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特開2023-135446アルミニウム展伸材およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135446
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】アルミニウム展伸材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/00 20060101AFI20230921BHJP
   C22F 1/043 20060101ALI20230921BHJP
   C22F 1/047 20060101ALI20230921BHJP
   C22F 1/05 20060101ALI20230921BHJP
   C22F 1/053 20060101ALI20230921BHJP
   C22F 1/057 20060101ALI20230921BHJP
   C22C 21/12 20060101ALI20230921BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20230921BHJP
   C22C 21/06 20060101ALI20230921BHJP
   C22C 21/10 20060101ALI20230921BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20230921BHJP
   C22F 1/04 20060101ALN20230921BHJP
【FI】
C22C21/00 Z
C22F1/043
C22F1/047
C22F1/05
C22F1/053
C22F1/057
C22C21/12
C22C21/00 L
C22C21/02
C22C21/06
C22C21/10
C22F1/00 682
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 683
C22F1/00 694B
C22F1/00 685Z
C22F1/00 694A
C22F1/00 623
C22F1/00 631A
C22F1/00 673
C22F1/00 651A
C22F1/00 651B
C22F1/00 641A
C22F1/00 630M
C22F1/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040668
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(72)【発明者】
【氏名】竹村 沙友理
(72)【発明者】
【氏名】水田 貴彦
(57)【要約】
【課題】アルミニウムサッシ屑を利用して各種アルミニウム合金の展伸材を製造できる技術を提供する。
【解決手段】アルミニウム展伸材は、予め決められた化学成分のSiとFeとCuとMgとを含有するアルミニウム合金で形成され、少なくともSiを0.46~0.54質量%含有し、Feを0.18~0.23質量%含有し、Cuを0.01~0.02質量%含有し、Mgを0.32~0.43質量%含有するアルミニウムサッシ屑によって構成される第1原料と、SiとFeとCuとMgの含有量が前記化学成分となるように調整するための第2原料と、不可避的不純物と、からなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた化学成分のSiとFeとCuとMgとを含有するアルミニウム合金で形成されたアルミニウム展伸材であって、
少なくともSiを0.46~0.54質量%含有し、Feを0.18~0.23質量%含有し、Cuを0.01~0.02質量%含有し、Mgを0.32~0.43質量%含有するアルミニウムサッシ屑によって構成される第1原料と、
SiとFeとCuとMgの含有量が前記化学成分となるように調整するための第2原料と、を溶解して形成されるアルミニウム展伸材。
【請求項2】
前記アルミニウム合金は、JIS2000系に属する、
請求項1に記載のアルミニウム展伸材。
【請求項3】
前記アルミニウム合金は、JIS3000系に属する、
請求項1に記載のアルミニウム展伸材。
【請求項4】
前記アルミニウム合金は、JIS4000系に属する、
請求項1に記載のアルミニウム展伸材。
【請求項5】
前記アルミニウム合金は、JIS5000系に属する、
請求項1に記載のアルミニウム展伸材。
【請求項6】
前記アルミニウム合金は、JIS6000系に属する、
請求項1に記載のアルミニウム展伸材。
【請求項7】
前記アルミニウム合金は、JIS7000系に属する、
請求項1に記載のアルミニウム展伸材。
【請求項8】
