(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135421
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】変性ポリフェニレンエーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/48 20060101AFI20230921BHJP
【FI】
C08G65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040621
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】福岡 亮子
(72)【発明者】
【氏名】福岡 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】大谷 尚史
(72)【発明者】
【氏名】本田 暢子
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA26
4J005BB02
4J005BD02
(57)【要約】
【課題】本発明は、ポリフェニレンエーテルを変性する工程で生じる残存不純物、特に塩素成分を低減し、かつ、溶媒使用量を増加させることなく、処理後の溶液に水や金属成分等の新たな不純物が混入することを回避することができ、さらには処理の工程で変性率が低下しない変性ポリフェニレンエーテルを提供することを目的とする。
【解決手段】以下の工程:
ポリフェニレンエーテル、塩素を含む変性基原料、触媒、アミン、及び溶媒を含む溶液中で前記ポリフェニレンエーテルの変性反応を行う変性反応工程;及び
回収した変性ポリフェニレンエーテルの乾燥工程;を含み、
前記乾燥工程が、乾燥温度50~115℃で1次乾燥を行う工程、及び乾燥温度乾燥120~250℃で2次乾燥を行う工程を含むことを特徴とする変性ポリフェニレンエーテルの製造方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
ポリフェニレンエーテル、塩素を含む変性基原料、触媒、アミン、及び溶媒を含む溶液中で前記ポリフェニレンエーテルの変性反応を行う変性反応工程;及び
回収した変性ポリフェニレンエーテルの乾燥工程;を含み、
前記乾燥工程が、乾燥温度50℃~115℃で1次乾燥を行う工程、及び乾燥温度120℃~250℃で2次乾燥を行う工程を含むことを特徴とする変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項2】
前記変性基原料がカルボン酸塩化物であり、かつ、前記触媒がジメチルアミノピリジンである、請求項1に記載の変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項3】
前記ポリフェニレンエーテルが、下記式(1):
【化1】
{式(1)中、Zは、下記式(2):
【化2】
[式(2)中、Xは、a価の任意の連結基であり、R
3は、各々独立に任意の置換基であり、少なくとも1つは、下記式(3):
【化3】
(式(3)中、R
6は、各々独立に置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基であり、R
7は、各々独立に置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、dは、各々独立に0又は1であり、そしてR
8は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基のいずれかである)
で表される部分構造であり、cは、各々独立に1~4の整数であり、-O-が結合するベンゼン環の炭素原子を1位とするとき、2位又は6位の一方の炭素原子にR
3が結合し、そして2位又は6位の他方の炭素原子に水素原子、メチル基、又はエチル基が結合している]
で表されるa価の部分構造であり、aは、2~6の整数を表し、Yは、各々独立に下記式(4):
【化4】
[式(4)中、R
4は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子のいずれかであり、2つのR
4は、同時に水素原子ではなく、また、一方が上記式(3)で表される部分構造、もう一方が水素原子、メチル基、又はエチル基のいずれかである組み合わせでもなく、そしてR
5は、各々独立に水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子のいずれかである]
で表される構造を有する2価の連結基であり、nは、Yの繰り返し数を表し、各々独立に0~200の整数であり、少なくとも1つのnは、1以上の整数であり、R
1は、それぞれ独立に水素原子、水酸基又は炭素数1~30の炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリロキシ基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基であり、R
2は、それぞれ独立に炭素数1~30の炭化水素基であり、そしてbは、0~5の整数である}
で表される構造を有する、請求項1又は2に記載の変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項4】
前記1次乾燥工程及び/又は2次乾燥工程が、減圧状態で行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項5】
前記変性ポリフェニレンエーテルの分子量が、ポリスチレン換算の数平均分子量で500~15,000である、請求項1~4のいずれか1項に記載の変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリフェニレンエーテルの製造方法に関し、より詳細には、塩素成分を低減する変性ポリフェニレンエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子用途の材料には、高度情報化社会での大量データを高速で処理するための低誘電特性を有する材料が求められている。中でもポリフェニレンエーテルは、誘電率や誘電正接等の誘電特性が優れ、MHz帯からGHz帯という高周波数帯(高周波領域)においても誘電特性が優れていることが知られているため、ポリフェニレンエーテル系ポリマーは、高周波用成形材料として、高周波数帯を利用する電子機器に備えられるプリント配線板の基材を構成するための基板材料等として使用されている。
【0003】
一方、プリント配線板の基板材料等の成形材料として利用する際には、誘電特性に優れるだけでなく、耐熱性や成形性に優れていることも求められる。しかし、従来のポリフェニレンエーテルは熱可塑性であり、充分な耐熱性を得ることができない場合があった。このため、近年、ポリフェニレンエーテルにエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を添加したものを用いることや、ポリフェニレンエーテルを変性させたものを用いること等が提案されてきた(例えば特許文献1~3)。
【0004】
特許文献1、2には、所定のポリフェニレンエーテル部分を分子構造内に有し、かつ、この分子末端に、p-エテニルベンジル基やm-エテニルベンジル基等を少なくとも1つ以上有する変性ポリフェニレンエーテル化合物が開示されている。また特許文献2では数平均分子量が1000~7000である上記変性ポリフェニレンエーテルが開示されている。また、特許文献3、4にはポリフェニレンエーテル部分を分子構造内に有し、かつ、この分子末端にメタクリル基を有する変性ポリフェニレンエーテルが開示されている。
【0005】
しかし、ポリフェニレンエーテルの末端を変性する工程で生じる不純物、特に塩素成分の残量により、誘電特性やプリント配線板の絶縁信頼性に課題が生じることが分かってきた(特許文献5)。また、塩素成分はハロゲンフリーの観点からも残存量の低減が望まれている。
【0006】
ポリフェニレンエーテルの末端を変性する工程で生じる不純物を低減する方法としては、例えば、特許文献4では、変性反応後の末端変性ポリフェニレンエーテルを含む溶液を塩基性水溶液で洗浄し、変性率が低下することなく、不純物であるメタクリル酸やメタクリル酸無水物を低減できることが開示されている。
【0007】
特許文献6では、末端変性ポリフェニレンエーテル、変性基原料、変性基原料副生成物、触媒を含む変性工程後のポリフェニレンエーテル溶液をクレイに通液させることで有機酸やアミン不純物が低減できることが開示されている。
【0008】
一方、特許文献5では、末変性ポリフェニレンエーテルを貧溶媒中に滴下、目的物を再沈殿させて回収するという再沈殿操作を繰り返すことにより塩素成分が低減できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-339328号公報
【特許文献2】国際公開第2004/067634号
【特許文献3】特表2004-502849号公報
【特許文献4】特表2010-538114号公報
【特許文献5】国際公開第2020/059562号
【特許文献6】欧州特許第3543277号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献4に開示された技術によって末端変性ポリフェニレンエーテルを洗浄すると、洗浄後の有機相に水が数百ppm~数%残存するだけでなく、乳化することもあり、後工程への影響が懸念される。また、特許文献5に開示された技術においては、再沈殿操作を繰り返すことによる溶媒使用量の増加や回収率の低下、さらには変性率の低下が懸念される。
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題を解決するべく、ポリフェニレンエーテルを変性する工程で生じる残存不純物、特に塩素成分を低減し、かつ、溶媒使用量を増加させることなく、処理後の溶液に水や金属成分等の新たな不純物が混入することを回避することができ、さらには処理の工程で変性率が低下しない変性ポリフェニレンエーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、次の技術的手段により解決されることができる。すなわち、本発明は以下のとおりである。
<1>
以下の工程:
ポリフェニレンエーテル、塩素を含む変性基原料、触媒、アミン、及び溶媒を含む溶液中で前記ポリフェニレンエーテルの変性反応を行う変性反応工程;及び
回収した変性ポリフェニレンエーテルの乾燥工程;を含み、
前記乾燥工程が、乾燥温度50℃~115℃で1次乾燥を行う工程、及び乾燥温度120℃~250℃で2次乾燥を行う工程を含むことを特徴とする変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
<2>
前記変性基原料がカルボン酸塩化物であり、かつ、前記触媒がジメチルアミノピリジンである、項目1に記載の変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
<3>
