IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-自動二輪車用タイヤ 図1
  • 特開-自動二輪車用タイヤ 図2
  • 特開-自動二輪車用タイヤ 図3
  • 特開-自動二輪車用タイヤ 図4
  • 特開-自動二輪車用タイヤ 図5
  • 特開-自動二輪車用タイヤ 図6
  • 特開-自動二輪車用タイヤ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135401
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20230921BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B60C11/03 E
B60C11/13 A
B60C11/03 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040580
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】森村 亮介
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB06
3D131BC02
3D131CB05
3D131EB03U
3D131EB46U
3D131EB47U
3D131EB48U
3D131EB58U
(57)【要約】
【課題】転がり抵抗を低減させた自動二輪車用タイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2を有する自動二輪車用タイヤである。トレッド部2の接地面2sは、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲している。接地面2sは、中央領域5と、第1外側領域6とを含む。接地面2sには、タイヤ周方向に対して傾斜する部分を含む複数の傾斜溝10が形成されている。複数の傾斜溝10のそれぞれは、中央領域5と第1外側領域6とに跨るように延びている。複数の傾斜溝10のそれぞれは、タイヤ周方向に対して20°以下の角度αで延びる縦溝部15を含む。縦溝部15と、中央領域5の外縁5eとの間の接地面2sに沿ったタイヤ軸方向の最小距離は、中央領域5の接地面2sに沿ったタイヤ軸方向の最大幅の30%以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する自動二輪車用タイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端と、第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間の接地面とを含み、
前記接地面は、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲しており、
前記接地面は、キャンバー角0°の直進状態で接地する中央領域と、前記中央領域のタイヤ軸方向の外縁よりも前記第1トレッド端の側の第1外側領域とを含み、
前記接地面には、タイヤ周方向に対して傾斜する部分を含む複数の傾斜溝が形成されており、
前記複数の傾斜溝のそれぞれは、前記中央領域と前記第1外側領域とに跨るように延びており、
前記複数の傾斜溝のそれぞれは、タイヤ周方向に対して20°以下の角度αで延びる縦溝部を含み、
前記縦溝部と、前記中央領域の前記外縁との間の前記接地面に沿ったタイヤ軸方向の最小距離は、前記中央領域の前記接地面に沿ったタイヤ軸方向の最大幅の30%以下である、
自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記傾斜溝は、少なくとも1つの屈曲部を含む、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記傾斜溝は、複数の屈曲部を含む、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記縦溝部は、直線状に延びている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記傾斜溝は、前記縦溝部よりもタイヤ軸方向内側に位置する内側溝部を含み、
前記内側溝部のタイヤ周方向に対する最大の角度βは、前記縦溝部の前記角度αよりも大きい、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記内側溝部は、直線状に延びている、請求項5に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記内側溝部の長さは、前記傾斜溝の全長さの20%~50%である、請求項5又は6に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記複数の傾斜溝は、第1傾斜溝を含み、