予め決められた化学成分のSiとFeとCuとMgとを含有するアルミニウム合金で形成されたアルミニウム展伸材の製造方法であって、
少なくともSiを0.46~0.54質量%含有し、Feを0.18~0.23質量%含有し、Cuを0.01~0.02質量%含有し、Mgを0.32~0.43質量%含有するアルミニウムサッシ屑によって構成される第1原料と、SiとFeとCuとMgの含有量が前記化学成分となるように調整するための第2原料とからなる原料を溶解して鋳造する鋳造工程と、
前記鋳造工程にて形成した鋳塊を展伸加工する展伸工程と、
を含むアルミニウム展伸材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム展伸材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の節約および二酸化炭素排出量削減のため、リサイクル材料の開発が注目されている。特許文献1には、アルミニウム合金のスクラップを原料として各種アルミニウム合金を製造することが開示されている。アルミニウム合金のスクラップからアルミニウム合金を製造する場合には、ボーキサイトから精製する場合に比べて省エネルギー効果が優れる。一方でスクラップの利用は製品加工中に付着した塗装等が不純物として混入するという弱点がある。
アルミニウムの市中屑として、缶や建材やPS版の検討事例が多く報告されているが、缶はCan to Canの風潮が強いこと、PS版はスクラップの数量が少ないことから、建材の解体スクラップの有効活用が注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-514556号公報
【0004】
しかしながら、アルミニウム建材の解体スクラップには、非アルミニウム元素が不可避的に含まれるため、目標の化学成分となるようにアルミニウム合金を製造することが困難であるという問題があった。具体的に、アルミニウム建材の解体スクラップには、ビス(Fe),クレセント(Zn),砂(Si)等の非アルミニウム元素が不可避的に含まれ、これらの元素の含有量を調整することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記課題にかんがみてなされたものであり、アルミニウム建材の解体スクラップとしてのアルミニウムサッシ屑を利用して各種アルミニウム合金の展伸材を製造できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
JIS Q14021ではリサイクル原料を「家庭から排出される材料、または製品のエンドユーザとしての商業施設、工業施設及び各種施設から本来の目的のためにはもはや使用できなくなった製品として発生する材料。これには、流通経路から戻される材料を含む。」のように定義している。アルミニウムサッシは、おもにJIS6063のアルミニウム合金で形成されている。アルミニウムサッシのスクラップであるアルミニウムサッシ屑は、JIS Q14021で定義されるリサイクル原料に該当する。アルミニウムサッシ屑の化学成分(以下、出発成分と表記する)は、少なくともSiを0.46~0.54質量%含有し、Feを0.18~0.23質量%含有し、Cuを0.01~0.02質量%含有し、Mgを0.32~0.43質量%含有するものであることが、成分分析およびその統計処理により分かっている。むろん、アルミニウムサッシ屑には、Al,Si,Fe,Cu,Mg以外の元素も含まれ得る。
【0007】
本発明の一態様のアルミニウム展伸材は、予め決められた目標の化学成分(以下、目標成分と表記する)を有するアルミニウム合金で形成されたものであり、アルミニウムサッシ屑によって構成される第1原料と第2原料とを溶解して形成されるものである。第1原料は出発成分を有するが、第1原料とともに成分調整のための第2原料を溶解することにより、目標成分を有するアルミニウム展伸材を製造することができる。
【0008】
例えば、アルミニウム展伸材の目標成分におけるSi含有量が、出発成分におけるSi含有量よりも小さければ、出発成分よりもSi含有量が小さい第2原料によってSiを希釈すればよい。反対に、アルミニウム展伸材の目標成分におけるSi含有量が、出発成分におけるSi含有量よりも大きければ、出発成分よりもSi含有量が大きい第2原料によってSiを濃化すればよい。Fe,Cu,Mgや他の元素についても同様に第2原料によって希釈または濃化することにより目標の目標成分とすることができる。
【0009】
ここで、本発明の第1原料は、アルミニウム展伸材を構成するアルミニウム合金のうちアルミニウムサッシ屑のみに由来する部分(重量部)を意味する。一方、第2原料は、アルミニウム展伸材を構成するアルミニウム合金のうちアルミニウムサッシ屑に由来しない残りの部分(重量部)を意味する。
