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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135356
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20230921BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20230921BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230921BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/06
A61K8/73
A61K8/31
A61K8/60
A61K8/86
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040519
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(72)【発明者】
【氏名】田口 冴恵
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA122
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC342
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC542
4C083AC582
4C083AC852
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD201
4C083AD282
4C083AD311
4C083AD312
4C083AD492
4C083BB12
4C083CC03
4C083CC05
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】ヘパリン類似物質を含有する水中油型乳化組成物において、塗布中のなめらかな伸び広がり及びコク感、塗布後のハリ感及びべたつきのなさ、浸透感に優れる水中油型乳化組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】次の成分(A)~(D)を含有し、成分(C)及び(D)の合計含有質量に対する成分(C)の含有質量の割合(C)/{(C)+(D)}が0.4~0.9である水中油型乳化組成物。
(A)ヘパリン類似物質
(B)25℃においてペースト状である油剤 3~15質量%
(C)水添ポリイソブテン
(D)ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルから選択される1種又は2種以上
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D)を含有し、成分(C)及び(D)の合計含有質量に対する成分(C)の含有質量の割合(C)/{(C)+(D)}が0.4~0.9である水中油型乳化組成物。
(A)ヘパリン類似物質
(B)25℃においてペースト状である油剤 3~15質量%
(C)水添ポリイソブテン
(D)ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルから選択される1種又は2種以上
【請求項2】
前記成分(C)の含有量が1~15質量%、前記成分(D)の含有量が0.5~8質量%である請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパリン類似物質を含有する水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン類似物質は、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖であり、優れた保湿作用、血行促進作用、抗炎症作用等を有することから、皮膚外用剤の有効成分として用いられている。近年では、塗布時の使用感に優れたヘパリン類似物質含有製剤の開発が盛んに行われており(例えば、特許文献1参照)、種々の製品が提案されている。
【0003】
一方で、手軽なケアを求める消費者ニーズの高まりによって、一製品で複数の機能を有するオールインワン製品が増加している。ヘパリン類似物質を用いた水中油型乳化組成物は、水相中のヘパリン類似物質が有する保湿機能やみずみずしさと、油剤による閉塞効果やコク感を両立することができる為、オールインワン製品に適した剤型と言える。このような水中油型乳化組成物としては、例えば、ヘパリン類似物質、及び油溶性のアシルアミノ酸、その誘導体及びそれらの塩、ペースト状油からなる群より選択される1種以上の油溶性成分を含有する、水中油型乳化組成物の技術(特許文献2参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-119690号公報
【特許文献2】特開2021-059525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、安定性及び塗布時のなめらかさに優れるものの、水溶性高分子による使用後のべたつきが気になる場合があった。また、特許文献2に開示された技術においては、塗布時のみずみずしさや使用後の肌なじみのよさに優れるものの、ペースト状油によるべたつきの悪化や塗布時の伸びの低下といった点で、十分に満足がいかない場合があった。
【0006】
従って本発明では、ヘパリン類似物質を含有する水中油型乳化組成物において、油剤によるコク感を有しながらも、使用後のべたつきがなく、なめらかな伸び広がりにも優れる水中油型乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者は、鋭意研究の結果、ヘパリン類似物質と25℃においてペースト状である油剤を含有する水中油型乳化組成物において、特定の化合物を組み合わせることにより、上記の課題を解決し、さらには浸透感やハリ感にも優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
[1]次の成分(A)~(D)を含有し、成分(C)及び(D)の合計含有量に対する成分(C)の含有量の割合(C)/{(C)+(D)}が0.4~0.9である水中油型乳化組成物。