前記第1傾斜溝の前記縦溝部の前記角度αが5°未満である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記複数の傾斜溝は、第2傾斜溝を含み、
前記第2傾斜溝の前記縦溝部の前記角度αが5°以上である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記複数の傾斜溝のうちタイヤ周方向に隣接するペアにおいて、前記縦溝部は、タイヤ軸方向で互いに異なる位置に配置されている、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項11】
前記縦溝部の最大の溝幅は、前記傾斜溝の最大の溝幅の50%以上である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項12】
前記傾斜溝は、前記縦溝部よりもタイヤ軸方向外側に位置する外側溝部を含み、
前記外側溝部は、直線状に延びている、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項13】
前記傾斜溝は、前記縦溝部よりもタイヤ軸方向外側に位置する外側溝部を含み、
前記外側溝部は、ジグザグ状に延びている、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項14】
回転方向が指定され、
前記傾斜溝は、一対の溝縁を備え、
前記一対の溝縁のうち、前記回転方向の後着側の溝縁には、面取り部が形成されている、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に複数の傾斜溝が設けられた自動二輪車用タイヤが提案されている。この自動二輪車用タイヤは、傾斜溝の角度が特定されることにより、ウェット性能の維持、及び、旋回走行時の過渡特性の向上を期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-125087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動二輪車の燃費性能の向上が求められている。また、近年普及しつつある電動の自動二輪車においては、一度の充電における走行可能距離の増加が望まれている。これらのニーズを満たすために、自動二輪車用タイヤの転がり抵抗の低減が求められている。
【0005】
本開示は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、転がり抵抗を低減させた自動二輪車用タイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、トレッド部を有する自動二輪車用タイヤであって、前記トレッド部は、第1トレッド端と、第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間の接地面とを含み、前記接地面は、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲しており、前記接地面は、キャンバー角0°の直進状態で接地する中央領域と、前記中央領域のタイヤ軸方向の外縁よりも前記第1トレッド端の側の第1外側領域とを含み、前記接地面には、タイヤ周方向に対して傾斜する部分を含む複数の傾斜溝が形成されており、前記複数の傾斜溝のそれぞれは、前記中央領域と前記第1外側領域とに跨るように延びており、前記複数の傾斜溝のそれぞれは、タイヤ周方向に対して20°以下の角度αで延びる縦溝部を含み、前記縦溝部と、前記中央領域の前記外縁との間の前記接地面に沿ったタイヤ軸方向の最小距離は、前記中央領域の前記接地面に沿ったタイヤ軸方向の最大幅の30%以下である、自動二輪車用タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の自動二輪車用タイヤは、上記の構成を採用したことによって、転がり抵抗を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態の自動二輪車用タイヤの横断面図である。
図2図1のトレッド部の展開図である。
図3図2の第1トレッド部の拡大図である。
図4図3の第1傾斜溝の拡大図である。
図5図3の第2傾斜溝の拡大図である。
図6図3のB-B線断面図である。
図7】比較例の自動二輪車用タイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1には、本開示の一実施形態を示す自動二輪車用タイヤ1(以下、単に「タイヤ」ということがある。)の正規状態における横断面図が示されている。図2は、タイヤ1のトレッド部2のトレッドパターンを示す展開図である。図1は、図2のA-A線断面図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、スクーター用として好適に用いられる。
