(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135389
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】ブレ補正装置、ブレ補正方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20230921BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20230921BHJP
【FI】
G03B5/00 J
H04N5/232 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040561
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】根本 博之
【テーマコード(参考)】
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2K005BA32
2K005BA54
2K005CA03
2K005CA13
2K005CA14
2K005CA23
2K005CA24
5C122DA01
5C122EA41
5C122FB03
5C122FC01
5C122FC02
5C122HA77
5C122HA78
5C122HA82
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】撮像装置において、ロール旋回により生じる画像のブレを補正する。
【解決手段】ブレ補正装置(10)は、被写体像を撮像素子(70)の撮像面に結像させる結像光学系(20)と、ロール旋回による被写体像のブレを補正するブレ補正部(30)と、結像光学系(20)の加速度情報を取得する加速度センサ(40)と、結像光学系(20)の角速度情報を取得する角速度センサ(50)と、加速度情報と角速度情報とから、結像光学系(20)の光軸から結像光学系(20)のロール旋回軸までの距離を示す情報を導出する演算部(60)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置の画像のブレを補正するブレ補正装置であって、
被写体像を撮像素子の撮像面に結像させる結像光学系と、
ロール旋回による前記被写体像のブレを補正するブレ補正部と、
前記結像光学系の加速度情報を取得する少なくとも1つの加速度センサと、
前記結像光学系の角速度情報を取得する少なくとも1つの角速度センサと、
前記加速度情報と前記角速度情報とから、前記結像光学系の光軸から前記結像光学系のロール旋回軸までの距離を示す情報を導出する演算部と、を備える、ブレ補正装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの加速度センサは、
前記結像光学系の光軸をz軸とし、当該光軸に直交するとともに互いに直交する2つの軸をx軸及びy軸として、当該3軸の原点におけるx軸方向及びy軸方向の加速度をそれぞれ検出する少なくとも1つの第1加速度センサと、
x軸上及びy軸上のそれぞれ所定の位置における3軸方向の加速度を検出する少なくとも2つの第2加速度センサと、であり、
前記少なくとも1つの角速度センサは、前記x軸、y軸、及びz軸のそれぞれの軸回りの角速度を検出する第1角速度センサであり、
前記演算部は、
前記加速度情報と前記角速度情報とを用いて、前記距離を示す情報である前記ロール旋回軸の座標と、前記ロール旋回軸回りの回転量を算出する第1算出部と、
前記座標と前記回転量とに基づいて、前記ブレ補正部が実行する駆動操作に関する情報を算出する第2算出部と、を含む、請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項3】
前記距離は、前記第1加速度センサからの前記距離及び前記第2加速度センサからの前記距離に基づいて導出される、請求項2に記載のブレ補正装置。
【請求項4】
前記ブレ補正部が実行する前記駆動操作は、前記結像光学系の補正レンズ又は前記撮像素子を移動させる操作である、請求項2又は3に記載のブレ補正装置。
【請求項5】
前記ブレ補正部は、前記撮像素子の領域のうち、前記ロール旋回軸からの距離が遠い側の前記領域を最適化するようにブレを補正する、請求項1から4のいずれか1項に記載のブレ補正装置。
【請求項6】
結像光学系の加速度情報を取得するステップと、
結像光学系の角速度情報を取得するステップと、
前記加速度情報と前記角速度情報とから、前記結像光学系の光軸から前記結像光学系のロール旋回軸までの距離を示す情報を導出するステップと、を含む、ブレ補正方法。
【請求項7】
コンピュータに、
結像光学系の加速度情報を取得する処理と、