前記ポリフェニレンエーテルが、下記式(1):
【化1】
{式(1)中、Zは、下記式(2):
【化2】
[式(2)中、Xは、a価の任意の連結基であり、R
3は、各々独立に任意の置換基であり、少なくとも1つは、下記式(3):
【化3】
(式(3)中、R
6は、各々独立に置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基であり、R
7は、各々独立に置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、dは、各々独立に0又は1であり、そしてR
8は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基のいずれかである)
で表される部分構造であり、cは、各々独立に1~4の整数であり、-O-が結合するベンゼン環の炭素原子を1位とするとき、2位又は6位の一方の炭素原子にR
3が結合し、そして2位又は6位の他方の炭素原子に水素原子、メチル基、又はエチル基が結合している]
で表されるa価の部分構造であり、aは、2~6の整数を表し、Yは、各々独立に下記式(4):
【化4】
[式(4)中、R
4は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子のいずれかであり、2つのR
4は、同時に水素原子ではなく、また、一方が上記式(3)で表される部分構造、もう一方が水素原子、メチル基、又はエチル基のいずれかである組み合わせでもなく、そしてR
5は、各々独立に水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子のいずれかである]
で表される構造を有する2価の連結基であり、nは、Yの繰り返し数を表し、各々独立に0~200の整数であり、少なくとも1つのnは、1以上の整数であり、R
1は、それぞれ独立に水素原子、水酸基又は炭素数1~30の炭化水素基、アリール基、アルコキシ基、アリロキシ基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基であり、R
2は、それぞれ独立に炭素数1~30の炭化水素基であり、そしてbは、0~5の整数である}
で表される構造を有する、項目1又は2に記載の変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
<4>
前記1次乾燥工程及び/又は2次乾燥工程が、減圧状態で行われる、項目1~3のいずれか1項に記載の変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
<5>
前記変性ポリフェニレンエーテルの分子量が、ポリスチレン換算の数平均分子量で500~15,000である、項目1~4のいずれか1項に記載の変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリフェニレンエーテルを変性する工程で生じる残存不純物、特に塩素成分を低減し、かつ、溶媒使用量を増加させることなく、処理の工程で変性率が低下しない変性ポリフェニレンエーテルを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
《変性ポリフェニレンエーテル》
本開示における一実施形態である、変性ポリフェニレンエーテルの製造方法によって得られる変性ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルの水酸基が塩素を含む変性基原料によって変性されたでものあれば特に限定されないが、下記式(1):
【化5】
(式(1)中、Zは、下記式(2)で表されるa価の部分構造であり、aは、2~6の整数を表し、Yは、各々独立に下記式(4)で表される構造を有する2価の連結基であり、nは、Yの繰り返し数を表し、各々独立に0~200の整数であり、少なくとも1つのnは、1以上の整数であり、R
1は、それぞれ独立に水素原子、水酸基又は炭素数1~30の炭化水素基(例えば、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基)、アリール基、アルコキシ基、アリロキシ基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基であり、R
2は、それぞれ独立に炭素数1~30の炭化水素基(例えば、アルキレン基)であり、そしてbは、0~5の整数である。)
で表される構造を有することができる。
【0016】
式(1)中のaは、2~6の整数であり、好ましくは2~4、より好ましくは2~3である。
【0017】
Zに結合するa個の置換基はそれぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0018】
式(1)中のbは、0~5の整数であり、好ましくは0~1、より好ましくは0である。
【0019】
R1の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、1-エチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、アミル、シクロペンチル、2,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、n-へキシル、シクロヘキシル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、3-エチルブチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチレン、4-メチルペンチレン、1,1-ジメチルブチレン、2,2-ジメチルブチレン、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルへキシル、2-メチルへキシル、3-メチルへキシル、4-メチルへキシル、5-メチルへキシル、1-エチルペンチル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、1,1-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、3,4-ジメチルペンチル、2-メチル-3,3-ジメチルブチル、1-メチル-3,3-ジメチルブチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,3-ジメチル-2-ペンチル、2-イソプロピルブチル、2-メチルシクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、1-シクロヘキシルメチル、2-エチルシクロペンチル、3-エチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、2,4-ジメチルシクロペンチル、2-メチルシクロペンチルメチル、2-シクロペンチルエチル、1-シクロペンチルエチル、n-オクチル、2-オクチル、3-オクチル、4-オクチル、2-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、4-メチルヘプチル、5-メチルヘプチル、6-メチルヘプチル、2-エチルへキシル、3-エチルへキシル、4-エチルへキシル、5-エチルへキシル、1,1-ジメチルへキシル、2,2-ジメチルへキシル、3,3-ジメチルへキシル、4,4-ジメチルへキシル、5,5-ジメチルへキシル、1,2-ジメチルへキシル、1,3-ジメチルへキシル、1,4-ジメチルへキシル、1,5-ジメチルへキシル、2,3-ジメチルへキシル、2,4-ジメチルへキシル、2,5-ジメチルへキシル、1,1-エチルメチルペンチル、2,2-エチルメチルペンチル、3,3-エチルメチルペンチル、4,4-エチルメチルペンチル、1-エチル-2-メチルペンチル、1-エチル-3-メチルペンチル、1-エチル-4-メチルペンチル、2-エチル-1-メチルペンチル、3-エチル-1-メチルペンチル、4-エチル-1-メチルペンチル、2-エチル-3-メチルペンチル、2-エチル-4-メチルペンチル、3-エチル-2-メチルペンチル、4-エチル-3-メチルペンチル、3-エチル-4-メチルペンチル、4-エチル-3-メチルペンチル、1-(2-メチルプロピル)ブチル、1-(2-メチルプロピル)-2-メチルブチル、1,1-(2-メチルプロピル)エチル、1,1-(2-メチルプロピル)エチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、2,2-ジエチルプロピル、1,1-エチルメチル-2,2-ジメチルプロピル、2,2-エチルメチル-1,1-ジメチルプロピル、2-エチル-1,1-ジメチルブチル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、2,5-ジメチルシクロヘキシル、2,6-ジメチルシクロヘキシル、3,5-ジメチルシクロヘキシル、2-メチルシクロヘキシルメチル、3-メチルシクロヘキシルメチル、4-メチルシクロヘキシルメチル、2-エチルシクロヘキシル、3-エチルシクロヘキシル、4-エチルシクロヘキシル、2-シクロヘキシルエチル、1-シクロヘキシルエチル、1-シクロヘキシル-2-エチレン、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、ベンジル、2-フェニルエチル等が挙げられる。
【0020】
R1は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、1-エチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、アミル、シクロペンチル、n-へキシル、シクロヘキシル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、3-エチルブチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、n-ヘプチル、1-メチルへキシル、2-メチルへキシル、3-メチルへキシル、4-メチルへキシル、5-メチルへキシル、1-エチルペンチル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-メチルシクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-オクチル、3-オクチル、4-オクチル、2-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、4-メチルヘプチル、5-メチルヘプチル、6-メチルヘプチル、2-エチルへキシル、3-エチルへキシル、4-エチルへキシル、5-エチルへキシル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、及びベンジルである。
【0021】