【0010】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、本明細書において、特に断りの無い限り、前記寸法の測定方法には、公知の方法を適宜適用することができる。
【0011】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、第1トレッド端T1と、第2トレッド端T2と、これらの間の接地面2sとを含む。第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2は、接地面2sの端に相当し、最大キャンバー角での旋回したときに路面と接触する。また、接地面2sは、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲している。このようなタイヤ1は、キャンバー角が大きい旋回時においても十分な接地面積を得ることができる。
【0014】
本実施形態のタイヤ1は、カーカスやベルト層等、一般的な自動二輪車用タイヤが具える内部構成部材を有している。これらには、公知の構成が適宜採用される。
【0015】
図2に示されるように、トレッド部2は、回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。回転方向Rは、例えば、サイドウォール部3(図1に示す)に、文字又は記号で表示される。
【0016】
図1及び図2に示されるように、接地面2sは、キャンバー角0度の直進状態で接地する中央領域5を含む。中央領域5は、前記正規状態のタイヤ1に正規荷重の100%が負荷され、トレッド部2をキャンバー角0°で平面に接地させたときに、前記平面と接触する領域を意味する。図2では、中央領域5の外縁5eが2点鎖線で示されている。
【0017】
図2に示されるように、中央領域5の最大幅W1は、トレッド部2の接地面2sの曲率や、カーカスやベルト層等、各種の構成によって、適宜調整される。本実施形態の中央領域5の最大幅W1は、例えば、トレッド接地幅TWの40%~60%とされる。なお、前記最大幅W1は、前記正規状態における接地面2sに沿った中央領域5のタイヤ軸方向の最大の幅である。トレッド接地幅TWは、前記正規状態における第1トレッド端T1から第2トレッド端T2までの接地面2sに沿った距離である。
【0018】
図2に示されるように、トレッド部2は、第1トレッド端T1とタイヤ赤道Cとの間の第1トレッド部2Aと、第2トレッド端T2とタイヤ赤道Cとの間の第2トレッド部2Bとを含む。本実施形態では、第1トレッド部2Aと第2トレッド部2Bとが、タイヤ周方向に位置ずれしている点を除き、実質的にタイヤ赤道Cに対して線対称のパターンを備えている。このため、本明細書で第1トレッド部2Aについて説明された構成は、第2トレッド部2Bに適用することができる。但し、本開示は、このような態様に限定されるものではなく、トレッド部2のパターンがタイヤ赤道Cに対して非線対称であっても良い。
【0019】
接地面2sは、第1外側領域6及び第2外側領域7を含む。第1外側領域6は、中央領域5のタイヤ軸方向の外縁5eよりも第1トレッド端T1の側の領域である。第2外側領域7は、中央領域5のタイヤ軸方向の外縁5eよりも第2トレッド端T2の側の領域である。また、接地面2sには、タイヤ周方向に対して傾斜する部分を含む複数の傾斜溝10が形成されている。本実施形態の傾斜溝10は、第1トレッド部2A及び第2トレッド部2Bのそれぞれに設けられている。以下、第1トレッド部2Aに設けられた傾斜溝10に基づいて本開示の特徴が説明される。
【0020】
図3には、図2の第1トレッド部2Aの拡大図が示されている。図3に示されるように、複数の傾斜溝10のそれぞれは、中央領域5と第1外側領域6とに跨るように延びている。また、複数の傾斜溝10のそれぞれは、タイヤ周方向に対して20°以下の角度αで延びる縦溝部15を含む。
【0021】
図4には、1つの傾斜溝10の拡大図が示されている。図4に示されるように、縦溝部15と、中央領域5の外縁5eとの間の接地面2sに沿ったタイヤ軸方向の最小距離L1は、中央領域5のタイヤ軸方向の最大幅W1(図2に示す)の30%以下である。なお、前記最小距離L1は、前記外縁5eから縦溝部15の溝縁までの最小の距離を意味する。本開示のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、転がり抵抗を低減させることができる。そのメカニズムは、以下の通りである。
【0022】
接地面2sが円弧状に湾曲した自動二輪車用タイヤは、直進状態で接地するトレッド部2の中央領域5の外縁5e付近での歪が大きい。また、この歪は、転がり抵抗の増加をもたらす傾向がある。本開示では、中央領域5の外縁5eの近くに、傾斜溝10の縦溝部15が位置することにより、上述の歪を緩和でき、転がり抵抗を低減させることができる。また、本開示では、トレッド部2のゴム組成等に依存せずに転がり抵抗を低減させることができるため、ハンドリング性能や摩耗性能の維持も期待することができる。