結像光学系の角速度情報を取得する処理と、
前記加速度情報と前記角速度情報とから、前記結像光学系の光軸から前記結像光学系のロール旋回軸までの距離を示す情報を導出する処理と、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレ補正装置、ブレ補正方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮像装置において、手ブレ等を補正する装置が従来技術として知られている。例えば、特許文献1に開示された技術では、カメラの並進運動を正確に検出して、像振れを正確に補正することができるとされている。また、特許文献2に開示された技術では、撮像装置のピッチ回転とヨー回転によって生じる撮像画像信号のブレを高精度に補正することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-164290号公報
【特許文献2】WO2020/003885号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術は、重力加速度成分を除去して並進運動の変位を算出することができるが、ロール回転により生じる画像のブレを補正するものではない。また、特許文献2に開示された技術は、ピッチ回転とヨー回転によって生じるブレを補正することができるが、ロール回転により生じる画像のブレを補正するものではない。さらに、従来技術では、光軸から離間しかつ光軸と平行な軸を中心に旋回するロール旋回によるブレを補正する技術は知られていない。
【0005】
本発明の一態様は、撮像装置において、ロール旋回により生じる画像のブレを補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るブレ補正装置は、撮像装置の画像のブレを補正するブレ補正装置であって、被写体像を撮像素子の撮像面に結像させる結像光学系と、ロール旋回による前記被写体像のブレを補正するブレ補正部と、前記結像光学系の加速度情報を取得する少なくとも1つの加速度センサと、前記結像光学系の角速度情報を取得する少なくとも1つの角速度センサと、前記加速度情報と前記角速度情報とから、前記結像光学系の光軸から前記結像光学系のロール旋回軸までの距離を示す情報を導出する演算部と、を備える。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るブレ補正方法は、結像光学系の加速度情報を取得するステップと、結像光学系の角速度情報を取得するステップと、前記加速度情報と前記角速度情報とから、前記結像光学系の光軸から前記結像光学系のロール旋回軸までの距離を示す情報を導出するステップと、を含む。
【0008】
本発明の各態様に係るブレ補正装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記ブレ補正装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記ブレ補正装置をコンピュータにて実現させるブレ補正装置のブレ補正プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、撮像装置において、ロール旋回により生じる画像のブレを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係る撮像装置1の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1に係るブレ補正方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】実施形態1の変形例に係る撮像装置2の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態2に係る撮像装置1Aの構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態2に係る加速度センサと第2角速度センサの配置を示す図である。
【
図6】z軸方向から見た、撮像素子、センサAO、及び撮像素子の撮像面を含む平面とロール旋回軸との交点WSの関係を示す図である。
【
図7】センサAO、AX、AYのそれぞれと交点WSまでの距離を示す図である。
【
図8】交点WSから見た撮像素子の移動方向を示す図である。
【
図9】ブレ補正のために補正レンズを移動させる方向を示す図である。
【