R1は、好ましくは、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、1-エチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、アミル、シクロペンチル、n-へキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-オクチル、3-オクチル、4-オクチル、2-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、4-メチルヘプチル、5-メチルヘプチル、6-メチルヘプチル、2-エチルへキシル、3-エチルへキシル、4-エチルへキシル、5-エチルへキシル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、及びベンジルである。
【0022】
R1は、さらに好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、アミル、シクロペンチル、n-へキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-オクチル、3-オクチル、4-オクチル、2-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、4-メチルヘプチル、5-メチルヘプチル、6-メチルヘプチル、2-エチルへキシル、3-エチルへキシル、4-エチルへキシル、5-エチルへキシル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、及びベンジルである。
【0023】
R2の炭化水素基の具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、1,2-プロピレン、テトラメチレン、2-メチル-1,3-トリメチレン、1,1-ジメチルエチレン、ペンタメチレン、1-エチル-1,3-プロピレン、1-メチル-1,4-ブチレン、2-メチル-1,4-ブチレン、3-メチル-1,4-ブチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,2-シクロペンチレン、1,3-シクロペンチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,1-ジメチル-1,3-プロピレン、3,3-ジメチル-1,3-プロピレン、ヘキサメチレン、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、1-エチル-1,4-ブチレン、2-エチル-1,4-ブチレン、3-エチル-1,4-ブチレン、1-メチル-1,5-ペンチレン、2-メチル-1,5-ペンチレン、3-メチル-1,5-ペンチレン、4-メチルペンチレン、1,1-ジメチル-1,4-ブチレン、2,2-ジメチル-1,4-ブチレン、3,3-ジメチル-1,4-ブチレン、1,2-ジメチル-1,4-ブチレン、1,3-ジメチル-1,4-ブチレン、2,3-ジメチル-1,4-ブチレン、ヘプタメチレン、1-メチル-1,6-へキシレン、2-メチル-1,6-ヘキシレン、3-メチル-1,6-ヘキシレン、4-メチル-1,6-ヘキシレン、5-メチル-1,6-ヘキシレン、1-エチル-1,5-ペンチレン、2-エチル-1,5-ペンチレン、3-エチル-1,5-ペンチレン、1,1-ジメチル-1,5-ペンチレン、2,2-ジメチル-1,5-ペンチレン、3,3-ジメチル-1,5-ペンチレン、4,4-ジメチル-1,5-ペンチレン、1,2-ジメチル-1,5-ペンチレン、1,3-ジメチル-1,5-ペンチレン、1,4-ジメチル-1,5-ペンチレン、2,3-ジメチル-1,5-ペンチレン、2,4-ジメチル-1,5-ペンチレン、3,4-ジメチル-1,5-ペンチレン、2-メチル-3,3-ジメチル-1,4-ブチレン、1-メチル-3,3-ジメチル-1,4-ブチレン、1,2,3-トリメチル-1,4-ブチレン、1,3-ジメチル-1,4-ペンチレン、2-イソプロピル-1,4-ブチレン、2-メチル-1,4-シクロヘキシレン、3-メチル-1,4-シクロヘキシレン、4-メチル-1,4-シクロヘキシレン、1-シクロヘキシルメチレン、2-エチル-1,3-シクロペンチレン、3-エチル-1,3-シクロペンチレン、2,3-ジメチル-1,3-シクロペンチレン、2,4-ジメチル-1,3-シクロペンチレン、2-メチル-1,3-シクロペンチルメチレン、2-シクロペンチルエチレン、1-シクロペンチルエチレン、オクタメチレン、1メチル-1,7-ヘプチレン、1-エチル1,6-へキシレン、1-プロピル-1,5-ペンチレン、2-メチル-1,7-ヘプチレン、3-メチル-1,7-ヘプチレン、4-メチル-1,7-ヘプチレン、5-メチル-1,7-ヘプチレン、6-メチル-1,7-ヘプチレン、2-エチル-1,6-ヘキシレン、3-エチル-1,6-ヘキシレン、4-エチル-1,6-ヘキシレン、5-エチル-1,6-ヘキシレン、1,1-ジメチル-1,6-ヘキシレン、2,2-ジメチル-1,6-ヘキシレン、3,3-ジメチル-1,6-ヘキシレン、4,4-ジメチル-1,6-ヘキシレン、5,5-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,2-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,3-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,4-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,5-ジメチル-1,6-ヘキシレン、2,3-ジメチル-1,6-ヘキシレン、2,4-ジメチル-1,6-ヘキシレン、2,5-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,1-エチルメチル-1,5-ペンチレン、2,2-エチルメチル-1,5-ペンチレン、3,3-エチルメチル-1,5-ペンチレン、4,4-エチルメチル-1,5-ペンチレン、1-エチル-2-メチル-1,5-ペンチレン、1-エチル-3-メチル-1,5-ペンチレン、1-エチル-4-メチル-1,5-ペンチレン、2-エチル-1-メチル-1,5-ペンチレン、3-エチル-1-メチル-1,5-ペンチレン、4-エチル-1-メチル-1,5-ペンチレン、2-エチル-3-メチル-1,5-ペンチレン、2-エチル-4-メチル-1,5-ペンチレン、3-エチル-2-メチル-1,5-ペンチレン、4-エチル-3-メチル-1,5-ペンチレン、3-エチル-4-メチル-1,5-ペンチレン、4-エチル-3-メチル-1,5-ペンチレン、1-(2-メチルプロピル)-1,4-ブチレン、1-(2-メチルプロピル)-2-メチル-1,4-ブチレン、1,1-(2-メチルプロピル)エチレン、1,1-(2-メチルプロピル)エチル-1,3-プロピレン、1,1-ジエチル-1,3-プロピレン、2,2-ジエチル-1,3-プロピレン、1,1-エチルメチル-2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、2,2-エチルメチル-1,1-ジメチル-1,3-プロピレン、2-エチル-1,1-ジメチル-1,4-ブチレン、2,3-ジメチル-1,4-シクロヘキシレン、2,5-ジメチル-1,4-シクロヘキシレン、2,6-ジメチル-1,4-シクロヘキシレン、3,5-ジメチル-1,4-シクロヘキシレン、2-メチル-1,4-シクロヘキシル-1-メチレン、3-メチル-1,4-シクロヘキシル-1-メチレン、4-メチル-1,4-シクロヘキシル-1-メチレン、2-エチル-1,4-シクロヘキシレン、3-エチル-1,4-シクロヘキシレン、4-エチル-1,4-シクロヘキシレン、2-シクロヘキシルエチレン、1-シクロヘキシルエチレン、1-シクロヘキシル-2-エチレン、ノニルメチレン、1-メチル-1,8-オクチレン、デシルメチレン、1-メチル-1,8-ノニレン、ウンデシルメチレン、ドデシルメチレン、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、1,2-フェニレン、メチレン-1,4-フェニレン-メチレン、エチレン-1,4-フェニレン-エチレン等が挙げられる。
【0024】
R2は、好ましくはメチレン、エチレン、トリメチレン、1,2-プロピレン、テトラメチレン、2-メチル-1,2-プロピレン、1,1-ジメチルエチレン、ペンタメチレン、1-エチル-1,3-プロピレン、1-メチル-1,4-ブチレン、2-メチル-1,4-ブチレン、3-メチル-1,4-ブチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,3-シクロペンチレン、1,6-へキサメチレン、1,4-シクロヘキシレン、1-エチル-1,4-ブチレン、2-エチル-1,4-ブチレン、3-エチル-1,4-ブチレン、1-メチル-1,5-ペンチレン、2-メチル-1,5-ペンチレン、3-メチル-1,5-ペンチレン、4-メチル-1,5-ペンチレン、ヘプタメチレン、1-メチル-1,6-ヘキシレン、2-メチル-1,6-ヘキシレン、3-メチル-1,6-ヘキシレン、4-メチル-1,6-ヘキシレン、5-メチル-1,6-ヘキシレン、1-エチル-1,5-ペンチレン、2-エチル-1,5-ペンチレン、3-エチル-1,5-ペンチレン、2-メチル-1,4-シクロヘキシレン、3-メチル-1,4-シクロヘキシレン、4-メチル-1,4-シクロヘキシレン、オクタメチレン、1-メチル-1,7-ヘプチレン、3-メチル-1,7-ヘプチレン、4-メチル-1,7-ヘプチレン、2-メチル-1,7-ヘプチレン、5-メチル-1,7-ヘプチレン、6-メチル-1,7-ヘプチレン、2-エチル-1,6-ヘキシレン、3-エチル-1,6-ヘキシレン、4-エチル-1,6-ヘキシレン、5-エチル-1,6-ヘキシレン、ノニルメチレン、デシルメチレン、ウンデシルメチレン、及びドデシルメチレンである。
【0025】
R2は、より好ましくはメチレン、エチレン、トリメチレン、1,2-プロピレン、テトラメチレン、2-メチル-1,2-プロピレン、1,1-ジメチルエチレン、ペンタメチレン、1-エチル-1,3-プロピレン、1-メチル-1,4-ブチレン、2-メチル-1,4-ブチレン、3-メチル-1,4-ブチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,3-シクロペンチレン、1,6-へキサメチレン、1,4-シクロヘキシレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、1-メチル-1,7-ヘプチレン、3-メチル-1,7-ヘプチレン、4-メチル-1,7-ヘプチレン、2-メチル-1,7-ヘプチレン、5-メチル-1,7-ヘプチレン、6-メチル-1,7-ヘプチレン、2-エチル-1,6-ヘキシレン、3-エチル-1,6-ヘキシレン、4-エチル-1,6-ヘキシレン、5-エチル-1,6-ヘキシレン、ノニルメチレン、デシルメチレン、ウンデシルメチレン、及びドデシルメチレンである。
【0026】