(A)ヘパリン類似物質
(B)25℃においてペースト状である油剤 3~15質量%
(C)水添ポリイソブテン
(D)ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルから選択される1種又は2種以上
[2]前記成分(C)の含有量が1~15質量%、前記成分(D)の含有量が0.5~8質量%である[1]に記載の水中油型乳化組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水中油型乳化組成物によれば、油剤によるコク感を有しながらも、使用後のべたつきがなく、なめらかな伸び広がりにも優れ、さらには浸透感やハリ感にも優れる。そのため、オールインワン使用や高保湿機能のスキンケア化粧料としても有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。
【0011】
(成分(A)ヘパリン類似物質)
本発明に用いられる成分(A)ヘパリン類似物質は、日本薬局方外医薬品規格に定義されたヘパリン類似物質であり、D-グルクロン酸及びN-アセチル-D-ガラクトサミンからなる二糖を反復単位とする多糖体を硫酸化した、ムコ多糖の多硫酸化エステルである。ヘパリン類似物質とは、人の肝臓で生成される糖類の一種「ヘパリン」と類似の化学構造を有する成分の総称であり、具体的には、セルロース硫酸、キチン硫酸、キトサン硫酸、ペクチン硫酸、コンドロイチン硫酸、イヌリン硫酸、アルギン酸硫酸、グリコーゲン硫酸、デンプン硫酸、ポリビニルアルコール硫酸、ポリグルコース硫酸、ポリラクトース硫酸、ラミナリン硫酸、ガラクタン硫酸、レバン硫酸及びこれらの多硫酸化物並びにそれらの塩等が挙げられる。ヘパリン類似物質は、保湿作用や血行促進作用等を有することが知られている。
【0012】
本発明においては、日本薬局方外医薬品規格2002に記載のヘパリン類似物質が好ましく使用できる。なお、日本薬局方外医薬品規格に定義されたヘパリン類似物質は、コンドロイチン硫酸の多硫酸エステルを主成分としたものである。ヘパリン類似物質の有機硫酸基量は特に制限されず、何れのものも使用できるが、好ましい有機硫酸基量は、保湿効果や使用性等の観点から、20~40質量%(以下、単に%と略す)であることが好ましい。本発明における成分(A)の有機硫酸基量は、日本薬局方外医薬品規格2002「ヘパリン類似物質」の定量法に記載の方法により測定することができる。
【0013】
本発明における成分(A)の含有量は、特に限定されないが、水中油型乳化組成物全量に対して、0.001%以上が好ましく、0.01%以上がより好ましく、0.05%以上がさらにより好ましい。また、5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.8%以下がさらにより好ましく、0.5%以下が特に好ましい。この範囲であれば、使用後のべたつきがなく、保湿効果に優れるため好ましい。
【0014】
(成分(B)25℃においてペースト状である油剤)
本発明に用いられる成分(B)の油剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品等に通常用いられる油剤であれば、極性、非極性等の性質は問わないが、25℃においてペースト状を呈するものである。成分(B)は、25℃を超える温度に融点を持ち、かつ30℃の粘度が5000~100000mPa・sの極性油を指す。なお、本発明において前記粘度は、試料を30℃で一日放置後、単一円筒型回転粘度計ビスメトロン型式VS-A1(芝浦システム社製)を用いて測定したものである。その融点は、特に限定されないが、27~60℃のものが好ましく、30~55℃であるものがより好ましい。
【0015】
具体的には、ワセリン等の炭化水素油、また、エステル油等の極性油としては、N-アシルアミノ酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ダイマー酸エステル、ジペンタエリストール脂肪酸エステル、脂肪酸コレステリルエステル、脂肪酸フィトステリルエステル等が挙げられる。さらに具体的には、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジオクチルドデシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)等のN-アシルアミノ酸エステル、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、(アジピン酸/2-エチルヘキサン酸/ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリド、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油等のグリセリン脂肪酸エステル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビスイソステアリル等のダイマー酸エステル、(12-ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリトール、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリトール、(12-ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリトール等のジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、リシノール酸コレステリル等の脂肪酸コレステリルエステル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル等の脂肪酸フィトステリルエステル等などが挙げられ、これらは必要に応じて1種又は2種以上を用いることが出来る。これらの中でも、コク感と水中油型乳化組成物の安定性の観点から、オレイン酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)が好ましい。
【0016】