図10】ブレ補正のために撮像素子を移動させる方向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る撮像装置1の構成を示すブロック図である。撮像装置1は、ブレ補正装置10と撮像素子70とを含む。ブレ補正装置10は、撮像装置1の撮像素子70により撮像される画像のブレを補正する装置である。ブレ補正装置10は、特に、ロール旋回による画像のブレを補正する。本実施形態において、ロール旋回とは、後述の結像光学系20(撮像装置1)が、結像光学系20の光軸から離間しかつ光軸に平行な回転軸を中心に回転(旋回)する動きである。以下では、結像光学系20がロール旋回する回転軸をロール旋回軸と称し、ロール旋回による画像のブレをロール旋回ブレとも称する。ロール旋回ブレは、撮像素子70が結像光学系20と共にロール旋回軸を中心に旋回するように移動することにより生じる画像のブレであるとも言える。
【0012】
(ブレ補正装置)
図1に示すように、ブレ補正装置10は、結像光学系20、演算部60、及び制御部80を含む。結像光学系20は、ブレ補正部30、加速度センサ40、及び角速度センサ(ジャイロセンサ)50を備える。ブレ補正部30は、結像光学系20内に配置された補正レンズ31と、補正レンズ31を駆動するレンズ駆動部32を含む。演算部60は、ブレ補正のために必要な演算を行う。制御部80は、ブレ補正装置10全体を統括制御する。
【0013】
結像光学系20は、被写体像を撮像素子70の撮像面に結像させる。結像光学系20は、光軸上に配置された対物レンズ、結像レンズ等の複数のレンズ群、絞り、偏向ミラー等の各種の光学素子を含んでいるが、
図1では省略している。結像光学系20は、撮像装置1の本体に着脱可能に構成された交換レンズでもよく、撮像装置1に着脱不能に取り付けられた結像光学系でもよい。結像光学系20が交換レンズとして構成されている場合は、補正レンズ31を用いて補正するブレ補正部30も結像光学系20(交換レンズ)に含まれる。
【0014】
結像光学系20のレンズ群等を通過した被写体からの光は、撮像素子70の撮像面に結像される。結像された被写体像は、撮像素子70によって電気信号に変換され、様々な信号処理が施されてディスプレイ上に被写体の画像として表示されるとともに、図示しないメモリに記録される。撮像素子70として、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ、CCD(Charge Coupled Device)センサ等の任意の撮像素子を用いることができる。
【0015】
加速度センサ40は、結像光学系20(撮像装置1)の加速度情報を取得する。角速度センサ50は、結像光学系20の角速度情報を取得する。具体的には、加速度センサ40は、結像光学系20の、所定の方向の並進加速度を検出(以下、「取得」とも称する。)する。角速度センサ50は、結像光学系20の、所定の軸回りの角速度を取得する。本実施形態では、結像光学系20の光軸をz軸とし、光軸(z軸)と直交するとともに、互いに直交する2つの軸をx軸とy軸とする直交xyz座標系を用いて説明する。この場合、加速度センサ40は、x軸、y軸、z軸のうちの少なくとも1つの軸上のある位置における、x軸方向、y軸方向、z軸方向のうちの少なくとも1つの方向の加速度情報を取得する。また、角速度センサ50は、x軸、y軸、z軸のうちの少なくとも1つの軸回りの角速度情報を取得する。加速度センサ40と角速度センサ50は、それぞれ取得した加速度情報、角速度情報を、制御部80を介して演算部60に送信する。
【0016】
演算部60は、加速度センサ40と角速度センサ50から受信した加速度情報と角速度情報とから、結像光学系20の光軸から結像光学系20のロール旋回軸までの距離を示す情報を導出する。結像光学系20の光軸からロール旋回軸までの距離を示す情報は、例えば、直交xyz座標系におけるロール旋回軸の座標である。また、演算部60は、結像光学系20の、ロール旋回軸回りの回転量を導出する。具体的な導出方法については後述する。演算部60は、導出した座標と回転量とに基づいて、撮像素子70の撮像面に結像する画像のブレ量が小さくなるようにブレ補正部30が実行する駆動操作に関する情報を算出する。ブレ補正部30が実行する駆動操作に関する情報とは、レンズ駆動部32が補正レンズ31を駆動操作する駆動方向とその駆動量である。演算部60は、算出した駆動量を、制御部80を介してレンズ駆動部32に送信する。
【0017】
ブレ補正部30は、ロール旋回による被写体像のブレを補正する。レンズ駆動部32は、演算部60から受信した駆動操作に関する情報に基づいて、補正レンズ31を駆動操作する。具体的には、レンズ駆動部32は、補正レンズ31を、光軸に直交する面内で2次元的に移動させる。レンズ駆動部32は、撮像面に結像する被写体の位置がぶれる前の位置に戻るように、補正レンズの位置を移動させて光の向きを変更する。以上の処理により、ブレ補正装置10は、ロール旋回ブレを補正することができる。