R2は、さらに好ましくは、メチレン、エチレン、トリメチレン、1,2-プロピレン、テトラメチレン、2-メチル-1,2-プロピレン、1,1-ジメチルエチレン、ペンタメチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,3-シクロペンチレン、1,6-へキサメチレン、1,4-シクロヘキシレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、1-メチル-1,7-ヘプチレン、3-メチル-1,7-ヘプチレン、4-メチル-1,7-ヘプチレン、2-メチル-1,7-ヘプチレン、5-メチル-1,7-ヘプチレン、6-メチル-1,7-ヘプチレン、2-エチル-1,6-ヘキシレン、3-エチル-1,6-ヘキシレン、4-エチル-1,6-ヘキシレン、5-エチル-1,6-ヘキシレン、ノニルメチレン、デシルメチレン、ウンデシルメチレン、及びドデシルメチレンである。
【0027】
式(1)中のZは、下記式(2):
【化6】
(式(2)中、Xは、a価の任意の連結基であり、R
3は、各々独立に任意の置換基であり、少なくとも1つは、下記式(3)で表される部分構造であり、cは、各々独立に1~4の整数であり、-O-が結合するベンゼン環の炭素原子を1位とするとき、2位又は6位の一方の炭素原子にR
3が結合し、そして2位又は6位の他方の炭素原子に水素原子、メチル基、又はエチル基が結合している。)
で表されるa価の部分構造である。ここでZは、中心フェノール部位を有する構造でも構わない。中心フェノール部位とは、重合によって多官能ポリフェニレンエーテルを得る際に重合反応の起点となる中心骨格を意味し、NMR(核磁気共鳴)、質量分析等の手法で多官能ポリフェニレンエーテルを解析することにより、その構造を同定できる。
【0028】
式(2)中のaは、式(1)で表される構造と同様の整数であってよく、式(1)で表される構造と同じ整数であることが好ましい。式(2)中の中心フェノール部位において、a個の各部分構造は同じ構造であってもよいし、異なってもよい。a価の部分構造は、式(2)中の-O-が結合するベンゼン環の炭素原子を1位とし、2位又は6位の一方の炭素原子に式(3)で表されるR3基が結合し、2位又は6位の他方の炭素原子に水素原子、メチル基又はエチル基が結合していることが好ましい。2位及び6位の炭素原子の各々に、炭化水素基又は式(3)で表される基が結合する構造であってもよい。
【0029】
式(2)中、cは、各々独立に1~4の整数であり、好ましくは2~3である。
【0030】
式(2)中のXは、a個の部分構造を、当該Xを介して連結するa価の基であり、例えば、鎖式炭化水素基、環式炭化水素基等の炭化水素基;窒素、リン、ケイ素等の原子;もしくはこれらを組み合わせた基;等が挙げられる。一態様において、Xは、単結合を除く連結基であってもよい。上記Xとしては、例えば、単結合又はエステル結合を介して、R3が結合しているベンゼン環に結合しているa価のアルキル骨格、アリール骨格あるいは複素環骨格等が挙げられる。
【0031】
ここで、上記アルキル骨格としては、特に制限されないが、例えば、炭素数1~6の少なくともa個に分岐した鎖式炭化水素(例えば鎖式飽和炭化水素)の分岐末端が、R3が結合しているベンゼン環に直接結合する骨格(a個の分岐末端のうち少なくとも1つにベンゼン環が結合していればよく、ベンゼン環が結合しない分岐末端があってもよい。)等が挙げられる。上記アリール骨格としては、特に制限されないが、例えば、フェニル基、メシチレン基、2-ヒドロキシ-5-メチル-1,3-フェニレン基が、単結合又はアルキル鎖を介して、R3が結合しているベンゼン環に結合する骨格等が挙げられる。さらに、上記複素環骨格としては、特に制限されないが、例えば、トリアジン環が単結合又はアルキル鎖を介して、R3が結合しているベンゼン環に結合する骨格等が挙げられる。
【0032】
式(2)中のR
3は、各々独立に任意の置換基であり、cは各々独立に1~4の整数である。R
3としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基等の炭素数1~8の直鎖アルキル基、又は下記式(3):
【化7】
(式(3)中、R
6は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基であり、R
7は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、dは、各々独立に、0又は1であり、そしてR
8は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基のいずれかである。)
で表される部分構造を有する基等が挙げられる。R
3のうち少なくとも1つは、式(3)の部分構造であっても構わない。
【0033】
式(3)中、R6、R7及びR8の各々において、置換基としては、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0034】
上記式(3)で表される基は、好ましくは、2級及び/又は3級炭素を含む基であり、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチル-2-ブチル基、及び2,2-ジメチル-2-プロピル基、並びにこれらの末端にフェニル基をさらに有する構造等が挙げられる。より好ましくは、tert-ブチル基である。
【0035】
式(1)中のYは、各々独立に下記式(4):
【化8】
(式(4)中、R
4は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子のいずれかであり、2つのR
4は、同時に水素原子ではなく、また、一方が上記式(3)で表される部分構造、もう一方が水素原子、メチル基、又はエチル基のいずれかである組み合わせでもなく、そしてR
5は、各々独立に水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子のいずれかである。)
の構造を有する2価の連結基(置換基のフェノールユニット)である。
【0036】
式(4)中、R4は、好ましくは、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和又は不飽和の炭化水素基である。R4は、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、ビニル基、アリール基、エチニル基、及びプロパルギル基からなる群から選ばれる基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0037】
式(4)中、R5は、好ましくは、水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~6の飽和又は不飽和の炭化水素基である。R5は、さらに好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、及びn-プロピル基からなる群から選ばれる基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基である。R4及びR5の各々において、置換基としては、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0038】
上記変性ポリフェニレンエーテルは、例えば、式(5):
【化9】
(式(5)中、R
4及びR
5は、例えば、式(4)で表される基と同様であってよく、式(4)で表される基と同じであることが好ましい。)で表される一価のフェノール化合物と、以下の式(6):
【化10】
(式(6)中、X、R
3、a、及びcは、例えば、式(2)で表される構造と同様であってよく、式(2)で表される構造と同じであることが好ましい。Xに結合するa個の部分構造は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。)で表されるa価のフェノール化合物(中心フェノール部位)とを、共重合し、変性反応をして得られる。
【0039】
式(5)で表される一価のフェノール化合物としては、例えば、o-クレゾール、2,6-ジメチルフェノール、2-エチルフェノール、2-メチル-6-エチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-n-プロピルフェノール、2-メチル-6-クロルフェノール、2-メチル-6-ブロモフェノール、2-メチル-6-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-ブロモフェノール、2-メチル-6-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-クロルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、2-フェニルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ビス-(4-フルオロフェニル)フェノール、2-メチル-6-トリルフェノール、2,6-ジトリルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,5-ジエチルフェノール、2-メチル-5-エチルフェノール、2-エチル-5-メチルフェノール、2-アリル-5-メチルフェノール、2,5-ジアリルフェノール、2,3-ジエチル-6-n-プロピルフェノール、2-メチル-5-クロルフェノール、2-メチル-5-ブロモフェノール、2-メチル-5-イソプロピルフェノール、2-メチル-5-n-プロピルフェノール、2-エチル-5-ブロモフェノール、2-メチル-5-n-ブチルフェノール、2,5-ジ-n-プロピルフェノール、2-エチル-5-クロルフェノール、2-メチル-5-フェニルフェノール、2,5-ジフェニルフェノール、2,5-ビス-(4-フルオロフェニル)フェノール、2-メチル-5-トリルフェノール、2,5-ジトリルフェノール、2,6-ジメチル-3-アリルフェノール、2,3,6-トリアリルフェノール、2,3,6-トリブチルフェノール、2,6-ジ-n-ブチル-3-メチルフェノール、2,6-ジメチル-3-n-ブチルフェノール、2,6-ジメチル-3-t-ブチルフェノール等が挙げられる。
【0040】
上記一価のフェノール化合物の中でも、特に、安価であり入手が容易であるため、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノールが好ましく、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノールがより好ましい。なお、上記一価のフェノール化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記一価のフェノール化合物としては、例えば、2,6-ジメチルフェノールと2,6-ジエチルフェノールとを組み合わせて使用する方法、2,6-ジメチルフェノールと2,6-ジフェニルフェノールとを組み合わせて用いる方法、2,3,6-トリメチルフェノールと2,5-ジメチルフェノールとを組み合わせて使用する方法、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとを組み合わせて用いる方法等が挙げられる。このとき、組み合わせるフェノール化合物の混合比は任意に選択できる。