【0023】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本開示は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本開示のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0024】
図3に示されるように、傾斜溝10は、例えば、回転方向Rの後着側に向かって、タイヤ赤道C側から第1トレッド端T1側に傾斜している。これにより、タイヤ赤道C側の内端10aが、回転方向Rの先着側に位置し、第1トレッド端T1側の外端10bが、回転方向Rの後着側に位置している。このような傾斜溝10は、タイヤの回転を利用して優れた排水性を発揮することができる。
【0025】
傾斜溝10は、タイヤ赤道Cと第1トレッド端T1との間に収まっている。すなわち、傾斜溝10の内端10aは、タイヤ赤道Cよりも第1トレッド端T1側に位置している。傾斜溝10の外端10bは、第1トレッド端T1よりもタイヤ赤道C側に位置している。但し、傾斜溝10は、このような態様に限定されるものではなく、タイヤ赤道Cを横切るものや、第1トレッド端T1で開口するものでも良い。なお、前記内端10a及び前記外端10bは、傾斜溝10の溝中心線の端である。
【0026】
タイヤ赤道Cから傾斜溝10の内端10aまでのタイヤ軸方向の距離L2は、トレッド接地幅TWの10%以下である。第1トレッド端T1から傾斜溝10の外端10bまでのタイヤ軸方向の距離L3は、トレッド接地幅TWの10%以下である。なお、前記距離L2及び前記距離L3は、接地面2sに沿った距離を意味する。以下、本明細書において、特に断りのない限り、各部の距離や長さについても、接地面2sに沿ったものを意味する。
【0027】
望ましい態様において、複数の傾斜溝10のうちタイヤ周方向に隣接するペアにおいて、傾斜溝10の内端10aは、タイヤ軸方向で互いに異なる位置に配置されている。同様に、前記ペアにおいて、傾斜溝10の外端10bは、タイヤ軸方向で互いに異なる位置に配置されている。このような傾斜溝10の配置は、タイヤ赤道C付近及び第1トレッド端T1付近の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
【0028】
図4に示されるように、傾斜溝10は、少なくとも1つの屈曲部16を含む。本実施形態の傾斜溝10は、複数の屈曲部16を含んでいる。屈曲部16は、傾斜溝10の溝縁10eが折れ曲がっている部分である。本実施形態では、屈曲部16を構成する2つの溝縁10eのうち、曲率半径が大きい方の溝縁10eについて、その曲率半径が傾斜溝10の溝幅よりも小さくなる。
【0029】
縦溝部15は、2つの屈曲部16の間に構成されている。本実施形態の縦溝部15は、直線状に延びている。但し、このような態様に限定されるものではなく、縦溝部15は、曲がって延びるものでも良い。縦溝部15の最大の溝幅W2(図3に示す)は、傾斜溝10の最大の溝幅の50%以上が望ましい。本実施形態では、傾斜溝10が実質的に一定の溝幅で延びており、縦溝部15の溝幅は、他の部分の溝幅と同じとなっている。このような縦溝部15は、タイヤの回転を利用して優れた排水性を発揮し、ウェット性能を高めるのに役立つ。
【0030】
図3に示されるように、縦溝部15の長さL4は、傾斜溝10の全長さの10%~20%である。このような縦溝部15は、旋回性能を維持しつつ、転がり抵抗を低減させることができる。なお、上述の傾斜溝10の全長さ、縦溝部15の長さL4は、それぞれ、溝中心線の溝に沿った所謂ペリフェリ長さを意味する。以下で説明される各部の長さも同様である。
【0031】
縦溝部15は、最小距離L1は上述の範囲であれば、中央領域5の外縁5eのタイヤ赤道C側、前記外縁5eの第1トレッド端T1側、又は、前記外縁5e上のいずれに配置されても良い。望ましい態様として、本実施形態の縦溝部15は、前記外縁5eよりもタイヤ赤道C側に位置している。縦溝部15と、前記外縁5eとの間の前記最小距離L1(図4に示す)は、中央領域5の前記最大幅W1の15%以下であるのが望ましい。これにより、上述の効果が確実に発揮される。
【0032】
図3に示されるように、本実施形態では、複数の傾斜溝10のうちタイヤ周方向に隣接するペアにおいて、縦溝部15は、タイヤ軸方向で互いに異なる位置に配置されているのが望ましい。これにより、車体を倒し込むときの手応えの過渡特性がリニアになり(以下、このような作用を「過渡特性が向上する」という場合がある。)、優れた旋回性能が得られる。
【0033】