【0018】
ロール旋回ブレは、撮像装置1がロール旋回することにより生じる。つまり、ロール旋回ブレは、撮像素子70がロール旋回軸回りにある回転量だけ移動することにより生じる。このロール旋回軸の位置とロール旋回軸回りの回転量は、演算部60が導出する。ロール旋回軸の位置は、撮像素子70の撮像面を含む平面とロール旋回軸との交点の座標により表される。また、ロール旋回軸回りの回転量は、撮像素子70のロール旋回軸回りの回転量により表される。交点の座標と撮像素子70の回転量は、方向と量を有するベクトルとして導出されてもよい。そして、導出された交点の座標と撮像素子70の回転量に基づいて、撮像素子70の回転量(移動量)を相殺するように、レンズ駆動部32が補正レンズ31を移動させる。これにより、対象光の結像位置がブレる前の結像位置に移動して、ロール旋回ブレが補正される。
【0019】
(ブレ補正方法)
次に、本実施形態に係るブレ補正方法S1について説明する。
図2は、ブレ補正方法S1の流れを示すフローチャートである。
図2に示すように、ブレ補正方法S1は、ステップS11からステップS13を含む。ステップS11において、加速度センサ40は、結像光学系20の加速度情報を取得する。また、ステップS12において、角速度センサ50は、結像光学系20の角速度情報を取得する。また、ステップS13において、演算部60は、加速度情報と角速度情報とから、結像光学系20の光軸から結像光学系20のロール旋回軸までの距離を示す情報を導出する。結像光学系20の光軸から結像光学系20のロール旋回軸までの距離を示す情報が導出されると、演算部60は、補正レンズ31を移動する方向と移動量を算出する。そしてレンズ駆動部32は、補正レンズ31を導出された方向に導出された量だけ移動するように駆動する。このようにしてブレが補正される。なお、ブレ補正方法S1においては、ステップS11とステップS12とが並行して実行され、その結果を用いてステップS13が実行されるという処理が常時繰り返して実行される。これにより、撮像される画像のロール旋回ブレを常時補正することができる。
【0020】
(変形例1)
上述した例では、ブレ補正部30は、補正レンズ31を結像光学系20に配置して、補正レンズ31の位置を変えることによりロール旋回ブレを補正する構成を説明した。しかし、ブレ補正部30はこの構成に限定されない。例えば、ブレ補正部30が撮像素子70を移動させる構成であってもよい。
【0021】
図3は、変形例1に係る撮像装置2の構成を示すブロック図である。図に示すように、撮像装置2のブレ補正装置10は、結像光学系20、ブレ補正部30、加速度センサ40、角速度センサ50、演算部60、及び制御部80を備える。ブレ補正部30は、撮像素子70と撮像素子駆動部71を含む。
【0022】
加速度センサ40、角速度センサ50、演算部60、及び制御部80は、撮像装置1で説明したとおりである。結像光学系20は、補正レンズを有していない。その代わりに、ブレ補正部30は、撮像素子駆動部71を備えている。撮像素子駆動部71は、撮像素子70を、光軸に直交する方向に2次元的に移動させる。また、撮像素子駆動部71は、撮像素子70を、回転させるように移動させてもよい。本変形例1に係るブレ補正部30は、ブレによって移動した被写体の結像位置に撮像素子70を移動させることにより、ロール旋回ブレを補正する。
【0023】
以上の構成を有するブレ補正装置10は、結像光学系20の加速度情報と角速度情報とから、結像光学系20の光軸から結像光学系20のロール旋回軸までの距離を示す情報を導出する。そして、結像光学系20の光軸からロール旋回軸までの距離と、ロール旋回軸回りの回転量とに基づいて、ブレ補正部30によりロール旋回ブレを補正する。このような処理により、撮像装置において、ロール旋回により生じる画像のブレを補正することができる。
【0024】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図面を参照して以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0025】
図4は、実施形態2に係る撮像装置1Aの構成を示すブロック図である。撮像装置1Aは、ブレ補正装置10と撮像素子70とを含む。ブレ補正装置10は、結像光学系20、演算部60、及び制御部80を含む。結像光学系20は、加速度センサ40、第1角速度センサ51、及びブレ補正部30を含み、加速度センサ40は、第1加速度センサ41と第2加速度センサ42を含む。第1角速度センサ51は、コリオリの力を検出するジャイロセンサである。ジャイロセンサは、ロール旋回軸回りの角速度を検出することができる。
【0026】