本発明における成分(B)の含有量は、水中油型乳化組成物全量に対して3~15%であり、3%未満であると充分なコク感が得られなかったり、15%を超えるとべたつきのなさやなめらかな伸び広がりの点で劣ったりする場合がある。また成分(B)の含有量は、5%以上がより好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下がさらにより好ましい。
【0017】
(成分(C)水添ポリイソブテン)
本発明に用いられる成分(C)水添ポリイソブテンは、分岐を有する飽和炭化水素の混合物であり、化粧品、医薬部外品、医薬品等に通常用いられるものであれば、特に限定されず使用することができる。成分(C)の平均分子量は500~3000が好ましく、市販品としては、例えば、精製ポリブテンHV-100F(SB)(日本ナチュラルプロダクツ社製)、ポリブテン100R、ポリブテン300R、ポリブテン300H、ポリブテン2000H(以上、出光興産社製)、パールリーム18(平均分子量:1000)、パールリーム24(平均分子量:1350)、パールリーム46(平均分子量:2650)(以上、日本油脂社製)等が挙げられる。
【0018】
本発明における成分(C)の含有量は、特に限定されないが、水中油型乳化組成物全量に対して、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましい。また15%以下が好ましく、12%以下がより好ましい。この範囲であれば、なめらかな伸び広がり及び浸透感に優れ、べたつきのなさ及びハリ感にも優れるためより好ましい。
【0019】
(成分(D)ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルから選択される1種又は2種以上)
本発明においては、成分(D)のポリオキシアルキレンアルキルグルコシドは、アルキルグルコシドに酸化アルキレン(オキシアルキレン)を付加重合したものである。化粧品、医薬部外品、医薬品等に通常用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、付加重合するオキシアルキレンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン等があげられ、エチレン又はプロピレンであることが好ましい。オキシアルキレンの平均付加モル数としては、5~40が好ましく、より好ましくは、10~20である。またアルキル基としては、炭素数1~4のものが好ましく、より好ましくは、メチル基である。成分(D)のポリオキシアルキレンアルキルグルコシドとして、具体的には、ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド、ポリオキシエチレン(20)メチルグルコシド、ポリオキシプロピレン(10)メチルグルコシド、ポリオキシプロピレン(20)メチルグルコシド等が挙げられ、特にポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド、ポリオキシプロピレン(10)メチルグルコシドが特に好ましい。市販品としてはマクビオブライドMG-10E、マクビオブライドMG-20E、マクビオブライドMG-10P(以上、日油株式会社製)、GLUCAME E-10 LFG、GLUCAME P-10(以上、LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)等を用いることも可能である。
【0020】
本発明に用いられる成分(D)ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルは、グリセリン又はジグリセリンに酸化アルキレンを付加重合したものである。化粧品、医薬部外品、医薬品等に通常用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、付加重合するオキシアルキレンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上であることが好ましい。また、オキシアルキレンの平均付加モル数としては、5~40が好ましく、より好ましくは8~30である。成分(D)として具体的には、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンジグリセリルエーテル、ポリオキプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル等が挙げられ、より具体的には、浸透感等の観点から、ポリオキシエチレン(26)グリセリルエーテル、ポリオキプロピレン(9)ジグリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3BO)(8EO)(5PO)であることが好ましい。市販品としては、ポリオキシエチレン(26)グリセリルエーテルとして、LIPONIC EG-1(LIPO CHEMICALS社製)、ブラウノン GL-26(青木油脂工業社製)、ポリオキプロピレン(9)ジグリセリルエーテルとしてSY-DP9(阪本薬品工業社製)、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3BO)(8EO)(5PO)としてウィルブライドS-753D(日油株式会社製)等を用いることが可能である。
【0021】
本発明においては、成分(D)は、必要に応じて1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。なお、2種以上とは、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシドを2種、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルを2種、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルを2種でも良く、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド及びポリオキシアルキレングリセリルエーテルの併用、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド及びポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルの併用、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル及びポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルの併用のいずれでもよい。