複数の傾斜溝10は、縦溝部15の角度が異なる第1傾斜溝11及び第2傾斜溝12を含む。第1傾斜溝11の縦溝部15の角度αは、5°未満である。第2傾斜溝12の縦溝部15の角度αは、5°以上である。これにより、複数の傾斜溝10が発生するピッチ音がホワイトノイズ化され、ノイズ性能が向上し得る。なお、図4に示される傾斜溝10は、第1傾斜溝11である。
【0034】
タイヤ全周において、第1傾斜溝11の本数は、第2傾斜溝12の本数よりも大きいのが望ましい。これにより、ノイズ性能の向上を図りつつ、転がり抵抗の低減効果が確実に発揮される。
【0035】
図4に示されるように、傾斜溝10は、内側溝部17を含む。内側溝部17は、縦溝部15よりもタイヤ軸方向内側に位置している。本実施形態の内側溝部17は、屈曲部16を介して縦溝部15と連なっており、タイヤ周方向に対して傾斜して直線状に延びている。内側溝部17のタイヤ周方向に対する最大の角度βは、縦溝部15の前記角度αよりも大きいのが望ましい。具体的には、前記角度βは、30~45°である。このような内側溝部17は、中央領域5のタイヤ軸方向の剛性を維持しつつ、排水能力を提供できる。
【0036】
内側溝部17の長さは、縦溝部15の長さよりも大きいのが望ましい。具体的には、内側溝部17の長さは、傾斜溝10の全長さの20%~50%である。このような内側溝部17は、操縦安定性とウェット性能とがバランス良く向上させるのに役立つ。
【0037】
傾斜溝10は、外側溝部18を含む。外側溝部18は、縦溝部15よりもタイヤ軸方向外側に位置している。図4で示される傾斜溝10において、外側溝部18は、直線状に延びている。外側溝部18の長さは、縦溝部15の長さL4(図3に示す)よりも大きい。外側溝部18の長さは、傾斜溝10の全長さの40%~60%である。このような外側溝部18は、旋回時のウェット性能を高めることができる。
【0038】
図5には、図4とは別の傾斜溝10の拡大図が示されている。図5の傾斜溝10は、第2傾斜溝12である。図5に示されるように、外側溝部18は、直線状に延びるものに限定されず、例えば、ジグザグ状に延びるものでも良い。このような外側溝部18は、その溝縁が多方向に摩擦力を提供し、旋回時の過渡特性が向上し得る。
【0039】
図3に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、外側溝部18が直線状に延びる複数の傾斜溝10と、外側溝部18がジグザグ状に延びる複数の傾斜溝10とが設けられている。このような傾斜溝10の配置は、ウェット性能と旋回時の過渡特性とウェット性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0040】
図6には、図3のB-B線断面図が示されている。図6に示されるように、傾斜溝10は、一対の溝縁10eを備えている。また、傾斜溝10の一対の溝縁10eのうち、回転方向Rの後着側の溝縁10eには、面取り部20が形成されている。面取り部20は、傾斜溝10の溝壁と接地面との間を斜めに延びる傾斜面20aを含む。一方、回転方向Rの先着側の溝縁10eには、面取り部が設けられていない。これにより、傾斜溝10で区分された陸部片の過度な変形が抑制され、転がり抵抗がより一層低減する。
【0041】
図2に示されるように、この実施形態のトレッド部2のランド比は、例えば、70%~85%である。このようなトレッド部2は、ウェット性能と耐摩耗性能とをバランス良く高めるのに役立つ。なお、前記ランド比は、トレッド部2に設けられた溝を全て埋めた仮想接地面の面積に対する、実際の接地面2sの面積の比率である。
【0042】
以上、本開示の一実施形態の自動二輪車用タイヤが詳細に説明されたが、本開示は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0043】
図1の基本構造を有し、かつ、図2のトレッドパターンを有するサイズ120/70-14の自動二輪車用タイヤが試作された。また、比較例として、図1の基本構造を有し、かつ、図7に示されるトレッドパターンを有する自動二輪車用タイヤが試作された。図7に示されるように、比較例のタイヤのトレッド部には、縦溝部を含まない複数の傾斜溝aが配されている。これらのタイヤについて、転がり抵抗が測定された。装着リム及び内圧、並びに、測定方法は、下記の通りである。
装着リム:MT3.5×14
内圧:225kPa
【0044】
<転がり抵抗>
比較例及び実施例のタイヤを下記の条件で転がり抵抗試験機上で走行させ、その転がり抵抗が測定された。結果は、比較例の前記転がり抵抗を100とする指数で示されており、数値が小さい程、転がり抵抗が小さく良好であることを示す。
縦荷重:1.3kN
速度:30~60km/h
テスト結果が表1に示される。
【0045】
【表1】
【0046】
テストの結果、実施例の自動二輪車用タイヤは、転がり抵抗が低減していることが確認できた。