【0010】
本発明のアルミニウム展伸材は、Al系の母合金や各種の純地金を溶解することにより製造される。本発明おいて、第1原料そのものがアルミニウム展伸材を製造する際の直接の母合金として溶解されてもよいし、アルミニウム展伸材を製造する際の直接の母合金のなかに第1原料を溶解して他の原料と配合することにより製造された母合金が含まれていてもよい。すなわち、本発明における“溶解”には、最終的にアルミニウム展伸材を製造する際の直接の溶解のみならず、第1原料が配合された母合金を製造する際の事前の溶解も含まれる。
【0011】
上述したように、第2原料は、アルミニウム展伸材を構成するアルミニウム合金のうちアルミニウムサッシ屑に由来しない残りの部分であり、純地金であってもよいし、再生塊であってもよいし、微細化剤等の添加剤であってもよい。再生塊とは、アルミニウムサッシ屑以外のリサイクル原料を再生することにより製造されたアルミニウム合金であり、各種アルミニウム合金を製造する工場内や工程内等において生じた材料から製造されてもよい。
【0012】
展伸加工は、圧延や押出や鍛造であってもよく、これらを2種以上組み合わせたものであってもよい。また、展伸加工は、熱間加工と冷間加工のいずれかまたは組み合わせであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルミニウムサッシ屑をリサイクルして各種アルミニウム合金の展伸材を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.アルミニウム展伸材について:
表1は、本発明のアルミニウム展伸材として製造可能なJIS2000系のアルミニウム合金の規格とそれらのおもな用途と化学成分(目標成分)を示す。
【表1】
【0015】
表2は、本発明のアルミニウム展伸材として製造可能なJIS3000系のアルミニウム合金の規格とそれらのおもな用途と化学成分(目標成分)を示す。
【表2】
【0016】
表3は、本発明のアルミニウム展伸材として製造可能なJIS4000系のアルミニウム合金の規格とそれらのおもな用途と化学成分(目標成分)を示す。
【表3】
【0017】
表4は、本発明のアルミニウム展伸材として製造可能なJIS5000系のアルミニウム合金の規格とそれらのおもな用途と化学成分(目標成分)を示す。
【表4】
【0018】
表5は、本発明のアルミニウム展伸材として製造可能なJIS6000系のアルミニウム合金の規格とそれらのおもな用途と化学成分(目標成分)を示す。
【表5】
【0019】
表6は、本発明のアルミニウム展伸材として製造可能なJIS7000系のアルミニウム合金の規格とそれらのおもな用途と化学成分(目標成分)を示す。
【表6】
【0020】
アルミニウムサッシ屑をリサイクルすることにより、表1~表6に示した各種規格のアルミニウム合金で形成されたアルミニウム展伸材を製造することができる。表1~表6に示したアルミニウム合金は、上限成分の第1原料のみを使用し、第2原料として上限成分のJIS1085のアルミニウム合金のみを使用した場合に、第1原料の配合率を20%以上とすることができるアルミニウム合金である。
【0021】
第1原料の配合率とは、アルミニウム展伸材を製造する際に溶解した第1原料の質量を、アルミニウム展伸材の全質量(第1原料の質量と第2原料の質量の総和)で除算した割合を意味する。上限成分の第1原料とは、Si,Fe,Cu,Mgの含有量が出発成分の含有量範囲の上限値(Si:0.54質量%,Fe:0.23質量%,Cu:0.02質量%,Mg:0.43質量%)の第1原料を意味する。上限成分のJIS1085のアルミニウム合金とは、Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Zn,Tiの含有量が合金規格の含有量範囲の上限値(Si:0.10質量%,Fe:0.12質量%,Cu:0.03質量%,Mn:0.02質量%,Mg:0.02質量%,Zn:0.03質量%,Ti:0.02質量%)となっているアルミニウム合金を意味する。
【0022】
表1~表6に示したアルミニウム合金は一例に過ぎず、他の規格のアルミニウム合金も本発明のアルミニウム展伸材となり得る。また、本発明において、20%未満の配合率で第1原料を配合してアルミニウム展伸材を製造してもよく、この場合に製造可能なアルミニウム合金の種類はより多岐に渡る。
【0023】
表1~表6に示した用途も一例に過ぎず、本発明のアルミニウム展伸材は例示しない他の用途に用いられてもよい。むろん、ある規格のアルミニウム合金として挙げられた用途が、別の規格のアルミニウム合金の用途として適用されてもよい。さらに、本発明のアルミニウム展伸材には、異種のアルミニウム合金を積層したクラッド材も含まれる。例えば、本発明のアルミニウム展伸材は、3000系のアルミニウム合金の心材と4000系のアルミニウム合金のろう材とを積層したブレージングシートであってもよい。この場合、心材とろう材の双方がアルミニウムサッシ屑を用いて製造されてもよいし、心材とろう材のいずれか一方がアルミニウムサッシ屑を用いて製造されていてもよい。