【0022】
本発明における成分(D)の含有量は、特に限定されないが、水中油型乳化組成物全量に対して、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましい。また、8%以下が好ましく、6%以下がより好ましく、4%以下が特に好ましい。この範囲であれば、べたつきのなさ及び浸透感に優れるため好ましい。
【0023】
本発明において、成分(C)及び(D)の合計含有質量に対する成分(C)の含有質量の割合(C)/{(C)+(D)}は0.4~0.9である。当該割合(C)/{(C)+(D)}が0.4未満であると、ハリ感、べたつきのなさ及び浸透感において、満足のいくものが得られない。(C)/{(C)+(D)}が0.9を超えるとなめらかな伸び広がり、べたつきのなさ及び浸透感において、満足のいくものが得られない。
【0024】
本発明の水中油型乳化組成物は、上記の必須成分以外に、水相を構成する成分として、水、低級アルコール等の水性成分を含有する。また、通常の化粧料に使用される成分を、本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、必要に応じて含有することができ、例えば、界面活性剤、成分(B)及び成分(C)以外の油剤、粉体、成分(A)以外の水溶性高分子、皮膜形成剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、美容成分、防腐剤、香料、清涼剤等を含有することができる。
【0025】
水性成分としては、化粧品、医薬部外品、医薬品等に通常用いられる水及び水に可溶な成分であれば、特に限定されない。水としては、例えば、精製水、温泉水、イオン交換水、深層水、水道水、或いは植物の水蒸気蒸留水等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。また、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ水等の植物抽出水を用いても良い。水に可溶な成分としては、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、ソルビトール、マルチトール、グルコースなどの糖アルコール類、エタノール等の低級アルコール類、及び成分(D)等が挙げられる。
【0026】
なお、本発明の水中油型乳化組成物においては、浸透感等の観点から、水中油型乳化組成物中の水性成分の割合が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらにより好ましい。また本発明における水の含有量は、特に限定されないが、水中油型乳化組成物全量に対して、40%以上が好ましく、45%以上がさらに好ましい。上限は80%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。この範囲であれば、浸透感に優れ、経時安定性等にも優れるため好ましい。
【0027】
界面活性剤としては、化粧品、医薬部外品、医薬品等に通常用いられる界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。中でも、本発明においては経時安定性の観点から、非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。ここで、非イオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、水中油型乳化組成物全量に対して、0.1~5%が好ましく、0.1~3%がより好ましく、0.5~3%がさらにより好ましい。この範囲であれば、べたつき、浸透感等の使用性、及び経時安定性等がより優れるため好ましい。
【0028】
油剤としては、化粧品、医薬部外品、医薬品等に通常用いられる油剤であれば特に制約なく使用することができ、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、成分(B)以外の、固体油、液体油、揮発性油等を用いることができ、また炭化水素類、油脂類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、フッ素系油類等を使用することができ、必要に応じて、これらから選択される1種または2種以上を含有することができる。
【0029】
本発明の水中油型乳化組成物の製造方法は、特に限定されず通常公知の方法で製造可能であり、具体的には、分散乳化法、転相乳化法、転相温度乳化法等が挙げられる。製造機器としては、一般のディスパーションのような分散・乳化機器であればいずれでもよい。例えば、成分(B)及び(C)を70~80℃にて加熱溶解させた油相に、を70~80℃に加熱した水相を添加し、ディスパーションにより乳化混合後、冷却し、成分(A)及び(D)を添加し混合溶解することにより水中油型乳化組成物が得られる。
【0030】
本発明の水中油型乳化組成物の性状としては、液状、ゲル状、乳液状、クリーム状、半固形状、固形状等の種々の形態にて実施することが可能であり、中でも乳液状~クリーム状とすることが本発明の効果を得る上で好ましい。ここで、乳液状~クリーム状とは、25℃においてブルックフィールド型回転粘度計を用いて測定された粘度70,000mPa・s以下の粘度を有するものであり、好ましくは50,000mPa・s以下、さらに好ましくは45,000mPa・s以下である。
【0031】
本発明の水中油型乳化組成物は、種々の用途の化粧料として利用できる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ化粧料、パック化粧料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム、メイクアップ化粧料、化粧用下地化粧料、目元用クリーム、日焼け止め等の化粧料を例示することができる。効果を実感できるという点では、スキンケア化粧料が好ましく、特に本発明の効果を好適に発揮するという観点から、乳液、クリーム、美容液、マッサージ化粧料、ハンドクリーム、ボディクリーム等が好ましい。
【0032】
