(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135376
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール及び太陽電池モジュール製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20230921BHJP
【FI】
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040541
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】小島 広平
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA01
5F151AA20
5F151JA02
5F251AA01
5F251AA20
5F251JA02
(57)【要約】
【課題】製造工程において太陽電池セルがダメージを受けにくい太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る太陽電池モジュール1は、表面保護部材10と、裏面保護部材20と、前記表面保護部材10と前記裏面保護部材20の間に配置される枠状のダム材30と、前記表面保護部材10と前記裏面保護部材20の間の前記ダム材30の内側に配置される太陽電池セル40と、前記表面保護部材10と前記裏面保護部材20の間の前記ダム材30の内側の空間の前記太陽電池セル40の周囲の空間に充填される封止材50と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護部材と、
裏面保護部材と、
前記表面保護部材と前記裏面保護部材の間に配置される枠状のダム材と、
前記表面保護部材と前記裏面保護部材の間の前記ダム材の内側に配置される太陽電池セルと、
前記表面保護部材と前記裏面保護部材の間の前記ダム材の内側の空間の前記太陽電池セルの周囲の空間に充填される封止材と、
を備える太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記ダム材は、前記表面保護部材と前記裏面保護部材の対向方向を厚み方向とする帯状に形成される、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記ダム材は、前記表面保護部材に接着される表側ダム材と、前記裏面保護部材に接着される裏側ダム材と、を接着して形成される、請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記封止材は、熱硬化性樹脂から形成される、請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
表面保護部材の裏面の外周部及び裏面保護部材の表面の外周部にそれぞれ枠状にダム材を配設する工程と、
前記表面保護部材の裏面側の前記ダム材の内側の空間及び前記裏面保護部材の表面側の前記ダム材の内側の空間にそれぞれ液状の封止材を充填する工程と、
前記封止材を半硬化する工程と、
前記封止材を対向させるよう配置した前記表面保護部材及び前記裏面保護部材の間に太陽電池セルを挟み込んだ積層体を熱プレスする工程と、
を備える太陽電池モジュール製造方法。
【請求項6】
前記熱プレスは、真空状態で行われる、請求項5に記載の太陽電池モジュール製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール及び太陽電池モジュール製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セルに水分等が接触して太陽電池セルを劣化させることを防止するために、例えばガラス、フィルム等からなる表面保護部材及び裏面保護部材で太陽電池セルを挟み込み、表面保護部材と裏面保護部材との隙間、つまり太陽電池セルの周囲の空間に封止材を充填した太陽電池モジュールが広く利用されている。
【0003】
このような太陽電池モジュールは、一般的に、表面保護部材、封止材の表側ダム材分を構成する熱可塑性樹脂からなる表面側封止材シート、太陽電池セル、封止材の裏側ダム材分を構成する熱可塑性樹脂からなる裏面側封止材シート及び裏面保護部材をこの順番に積層し、熱プレスによって表面側封止材シート及び裏面側封止材シートを溶融させることにより形成される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽電池セルとして、例えばペロブスカイト太陽電池セル等の熱に弱いものを使用する場合、上述の封止材シートを溶融する熱プレスの熱により太陽電池セルがダメージを受ける場合がある。このため、本発明は、製造工程において太陽電池セルがダメージを受けにくい太陽電池モジュール及び太陽電池モジュール製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る太陽電池モジュールは、表面保護部材と、裏面保護部材と、前記表面保護部材と前記裏面保護部材の間に配置される枠状のダム材と、前記表面保護部材と前記裏面保護部材の間の前記ダム材の内側に配置される太陽電池セルと、前記表面保護部材と前記裏面保護部材の間の前記ダム材の内側の空間の前記太陽電池セルの周囲の空間に充填される封止材と、を備える。
【0007】
上述の太陽電池モジュールにおいて、前記ダム材は、前記表面保護部材と前記裏面保護部材の対向方向を厚み方向とする帯状に形成されてもよい。
【0008】
上述の太陽電池モジュールにおいて、前記ダム材は、前記表面保護部材に接着される表側ダム材と、前記裏面保護部材に接着される裏側ダム材と、を接着して形成されてもよい。