【0024】
2.配合例について:
以下、化学成分(出発成分)が中間成分となるアルミニウムサッシ屑で構成された第1原料を用いて各種のアルミニウム展伸材を製造する場合の配合例について説明する。中間成分の第1原料とは、Si,Fe,Cu,Mgの含有量が出発成分の含有量範囲のほぼ中間の値(Si:0.50質量%,Fe:0.21質量%,Cu:0.01質量%,Mg:0.38質量%)の第1原料を意味する。
【0025】
2.1.JIS2024の配合例:
中間成分の第1原料を90%の配合率で配合することにより、JIS2024のアルミニウム合金のアルミニウム展伸材を製造することができる。この場合、第1原料のみに由来するCu,Mn,Mgの含有量が、JIS2024のアルミニウム合金の化学成分(目標成分)の下限値に対してそれぞれ3.79質量%,0.30質量%,0.86%だけ不足する。そのため、少なくとも前記不足分を添加できるように第2原料として溶解する母合金の種類と配合量とを選択してアルミニウム展伸材を製造すればよい。
【0026】
2.2.JIS3105の配合例:
中間成分の第1原料を90%の配合率で配合することにより、JIS3105のアルミニウム合金のアルミニウム展伸材を製造することができる。この場合、第1原料のみに由来するMnの含有量が、JIS3105のアルミニウム合金の化学成分(目標成分)の下限値に対して0.30質量%だけ不足する。そのため、少なくとも前記不足分を添加できるように第2原料として溶解する母合金の種類と配合量とを選択してアルミニウム展伸材を製造すればよい。
【0027】
2.3.JIS4004の配合例:
中間成分の第1原料を80%の配合率で配合することにより、JIS4004のアルミニウム合金のアルミニウム展伸材を製造することができる。この場合、第1原料のみに由来するSi,Mgの含有量が、JIS4004のアルミニウム合金の化学成分(目標成分)の下限値に対してそれぞれ8.60質量%,0.70質量%だけ不足する。そのため、少なくとも前記不足分を添加できるように第2原料として溶解する母合金の種類と配合量とを選択してアルミニウム展伸材を製造すればよい。
【0028】
2.4.JIS5083の配合例:
中間成分の第1原料を50%の配合率で配合することにより、JIS5083のアルミニウム合金のアルミニウム展伸材を製造することができる。この場合、第1原料のみに由来するMn,Mg,Crの含有量が、JIS5083のアルミニウム合金の化学成分(目標成分)の下限値に対してそれぞれ0.40質量%,3.81質量%,0.05質量%だけ不足する。そのため、少なくとも前記不足分を添加できるように第2原料として溶解する母合金の種類と配合量とを選択してアルミニウム展伸材を製造すればよい。
【0029】
2.5.JIS6061の配合例:
中間成分の第1原料を90%の配合率で配合することにより、JIS6061のアルミニウム合金のアルミニウム展伸材を製造することができる。この場合、第1原料のみに由来するCu,Mg,Crの含有量が、JIS6061のアルミニウム合金の化学成分(目標成分)の下限値に対してそれぞれ0.14質量%,0.46質量%,0.04質量だけ不足する。そのため、少なくとも前記不足分を添加できるように第2原料として溶解する母合金の種類と配合量とを選択してアルミニウム展伸材を製造すればよい。
【0030】
2.6.JIS7075の配合例:
中間成分の第1原料を60%の配合率で配合することにより、JIS7075のアルミニウム合金のアルミニウム展伸材を製造することができる。この場合、第1原料のみに由来するCu,Mg,Cr,Znの含有量が、JIS7075のアルミニウム合金の化学成分(目標成分)の下限値に対してそれぞれ1.19質量%,1.87質量%,0.18質量%,5.10質量%だけ不足する。そのため、少なくとも前記不足分を添加できるように第2原料として溶解する母合金の種類と配合量とを選択してアルミニウム展伸材を製造すればよい。
【0031】
2.製造工程について:
以下、本発明のアルミニウム展伸材の一例として、JIS5000系に属するアルミニウム合金の製造方法について説明する。
【0032】
2.1.鋳造工程:
まず、鋳造を行うにあたり、原料とする母合金を選択する。本発明において、原料とする母合金のなかに第1原料そのもの、または、第1原料を他の原料とともに溶解して製造した母合金が含まれる。鋳造における第1原料の配合率は、第1原料の化学成分(出発成分)と、アルミニウム展伸材の化学成分(目標成分)とに基づいて設定すればよい。出発成分は、公知の分析手法によって予め分析されている。第1原料の配合率を設定することにより、第1原料に由来する各元素の含有量が定まるため、目標成分に対して不足する含有量を補足可能な第2原料を選択することができる。