本発明の水中油型乳化組成物は、皮膚外用剤の用途としても利用することが可能である。例えば、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等が挙げられる。またその使用方法は、前記化粧料と同様に挙げることができる。
【実施例0033】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0034】
実施例1~9及び比較例1~6:水中油型乳化組成物
表1に示す組成の水中油型乳化組成物を、下記製造方法により製造し、(イ)なめらかな伸び広がり、(ロ)コク感、(ハ)ハリ感、(ニ)べたつきのなさ、(ホ)浸透感について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定した。結果を併せて表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
注1:SUPER WHITE PROTOPET PETROLATUM(Sonneborn社製)
注2:スーパーヌーコアH(純分94%、日油株式会社製)
注3:ライステロールエステル(築野ライスファインケミカルズ株式会社製)
注4:エルデュウ CL―301(味の素株式会社製)
注5:パールリーム 18(日油株式会社製)
【0037】
(製造方法)
A:成分(2)~(12)を75℃で均一に溶解する。
B:成分(1)、(13)~(15)を75℃で均一に溶解する。
C:AにBを徐々に添加し、デスパミキサーにて乳化する。
D:Cを室温まで冷却し、水中油型乳化組成物を得た。
【0038】
(評価方法)
実施例1~9及び比較例1~6の水中油型乳化組成物について、次の官能評価試験を行った。20代~40代の女性で官能評価の訓練を受け、一定の基準で評価が可能な専門パネルを10名選定した。当該専門パネルは前腕に各試料2gを塗布し、それぞれについて、塗布中のなめらかな伸び広がり及びコク感、塗布後のハリ感及びべたつきのなさ、浸透感を、下記絶対評価にて5段階に評価し評点を付けた。試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0039】
(イ:なめらかな伸び広がり)
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
5点:なめらかな伸び広がりを感じる
4点:なめらかな伸び広がりをやや感じる
3点:普通
2点:なめらかな伸び広がりをあまり感じない
1点:なめらかな伸び広がりを感じない
(ロ:コク感)
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
5点:コク感があると感じる
4点:コク感があるとやや感じる
3点:普通
2点:コク感があるとあまり感じない
1点:コク感があると感じない
(ハ:ハリ感)
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
5点:ハリ感があると感じる
4点:ハリ感があるとやや感じる
3点:普通
2点:ハリ感があるとあまり感じない
1点:ハリ感があると感じない
(ニ:べたつきのなさ)
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
5点:べたつきが無い
4点:ほとんどべたつきが無い
3点:ややべたつきがある
2点:べたつきがある
1点:非常にべたつきがある
(ホ:浸透感)
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
5点:肌への浸透感があると感じる
4点:肌への浸透感があるとやや感じる
3点:普通
2点:肌への浸透感があるとあまり感じない
1点:肌への浸透感があると感じない
【0040】
<4段階判定基準>
(判定):(評点の平均点)
◎ :4.5点を超える :非常に良好
○ :3.5点を超える4.5点以下:良好
△ :1.5点を超える3.5点以下:やや不良
× :1.5点以下 :不良
【0041】
表1の結果から明らかな如く、本発明の実施例1~9の水中油型乳化組成物は、なめらかな伸び広がり、コク感、ハリ感、べたつきのなさ及び浸透感に優れたものであった。
一方、成分(B)を含まない比較例1及び成分(B)が3%未満である比較例2は、塗布中のコク感や塗布後のハリ感が満足のいくものではなかった。これに対して成分(B)を15%より多く含む比較例3では、塗布中のなめらかな伸び広がり、塗布後のべたつきのなさ及び浸透感が悪化した。また、成分(C)の代わりに、スクワランを用いた比較例4では、塗布後のハリ感が満足のいくものではなかった。さらに、成分(C)及び(D)の総量に対する成分(C)の含有量が0.9より多い比較例5と0.4未満である比較例6においては、塗布中のなめらかな伸び広がり、塗布後のべたつきのなさ及び浸透感に関して、満足のいくものが得られなかった。
【0042】
実施例10:乳液
(成分) (%)
1.ヘパリン類似物質 2.0
2.親油型モノステアリン酸グリセリル 0.3
3.モノイソステアリン酸ソルビタン 0.2
4.モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 0.4
5.ステアリン酸 0.2
6.セトステアリルアルコール 0.5
7.ベヘニルアルコール 0.1
8.ワセリン 注1 3.0
9.シア脂 1.0
10.流動パラフィン 4.0
11.ジメチコン(6CS) 2.0
12.2-エチルヘキサン酸セチル 2.0
13.水添ポリイソブテン 注5 3.0
14.精製水 残量
15.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.2
16.(PEG-240/デシルテトラデセスー20/HDI)コポリマー 0.02
17.ポリオキシエチレン(26)グリセリルエーテル 2.0
18.1,3-ブチレングリコール 10.0
19.グリセリン 5.0
20.トリエタノールアミン 0.6
21.エタノール 5.0
22.フェノキシエタノール 0.5
23.香料 0.1
24.L-テアニン 0.1
25.N-アセチル-L-ヒドロキシプロリン 0.1
26.L-セリン 0.1
【0043】
(製造方法)
A:成分(2)~(13)を75℃に加熱溶解する。
B:成分(1)、(14)~(20)を75℃で加熱溶解する。