【0047】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0048】
[本開示1]
トレッド部を有する自動二輪車用タイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端と、第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間の接地面とを含み、
前記接地面は、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲しており、
前記接地面は、キャンバー角0°の直進状態で接地する中央領域と、前記中央領域のタイヤ軸方向の外縁よりも前記第1トレッド端の側の第1外側領域とを含み、
前記接地面には、タイヤ周方向に対して傾斜する部分を含む複数の傾斜溝が形成されており、
前記複数の傾斜溝のそれぞれは、前記中央領域と前記第1外側領域とに跨るように延びており、
前記複数の傾斜溝のそれぞれは、タイヤ周方向に対して20°以下の角度αで延びる縦溝部を含み、
前記縦溝部と、前記中央領域の前記外縁との間の前記接地面に沿ったタイヤ軸方向の最小距離は、前記中央領域の前記接地面に沿ったタイヤ軸方向の最大幅の30%以下である、
自動二輪車用タイヤ。
[本開示2]
前記傾斜溝は、少なくとも1つの屈曲部を含む、本開示1に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本開示3]
前記傾斜溝は、複数の屈曲部を含む、本開示1に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本開示4]
前記縦溝部は、直線状に延びている、本開示1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示5]
前記傾斜溝は、前記縦溝部よりもタイヤ軸方向内側に位置する内側溝部を含み、
前記内側溝部のタイヤ周方向に対する最大の角度βは、前記縦溝部の前記角度αよりも大きい、本開示1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本開示6]
前記内側溝部は、直線状に延びている、本開示5に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本開示7]
前記内側溝部の長さは、前記傾斜溝の全長さの20%~50%である、本開示5又は6に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本開示8]
前記複数の傾斜溝は、第1傾斜溝を含み、
前記第1傾斜溝の前記縦溝部の前記角度αが5°未満である、本開示1ないし7のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
[本開示9]
前記複数の傾斜溝は、第2傾斜溝を含み、
前記第2傾斜溝の前記縦溝部の前記角度αが5°以上である、本開示1ないし8のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
[本開示10]
前記複数の傾斜溝のうちタイヤ周方向に隣接するペアにおいて、前記縦溝部は、タイヤ軸方向で互いに異なる位置に配置されている、本開示1ないし9のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
[本開示11]
前記縦溝部の最大の溝幅は、前記傾斜溝の最大の溝幅の50%以上である、本開示1ないし10のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
[本開示12]
前記傾斜溝は、前記縦溝部よりもタイヤ軸方向外側に位置する外側溝部を含み、
前記外側溝部は、直線状に延びている、本開示1ないし11のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
[本開示13]
前記傾斜溝は、前記縦溝部よりもタイヤ軸方向外側に位置する外側溝部を含み、
前記外側溝部は、ジグザグ状に延びている、本開示1ないし11のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
[本開示14]
回転方向が指定され、
前記傾斜溝は、一対の溝縁を備え、
前記一対の溝縁のうち、前記回転方向の後着側の溝縁には、面取り部が形成されている、本開示1ないし13のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤ。
【符号の説明】
【0049】
2 トレッド部
T1 第1トレッド端
T2 第2トレッド端
2s 接地面
5 中央領域
5e 外縁
6 第1外側領域
10 傾斜溝
15 縦溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7