【0042】
また、使用するフェノール化合物には、製造の際の副産物として含まれ得る、少量のm-クレゾール、p-クレゾール、2,4-ジメチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール等が含まれていてもよい。
【0043】
式(6)で表されるようなa価のフェノール化合物は、対応する一価のフェノール化合物と、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン等)、又はジハロゲン化脂肪族炭化水素との反応や、対応する一価のフェノール化合物同士の反応等により、工業的に有利に製造できる。
【0044】
式(6)で表される2価フェノール類の例としては、(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール、3,3’-ジメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール、3,3’,5,5’-テトラメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、2,3,3’,5,5’-ペンタメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、2,3’,5,5’-テトラメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、2,2’,5,5’-テトラメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、2,2’,3,5,5’-ペンタメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、5,5’-ジ-t-ブチル-2,2’-ジメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール、3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジメチル(1,1’-ビフェニル)-4,4-ジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
式(6)で表される多価フェノール化合物の例としては、4,4’-(プロパン-2,2’-ジイル)ジフェノール、4,4’-(プロパン-2,2’-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-メチレンビス(2-メチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-(プロパン-2,2’-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-(プロパン-2,2’-ジイル)ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-(プロパン-1,1’-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-(ブタン-1,1’-ジイル)ビス(2-(t-ブチル)-5-メチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(2-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシ-3-エトキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルエチルフェノール)、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、2,2’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(3,5,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[4-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]-ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エチル]-4-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-エチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-6-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)メチル]-6-メチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、2,4-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、3,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,2-ベンゼンジオール、4,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,4,6-トリス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,4,6-トリス[(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,2’-メチレンビス[6-[(4/2-ヒドロキシ-2,5/3,6-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4/2-ヒドロキシ-2,3,5/3,4,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシフェニル)メチル]-6-メチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、6,6’-メチレンビス[4-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,2,3-ベンゼントリオール]、1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(4-ヒドロキシ-2-メチル-5-シクロヘキシルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メチル]フェノール]、4,4’,4’’,4’’’-(1,2-エタンジイリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’,4’’,4’’’-(1,4-フェニレンジメチリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
多価フェノール化合物におけるフェノール性水酸基の数は2個以上であれば特に制限はないが、フェノール性水酸基が多くなると重合時の分子量変化が大きくなる可能性があるため、好ましくは2~6個、より好ましくは2~4個である。
【0047】
特に好ましい多価フェノール化合物は、4,4’-(プロパン-2,2’-ジイル)ジフェノール、4,4’-(プロパン-2,2’-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-メチレンビス(2-メチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-(プロパン-2,2’-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-(プロパン-2,2’-ジイル)ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-(プロパン-1,1’-ジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-(ブタン-1,1’-ジイル)ビス(2-(t-ブチル)-5-メチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’,4’’,4’’’-(1,4-フェニレンジメチリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、および1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタンである。
【0048】
本実施形態の変性ポリフェニレンエーテルは、式(7):
【化11】
(式(7)中、eは1~100の任意の整数である。R
4及びR
5は、例えば、式(4)で表される基と同等であってよく、式(4)と表される基と同じであることが好ましい。)
で表される単官能ポリフェニレンエーテルの変性物を含んでいても構わない。
【0049】
本実施形態の変性ポリフェニレンエーテルの変性率は変性前のポリフェニレンエーテルと変性ポリフェニレンエーテルの水酸基の量変化から算出することができる。変性率は、特に限定されないが、高変性率であることが好ましい。高変性率であると、基板材料への適用工程において、硬化させる際に架橋密度を高くすることができ、誘電特性に優れた硬化物が得られる傾向にある。具体的には、%以上が好ましい。より好ましくは%以上である。
【0050】
本実施形態における変性ポリフェニレンエーテルの数平均分子量(以下、「Mn」と記載)は、好ましくは500~15,000であり、より好ましくは1,000~10,000であり、さらに好ましくは2,000~8,000である。Mnが上記分子量範囲内であることにより、基板材料への適用工程においてワニスを作成する溶媒に溶解させた際の流動性がより向上し、基板材料適用時の加工性を確保することができる。
【0051】
また、変性ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量(以下、「Mw」と記載)/Mnで表される分子量分布は、好ましくは1.1~5.0であり、より好ましくは1.2~4.0であり、さらに好ましくは1.3~3.0である。なお、上記において、Mn及びMwは、GPCを用いたポリスチレン換算分子量を意味する。
【0052】
《変性ポリフェニレンエーテルの製造方法》
本開示における一実施形態は、以下の工程:
ポリフェニレンエーテル、塩素を含む変性基原料、触媒、アミン、及び溶媒を含む溶液中で前記ポリフェニレンエーテルの変性反応を行う変性反応工程;ならびに
回収した変性ポリフェニレンエーテルの乾燥工程;
を含み、前記乾燥工程において、乾燥を2回以上に分けることを特徴とする変性ポリフェニレンエーテルの製造方法である。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0053】
〈ポリフェニレンエーテルを製造する工程〉