C:AにBを添加混合後、室温まで冷却する。
D:Cに成分(21)~(26)を添加混合し、乳液を得た。
【0044】
実施例10の乳液は、塗布中のなめらかな伸び広がり及びコク感、塗布後のハリ感及びべたつきのなさ、浸透感に優れたものであった。また、前記成分(C)及び(D)の総量に対する成分(C)の含有量は0.6であった。
【0045】
実施例11:クリーム
(成分) (%)
1.ヘパリン類似物質 2.0
2.親油型モノステアリン酸グリセリル 0.6
3.モノイソステアリン酸ソルビタン 0.5
4.モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 0.5
5.ステアリン酸 0.8
6.セトステアリルアルコール 3.0
7.ベヘニルアルコール 2.0
8.ワセリン 注1 5.0
9.水添ヤシ油 注2 3.0
10.マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル 注6 2.0
11.流動パラフィン 5.0
12.トリエチルヘキサノイン 5.0
13.水添ポリイソブテン(平均分子量:1500) 5.0
14.精製水 残量
15.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1
16.(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー 0.3
17.ポリオキプロピレン(9)ジグリセリルエーテル 5.0
18.1,3-ブチレングリコール 14.0
19.グリセリン 7.0
20.ジグリセリン 2.0
21.トリエタノールアミン 0.9
22.メチルパラベン 0.1
注6:PLANDOOL-MAS(日本精化株式会社製)
【0046】
(製造方法)
A:成分(2)~(13)を75℃に加熱溶解する。
B:成分(1)、(14)~(21)を75℃で加熱溶解する。
C:AにBを添加混合後、室温まで冷却する。
D:Cに成分(22)を添加混合し、クリームを得た。
【0047】
実施例11のクリームは、塗布中のなめらかな伸び広がり及びコク感、塗布後のハリ感及びべたつきのなさ、浸透感に優れたものであった。また、前記成分(C)及び(D)の総量に対する成分(C)の含有量は0.5であった。
【0048】
実施例12:ハンドクリーム
(成分) (%)
1.ヘパリン類似物質 2.0
2.親油型モノステアリン酸グリセリル 0.4
3.モノイソステアリン酸ソルビタン 0.3
4.モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 0.2
5.ステアリン酸 0.5
6.セトステアリルアルコール 0.8
7.ベヘニルアルコール 0.3
8.ワセリン 注1 6.0
9.オレイン酸フィトステリル 注3 2.0
10.マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル 注6 1.0
11.ジメチコン(100CS) 0.4
12.テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット 2.0
13.水添ポリイソブテン(平均分子量:2000) 2.0
14.精製水 残量
15.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.5
16.ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
グリセリルエーテル(3BO)(8EO)(5PO) 3.0
17.1,3-ブチレングリコール 6.5
18.グリセリン 7.0
19.ジグリセリン 3.0
20.トリエタノールアミン 0.7
21.フェノキシエタノール 0.5
22.エタノール 8.0
23.香料 0.2
【0049】
(製造方法)
A:成分(2)~(13)を75℃に加熱溶解する。
B:成分(1)、(14)~(20)を75℃で加熱溶解する。
C:AにBを添加混合後、室温まで冷却する。
D:Cに成分(21)~(23)を添加混合し、ハンドクリーム得た。
【0050】
実施例12のハンドクリームは、塗布中のなめらかな伸び広がり及びコク感、塗布後のハリ感及びべたつきのなさ、浸透感に優れたものであった。また、前記成分(C)及び(D)の総量に対する成分(C)の含有量は0.4であった。
【0051】
実施例13:美容液
(成分) (%)
1.ヘパリン類似物質 2.0
2.親油型モノステアリン酸グリセリル 0.2
3.モノイソステアリン酸ソルビタン 0.1
4.モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 0.1
5.ステアリン酸 0.4
6.セトステアリルアルコール 0.2
7.ベヘニルアルコール 0.2
8.ワセリン 注1 2.0
9.水添ヤシ油 注2 1.0
10.マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル 注6 0.5
11.ジメチコン(100CS) 1.0
12.トリエチルヘキサノイン 2.0
13.水添ポリイソブテン 注5 1.6
14.精製水 残量
15.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.5
16.ヒドロキシエチルセルロース 0.1
17.ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
グリセリルエーテル(3BO)(8EO)(5PO) 2.4
18.1,3-ブチレングリコール 5.0
19.グリセリン 7.0
20.ポリグリセリン-3 2.0
21.トリエタノールアミン 0.5
22.エタノール 10.0
23.フェノキシエタノール 0.5
24.香料 0.2
【0052】
(製造方法)
A:成分(2)~(13)を75℃に加熱溶解する。
B:成分(1)、(14)~(21)を75℃で加熱溶解する。
C:AにBを添加混合後、室温まで冷却する。
D:Cに成分(22)~(24)を添加混合し、美容液を得た。
【0053】
実施例13の美容液は、塗布中のなめらかな伸び広がり及びコク感、塗布後のハリ感及びべたつきのなさ、浸透感に優れたものであった。また、前記成分(C)及び(D)の総量に対する成分(C)の含有量は0.4であった。