【0009】
上述の太陽電池モジュールにおいて、前記封止材は、熱硬化性樹脂から形成されてもよい。
【0010】
本発明の別の態様に係る太陽電池モジュール製造方法は、表面保護部材の裏面の外周部及び裏面保護部材の表面の外周部にそれぞれ枠状にダム材を配設する工程と、前記表面保護部材の裏面側の前記ダム材の内側の空間及び前記裏面保護部材の表面側の前記ダム材の内側の空間にそれぞれ液状の封止材を充填する工程と、前記封止材を半硬化する工程と、前記封止材を対向させるよう配置した前記表面保護部材及び前記裏面保護部材の間に太陽電池セルを挟み込んだ積層体を熱プレスする工程と、を備える。
【0011】
上述の太陽電池モジュール製造方法において、前記熱プレスは、真空状態で行われてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造工程において太陽電池セルがダメージを受けにくい太陽電池モジュール及び太陽電池モジュール製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池の構成を示す模式断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る太陽電池製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図2の太陽電池製造方法のダム材配置工程を示す模式断面図である。
【
図4】
図2の太陽電池製造方法の封止材充填工程を示す模式断面図である。
【
図5】
図2の太陽電池製造方法の熱プレス工程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール1の構成を示す模式断面図である。
【0015】
太陽電池モジュール1は、表面保護部材10と、表面保護部材10に対向して配置される裏面保護部材20と、表面保護部材10と裏面保護部材20の間の外周部に配置される枠状のダム材30と、表面保護部材10と裏面保護部材20の間のダム材30の内側に配置される太陽電池セル40と、表面保護部材10と裏面保護部材20の間のダム材30の内側の空間の太陽電池セル40の周囲の空間に充填される封止材50と、を備える。
【0016】
表面保護部材10は、太陽電池セル40の表面側を保護する部材であり、水及びガスに対するバリア性及び耐傷性を有する透明(光透過率が90%以上)な材料から形成されることが好ましい。具体例として、表面保護部材10は、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネイト、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂シート、ガラス板などから形成され得る。また、太陽電池モジュール1に可撓性を付与する場合、表面保護部材10は、樹脂フィルム(薄いシート)から形成されることが好ましい。
【0017】
裏面保護部材20は、太陽電池セル40の表面側を保護する部材であり、水及びガスに対するバリア性及び耐傷性を有する材料から形成されることが好ましい。裏面保護部材20は、太陽電池セル40に入射する光量を増大させるために光を反射したり、太陽電池モジュール1の意匠性を向上させるために黒色又は太陽電池セル40と同系色とされたりしてもよい。具体例として、裏面保護部材20は、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネイト、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂シート、ガラス板、金属板、複合材料性の板又はシートなどから形成され得る。太陽電池モジュール1に可撓性を付与する場合、裏面保護部材20も樹脂フィルムから形成されることが好ましい。
【0018】
ダム材30は、太陽電池モジュール1の製造過程において封止材50が面方向外側に流出することを防止する。ダム材30は、表面保護部材10と裏面保護部材20に対して常温で接着可能な粘着性(表面保護部材10及び裏面保護部材20からの剥離強度が3N/cm以上)を有することが好ましい。また、ダム材30は、後述する製造工程の熱プレスにおいて容易に押し潰されずにスペーサとして機能するものであることが好ましい。さらに、ダム材30は、ガスバリア性及び水蒸気バリア性(透湿度が5g/m2・24hr未満)を有することが好ましい。具体例として、ダム材30は、例えばブチルゴム等の樹脂材料から形成することができる。
【0019】
ダム材30は、表面保護部材10と裏面保護部材20の対向方向を厚み方向とする帯状に形成されることが好ましい。これにより、太陽電池モジュール1を薄型化すると共に、製造過程におけるダム材30のハンドリング及び表面保護部材10等に対する正確な配置が容易となる。また、ダム材30は、表面保護部材10に接着される表側ダム材31と、裏面保護部材20に接着される裏側ダム材32と、を接着して形成されることが好ましい。これにより、後述する本発明に係る太陽電池モジュール製造方法を適用して太陽電池モジュール1を製造することが可能となる。
【0020】
太陽電池セル40は、例えば結晶シリコン太陽電池セル、ペロブスカイト太陽電池セル等、周知の光電変換素子であればよく、特に限定されないが、比較的耐熱性に劣るペロブスカイト太陽電池である場合に、本発明により製造工程における最高到達温度を抑制できる効果が顕著となる。また、太陽電池セル40として、樹脂フィルムを基材として形成されるペロブスカイト太陽電池セルを用いることで、太陽電池セル40ひいては太陽電池モジュール1に可撓性を付与することが容易となる。なお、1つの太陽電池モジュール1の中に複数の太陽電池セル40が封止されていてもよい。