変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、変性反応工程の前に、変性基原料と反応させるためのポリフェニレンエーテルを製造する工程を含んでもよい。この工程で製造されるポリフェニレンエーテルは、下記式(8):
【化12】
(式(8)中、Z、Y、n、及びaは、例えば、式(1)で定義したものと同様であってよく、式(1)で定義したものと同じであることが好ましい。)
で表される。
【0054】
ポリフェニレンエーテルは、既知の方法で製造することができ、例えば、公知の重合法や再分配法によって製造することができる。重合法で製造する場合、溶液法、スラリー法いずれの方法でもよいが、式(8)の構造を含むポリフェニレンエーテルの割合を多くするためには、溶液法が好ましい。
【0055】
重合溶媒はポリフェニレンエーテルを溶解させることができる溶媒であれば、特に限定されない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン(o-、m-、p-の各異性体を含む)、エチルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素やクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ニトロベンゼンのようなニトロ化合物等が挙げられる。
【0056】
重合反応において、重合触媒を用いてもよい。重合触媒は、一般的にポリフェニレンエーテルの製造に用いることが可能な公知の触媒系を使用できる。例えば、銅化合物とアミン系化合物からなる触媒系、マンガン化合物とアミン系化合物からなる触媒系、コバルト化合物とアミン化合物からなる触媒系等が挙げられる。好適に使用される重合触媒は、触媒の構成成分として銅化合物、ハロゲン化合物ならびにアミン化合物からなる触媒等が挙げられる。さらに、従来から重合活性に向上効果を有することが知られている界面活性剤を添加することについては、何ら制限されない。
【0057】
ポリフェニレンエーテルの重合における酸素含有ガスとしては、純酸素のほか、酸素と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの、空気、さらには空気と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの等が使用できる。
【0058】
重合温度は特に限定されないが、反応を効率良く進行させ、反応選択性の低下や高分子量成分の生成を防ぐという観点から、0~60℃の範囲が好ましく、10~50℃の範囲がより好ましい。
【0059】
重合反応の終了後、ポリフェニレンエーテルは、既知の任意の方法で後処理することができる。通常、塩酸や酢酸等の酸、又はエチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩等を反応液に加えて、触媒を失活させる。また、ポリフェニレンエーテルの重合により生じる二価フェノール体の副生物を除去処理する方法も、従来既知の方法を用いて行うことができる。触媒を失活させた化合物を抽出するため、水を添加し、有機相と水相に溶液分離を行った後、水相を除去することで、有機相から触媒を除去してもよい。
【0060】
上記有機相の溶媒を減圧下において留去する方法、又は上記有機相をアルコール類の貧溶媒に滴下し沈殿させる方法によって、ポリフェニレンエーテルを得ることができる。再沈殿に用いることができる貧溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、n-ヘキサン等が挙げられ、好ましくはメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール等が挙げられる。なお、本工程(ポリフェニレンエーテルを回収する工程)を省略し、以下に記載する変性反応工程を続けて行ってもよい。
【0061】
ポリフェニレンエーテルを再分配法で製造する場合には、公知の反応条件に定められた条件に従い製造することが可能である。例えば、ポリフェニレンエーテルは、米国特許第3496236号、及び米国特許第5880221号に記載されている方法によって製造することができる。
【0062】
〈変性反応工程〉
変性反応工程では、ポリフェニレンエーテル、変性基原料、触媒、アミン、及び溶媒を含む溶液中でポリフェニレンエーテルの水酸基の変性反応を行う。具体的には、例えば、ポリフェニレンエーテル、変性基原料、触媒、及びアミンを用い、ポリフェニレンエーテルの水酸基に変性基を導入してもよく、他の方法で変性基を導入してもよい。
【0063】
(塩素を含む変性基原料)
塩素を含む変性基原料は、カルボン酸塩化物であることが好ましい。中でも好ましいカルボン酸塩化物は、式(9):
【化13】
(式(9)中、R
1、R
2、及びbは、例えば、式(1)で定義したものと同様であってよく、式(1)で定義したものと同じであることが好ましい。)
で表されるカルボン酸塩化物である。
【0064】
カルボン酸塩化物の使用量は、十分な変性率の化合物を得るという観点から、ポリフェニレンエーテル中の水酸基1モルに対して、1.05倍モル以上であることが好ましい。塩素成分を含む不純物の量を減少させる観点から、カルボン酸塩化物の使用量は、ポリフェニレンエーテル中の水酸基1モルに対して、1.2~4.0倍モルであることがより好ましく、さらに好ましくは、1.5~4.0倍モル、特に好ましくは、2.0~4.0倍モルである。
【0065】
(アミン)
ハロゲンを含む変性基原料(例えば、カルボン酸ハロゲン化物)を用いる場合、共存させるアミンは、副反応を防止するという観点から、3級アミンであることが好ましい。アミンの使用量は、十分な変性率の化合物を得るという観点及び反応後の不純物の量を減少させる観点から、ポリフェニレンエーテル中の水酸基1モルに対して、1.2~6.0倍モルが好ましく、より好ましくは、1.5~6.0倍モル、さらに好ましくは2.0~6.0倍モル、特に好ましくは4.0~6.0倍モルである。高変性率を達成する観点から、カルボン酸ハロゲン化物とアミンのモル比は、アミン/カルボン酸ハロゲン化物が1以上であることが好ましく、より好ましくは、アミン/カルボン酸ハロゲン化物は、1~6である。
【0066】
共存させるアミンの具体例としては、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルメチルアミン、ジ-n-ブチルエチルアミン、ジ-n-プロピルメチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジ-n-プロピルエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-t-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチルメチレンジアミン、テトラエチルメチレンジアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等が挙げられる。
【0067】
アミンは、好ましくは、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルメチルアミン、ジ-n-ブチルエチルアミン、ジ-n-プロピルメチルアミン、ジ-n-プロピルエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-t-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチルメチレンジアミン、テトラエチルメチレンジアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等である。
【0068】
アミンは、より好ましくは、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-t-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルメチレンジアミン、テトラエチルメチレンジアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等である。
【0069】
(触媒)
触媒は、好ましくは、ジメチルアミノピリジンである。変性基原料がカルボン酸塩化物である場合、触媒がジメチルアミノピリジンであることが、より好ましい。また、アミンとジメチルアミノピリジンのモル比は、アミン/ジメチルアミノピリジン=20/1~300/1であることが好ましく、より好ましくは、50/1~300/1である。
【0070】
(溶媒)
変性ポリフェニレンエーテルの製造に使用する溶媒は、ポリフェニレンエーテルと変性基原料の反応に対して不活性であり、ポリフェニレンエーテルを溶解させることができる溶媒であれば、特に限定されない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン(o-、m-、p-の各異性体を含む)、エチルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素やクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ニトロベンゼンのようなニトロ化合物等が挙げられる。
【0071】
(反応温度)
反応温度は特に制限はなく、室温から還流条件の範囲であればいずれの条件でも構わない。反応時間も特に制限されない。
【0072】
〈変性ポリフェニレンエーテルを回収する工程〉
変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、変性反応後の溶液から変性ポリフェニレンエーテルを回収する工程を含む。具体的には、例えば、変性ポリフェニレンエーテルを含む溶液の溶媒を、減圧下において留去し、変性ポリフェニレンエーテルを固形物として得ることができ、又は、変性ポリフェニレンエーテルは、アルコール類の貧溶媒に滴下沈殿させることで得ることもできる。
【0073】
変性ポリフェニレンエーテルを含む溶液は、変性反応で生成した塩を除去していることが好ましい。変性反応で生成した塩を除去することで、水または水溶液で洗浄して不純物を除去する際の有機相と水相の溶液分離性が向上する。変性反応で生成した塩は、例えばアミン塩等の副生成物が挙げられる。アミン塩等の副生物等は、ろ過により除去されることが好ましい。
【0074】
再沈殿に用いることができる貧溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、n-ヘキサン等が挙げられ、好ましくはメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール等が挙げられる。
【0075】
〈変性ポリフェニレンエーテルを乾燥する工程〉
変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、回収した変性ポリフェニレンエーテルの乾燥工程を含む。乾燥工程は、乾燥温度50℃~115℃で1次乾燥を行う工程、及び乾燥温度120℃~250℃で2次乾燥を行う工程を含み、塩素成分を含む不純物を除去する。