ブレ補正部30は、補正レンズ31とレンズ駆動部32とを含む。演算部60は、第1算出部61と第2算出部62とを含む。第1算出部61は、加速度情報と角速度情報とを用いて、距離を示す情報であるロール旋回軸の座標とロール旋回軸回りの回転量を算出する。距離とは、前述のように、結像光学系20の光軸から結像光学系20のロール旋回軸までの距離である。第2算出部62は、座標と回転量とに基づいて、ブレ補正部30が実行する駆動操作に関する情報を算出する。ブレ補正部30が実行する駆動操作に関する情報とは、一例として、撮像面に結像する画像のブレ量を低減するために補正レンズ31を移動させる方向とその量である。撮像素子70と制御部80は、実施形態1で説明した撮像素子70と制御部80とそれぞれ同様である。
【0027】
加速度センサ40と第1角速度センサ51について、
図5を参照して詳細に説明する。
図5は、実施形態2に係る加速度センサ40と第1角速度センサ51の配置を示す図である。図に示すように、不動の基準座標系CSに対する、撮像装置1Aの結像光学系20の座標である光学座標系OSを考える。光学座標系OSは直交xyz座標系であり、原点をO’とする。加速度センサ40は、センサAO,センサAX及びセンサAYの3つのセンサから構成される。
【0028】
センサAOは、原点O’の位置に配置され、少なくともx軸方向の加速度aorgx、及びy軸方向の加速度aorgyの2つの加速度を取得する。センサAOは、特許請求の範囲に記載した第1加速度センサの一形態である。センサAXは、x軸上に配置され、少なくともx軸方向の加速度axx、及びy軸方向の加速度axyの2つの加速度を取得する。センサAYは、y軸上に配置され、少なくともy軸方向の加速度ayyとx軸方向の加速度ayxの2つの加速度を取得する。センサAXとセンサAYは、特許請求の範囲に記載した第2加速度センサの一形態である。
図5には、センサAO,センサAX及びセンサAYが取得するz軸方向の加速度も記載されているが、本実施形態においてはz軸方向の加速度は取得しなくてもよい。
【0029】
原点O’からセンサAXまでの距離をrx、原点O’からセンサAYまでの距離をryとする。距離rx、ryは、それぞれが特許請求の範囲に記載したx軸上及びy軸上の所定の位置までの距離を表す。なお、本実施形態では、加速度センサ40は3つのセンサからなる構成であるが、センサの数はこれに限らず、上述の6つの加速度を取得することができればよく、センサの数は限定されない。
【0030】
第1角速度センサ51は、x軸回りの角速度ωxと、y軸回りの角速度ωyと、z軸回りの角速度ωxを取得する。x軸回りの角速度ωxは、センサAXが取得してもよく、別個の角速度センサ(図示せず)をx軸上に配置して取得してもよい。y軸回りの角速度ωyは、センサAYが取得してもよく、別個の角速度センサ(図示せず)をy軸上に配置して取得してもよい。z軸回りの角速度ωzは、センサAOが取得してもよく、別個の角速度センサ(図示せず)をz軸上に配置して取得してもよい。
【0031】
次に、第1算出部61が加速度情報と角速度情報とを用いて算出する、ロール旋回軸の座標と、結像光学系20のロール旋回軸回りの回転量について説明する。ロール旋回軸の座標とは、具体的には、撮像素子70の撮像面を含む平面とロール旋回軸との交点WSの座標である。また、結像光学系20の回転量は、結像光学系20の交点WS回りのロール旋回角度である。
【0032】
図6は、z軸方向から見た、撮像素子70、センサAO、及び撮像素子70の撮像面を含む平面とロール旋回軸との交点WSの関係を示す図である。
図6では、結像光学系20の光軸を光学座標系OSのz軸とし、センサAO、センサAX、センサAY、撮像素子70及び交点WSを図示している。
【0033】
時刻tにおいて、センサAOで取得される加速度aorg(t)、センサAXで取得される加速度ax(t)、センサAYで取得される加速度ay(t)を、それぞれ下記式(1)、(2)、(3)で表す。また、第2角速度センサ52で取得される角速度ωx(t)、角速度ωy(t)、角速度ωz(t)を下記式(4)で表す。なお、式(1)、(2)、(3)においては、演算の便宜上aorg(t)にセンサAOで取得する必要のない加速度成分aorgz(t)が含まれ、ax(t)にセンサAXで取得する必要のない加速度成分axz(t)が含まれ、ay(t)にセンサAYで取得する必要のない加速度成分ayz(t)が含まれている。
【0034】
【0035】