【0021】
封止材50は、太陽電池セル40の周囲の空間を封止することにより、水等が太陽電池セル40に接触して太陽電池セル40を劣化させることを防止する。封止材50は、透明な材用から形成され、好ましくは太陽電池モジュール1に可撓性を付与できるよう柔軟性を有し(押し込み硬さがデュロメータータイプDで90未満)、太陽電池モジュール1の劣化を抑制するために化学的安定性を有することが好ましい。また、封止材50は、熱硬化性樹脂から形成されることが好ましく、製造工程によっては、さらに光硬化性等を有する熱硬化性樹脂から形成されることが好ましい。封止材50を熱硬化性樹脂から形成することによって、熱プレスによって太陽電池モジュール1を組み立てることができる。また、封止材50の硬化温度を低く設定すれば、熱可塑性樹脂を用いる場合と比べて低い温度で太陽電池モジュール1を組み立てられるので、太陽電池セル40の熱によるダメージを効果的に抑制できる。具体例として、封止材50は、シリコーン樹脂から形成され得る。
【0022】
以上のような構成を有する太陽電池モジュール1は、本発明に係る太陽電池モジュール製造方法の一実施形態によって製造することができる。
図2に、太陽電池モジュール1を製造するための本発明の一実施形態の太陽電池モジュール製造方法の手順を示す。
【0023】
図2の太陽電池モジュール製造方法は、表面保護部材10の裏面の外周部及び裏面保護部材20の表面の外周部にそれぞれ枠状にダム材30の表側ダム材31及び裏側ダム材32を配設する工程(ステップS1:ダム材配設工程)と、表面保護部材10の裏面側のダム材の表側ダム材31の内側の空間及び裏面保護部材20の表面側のダム材30の裏側ダム材32の内側の空間にそれぞれ液状の封止材(表面保護部材10の裏面側に表側封止材51及び裏面保護部材20の表面側に裏側封止材52)を充填する工程(ステップS2:封止材充填工程)と、封止材50を半硬化する工程(ステップS3:封止材半硬化工程)と、封止材50を対向させるよう配置した表面保護部材10及び裏面保護部材20の間に太陽電池セル40を挟み込んだ積層体を熱プレスする工程(ステップS4:熱プレス工程)と、を備える。
【0024】
ステップS1のダム材配設工程では、
図3に示すように、表面保護部材10の外周部にダム材30の表側ダム材31を配設すると共に、裏面保護部材20の外周部にダム材30の裏側ダム材32を配設する。ダム材30は、接着剤を用いて表面保護部材10及び裏面保護部材20に接着してもよい。
【0025】
ステップS2の封止材充填工程では、
図4に示すように、表面保護部材10及び裏面保護部材20をダム材30が上になるよう配置し、表面保護部材10及び裏面保護部材20上に、それぞれ液状(未硬化)の封止材51,52を表側ダム材31及び裏側ダム材32と略同じ厚みになるよう充填する。液状の封止材51,52を充填することによって、容易且つ確実に気泡を排除することができる。
【0026】
ステップS3の封止材半硬化工程では、表面保護部材10及び裏面保護部材20上の封止材51,52を流動性がなくなるまで硬化、つまりいわゆるBステージ状態とする。封止材51,52の半硬化は、封止材51,52の種類に応じて選択できるが、光硬化性を有する封止材51,52を用いる場合には硬化状態の管理が容易な光の照射による方法が好適に用いられる。このように液状の封止材51,52を半硬化することによって、その後の工程における封止材51,52の漏出を防止することができるので、太陽電池セル40を封止材50によって確実に封止すると共に、漏出した封止材による製造装置の汚染を抑制できる。
【0027】
ステップS4の熱プレス工程では、
図5に示すように、表面保護部材10及び裏面保護部材20をダム材31,32及び封止材51,52を対向させるよう配向し、表側ダム材31と裏側ダム材32との間に太陽電池セル40を挟み込んだ積層体を形成し、この積層体を例えば一対のプラテンP1,P2で挟み込んで加圧及び加熱する。これにより、ダム材31,32及び封止材51,52を一体化して太陽電池モジュール1を得ることができる。
【0028】
熱プレス工程では、半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる封止材51,52をさらに硬化させる。このため、太陽電池セル40の表裏の封止材51,52の厚みを均等にすることができる。また、熱プレス工程において、ダム材30は、表面保護部材10と裏面保護部材20との間隔を定めるスペーサとしても機能する。このため、太陽電池モジュール1は、品質が比較的安定する。
【0029】
熱プレスは、真空状態で行われることが好ましい。具体的には、上記積層体を袋体(不図示)の中に配置し、袋体の内部を真空引きしながら、袋体ごと熱プレスすることができる。これにより、表面保護部材10と裏面保護部材20の間に空気(気泡)を残留させないようにできるため、太陽電池セル40の保護がより確実となる。
【0030】
以上のように、太陽電池モジュール1は、封止材51,52の硬化温度を低く設定すれば、熱可塑性樹脂を用いる場合と比べて低い温度の熱プレスで組み立てられるので、太陽電池セル40の熱によるダメージを効果的に抑制できる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 太陽電池モジュール
10 表面保護部材
20 裏面保護部材
30 ダム材
31 表側ダム材
32 裏側ダム材
40 太陽電池セル
50 封止材
51 表側封止材
52 裏側封止材
P1,P2 プラテン