【0076】
上記の通り、乾燥工程において1次乾燥と2次乾燥を行うことで、処理工程での変性率変化を防止しつつ、塩素成分除去の効果を高めることができる。
【0077】
上記観点から、1次乾燥における乾燥温度は、好ましくは50℃~110℃、より好ましくは55℃~105℃、さらに好ましくは60℃~100℃である。2次乾燥における乾燥温度は、好ましくは125℃~240℃、より好ましくは130℃~230℃、さらに好ましくは135℃~200℃である。
【0078】
1次乾燥及び2次乾燥の乾燥時間は、特に制限されないが、不純物を除去し、分子量増加を抑制する観点から、それぞれ15分~72時間が好ましく、より好ましくは15分~48時間、さらに好ましくは30分~36時間である。
【0079】
各回の乾燥雰囲気は常圧状態でも減圧状態でもよいが、不純物除去の効果を高める観点から、減圧状態が好ましく、そして1次乾燥工程及び/又は2次乾燥工程が減圧状態で行われることがより好ましい。乾燥雰囲気は、乾燥の各回で同じ状態でもよく、異なる状態でもよく、また、減圧度も各回で同じであっても、異なっていてもよい。
【0080】
変性ポリフェニレンエーテルは、静置、回転あるいは撹拌、ベルトコンベアー等での移動等いずれの方法で乾燥してもよい。乾燥の各回で同じ方法でも、異なる方法でもよい。
【0081】
変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、上述に例示した方法に限定されることなく、上述の、ポリフェニレンエーテルを製造する工程、変性反応工程、変性反応で生成した塩を除去する工程、回収工程、乾燥工程を適宜調整してよい。
【実施例0082】
次に、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0083】
〈塩素量の測定方法〉
測定装置は株式会社リガクのZSX PrimusIIを使用した。
試料約1gでタブレットを成型し定性分析を実施した。タブレット成型では、20mmφポリ塩化ビニル(略して「塩ビ」)リングを使用し、試料径と試料重量を計測した。分析終了後のデータ解析はSQX計算で行い、試料径と試料重量から算出した厚み補正値、バランス成分としてポリフェニレンエーテル(C:H:O=6:9:1)を用いて試料中の塩素量を算出した。
【0084】
〈トルエン量の測定方法〉
試料と内部標準物質をクロロホルムに溶解して(試料濃度:1.0wt%)、ガスクロマトグラフにて測定を行った。トルエンの検量線は1,000ppm-100,000ppmの範囲と1,000ppm-10,000ppmの範囲の2種類作成し、サンプル濃度により使い分けた。測定装置、測定条件は以下のとおりである。
測定装置は株式会社島津製作所のGC-2030、カラムはアジレント・テクノロジー株式会社製のカラム(種類:DB-1、長さ:30.0m、内径:0.25mm、液相の膜厚:1.00μm)を使用した。
測定は、気化室温度250℃、サンプル注入量1.0μL、注入モードはスプリット比1:40とした。キャリアガスはヘリウムを使用した。全流量を44.0mL/min、カラム流量1.0mL/minとし、制御モードは線速度25.3cm/secとした。
昇温条件は45℃で5分保持、20℃/分で300℃まで昇温、300℃で15分保持した。検出器はFID検出器を使用し、検出器温度300℃、メイクアップガス(ヘリウム)流量24.0mL/min、水素流量32.0mL/min、空気流量200.0mL/minとした。
【0085】
〈変性率の測定方法〉
変性ポリフェニレンエーテルの変性率は、特表2004-502849(特許文献3)に記載の方法に従い、二硫化炭素中IR測定による変性反応前のポリフェニレンエーテルと変性反応後の変性ポリフェニレンエーテルの水酸基の量変化から算出した。
【0086】
〈分子量及び分子量分布の測定方法〉
試料をクロロホルムに溶解して(試料濃度:0.1wt%)高速液体クロマトグラフにて測定を行った。標準ポリスチレンを使用した検量線により分子量及び分子量分布を計算した。測定装置、測定条件は以下の通りである。
測定装置は株式会社島津製作所の高速液体クロマトグラフ(デガッサ:DGU-20A3R、送液ユニット:LC-20AD、オートサンプラ:SIL-20AHT、UV-VIS検出器:SPD-20A、カラムオーブン:CTO-20A)を使用した。
カラムは東ソー製のカラム(ガードカラム:TSKgel guardcolumn HHR-H(内径:6mm、長さ:4cm)、カラム:TSKgel G5000HHR、TSKgel G3000HHR、TSKgel G1000HHR(カラムはいずれも粒子径:5μm、内径:7.8mm、長さ:30cm))の4本を直列接続して使用した。
測定は試料溶液を60μL注入して、溶媒クロロホルム、流量1.0mL/min、カラムオーブン温度40℃の条件下行われた。検出波長は、UV254nm(D2ランプ、温度35℃)とした。標準ポリスチレンは、分子量(Mp)が364,000、217,100、91,450、56,600、22,290、9,820、4,910、3,050、1,250、580、100のものを用いた。
【0087】
〈固形分濃度(質量%)の測定方法〉
固形分は、変性ポリフェニレンエーテル溶液を所定温度、時間、圧力で乾燥後に残存している固形物の重量から算出した値であり、以下の方法で測定した。
【0088】
変性ポリフェニレンエーテルを含む溶液約1gを、事前に重量を測定したアルミニウム皿(重量:a)に量り取った(A:重量b)。秤量後の変性ポリフェニレンエーテル溶液が入ったアルミニウム皿(A)を真空乾燥機に入れて110℃、1時間、減圧乾燥を行った。乾燥終了後、Aを取り出し、計量を行った(重量c)。下式(1)より固形分を算出した。なお、重量a、bは乾燥前に測定、重量cは乾燥後に測定したものである。
固形分濃度(質量%)=(c-a)/(b-a)×100 (1)
ここで、重量aは、アルミニウム皿の重量(g)であり、重量bは、乾燥前のA(アルミニウム皿+変性ポリフェニレンエーテル含む溶液)の重量(g)であり、重量cは、乾燥後のA(アルミニウム皿+残存している固形物)の重量(g)である。
【0089】
〈変性ポリフェニレンエーテルの製造方法〉
変性ポリフェニレンエーテルの製造方法において使用した溶媒、試薬類を以下に示す。
【0090】
(溶媒)
以下の購入品を使用した。
トルエン:富士フイルム和光純薬(株)製 特級
脱水トルエン:富士フイルム和光純薬(株)製
メタノール:富士フイルム和光純薬(株)製 特級
水:イオン交換水
【0091】
(ポリフェニレンエーテルを製造する工程で用いた試薬)
以下の購入品を使用した。
酸化第一銅:富士フイルム和光純薬(株)製
臭化水素酸:富士フイルム和光純薬(株)製 特級
N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン:東京化成工業(株)製 1級
ジメチル-n-ブチルアミン:東京化成工業(株)製 特級
ジ-n-ブチルアミン:富士フイルム和光純薬(株)製 特級
エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物:(株)同仁化学研究所製
2,6-ジメチルフェノール:旭化成(株)製
1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン:(株)ADEKA製 AO-30
【0092】
(変性反応工程で用いた試薬)
以下の購入品を使用した。
ジメチルアミノピリジン:富士フイルム和光純薬(株)製 特級
トリエチルアミン:富士フイルム和光純薬(株)製 特級
塩化メタクリロイル:富士フイルム和光純薬(株)製 1級
【0093】
[製造例1]
反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.5リットルのジャケット付き反応器に、予め調整した0.1026gの酸化第一銅及び0.7712gの47%臭化水素の混合物と、0.2471gのN,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、3.6407gのジメチル-n-ブチルアミン、1.1962gのジ-n-ブチルアミン、894.04gのトルエン、73.72gの2,6-ジメチルフェノール、26.28gの1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタンを入れた。次いで激しく攪拌しながら反応器へ1.05L/分の速度で空気をスパージャーより導入し始めると同時に、重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。空気を導入し始めてから160分後、空気の通気を停止し、この重合混合物に1.1021gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物を100gの水溶液として添加し、70℃に温めた。70℃にて2時間保温し触媒抽出と副生したジフェノキノン除去処理を行った後、混合液をシャープレス社製遠心分離機に移し、未変性ポリフェニレンエーテル溶液(有機相)と、触媒金属を移した水相とに分離した。得られた未変性ポリフェニレンエーテル溶液をジャケット付き濃縮槽に移し、未変性ポリフェニレンエーテル溶液中の固形分が55質量%になるまでトルエンを留去させて濃縮した。次いで、230℃に設定したオイルバスとロータリーエバポレーターを用いて更にトルエンを留去し、固形分を乾固させて未変性ポリフェニレンエーテルを得た。
【0094】
[製造例2]
300mL3つ口フラスコに撹拌子を入れ、主管に三方コックを付けたジムロート冷却器を設置し、一方の側管に温度計を差したゴム栓を取り付けた。もう一方の側管から製造例1で得た未変性ポリフェニレンエーテル組成物27.0gとジメチルアミノピリジン0.80gを投入し、ゴム栓を取り付けた。フラスコ内部を窒素置換した後、マグネチックスターラーで内部の攪拌をしながらシリンジを用いてトルエン188.3gで溶解させ、次いでトリエチルアミン13.65gを加えた。その後塩化メタクリロイル6.98gをシリンジに採取し、ゴム栓から系内に滴下した。滴下終了後から3時間常温で撹拌を継続した後にオイルバスでフラスコを加熱し、還流状態で反応を継続した。還流開始から2時間経過した段階で加熱を停止、常温に戻った後にメタノール2.11gを加えて反応を停止した。次いで当該反応液を固形分濃度が22質量%となるまで濃縮した。この後、副生したトリエチルアミン塩酸塩をろ別して変性ポリフェニレンエーテルを含む溶液を得た。メタノール(溶液の5倍重量)中に撹拌しながら滴下した。次いで、沈殿物をろ過し、ろ物を60℃において9時間減圧乾燥し、変性ポリフェニレンエーテルを得た。変性ポリフェニレンエーテルの塩素量は2780ppmであり、トルエン量は29000ppmであり、変性率は97%であり、Mnは2550であり、Mw/Mnは1.9であった。
【0095】
実施例1~16は製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルを使用した。
【0096】