図6に示すように、センサAOの取り付け位置O’を基準とするx軸上のセンサAXの取り付け位置ベクトルRsensx(t)を下記式(5)で表す。センサAOの取り付け位置O’を基準とするy軸上のセンサAYの取り付け位置ベクトルRsensy(t)を下記式(6)で表す。撮像素子70の中心位置701を基準とするセンサAOの取り付け位置ベクトルRimg(t)を下記式(7)で表す。センサAOの取り付け位置O’を基準とする交点WSまでの位置ベクトルRroll(t)を下記式(8)で表す。さらに、撮像素子70の中心位置701を基準とする交点WSまでの位置ベクトルRrollO(t)を下記式(9)で表す。
【0036】
【0037】
求めたい位置ベクトルは、位置ベクトルRroll0(t)である。位置ベクトルRroll0(t)は、位置ベクトルRimg(t)と位置ベクトルRroll(t)の合成により求められる。位置ベクトルRimg(t)は設計情報から既知であるので、位置ベクトルRroll(t)を求めれば、位置ベクトルRroll0(t)を求めることができる。
【0038】
図7は、センサAO,AX,AYの3つのセンサそれぞれから交点WSまでの距離を示す図である。
図7に示すように、センサAOから交点WSまでの距離をLorg(t)、センサAXから交点WSまでの距離をLx(t)、センサAYから交点WSまでの距離をLy(t)として、これらの3つの距離の交点を算出してセンサAOから交点WSまでの距離とする。つまり、センサAOから交点WSまでの距離は、第1加速度センサ41(センサAO)から交点WSまでの距離及び第2加速度センサ42(センサAX,AY)から交点WSまでの距離に基づいて導出される。このような計算を行う理由は、個々のセンサの取得値は雑音及び誤差等を含んでいるため、複数のセンサの出力を総合することでより精度の高い距離を求めるためである。
【0039】
具体的には、センサAOから交点WSまでのベクトルの大きさ(距離)Lを、下記式(10)で求める。式(10)は、距離L(t)を、ベクトルLorg(t)、Lx(t)、Ly(t)の交点として求めることを示す。ここで、式(11)から、式(10)の各成分は下記式(12)~(14)と表される。
【0040】
【0041】
【0042】
次に、以下の3つの連立方程式(15)、(16)、(17)を解いてセンサAOから交点WSまでの距離L(t)を求める。
【数5】
【0043】
加速度センサの取得値(出力)は誤差を含むため、それぞれの連立方程式が解を持たない場合もある。一例として、2つ以上の連立方程式で解が存在した場合は、その座標が最も近い2つの座標ペアの平均値(x,y)を下記式(18)の右辺に代入する。2つ以上の方程式で解が存在しない場合は、取得した加速度及び角速度の精度が低いと判断して、この計算結果は採用せず、その直前に採用した計算結果を保持して次の計算処理を実行する。式(18)の左辺Rroll(t)は、前述したように、センサAOから交点WSまでの位置ベクトルである。
【0044】
【0045】
なお、Rroll(t)を決定する条件としては、2つ以上の連立方程式で解が存在した場合に限られない。例えば、ある誤差範囲内で3つの連立方程式で解が存在した場合としてもよい。あるいは、1つ以上の連立方程式で解が存在した場合であってもよい。また、この計算結果を採用しない場合にどのように対応するかについて、直前に採用した計算結果を保持することに限られない。例えば、それまでに採用された、いくつかの計算結果の平均を採用してもよい。
【0046】
式(18)によりRroll(t)が決定されると、次に下記式(19)により、撮像素子70の中心位置701から交点WSまでの位置ベクトルRroll0を求める。
【数7】
【0047】
なお、式(19)は位置ベクトルを求める式であるため、結像光学系20の交点WS回りのロール旋回角度情報は含まれていないが、ロール旋回角度情報は第2角速度センサ52の出力を積分することで取得することができる。
【0048】
位置ベクトルRroll0(t)とロール旋回ベクトルωroll(t)は、撮像素子70のブレの移動方向と移動量を表す。
図8は、交点WSから見た撮像素子70の中心位置の移動を示す図である。撮像素子70の中心位置は、矢印710に沿って、中心位置701から中心位置702に移動する。矢印710で示すベクトルはロール旋回ベクトルωroll(t)である。交点WSから中心位置701までの位置ベクトルは、ベクトルRroll0の方向を逆にした下記式(20)により表される。
【0049】
【0050】
以上のように位置ベクトル-Rroll0(t)とロール旋回ベクトルωroll(t)が求まると、第2算出部62は、ブレ補正部30が実行する駆動操作に関する情報を算出する。具体的には、第2算出部62は、補正レンズ31を移動させる方向とその移動量を算出する。
【0051】
図9は、ブレ補正のために補正レンズを移動させる方向を示す図である。矢印711は、ブレ補正のために補正レンズ31を移動させる移動ベクトルである。この移動ベクトル711は次のように算出することができる。まず、