【0033】
第2原料は、再生塊を含み得るが、第2原料に占める再生塊の割合が大きいほど望ましい。第1原料の重量と第2材料のうちの再生塊の重量とを合計した重量を、アルミニウム展伸材の全重量で除算して得られるリサイクル率を高めることができるからである。多種のアルミニウム合金を製造している製造者や工場であるほど、第2原料として多様な化学成分を有する再生塊の母合金を組み合わせることができ、リサイクル率を高めることができる。
【0034】
以上のようにして準備した母合金をDC鋳造法(Direct Chill鋳造法)等の常法に従って、溶解、鋳造し、鋳塊を得る。この時点で、目標成分の鋳塊が得られており、以降の工程は目標成分のアルミニウム合金の製法としてすでに確立されている製法を適用することができる。
【0035】
2.2.展伸工程:
次に、鋳塊を均質化熱処理する。均質化熱処理は、350~540℃の温度で2~24時間行うことが好ましい。均質化熱処理の温度が350℃以上である場合、鋳塊が均質化するまでに要する時間を短縮することができる。その結果、アルミニウム合金板の生産性が向上する。
【0036】
均質化熱処理の温度が540℃以下である場合、鋳造の工程で形成された共晶化合物が融解してしまうことを抑制できる。そのため、鋳塊の表面性状の悪化を抑制できる。その結果、後の圧延工程にて筋状欠陥が発生し難くなり、最終製品の外観が向上する。
【0037】
均質化熱処理の時間が2時間以上である場合、均質化の効果が高く、添加元素の固溶量が増し、アルミニウム展伸材としてのアルミニウム合金板の強度が高くなる。均質化熱処理の時間が24時間以下である場合、アルミニウム合金板の生産性が向上する。
【0038】
均質化熱処理後、熱間圧延を行う。熱間圧延の終了温度は300℃以上が好ましい。熱間仕上げ圧延の終了温度が300℃以上の場合、熱間圧延終了時点で再結晶組織を得やすくなる。その結果、中間焼鈍が不要となるため、アルミニウム合金板の生産性が向上する。
【0039】
その後、冷間圧延を行い、製品の板厚とする。冷間圧延の圧下率は、60%以上が好ましい。冷間圧延の圧下率が60%以上である場合、材料の加工硬化が進行しやすく、アルミニウム合金板の強度が高くなる。
【0040】
2.3.熱処理工程:
なお、冷間圧延の前、または冷間圧延の途中で必要に応じて中間焼鈍を行ってもよい。中間焼鈍を行う場合には、中間焼鈍後の冷間圧延における圧下率を、60%以上とすることが好ましい。
【0041】
2.4.他の製造方法:
上述したように、鋳造工程において、目標成分の鋳塊を得た後の工程については、従来から確立されている製法を適用することができる。例えば、特開2013-116474号,特開2010-159488号に記載の製造方法によってJIS2000系に属するアルミニウム展伸材を製造してもよい。
【0042】
また、特許第6912886号,特開2020-33632号,特許第6667189号,WO2019/058935,WO2019/066049,特開2018-3074号に記載の製造方法によってJIS3000系に属するアルミニウム展伸材を製造してもよい。
【0043】
さらに、特許第6649889号,特許第5698416号,特許第5602747号
特開2013-116473号,特許第5261214号,特許第4636520号,特許第3982849号に記載の製造方法によってJIS4000系に属するアルミニウム展伸材を製造してもよい。
【0044】
また、特許第6961395号,特許第5944862号,特開2013-12362号,特開2009-148823号,特開2009-209426号,特開平8-85880号に記載の製造方法によってJIS5000系に属するアルミニウム展伸材を製造してもよい。
【0045】
さらに、特開2019-026876号,特開2019-056163号,特開2019-173118号,特開2020-503428号,WO2018/003709号,WO2018/012597号,WO2019/021899号,特許第6452384号,特許第6467154号,特許第6512963号,特許第6581347号,特許第6585435号に記載の製造方法によってJIS6000系に属するアルミニウム展伸材を製造してもよい。
【0046】
また、WO2021/070900,特許第6979991,特許第5431795,特許第5276341,特許第4669903,特許第4736048,特開2010-159489号に記載の製造方法によってJIS7000系に属するアルミニウム展伸材を製造してもよい。