[実施例1]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテル10.07gをアルミニウム皿に量り取り、穴を開けたアルミニウムでアルミニウム皿を覆った。事前に130℃に温調した乾燥機にアルミニウム皿を入れて、1時間減圧乾燥した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.80gであった。塩素量は2090ppmであり、トルエン量は5100ppmであり、変性率は98%であり、Mnは2730であり、Mw/Mnは2.0であった。
【0097】
[実施例2]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.07gとし、乾燥時間を3時間とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.76gであった。変性率は98%であり、塩素量は1450ppmであり、トルエン量は3100ppmであり、Mnは2530であり、Mw/Mnは1.9であった。
【0098】
[実施例3]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.09gとし、乾燥時間を5時間とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.75gであった。塩素量は1600ppmであり、トルエン量は1200ppmであり、変性率は98%であり、Mnは2550であり、Mw/Mnは1.9であった。
【0099】
[実施例4]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.03gとし、乾燥温度を140℃とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.72gであった。塩素量は1840ppmであり、トルエン量は4200ppmであり、変性率は98%であり、Mnは2810であり、Mw/Mnは1.8であった。
【0100】
[実施例5]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.05gとし、乾燥温度を140℃、乾燥時間を3時間とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.68gであった。塩素量は1140ppmであり、トルエン量は1500ppmであり、変性率は98%であり、Mnは2890であり、Mw/Mnは1.8であった。
【0101】
[実施例6]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.11gとし、乾燥温度を140℃、乾燥時間を5時間とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.76gであった。塩素量は870ppmであり、トルエン量は1300ppmであり、変性率は98%であり、Mnは2850であり、Mw/Mnは1.8であった。
【0102】
[実施例7]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.04gとし、乾燥温度を150℃とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.68gであった。塩素量は640ppmであり、トルエン量は2600ppmであり、変性率は98%であり、Mnは2610であり、Mw/Mnは1.9であった。
【0103】
[実施例8]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.04gとし、乾燥温度を150℃、乾燥時間を3時間とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.66gであった。塩素量は470ppmであり、トルエン量は1300ppmであり、変性率は99%であり、Mnは2640であり、Mw/Mnは1.9であった。
【0104】
[実施例9]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.02gとし、乾燥温度を150℃、乾燥時間を5時間とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.61gであった。塩素量は600ppmであり、トルエン量は330ppmであり、変性率は99%であり、Mnは2440であり、Mw/Mnは2.0であった。
【0105】
[実施例10]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.07gとし、乾燥温度を160℃とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.69gであった。塩素量は800ppmであり、トルエン量は2100ppmであり、変性率は99%であり、Mnは2480であり、Mw/Mnは2.1であった。
【0106】
[実施例11]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.16gとし、乾燥温度を160℃、乾燥時間を3時間とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.71gであった。塩素量は310ppmであり、トルエン量は460ppmであり、変性率は99%であり、Mnは2550であり、Mw/Mnは2.1であった。
【0107】
[実施例12]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.11gとし、乾燥温度を160℃、乾燥時間を5時間とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.68gであった。塩素量は290ppmであり、トルエン量は340ppmであり、変性率は99%であり、Mnは2560であり、Mw/Mnは2.1であった。
【0108】
[実施例13]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.03gとし、乾燥温度を180℃とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.63gであった。塩素量は590ppmであり、トルエン量は1800ppmであり、変性率は99%であり、Mnは2640であり、Mw/Mnは2.0であった。
【0109】
[実施例14]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.08gとし、乾燥温度を180℃、乾燥時間を3時間とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.64gであった。塩素量は290ppmであり、トルエン量は320ppmであり、変性率は99%であり、Mnは2800であり、Mw/Mnは2.2であった。
【0110】
[実施例15]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を9.98gとし、乾燥温度を180℃、乾燥時間を5時間とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.52gであった。塩素量は250ppmであり、トルエン量は280ppmであり、変性率は99%であり、Mnは2840であり、Mw/Mnは2.1であった。
【0111】
[実施例16]
製造例2で得た変性ポリフェニレンエーテルの量を10.08gとし、乾燥温度を190℃、乾燥時間を100分とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.69gであった。塩素量は250ppmであり、トルエン量は1100ppmであり、変性率は98%であり、Mnは3130であり、Mw/Mnは2.0であった。
【0112】
[製造例3]
300mL3つ口フラスコに撹拌子を入れ、主管に三方コックを付けたジムロート冷却器を設置し、一方の側管に温度計を差したゴム栓を取り付けた。もう一方の側管から製造例1で得た未変性ポリフェニレンエーテル組成物26.42gとジメチルアミノピリジン0.84gを投入し、ゴム栓を取り付けた。フラスコ内部を窒素置換した後、マグネチックスターラーで内部の攪拌をしながらシリンジを用いて脱水トルエン214.0gで溶解させ、次いでトリエチルアミン14.23gを加えた。その後塩化メタクリロイル7.10gをシリンジに採取し、ゴム栓から系内に滴下した。滴下終了後から50℃で攪拌、撹拌開始から3時間経過した段階で加熱を停止した。常温に戻った後にメタノール2.25gを加えて反応を停止した。次いで当該反応液を固形分濃度が22質量%となるまで濃縮した。この後、副生したトリエチルアミン塩酸塩をろ別して変性ポリフェニレンエーテルを含む溶液を得た。メタノール(溶液の5倍重量)中に撹拌しながら滴下した。次いで、沈殿物をろ過し、ろ物を110℃において1時間減圧乾燥し、変性ポリフェニレンエーテルを得た。変性ポリフェニレンエーテルの塩素量は3200ppmであり、トルエン量は27000ppmであり、変性率は97%であり、Mnは2120であり、Mw/Mnは2.3であった。
【0113】
実施例17は製造例3で得た変性ポリフェニレンエーテルを使用した。
【0114】
[実施例17]
製造例3で得た変性ポリフェニレンエーテルは9.95gをアルミニウム皿に量り取り、乾燥温度160℃、乾燥時間を3時間とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥終了後の変性ポリフェニレンエーテルは9.60gであった。塩素量は360ppmであり、トルエン量は530ppmであり、変性率は97%であり、Mnは2580であり、Mw/Mnは2.0であった。
【0115】
[比較例1]
製造例3に対して、ろ物10.15gをアルミニウム皿に量り取り、160℃において5時間減圧乾燥を行う変更を実行し、変性ポリフェニレンエーテルを7.71g得た。変性ポリフェニレンエーテルの塩素量は740ppmであり、トルエン量は1200ppmであり、変性率は94%であり、Mnは2620であり、Mw/Mnは2.2であった。
【0116】
以上の結果から、塩素を含む変性基原料、触媒、アミン存在下でポリフェニレンエーテルの変性反応を行い、回収した変性ポリフェニレンエーテルの乾燥工程として1次乾燥、2次乾燥を行うことで、塩素成分が低減し、変性率が低下しない、変性ポリフェニレンエーテルを得ることができた。
本発明の変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、残存塩素成分を低減させることができ、また再沈殿回数が少ないため、再沈操作を繰り返す方法と比較し、溶媒使用量を抑えることができ、変性ポリフェニレンエーテルの変性率の低下も少ない。また本発明に係る方法によれば、処理操作による水、金属成分等の新たな不純物の混入を回避することができる。そのため、基板材料への工程適用性をさらに向上させることができる。