図9に示すベクトル-Rroll0の大きさLroll0を求める。Lroll0は、下記式(21)で表される。具体的には、Lroll0は下記式(22)を用いて算出される。
【数9】
【数10】
【0052】
次に、第2算出部62は、算出されたLroll0が下記式(23)を満たすか否かを判定する。
【数11】
【0053】
ここで、Limgは、
図9に示すように、撮像素子70の中心位置701から頂点位置までの大きさである。式(23)を満たすか否かを判定する理由は次の通りである。即ち、Lroll0がLimgよりも小さい場合は、ロール旋回軸がイメージサークル内にあることを意味する。その場合、本実施形態でいうロール旋回ブレの量が小さいため、補正効果も小さくなるためである。
【0054】
イメージサークルとは、撮像素子70に外接する外接円の領域である。ブレ補正においては、撮像素子70の領域のうち、ロール旋回軸(交点WS)からの距離が遠い側の領域を最適化するようにブレを補正することが好ましい。ロール旋回軸がイメージサークルの外部にある場合、ロール旋回軸から遠い側、つまり、撮像素子70の中心よりも外側のほうがブレ量が大きい。イメージサークル全体としての補正効果は、補正量と面積の積で評価することができる。交点WSから外側のほうが、内側よりも単位角度あたりの面積が大きい。そのため、撮像素子70の領域のうち、交点WSからの距離が遠い側の領域の補正効果が最適化されるように補正したほうが、画像全体として補正の効果が高くなる。
【0055】
第2算出部62は、式(23)を満たす場合は以下の補正処理を実行し、満たさない場合は補正処理を実行しない。なお、第2算出部62は、式(23)の判定を行わずに、常に補正処理を実行してもよい。あるいは、補正処理を実行するか否かについて、異なる判定基準を設けてもよい。
【0056】
補正処理を実行する場合は、第2算出部62は、下記式(24)、(25)から、移動ベクトル711の成分であるCx(t)とCy(t)を求める。つまり、Cx(t)は、x軸方向の補正レンズ31の移動量、Cy(t)はy軸方向の補正レンズ31の移動量である。式(25)の補正係数kVRは、補正レンズ31の単位移動量あたりの、撮像素子70の撮像面における像面移動量(無次元定数)である。
【0057】
【0058】
第2算出部62は、算出したCx(t)とCy(t)を、制御部80を介してレンズ駆動部32に送信する。レンズ駆動部32は、補正レンズ31をx軸方向、y軸方向にそれぞれCx(t)とCy(t)だけ移動させるように補正レンズ31を駆動操作する。ブレ補正部30は、このような処理により、ブレ補正を実行する。
【0059】
以上説明したように、ブレ補正部30は、補正レンズ31を移動させることによりロール旋回ブレを補正することができる。
【0060】
(変形例2)
上述の実施形態2では、ブレ補正部30が補正レンズ31を移動させてロール旋回ブレを補正する例を説明した。しかし、ブレ補正部30が撮像素子70を移動させてロール旋回ブレを補正してもよい。この場合、第2算出部62は、撮像素子70を移動させる方向とその移動量を算出する。以下に、撮像素子70を移動させる場合について説明する。
【0061】
図10は、撮像素子70のブレによる移動方向を示す図である。ブレ前の撮像素子70の位置を点線で示し、ブレ後の撮像素子70の位置を実線で示している。ただし、撮像素子70は、防振装置73に取り付けられているものとする。
図8で説明したように、撮像素子70の中心位置は、矢印710で示すロール旋回ベクトルωroll(t)に沿って、中心位置701から中心位置702に移動する。この場合、ブレ補正部30は、撮像素子70の中心位置が702から701に戻るように防振装置73を移動させる。
【0062】
中心位置702から中心位置701までの移動ベクトルは、
図9を用いて説明した手順で算出することができる。ただし、撮像素子70を移動させる場合は、補正係数k
VRを用いる必要はない。以上のように、撮像素子70を移動させることにより、ブレ補正を行ってもよい。なお、本変形例2においては、撮像素子70を、交点WSを中心に回転させてもよい。本変形例2においても、実施形態2と同様の効果を得ることができる。
【0063】
〔ソフトウェアによる実現例〕
ブレ補正装置10(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の演算部60及び制御部80としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0064】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0065】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0066】
