ719、終わりページ720及びURL721といった情報を有する。一つの指標を例に取る。
【0077】
判別結果701は、指標が特定されたか否かを表す。精度702は、指標が正しい確率を表す。この確率は、バウム解析モデル251を用いた解析において特定される。
【0078】
判別個数703は、バウム画像から得られた指標の累計を表す。
【0079】
バウム部位704、分類705、指標ID706、早期型707、重要度708、指標名709、指標状態710及び指標解釈711は、指標名をキーとして指標テーブル252から取得されたバウム部位501、分類502、指標ID503、早期型504、重要度505、指標名506、指標状態507及び指標解釈508である。
【0080】
重要712は、指標が重要指標であるか一般指標であるかを表す。“1”が重要指標を意味し、“0”が一般指標を意味する。例えば、指標毎に、当該指標が重要指標であるか一般指標であるかを表す情報が、指標テーブル252に登録されていて、当該情報が、重要712として結果テーブル201に登録されてよい。
【0081】
統計713は、指標について統計テーブル202から取得された統計を表す。著者名714、タイトル715、掲載指名716、出版年717、巻数718、始めページ719、終わりページ720及びURL721は、指標名をキーとして参考テーブル203から取得された著者名602、タイトル603、掲載誌名604、出版年605、巻数606、始めページ607、終わりページ608及びURL609である。
【0082】
【0083】
フロントエンドサーバ23において、UI部211が、バウム画像の入力を検査者端末11から受け、当該バウム画像をバックエンドサーバ33に送信する(S901)。例えば、S901では、バウム画像が関連付けられた解析リクエストが送信される。
【0084】
バックエンドサーバ33において、バウム解析部261が、例えば解析リクエストに応答して、フロントエンドサーバ23からのバウム画像の数値化等の画像処理を行う(S902)。バウム解析部261が、処理された画像をバウム解析モデル251に入力することで、バウム画像の解析を行う(S903)。指標取得部262が、S903の解析により得られた指標毎に、当該指標の指標名をキーに、当該指標に対応する情報501~508を指標テーブル252から取得する(S904)。指標取得部262が、結果情報(例えば、指標毎に、情報501~508(
図7に例示した情報704~711)と、
図7に例示した情報701~703及び712を含んだ情報)を、フロントエンドサーバ23に送信する(S905)。例えば結果情報は、上記解析リクエストの応答として送信される。結果情報は、指標毎に、サンプル画像(又はそのリンク)を含んでもよい。
【0085】
フロントエンドサーバ23において、指標最適化部212が、結果情報が表す一つ又は複数の指標を、結果情報を基に、一つ以上の指標(選択指標)に最適化する(S906)。例えば、指標最適化部212は、結果情報が表す一つ又は複数の指標の各々の情報(情報701~712)を、結果テーブル201に登録する。指標最適化部212は、指標毎の重要度708、判別個数703及び精度702の少なくとも一つを基に、当該一つ又は複数の指標を、一つ以上の選択指標に最適化する(絞り込む)。これにより、多くの指標が特定された場合であっても、検査者端末11に表示される指標が適切な指標に絞り込まれる。
【0086】
この時点で、UI部211は、
図2に例示の検査者支援UI300を検査者端末11に表示してもよい。この場合、検査者支援UI300には、バウム画像301、指標画像セット302、指標名リスト303、及び、リコメンド/参考テーブル203のうちの指標名及び指標解析が表示されるが、統計リスト304及び参考は表示されない。
【0087】
UI部211は、必要に応じて(例えば、検査者支援UI300を通じて、指標が指定された統計リクエストを受け付けた場合)、指定された指標の指標名に対応した統計を統計テーブル202から取得する(S907)。UI部211は、取得された統計を、統計713として結果テーブル201に登録する。
【0088】
また、UI部211は、必要に応じて(例えば、検査者支援UI300を通じて、指標が指定された参考リクエストを受け付けた場合)、指定された指標の指標名に対応した参考情報(情報602~609)を参考テーブル203から取得する(S908)。UI部211は、取得された参考情報(情報602~609)を、情報714~721として結果テーブル201に登録する。
【0089】
UI部211は、S906で絞り込まれた選択指標についての情報が表示された検査者支援UI300を検査者端末11に表示する(S909)。
【0090】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【0091】
例えば、木は、地域(例えば、国や州)によって異なる。このため、例えば、バウム解析モデル251及び指標テーブル252は、地域毎に用意されてもよい。
【0092】
また、例えば、一部の指標の出現率は、年代によって異なり得る。このため、例えば、バウム解析モデル251は、年代別に用意されてもよい。
【0093】
また、例えば、表示された検査者支援UI300は、心理検査において、情報の入力(例えば手入力又は音声入力)を受け付け、入力された情報(例えば、被験者10の回答を表す情報)に応じて更新されてよい。
【0094】
また、例えば、検査者支援システム13は、アセスメントの支援機能を有してよい。例えば、当該機能は、アセスメントとしての入力事項を含んだテンプレートを表示したUIを表示する機能でよい。これにより、検査者20が入力すべき情報の量が削減され、以って、検査者の入力負担が低減される。
【符号の説明】
【0095】
13…検査者支援システム