また、上記各部の機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各部として機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0067】
〔まとめ〕
本実施形態に係るブレ補正装置は、撮像装置の画像のブレを補正するブレ補正装置であって、被写体像を撮像素子の撮像面に結像させる結像光学系と、ロール旋回による前記被写体像のブレを補正するブレ補正部と、前記結像光学系の加速度情報を取得する少なくとも1つの加速度センサと、前記結像光学系の角速度情報を取得する少なくとも1つの角速度センサと、前記加速度情報と前記角速度情報とから、前記結像光学系の光軸から前記結像光学系のロール旋回軸までの距離を示す情報を導出する演算部と、を備える。
【0068】
このような構成により、撮像装置において、ロール旋回により生じる画像のブレを補正することができる。
【0069】
また、本実施形態に係るブレ補正装置において、前記少なくとも1つの加速度センサは、前記結像光学系の光軸をz軸とし、当該光軸に直交するとともに互いに直交する2つの軸をx軸及びy軸として、当該3軸の原点におけるx軸方向及びy軸方向の加速度をそれぞれ検出する少なくとも1つの第1加速度センサと、x軸上及びy軸上のそれぞれ所定の位置における3軸方向の加速度を検出する少なくとも2つの第2加速度センサと、であり、前記少なくとも1つの角速度センサは、前記x軸、y軸、及びz軸のそれぞれの軸回りの角速度を検出する第1角速度センサであり、前記演算部は、前記加速度情報と前記角速度情報とを用いて、前記距離を示す情報である前記ロール旋回軸の座標と、前記ロール旋回軸回りの回転量を算出する第1算出部と、前記座標と前記回転量とに基づいて、前記ブレ補正部が実行する駆動操作に関する情報を算出する第2算出部と、を含んでもよい。
【0070】
このような構成により、撮像装置において、ロール旋回により生じる画像のブレを補正することができる。
【0071】
また、本実施形態に係るブレ補正装置において、前記距離は、前記第1加速度センサからの前記距離及び前記第2加速度センサからの前記距離に基づいて導出されてもよい。
【0072】
このような構成により、結像光学系の光軸から結像光学系のロール旋回軸までの距離をより精度良く算出することができ、ひいてはより精度の高いブレ補正を実行することができる。
【0073】
また、本実施形態に係るブレ補正装置において、前記ブレ補正部が実行する前記駆動操作は、前記結像光学系の補正レンズ又は前記撮像素子を移動させる操作であってもよい。
【0074】
このような構成により、撮像装置の交換レンズにブレ補正装置を設けてもよく、撮像装置の本体にブレ補正装置を設けてもよい。交換レンズにブレ補正装置を設ける場合は、撮像装置本体の構成にかかわらず、ブレ補正を行うことができる。撮像装置の本体にブレ補正装置を設ける場合は、交換レンズにブレ補正装置が配置されていなくてもブレ補正を行うことができる。また、撮像素子を回転させてブレ補正をすることが可能となる。
【0075】
また、本実施形態に係るブレ補正装置において、前記ブレ補正部は、前記撮像素子の領域のうち、前記ロール旋回軸からの距離が遠い側の前記領域を最適化するようにブレを補正してもよい。
【0076】
このような構成により、イメージサークル全体としてのブレ補正を最適化することができる。
【0077】
本実施形態に係るブレ補正方法は、結像光学系の加速度情報を取得するステップと、結像光学系の角速度情報を取得するステップと、前記加速度情報と前記角速度情報とから、前記結像光学系の光軸から前記結像光学系のロール旋回軸までの距離を示す情報を導出するステップと、を含む。
【0078】
本実施形態に係るブレ補正プログラムは、コンピュータに、結像光学系の加速度情報を取得する処理と、結像光学系の角速度情報を取得する処理と、前記加速度情報と前記角速度情報とから、前記結像光学系の光軸から前記結像光学系のロール旋回軸までの距離を示す情報を導出する処理と、を実行させる。
【0079】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1,1A,2・・・撮像装置
10・・・ブレ補正装置
20・・・結像光学系
30・・・ブレ補正部
31・・・補正レンズ
32・・・レンズ駆動部
40・・・加速度センサ
41・・・第1加速度センサ
42・・・第2加速度センサ
50・・・角速度センサ
51・・・第1角速度センサ
60・・・演算部
61・・・第1算出部
62・・・第2算出部
70・・・撮像素子
71・・・撮像素子駆動部
73・・・防振装置
80・・・制御部